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バカばっか ◆OSPfO9RMfA


 英霊アシタカは、アーチャーのサーヴァントとして座より召喚された。

 サーヴァントとして現界するにあたり、以下の知識が与えられた。

 この地は『方舟』内部に再現された空間であること。
 この地で聖杯戦争が行われること。
 聖杯戦争とは、万能の願望機を求め殺し合うシステムであること。
 最後の一組になれば終了となること。
 最後の一組だけが月に至り、月の聖杯を一度だけ使用することが出来るということ。

 マスターは令呪を持つということ。
 令呪とはたった三回だけのサーヴァントへの絶対命令権であること。
 サーヴァントにはセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの七つのクラスが存在すること。
 マスターはNPCとして過ごす“予選”を突破した後、サーヴァントを召喚するということ。
 さらに、『方舟』に再現された地に文明レベルにあった常識。

 そして――


 ――月の聖杯は、量子コンピュータが魔術的概念により実現されている自動書記装置。“ムーンセル・オートマトン”であること。


 これらの知識は、主従問わず、平等に与えられているはずである。
 故に、月の聖杯とは何かと問われれば、『量子コンピュータが魔術的概念により実現されている自動書記装置。“ムーンセル・オートマトン”である』と答えることは出来る。

 だが、それ以上は分からない。

 自動書記装置がどのように願いを叶えるのか。
 何故、生き残った一組のみが使用できるのか。
 自動書記装置とは何であるか。
 そもそも、何故、聖杯戦争を行うのか。

 これらの問いに答えられる知識は与えられなかった。


 英霊アシタカに生前の未練や後悔、二度目の生への執着は無い。
 自身は死しても座に戻るだけ。
 叶えたい望みも無くば、生存欲求もさえも無い。
 その為、個人として聖杯に対して、しいては聖杯戦争に対して関心は薄い。

 だが、マスターは異なる。
 主である東風谷早苗は、まだ幼き娘だ。
 叶えたい願いもあるが、それ以上に『生きて帰りたい』という生存欲求が強い。
 ここで出会ったのも多生の縁であろう。アシタカはサーヴァントとして、彼女を護る役目を全うするつもりであった。






 D-9の廃教会の周辺の道ばた。
 早苗はベンチがあるというのに関わらず、道路に座り込んでいた。

 それは同盟を結んだ、テンカワ・アキトに原因がある。
 彼の怒気に煽られ、早苗はすっかり消沈してしまっていた。

 願いを叶えることに必死な彼は、藁にも縋るつもりの彼には、ただ『生きて帰りたい』だけの早苗を前に冷静で居られなかった。『自分は間違っていない』と大声で叫び、そう自分を納得させようとしている様子ですらあった。

『マスター、大丈夫だろうか』

 アシタカは実体化したまま早苗に近づき、片膝をつく。
 わざわざ念話で話し掛けたのは、近くにいるアキトを考慮しての事だった。

『アーチャー。私はどうすれば良いんでしょう』

 早苗はアシタカと顔を合わせ、念話で返す。それは、聖杯戦争が本格的に始まってから半日経った今でも、ずっと答えのでない問いだった。

『私はアキトさんに人殺しをして欲しくない。アキトさんには、人殺しをしても叶えたい願いがあるのは分かります。けど、やっぱり、間違ってるとしか思えないんです』

 早苗は命のやりとりを知らない。
 幻想郷の弾幕ごっこは所詮、女子供の遊び。遥かに強力な人外が、それでも平等公平に遊ぶ為のルールのある遊び。
 殺したり殺されたりする戦争を、早苗は知らない。

 生きるということには、他の生命の死が絡んでいる。
 家畜を屠畜し、穀物を収穫し、外敵を屠る。

 そこに人が殺傷対象に含まれることに、違いはあるのだろうか?

 ――あるのだろう。少なくとも、早苗には。

 早苗にとって、アキトはまだ出会ったばかりの他人だ。惚れたわけでもない。
 だが彼が殺人という凶行に手を染めようとしていることに、心を痛めている。

 アシタカは早苗を心優しい娘だと思う。
 だが、同時に護らなければならぬほど、清純で弱い娘だとも思っている。
 そして清らかなままでいて欲しいというのは、アシタカの我が儘か。

『ならば、マスターが先ほど言ったことを証明すればいい』

 故に、アシタカはそう助言する。

『私が言ったこと、ですか?』
『そう、マスターは先ほど言ったではないか』

 ――聖杯は本当に願いを叶えてくれるんですか?
 ――叶えるとしても……本当に、正しいやり方で願いを叶えてくれるんですか!?

『“聖杯は願いを叶えてはくれない。聖杯は正しい方法で願いを叶えてはくれはない”。それを証明して、彼に突きつければいい。それでも彼が聖杯を妄信し、止まらないのならば、私が力を持って止めさせよう』

 アキトの聖杯を信じる思いは、狂信に近い。
 だが、最初から力を持って彼を止めても、決してアキトは納得しないであろう。

 だから、聖杯が誤った存在であると証明し、突きつける。
 それでも妄信するのであれば、その時に力を持って止める。

 真実と力。その二つを持ち得て、初めて彼を止めうることができるはずだと説明する。

『アーチャーは……アーチャーはそれでいいのですか? 本当に願いは無いのですか?』
『私も人間だ。美味いボタン鍋を食べたい程度には、欲はある。だが、マスターが戦を望まぬのであれば、それでも聖杯に望むまでの願いはない』

 アシタカは冗談を交えながら答える。その方がより願いがないことが伝わるのではないかと思ってのことだ。
 早苗はそれを、アシタカの瞳を見ながら聞いた。

『――わかりました』

 早苗は熟考し、静かに頷く。
 頬を叩き、立ち上がる。
 迷いのない、鋭い瞳でアキトを見つめる。

 ――アシタカはほんの少しだけ、嫌な予感がした。






 アキトはベンチに座り、休んでいた。

 未明にセイバーと交戦し、早朝に撤収。そのまま眠らずに午前に廃教会の墓地へ。
 夜に備えてヤクザの事務所で武器を調達し、戦いの夜を迎えることを考えると、今の内に少し休んでおきたかった。
 皮肉にも、非好戦的な早苗とアシタカは、見張りには最適だ。特にアシタカはアーチャーであり、その視力についても期待できる。
 早苗が黙ったことを良いことに、ベンチの上で脱力する。

「アキトさん」

 だが、そうは問屋が卸さなかった。
 早苗が澄んだ声で話し掛けてきた。

「……なんだ?」

 相手にするのもおっくうだ。そんな態度を隠そうとせずに答えようとした。
 しかし、早苗の目の据わった表情に、先ほどまでと違う何かを感じた。
 アシタカは早苗のやや後方に立っている。

「やっぱり、間違ってます」

 早苗は言葉を紡ぐ。
 その言葉は、アキトのボルテージを容易く沸点にわかせた。
 それでも、早苗は言葉を続ける。

「こんな殺し合いをさせる聖杯は間違っています!」
「俺を怒らせたいのか! 殺されたいのか!」
「■■■■■■■■――――!!!!」

 怒り露わに、立ち上がりながら早苗に殺気をぶち当てる。
 バーサーカーのガッツも実体化し、巨大な鉄塊を見せしめるように振り上げ、理性無き声で吠える。
 アシタカが慌てて早苗の前に出ようとする。


 ――けれども、早苗は屈しない。


 早苗はアシタカを手で除けて前に出る。自身の上着に手を当てると、力づくで胸元を開けた。ボタンが二,三飛び散り、胸元が露わになる。
 純白の白い下着。そして、左の鎖骨から下着の部分まで、3匹の蛇が絡みついたような痣。

 令呪だ。

「『マスター、東風谷早苗がアーチャーに命じます』」

 声高らかに早苗は奏でる。
 アキトとガッツはどんな命令が飛んできても対応できるように、身構えをする。


「『聖杯戦争が誤りであると証明できなかった場合、私を殺してください』」


 令呪が煌めき、一画が消失する。
 命令は、果たされた。

「――お、ば……な……」

 過呼吸になったかのごとく、アキトは声が出なかった。

 いずれは殺す相手が、令呪を無駄に使った。
 しかも、勝手に身を滅ぼすであろう命令だ。わざわざ手に掛ける必要が無くなる。
 さらに言えば、早苗はアキトを殺すことはより無くなるだろう。
 良いことずくめじゃないか。

「お前は馬鹿か!? 何でこんな事に令呪を使うんだ!! お前は死ぬ気か!?」

 アキトは思わず早苗の胸ぐらを掴むと、大声を上げて罵声を浴びせる。
 だが、早苗は――この女は、涼しい顔をして答えた。

「死ぬ気はありません。必ず生きて諏訪子様、神奈子様の元へ帰ります。アキトさんに聖杯戦争が間違ってると、証明すれば良いだけです」

 ――愚問だった。
 馬鹿だった。
 もの凄い大馬鹿女だった。

 “どこにそんな根拠がある”だとか、“令呪を使わなくてもいいだろう”だとか、そんな理屈は全く通用しない。
 この女と自分は相容れない。
 そんなことさっきから分かってた事じゃないか。
 何を今更言ってるんだ、お前は馬鹿か? テンカワ・アキト。

 そう頭の中で自嘲し、身体から力が失われたかのようにベンチに座り込む。
 ガッツも気後れして構えを解いてしまう。

「私は行きます。『人殺しをしないでください』とは言いません。ですが、私は必ず、聖杯が誤ってるとアキトさんに証明してみせます」
「……もう、好きにしてくれ」

 頭を垂れて、アキトは答える。目を逸らしたわけではない。
 顔を上げる気力が無かっただけだ。

「……待て」

 立ち去ろうとする早苗に、アキトは顔を伏せたまま声を掛ける。
 早苗は振り返り、アキトを見る。

「……ケータイは持ってない。連絡があるならB-9の天河食堂に来い。そこを根城にしてる」

 わざわざ伝えなければならない理由はないはずだが、言っておかなければならないと思った。
 早苗は静かに頷き、再度背を向けて立ち去っていく。
 アシタカもそれに着いていく。

 この場に残されたのは、アキトとガッツのみだった。

「バーサーカー、見張りを頼む。俺は休む」

 ベンチに寝そべると、顔に腕を当てて日差しから隠す。

 ――どうして俺の周りには馬鹿な奴ばっかり集まるんだろうか。

 心の中で、そう自嘲する。
 バーサーカーは答えない。
 だが、不意に理解する。

 ――あぁ、そうか。俺が馬鹿だからか。

 思わず、納得してしまった。



【D-9/廃教会周辺/一日目 午後

【テンカワ・アキト@劇場版 機動戦艦ナデシコ-The prince of darkness-】
[状態]左腕刺し傷(治療済み)、左腿刺し傷(治療済み)、胸部打撲、強い憎しみ、心労(中)
[令呪]残り三画
[装備]CZ75B(銃弾残り10発)
[道具]チューリップクリスタル2つ 、春紀からもらったRocky
[所持金]貧困
[思考・状況]
基本行動方針:誰がなんと言おうとも、優勝する。
0.武器の調達や夜の戦いに備え、少し休む。
1.次はなんとしても勝つために夜に向けて備えるが、慎重に行動。長期戦を考え、不利と判断したら即座に撤退。
2.下見したヤクザの事務所などから銃弾や武器を入手しておきたい。
3.五感の以上及び目立つ全身のナノマシンの発光を隠す黒衣も含め、戦うのはできれば夜にしたいが、キレイなどに居場所を察されることも視野に入れる。
4.できるだけ早苗やアンデルセンとの同盟は維持。同盟を組める相手がいるならば、組みたい。自分達だけで、全てを殺せるといった慢心はなくす。
5.早苗に関しては……知らん。勝手にしてくれ。
[備考]
※セイバー(オルステッド)のパラメーターを確認済み。宝具『魔王、山を往く(ブライオン)』を目視済み。
※演算ユニットの存在を確認済み。この聖杯戦争に限り、ボソンジャンプは非ジャンパーを巻き込むことがなく、ランダムジャンプも起きない。
 ただし霊体化した自分のサーヴァントだけ同行させることが可能。実体化している時は置いてけぼりになる。
※ボソンジャンプの制限に関する話から、時間を操る敵の存在を警戒。
※割り当てられた家である小さな食堂はNPC時代から休業中。
※寒河江春紀とはNPC時代から会ったら軽く雑談する程度の仲でした。
※D-9墓地にミスマル・ユリカの墓があります。
※アンデルセン、早苗陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。

【バーサーカー(ガッツ)@ベルセルク】
[状態]健康
[装備]『ドラゴンころし』『狂戦士の甲冑』
[道具]義手砲。連射式ボウガン。投げナイフ。炸裂弾。
[所持金]無し。
[思考・状況]
基本行動方針:戦う。
1.戦う。






 人気のない道を早苗とアシタカは歩く。
 先ほどから無言で、会話をしていない。

 しばらくして、早苗が立ち止まる。アシタカもそれに倣う。
 早苗はアシタカに振り返り、尋ねる。

「アーチャー、聞かないのですか?」

 “何を”とは聞かなかった。
 言わずとも分かる。
 “何故、あのような事をしたか”。
 その問いがアシタカから発せられないのを、早苗は疑問に思ったのだろう。

 だが、アシタカはその問いは無意味だと察する。
 理屈ではなく感情で動いたそれに意味など無く、それを誤りだと言う気は欠片もない。
 彼の凶行を止めるために為したと思えば、なんと心優しく、強きことか。

 アシタカは早苗をか弱い娘だと思っていた。
 訂正せねばあるまい。
 彼女は優しく、強い人間であると。

「地獄の底まで共にするのがサーヴァントであるなら、私もそれに倣おう。主殺しの咎をも、私が背負おう。故に、己の道を歩まれよ。私が刃となり、盾となる」
「ありがとうございます」

 早苗は深々と頭を垂れる。

 もっとも、アシタカは先ほどの令呪の拘束力はさほど無いと考える。
 『聖杯戦争が誤りであると証明できなかった場合』。
 そこに期限も、誰を対象にとも、明示されてない。
 その為、その命令が効力を発するときは、早苗が『聖杯戦争が誤りであると証明できない』と諦めた時でしか他ならない。
 諦めが人を殺すと言うのならば、まさしく言葉通りだろう。

 令呪を一画消費した恩恵は限りなく無い。
 いや、これは狼煙だ。
 彼女の戦いの、宣戦布告の狼煙だ。
 ならば、意味はあったのだろう。
 アシタカはそう考えた。

「それで、マスター。これからどうする?」
「教会に行きます。ルーラー達が一番、聖杯について知っているはずですから」

 裁定者に直談判。芯が曲がらない彼女の意思は強く、怖い者知らずだ。
 けれども、それを止めてしまっては彼女の良さを損なってしまう。
 だから、アシタカは止めない。彼女の歩みを、護るのみだ。

 だが、その前に一声掛ける。

「それよりも先に、木陰で服を正した方が良い。着替えがあるのだろう?」
「……はしたなかったでしょうか」

 一応ボタンが取れた部位を手で掴み、隠してはいるが、まるで暴行を受けたかのようにも見えてしまう。
 先ほどの行為を思い出し、早苗は羞恥に頬を染める。

「いや、美しかった」

 アシタカの世辞の無い言葉に、早苗はさらに顔を赤らめた。



【D-9/廃教会周辺/一日目 午後】

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]健康
[令呪]残り2画
[装備]なし
[道具]今日一日の食事、保存食、飲み物、着替えいくつか
[所持金]一人暮らしには十分な仕送り
[思考・状況]
基本行動方針:誰も殺したくはない。誰にも殺し合いをさせたくない。
1.教会に行き、ルーラー達に聖杯について問う。
2.少女(れんげ)が心配。
3.聖杯が誤りであると証明し、アキトを説得する。
[備考]
※月海原学園の生徒ですが学校へ行くつもりはありません。
※アシタカからアーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しましたが、あくまで外観的情報です。名前は把握していません。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。
※アキト、アンデルセン陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。なお、彼らのスタンスについて、詳しくは知りません。
※バーサーカー(ガッツ)のパラメーターを確認済み。
※アキトの根城、B-9の天河食堂を知りました。

【アーチャー(アシタカ)@もののけ姫】
[状態]健康
[令呪]『聖杯戦争が誤りであると証明できなかった場合、私を殺してください』
[装備]現代風の服
[道具]現代風の着替え
[思考・状況]
基本行動方針:早苗に従い、早苗を守る
1.早苗を護る。
[備考]
※アーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しました。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。



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