衛宮とエミヤ ◆OSPfO9RMfA


「決めたよ、アーチャー。僕らは図書館に行こう」

 スーパーの駐車場にて戦闘を終えた衛宮切嗣は、アーチャーにそう宣言する。

「図書館?」
「あぁ、気配を絶ったアサシンを探すのは困難……と言うより、無理だろう?」
「そうだな。相手にもよるが、攻撃を仕掛けてくるならともかく、逃亡に徹するアサシンを見つけるのは、少なくとも私には無理だ」

 アーチャーは千里眼のスキルを持ち、遠方にいる相手でも判別できる。しかし、透視までは出来ない。
 遮蔽物が間に挟まるだけで、視線が遮られてしまう。高所に行き、見下ろしたとしても、地下街に逃げられれば発見することは出来ない。
 そもそも人通りも多く、この中から特定の人物を一人捜し当てるのは困難を極める。

「だから、次の遭遇に備える。その為に、図書館で情報を収集する。生前の伝承などが分かれば、弱点も分かるかもしれない」
「なるほど」

 『触れた物を爆弾に変える』
 宝具かスキルかまでは分からないが、かなり特徴的な能力だ。
 そこから探れば、検索はそこまで難しくないかもしれない。

「もう一騎、早朝にアーチャーが見たというランサーも居たな」
「角と尻尾を生やし、ドレスを着込んだ貴婦人か」
「そうだ。そちらは外見的特徴のみだから、検索は難しいかもしれない。こちらは調べてみないとわからないだろうな」

 推測ではあるが、竜の血が入っている英雄となると、それなりに数は減る。
 そこから槍使いを捜せば、結構な数に候補は絞れるだろう。
 それでも特定まで行けるかどうかは、やや怪しい。

「使えそうなNPC、および資材の確保は後だ。まずはアサシンへの対策をしたい」
「了解した。ところでマスター、検索施設は病院もある。こちらの方が近いのではないか?」
「確かにそうだが、僕は医療関係者ではない。そこで長々と居ると不審に思われるだろう。同様に学園も無理だ」
「図書館しか選択肢がない、と言うことか」

 マスターとしての身分を隠す必要が無くなるような状況にない限り、当分検索は図書館で行うしか無いだろう。

「それから、すぐ近くにレンタカーを借りれる所を見つけた。そこで車を借りて、図書館に向かうとしよう」
「わかった。しかしマスター、買い出しの品と原付はどうする?」

 原付は転がり込んだ家から借りてきた物だ。放置するわけにも行かない。
 買い出しの品を持ったまま、他のマスターが居るかもしれない図書館に行くのは、手が塞がりやや危険だ。おまけに生ものも入っている。

「そこはアーチャーの単独行動スキルの腕の見せ所だろう」
「……私に原付を運転して荷を持って帰れと? 私に騎乗スキルは無いのだが」
「サイドカーも付いている。何とかならないか?」

 アーチャーは困った顔をする。
 何とかならないのか、と言われても。身体能力の高い英霊だ。まぁ、何とかなってしまう。

「出来るだけ時間のロスは避けたい。まずはレンタカーの店に行く。僕がレンタカーを借りている間、アーチャーが原付で家に荷物を運ぶ。僕がレンタカーを借り次第、家に行きアーチャーを拾う。そしてそのまま図書館に行く。この予定で行こう」
「仕方ない、了解した」

 原付に細工が無いことを確認すると、切嗣達はレンタカーの店に向かった。






 切嗣はレンタカーの店の椅子に座り、タバコを吸う。既に申請は終わり、車の用意を待つだけだ。
 予定通り、アーチャーは原付で家に向かっている。
 今は一人だ。

「(本当は短時間でも単独行動はリスクが高い。するべきではない――が)」

 どうしても一人になりたい。一人で考えたいことがあった。

「(アーチャーはやはり、何か隠しているな……)」

 図書館での英雄の検索。切嗣はあえて言わなかったことがある。

 ――アーチャーの真名の検索。

 もし『本当に記憶を失っている』のなら、率先して提案してくるだろうと予想した。
 けれども、アーチャーは提案しなかった。
 その為、『何かを隠している』方に考えが揺らぐ。

 ……もっとも、彼ら英霊は聖杯戦争が終われば座に戻る。そして座に戻れば真名は当然思い出せるだろう。
 だから、『真名を思い出せないことを、本人はそんなに気にしていない』と言う可能性が無いわけではない。

「(それに、今の今に至るまで、なんら僕に害を為してない。戦闘行動も率先して協力してくれる)」

 不審には思う。
 だが、不審なだけだ。
 何も問題は無い。
 ……だが、引っかかる。

 アーチャーが側にいないことを良いことに、顔を露骨にしかめる。
 深く溜息をつくと、思い出したかのようにサンドイッチを手にし、頬張る。

「……やはり、美味いな」

 このサンドイッチも、アーチャーがわざわざ作ってくれた料理だ。
 自分を害しようとする奴が、こんな美味しい料理を手作りしてくれるだろうか。

「なんなんだろうな、アイツは……」 



【B-6(南)/レンタカーの店/一日目 午前】

【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]健康 、魔力消費(微小)
[令呪]残り三角
[装備]キャリコ、コンテンダー、起源弾
[道具]地図(借り物)
[所持金]豊富、ただし今所持しているのは資材調達に必要な分+α
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り、恒久的な平和の実現を
1.図書館でアサシン(吉良吉影)、ランサー(エリザ)、アーチャー(エミヤ)を調べる。
2.アーチャーに不信感。
3.使えそうなNPC、および資材の確保のため街を探索する。
4.昼を回ったら暗示をかけたNPCに連絡を取り、報告を受ける。
[備考]
※アーチャーから岸波白野とランサー(エリザ)の外見的特徴を聞きました。
※この街のNPCの幾人かは既に洗脳済みであり、特に学園には多くいると判断しています。
※NPCを操り戦闘に参加させた場合、逆にNPCを操った側にペナルティが課せられるのではないかと考えています。
※この聖杯戦争での役割は『休暇中のフリーランスの傭兵』となっています。
※搬入業者3人に暗示をかけ月海原学園に向かわせました。昼食を学園でとりつつ、情報収集を行うでしょう。暗示を受けた3人は遠坂時臣という名を聞くと催眠状態になり質問に正直に答えます。






「(……困ったな)」

 実体化し、原付を運転するアーチャー――エミヤシロウは口に出さず思う。

「(図書館に着いた爺さんは、当然、俺の事も調べるだろうな……)」

 切嗣はそのようなことを言わなかったが、予想は付く。
 自身からは進言しなかったのは、万が一、忘れている可能性を期待してのことだ。
 もっとも、期待はしていない。不審に思われないように進言すべきだったかと、若干の後悔はある。

「(パラメーターやスキル、宝具、戦闘方法……私を特定するのに十分な情報は渡してある。真名に辿り着くのは容易いだろうな)」

 それらはこの聖杯戦争に生き抜くために必要な情報だ。渡さないわけにはいかなかった。

「(検索から私の情報を消去するのは難しい。紙媒体ならまだしも、電子媒体の場合はどうしようもない)」

 それにその行動は極めて不審だ。切嗣からの信頼を大きく損なうだろう。
 取ってはならない手段だ。

「(今のマスターは衛宮士郎と会う前だ。真名が判明しただけでは、ただの名字が同じと言う類似点しかない)」

 検索施設では、パラメーターやスキル、生前の伝承がわかるとルールにある。
 パラメーターやスキルは既に切嗣は知っているし、どうでもいい。
 問題は、生前の伝承だ。

「(俺と爺さんの関係まで書かれてなければ良いんだが――)」

 切嗣と接触していると時折、今がまさにそうだが、自分が衛宮士郎なのか英霊エミヤなのか、分からなくなる時がある。

「(詳しく書かれてないことを、祈るしかないか……まぁ、書かれていても、致命的な問題というわけじゃないんだけどな)」

 養父の遺言を継いだ子が、その夢を叶えようとして叶えられなかった。
 ただそれだけの話だ。大したことではない。


 ――ならば何故、召喚された時に真名を隠した?


「(――言えるわけ、無いだろ)」

 爺さんをガッカリさせたくない。
 ただそれだけの、自己満足でしかない我が儘。
 でも、できるなら、できることなら、我が儘を通したい。

 拠点とした家に着く。
 時間が止まればいいのにと思うが、刻一刻と時は刻まれていく。

 切嗣がエミヤシロウに辿り着くまで、残された時間はあとわずか――



【C-7(北西)/民家/1日目 午前】

【アーチャー(エミヤシロウ)@Fate/Stay night】
[状態]右腕負傷(小)
[装備] 実体化した時のための普段着(家主から失敬してきた)
[道具]サイドカー付原付(借り物)、スーパーで買った食料含む買い出しの品
[思考・状況]
基本行動方針:切嗣の方針に従い、聖杯が汚れていた場合破壊を
1.切嗣と合流する。
2.出来れば切嗣とエミヤシロウの関係を知られたくない。
[備考]
※岸波白野、ランサー(エリザ)を視認しました。
※エリザについては竜の血が入っているのではないか、と推測しましたが確証はありません。
※『殺意の女王(キラークイーン)』が触れて爆弾化したものを解析すればそうと判別できます。ただしアーチャーが直接触れなければわかりません。
※右腕は軽傷であり、霊体化して魔力供給を受けていれば短時間で完治する程度のものです。

[共通備考]
※C-7にある民家を拠点にしました。
※家主であるNPCには、親戚として居候していると暗示をかけています。
※吉良吉影の姿と宝具『殺意の女王(キラークイーン)』の外観のみ確認しました。宝具は触れたものを爆弾にする効果で、恐らくアサシンだろうと推察していますが、吉良がマスターでキラークイーンがサーヴァントだと勘違い。ただし吉良の振る舞いには強い疑念をもっています。



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