ヒーローズ・オン・ザ・マッポー・ワールド ◆tHX1a.clL.


  からんころん。
  年代物のドアにつけられたドアベルが優しく来店を告げる。
  昼時だというのに店内は閑散としたもので、今しがた入店した二人を除けば常連客NPCが一人しか居ない。
  店の奥からぱたぱたと足音が近づいてくる。

「あ、ウェイバーくんだ! やっほー!!」

  鼻にティッシュを詰めた少女がカウンターから顔を出して、ぶかぶかな割烹着の袖をぶんぶん振って来客を出迎えた。
  彼女が一応、このお店のマスターをつとめるNPCだ。

「どうも。ランチセットお願いします」

「はーい! ランチセットワーン!! 今日はねぇ、ぶっといソーセージのやつだよー!」

  ウェイバーがこの喫茶店を昼食場所に選んだ理由は二つある。

  まず一つが喫茶プリンス・特別ランチセット。
  パン、スープ、サラダにおかず一品が付いて500円と非常にリーズナブル。
  基本的に財布に余裕がないウェイバーは、NPC時代からこの店をよく使っていた。

  午後の授業は午前最後の授業から一時間の昼休みを挟んで始まる。
  つまり、午前最後の授業前に教室を抜け出したウェイバーは次の授業まで二時間程時間をもてあますことになる。
  そこでウェイバーがまず行おうと考えたのは食事だった。
  とりあえず何かしらの方法を使って体力を回復しなければ最悪魔力枯渇で死んでしまう。
  かといって資金は有限、無駄にすることはできない。
  ということでコストパフォーマンスのよいこの店まで足を運んだのだ。

  そしてもう一つ。今回はこちらのほうが理由としては大きい。

「で、そっちの被ってるほうの人は?」

「だってよウェイバーたん」

「なっ……か、かぶっ!? ち、違う、マスクだ!! マスクを『被ってる』人って言ってるんだよ!!!」

「え、なにその反応。なになに、ウェイバーたんなんか被ってんの? そりゃ大変だ、俺ちゃんが見てやるから出してみ。大丈夫、サクっとチョキっと終わらせるから」

「だからそういうのじゃないって言ってるだろ!! あとマスター、コイツもランチセットです!!」

「はいはーい!! ぶっといのにほーん!!」

  まぁ、見てのとおりである。
  この店……というよりマスターである少女はちょっとやそっとのことじゃ驚かない。
  言動に難があるが、変人が来ようが変態が来ようが特に気にせず接客をする、ある意味この舞台で一番役割をこなせてるNPCだ。
  だからこそウェイバーはこの店を選んだ。
  理由は当然、『バーサーカーがまたどこかに行かないよう見張っておくため』。
  この店は数少ない常連客NPCが出入りするだけで(現実で言うところの知る人ぞ知る喫茶店といったところか)、人目に付く可能性が低い。
  もちろん実体化していることでの魔力消費というデメリットもあるが、それ以上にバーサーカーを監視できるというメリットは大きい。


  ◆  ◆  ◆


  『ぶっといソーセージのやつ』というよく分からない説明の料理だったが、ふたを開けてみればなんのことはないただのポトフだった。
  食べ始めるまではいつもどおり饒舌だったバーサーカーも、今は静かに食事をしている。
  ナイフとフォークを運ぶ音と、バーサーカーの租借音だけが響く。
  他には音はない。
  ウェイバーはついに、ようやく、なんとかバーサーカー召喚以来初めて落ち着けた。
  久々の平穏、なんだか涙すら出てくる。

「あ、そだそだ、ウェイバーくん! ホットなニュース聞いてく?」

  配膳と後片付けを終えたマスターが二人の前に座り、喧騒の種を運んでくる。
  しかし、ウェイバーは特にこれをとめようとはしなかった。
  それは、マスターの言う『ニュース』がなんらかの形で聖杯戦争に関連してくるかもしれないということもあったし。
  バーサーカーが騒ぐ以上のことは起こらないという確信もあったからだ。
  マスターが隠語もりもりで騒ぐ程度、今朝方から続くバーサーカーショックに比べれば屁でもない。

「ホットなニュース、ですか?」

「えっとね、幼稚園児に強姦事件があったんだって!」

「……は、はあ」

  なんとも嫌な話だ。
  幼稚園児、つまり六歳以下の……おそらく、少女だろうか。
  そんな子供相手に性行為だなんて、頭がどうかしているんじゃないだろうか。
  できれば食事中に聞きたい話ではなかった。

「違うでしょ、せわし子」

  カウンターの隅に腰かけていた片眼鏡(モノクル)を掛けた女性が訂正を入れる。
  彼女はこの『プリンス』の常連客という設定のNPC、それ以外は不明だが、その胸は豊満であった。

「ごめんね、ウェイバーくん。この子ったらそそっかしくて。正しくは、幼稚園の近くで暴漢が出た事件、ね」

「あれ、そうだっけ?」

  気恥ずかしそうに鼻の頭をこすりながら笑うマスター。
  どこをどう聞き違えればそうなるのかは分からないが、まあ、マスターはそういう人だから仕方ない。
  それよりも、今重視すべきは。

「暴漢、ですか?」

「ふたば幼稚園の近くで悲鳴が聞こえたって通報があって、駆けつけた警察官が見つけたらしいわよ」

「見つけた、って……なにを?」

「……これも、あまりお昼時にする話じゃないわね」

  モノクルの女性がコーヒーのおかわりを頼み、マスターが「濃いのいっぱーい!」と言いながら店の奥へと消えていく。
  つまり、こちらもなにやら血生臭い話と言う事か。

「血生臭いっていうよりは……SF、かしら」

「はぁ?」

「確かに悲鳴が聞こえた。そして警察官が駆けつける瞬間までその倉庫のドアは開かなかった。
 でも、中で見つかったのは……人間のものではない体液データだったそうよ」

  食事を運ぶ手を止めて考える。  
  『人間ではない』というNPCらしからぬ存在。
  もしかして他参加者の使い魔か、それともキャスターのクラスが生み出した魔物か。
  しかも『体液データ』しか残っていないという現状。
  闘争か、それとも暗殺か。
  いずれにせよ、その場所で聖杯戦争に関わる何かが起こった可能性がある。
  本戦が始まってどれくらい経つのかは分からないが(自分の英霊以外に)好戦的な主従が居る。
  これはその確固たる証拠となりえるかもしれない。

  ふたば幼稚園。
  たしかB-4にある幼稚園がそんな名前だったはずだ。
  この後も結構時間があるし、他の組の動向を探る意味合いも兼ねて向かってみるのもいいかもしれない。

  この時ウェイバー・ベルベットはひとつミスを犯していた。
  それはいくら声に出さずに考えようが、その内容を知りえる人物が一人だけ居るということ。


(バーサーカー、今後の方針だけどな。まずはふたば幼稚園に向かおうと思う)

  表向きはにこやかに常連客NPCと会話をしながら、彼女にバレないように念話で語りかける。

(幸いここからふたば幼稚園は結構近い。歩いてもそうかからないだろう。
 だから、今からふたば幼稚園の近くまで行って現場に残ってるであろう『キャスター』の魔力の残滓を採取する。
 ……言っておくが、長居も周辺探索もしないぞ。今回はあくまで『キャスター』の根城を暴くための材料を集めに行くだけで……)

  そこで気が付いた。
  茶々が入ってこない。それどころか返事もない。

「はーい、もり子ちゃん、濃いの持ってきたよー! ……あれ、ウェイバーくん、あの被ってる人帰っちゃったの?」

  振り向く。
  居ない。さっきまで居たはずのバーサーカーが。
  静かに料理を食べていたこともあり、油断していた。
  反省して言うことを大人しくしていると思っていた。
  更に言えば魔力を大きく消費して疲弊していて注意力が欠けていた。

  空気を読むとか、反省とか、こっちを労わるとか、そんなことありえない。
  『そういう奴』なのだ、バーサーカーは。

(勝手に行きやがったあの馬鹿ぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!)

  彼はまた頭をガシガシと乱雑に掻き毟る。
  そして御代の1000円を置いて、食べかけのポトフをそのままに『プリンス』から飛び出した。


  ◆  ◆  ◆


  野原しんのすけは道を歩いていた。
  ふたば幼稚園からはだいぶ離れた場所。
  地図上で言えばちょうどB-3・B-4・C-3・C-4の境目あたりの道を。
  ルーラー探しと称してこのあたりを目指したのに、特に理由はない。
  しいて理由を挙げるとするならば、『魔法使いのおねいさんは自分の知らない場所に居そうだったから』だ。
  幼稚園・デパート・自宅の移動を繰り返すNPC時代をすごしていたしんのすけにとって、そこはまさに見知らぬ地だった。

「んー、こんなことならみんなで来ればよかったかも」

  別に寂しいわけじゃない。
  この新鮮な感動をかすかべ防衛隊のみんなと分け合いたかったのだ。
  目に映る全てが真新しい。
  大きな音を立てて動くビル解体用の重機も。
  都心部から離れて人通りと建物が少なくなった道も。
  粗末な道の草すらおたからに見えてくる。

「お?」

  そんなしんのすけの目の前を、ひらひらと大きな蝶が通り過ぎる。
  その大きさたるや、しんのすけの両手よりもずっと大きいほどだ。

「おー!!」

  まるで魅せられたようにふらふらとその蝶を追っていく。
  蝶は吸い込まれるように路地裏に消える。
  当然追いかける。
  追いかけて、しんのすけも路地裏に入り込む。

「おお、魔法使いのおねいさん!!」

  するとなんと薄暗い路地の向こうに、蝶と戯れる魔法使いのおねいさんが居た。
  もしかして、あの蝶も魔法なのだろうか。
  そんな疑問を抱きながらも、ようやく見つけたお目当ての人物に駆け寄る。

「おねいさああああああ」

  そして、転んだ。

「あああんっ!? いたたたた……もう、なんだー、あぶないなあ」

  躓いた何かを確認するために振り向くと、そこには地面から二本の『手』が生えていた。
  その手が、片方ずつ、しんのすけの両足を握り締めていたのだ。

「な」

  『んで、手が』と言おうとした。
  しかし声が出ない。
  苦しい。息が出来ない。
  新鮮な空気を求めて喉を掻き毟る。
  なにかロープのような食い込んでいる。


「          」


  助けを求めておねいさんに手を伸ばすが、そこには既に誰も居なかった。
  居るのはしんのすけをこの場所まで誘ったあの大きな蝶だけ。
  大きな蝶が振り返る。
  そこには、蝶の体には不釣合いな『人の面』がくっついていた。

  伸ばした手に黄土色のロープみたいなものが絡まり、腕ごと捻りあげる。
  あまりの激痛に悲鳴を上げようとするが首が絞められていてぐうの音すら出せない。
  そのまま乱暴に身体を捻りあげられ、しんのすけは見た。
  自身を捕らえているそのロープの正体を。

  それは、触手を何本も垂らして壁に張り付いている『大きな目玉』。

  人の顔をした『じんめんちょう』。
  地面から生えた泥づくりの手『マドハンド』。
  しんのすけを締め上げて空から見下ろす『あくまのめだま』。

  オバケだ。オバケの仕業だ。
  ニンジャが言っていたとおり、オバケがしんのすけの前に現れた。
  呼ばなければ。
  でも、声が出ない。
  目がくらくらする。頭がうまく回らない。
  薄れゆく意識の中、彼を呼ぶ。

(助――――――――け――――――)


  願うより早く。
  遠巻きにあざ笑っていたじんめんちょうの顔が上下にズレ、しめやかに雲散霧消する。
  鮮やかな奇襲攻撃。
  意識を失う直前、しんのすけが見たのは―――


  真っ赤な装束。
  オメーンめいたフルフェイスマスク。
  肩に担いだ日本刀。

「昼間っからお盛んだね、俺ちゃんも混ぜてくれよ」


                           ―――殺戮者のエントリーだ!


  ◆  ◆  ◆


  不意にかけられた声に反応してぎょろりと目玉が動く。
  その瞬間目玉が捉えたのは、二振りの日本刀を抜き超至近距離まで迫っている『変質者』の姿だった。
  ┌─────────────────────────────────────────────────────┐
  │ 呼べばくるもんだからな、ヒーローって。ほら、俺ちゃんステキなヒーローだし .│
  └─────────────────────────────────────────────────────┘
  閃光が走り、しんのすけを捕らえていた触手と腕が全て切断される。
  空中に投げ出されたしんのすけを器用にキャッチし、鮮やかに着地を決める。


「ハロー、『ミスターポテトヘッド』。なに、映画が違う? こいつもジャガイモ頭って呼ばれてただろ、確か。だったよな、『しんちゃん』?」

「ヒュー……ヒ……ヒュー……」


  飄々と声を掛けるが答えはない。
  返ってくるのはひとしきり首を絞められた後の呼吸、とでも言ったところか。喉から搾り出すような呼吸だけ。
  意識も既に飛んでいるらしい、目の焦点が合っていない。
  バーサーカーはわざとらしく優しいタッチで彼の首に巻きついたままの触手をひっぺがし、開きっぱなしの瞼を伏せた。


「ったく、子供相手にここまでするか、このヒトデナシ!! ヒトじゃないって? そういえば妙に丸っこいな。
  そういえばオタク、もしかしてスマブラの最新作出てた? どこかで見た覚えがあんだけど、もしかしてあれアンタ? やっぱスマブラはダメだな、時代はマブカプだわ」

  口から放たれるのは意味の分からない言葉の羅列。
  悪魔の目玉の目が細くなり、乱入者を睨み付ける。
  すると地面に隠れていたマドハンドが次から次に生えてきた。

  ┌───────────────────────────────────────────────┐
  │ やっぱスマブラのキャラか。ああいうのがラスボスだったろ、スマブラ
  └───────────────────────────────────────────────┘
                       ┌────────────────────────────────┐
                       ┃人違い、いや『手』違いだからやめてさしあげろ┃
                       └────────────────────────────────┘
  ┌───────────────────────────────────────┐
  ┃ 手違い? またお役所のミスか? まじめに仕事しろよな
  └───────────────────────────────────────┘

  手はしんのすけを捕まえた時よりもその数を増し、バーサーカーを取り囲んだ。
  バーサーカーは深く腰を下ろしたニンジャめいた姿勢を取り、周囲を見渡す。

  無数の手、音を立てて組みあがっていく岩石、少し離れた場所で睨みを効かせる目玉。そして……
  全てに睨みを効かせた後に、見栄を切るようにこう叫ぶ。

「さあてそれじゃあ……キャストも集まったみたいだし、俺ちゃん・オン・ステージだ!」

  バーサーカーは不適に笑うと、しんのすけを天高くに放り投げる。
  それを合図とばかりに、モンスターは一斉にバーサーカーに飛び掛った。


                       まもののむれ が あらわれた ▽


「一面手だらけとかセンスがねぇな。こんなの見て喜ぶのなんてお手手の大好きな殺人鬼くらいだぜ。
 そんな殺人鬼が居るのかって? 待ってろ、あとで調べる」


  右足で踏み込み、右の一振り。
  白刃が煌き三体のマドハンドを切り捨てる。
  返す刀でさらに二体のマドハンドを切り捨て、体をねじって次の敵を捕捉。


「俺ちゃんなら鼻を咲かすね。まさに一面のおハナ畑! ハナミズ集めにミツバチが寄ってくんのよ!
  ひどい花粉症のアナタにオススメ! 俺ちゃんは近寄るのすらお断りだがね」


  左足で踏み込み、次いで左の一振り。
  振りぬかれた日本刀が手首の位置を滑り、四体のマドハンドを切り捨てる。
  さらにねじった体を戻す勢いで右の刀をがむしゃらに振り、しんのすけに伸ばされていたあくまのめだまの触手を切り伏せる。


「よく思うんだけど、手が勝手に走ってきたからってそんなに怖いもんか?
  アダムズ・ファミリーなんかで見るたびに踏み潰しゃあ終わりじゃんかって思うのよ、俺ちゃん」


  落ちてきたしんのすけをキャッチ、再び上空に放り投げてから右と左の刀で十字の追撃。
  いつの間にか増えていた石造みたいなのをまるでバターでも切るように軽く切り裂き、細切れにする。


「ん、今なんか別のもん斬らなかったか? うわ、すっごい気になる!
  こういうことがあるから人外戦で刀使うのはダメだな。手間もかかるし。やっぱちゃんと目を見てブチ殺さなきゃ」


  そして最後にどこからともなくミニガンを取り出して。


「じゃあ目と目を合わせて元気よく!!! ハイ、サヨナラ―――ッ!!!」


  手当たり次第に弾をばら撒いた。

  生き残っていたマドハンドは弾丸の一撃によって爆散し。
  マドハンドが呼び出したもう一体の『うごくせきぞう』も体中にしこたま弾を受けて原型をとどめず崩れ去り。
  その他無造作に撒き散らされた弾丸の数々がガラスを割り、コンクリートを砕き、布を切り裂き、液体を飛び散らせる。


「モンスターちゃんたちに俺ちゃんの目線はちょっと刺激が強すぎたかしらァん」


  気味の悪いしなを作り、ドドメ色のハートマークをばら撒きながらぶりぶりとケツを振ってみせる。
  その様はまさに異様としか言いようがなかった。

  ┌────────────────────────────────────────────────────────────────────┐
  ┃ 『いよう』としか言『いよう』がない? うん、悪くないジョークじゃん。かなり大爆笑。      ┃
  ┃ クソの上にクソを塗ってそれを皿の上に盛った料理みたいな素敵なジョーク。家族に教えてやんなよ。
  └────────────────────────────────────────────────────────────────────┘

  時間にして数十秒。
  それだけの間で、あくまのめだまに与えられていた『野原しんのすけを確実に殺すためのモンスターの群れ』はほぼ壊滅した。


  ミニガンの掃射で傷ついた体を引き摺りながら、悪魔の目玉は逃げ出した。

  聞いてない。
  聞いてない。
  聞いてない。
  こんな奴がいるなんて聞いてない。
  あの悪魔めいたニンジャが居ないのを見計らって仕掛けたのに。
  なんでこんな邪魔が入る。
  わからない。
  わからない。
  わからない。

  しかし、今の映像は確かに、『あのお方』に伝わったはずだ。
  すぐに助けが来るだろう。
  あの忌々しい覆面男も、忌々しいニンジャも、増援が来ればそれまでだ。

  悪魔の目玉はその体をビルとビルの間に身を隠そうとする。

「ハローハロー、俺ちゃんから目玉ちゃんへ、応答願います。システムオールグリーン、ただしお先は真っ暗」


                  しかし まわりこまれてしまった ▽


  悪魔の目玉の身体が浮き上がる。
  彼の大きな瞳に映るのは、覆面越しでも分かるほどの満面の笑みを浮かべた『狂戦士』。

「え、もしかして映ってる? 今生放送中? なんだよそれなら早く言ってくれよ。
  そうすれば俺ちゃんもっとおめかししてきたのに、ほら、今は目のまわりにデカいクマができちゃってるだろ?」

  悪魔の目玉を捕まえて、無理やり目をこじ開けて覗き込み。
  あれやこれやと言いながらくるくると目の周りを指差してみせるデッドプール。
  しかし彼が『クマ』といって指差した部分は、確かに黒いがどう見ても模様である。

「『どう見ても模様である』とか言うなよ、ジョークの通じない奴だな。イエーイ、ケーブル見ってるぅー?
  俺ちゃんしばらく帰んないからなー! あれ、これアメリカにも電波飛んでんの? まああいつなんか目が光ってるし見えてるか」

  かっこいい角度で顔を映してみたり、にこやかに笑いかけてみたり、中指を突き立ててみたり。
  くるくると表情を変えながらその場に居ない『ケーブル』に語りかける。

  その一連の言動と行動に悪魔の目玉は戦慄した。
  なぜかは分からないが、この男は知っている。
  『悪魔の目玉』が別の場所に映像を送っていることに気づいている。
  ボロは出していないはずなのにどうして。
  分からない。
  分からない。
  分からない。


「あ、それと」


  突然思い出したように、目玉のこめかみにあたる場所に銃口を突きつける。
  ちょうどのタイミング、ちょうどの位置に落下してきたしんのすけを抱きとめて。
  ケーブルではない、悪魔の目玉の『先』に居る誰かにこう叩きつけた。


「えー、エヘンオホン。いいところですが本日の放送はここで打ち切りとさせていただきます。
      ご視聴ありがとよクソッタレ
  『FUCK YOU VERY MUCH FOR SEEING』だ、オメメの向こうのデバガメちゃん」


  悪魔の目玉が何かいいたげに目を大きく見開いたが、それ以上のことはなにもおこらなかった。
  なぜなら、悪魔の目玉が何かを伝えるよりも早く、悪魔の目玉はその生命活動を終えていたのだから。


「続きは地獄で! 今すぐアクセス!!」


  銃声が響き渡り、飛び散った悪魔の目玉の体液がデッドプールのスーツを少しだけ汚した。


  ◆  ◆  ◆


  重機の音に紛れて届く火薬の破裂音をウェイバーは聞き逃さなかった。
  音は近い、おそらくどこか、人目につかない場所で発砲があった。
  銃を抜いたのは、十中八九バーサーカーだ。

  そして見つけた。二階建ての貸し店舗と貸し店舗の間に出来ている少し大きな路地裏の道。
  意を決して飛び込むと、そこには惨状が広がっていた。
  壁には真新しい銃痕、飛び散る瓦礫と泥、そしてぶちまけられた謎の液体と、その前で子供を抱いて立っている自身の英霊・バーサーカー。

  先ほど聞いた『幼稚園児に強姦事件』という単語がウェイバーの頭をよぎる。
  あわててバーサーカーが抱いている幼児をひったくった。
  喉には紐で締めたような跡がくっきりと残っており、呼吸も安定していない。意識も飛んでいるようだ。
  一目で分かる。誰かにきつく首を絞められた後だ。

「バーサーカー、お、お前……お前まさか!!」

「いやいや、ねーから。俺ちゃんだったら首ごとスパッといっちゃうし」

  確かにそうだ。このバーサーカーならこんなまどろっこしいことはしない。
  NPCを殺すにしても、きっと武器を使うはずだ。
  実際ドンパチした痕がそこかしこに残っている。この少年だけ首を絞めるなんておかしい。
  では、誰が? それよりもバーサーカーは『何と』戦っていた?

「イヤ―――――――!!!!」

  ウェイバーの思考を遮る様に、路地裏に響く謎の掛け声。
  同時にデッドプールの右半身に突き刺さる無数の金属。

「ア、アイエェェェェ……」

  思わずよろけたデッドプールの、今度は正面に無数の金属が突き刺さり、彼はたちまち剣山めいたオブジェと成り果てる。
  大きな音を立てて巨体が沈む。
  思わず抱えていた幼児を力強く抱きしめ、声の主のほうに目をやる。

  そこに立っていたのは……なんと、ニンジャ。

  赤黒い衣装。
  『忍』『殺』と書かれたメンポで隠された口元。
  唯一伺えるのは猛禽のごとく鋭い眼光。

  そして、ウェイバーだから知りえた最後のひとつ。
  彼の体に浮かび上がって見える、サーヴァントとしての存在を示すステータス。

  更なる殺戮者のエントリーだ!


  ◆  ◆  ◆


「おい、おいバーサーカー!? 嘘だろ!?」

  幼児を抱きしめたままバーサーカーへと駆け寄る。
  ウェイバーの見たところ、全てのスリケンが人体の急所に深々と突き刺さっている。
  その腕前実際見事と言う他ない。
  これが並のサーヴァントであったならこの場でしめやかに爆発四散、マスターもその存在を雲散霧消させていたことだろう。しかし、今回は相手が悪かった。

「なんちって! 今の絶対ニンジャだろ、汚いなさすがニンジャきたない」

  バーサーカーは持ち前のヒーリングファクターだけですでに無駄口を叩けるまでに回復していた。
  刺さったスリケンを抜きながら悪態をつくバーサーカーをにらみ付け、アサシンは姿勢を正した。
  アイサツなしでの奇襲攻撃(アンブッシュ)はスゴイ・シツレイに値する。二度続ければ最早人じゃない。
  アサシンは、立ち上がったバーサーカーに対して両手を合わせ、深々と頭を下げる。

「ドーモ、バーサーカー=サン。アサシンです」

「はいはいハロー、コニーチハー、チャオ、いきなりなアイサツドーモ。バーサーカーちゃんです」

「サーヴァント死すべし。慈悲はない」

「お、分かりやすいね。ただ勘違いしてるみたいだから俺ちゃんがもっとわかりやすく教えてやるよ。
おれちゃん、つよいでちゅ。ニンジャちゃんじゃ、かないまちぇん、理解できりゅ?」

  アサシンの姿が眩み、バーサーカーが構える。決闘の始まりだ。

「イヤー!」

  掛け声とともに再び無数のスリケンがバーサーカーに向けて投げられる。
  しかしくると分かっている攻撃を受けてやるほどバーサーカーもやさしくない。

「俺ちゃんが思うに理想の飛び道具ってのは、キナ臭くて、カッコよくて、ミンチ作るのに役立つもんなのよね。こんな風にさ!」

    BANG!!    BANG!!    BANG!!

  飛来する無数のスリケンのうち致命傷たりえるものだけを的確に打ち落とし、さらにアサシンの姿を追いながら銃を乱射する。
  体の末端に刺さるスリケンは全てノーガードでニンジャを追うさまはまさにズンビー映画のラスト・ボス、狂気じみている! コワイ!

「お、じゃあ俺ちゃん主役で『NIGHT OF THE LIVING DEADPOOL』ってタイトルの映画作ってもらっちゃう? ヒーローたちが殺しても殺しても蘇って追いかけてくる俺ちゃんに失禁しながら逃げ惑う映画!」

  へらへら笑いながらハンドガンを放り投げ、先ほどのミニガンに持ち替える。
  物量にはそれを上回る物量で、ということらしい。
  ガガガガガガガガ、という耳を劈かんばかりの音を引き連れて、アサシンが走る一歩後ろに執念深い毒蛇のような弾痕が刻まれていく。

((……フジキドよ……奴はおそらく無数の『アンキ』を持つ『フジミニンジャ』だ……グググ……))

  アサシンの中に潜む、『宝具』の声。
  まるで地獄の底から響くような不気味な声が、アサシンの脳内に木霊する。

((……スシでカラテの回復を図ったつもりだろうが……オヌシのカラテはあの小僧に依存している……回復など微々たる物だ……
  ……かといっていまさらカラテ不足に焦り、急いて倒せる相手でもなし……だというのに勝負を急くその姿……愚かなものよ……
  今の貴様の非力なカラテで、あのニンジャとまともにやりあっても勝てる道理なぞない))

  いつまでも倒れず、いつまで続くかも分からない程に撃ち続ける敵。
  対してこちらは限度に近づきつつあるカラテを切り崩し使い続けている。
  いくら燃費が良くても、相手のカラテがその限界をはるかに上回っていればこちらが負けるのみ。
  さらにアサシンにはさっさと勝負を決めなければならない理由もある。

((取るべき策は限られている……肉薄して、自由を奪い、敵が万全の力を出せぬうちにスレイし、あの餓鬼を連れて撤退するべし……もしくは、儂と代わるべし……
  いくらフジミ・ジツがカラテを多く利用するからといって、今の貴様では奴を殺しきれん……撤退か、儂と代わるかだ))

  その言葉に答えるように、アサシンはニンジャ身体能力で一気に間合いを詰めた。

「Wasshoi!!!」

  カラテの一撃が弾を吐き散らす銃口を切り落とす。
  バーサーカーはアサシンがそう動くことを事前に察していたように、すでにミニガンを手放していた。
  彼の両手は、背中の一対の刀を掴んでいる。

「ダンスパーティの始まりだ。エスコートしてやるよ、ニンジャちゃん」

  両の刀がアサシンに向かって振るわれる。アサシンはこれに自前のカラテを込めた拳で迎撃。

「イヤー!」
「ムウー!」

  一合切り結ぶ。
  ニンジャの研ぎ澄まされたカラテがバーサーカーの右の日本刀を弾き飛ばす!

「イヤー!!」
「ムウー!!」

  一合切り結ぶ。
  ニンジャの研ぎ澄まされたカラテがバーサーカーの左の日本刀を弾き飛ばす!

「イヤー!!!」

  すかさず追撃のポンパンチ。               テレポーテーション
  しかしパンチの軌道の先から突如バーサーカーが消える。『ウツセミ・ジツ』だ。
  アサシンは血中のカラテを巡らせて消えたバーサーカーの気配を追う。ニンジャ的シックスセンスが知らせる敵の位置は。
  ニンジャの……………………上空!

「ついに登場ライフゲェェェェェ―――ジ!!!!」

  バーサーカーはどこからか取り出した棒っきれを振りかぶっている。
  一見鈍器のようですらあり、薄い刃物のようですらある棒っきれ。
  アサシンはそのニンジャ特有の身体能力で後ろに大きく跳び退り、迎え撃つべくジュー・ジツの構えを取った。
  風切り音が鳴り、モーター・スイシャめいた高速回転をしながら棒っきれが飛んでくる。
  血中カラテを腕に集中させ、飛んできた棒を叩き落とす。

「グ……」

  その威力たるや、なんたる威力! アサシンほどのカラテの精通者、タツジン級のジュー・ジツを持ってしっても衝撃をすべて殺しきれなかった。
  いなしきったはずの左手が痛む。まともに受けていれば身体が両断されていたのではなかろうか。
  見ればバーサーカーは地面(正しくは地面によく似た別のどこか)から似たような形の棒っきれを取り出して振りかぶっていた。
  とっさに3LEVELと書かれた切っ先を拳で弾き、現れた新たな二つの武器に警戒して間合いを計る。

「イヤー! イヤー!! イヤー!!!」

  掛け声とともにスリケンが宙を舞い、バーサーカーに向かう。
  十か、百か、それとも千か、それこそ無数のスリケンによる弾幕。実際凄い。
  しかし迎え撃つバーサーカーも伊達じゃない。
  地面に突き刺さっていた上空から取り出したほうの棒っきれを広い上げ、二つの棒でさながら二刀流。
  その二刀を持って自身とウェイバーに向かっていた全てのスリケンを叩き落した。

「今回のゲージ脆すぎんだろ、スタッフ手ぇ抜いてんじゃねえのか!」

  バーサーカーが誰ともささずに文句を言う。
  バーサーカーがゲージと呼んだ棒はポンパンチの一撃とスリケンの衝撃であわれ見事にひしゃげてしまっていた。
  しかし省みることなくその二本のゲージをアサシンに向かって、そのヤバイ級の膂力で放り投げる。
  流石のアサシンもバーサーカーの全力投擲は避けるのだけでセイッパイ。
  かといって下手に避け、敵との距離を取りすぎればバーサーカーの手数に押されてジリー・プアー。
  ならば、先の一投のようにジュー・ジツで受けるか。

((莫迦め……先ほどとは違い安定した姿勢から繰り出された上に、放たれたゲージ・カラテは倍の二本。
  下手に受ければ致命傷を受けることになる……カラテ不足に加えて手傷を負ったオヌシなぞ、狂戦士からすればそれこそベイビー・サブミッション……
  フジキド、オヌシが取るべき行動はただ一つ……そのカラテの全てを持って、避け、撃ち、スレイしかない……))

  忌まわしき助言。しかし窮地を脱するためには従わざるを得ない。

  アサシンは跳躍する。
  後方へ距離を取るでもなく、側方へ間合いを維持するでもなく。
  前方、バーサーカーとの間合いを詰め、一気に必殺の一撃を叩き込むために。

「イヤ―――――――――!!!!!」

  アサシンが繰り出すは、いつものバック転ではなく前方宙返りから雪崩式に足を振り下ろす変則サマーソルトキック。数々のニンジャをスレイしてきたヒサツ・ワザ。

「SHOOORYUUUKEEEEEEENNNN!!!!!」

  対してバーサーカーはやはり『読んでいた』とばかりに対空技、『SHORYUKEN』でアサシンを迎え撃つ。

  拳と蹴りが交錯し、永遠とも思える刹那が到来する。
  勝ったのは……

「お、お、お!?」

  バーサーカーの腕がカラテによって傷だらけのボロ雑巾に変わった。
  さしものバーサーカーでもヒサツ・ワザは受け切れなかったらしい。

((グググ……無様なことよ……利き手を奪うだけでこれほどまで苦戦するとは……
  しかし、敵は『フジミ・ジツ』の使い手……これを逃せば生き延びる術はなくなる……迅速、確実、スレイするのだ、フジキド……))

「イヤー!!!」

「アバー!!!!」

  体勢を立て直し、繰り出されるは必殺のポンパンチ!!
  右の拳がバーサーカーの頭をスイカ割りのスイカよろしくぶち割った。

  血液と脳みそと脳しょうでブレンドされたミックスジュースが飛び散りあたりを汚し。
  あまりのグロテスクさにか、ウェイバーが抱えていたしんのすけを落とし、心臓を押さえてその場にへたり込む。

  ニンジャは殺した。フジミの英霊を。その拳で。
  急いでしんのすけの方へ向かおうとするアサシンの右手を、更に大きな手が掴む。
  振り向けばそこには、既に顔の半分を復活させたバーサーカーの姿があった。

((……グググ……なんたる早さ……フジミなどという姑息なジツに頼っておっても、英霊として呼ばれる程というわけか……))

「言ったろ……殺しても殺しても死なない俺ちゃんが、ヒーローを追い詰めるってよ。せいぜい失禁しながら逃げ惑いな」

  復活したバーサーカーの顔は、笑っている。
  死ぬほどの一撃を喰らってなお笑っている。

((フジキド……もはや一刻の猶予もない……生き延びたいのであれば、すぐに代わるのだ……))

「イヤー!!!」

  掴まれた右手の変わりに、今度は左手で攻撃を放つ。
  しかし、バーサーカーはこれをなんなく捕らえる。

「オイオイ、これ以上顔面ブチ撒けたらイケメンになっちゃうだろ」

  だがアサシンはとまらない。
  さらに頭突きをバーサーカーに叩き込む。
  バーサーカーの身体が揺れる。ダメージは通っている。
  すかさず今度は蹴りを叩き込み、腕の力が緩んだのを確認してさらに追撃のためにジュー・ジツの構えをとったその瞬間。
  ぽすっと間抜けな音が、アサシンの足元からあがった。


「ああ、馬鹿!!」


  ウェイバーの素っ頓狂な叫び声が木霊する。
  アサシンは何事かと見下ろして、愕然とした。
  気絶していたはずのしんのすけが起き上がり、駆け寄り、アサシンの足元に抱きついていたのだ。


「ひどいぞ、おじさん!」


  力強い眼差しを、アサシンの方へ向けて。

「そのおじさんはニンジャのおじさんのおなかまなのに、なんでいじめるの!?」

  突然の一言。アサシンの予想だにしていなかった……いや、予想できていた、一番来てほしくなかった一言。

「……しんのすけよ、私に仲間は居ない。そいつは、敵だ。敵は、倒さねばならぬ」

「そんなわけない、敵なんかじゃないぞ!!!」

  しかししんのすけは頑として退かない。
  なにが彼の論を裏付けるのか、しんのすけは殺気溢れるアサシンを前にしてもなお持論を曲げなかった。

「だって、ニンジャのおじさんみたいな変なお面つけてるし、変な字も見えるし!!」

  ┌─────────────────────────────────────────────┐
  ┃ 変とは失礼だな、俺ちゃんの一張羅に向かって……変質者っぽい?
  ┃ むしろこれを取ったほうがシツレイな顔ってよく言われるんだよ。
  └─────────────────────────────────────────────┘
  字、とはきっとステータスのことだろう。
  成程確かに敵もサーヴァント、しんのすけの目を通せばステータスは確認できるはずだ。


「それに呼んでないけど来てくれて、オラをおばけから助けてくれたもん!!」


  アサシンは言った。
  ニンジャは呼べばくる。
  ニンジャはオバケから助けてくれる。

  アサシンは見ていた。バーサーカーの戦いの一部始終を。
  バーサーカーは、誰とも知れぬしんのすけのためにその力を振るった。
  先刻のアサシンよりも激しく、そして分かりやすく。
  ならば、しんのすけにとっては、彼のバーサーカーも。


「だからこのおじさんだって、ニンジャのおじさんと同じ!
 おじさんとは別のニンジャかもだけど、おなかまのヒーローなんだぞ!!!」


  しんのすけはまだ五歳児だから。
  いや、五歳児だからこそ。
  善悪をしっかりと判別し、善悪で敵・味方を判断した。
  自身を襲った悪魔の目玉たちは悪であり敵。
  自身を救ったアサシンとバーサーカーは善であり味方。
  善と善とは友達同士であり、共に悪を撃ち滅ぼす仲間だと。

  五歳児らしい純粋な心からの判断。
  それは悪いことではない。むしろとても善い心の持ち主だといえる。
  彼の純粋無垢な心を誰が笑えようか。
  彼の正義を誰がけなせようか。
  その純粋さは間違ってなどいない。
  それが否定されるのであれば、きっと世界が間違っている。

  だが、世界は間違いだらけだ。

  ヒーローは悪とは戦わない。善は悪を挫かない。
  強きはますます増徴し、弱気は虐げられてもなお黙って道を譲るしかない。
  正義と正義は敵対する。悪は正義を利用する。
  なんとマッポーめいた世よ。
  ショッギョ・ムッジョ。おお、ゴウランガ。ゴウランガ。

「……しんのすけ」

  ジュー・ジツの構えを解かず、アサシンは再びその言葉を口にする。

「……そいつらは、敵だ……そして」

「私はヒーローではないのだ」


  ◆  ◆  ◆


  話はアサシンがスシで魔力回復を行い、しめやかに霊体化した後まで遡る。


  霊体化して護衛を行っていた彼は、しんのすけに近づく影を見逃さなかった。

  しんのすけから離れた位置に居る、肩口まで伸びた髪を揺らしながら走る青年。
  その青年が向かう方向にある主要な建物は、『ふたば幼稚園』。
  右手には赤黒い紋様。主の持つものと同じ『令呪』。

  アサシンのニンジャ観察力がはじき出した答えは、『その青年もマスターであり、なんらかの方法で自身やしんのすけのことを知った可能性がある』だった。
  その考えにたどり着いた彼のその後の行動は早かった。
  躊躇する必要はない。この場でかのマスターを一投のもとにスレイする。
  数秒で終わる。数秒で一騎を減らし、しんのすけを護る。
  アサシンはその数秒のために、しんのすけから目を離した。


―――その人物に、数秒ではあるが気を取られてしまったこと。
     自身も用いていた『霊体化』を他サーヴァントが用いることを失念していたこと。
     しんのすけに『しんのすけが狙われている』ということを伝えなかったこと。
     それこそが此度のニンジャの不覚―――


  付き合いの短いアサシンが知らなくても当然のことであるが、野原しんのすけから数秒目を離すということは大変危険なのである。
  数秒あれば問題を起こし、数分あれば世間を揺るがし、二時間あれば世界を救う。それが野原しんのすけだ。
  今回その数秒でなにが起こったかは、いまさら語るまでもないだろう。

  アサシンはカラテを操り、スリケンを作り上げる。  
  すわ放らんと構えた瞬間、心の中でニンジャを呼ぶしんのすけの小さな声が聞こえた。
  すぐさま引き返し、彼の声を頼りに例の路地裏に飛び込む。


  するとそこには、しんのすけを抱きかかえた見知らぬサーヴァントが立っていた。
  真っ赤な装束。
  オメーンめいたフルフェイスマスク。
  背中には二つの日本刀。

  無数の手、音を立てて組みあがっていく岩石、離れた場所で睨みを効かせる目玉。そして、助けに来たニンジャ。
  全てに睨みを効かせた後に、見栄を切るようにこう叫ぶ。

「さあてそれじゃあ……キャストも集まったみたいだし、俺ちゃん・オン・ステージだ!」

  サーヴァントは不適に笑うと、しんのすけを天高くに放り投げる。
  それを合図とばかりに、モンスターは一斉にバーサーカーに飛び掛った。

  その人物こそ、件のバーサーカー。
  そしてこれこそが、バーサーカーとアサシンとの初対面である。

  謎のサーヴァントは実際見事にモンスターを撃退した。
  付きまとっていた悪魔の目玉も殺した。
  地上に生えていた腕の数々も殺した。
  動き回る石像も殺した。

  そして、アサシンがスレイしようとしていたマスターと合流。
  彼がその名を呼んだことでサーヴァントのクラスが判明する。
  バーサーカー、『狂戦士』のサーヴァント。
  理性を廃して超火力を得る、暴力の化身。
  それが何故か誰に言われるでもなくしんのすけを守った。少なくともフジキドにはそう見えた。
  もしかしたら、善良なマスター・善良なサーヴァントなのかもしれない。



(しかし、敵だ)



  そう、奴も敵だ。
  サーヴァントはみんな敵だ。
  それを引き連れたマスターも敵だ。
  今はどうあれ、いつかはしんのすけに牙を剥く敵だ。
  生き延びるためには奴らも殺さねばならぬ。

  どれだけいい人間であっても。
  どれだけ気高いな英霊であっても。
  立ちはだかるならば殺さねばならぬ。

  たとえ命の恩人であっても。
  ともに戦った仲間であっても。
  いつかは殺さねばならぬ。
  英霊として呼ばれ、彼を守護ると誓ったのだから。
                         スレイ
  自分の生存のために、彼の未来の為に、敵を全て『殺戮』せねばならぬ。
  それが戦争だ。
  それが戦争なのだ。

  自分のためだけに良い人を殺してまわる。そんな薄汚れた者が、少年のヒーローであっていいものか。
  否、断じて否。
  だからアサシンは否定した。自身が少年の求めるヒーローであるということを否定した。

  しんのすけの身柄がバーサーカーの手からマスターの手へとわたる。
  その瞬間、アサシンは掛け声とともに全力を持ってスリケンを投擲した。
  ヒーローと呼んでくれたしんのすけの心を踏みにじるように、守ってくれた『正義』に暴力で応えた。

  更なる殺戮者のエントリーだ。


   ◆  ◆  ◆


  アサシンはヒーローなんかではない。
  しんのすけを助けるために、しんのすけの正義観を真っ向から否定する者。
  ただの汚いニンジャだ。

  少年のヒーローがこんな薄汚れた殺戮者であっていいはずがない。
  だから、しんのすけが気絶しているうちに勝負を済ませるつもりだった。
  見られてしまったという後悔と、言いようのない無念観がアサシンを包む。
  しかし、アサシンは構えを崩さない。
  彼にとって大事なのは、しんのすけを生き残らせる、それ以外にはないのだから。


「……んいいいいいいい!!!」


  しんのすけは顔を真っ赤にして何か言おうとしたが、考えをうまく言葉に出来なかったらしく、更に顔を真っ赤にして叫んだ。


「おじさんのお馬鹿! なすび!! 分からず屋ぁ!!!」


  そして、痛む体を引きずりながら、そのまま路地から出て行ってしまった。
  無慈悲なニンジャの奥に居る、殺したはずのフジキドの心に傷が増える音が聞こえた。そんな気がした。


「あー、こりゃお開きのパターンだな。はい、じゃあ解散」


  バーサーカーが、アサシンから両手を離してそのままウェイバーの襟を掴んで持ち上げる。
  ┌───────────────────────────────────┐
  ┃ ウェイバーたんって言ったらこの持ち方だよな。  ┃
  ┃ これを常識にした征服王ってやっぱスゲーと思うわ
  └───────────────────────────────────┘
  そしてそのまま背を向けて歩き出した。

「何故退く」

「なんで、って……どうせ途中で切り上げて追っかけるんだろ? だったらやるだけ無駄じゃん。
  流石の俺ちゃんもニンジャに全力で逃げられたら追いようがねーし」
                    ┌─────────────────┐
                    ┃瞬間移動装置があるだろ ┃
                    └─────────────────┘
  ┌──────────────────┐
  ┃ 電池が切れたら困るだろ .┃
  └──────────────────┘
  アサシンの行動を見透かしたような一言。
  まるで思考を先回りされているような、そんな感覚だ。
  悔しいが、その通りだ。
  このままバーサーカーが戦闘を続けていても、アサシンはきっと早い段階で逃げていた。
  そしてしんのすけを連れ、バーサーカーの追撃から逃れるために方々を転々としつづけていただろう。

「それに、このままじゃウェイバーたんがヒモノになっちゃうかもしんねーしな」

「……だれのせいだと思ってるんだぁぁぁ……こんの馬鹿サーヴァントぉおおおお!!!!」

  じたばたと暴れるウェイバーをうまく操りながらバーサカーは振り返り。
  いつものようにいやらしい笑顔で

「じゃ、そゆことで」   

  とどこか聞き覚えのある挨拶をして、その場を去った。


  見逃されたのか。それともハナから相手にされていなかったのか。
  相手が言い訳して逃げただけなのか。それは分からない。

  ただ、残ったのは。
  しんのすけの正義を踏みにじったアサシンのみ。
  アサシンはしばしの間沈黙すると大きく息を吸い、駆け出した。しんのすけが向かったほうとは逆の……ウェイバーたちの方へ。



「バーサーカー=サン。そしてウェイバー=サン」

  二人の目の前にアサシンが再び立ちはだかる。
  ウェイバーはとっさに身構えたが、結局その警戒は徒労に終わった。

「二つ、聞いてほしい話がある」


   ◆  ◆  ◆


「実際、ヤバいよなぁ」

  アサシンの話を要約するとこうだ。
  一つ目、B-4地区マンションにキャスターが陣地を構成中。
  ウェイバーが駆けつけた時そこら中に散らばっていた泥や岩はそのモンスターの亡骸。
  他にも『遠くの映像を監視できる目玉』『つぶれ饅頭めいた見た目の魔術師モンスター』『槍を構えた獣人』などが居るらしい。
  路地裏の惨状を見るに、かなりの量を生み出せているらしい。

  ウェイバーは考える。
  キャスターのクラスは『陣地を構成すればするほど強力になっていく』特性を持っている。
  その陣地の成果でモンスターが生まれたって言うんなら、そのキャスターの宝具はまず『モンスターの量産』だろう。
  そして種類の多さを考えれば、生み出せる種類はどんどん増えていく。だから実際には『多種多様なモンスターの各個量産』といったところか。
  陣地が強固になれば強力になるって定説を使うのであれば、後から生まれてくるモンスターは今生まれているモンスターより断然強いだろう。
  ならば、やはりB-4のキャスターも例に漏れず、早いうちに潰しておかなければ手に負えないようになるはずだ。

「アレってやっぱバーン様のモンスターだったのね。まあ俺ちゃんはゾーマ様派だけど」

  バーサーカーはいつもどおり意味の分からないことを言っている。いつもどおりだし放っておいた。
  さしあたって、ウェイバーの新しい頭痛の種は二つだ。
  一つは街中に蔓延っているであろうモンスター。
  悪魔の目玉での監視や、鬼面導師での洗脳なんてことをやってのけるモンスター軍団だ。
  透明になって後ろから殴ってきたり、空の上から攻撃してきたり、落し物だと思ったらそれがモンスターだったり、さらに言えば知人だと思ったらそれがモンスターだったりなんていうのもありえるかもしれない。
  ……いや、最後は流石に飛躍しすぎだが。
  早いうちにそのモンスターの対策を立てる必要がある。

「いや、対策立てる必要なくないか?」

「は? なんでだよ」

「だってモンスター倒すとレベルアップして体力とか回復するんだぜ? 多く出てくれたほうがうれしいじゃん」

「……んなアホなことがあるかよ」

  ちなみに、このバーサーカーの一言。実は結構的を射ている。
  キャスターによって生み出されたモンスターは姿かたちは色々あるが、その体を作っている物は『魔力』である。
  つまり、純粋な魔力生物であるため、NPCよりも『魂喰い』目的で殺害したときのリターンは大きい。
  実際、バーサーカーはまもののむれ討伐で結構魔力を回復していた。
  さらに大規模な『魂喰い』と違ってルーラーからも咎められる心配がない。むしろ推奨すらされるだろう。
  もっとも、ウェイバーはこの話をいつもどおり話半分で聞いていたため、信じてはもらえなかったが。

「それにしても……」

  そして、二つ目の頭痛の種。
  それこそがアサシンが持ちかけた重要な話のもう一つ。


  ◆  ◆  ◆


「バーサーカー=サン」

「私は一両日中にB-4に潜むキャスター=サンをスレイする」

  アサシンが、じっとバーサーカーの方を見つめて語りかける。
  それは、先ほどアサシン自身が『如何に手強いか』を語ったサーヴァントの殺戮計画。


「キャスター=サンは放っておけば手がつけられなくなるだろう。
 バーサーカー=サン、そしてその主たるウェイバー=サン。ともに戦ってくれぬか。
 もし駄目だというなら……その間だけでかまわない。しんのすけを守ってはくれぬか」


  ニンジャの………………提案!
  バーサーカーは耳をほじっている。覆面の上から。


「交換条件として私は……キャスター=サン討伐の後、しんのすけに迷惑がかからない限り、持てる力の全てをもってオヌシたちに協力しよう。
 期限は……参加者が判明した後、その数が半数を下回るまで」


  バーサーカーは鼻をほじっている。覆面の上から。
  しかし、ウェイバーにはこの申し出がとてつもない違和感を孕んだ物に思えた。

「ちょ、ちょっと待てよ!! なんで……なんでいきなり……お前、さっき、敵だって……殺すって言ってたじゃん!! それがなんで、いきなり……」

「しんのすけが、お前を……『ヒーロー』で『オナカマ』と呼んだからだ」

「……それって、どういう……?」

  アサシンは答えない。
  ただ、少し顔を歪めただけだった。

「もしも私を手伝う気があれば……今日の19時にB-4『ふたば幼稚園』で待っている」

  そう言い残してニンジャは消え。
  後に残ったのは、瓦礫の山とウェイバー主従だけとなった。


  ◆  ◆  ◆


  荒れ果てた路地裏。飛び散る破片と体液。
  局地的な嵐が通り過ぎたようなその有様の路地裏を抜け出し、バーサーカーと二人で道を行く。

  ウェイバーには理解できない。
  殺そうとした相手と同盟を組むに至った経緯も。
  アサシンの目指すものも。
  同盟を組むべきかどうかという点も。
  さきほどの言葉の含む意味も。

  『しんのすけが、お前を……『ヒーロー』で『オナカマ』と呼んだからだ』

  それが彼にとって、理性がなく燃費の悪いバーサーカーなどと同盟を結ぶに事足りる理由だったのだろうか。
  そして、分からないといえばもう一つ。



「……なんであいつ、自分のことをヒーローって認めなかったんだ?」

  そんな何気ないウェイバーの問いかけに、バーサーカーは柄にもなく少し考えるそぶりをして

「それが、あいつなりの忠道ってもんなんだろ」

  と、いつになくマジなテンションで呟いた。
  狂ったような笑顔もなければ、放たれ続ける饒舌もない。
  まるで舞台から降りたピエロのような、達観した一言。


「なんだよそれ」

「……『今の』ウェイバー・ベルベットには、まだ早かったかな。この台詞」


  バーサーカーはへらへら笑いながら二歩も三歩も先を歩いていく。

  そのおちゃらけた様子が、ウェイバーには気に食わない。
  いきなりフルネームで呼んだのも気に食わない。
  まるで未来のウェイバーを知っているような物言いが気に食わない。
  そして、何も言い返せない自分が、なんとなく気に食わない。

  ウェイバーはなぜか赤くなった頬を隠すように顔を伏せ、バーサーカーに気づかれないくらい小さな声で

「馬鹿にするなよ」

  そう言うしかなかった。
  二人の間に、しばし沈黙が流れる。




  そして……

「なになに、ウェイバーたんスネてんの? ちょっと今の可愛かったからもっかいやってよ!!
  俺ちゃんちょっと悪魔の目玉借りてくるわ、録画して永久保存版にして結婚式とかで流してやるから!!
  あ、聖杯に戦車男が居たら持ってかえって見せてやるって手もあるな! よし待ってろ、取ってくるついでにビル爆破の英霊連れてってビルごと陣地ぶっ壊してきてやるよ!!」

「わ、馬鹿! なに言ってんだお前!!」

  やはり最後はいつもと変わらなかった。
  アテもクソもない言葉を撒き散らしあれこれのたまうバーサーカー。
  先ほどのシリアスモードはどこへやら、またいつもどおりに戻った彼を律しながら。

「なんなんだよ、ほんとに」

  ウェイバーは再び大きく肩を落とした。
  時計は十二時半前を示している。
  昼食を食べたのが十一時半過ぎだったから、なんだかんだで結構時間を食ってしまったみたいだ。
  でも今からなら、この馬鹿を引き摺りながらでも英会話教室には間に合う。
  考えなければならないことは多々あるが、まずは仕事だ。


「おい、待てよ、待てったら、バーサーカー!!」


  ウェイバーは急ぎ足でバーサーカーを追い抜き、彼の手をとって来た道を帰り始めた。


【C-3 北東/一日目/午後】

【ウェイバー・ベルベット@Fate/zero】
[状態]魔力消費(極大・食事を取って回復中)、心労(中)、腹八分目
[令呪]残り2画
[装備]なし
[道具]仕事道具
[所持金]通勤に困らない程度
[思考・状況]
基本行動方針:現状把握を優先したい
1.バーサーカーの対応を最優先でどうにかするが、これ以上、令呪を使用するのは……
2.アサシン(ニンジャスレイヤー)の申し出はどうするか……
3.B-4地区のキャスター(大魔王バーン)は要警戒。要警戒だぞ! わかってるな、バーサーカー!!
4.バーサーカーはやっぱり理解できない

[備考]
※勤務先の英会話教室は月海原学園の近くにあります。
※シャア・アズナブルの名前はTVか新聞のどちらかで知っていたようです。
※バーサーカー(デッドプール)の情報により、シャアがマスターだと聞かされましたが半信半疑です。
※午前の授業を欠勤しました。他のNPCが代わりに授業を行いました。
※野原しんのすけ組について把握しました。
※アサシンからキャスター(大魔王バーン)とそのマスター(足立)、あくまのめだま・きめんどうし・オーク・マドハンド・うごくせきぞうの外見・能力を聞きました(じんめんちょうについては知りません)
  また、B-4倉庫の一件がきめんどうしをニンジャが倒したときの話だと理解しました。
※キャスター(大魔王バーン)の『陣地構成』を『魔力を元に使い魔(モンスター)の量産を行う場所を生成する』であると推察しています。
  また、『時間が経てば経つほど陣地が杏子になる』というキャスターの性質上、時間経過によってさらに強靭なモンスターが生み出されるのではとも考えています。
  結果としてキャスター(大魔王バーン)を『できる限り早いうちに倒す・陣地を崩す必要がある存在』と認識しました。
※バーサーカーから『モンスターを倒せば魔力が回復する』と聞きましたが半信半疑です。
※アサシンから同盟の誘いを受けました。内容は
  ①アサシンとともにB-4のキャスター(大魔王バーン)討伐を行う。
  ②もしくは、アサシンがキャスター討伐に向かう際にしんのすけの保護をする。
  ③キャスター(大魔王バーン)討伐後、参加者数が半数になるまでアサシンはウェイバー組に協力する。
  です
  この同盟に何かしらの対応をするのであれば、19時にふたば幼稚園に行く必要があります。
※今から何事もなく帰りつけばちゃんと午後の授業には間に合います。
※放送を聞き逃しました。


【バーサーカー(デッドプール)@X-MEN】
[状態]魔力消費(小)、全身にスリケンが突き刺さってできた傷(ほぼ完治)、腕がズタズタ(ほぼ完治)、満腹
[装備]ライフゲージとスパコンゲージ(ひしゃげてるし傷だらけだけどほっときゃそのうち直る)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針: 一応優勝狙いなんだけどウェイバーたんがなぁー
1. やだ……ウェイバーたんの影、薄すぎ……!?
2. このまま乱射男としてデビューしちゃうかな。これってNTRになんの?
3. お、ウェイバーたんそれってネタ振り? 俺ちゃんバーン様よりゾーマ様派だけど、そこまで言うなら頑張っちゃおうかな
[備考]
※真玉橋孝一組、シャア・アズナブル組、野原しんのすけ組を把握しました。
※『機動戦士ガンダム』のファンらしいですが、真相は不明です。嘘の可能性も。
※『クレヨンしんちゃん』を知っているようです。
※モンスターを倒したので魔力が回復しました。本人が気づいているかどうかは不明です。
※悪魔の目玉はその場のノリ(地の文を読んだ結果)話しかけてからブチ殺しました。
 しかし宝具の性質と彼の性格上話しかけた理由を後々の話で覚えてない可能性は高いです。
※作中特定の人物を示唆するような発言をしましたが実際に知っているかどうかは不明です。
※アサシン(ニンジャスレイヤー)の持ちかけてきた同盟に特に興味はありません。ウェイバーに丸投げです。
※放送を聞き逃しました。
┌─────────────────────────────────────────────────────────────────┐
※俺ちゃん主役の映画の製作が決定しました。把握に使えるから全員で十回ずつくらい見て来いよ
└─────────────────────────────────────────────────────────────────┘
                                                  ┌────────────────────┐
                                                  ┃※公開二年後だから無理です.┃
                                                  └────────────────────┘
┌───────────────────────────────────────────────────────────────────┐
※ロワ系なら余裕で完結まで二年以上かかるだろ。公開まで俺ちゃんたち生かしとけっつってんの! .┃
└───────────────────────────────────────────────────────────────────┘


  ◆  ◆  ◆

「しんのすけ」

「……なに?」

「仲直りをしてきた」

「……」

「ニンジャはもう、バーサーカー=サンと争わない。ニンジャは、オバケの親分を倒すのだ。
 バーサーカー=サンには私のオナカマとなってそれを手伝ってもらう。今、そのお願いをしてきた」

「そっか」

「そうだ」

「……ねえおじさん」

「なんだ」

「ごめんね」

「謝るな。しんのすけは悪くはない」

  アサシンが同盟を持ち出した理由はたった一つ。
  やはり、しんのすけのためだ。
  もっと言えばしんのすけにはしんのすけのヒーローが居ることにしたかったからだ。

  しんのすけのヒーローは居る。
  しかしそれはアサシンではない。
  彼を表立って守り、彼の正義を実行するヒーローの役割はバーサーカーにやってもらう。
  無駄口たたきのおしゃべりで、底抜けに強くて明るくて、何者にも縛られない非常識者。いかにもしんのすけのヒーローらしい。

  仮初のヒーロー。
  いつかは剥がれる化けの皮。
  だとしても、彼の正義を支えるため、アサシンは自分とは別の『しんのすけのヒーロー』を作り上げることを選んだ。
  バーサーカーがダメなら、他の者を探すのみ。決してアサシン自身はヒーローにはならない。
  アサシンはニンジャらしく、人も知らず世も知らぬ『影』となり、彼の正義の及ばぬ場所で敵を全てスレイする。
  約束を守らないのはシツレイに値するが、それでもいい。

  ニンジャは、汚い。
  だからこれ以上汚れても変わらない。
  どれだけ汚れてもかまわないから、彼の綺麗な正義を守りたい。
  聖杯のもたらしたマッポーめいた世界の理なんかに、彼の正義が負けぬよう。
  せめて―――


「おじさん、オラ、お腹減ったぞ!! もうお昼だし、まずはご飯ですな!!
 腹が減ってはいいクソができぬって奴でして!!」

  しんのすけが無垢な瞳でフジキドを見上げ、笑いながら話す。

「……それは、ミヤモト・マサシの言葉か?」

「ううん、オラの言葉!」

「……そうか」


     ―――せめてその瞳が、曇らぬよう。


  聖杯戦争が始まって以来、初めて主従並び歩く。
  小さな五歩、大きな二歩。
  少年は無意識に監視者を目指し。
  ニンジャは少年のヒーローの影を目指し。
  歩く。
  歩く。
  歩く。

  小さな五歩、小さな五歩。さらに小さな五歩。
  大きな足は立ち止まり、先を歩く主を見送る。
  そしてヒーローの影は真昼の日に眩み、白昼夢のごとくしめやかに再び霊体化した。




       ◆終◆ヒーローズ・オン・ザ・マッポー・ワールド◆劇◆


【B-4 西南/一日目/午後】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]健康、首に絞められた痣、右肩を捻ってる、空腹
[令呪]残り三画(腹部に刻まれている)
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]無一文、NPCの親に養われている
[思考・状況]
基本行動方針:普通の生活を送る。
1.お腹すいたゾ……
2.ニンジャは呼べば来る!!
3.ニンジャのおじさんのおなかまを見つけたゾ!
4.魔法使いのおねいさん(ルーラー)を探す
[備考]
※聖杯戦争のシステムを理解していません。
※一日目・未明に発生した事件を把握しました。
※ルーラーについては旗を持った女性と認識しています。
※映像によりアーカードの姿を把握しましたが共にいたジョンス、れんげについては不明です。
※悪魔の目玉が殺害されたためキャスター(大魔王バーン)もアサシン(ニンジャスレイヤー)も監視はできません。
※バーサーカー(デッドプール)をニンジャであり、アサシンの仲間のヒーローだと思っています。
※オバケが自分を騙して襲ってくることを学習しました。
※首の痣は遠目でもはっきり分かるほどくっきり残っています。
※サーヴァントのステータスは確認できています。ただ、何が書いてあるかは読めません。
※放送を聞き逃しています。


【アサシン(ニンジャスレイヤー)@ニンジャスレイヤー】
[状態]魔力消耗(中)、霊体化
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを生存させる。ニンジャは影となる。
1.今はマスターを守る。
2.キャスター=サン(大魔王バーン)を優先して殺すべし。
3.キャスター=サン(大魔王バーン)はランサー=サン(クー・フーリン)に任せる。
 しかし自分もキャスター=サンをスレイするために動く。勝負は今日明日中
4.バーサーカー=サンをしんのすけのヒーローに……
5.全サーヴァントをスレイする。
[備考]
※足立透&大魔王バーンとの休戦協定を破棄しました。
※ウェイバー・ベルベット組に同盟を申し込みました。19時にふたば幼稚園でウェイバー組を待ちます。
  ただし、19時に集まったからといってそこから即キャスター討伐に向かうかどうかは分かりません。その時の状況によります。
※バーサーカー(デッドプール)をしんのすけの言う『ヒーロー』にしたいと考えています。
  バーサーカーの性格や能力を良く知った上での行動ですが、バーサーカーの好戦性や残虐性についてはまだ知りません。
※放送を聞き逃しています。



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