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アサシン・オブ・アンタイ・オバケ・ニンジャ ◆ggowmuNyP2


野原しんのすけは子供である。

頭は悪い訳ではない。むしろ幼稚園児らしからぬ多くの語彙を持ち、コミュニケーション能力は非常に高い。
しかし思考回路が単純で、それでいてあちこち繋がりも悪いものだから、本人は真面目なつもりでも傍から見れば完全に理解不能な行動に走る事も珍しくなく、実際に無意味な事も多い。
しんのすけの性格を十分に知る相手ならばさておき、そうでない場合は自分の意思を自分で正確に伝達する事は不得手だと言える。

それでもこの聖杯戦争に於いて、しんのすけが全くの無力な存在だとは言えない。
否、単純な身体能力だけを見るならば、マスターの中でも上位に位置している。
至近距離から発射された銃弾を回避した事もある。
竹刀の回転によって突風を起こす程の剣道の達人と互角に戦った事もある。
武装した巨大ロボットに対し、道具も武器も用いずただその身だけで挑み、傷一つ負わず、息を乱す事もなく勝利した事すらある。

とはいえ――その能力は常に発揮される訳ではない。
例えば、母親である野原みさえと対峙した場合は、まず間違いなく、確実に勝てない。
身も蓋も無い言い方をするならば、しんのすけのスペックは本人のテンションとその場のノリに依るところが非常に大きいのである。
少なくとも現段階では、全力を出す事は叶わぬだろう。

人生経験は――その年齢からは不釣り合いなほどに――豊富である。
何物にも変えがたいような、常人ならば決して体験できぬような出来事を何度となく体験している。
それらがしんのすけに与えた影響は、勿論ある。
だが。
家族や友人達と過ごす日常もまた、しんのすけにとっては掛け替えの無い体験なのだ。
面白いし楽しいし、時には辛いし悲しい。
それらは当たり前に存在するものであって特別視するような事ではないし、何が特別なのかという判断も中々できない。

宇宙へ飛び出したり。
平行世界に渡ったり。
強大な悪と戦ったり。
そうした非日常は、家に帰るというプロセスを経て、数多存在する日常の一部へと還元される。

しんのすけは無知である。
世界とは、世間とは如何なるものか、という事と、自らが持つ知識や経験を結びつける事ができない。
それ以前に、そもそもそのような事を考えない。

故に――しんのすけはおバカな子供だ。
しんのすけ本人もそれを自覚しているし、周囲もそう認識している。
近頃は下品な遊びをする事が少なくなってきたり、妹である野原ひまわりの誕生当初は彼女に振り回される事が多くなったりと、
そういった時期による多少の〈ぶれ〉はあっても、そこは揺るがない部分なのである。
それは、この再現された冬木の地でも変わらない。

そして。
長所にも短所にもなり得るそれは、今この時点では――しんのすけの行動を制限する短所として機能していた。

「ねーねーおねいさーん、タマネギ食べれる~? 納豆にはネギ入れるタイプ~?」
「えーっとお……君、迷子?」
「んーん、オラ、人探ししてるの!」
「探されてるのは君の方じゃないのかナ――――――」

幼稚園から抜けだしたしんのすけは、早速調査を始めていた。
とは言っても、明確な方向性も何もなく、手当たり次第に聞き込みを行っているだけで、成果は殆どない。
単なる子供の戯言として無視されるのが大半である。
運良く会話に付き合う人物を見つけても、頻繁に話題が横道に逸れるおかげで、まともに聞き込みが出来ているかは怪しいところである。

先程しんのすけが話しかけた人物――豊満な胸をした金髪の婦警は困惑と苦笑を顔に浮かべながらも根気よく対話を続けている。
先日までの多くの行方不明者に加え、今日になって同時多発的に事件が発生している異様な状況下である。
加えて、しんのすけの与り知らぬところではあるが、早朝にも一人で行動していた少女が発見されている。
既に日が昇り、多くの人々が街中にいるこの時間帯であっても、婦警がしんのすけを保護しようとするのは当然と言えば当然であった。

「君、どこの子? ママは?」
「ママはいないゾ」
「え――?」
「でも母ちゃんなら家でお昼寝してるか、ワイドショー見てるか、ひまの面倒見てるんじゃないかなー」
「あーソウデスカー」

しんのすけは全身を軟体動物のようにくねらせた。

「んもう、どーしてオラの質問に答えないのにおねーさんはオラに質問するの~?
 アダッチーもやる気がないし、最近のおまわりさんはいけませんなあ」
「はいはい、幼稚園かお家か、近くなら送ってあげるから。分かんないなら――とりあえず交番かなあ」
「えー? オラ、魔法使いのお姉さんを探さなきゃいけないのにぃー!
 ……はっ、もしかしてオラのカラダが目当てなの!?」
「人聞きの悪い事言うなあー!」

本来の目的を半ば見失ったまま、漫才のような会話は続いてゆく。

――虎視眈々と機会を伺う、監視者の存在に気付かぬままに。

       ●

赤黒のアサシンのマスター、野原しんのすけの抹殺。
その指令を受けた悪魔の目玉は、しかし未だその命令を実行できずにいた。
理由は一つ。
周囲に人間が多すぎるのだ。
無論――下級の使い魔と言えども、一般人などに悪魔の目玉の行動を妨害できるはずがない。
だが、この人の群れの中にマスターやサーヴァントが紛れ込んでいた場合は話が別だ。
己が消滅させられる事など問題にはならぬ。
だが、それでアサシンのマスターを警戒させるのは上手くない。

――大魔王の言葉は全てに優先する。

逸る必要はない。既に手は打たれている。

深く、そして静かに。
悪魔の目玉は時を待つ――。

     ●

「ところてんおねーさーん」
「ところで、でしょーが。ん――」

婦警の表情に、警戒心が浮かぶ。
「お?」
しんのすけが首を傾げた、その時――ぽん、と、頭を優しく叩かれた。

「やあ、見つけましたよ、しんのすけ君。皆さん心配していましたよ」
「おおっ、組長!」
「園長です!」

現れた人物――自らが通う幼稚園の園長にしんのすけは物怖じせず、いつもの様にネタを振る。
外見的特徴を論うようにも聞こえるしんのすけの言動は教育的観点から見ればそれは好ましいとは言えないのだが、悪意は無いのだ。
それを理解している為か、最早諦めきっているのか、園長は深く話そうとせず、婦警に頭を下げた。

「どうも、しんのすけ君がお世話になりました。さ、しんのすけ君、帰りま――」
「あ、あのう」
「はい?」
「いや、あの、ホントのホントに組長じゃないんですか? 藤村組の組長は子供好きって噂も……」
「違います! 大体、私の苗字は高倉ですから!」
「うーん、オラ、それ初めて聞いた気がするー」
「あのねえ、しんのすけ君――」

       ●


「ヒッヒッヒ……!」

――幼稚園のごく近くに存在する個人用倉庫。
その内部の暗がりに、不気味な笑い声を上げる何者かの姿がある。

老人のそれにも似た顔面に、人の手足を生やす異形。
名を鬼面道士。
大魔王のキャスターの魔力によって造られた魔物である。

キャスターが初期に行っていた魔物作成スキルのテスト中に生み出されたこの魔物は、キャスターがアサシンとの不可侵条約を組んだ後に此処に送られていた。
悪魔の目玉によるアサシンのマスターの監視に加えた保険として、である。
そして案の定、アサシンは早々に条約を破棄した。

そこで――悪魔の目玉と同時に、鬼面道士もまた行動を開始した。
錯乱呪文《メダパニ》の重ねがけによって『調教』したNPCによってアサシンのマスターを人気の無い場所へと誘導し――然る後に悪魔の目玉がマスターを抹殺する。
どういう訳かマスターは幼稚園の外へと出て行ったようだが、こちらに気付いた様子は皆無だ。
所詮は子供であり、その行動範囲も知れたもの。
多少遅れは出るだろうが、計画に支障はない。

仮にマスターが令呪を使ってアサシンを呼び寄せたとしても――変身呪文《モシャス》によって化けた偽物ではない、本物のNPCなのだ。
それを攻撃して不都合が出るのはアサシンの方である。
仮にそれが看破されたとしても、マネマネを操られたNPCだと思い込めば今度はそちらを攻撃する事ができなくなるだろう。
更に、操ったと言っても一人だけ。マンションの魂喰いならばともかく、これが暴露されたところでペナルティなど課せられまい。
どう転んだとしても、キャスターが損を被る事はないのだ。

「キャスター様、もう少しだけお待ちくだされ……フィーヒヒヒ!」

最早アサシンのマスター、野原しんのすけに逃れる術は無い。
そう、NPCを操る鬼面道士が発見され、倒されぬ限り――。




【NINJASLAYER】




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「フィーヒヒヒ! フィーヒヒヒ……!」
ブキミめいた笑い声を上げ続ける鬼面道士。
ナムサン! しんのすけはこのまま悪魔の目玉の餌食となってしまうのであろうか……!?

その時である!

「イヤーッ!」
KRAAAAAAAAASH!
鬼面道士の頭上から突如破壊音! ガラス片が落下!
「アイエエエエエエエ!?」

窓を蹴り破って飛び込んできたのは……ニンジャ! ニンジャの……サーヴァント!
「ドーモ、はじめまして。アサシンです」
地面に降りて即座に行ったオジギからコンマ数秒後、アサシンは鬼面道士へと無慈悲な言葉を浴びせた。
「貴様を殺す」
「ナンデ!?」

「キャスター=サンの手の者か。あるいは、他のマスターの使い魔か。何であれ生かしておく理由はない。ニンジャ殺すべし」
片手に持っていた悪魔の目玉を握り潰す!
「このゴミクズとなった記録機器のように、オヌシもサンズ・リバーという名の廃棄場へと送られるのだ」

……時は数分前に遡る。
幼稚園へと向かう最中、突如として悪魔の目玉から送られる映像が途絶えた。
その瞬間、アサシンは自らの行動をキャスターに察知された事を悟った。

しかし……映像が途切れるその寸前、映像の視界が一瞬しんのすけから外れ、この倉庫へと向いた事を見逃してはいなかったのだ!
生前のアサシンは僅かな手掛かりからニンジャの痕跡を見つけてきた。
その経験とニンジャ感知力を持ってすれば何者かの存在を探知するのは実際容易な事であった。

幼稚園にしんのすけの気配はない。
未だ魔力供給は途絶えておらず、令呪も使用されていない。それでも決して安心はできぬ。
即刻この使い魔をスレイし、再び捜索に向かうべし!
ニンジャ判断力によって決断的に思考を完了させたアサシンの行動は素早かった。

「イヤーッ!」
ポン・パンチ! 鬼面道士の顔面へボディブローだ!
「アバーッ!?」
吹き飛んだ鬼面道士は受け身を取る事も出来ず壁に激突!

「ハイクを詠め。カイシャクしてやる」
ヒクヒクと痙攣する鬼面道士へとアサシンは足を進める。
「フィ、フィーヒヒヒ……!」
だが、鬼面道士はなおも笑いを浮かべている! コワイ!

「ヌゥーッ!」
アサシンがその歩みを止める。臆したか!? いや、そうではない!
彼の足元を見よ! そこには泥で造られた魔物の手、マドハンドがタケノコめいて地面から生えてアサシンの足首を握りしめているではないか!
なんたるズンビー・パニック・ムービーめいた光景か!

「マヌケめ! ここにいるのがワシ一人だと思うたかーっ!」
鬼面道士が杖を振りかざす。
それに呼応するように魔物の群れが暗闇から出現!
魔物はイノシシめいた姿をした獣人で、その手にはヤリを持った……オークである!

オークの筋力はバイオスモトリに匹敵し、その脚力は常人の三倍にもなるであろう。
まともに攻撃を受ければサーヴァントといえどもネギトロめいた惨殺体となるのは免れぬ!

「やれーっ!」
鬼面道士が号令する!
「ハイヨロコンデー!」
オークの群れはヤリを構えてアサシンに突撃!
マスターだけでなくサーヴァントをも仕留めたとなれば実際キンボシ・オオキイだ!

アサシンは未だマドハンドに拘束されている。
「スゥーッ! ハァーッ!」
チャドー呼吸と共にその場でジュー・ジツを構えるが、おお、それはヤバレカバレではないのか!?
……否!

「イイイイヤアアアアーッ!」
力強いシャウトと共にアサシンが跳躍! 抑え切る事が出来なかったマドハンドはアワレにも全ての指が千切れ飛んで即死!
「なっ、グワーッ!?」
驚愕し停止したオークの額にスリケンが突き刺さり死亡!

高く跳び上がったアサシンは空中でキリモミ回転、そこから全方位にスリケンを投擲したのだ! ヘルタツマキ!

「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」
突進してきたオーク達にスリケンが命中し全員死亡!
「グワーッ!」
硬直していた鬼面道士にも命中し重傷!

怯んだ鬼面道士の眼前にアサシンが降り立ち、そのままの勢いでケリ・キックを放つ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
たまらず倒れ伏す鬼面道士。赤黒の処刑人は冷酷にそれを見下ろした。

「バ、バカめ! ワシを倒したところで」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
アサシンが右腕を踏み潰す!

「あ、あの小僧が狙われている事には変わりは」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
アサシンが左腕を踏み潰す!

「キ……キャスター様に勝てると思」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
アサシンが右足を踏み潰す!

「アバッ……」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
アサシンが左足を踏み潰す!

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!
 イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

……数分後、倉庫の中に存在しているものはただの屍と化した魔物達だけであった。
時が経てば屍も消滅し、残るのはただ魔力の残滓だけとなろう。
ショッギョ・ムッジョ。アサシンも、そのマスターも、一歩間違えれば同じ道を辿るであろう。
だが、それはこの聖杯戦争ではチャメシ・インシデントでしかないのだ。
おお、ナムアミダブツ! 
ナムアミダブツ……!
……。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「さ、しんのすけ君、そろそろいい加減に――」
園長が何事かを言いかけた、その瞬間――園長は突然白目を剥き、ふらりとふらついたかと思うと、その場に倒れ伏した。

「お? どしたの組長、こんなところで死体ごっこなんてしてたら怒られるゾ」
しんのすけが身体を揺すっても、反応はない。
「ねえ~ん、組長ったらあ~ん」
言いながら、しんのすけがズボンと下着を脱いで臀部を園長の顔に乗せようとした時――呆然としていた婦警が我に返った。

「って、何してんの! じゃなくって、組長さーん大丈夫ですかー!?
 うわーっ、近くに大学病院はあるけど、動かしていいのかわかんないし……ああ、君もそこで待っててね!?」
「おおー……」

婦警はしんのすけから目を離し、携帯端末を取り出して連絡を始める。
「ワッザ!?」
「一体何が起こったんです?」
「ドシタンス!」
「ちょっとやめないか」
騒々とした声。周囲に徐々に人が集まり出している。

ここに至って漸くしんのすけは当初の目的を思い出した。
それと同時に、これもまた自身の周囲で起こっている事件に関係があるのではないか――という考えが脳裏によぎる。
根拠は無い。
無いのだが、そういった事には意識が及ばない。
その代わりに、好奇心は益々強くなっていく。
園長の事も気にならないでもないのだが、しんのすけに出来る事もない。
出来る事がなくても勝手に救急車に同乗したり、病人の見舞いに行って逆に症状を悪化させた事もあるのだが。

ともあれ――人込みを抜け出し、再び捜索を始めようとした、その時。
((しんのすけよ))
「オワーッ!」
突如として聞こえてきた声――ニンジャの声に、慌てて周りを見渡すが、声の主は見当たらない。
ニンジャとはそういうものなのだという今朝の言葉も思い出し、しんのすけは一人納得した。

「ねーねーおじさーん、これニンポー? ニンポーなの~?」
((……そうだ、ニンポだ))
「おお、凄いゾ! オラにもできる?」
((オヌシの声はニンジャに聞こえている。そう、いつもだ))

ややあってから――まるで躊躇っていたかのように――ニンジャの声は続いた。

((しんのすけよ。これから先、オヌシの前にはオバケが現れるかもしれぬ))
「それは嫌だゾ……フランス人形とかガチャガチャとか、そーいうのはあんまりいい思い出が……」
((だが、決してニンジャは負けぬ。ニンポによってオバケは滅されるであろう。アブナイを感じた時にはニンジャを呼ぶのだ。『困っている人を助けないのは腰抜け』。ミヤモト・マサシもそう言っている))
「おお、おじさん、ヒーローみたいでカッコいいゾ! ワーッハッハッハ!」
((…………私は、ヒーローではない))
「お?」

それきり、ニンジャの声は途絶えた。
暫くの間しんのすけは首を捻っていたが、自分はこれからお姉さんに会わねばならない、という事を再度思い出し、ひとまずニンジャについて考えるのをやめる。

「よーし、お姉さん探しにレッツらゴー!」

未だ自分の置かれた状況を知らず。
その背には監視者が置かれたまま。
轟々とした嵐を呼ぶ幼稚園児は、ただひたすらに我を貫く。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ブンブブブンブーン、ブンブブブンブンブーン、ブンブブブンブーン、ブンブブブンブンブーン……。

湿ったベース音が路地裏に響く。
ニンジャが跋扈せず、サイバネ技術もなく、違法薬物の横行もないこの冬木の街。それでも陽の当たらぬ場所はある。
人気のない、廃墟めいたアトモスフィアを感じさせるその場所で、自らのマスターを見守りながらアサシンはスシを食していた。

スシは優れたエネルギー補給食であり、ニンジャの持つニンジャ回復力を最大限に引き出す。
これまでに二体のサーヴァントと戦闘し、更に今回。
激しい消耗ではないと言えども、短期間に戦闘を繰り返してはマスターにもその累が及ぶ可能性はある。
こちらは常に監視を受けている以上、ザゼンを組み、落ち着いて回復力を高める事は実際難しいと見るべきであろう。
そう判断したアサシンは、マスターの元へと向かう最中に発見したスシ専門店から、スシ・パックをハイシャクしていたのだ。

そのスシはアサシンの存在していた時代ではオーガニック・スシと呼ばれる高級スシであったが、アサシンはそれに何ら感ずるものはない。
ただ無表情にスシを補給するアサシンの、その右目がギョロリと蠢いた。

((グググ……何たるブザマなイクサ。魔力さえ十分ならば、オヌシの実際情けないカラテであってもあのような弱敵など一瞬で爆発四散させていたろうに!))
自らの内に秘める宝具にして邪悪なるニンジャソウル、ナラク・ニンジャの声がアサシンのニューロン内に響く。

((フジキドよ、このままではジリー・プアー(徐々に不利)。オヌシが子守りにかまけている間にもあのキャスターは自らのカラテを更に高めていよう。惰弱なマスターなど捨て置け! 殺せ! 殺すのだ!))
((故に身体の支配権を渡せという訳か。聞く気はない。黙っているがいい ))
((バカめが! 幾らあのマスターに入れ込んだとて、オヌシは所詮……))
((黙れ))

アサシンは拳を握り締める。
そう、この身は何があってもあのマスター、野原しんのすけとは相容れまい。
サーヴァントだから? いや違う、アサシンは殺戮者だからだ。
あの、マルノウチ・スゴイタカイビルで妻子を失い、ニンジャとなった時から、フジキド・ケンジは……。

『ニンジャだぞー! ニンジャだぞー!』
『やれやれ、トチノキはニンジャが大好きだな。一体どこで、ニンジャなんて覚えたんだ?』
『あなたが買ってきたヌンチャクじゃない』
『スリケン! スリケン!』
『グワーッ! ヤラレター!』
『あなた、やめてください、恥ずかしい』

……ソーマト・リコールめいた、最早二度と帰らぬ情景。
その上に、自らがスレイした者達の最期が重なってゆく。

『アバッ……こんな事! 俺はニンジャなのに……ニンジャなのに!』

『嫌だ。死にたくない。こんなの間違いだ』

『寂しい秋な……実際安い……インガオホー』

『おれは罪深い亡霊だ。おれのような人間は、こうなるサダメ……カイシャクしてくれるか、ニンジャスレイヤー=サン』

『アイエエエ……助けて、兄ちゃん……』

『ま、今までクソの役にも立たなんだインチキ腐れボンズが、最期に現世利益をもたらして、万々歳ってことだ』

『俺のスシはがらんどうのからッポだ。ヨロシサンのクローンアナゴで恥を晒せてか。勝負ありだ、ワザ・スシ=サン。勝利の美酒に酔いしれるがいい。笑うがいい!』

『お前が俺を助けて、それでこんなにしたのに……お前が放っておいて……』

……アサシンは、己の在り方を決して変える事はないであろう。
この狂気を、復讐心を、消すことは誰にもできぬ。

英霊としての彼が登場する逸話……エピソードの多様性はスゴイ級である。
サツバツとしたマッポーの世、そこで逞しく生きるモータル達、隠された恐るべきニンジャ真実……。
だが、どうあっても変わらぬものもある。

『ニンジャが出て殺す』。

見よ、そのメンポの禍々しき文字を。より恐ろしく。ニンジャが恐れるように刻まれた、二文字の漢字を。
「忍」「殺」。
ニンジャを。殺す。

ニンジャスレイヤー。
それがこの英霊の真名であり、物語であり、宿命であった。

……おお、だが! だが、しかし!
彼の人間性は完全に失われてしまったのだろうか?
一片の感傷も持ちあわせていないのだろうか?

アサシンは実際防性のサーヴァントではない。
ただ敵を殺し尽くし、それによって自らのマスターを守るしかないのだ。
敵サーヴァントもあのキャスターとランサーだけではない。
いずれはマスターも聖杯戦争の意味を知るであろう。

だが、それまでは。
僅かな時間の間だけは……マスターにとってのアサシンは、オバケを倒す正義のニンジャなのだ。
しかし、果たしてそれが救いと呼べるのだろうか?
彼の右目は、際限なく血の涙を流していた。

……アサシンがスシを食べ終わる。
そして彼は奥ゆかしく霊体化し、しめやかにその場から姿を消した。


【B-4/街中/一日目 午前】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]健康
[令呪]残り三画(腹部に刻まれている)
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]無一文、NPCの親に養われている
[思考・状況]
基本行動方針:普通の生活を送る。
1.ニンジャは呼べば来る……
2.魔法使いのおねいさん(ルーラー)を探す
[備考]
※聖杯戦争のシステムを理解していません。
※一日目・未明に発生した事件を把握しました。
※ルーラーについては旗を持った女性と認識しています。
※映像によりアーカードの姿を把握しましたが共にいたジョンス、れんげについては不明です。
※悪魔の目玉による監視、及び殺害命令は継続中です。

【アサシン(ニンジャスレイヤー)@ニンジャスレイヤー】
[状態]魔力消耗(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを生存させる。
1.今はマスターを守る。
2.キャスター=サン(大魔王バーン)を優先して殺すべし。
3.キャスター=サン(大魔王バーン)は一端ランサー=サン(クー・フーリン)に任せる。
4.全サーヴァントをスレイする。
[備考]
※足立透&大魔王バーンとの休戦協定を破棄しました。



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049:シンデレランサー アサシン(ニンジャスレイヤー