そして、もう誰にも頼らないのか? ◆IbPU6nWySo


『以上でニュースを終わります』

テレビから以上の言葉が流れいる中。
アサシンこと吉良吉影が何をしているのかと問えば、彼は昼食を作っていた。
まずは簡単なコンソメ風味を加えた、野菜と茹でたウインナーを入れたスープ。
シンプルで質素だが主食と共にいただくには申し分ない。
あまりはマスター・乙哉との夕食に使える。

主食となるのはサンドイッチだ。
様々な具材を入れて、たまごサンドや野菜サンドを作った。
これは生前、アサシンが通い詰めていた人気店にあったサンドイッチを再現したもの。
几帳面なアサシンはソースの味まで事細かに再現している。
本来ならばサンドイッチを片手に公園で食事を取りたかったのだ。
しかし、あのアーチャーの襲撃に警戒してアサシンの計画は崩壊してしまった。
黙々と行っていた作業を終え、アサシンは長い溜息を吐く。

昼食を作り終えたところでアサシンは念話をかける。

『マスター。連絡があるんだが――』
『手短にお願い!!これからお楽しみなんだよね~♪』
『…』
『それにここ学食で気が散っちゃうしー……ね?』
『あぁ、そうさせて貰うよ』

アサシンは簡潔に説明した。
トオサカトキオミならぬ人物が学園内に刺客を送り込んだ事。
彼とそのサーヴァントとの交戦。
そしてニュースで報道されていた事件について。
これは学園にいた乙哉は知らないはずだ。
以上で挙げられた内容と登場した名前に彼女は唸る。

『トオサカ……ジナコ……アーカード……うーん、どれも聞き覚えないやー』

一応、ジナコは学園の補欠職員であるものの。
さすがの乙哉もそこまで把握してはいなかった。
ただ名前を記憶しておく程度に収まる。

『それにしても昼間だっていうのに皆戦うなー』
『逆に私と出くわしたマスターのように職業の枷に縛られていないマスターがいる証拠だ。
 …さて、マスター。今後の方針だが一番の問題がある』
『魂食いのこと?でもカレンって人の言い分ならセーフだよね??違反の対象はあたしたちじゃないよー』
『いや…違う。今回の人数だ』

そう、参加人数。
マスターが28人。
つまり、サーヴァントが28騎。
アサシンを除けば27騎だ。
通常の聖杯戦争よりも規模が大きく、人数も多い。
真っ向勝負に向いていないアサシンにとって問題はそこである。

『私たちは集団で襲われれば確実に不利になる点だ』
『うーん……それは分かってるよーつまり、乱戦は避けるべきってこと?』
『そうじゃあない。この数を単独で相手にするのは困難……
 それは、どの陣営も考えうるということだ。同盟を組む陣営が少なからず出てくる』

サーヴァントが27騎ならば聞き方は柔らかいが
マスターを含め、合計54人だと表現を変えれば厳しい。
もし一点にアサシンたちへ襲撃の的が向けられれば、最低でも4人を相手しなければならない。
乙哉は殺人鬼とはいえ、やはり魔術を使えぬ人間に過ぎない。
相手のマスターに魔術師がいるだけでその形勢は大きく変化する。
アサシンはそれを警戒していた。

暗殺特化であるアサシンが何故そこまで同盟や集団を警戒するのか。
彼の生前が起因していた。
アサシンを追い詰めたのは絆と友情と信頼で結ばれた仲間、集団そのもの。
たとえ一人を追い詰めたとしても、危機を察知し、ウジ虫のように仲間が現れた。
引きずっていない、と言えば嘘になる。
警戒に越したことはない。
警戒するにしてもそれが一番の警戒になっていることをアサシンは気づいていなかった。

あのサーヴァントがアサシンを追い詰めるべく仲間を引っ提げ現れるならば……
すぐにでも最悪のシナリオがアサシンの脳裏に繰り返された。

『それじゃあ、同盟組む?
 できればカワイイ子がいいよねぇ~そうそう!殺しちゃいたいくらいカワイイ子!』
『…マスター』
『わかってるよー!アサシンの好みの人も探すから♪』
『そうじゃあない。私は同盟を組むことは主張していない』
『…え?』
『同盟には警戒するべきだと言っているんだ』
『………ちょっと矛盾してるよ?アサシンが同盟は有利になれるって言ってたじゃん?』

アサシンは少し表情を歪める。

違う、そうじゃあない。
『そういう』のは嫌いなのだ。
彼の性分には合わない。
キャイキャイ騒いだり絡まれたり……『そういう』のが好きじゃない。
出来ない事はない。
しいて願わくば、同盟相手が静かであまり絡んで来ないものであれば何とか…

そんな不満をぶちまける訳にはいかず、アサシンはぐっと堪えながら言う。

『手の内を知られるリスクもある。慎重に考えるべきだ』
『そっかー……じゃあ、あたしも帰りまでには考えておくねー』
『あぁ、そうだ。マスター、ついでに聞いておきたいのだが――』
『なに?』
『下着の干し方についてなんだが……』

…………

『なんでソレ、最後に持って来たの……』


◆ ◆ ◆


『やはり、学園内にマスターがいる可能性があるわ』

キャスターが例の校門にあった虫の一件をマスターの暁美ほむらに告げた。
定時通達も含め、ほむらは真剣に念話での対話を行った。
これから学食で乙哉と待ち合わせしているほむらは移動をしながらである。

『全てを調べてみないと分からない。
 だけど、真っ先に学園を狙ったならばマスターが生徒か…もしくは教師かもしれないわ』
『学園には人が多いし…普通にそれだけが理由かも……』
『だから全てを調べて見る必要があるのよ。学園だけじゃない。人が集中する場所はいくらでもある。
 大学病院、患者も含めて結構な人がいるはず。
 図書館、サーヴァントの詳細を調べる為、確実にマスターが足を運ぶ場所。
 ここにも「虫」が設置されているならば、あなたの考えは納得できる。
 だけど……もしそれがなかったとしたら?』
『……』
『その場合は「確実に」「絶対に」マスターが学園内にいるのよ』

一種の連想だ。

「自分のマスターが月海原学園の関係者だった」
「もしかしたら学園内にもマスターがいるかもしれない」
「ならばマスターの安全を確保する為、学園関係者を警戒しよう」

登校するまでは可能性として考慮していたが『虫』の登場により疑惑は濃厚となったのである。
キャスターは警戒の為、学園に留まり様子見したが
襲撃らしきものは何一つ見られなかった。それでも用心に越した行為ではない。

でも、とほむらはキャスターに問う。

『いつも通りでいいんですよね…?』
『そうね。一先ず「普通」にしているように』

キャスターはそれ以上、不安を煽るような発言を慎んだ。

彼女の不安とは
学園内に『虫』に関するサーヴァントとそのマスターがいることではなく。
それ以外のマスターたちが存在することだ。
定時通達によればマスターは28人。
ほむらたちを除けば27人。
それほどの規模ならばもう一組か二組、いるかもしれない。
この学園にサーヴァントとマスターが……

何より人数…多いわね……

27人となれば、さすがのキャスターだけでは手に負えない。
無論、他の陣営たちの潰し合いがあるだろうし、全員を相手する訳もなく。
名前も顔も知らないまま脱落する陣営もいるはず。
それでもキャスターは不利を感じた。

なるべく手の内を多く持ちたい…同盟、とか……

しかし、キャスターには同盟や仲間といった単語が忌々しいものであった。
どれも彼女の中では良くない印象なのだから
折角仲良くなっても、仲たがいし
どれだけうまく立ち回ろうとしても、余計に足を引っ張る。
意味がない。
だから誰にも頼らなかった。

私はそんなことしたくはない。だけど…

キャスター以外はどうだろう?
人数の多さに警戒し、手に負えないと判断し、誰かと同盟を組み、勝負を挑んでくるかもしれない。
複数相手にはキャスターもさすがに……

まだ

まだよ。

まだだめよ。


決断するのは『まだ』。
『まだだめ』だ。


◆ ◆ ◆


「あっ、ほむらちゃーん!こっちこっち!!」
「乙哉先輩っ、その…席取っててくれてたんですね。ありがとうございます…!」

ほむらが乙哉の向かいに座る。
揺れるおさげに見とれながら、かわいいなぁと乙哉が耽っていると。
ほむらがあっと声を漏らす。

「先輩、食券買わないで待っててくれたんですか?」

ポンと財布だけテーブルに置いてあり、学食のメニューを購入する際発行される食券らしきものがない。
乙哉は我に返って、あははと笑う。

「うっかりしちゃってたー!あはは!マジ忘れちゃってたよー
 一緒に買いにいこーほむらちゃん♪」
「は、はい」

アサシンとの念話に夢中である意味忘れていたが
ドジを踏んだということでければ納得できる理由はないだろう。
本日のメニューを眺めながら、乙哉は言う。

「ここのカレーうどん、おいしいんだよねー!ほむらちゃんはどうする?」
「あっ、その…制服が汚れるかもしれないので……カレーうどんはちょっと…」
「そんなところ気つかってるの?かわいいー!!」
「えっ!?え、あう、その、かわいくなんかないですよ…ドジふんじゃうのが怖くてっ……」
「気使いも良さには入るってー。あ、そーだ!
 ハンカチで汚れないようにすればいいじゃん!!あたし、てんさーいっ!!」
「…あっ、そ、そうですね!」

ハタから見れば微笑ましい先輩後輩の交流である。
しかし、裏を返せば乙哉は殺人鬼。
ほむらは呪いを背負う魔法少女。
二人は聖杯戦争に参加するマスター。
一体、誰が想像できようか。

二人が再び席につく。
お揃いのカレーうどんが二つ並んでいた。
ネギが少々入っただけであとは麺だけの非常にシンプルな一品である。
いかにも学食にありそうなものなだけあって、ある意味慣れ親しんだ味だ。
好物だと言った乙哉は食事を一口含んだだけで
あとはほむらがうどんに息を吹きかけるのを眺めていた。

かわいい~……
そういえばアサシンも戦ったって言ってるから魂食いするのかなぁ?
それだったらほむらちゃんを……
うーん。まだもったいないかなー…

「あっ…おいしいです」
「でしょー!気づいたらあたし、いっつも食べちゃう!」
「毎日ですかっ?」
「大丈夫!家ではバランス取ってるから~」
「ですよねっ…ちゃんとバランス取らないと、私も体調崩しやすいので……」

ほむらがスープの方をすすると妙な悲鳴が上がる。

「ほむらちゃん?猫舌?
 あたしの水あげるよ。まだ口につけてないから」
「ああぁあぁ、あり、ありがと…」

呂律がうまく回らず、ほむらは必死に水の入ったコップを掴んだ。
その時。
チラリと令呪が見えたのである。
キャスターにも言われファンデーションで隠した令呪だが
コップを掴んだ時に水がこぼれ、かかったせいで消えたのだろう。
ほむらの一つ一つの仕草を眺めていた乙哉は容易に分かった。

その事を露知らず、ほむらは水を飲んで一息つく。

「ありがとうございます、乙哉先輩。はぁ……」
「…あ、ううん。へーきへーき。カレー臭くなっちゃうし、スープはたま~に食べればいいよ」
「そうですね」


◆ ◆ ◆


学食を後にしたほむらは令呪を見て、慌てて化粧室でファンデーションを塗り直した。
しかし、いつ消えたのか本人は覚えていない。
もしかしたらトイレに入った時に塗るのを忘れたのかもしれないし
何かで拭きとられてしまったのかもと…
乙哉に見られたとは夢にも思わなかった。


乙哉はほむらの令呪に気づいて、それをアサシンに報告しようか戸惑っていた。
というのも、同盟の話が引っ掛かっているからだ。
ほむらと同盟を組むのは悪くないかもしれない。
自分好みだし、手は…アサシン好みではないかもしれないが
サーヴァント次第ではアサシンも同意してくれるかも
だけど、好みだからこそいっそ今の内に殺しておくのも悪くない。


思考の末、結論は――


【C-3/月海原学園/一日目 午後】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:月海原学園中等部の制服、通学鞄
[道具]:勉強道具、携帯電話
[所持金]:数ヶ月マンションで一人暮らしが可能な財産
[思考・状況]
基本行動方針:マスターだとバレないように過ごす。
1.学園でマスターを探してみる。
2.学園でマスターだと気付かれないようにする。
3.学園で友だちをつくる。
[備考]
令呪は掌に宿っています。
月海原学園への通学手段としてバスを利用しています。
武智乙哉をマスターだとは気がついていません。
校門での一件を把握しました。

【キャスター(暁美ほむら(叛逆の物語))@漫画版魔法少女まどか☆マギカ-叛逆の物語-】
[状態]:健康 霊体化
[装備]:月海原学園中等部の制服
[道具]:各種銃火器、爆弾など
[思考・状況]
基本行動方針:まどかに辿り着くためならば全てを捨て駒にする。
1.マスターをサポートする。
2.マスターが使えないならば切り捨てる。
3.学園内に複数マスターがいるのではと警戒。
4.他の敵の情報収集。
5.新たな陣地作成を行いたい。
6.同盟に関しては保留。個人的には嫌。
7.人が集中する場所を重点的に調査したい。
[備考]
Bー6廃墟ビルに陣地作成を行いました(マスターは知らない)。
学園を狙った、もしくは学園内にマスターがいると判断。


【武智乙哉@悪魔のリドル】
[状態]:健康
[令呪]:残り3画
[装備]:月海原学園の制服、通学鞄、指ぬきグローブ
[道具]:勉強道具、ハサミ一本(いずれも通学鞄に収納)、携帯電話
[所持金]:普通の学生程度(少なくとも通学には困らない)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取って「シリアルキラー保険」を獲得する。
0.ほむらちゃんは――
1.他のマスターに怪しまれるのを避ける為、いつも通り月海原学園に通う。
2.有事の際にはアサシンと念話で連絡を取る。
3.暁美ほむらのおさげをチョン切りたい。
4.同盟に関してどうするか帰宅するまでには答えを出す。
5.可憐な女性を切り刻みたい。
[備考]
B-6南西の小さなマンションの1階で一人暮らしをしています。ハサミ用の腰ポーチは家に置いています。
バイトと仕送りによって生計を立てています。
月海原学園への通学手段としてバスを利用しています。
暁美ほむらをマスターだと把握しました。
暁美ほむらが瞬間移動させられたことを認識しています。暁美ほむら(反逆)の仕業とは気がついていません。
トオサカトキオミ(衛宮切嗣)の刺客を把握。アサシンが交戦したことも把握。
一日目・午前中に発生した事件を把握しました。ジナコについては知りません。


【B-6(南西)/マンション(1F 武智乙哉の住居)/一日目 午前】

【アサシン(吉良吉影)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康 、魔力消費(小)
[装備]:なし
[道具]:レジから盗んだ金の残り、タクシー代を払ったらほとんど残らない程度
[思考・状況]
基本行動方針:平穏な生活を取り戻すべく、聖杯を勝ち取る。
1.放課後マスターとの合流後に動く。具体的な方針もそこで決める。
 暫くは家の中で適当に暇を潰す。
2.同盟しているものに警戒。 同盟自体組むのは気乗りではない。
3.女性の美しい手を切り取りたい。
[備考]
魂喰い実行済み(NPC数名)です。無作為に魂喰いした為『手』は収穫していません。
保有スキル「隠蔽」の効果によって実体化中でもNPC程度の魔力しか感知されません。
瞬間移動を使う敵がいると想定しています。
B-6のスーパーのレジから少額ですが現金を抜き取りました。
醤油、卵を含む買い物を行いスーパーで配送依頼をしました。遅くとも正午過ぎには届くでしょう。
日持ちする食品を選んだようですが、中身はお任せします。
切嗣がNPCに暗示をかけ月海原学園に向かわせているのを目撃し、暗示の内容を盗み聞きました。
そのため切嗣のことをトオサカトキオミという魔術師だと思っています。
衛宮切嗣&アーチャーと交戦、干将・莫邪の外観及び投影による複数使用を視認しました。
切嗣は戦闘に参加しなかったため、ひょっとするとまだ正体秘匿スキルは切継に機能するかもしれません。
一日目・午前中に発生した事件を把握しました。




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武智乙哉 095:吉良吉影/武智乙哉は動かない
061:戦場に立つ英雄/台所という名の戦場 アサシン(吉良吉影

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最終更新:2014年12月05日 17:25