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聖杯観測 ◆y0PHxpnZqw



贖う。
君が抱いた願いは誰の為に背負ったものだっただろうか。
願う。
君が焦がれた願いは誰が為に祈ったものだっただろうか。
この小さな箱庭の中で今も戦っている請願者達。
請願者達は、いつだって前を向いてばかりで後ろを振り向かない。
正義、悪、未来、過去。様々な要素が絡み合った彼らは、どうしようもないぐらいに手遅れだ。
生きるか、死ぬか。それ以外に与えられた選択肢はない。

「今も生き残る請願者達さん、こんにちは。定時報告の前にまずは祝福のエールを贈りましょう。
 貴方達は多き請願者の中から勝ち上がった優秀な人種。 “聖杯”は願いを叶える瞬間を待ち望んでいます。
 やるべきことはわかっていますね? 戦って、足掻いて、欺いて、想って、生き残りなさい。全ては己が願いを叶える為に」

頭に響く声は“使い捨ての住民”には聞こえない。
過剰な排除は禁じられていても、所詮は駒なのだ。
駒は掃いて捨てるほど存在する。 そんな哀れな駒達の為に神は言の葉を授けるのだ。
主よ、汝らの来世に恒久なる平穏を。
クスクスと笑い声を上げるシスターが、清涼なる神託を述べていく。

「……祝福の言葉はここまでにしておきましょう。
 定時報告はただ一つ。“マスターとサーヴァントを含めた残存人数”だけよ。
 現時点での生存人数は56人。つまるところ、貴方達以外は全て淘汰されました。
 以上よ、それ以外の情報が知りたいのなら――教会に来なさいな。
 教えるかどうかはともかくとして、抱く疑問を聞く程度のことはしてあげましょう」

奪う。
例え、何が起ころうとも生き残るのは一人だけ。
喪う。
“聖杯”は喪失を望んでいる。 幾多の犠牲により研ぎ澄まされた願いだけを聞き入れる。
願う。
清浄なる聖杯よ、此処にあれ。紅き血をもって、その器を満たせ。
なればこそ、君の願いはきっと叶うだろう。

「最後に一つ。無駄な悪足掻きはおすすめしないわ。
 途中棄権なんて生易しい戦争じゃないって身を持って経験したでしょう?
 残された選択は一つ、闘争だけ。貴方達も、私も。所詮は観測対象に過ぎない」

その果てに、“聖杯”は顕現されるでありましょう。



――――だから、弁えろ。



もっとも、“聖杯”が願いを叶える保証なんて、何処にもないのだけれど。