中慈馬早苗&アーチャー ◆tHX1a.clL.
「さよなら委員長!」
「うん、また明日!」
皆を見送って教室の缶に清掃。
日誌を書いて、担任に提出。
そうしていつもの学校生活が終わる。
あとは専業主婦の母が待つ家に帰って。
母と一緒に料理を作り、サラリーマンの父が帰ってくるのを待つ。
今日学校であったことを話しながら食事をして、食事が終われば宿題と予習復習。
お風呂に入って、テレビドラマを見て、日付が変わる前には就寝。
中島早苗は、そんな平凡な学生生活を送る平凡な少女だ。
*
いつからだろう。
その日常の中に、確かなひずみを感じたのは。
*
足りない。
ふと、隣を見ると、誰かが足りない。
誰か分からないけど、足りない。
隣に居てくれる誰か。
その誰かの隣に居る誰か。
自分の世界を構成していた『だいじなもの』がすっぽりと抜け落ちてしまっているような。
そんな喪失感が、時々どっと胸に押し掛けて、自分の心を押しつぶしそうになる。
いつか気になって買った木彫りのネックレス『のようなもの』。
それを見ていると特にその喪失感が大きくなった。
これは確かに、その誰かと私を繋ぎとめていたはずのものだったはずだ。
彼女はそれを思い出したくて、毎日のようにベッドに寝転がり『それ』を眺めた。
「会いたい」
でも、分からない。
「会いたいよ」
どうしても出てこない。
「『みんな』、『みんな』に会いたいよ……」
誰かも知らない人を想い、顔も知らない人に縋り、一人泣く。
それも、彼女の日課となっていた。
「『犬塚くん』」
強い願いで、彼女の奥底の眠っている部分からようやく引きずり出せた、たった一つの名前。
その名前の相手が誰で、自分にとってどんな人物だったかはまだ思い出せない。
それが思い出せなくて、また悲しくなって。
「ねぇ、会いたいよ……犬塚くん」
顔も分からぬ彼の名を呼んで、涙で濡れた枕に顔を埋めて、
そのまま深い眠りへと落ちていった。
* * *
どうやら、疲れてそのまま眠ってしまっていたようだ。
早苗は上体を起こし、そのまま硬直した。
「問おう。貴様が俺を呼んだ『マスター』で間違いないな?」
目の前に立っていたのは、オールバックの金髪に浅黒い肌、そして真っ白な学生服。
そんな身なりの、2~3mはありそうな大男。
貞操の危機や人身売買といった単語が頭の中を飛び交う。
「答えろ!!! 貴様が俺の新たな―――」
「いけません、先輩!!」
大男の言葉を遮り、突如流れ出す『ハレルヤ』。
同時に世界が暗転し、天から一筋のスポットライトが差す。
スポットライトが照らすのは、両手を宙で交差させた栗毛のおかっぱが可愛らしい少女。
「なっ、お前、何故!?」
男の驚愕をよそに、少女は続ける。
「女性に乱暴を働いちゃいけません!蟇郡先輩の容姿だと、絶対に誤解されちゃいます!!
確かにマコは、先輩が老け顔で見た目怖くて変態だけど本当は優しい人だって知ってます!
でも!!
その人は何も知らないんです!!だから、最初は、怖がらせないように、話し合いから始めましょう!!!」
ランボーになったり養子になったりゴカイになったりデモを起こしたりしながら、少女はくるくると話を紡ぐ。
その様子は、まるで小さな劇場での短い演劇のようですらあった。
あっけにとられる早苗をよそに、乱入者の少女と最初から居た男性のやりとりは続く。
「ええい、最初から話し合おうとしているだろうが!!
貴様が出てくると話がややこしくなる!! 出てくるな、満艦飾ぅ!!」
「駄目です! マコは出ます!! 入る場所がないから出るしかないんです!!」
「貴様は俺の宝具だろうが!! 言うことを聞いて静かにしていろ!!」
「ぎゃー!! 乱暴されるー!! 助けて―!!!」
大男が器用に逃げ回る少女のセーラー服の襟をつかみ、そのまま少女を引きよせて取り押さえる。
数秒後、取り押さえられていた少女は忽然と消えた。
まるで『魔法の種が切れた』みたいに。
大男は深く息を付き、早苗に向き直る。
「……先ほどのは、俺の宝具だ、見た目は人だが……いや、話が前後しているな、まずは俺の事から話すべきか」
男は、今度は座って(きっと少女が言った『怖がらせないように』を意識しているのだろう)
早苗に向き合って、目をしかと見開いて叫んだ。
「俺はアーチャー、真名は『蟇郡苛』!!! 『元』本能寺学園風紀部委員長であり、マスターであるお前を守る生きた盾だ!!!!」
アーチャー。
その単語を聞いて、早苗の脳が覚醒する。
聖杯戦争、マスター、サーヴァント、仮初の学園生活。
そして、思いだす。
自分が失っていた、大事な大事な思い出たちを。
出会い、過ごし、笑い、泣き。
認め合い、高めあい、皆で過ごした学生生活。
どうして忘れていたんだろう。どうして忘れられたんだろう。
あんな大事な思い出を。
中島早苗が『中慈馬早苗』であるための、大切な部品。
大嫌いだった格闘を通じて得た、かけがえのない友。
全てを取り戻し、彼女は泣いた。
人目もはばからず、声をあげて泣いた。
泣いて、泣いて、泣き疲れて。
涙も枯れた頃。
蟇郡と名乗った大男は、何も言わずにハンカチを差しだしてきた。
そのハンカチを受け取り、涙をぬぐいながら蟇郡に伝える。
自分の『聖杯に捧げる願い』を。
「私、帰りたい」
「うむ」
「私、帰りたいです! みんなのところに、犬塚くんたちが待ってるところに、帰りたい!!」
「その意気やよし!! 俺は貴様の、その願いを叶えるために戦おう!!!」
いつの間にか背が4mくらいになっている彼が立ち上がり、叫ぶ。
その姿は、何とも頼もしい。
つられて早苗も勢いよく立ちあがり、うっかりスカートを翻してしまう。
慌ててスカートを押さえるが、どうやらその必要はなかったようだ。
蟇郡は、ぷいとそっぽを向いていた。
なかなかどうして、変なところでも硬派なところが、彼女の好きだった青年を彷彿とさせる。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね! 私、満艦飾マコ!! 特技は、食べることと、寝ることと、起きることでぇす!!」
「中慈馬早苗です。よろしくね、蟇郡くん、マコちゃん」
「だから貴様何故出てきている満艦飾!!!」
「ひゃー、見つかっちったぁ!!!」
そんな二人の楽しげなやりとりを見て。
早苗は、本当に久しぶりに、犬塚孝士たちと居た時のような心の底からの笑顔になれた。
【クラス】アーチャー
【真名】蟇郡苛
【パラメーター】
筋力D(B) 耐久D+(B+++) 敏捷E(D) 魔力E(D) 幸運A+ 宝具B
【属性】
・秩序・善
【クラススキル】
対魔力:E(B-)
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
ただし縛の装の時はキャパシティ限界以内の魔術を無効化し、攻撃力に転換できる
単独行動:B
マスターからの魔力供給が無くなったとしても現界していられる能力。ランクBは二日程度活動可能。
【保有スキル】
献身:B
他者に対して奉仕することを生きがいとする者に与えられるスキル。
自身の命を賭して他者を守ろうとした蟇郡の行動とそれを裏付ける彼の精神がそのままスキルとなった。
このスキルを持つ者は攻撃を受けようとする他者を庇う行動に必ず出る。
自身のマスター>(満艦飾)>他マスター>他者サーヴァントの順番で優先する。
被虐の誉れ:B
サーヴァントとしての蟇郡苛の肉体を治癒する場合、それに要する魔力の消費量は通常の1/4で済む。
彼の闘志は痛めつけられるほどに燃え上がり、秘めた力のすべてを引き出すに至る。
むしろ彼は、痛めつけられないと本気になれない。
被虐体質:B
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。
マイナススキルのように思われがちだが、強固な守りを持つサーヴァントがこのスキルを持っていると優れた護衛役として機能する。
若干の防御値プラスも含まれる。
変態:A
魔力消費無しで変態することができる。
蟇郡の場合、通常字から体躯をある程度伸び縮みさせることができ、極制服を纏ってまた変態ができる。
【宝具】
『本能寺学園の劣等生』(ちがうよ、シバさんってひとじゃなくてマコだよ!)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:30
何故か二人で一緒に居る機会が多かったため、蟇郡苛が英霊化する時にくっついて宝具化してしまった。
人の形をして人のように話しているが厳密には人ではなく、蟇郡の中の『満艦飾マコ』を象ったイメージが宝具として顕現したもの。
時々呼んでもいないのに勝手に出てくるのも蟇郡が『満艦飾マコはそういう人物だ』とイメージしているから。
体はイメージだが思考は本人の物であるため、蟇郡が考えつきもしない突拍子もない事を普通に行う。
ただ、宝具としての能力は蟇郡が望んだ時にしか発動されない。
宝具としての能力は以下の二つ、発動キーも宝具名ではなくそれぞれの技名になる。
『満艦飾マコ劇場』(やれ、満艦飾!)
戦闘を30秒強制停止させ、さらに仕切り直し:Cと同等の効果を発動する。
この宝具が発動した場合、理性のないサーヴァントも動きを停止してマコに注視する。
この宝具の効果による強制停止中に逃走や回復はできない。
『満艦飾マコ突撃』(ゆけ、満艦飾!)
喧嘩部特化型極制服を着たマコによる特攻。
直線上に居る敵を殴りぬける突破技、近くに居る敵を我武者羅に殴りつける破壊技
そして縛の装状態の蟇郡をブン殴る蓄積技がある。
この宝具が自動追尾の飛び道具扱いとなるため、また、下記死縛の装で遠距離攻撃ができるためアーチャーとして呼ばれてしまった。
【weapon】
『三ツ星極制服』
『生命繊維』が30%織り込まれた特殊制服『三ツ星極制服』を見に纏う。
戦闘が始まると以下の『装』へと逐次変化していく。
○縛の装
蟇郡の極制服の初期戦闘形態。
全身を灰褐色の包帯のような布で拘束し、口にはオレンジ色のボールギャグを咥えた姿。
防御力に優れ、敵の攻撃を物ともしない堅さを誇る。そしてダメージが頂点に達すると『死縛の装』に二段階変身する。
○死縛の装
「縛の装」が敵の攻撃を受け続けて力が頂点に達した時に変身した姿(厳密には「縛の装」の布の拘束から解放された姿)。
攻撃が強ければ強いほど短時間でこの姿になることが可能でアイアンマンのような鎧にボールギャグを咥えている。
力を解き放つと全身を覆っていた布が無数の鞭に変化して相手を攻撃する。
またボールギャグを噛み砕き拘束を解放することで、敵を挟んで型に嵌め押し潰す鉄板や、刺の付いた鉄輪による拘束と言った攻撃も行う。
『チタン鋼ハラマキ』
幸運・耐久を底上げするチタン制のハラマキ。、
【人物背景】
本能寺学園・風紀部委員長。
学園内の風紀を取り締まる、厳格かつ高圧的な性格の大男。両耳にピアスをしている。
意図的に就学浪人しているため、年齢は20歳。
両腕の籠手に仕込まれた2本の棘まみれの鞭を操る。
一つ星極制服を盗んだ鈴木を容赦なく制裁したり、皐月の送迎のために車の運転免許を取得するなど、皐月への忠誠心は絶対的なものである。
根は真面目な人物で、風紀員としての矜持も本物であり、「鮮血」を早朝に洗濯されてしまったためパジャマ姿で登校していた流子を叱ったり、危険思想を持ち卑劣な作戦を行った大暮麻衣子を「放校」処分したり、
カバーズに占領された本能字学園の映像に全裸で拘束された皐月が映った際に慌てて「見るな!」と注意し胸を隠したりしている。
一方で、困っている生徒がいれば、たとえ流子でも手を差し伸べるなど校務を忠実に守っている。
就寝時は全裸がモットー。
鞭打たれて力を蓄えるという極制服の発動条件やその際の発言が相まって、満艦飾マコからは「老け顔の変態」と称されている一方、彼自身にはマコを認めた言動が多い。
打たれれば打たれるほど強くなるマゾ。(他称)
【サーヴァントとしての願い】
マスターを『犬塚くん』の元へ返し、自身らも本能寺学園に帰る
【方針】
マスターを元の世界へと返すため、この聖杯戦争を生き抜くための『盾』となる。
【マスター】中慈馬早苗@すもももももも~地上最強のヨメ~
【参加方法】ゴフェルの木片で出来たボールギャグ(ウマ仮面の装備)
【マスターとしての願い】元の世界への帰還
【weapon】神護如意天馬羽衣ver1(制服の下に既に着ている)
神護如意天馬羽衣ver2
【能力・技能】
『珊底羅神護流(さんてらしんごりゅう)古武術』
珊底羅神護流古武術は足技を駆使して戦う古武術であり、莫大な気を蹴り足に乗せて放つことができる。
早苗の場合、この古武術の肝である『気』を高めるのは羞恥心である。
つまり、早苗が『恥ずかしい』と思えば思うほど強くなる。
そしてそんな早苗の『気』の増幅を手伝うのが戦闘装束・神護如意天馬羽衣(しんごにょいてんまはごろも)である。
神護如意天馬羽衣ver1は露出が多く、布面積を任意で減らすことによって力を解放していける。
神護如意天馬羽衣ver2は露出は少ないが攻撃を受けると服が脱げていき、追い詰められれば追い詰められるほど強くなる。
どちらも最終的にはほぼマッパ(局部は隠さないが支えてたヒモは残る)になり、羞恥心最高潮で最強になることができる仕様である。
【人物背景】
通称「委員長」。
17歳。身長163センチメートル。1月14日生まれ。山羊座。スリーサイズはB86(Dカップ)、W58、H84。A型。2-C在籍。
勤勉で温厚な性格をした、可愛らしい三つ編みの眼鏡っ娘。
健気であるが、思い込みが激しく恥ずかしがり屋。
当初は武術とは関係の無い人物だと思われていたが、実は『珊底羅神護流古武術』の継承者であり、家の掟により正体を隠しつつ、代折羅不動心眼流古武術の継承者である孝士を陰ながら守っている(犬塚家の要人を一人前になるまで護衛するのが使命)。
容姿は昔のキミエにそっくりの美人で、主要人物の少女の中では一番女らしい少女。
掟と関係なく孝士に好意を寄せており、孝士との普通の恋に憧れているが、中慈馬家の掟により告白出来ずにいる。
好みの男性のタイプは少女漫画に登場する彼氏のような人で、筋骨隆々の「いかにも格闘家」のような人間を嫌う。
恥ずかしさが増すとパワーアップ、更に極限に達するとリミットブレイクする。
脱がなければ本気を出せないので、戦いの度に身体を晒し恥ずかしい思いをしなければならず、しかも一部では「変態」呼ばわりされているという、この漫画の中で一番の苦労人かつ薄幸の少女となっている。
ウマ仮面として何度も姿を現しているが、普段とのギャップからか知り合いにはバレずにいる。
脱げば脱ぐほど強くなる露出狂。(他称)
【方針】
優勝狙い。
最終更新:2014年08月24日 20:13