HIDE & LEAK ◆5fHSvmGkKQ


未遠川に架かる冬木市唯一の大橋を越え、一台のバスが新都へと差し掛かる。
太陽が天頂に差し掛かる頃合。
通勤時間帯に比べれば利用者は少ないが、その分バスの運行本数も絞られているため、一通りの座席が埋まるくらいには混雑している車内。
この聖杯戦争に参加するマスター・狭間偉出夫はスマートフォンに、
ライダーのサーヴァント・鏡子は大きな手鏡にそれぞれ視線を落としながら、手すりに掴まり並んで立っていた。

錯刃大学でサーヴァントに思わぬ反撃を受けた後、二人は追撃を避けるためにハザマの自宅を離れ移動することにした。
このまま拠点に戻らないことになってもいいように、いくらかの荷物と現金、クレジットカードなどはカバンに詰めて持ち出している。
バスに乗り込む際には、洗脳されたNPCが紛れ込んでいるかもしれないと警戒を強めたが、
平日の昼間に学生服姿でうろつくハザマたちを訝しむこともなく、車中は午後に特有のまったりとした空気で満たされていた。
それでも乗客に不審な動きがあればすぐさま臨戦態勢が取れるよう、携帯電話を用いた情報収集の傍らも用心を怠ることはしない。

そんな最中に、監督役からの「定時通達」が届いた。




『ふうん、28組ね。いろいろと単純なNPCと違ってみっちりと「お相手」できるのは最大で54人……いや、マスターも合わせて55人だけかぁ。
 ちょっと残念♡』
『……私を勘定に入れるな。未知の力を持った27組もの参加者を打倒せねば「聖杯」へ到ることはできない、
 そう考えるとなかなかに困難な道程であるといえる。油断はするな』

自身の手鏡から視線を上げて念話で話しかけてきたライダーに対して、ハザマは低い声で切り返す。
その間も、ハザマの頭脳は先ほどの通達の内容を思い返していた。

――ペナルティの付与を行う“こともあります”ので……
――処罰の対象となる“可能性がある”ことをお伝えしておきます……

B-4地区での違反行為に対する警告と、聖杯戦争のルールの提示。
その際に用いられた、凛然とした声の調子とは裏腹に断定を避け濁していた言い回しに、わずかにひっかかりを覚える。
特に前者は、わざわざ“重大な”と銘打った違反の処罰に関することで、だ。
罰則を与える権限を持ち、ルールからの逸脱を取り締まるために存在するはずの者の発言にしては、いささか消極的に過ぎないかとも思うし、
他の参加者に対して示しがつかなくなってしまうのではないだろうかと、疑念が生じる。
下手をすれば、一度は違反行為を行なっても警告どまり――「無処罰」で済むかもしれないと、そう捉えられる危険性もある。

また、「冬木の街の日常を著しく脅かすこととなる場合、処罰の対象となる可能性がある」とも言っていたが、
今しがた調べたニュースの中にもあった、新都の事件への対応はどうなっているのだろうか。
まず間違いなく聖杯戦争の参加者が関わっているだろう暴動は二時間以上も続き、
いくつもの店が営業再開の目処が立たなくなる程の破壊活動が行われたらしい。
しかしこちらに関しては、示唆はしていたのかもしれないが通達で直に触れられることはなかった。


監督役は、あまり厳罰に付すつもりはないのか――はたまた処罰“できない”事情でもあるのか。


裁定機能は運営、つまりこの聖杯戦争の根幹に関わるもののはずだ。
しかし高度演算装置である『アークセル』の用意した機能(システム)にしては、甘さや杜撰な点が見え隠れする。
それはどういうことなのかと、ハザマは思い付くままに可能性を考えてみた。

ひとつ。現状でなんの問題もなく、『方舟』の想定の範囲内である。
ある程度円滑に運営するためにルールを敷きはしたが、それを遵守することよりも
あくまで参加者同士の戦いに終始することを最優先としているため、今回の諸々の行為は意図的に見逃されている。
罰則能力を持つ裁定者の介入は最終手段、必要最小限に留めようとしている。

ひとつ。裁定者の能力は充分ではないが、やむを得ずこのような運営が為されている。
リソースの逼迫や不具合の予見などの要因によって、不完全なものしか用意することができなかった。
ただし設置するのがダミーの監視カメラであっても個々人のモラルに頼るだけよりは防犯効果があるように、
参加者にルールを守らせるという目的はいくらか達成できるため、それで良しとしている。

ひとつ。裁定者の存在自体が、『方舟』の意図から離れてしまっている。
深刻なバグの発生。はたまたハザマが魔界を作り替えたように、この世界に別の何者かの手が加えられでもしたか。
何者かの介入だとしても、システムを掌握しきれていない、またはそもそも頭が足りなくて、
裁定機能は想定外の機能不全状態に陥っている――

(フン……下らないな……)

飛躍も交えつつ適当にいくつか挙げてみたところで、ハザマは思考を止めた。
考察を進めるだけの手札に乏しすぎる現状では、憶測に憶測を重ねることしかできない。
それにどうであっても行き着くところは「ルーラーにあまり期待はできない」というところだ。
ならばと一つ方針に結論を付けて、考察を打ち切ることにした。

聖杯戦争の仕組みも成り立ちも、ハザマにとってはたいした問題でない。
万能の願望器である『聖杯』という“力”をいかにして手中に収めるか。
それだけがハザマの関心事である。

令呪に頼らずとも古今東西数多の世界の英霊をも意のままにできるような“力”。
もう何者もこれ以上ハザマを侵すことが叶わなくなる、圧倒的で絶対的な“力”。

疎まれ遠ざけられ続けた過去に根差す、憎悪を伴った昏い力への渇望は、
神の力を手に入れてなお、ハザマの心を強烈に駆り立てていた。


『それで結局、錯刃大学での洗脳行為について監督役への報告はどうするの、マスター?』
『ルーラーがすぐにペナルティを与える方向に動くとは思えない。ならばわざわざ手間をかけてこちらから出向くほどではないだろう。
 街中で偶然出会うようなことでもあれば、その際に伝えるかもしれないが。
 ……私たちは当初の予定通り、このまま「図書館」へ向かう』

三つの検索施設のうちの一つである「図書館」。
生徒である狭間の身分ならば「月海原学園」も利用しやすいと言えるが、位置的に離れている上に昼過ぎからの登校となると目立ってしまう。
また聖杯戦争が本格的に始まった今、学校という場所に良い思い出のないハザマは必要に迫られでもしない限りは学園に行くつもりはなかった。
「病院」は錯刃大学の付属施設であり、先の主従が手を伸ばしている可能性が高いことを考えれば論外だ。

『了解。――でも本当に良いのね? 検索施設は参加者が高確率で訪れる場所。既に張られている可能性だって高い。
 マスターほどの力だと、他のサーヴァントや魔術師であるマスターなんかに遭遇したら一目で参加者だってばれちゃうわよ?』

ハザマの方針を承諾しつつも、鏡子はそのデメリットを指摘する。
英霊にも匹敵するハザマの魔力は、他者の目を強く惹きつける。
高位の魔術師は大抵自身を秘匿する術を心得ているものだが、ハザマはそれが不得手だった。
自らの優秀さを隠し、大衆に埋没できるだけの「器用さ」をハザマが持ち合わせていたのならば、
これまでの人生において、彼がここまで孤立を深めることにはならなかったであろう。

ちなみに鏡子が現在実体化しているのも、ハザマが参加者であることを隠し通せないのならば
霊体化して隠れるメリットがあまりないだろうとの考えからである。
耐久などの面で不安は残るが、鏡子の能力ならば先手さえ取れれば大抵の相手を即座に腰砕けにすることができる。
であらば実体化にかかるラグをなくし、少しでも敵に先んじられるようにと
遠隔透視を可能とする宝具『ぴちぴちビッチ』による周辺監視を行い続けることにした。
現界に伴う魔力消費は問題なく、宝具を使用し続けていてもそれ自体はハザマの負担になることはなかった。

そしてそもそもとして、ハザマ達は検索にかけられるだけの情報を持っていなかった。
早朝、森林公園で交戦したランサーからは真名看破できるだけの情報は得ておらず、
錯刃大学のサーヴァントの情報はひとつ残らず脳から消え去っている。
検索施設から得られる情報は、せいぜい通達で言及されていたクラスごとのサーヴァントの数についてくらいなものだ。

“リスクを冒してまで訪れるだけの価値はあるのか”と、そう尋ねる鏡子に、
にべもなくハザマは言い切った。

『構わん。他の参加者と接触すること――それ自体が目的だからな』

ルーラーには報告しない。情報をリークする対象は“他のマスター・サーヴァント”である。

『与し易い相手であるのならば今までに得られた情報を与え、互いを潰し合わせる』
『なるほど……そういうことね、マスター』

納得のいった鏡子は、再び手鏡に視線を落として索敵を続けることにした。
ハザマの持つスマートフォンの画面には、とある人物の略歴と顔写真が表示されている。


伝える情報は主に二つ。
錯刃大学にいるNPCの大多数が既に洗脳を受けているということと、
“錯刃大学教授・春川英輔がマスターであるかもしれないということ”。その二点だ。




鏡子が午前に襲撃を行った相手、魔眼のアサシン・甲賀弦之助が持つスキル――『情報末梢』。
対戦が終了した瞬間に、目撃者と対戦相手の記憶から能力、真名、外見特徴などの情報が消失する能力である。
ただし消失する情報は、そのスキルを搭載したサーヴァントに“直接”関与するものだけだ。
交戦した記憶自体が丸ごと忘却されるわけではない。

状況そのもの――たとえば“戦闘した場所”などの記憶は、そのまま保持し続けることができる。

――敵のサーヴァントから反撃を受けた地点の座標は覚えているか?
――ええ。
――ならばそこを映してくれ。何者が居たのか、何の部屋だったのか。その手掛かりを得たい。
――……今居るのは一人。白いワイシャツを着た鷲鼻の男性。結構若そうに見えるけど、あんまり学生って感じはしないかも。
  入り口ドアのプレートによると、場所は「春川研究室」。下に「無断入室禁止」とも書いてある……閉鎖的な場所なのかな?
――もういい、それだけわかれば十分だ。宝具を解除し、勘付かれる前に移動を開始するぞ。

反撃を受けた後、移動の準備をハザマが進める間に、鏡子は任意の場所を映し出す宝具『ぴちぴちビッチ』を再び使用していた。
ただし今回は手鏡に情景を映すだけで、干渉はしない。
鏡面は、NPCの様子を確認し自室に戻ってきていたHALの姿をちょうど映し出すことに成功した。
アサシンの姿は高い気配遮断スキルの影響もあり、鏡子の目では捉えることもできなかったが。




――私立錯刃大学の教授、春川英輔。
専門は脳科学だが、医学からコンピュータサイエンスまで、様々な分野の博士号を所持。
著名な論文を数多く発表し、天才との名が高い。

ハザマは移動中に「錯刃大学」「春川研究室」の二つのワードで検索し、大学や学会のホームページなどから得られた情報を反芻する。
インターネット上には春川教授の顔写真も上がっていた。
鏡子にスマートフォンの画面を見せ、先ほど遠隔視した人物と同一であるとの確認はすでにとってある。

これだけの情報で春川英輔がマスターであると決めつけるのは早計であるかもしれない。
鏡子が索敵を行ったのは反射された自慰行為を終えた後であり、そのタイムラグの間に
たまたま「無断入室禁止」の部屋を訪れていた本当のマスターは、別の場所に移動したのかもしれない。

とはいえ、錯刃大学内にいる人物がマスターであることはほぼ間違いないだろう。
全くの部外者であるならば、ルーラーに露見するかもしれない危険を冒してまで大学内のNPCを集中的に洗脳するだけの旨味が少ない。
ルールとして「大量無差別に一般NPCを襲うこと」が禁じられているのを逆手にとって、
いざというときの盾代わりにすることを兼ねていたのではないかと考えられる。

マスターの最有力候補は、研究室の主である春川英輔本人。次いで、春川教授と親交があり研究室内に立ち入ることができる者。
面識がなくとも洗脳という状況下では内部に入ることは容易であるが、その場合は“中に入りたいだけの理由があった”ということであり、
その場所を調べればなんらかの手掛かりが見つかる可能性が高い。

一番厄介なのは“たまたまその時単独行動をとっていたサーヴァントが春川研究室にいただけである”という事態だが、
そういった何の手掛かりにもならない状況は、他の見込みが否定されつくした段階で改めて考慮すればいい。

冬木市民数十万人の中から聖杯戦争に参加している27人のマスターを探し当てねばならないという状況から、
数人、あるいは相当多く見積もっても数百人程にまで絞り込めたのは、結果として悪くなかった。

しかしここまで目星をつけていながらも、現状ハザマはこの件について直接的に深追いするつもりはなかった。


それはひとえに、錯刃大学の主従との“相性の悪さ”に因る。

午前に行った交戦。
その際鏡子は“性技を以ってサーヴァントの動きを止めようとした”はずが、
次の瞬間には“自らの秘所へと指を伸ばし、自身を快楽に導いた”。
このことから、錯刃大学のサーヴァントは『反射』または『対象を他者に転嫁する』といった能力を持つのではないかと推測できる。

人智を越えた超能力を操る魔人がひしめく希望崎学園において、学園最強格であると目されていた魔人・鏡子ではあるが、
彼女は生前、『相手の能力の対象を永続的に自分だけに限定する』力を持った魔人に対しては苦戦を強いられたことがある。
“卓越した性技”の他には攻め手を持たない鏡子にとって、対象操作系の能力は極めて相手が悪いといえる。
またスキル『情報抹消』の効果により、どのような条件、過程を経て発動するかなどを知ることはできず、
対策をあらかじめ立てることもままならない。

サーヴァントが手強いのならば、マスターを直接狙うという方法もある。
しかし鏡子では、枯死させても記憶を保持して『座』に戻れる英霊とは違い、
マスター相手に止めを刺すことができないという問題が発生する。

鏡子による足止めが叶わない状況で、ハザマ自身がマスターを叩くというのも難しい。
いかんせん魔神皇・ハザマイデオは目立ちすぎる。
攻撃圏内に入るころには十中八九魔力を気取られ、サーヴァントからの妨害を受けることになるだろう。

故に錯刃大学の参加者に対しては、大学からほど近い自室であのまま宝具による遠隔監視を続けることもせずに、慎重策を採ることにした。
他の参加者にリークできる情報としては、早朝交戦した青のランサーに関するものもあるが、
優先的に排除したいのは相性の問題からいって錯刃大学の主従の方である。
青のランサーについて伝えるのは、“場合によって”といった程度だ。

ただ情報を渡すにしても、敵に関するものだけに留めて、こちらの手の内はなるべく晒さないようにするつもりだ。
「共闘」ではなく「利用」。
信頼などない、裏切りを前提とした関係。
聖杯を奪い合う立場にある者と、無意味な馴れ合いに興じるつもりはなかった。

この作戦において最悪なのは、“情報をリークした相手が錯刃大学の主従と結託してしまうこと”だ。
そのためどんな相手と接触するか、何をどのように伝えるか、その見極めが最重要となる。

他の参加者を誘導して自身の脅威である参加者を討ち取らせる。
人間嫌いであるハザマが、このようなある意味「他者に依存する」ともいえる策を採ることにしたのは、
戦闘――という名の「淫行」――からしばらく離れたいという感情が働いた結果でもあった。
朝からことあるごとに起こる射精に、ハザマは気力も体力も相当に削られていた。

ちらりと、隣に立つ自身のサーヴァントを見遣る。
黒のおさげに、顔の半分近くを覆っている丸メガネ。
化粧っ気のない顔に、丈を詰めていない制服は、見る者に純朴という印象を与える。

ぐるぐると周辺状況を映し続けている手鏡を見つめる彼女の視線は、真剣そのものだ。
彼女がこの戦いに対して、決していい加減な気持ちで臨んでいるわけではないということがわかる。
戦術眼も悪くない。
早朝には三騎士であるランサーを相手にして消滅寸前にまで追い込み、
午前には隠れ潜んでいた参加者を発見したあげく、NPCに施された洗脳を解くという離れ業までやってのけた。


“ビッチ”であること――――その一点さえ除けば、パートナーとして申し分ない人物である。


そのひとつが、ハザマにとっては大問題であるわけなのだが。
ハザマは心中で盛大に溜息をついた。
知ってか知らずか、ちょうど鏡子も手鏡から視線を上げハザマに向き直る。

そんなときの出来事だった。


『図書館が効果圏内に入ったみたい。どうやら入り口前で誰かが戦闘しているようだけど……――――ッ!?』

ぐらり、と揺れる身体。
ハザマに報告する鏡子の念話が途切れ、一瞬その表情が驚愕に染まる。

敵からの急襲――ではなく、運行予定時刻から遅れ気味だったバスが減速せずに交差点を急転回しただけのこと。

ハザマはバランスを崩し慣性の法則に従うままの鏡子の身体を、抱き寄せるようなかたちで受け止めることとなった。
瞬間、射精。
昼時のバスの車内に、精の臭いがほのかに漂った。

(クッ……魔神皇ともあろう者がなんというザマだ……)

胸の中にいる鏡子をとても直視できず、顔を背けながら動揺を押し隠すように悪態を吐くハザマ。
脳髄を一挙に駆け上る興奮がようやく過ぎ去って、やっと思考できるだけの余裕が戻ってくる。
そしてふと、ある疑問が生じた。

思い返すのは明け方の森林公園、青い槍兵とライダーが“交戦”した時のことだ。
その際この淫奔のライダーは、彼女の最大の武器を覆う鞘、要するに下着を脱ぎ捨てた。
……そして、その下着を回収した覚えがない。
ハザマは予選当時から独り暮らしであり、当然女物の下着など持ち合わせていない。ここに到るまでの間に調達したわけでもない。

類稀なるハザマの頭脳が、ひとつの結論を導き出す。


つまり。今自分にもたれかかっている、この少女は。現在。




ぱ ん つ は い て な い




「ぶッ――――」

興奮による急激な血圧上昇に耐えきれず出血しだした鼻を押さえ、慌てて回復呪文を唱える。
怪訝そうな顔でこちらを見つめるNPCを無視し続けると、やがて興味を失ってそれぞれの世界に戻っていった。
下半身に血流が集中しているのか、巡りの悪い頭にハザマは必死で理性を投入して、精神の安定を図る。

(お、おちつけ魔神皇……。魔界では淫魔に属するような悪魔だって従えてきたではないか……。
 それに僕……いや私が気付かなかっただけで、知らぬうちにライダー自身が回収していた可能性だってある……。
 たかが使い魔<サーヴァント>一匹が下着を身に着けていないかもしれないくらいで、今更どうしたというのだ……)

だがしかし。
直接的な露出ではなく、“はいている”か“はいていない”か、
両者を判断することができない状況というのは……かえって想像力を掻き立てるものがある。
ミロのヴィーナスは腕が存在しないからこそ、世界中の人々を惹き付けて止まない存在となった。
ひとたび「観測」が行われれば事象は“1”に収束して、他のありとあらゆる可能性は排斥されてしまう。

つまり彼女の膝丈きっちりのスカートの中は現在、
同時には存在し得ないはずの個々人にとっての至高を内包した、究極の状態であるといえるのだ――――



(…………いったい何を考えているのだ僕は…………。
 このサーヴァントと契約してからずっと、調子を狂わされ続けてしかたない……)

くらくらと眩暈のする頭を抱えながら、ハザマはもう何度目になるのかわからない愚痴を漏らす。
せめて霊体化させておいたのならばこんなことにはならなかっただろうにと、自身の判断を一瞬後悔した。
対する鏡子はというと、途中立ち寄ったネットカフェでシャワーを浴び、大量に消臭剤を振りかけてなお
こびりついて取れなかった性臭を纏いながら、艶やかにほほ笑んだ。
肉薄することで湧き上がったハザマの劣情、その中に自身がたしかに存在していることを確認して、とても満足気に。

『ふふ……マスターの「いいつけ」どおり、手は出してないよ♡』
『御託はいいから今すぐ離れたまえ……!』

出発の前に履き替えたはずのハザマの下着は、漏れ出す液によってぐしょぐしょと不快な湿り気を帯びていた。



【C-8/バス車内(図書館から2km圏内)/一日目 午後】

【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[状態] 健康、性的興奮、気力体力減退
[令呪] 残り二画
[装備]
[道具] 鞄(生活用具少し、替えの下着数枚)
[所持金] いくらかの現金とクレジットカード。総額は不明
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に勝つ。
1.図書館に向かい他の参加者と接触し、利用できるようなら錯刃大学の襲撃で得た情報をリークする。
 場合によっては早朝のランサー主従(凛組)に関する情報も。
2.錯刃大学の主従(HAL組)との直接対峙は避けたい
[備考]
※まだ童貞。
※錯刃大学に存在するマスターとサーヴァントの存在を認識しました。
 春川英輔(電人HAL)がマスター、ないし手がかりになるだろうと考えています。
 春川英輔の経歴と容姿についてネット上に公開されている範囲で簡単に把握しました。
※学校は必要に迫られない限りは行かないつもりです。
※状況次第で拠点の移動も考えています。


【ライダー(鏡子)@戦闘破壊学園ダンゲロス】
[状態]『ぴちぴちビッチ』で索敵中、つやつや、はいてない?
[装備] 手鏡
[道具]
[所持金] 不明
[思考・状況]
基本行動方針:いっぱいセックスする。
0.図書館前の戦闘(ジョンス組と聖組によるもの)をハザマに伝え、今後の行動を確認する。
[備考]
※クー・フーリンと性交しました。
※甲賀弦之介との性交に失敗しました。
※錯刃大学に存在するマスターとサーヴァントの存在を認識しました。



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