シオン・エルトナムと純血のロード ◆A23CJmo9LE


「おはよう、諸君。欠席者は…いないようでなによりだ。それではホームルームを始める」

クラス全体を見渡し、出欠を確認する。気になる名前があったのか一瞬目を凝らすが、周囲は特に気に留めることもなく担任の言葉を待つ。

「君たちの耳目にも触れているかもしれないが、最近物騒な事態が多い。行方不明者も何人か出ていると聞く。
それに伴い、まだ本決定ではないが放課後の部活動の時間短縮が職員間で話題に上がった。集団での登下校も推奨されている。十分に用心するように」

今朝の教職員室で大きく話題に上がっていた伝達事項が発されると教室のそこかしこからえー、もうすぐ記録会があるのにー、などと不満の声が上がる。
それでも事態の重大さは理解しているのか、NPCだからか明確な文句を口にするようなことはしない。
てっきり情報統制などされているのかと思っていたがNPCにも数多の事件が伝わっているようで、ケイネスには疑問と苛立ちを覚えさせる。聖堂教会が監督役を務めた方がルーラーに任せるより神秘の秘匿には優れているかもしれない。
魔術師として文句を言いたくはなるが、怒りを抑える。我が君の言葉通り振る舞わねばならぬ、と。

「静かに、まだ決定事項ではない…静かに!事態が解決すれば問題ない、ややこしくしないように早期に帰りたまえ!決して夜間に外出など行わないよう!
どうしても居残っての勉強などをしたければ私や、他の先生に許可を得ること。私からの伝達事項は以上だ。他に何か、生徒会や委員会からはあるかね?」

早期の帰宅推奨、夜間外出への警告。職務のついでに少しでも聖杯戦争がうまくいくようにと言霊を加え、自身の話を終える。
続けて生徒会の役員が話始めたのは同じように事件への警戒、それに伴い近く生徒側でも会議を行いたいから義務はないがクラスの級長と集団下校の班長は参加してもらいたい、とのこと。
自分には関係ない、と聞き流すケイネス。それが終わると生徒からの伝達事項も何もないらしいので、退出の準備を始める。

「では、今朝のホームルームはこれまでとする。少し早いが…今日の私の授業では小テストを行うから準備にあてるといい」

ゲー、聞いてないっすよ、と今度は悲鳴交じりの苦情が上がる。
教師はそれを聞かなかったことにして一時限目の教室に向かう、どこにでもある光景だがそれを呼び止める女生徒がいた。
なんでも真玉橋という生徒にイタズラをされたという。何かと思って耳を傾けていたクラスメートもいつものことかと自分たちの世界に戻る……ただの一人を除いて。



シオン・エルトナム・アトラシアは己がサーヴァントの報告を受けながらも分割思考の一つを割いて彼らの会話に聞き耳を立てていた。
ホームルームの最中も周りの様子や教師の言動の観察、サーヴァントとの会話を並行して行い、それでも余りある技能が彼女にはある。

『もう一度言ってもらえますか、アーチャー』
『おう。それじゃあ改めて、ありのままにさっき起こったことを話すぜ。黒髪おさげの女生徒が門の外にいたと思ったらいつの間にか敷地内で転んでいた。
何を言ってるのかわからねーかもしれないが、おれにも何が起きたかよくはわかってねーから詳細な説明はキビシーな』

屋上から門を見ていたアーチャーの視界に飛び込んできたもの…それは不審な動きでいつの間にやら門を超えていた女生徒だった。
最初は瞬きや気のせいかとも思ったが、ともに登校してきた女生徒も戸惑っているようだったのでただ転んだだけではないと判断したのだが……
何が起きたのか断定できず、ホームルームも始まりそうな雰囲気だったので少し待機。
要領を得ない報告だったのでもしや別の思考に引きずられ聞き違えたかとシオンは考え、尋ね返されることになってしまったが。

『手段はともかくとしても、意味は明白ですね』
『ああ。門についていた蟲を意識しての行動だろうが…ちょいとばかし派手にやりすぎだな』

はたから見て不自然……隣にいた女生徒は誤魔化せたのかもしれないし、NPCなら気のせいですますかもしれないが聖杯戦争の参加者に見られてはあまりにも怪しい対応。
目撃したアーチャーはおろか、肝心の蟲にも疑惑の種くらいは持たせかねないその動きは回避策としては上策とは言い難い。回避策としては、だが。

『問題はその目的。私たち同様に蟲に対するアピールであるなら…なかなかに大胆な一手と言えるでしょう』
『そうだな。だがもし蟲から隠れようとしてやったのなら、それはつまり慎重さに欠けるってーことだぜ』

シオンの行ったエーテライトの接続は蟲の主との接触を狙っての行動だが、それを周りに感付かれるようなことはしていない。
だが、かの女生徒の回りに起きた出来事は目にした者なら誰もが、聖杯戦争の関係者ならなおのこと疑念を抱く怪奇現象だ。
誰かを誘っているのなら…蟲の主だけではなく目撃した全ての者を対象としたよほどの自信家。
接触を避けようとしたなら…優秀な能力を持つがそれを生かす経験値に欠いた者。

『転んだ、ということはその生徒自身には予想外のことが起きた、ということでしょうか?それとも単に躓いたり、あるいは自らの能力の反動…?』

意図の考察を進めるのは難しいため視点を切り替える。
行動の意味とその能力の詳細を考えようと、歴戦の戦士たるアーチャーに問いを投げながらも思考の多くを考察に割く。

『あのコの表情は転んだことよりも予想外の出来事に驚いたってタイプだったな。起き上がった時も申し訳なさ半分に疑問半分って感じだ、ダマシには自信があるからこれは信じてもらっていいぜ』
『となるとサーヴァントの手引き、それもマスターに干渉する能力。単純に考えると高速移動や暗示ですが…』

いつのまにか移動していたというならすぐに思い当たる可能性を述べるも、主従ともにその仮説の穴には気付く。

『催眠術なら蟲だけにかければいいのに自身のマスターやおれにまで干渉する必要は無い、サーヴァントの目にも止まらない超スピードに人間が耐えられるとは思えないし…』
『高速移動に伴う風で傍らにいた女生徒のスカートが捲れないのはおかしい、ですか?』
『そんな超スピードなら隣の女生徒のスカートの中身が見られないのはおかしい…はっ』

宝具にまでなった十八番を奪うような先読みを見せるシオンだが、誇らしげな様子は微塵もない。計算通りに事象が進んだだけ、と外観は小テストの勉強をする優等生のまま内心呆れのため息をつく。
エーテライトの補助がなくとも読めるような思考だが、そこに至る推論があながち的外れではないからこそ性質が悪いというか。

『と、とりあえず、おれは可能性として時間停止を提言するぜ。似たような能力者を生前二人知っているのは前にも話したな?』

目の前ではなく屋上にいるアーチャーにシオンの様子は見えないはずだが話を逸らそうと、というより逸れてかけていた本筋に慌てて戻しにかかる。
平時ならば魔法の領域にある時間の停止など錬金術師ならば一笑に付すが、実際にそれを経験し、そこから生還している英雄の言葉を無碍にはしない。
ましてやここは聖杯戦争…古今の英雄の集う戦場ならば【魔法使い】がいてもおかしくはないだろう。

『なるほど。可能性の一つとしては否定できない。根拠もありませんからあくまで仮説ですが』
『あ、あとなんかそれと似たよーな能力があるって聞いた記憶があるな。亀になったポルナレフがなんか言ってたような気がするんだが…』

年食った時にもう倒されてた敵スタンドだったからうろ覚えなんだよ、とぼやく。その敵とやらも亀うんぬんも気にかかるところだが…

『自信家であるならこちらから接触するには材料が少なすぎる。そうでないなら…マスターへの過干渉、蟲への過剰な警戒を見るに信頼のおける協力関係を築くのは難しいでしょう。
今はまだ動く段階ではない。昼には動きを決めますが、それまでは考えを纏め、様子見ですね。私も少し記憶を検めたい事項があります』
『おれも思い出せるよう頑張ってみるが、期待はしないでくれよ?それよりいつ蟲の主が現れるかわからないから警戒は怠らねーでくれ』

当然油断するつもりはないが、蟲を門に仕掛ける程度には慎重な者が昼日中から仕掛けてくるとは考え難い。それよりも気にかかることが目の前にあった。

(ケイネス・エルメロイ・アーチボルト……どこかで聞いた覚えのある名前だ)

日常を送る、周囲を警戒する、記憶を走査し思い当たる人物を探す。すでにケイネスは立ち去り一限の授業が始まっているが、表面は優等生として淀みなく、思考の一部は記憶の海に潜っている。
多数いるアトラス所属の者や、調べ上げた死徒や混血の名、エルトナム家をはじめ知っている魔術師……それはあまりに多く回想するのにも一手間かかる。


                                               (アトラス院にいた頃の同僚を思い返す)                                                  
(ペンを走らせ、ノートをとる)
                     (エルトナムに関わりある魔術師の名前をピックアップする)
(教会の騎士や代行者を知る限り思い浮かべる)



『おっと職員口に重役出勤のニイちゃんがひとり登場~。売店の店員かな?』



                                    (どうやらアトラスの関係者ではなさそうだ)
            (10分たらずの休み時間まで散策の必要は薄いだろう)
            (二十七祖をはじめとする高名な死徒を回想する)
(……………………………)                       (あのサーヴァントは真面目にしていれば頼れるのに……)
(そろそろチャイムが鳴る)                       (休み時間だ、次の授業の準備を)


『お、なんかトラックが来たな。売店の商品搬入か?懐かしいぜェ~、テキーラ酒売りに変装してナチスに潜入したことあったな~』


(あなたのそれは変装ではなく女装でしょう…)
                     (まさか搬入に紛れて入って来る参加者がいるだろうか?)
                                               (いやしかし彼はもう…)
(もしかしてあの男は……)
                     (教室内にこれと言った変化はない。二時限目が始まる)

とりあえずの答えに至り、思考の海から浮上。無論考察は続けるが、出した答えに確信を持つためひとまずは彼の担当する四時限目を待つ。
そしてその時間が訪れた。

「朝以来だな、諸君。きちんと勉強できたかな?軽く講義を行った後に予告通り小テストを行う」

優秀ではあるのだが、どことなく生徒を見下した態度をとる金髪に碧眼の教師。勤勉な生徒からは慕われているが、凡庸な生徒からの人気はイマイチらしい。
その容貌と振る舞いを記憶にある評判と照らし合わせる。

「テスト時間は20分。10分経過したら退出は自由だ。昼休み前だからその方がいいだろう?」

授業終了まで20分強といったところで問題が配られテストが始まる。
……10分経つとテストの出来よりも食堂や購買が混むのを心配してか多くの生徒が退出を始めた。
シオンもまた少し遅れてその人混みに続き、テストを提出して教室を出る。無論、問題はキチンと解いてだが。

『おろォ~、授業終わったのかマスター?ちょいと早くねぇ?』
『ええ、喧噪のせいで通達を聞き逃す心配がなくなって何よりです。私たちがその程度のミスをするとは思いませんが、それでも失敗の可能性が低いに越したことは無い。
それよりアーチャー、先ほど言っていた能力者というのは思い出せましたか?』

喧噪を避け、人目にもつかないよう、ただし不自然にはならないよう。まだ授業時間であり、人のいない廊下を歩く。
屋上に向かってアーチャーと共にいるのを目撃される危険や、余計な騒ぎに巻き込まれて通達を聞くのに支障をきたすのを避けるためだ。

『時間に干渉する能力者だったのは確実だが詳細は思い出せねぇ、悪いな。
恐らく1990年代にヨーロッパにいた【スタンド使い】。加えてイタリアを中心に活動したギャングのはずだからそれで検索すれば多少は分かるはずだぜ。マスターの方も何か考えてたみたいだが?』

さすがに80を過ぎた頃の記憶を思い出すのは難しいのか明確な答えを返すことはできないアーチャー。
それに対して

『ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。彼は12人しかいない時計塔のロードの一人、ロード・エルメロイと謳われる優れた魔術師です』

彼女は一人の魔術師に関する明確な答えを返した。

◇  ◇  ◇

『シオン・エルトナム・アトラシア。彼女はアトラス院に所属する錬金術師、それもかなりの腕前の者かと』

こちらもマスター候補を絞るための相談を行っている。
魔術協会の三大部門の一角、アトラス院。アトラシアがその後継候補に与えられる称号であるという知識、そしてそれほどに優れた魔術師ならば聖杯戦争に赴いてもおかしくはないという予測から主君へ進言する。
だがそれに対するキャスターの対応は気持ち冷たいものだった。

『ああ、記憶している……が急いては事をし損じる。今は通達を待つぞ』

本来キャスターは授業ごとに教室内に存在するマスター候補含む生徒へ様々な術を掛けるつもりであった。事実何人かのNPCには〈服従の呪文〉をかけている。
マスターらしき者には〈開心術〉をかけ判別しようとしていたのだが……

曰く、土御門というのは優れた陰陽術の一族である。
また葛葉というのは西日本で名の知れた呪術師の家系らしい。
タボスという南米系の女生徒がいたが、オルガ・タボスというヴードゥー教の司教と繋がりがある可能性がある。
ルジュナワラというのは下賤なインドの呪術師の末裔だとか。
あそこに座っているのは時計塔で昔教えたそれなりにできる魔術師だとか。
ここまで多いと安部だの織田だの本多だのありふれているであろう名も偉人の姓を持つというだけで疑わしく見えてしまう。

はじめのうちは一人一人当たってばれないように〈開心術〉をかけていた。
しかし覗いた相手は一切の戦意も聖杯戦争に関する知識もないNPCである事は表層だけでも判別でき、マスターの情報は全く得られなかった。
強いて言うならばそれらしい名前だからと言って疑ってかかるのは非効率だというのが得られた唯一の情報と言える。記憶を取り戻せなかった脱落者が混ざっている可能性も考えればそれも必然と言えよう。
たびたびケイネスから提供される情報は既存の知識に加え、彼が冬木の聖杯戦争のために集めていたものであり、彼の優秀さを示すものであった。
しかしそれが方舟において役立つことは今のところなく、魔力対効率を考え片っ端から〈開心術〉を掛けるのは避けるべきとキャスターは判断。
そのためシオンに対してもアクションは起こさず、まだ様子見に徹することにしたのだ。

進言が受け入れられず、すごすごと小テストを纏めて研究室に戻る準備をするケイネス。問題はそんなに難しくしなかったし、昼休み前の学生がさっさと出たがるのは教師としての経験で知っている。
全ての生徒が授業終了…正午前に一度は退出しており、静かなものだ。

『――この『月を望む聖杯戦争』に参加しているマスター並びにサーヴァントの皆さま、こんにちは―――

そうこうしていると通達が始まった。
ちらほらと購買で昼食を買ってきた生徒や一時的に退出していただけの弁当組は戻ってきたが、授業終わりの瞬間に全ての生徒が揃っているよりは格段に聞きやすい。
テストの枚数や出来を確認する素振りを見せ、教室内で通達の内容を頭に叩き込む。
幸いメモを取るほどのものでもなく、短時間で済むものだったのですぐに教室を出ることが出来た。

『28組か、なかなか多い。俺様でもこれだけの数を相手取るのは些か面倒なうえ、探し出すのも一苦労だな。
通達を受け、動きを見せる者もいるはずだ。職務を済ませ、我らも動くぞ』
『かしこまりました』

◇  ◇  ◇

『アーチャー、通達は聞きましたね?』

シオンは図書室に来ていた。昼食をとる必要もあるが、生徒の騒ぎで通達を聞き逃してはたまらないため、いったん静かなここへ来たというわけだ。
一応適当な昆虫の図鑑とアラビア語の図鑑を開いて周りの目をごまかす。

『ああ。残存人数に、検索施設の有用性、二つ以上の警告。本格的に動き出したって感じてメラメラと湧きのぼってくるものがあるぜ。
それも重要だが、さっきの話の続きだ。あの将来ハゲそうな教師が魔術師だってーの、マスターはどのくらい信じてんだ?』

多くのNPCと交流したジョセフにはNPCがそうと判別するのが難しいことを知っている。ゆえに安易に結論に飛びつくことはしない。
シオンも同様。授業中観察したところ目につく所に令呪はなく、魔力もこれと言って感じられなかった。サーヴァントの気配も感じ取っていないと先ほど歩きながら念話で確かめた。
しかし令呪を隠すのは自身も行っている、腕利きの魔術師ならば魔力の隠匿も用意、アーチャーのように離れて控えているかもしれないし、アサシンならば気配遮断で感知を避けることが出来る。
反論の材料もあるので本来なら半信半疑と言ったところなのだが

『どちらかというとシロに近いグレー、といったところでしょうか。風の便りに聞くロード・エルメロイであることはほぼ間違いない。
ですが私の知る彼はすでに故人で、彼の死で没落した一門を弟子が盛り立てていると聞き及んでいます。彼が本人であるかはそう意味でも疑問が大きい』
『と言ってもここにハンサムな死人がいるんだ。死んだと思ってたやつが生きていたのかもしれないし、死者を参加させる手段だってあるだろう』

無論その可能性も想定している。一族が凋落している以上彼が時計塔に関われていないのは確定であり、どちらかというと死んでいる可能性が高いと考えているが。
考えられるのはロード・エルメロイも属する科の分野、降霊。すぐそこに英霊がいる以上真っ先にこの可能性に至るのは当然。
さらに精密に再現された人形。魔法の域ならば並行世界に時間移動。そして……死徒化。

『本人だとすれば間違いなく強力なマスターです。NPCの可能性は捨てきれませんが要警戒対象でしょう』
『NPCだとしてもなァー、あんな冴えないおっさん再現するよりかはマシなのがいるだろうに。わざわざあんなもん用意する意味あんのかね』

NPCの意味。今彼が発した言葉はそう深い考えで放ったものではないがシオンにはある『現象』を思い返させていた。
用意された会場はまるで劇場。集められたマスターはまるで役者。そこに在るNPCはまるで観客か舞台装置。
人の想念から死者をも再現するのはまるで『タタリ』のようだ。
これが『タタリ』と同質であるならばなんらかの再現元である演目があるのだろうか?『彼』のような主賓はいるのか?主催はカレン・オルテンシアとルーラーなのか?

現状では情報が足りないため考察を打ち切る。

『現時点では仮説の域は出ません。通達を聞く限りすでに大胆に動いている主従もいるようですね』
『校門の蟲然り、朝の女生徒然り、な。人数も多い。ヘタ打つとハブられて周回遅れに成りかねねえ。
学園で手にした手札は【校門の蟲】、【マスターの可能性が高い女生徒】、【時間に関わる能力者の可能性】、【担任教師の名前】、【ロード・エルメロイという魔術師】ってとこか。
誰かが持ってる手札として予想できるのは【B-4の違反行為の詳細】、【問題行為の詳細】あたり、か』
『アーチャー、女生徒の顔は覚えていますね?』
『当たり前だろ、さすがにマスター候補の顔忘れるほど抜けちゃあいねーぜ。似顔絵とかはムリだが見間違いはない。探しに行くかい?』

蟲使いの接触を待ってもいいが、確証のない動きを予定に組み込むと計算式が狂う原因になる。
といって自発的に接触できそうなマスター候補は教師ケイネスか、学園内のどこにいるか定かではない黒髪の女生徒。昼ならば食堂か購買で会えるだろうか。
潜伏という選択肢もある。
他のマスターからの接触を誘うならば…あえて目立つように学園内の検索施設を利用してみるのも考えてみようか。

【C-3/月海原学園内図書室/1日目 午後】
【シオン・エルトナム・アトラシア@MELTY BLOOD】
[状態]健康、アーチャーとエーテライトで接続。色替えエーテライトで令呪を隠蔽。
[令呪]残り三画
[装備] エーテライト、バレルレプリカ
[道具]
[所持金]豊富(ただし研究費で大分浪費中)
[思考・状況]
基本行動方針:方舟の調査。その可能性/危険性を見極める。並行して吸血鬼化の治療法を模索する。
1.学園内でのマスターの割り出し、及び警戒。こちらから動くか、隠れ潜むか。来るだろう接触に備える。
2.帰宅後、情報の整理。コードキャストを完成させる。
3.方舟の内部調査。中枢系との接触手段を探す。
[備考]
※月見原学園ではエジプトからの留学生という設定。
※アーチャーの単独行動スキルを使用中でも、エーテライトで繋がっていれば情報のやり取りは可能です。
※マップ外は「無限の距離」による概念防壁(404光年)が敷かれています。通常の手段での脱出はまず不可能でしょう。
シオンは優勝者にのみ許される中枢に通じる通路があると予測しています。
※「サティポロジァビートルの腸三万匹分」を仕入れました。研究目的ということで一応は怪しまれてないようです。

【アーチャー(ジョセフ・ジョースター )@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康、シオンとエーテライトに接続
[装備]現代風の服、シオンからのお小遣い
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:「シオンは守る」「方舟を調査する」、「両方」やらなくっちゃあならないってのが「サーヴァント」のつらいところだぜ。
1.学校にいるであろう他のマスターに警戒。候補はケイネスとおさげの女の子、あと蟲使い。来るだろう接触に備える。
2.夜の新都で情報収集。でもちょっとぐらいハメ外しちゃってもイイよね?
3.エーテライトはもう勘弁しちくり~!
[備考]
※予選日から街中を遊び歩いています。NPC達とも直に交流し情報を得ているようです。
※暁美ほむら(名前は知らない)が校門をくぐる際の不審な動きを目撃しました。







◇  ◇  ◇

教室を出たケイネスはまずトイレに入る。身障者用の広い個室内でキャスターを実体化させて魔術の行使をするためだ。
すでに洗脳したNPCに学園内の検索施設周辺は見張らせているし、学園周囲に放っていた蛇もあの蟲以外に仕掛けられたものがないことを確認して構内に入らせた。今は天井裏から目を光らせている。
外部に放った蛇も検索施設をマークしており、そちらの戦況もちらほらと動きが見えた。

「サーペンソーティア〈蛇よ、出でよ〉」

追加で蛇を召喚し、水道管を通じて学園内に監視網を張り巡らせる。2、3匹には〈目くらまし術〉をかけ検索施設を利用する者がいれば覗き見ることが出来るような位置につける。
現時点で利用者はまだいないはずだが、通達の情報を補ったり他のサーヴァントの情報を掴もうと使う者が出てきた場合容姿に加えて情報も奪うつもりだ。
無論令呪が反応しないよう自前の魔力のみで術を行使した。

「疑わしき者が多すぎるのでな、検索施設の見張りを中心に行う。すでに放った使い魔も同様だ」
「外の方で動きは見られますか?なにやら騒ぎ立てている者がいるようですが」

戦況を知りたがるケイネス。そのくらいのことは教えても不利益にはならないと考え目撃した蛇が情報を開示する。

「図書館に向かわせたものは距離があるから感覚の共有が出来ん。後で回収して直接話を聞くことになるからそれまで待て。
検索施設のある病院、その近くの大学に使い魔を送ったのは覚えていよう。今は一匹に病院を、一匹に周囲を見張らせているが、大学の構内で多くの者がオーガズムを迎えているのを目撃した」
「オーガズム、ですか」

冗談のような話だ。男子トイレの個室内で、魅了のスキルと悪縁ある二人の男がする話題のチョイスとしては最悪の部類かもしれない。
しかし魔術師というフィルターを通じてみるならばそれは一つの戦術として見えてくる。

「人体で最も魔力が馴染む体液を奪う、魂喰いとも吸血とも異なる補給手段。ひょっとするとそれ以上に効率よく採取しているかもしれませんな」
「うむ。死にかけているのもいたが、生きてさえいればまた同一の相手から魔力を奪える。恐らくはサキュバスやヴィーラと近似した性質の者だろう…いや、男女問わず倒れていたからインキュバスやアルプの類かもしれんか。
多くの者が着衣のまま倒れていったから口淫か手淫か、もしくは使い魔か。何か変化があれば伝えよう」
「ありがたき幸せ」

キャスターが姿を消すとケイネスも一応手を洗い、出席簿を教職員室に戻しに向かう。用を済ませて研究室で小テストの採点でもしようかと外へ向かうと

「ああ、ケイネス先生。今授業終わりですか?ニュースは見ましたか?大変なんですよもう!」

今朝〈服従の呪文〉をかけ、出欠確認をするように言った教師に呼び止められた。教職員室内のテレビを操作してニュースを見せる…どうやら眼鏡の女性が暴行事件を起こしたらしい。
その手の甲に令呪を見つけて眉をひそめるケイネス。ひょっとしてこれが通達で言っていた騒ぎだろうかと、秘匿のことをまるで考えないマスターを内心侮蔑する。

「ジナコ先生、ここのところ顔を見せないと思ったらいきなりこれで…こんなことするような人だとは…どうしましょう」

欠席者の情報を確認したいというケイネスの協力要請と学園の不祥事が重なり報告と相談に訪れたようだ。
情報としては使えるものだが、教師という立場としては厄介この上ない。聖杯戦争に集中するために積極的には関わるまいとするが

『丁度いい。その面倒事に付き合う対価としてその男に昼食配達の依頼をさせろ。店はB-4近辺のものに絞ってな』
『な、なぜです我が君!?このくらいの相談なら仕事として関わらなくともさほど問題ないのでは…?』

キャスターはあえて余計な仕事を増やせと言う。

『手伝うのはついでだ。本筋は食事を配達に来た者よ。それに〈服従の呪文〉をかけ違反行為があったというB-4の様子を聴取し、その後必要なら街を捜査させる。
暴行事件とやらはB-4で起きたわけではないようだし、あの程度が重大な違反とも思えん。低く見積もって屋敷の住人を殺害し、乗っ取る以上の行為。情報が必要だ。
もっともルーラーも具体的な動きは掴んではいない可能性がある以上NPCの聴取などあてにならんがな』
『なるほど。それならば納得です』

疑わしきは罰するキャスターからすればルーラーの判断は手ぬるい。しかし明確な違反行為に対して警告だけで済ますほどに調停者がボケてはいないはずだ。
ならば恐らくその所業が明確になっていないのだろう。
傲慢かつ自分本位な予測を立てつつ、魔術師の主従は他者のためでなく己がために動く。

「学園長にも報告した方がいいかもしれませんな。ところで昼食はとられましたか?」
「いえ、まだですが」
「では私の分含めB-4地域近くの料理店に昼食を配達するよう注文していただきたい。よければご馳走しましょう」
「えぇ、出前ですか?食堂や購買じゃ駄目なんですか?たまに頼んでいる人もいると聞きますが…」

突然の依頼に困惑を隠せない同僚。

「仕事に加えてコレは面倒事だ。並ぶ時間も惜しい。〈協力〉してもらいたい」

手にもつファイル内の小テストと表示されたニュースを指し、主君の指示通りに協力を求める。
そうすれば〈服従の呪文〉の支配下にあるNPCは、命令に対する疑問も戸惑いも失せて忠実に従う。

「む、確かにこの時間は食堂も購買も混みますからな。何か希望は?」
「……では中華を」

店を探し始めたのを横目にファイルをいったん机に置き、ジナコとやらの資料を探そうと思い至る。今朝地図をとりに行った資料室に職員名簿等はあったはずだ。

「資料室に行ってきます。それと、例の件は?」
「ええ、合間に欠席届など確認していますが、まだ纏めるのには時間を頂きたい。私は今朝に小等部の美遊・エーデルフェルトという生徒の欠席連絡を聞いていますが」

エーデルフェルト。フィンランドの名門魔術師の名に反応を見せるケイネスだが、それに気づくことなく店を調べ終えて出前を頼み始めるNPC。

「もしもし、出前をお願いしたいのですが。ん~そうですねお勧めは?麻婆豆腐?ではそれを月海原学園の…いえ、購買部の店員ではなく教職員室にお願いします。数は――」

注文の声を背後に教職員室を出、資料室へ向かおうとすると

「ああ、ケイネス先生。聞いてください、真玉橋のやつが制服を着ろと言っているのに改める様子がなくて。先生からも何か言ってやってもらえませんか?」

すぐそとで生徒会長の柳洞一成に出会い、また相談を受ける。

「今は忙しい。後にしてくれたまえ」

さすがにこれはキャスターも手伝えとは言わない。朝のホームルームに続き耳にすることになった問題児の名前を覚える羽目になり、苛立ちながらも資料室に入る。
場合によっては真玉橋とやらは呼び出しての注意も必要だろうか、と思う傍らキャスターは実体化し

「アクシオ〈出てこい〉」

呼び寄せ呪文で職員名簿や生徒の資料などを引き寄せる。その中からジナコ・カリギリと、一応ケイネスが気にかけた未調査のマスター候補の個人情報を書き写す。
用いるのはキャスターの作成した自動速記ペン。本来は小テストの答え合わせに使おうと四色ボールペンに術をかけたものだが、必要な情報を自動でピックアップし書き写す便利な道具だ。
これならコピー機も必要なく書類の重要情報を持ち出すことが出来る。
余談だが、小テストの増刷は今朝洗脳していない同僚が手伝ってくれた。〈服従の呪文〉下とはいえ電話による出前の依頼をNPCが受けるなど、彼の機械音痴ぶりは知れ渡っている。
ペンが走っているのを横目に再び戦争のことを考える二人。

「アーカードという名に覚えは?」
「いえ、寡聞にして存じ上げませぬ。しいて言うならば真祖の姫、アルクェイド・ブリュンスタッドと間違えたのでは、と」
「真祖の姫を旦那呼ばわりはしないだろう。そもそもサーヴァントでなくマスターの可能性もあるだろうに」

話しながら一応名簿にアーカードなる者がいないか探してみる。呼び寄せ呪文の範囲外にするくらいのことは簡単にできる以上目で確認もした方がいいだろう。
赤土というという者がいるが関係は…まあないだろう。
名簿を見ているとシオン・エルトナム・アトラシアの名があり、その書類には一両日中に付いたと思われる折り目がついていた。

「ケイネス、そちらの書類に最近ついたと思われる折り目はついているか?」
「折り目…ついているものもいくつかありますが」

個人情報など重要なものがあるこの部屋に生徒は濫りに立ち入ることはできない。
部屋の鍵も今朝ケイネスが戻してそのままだった。となると恐らくは昨日から未明にかけて何者かが書類を確認したということ。
一部しか見ないとは考え難いから、慎重な、もしくは手慣れたものが扱ったものと戦場に不慣れなものが扱ったものがあると考えられる。筆頭候補はあの蟲の主だろう。
シオン・エルトナム・アトラシアの名が乗った名簿に痕跡があるということはやはりこの名は注目を浴びるようだ。

「ふむ…」

ちらり、とペンの動きを確認。まだ動いており、写したものにシオン・エルトナム・アトラシアが含まれているのを確認すると

「フラグレート〈焼印〉」

名簿の個人情報を焼印で塗りつぶし、見られなくしておく。他の名前もいくつか適当につぶす。

「な、何をなさっているのでしょう?」

突然書類を使い物にならなくする主君の所業に問いを投げる。

「なに、ほんの思いつきよ。こうしておけば読めなくなった名前の者をマスターと考えつぶし合ってくれるかもしれんぞ?」

もっとも本当に知られたくないなら書類自体を処分するだろうし、これを読むには何らかの処置が必要だ。自分なら容易く直せるが。
消耗も殆どないから一応やっておく、万一当たれば儲けもの程度の期待しかしない。

「そろそろ必要な情報も写し終るだろう。ジナコとやらに関しては公僕に通報するよう進言しろ。この住所や電話番号含む連絡先などをな。
学園長がどう動こうとするかは見ものだが……そちらは強行せずともよい。
だがこの事件と治安の悪さを理由にして警戒体制を強化させろ。こちらの方が優先度が高い」

生前の魔法大臣の一人は現実を見ようとせず事件自体をもみ消そうとする小物だった。ここの学園長がそう言う性質ならば〈服従の呪文〉はさぞ効果を発揮するだろう。
進言通り通報するならそれでもよし。利用できるものは何でも利用する。かつて魔法省の設備や法を使ってポッターを囲んだ時のように。派手に報じられればそれこそ他の参加者の誘蛾灯となってくれよう。
それよりも重要なのは部外者を完全に締め出すことだ。現時点でも関係者以外は原則立ち入り禁止だが、所詮学園の警備。聖杯戦争の参加者ならば容易く侵入できる。
今が非常事態である、と知らせてやれば警備体制も少しはましになるだろう。ひょっとすると朝述べたように生徒は早期に下校させることになるかもしれん。
部外者を禁じ、放課後生徒がいなくなるとすればここの検索施設を独占できる可能性も出てくる。厳重な警備の中侵入しようとする者がいればマスターの絞り込みもしやすい。情報と手駒さえ増えれば交渉か、洗脳か、交戦か、暗殺か動きも定まろう。

「行くぞ、ケイネス。ここから俺様の支配を広げる」


【C-3/月海原学園/1日目 午後】
【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/Zero】
[状態]健康、ただし〈服従の呪文〉にかかっている
[令呪]残り3画
[装備] 月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)、盾の指輪
[道具]地図 、自動筆記四色ボールペン
[所持金]教師としての収入、クラス担任のため他の教師よりは気持ち多め?
[思考・状況]
基本行動方針:我が君の御心のままに
1.学園長含む教師にジナコの通報と、部外者の立ち入り禁止を進言する
2.他のマスターに疑われるのを防ぐため、引き続き教師として振る舞う
3.教師としての立場を利用し、多くの生徒や教師と接触、情報収集や〈服従の呪文〉による支配を行う
[備考]
※〈服従の呪文〉による洗脳が解ける様子はまだありません。
※C-3、月海原学園歩いて5分ほどの一軒家に住んでいることになっていますが、拠点はD-3の館にするつもりです。変化がないように見せるため登下校先はこの家にするつもりです。
※シオンのクラスを担当しています。
※ジナコ(カッツェ)が起こした暴行事件を把握しました。
※B-4近辺の中華料理店に麻婆豆腐を注文しました。
※マスター候補の個人情報をいくつかメモしました。少なくともジナコ、シオン、美遊のものは写してあります。

【キャスター(ヴォルデモート)@ハリーポッターシリーズ】
[状態]健康、魔力消費(小)
[装備] イチイの木に不死鳥の尾羽の芯の杖
[道具]盾の指輪
[所持金]ケイネスの所持金に準拠
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯をとる
1. 〈服従の呪文〉により手駒を増やし勝利を狙う
2. ケイネスの近くにつき、状況に応じて〈服従の呪文〉や〈開心術〉を行使する 。今は情報収集優先。
3. ただし積極的な戦闘をするつもりはなくいざとなったら〈姿くらまし〉で主従共々館に逃げ込む
4.戦況が進んできたら工房に手を加え、もっと排他的なものにしたい

[備考]
※D-3にリドルの館@ハリーポッターシリーズがあり、そこを工房(未完成)にしました。一晩かけて捜査した結果魔術的なアイテムは一切ないことが分かっています。
※教会、錯刃大学、病院、図書館、学園内に使い魔の蛇を向かわせました。検索施設は重点的に見張っています。他にもいるかもしれません
※使い魔を通じて錯刃大学での鏡子の行為を視認しました。
※ジナコ(カッツェ)が起こした暴行事件を把握しました。
※洗脳した教師にここ数日欠席した生徒や職員の情報提供をさせています。放課後には纏め終ると言っていましたがジナコ(カッツェ)の事件などもありもっと時間がかかるかもしれません。少なくともジナコと美遊の欠席を確認、報告しました。
※資料室にある生徒名簿を確認、何者かがシオンなどの情報を調べたと推察しています。
※生徒名簿のシオン、および適当に他の数名の個人情報を焼印で焦がし解読不能にしました。

[地域備考]
月海原学園は原則部外者立ち入り禁止であり、校庭開放などは行っていません。
これはあくまで学園の規則であり、聖杯戦争における禁止事項ではありません。

[道具]
自動速記四色ボールペン

元ネタはハリーポッターシリーズにおいて記者リータ・スキーターが使っていた自動速記羽ペン999。
インタビューしながら記事を書けるなど手を触れずとも思うように文字を書いてくれる。
ヴォルデモートはこれに自動インク、綴りチェックなどの魔術を利用して自動で小テストの答え合わせや模写を行うよう四色ボールペンに呪文をかけた。



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084:信じる 投下順 086:槍は甘さを持つ必要はない
084:信じる 時系列順 086:槍は甘さを持つ必要はない

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ケイネス・エルメロイ・アーチボルト&キャスター(ヴォルデモート