岡部倫太郎&キャスター ◆6PazegkVqw





────全ては運命石の扉の選択のままに。





岡部倫太郎という男にとって、それは初めての経験だった。あの3週間で世界の全てを覗いたと思っていた岡部も、到底知りえない経験だった。

「……俺だ。どうやら機関の連中は想像以上に事を進めていたらしい。この鳳凰院凶真を誘拐するとは、連中も相当の手馴れと見える。
ああ、生きて帰ったらまた連絡しよう。エル・プサイ・コングルゥ」

岡部倫太郎は混乱していた。携帯電話を片手に悠々と会話している様からは想像も出来ないが、混乱していた。
仮にも科学者、理系の人間である彼にとって魔術などというものは単なる噂に過ぎず、そんなものが実際に存在しているなどと考えたこともなかった。
だがその思い込みを否定するかのように、右手には令呪が浮かんでいる。それこそ、ここで起きている出来事が現実であるという何よりの証拠だ。
常日頃の妄想が具現化したのか、あるいはよっぽど軸のズレた世界線に来てしまったのか。もしダイバージェンスメーターがあればとんでもない数値を叩き出していたことだろう。

「……それにしても何なのだこれは。俺はこんな厨二乙な世界に心当たりはないぞ」
「よう。あんたが私のマスターか?」

思わず嘆き声を上げる岡部の背中に声を掛ける者が一人。岡部が振り向いた先に居たのは、全身黒ずくめの────魔女、と形容するしかない服装の少女。
その姿を目にすると同時に、岡部の脳内へ大量の情報が流れ込んでくる。

「お前は……キャスター、か」

流れ込んできた情報の処理に四苦八苦しながらも岡部が問いかけると、キャスターは手にしていた箒を肩に担いでニヤリと微笑んだ。

「キャスターのサーヴァント、霧雨魔理沙だ。ま、よろしく頼むぜ」

キャスターというのは魔術師のサーヴァントだ。聖杯戦争における神秘の象徴とも言えるそんなサーヴァントを引き当てたのが科学者である岡部であったのは何とも奇妙な因縁である。
岡部はそこまで考えてから、ふと思い至る。

「キャスターよ。お前は魔術が使えるんだろう?その宝具とやらを少し見せてみろ」

味方の戦力は把握しておかねばならない。ここでどう動くかはまだ決めていないが、いずれにせよ戦力の確認は最重要事項だ。
強ければそれで安心できるし、弱ければ弱いなりに立ち回りを考えておかねばならない。ステータスを見る限りあまり強いとは言えそうにないが、宝具次第では逆転出来るだろう。
岡部の問いかけにキャスターは不敵な笑みを受かべながら数枚の紙切れを取り出した。

「私の宝具はこいつ。“スペルカード”さ」
「は?」

あまりに期待の斜め上を行く返答に岡部は間の抜けた声を上げた。
宝具と言うからにはもっとこうエクスキャリバーとかそういうものを想像していたのだが、実際に出てきたのはペラペラの紙切れだ。
こんなものでどう戦えというのか。カードで攻撃できる存在となれば頭のおかしい髪形をした決闘者の連中くらいのものだろう。

「カード?よもやそれでモンスターを召喚したりするのではあるまいな。……いやキャスターならばそれも間違いではないか」
「そんなもの呼び出せる訳ないだろう。私はそういうチマチマした魔法は嫌いなんだ。魔法は派手じゃないとな」
「ほほぅ?ならばその派手な魔法とやらを見せてみるが良いブラックマジシャンガール。生憎だがリーディングシュタイナーを持つこの鳳凰院凶真に小手先の誤魔化しは通用せんぞ」
「……了解、マスター」

────その時キャスターが悪戯っぽい笑みを浮かべていたのに気付いていれば、岡部はあのような体験をすることはなかったはずだ。

「恋符『マスタースパーク』」

キャスターはそう口にすると、懐から取り出した何かを構える。
それが何なのか岡部が考えるよりも早くその宝具は発動し、空間の中で炸裂していく。空気は震え、草は薙ぎ、風は止まった。
それと同時に凄まじい衝撃が岡部の身体を襲うが、何とか目は閉じずにいた。その中で見た光景は極大のレーザー光をその手のひらから放つキャスターの姿。
恋符『マスタースパーク』。
生前のキャスターが最も得意としていた魔法にして、最大の切り札であるそれは並の人間、サーヴァントであれば容易く焼き払う程の火力を秘めている。
それこそ正にキャスターの生き様────「派手でなければ魔法じゃない。弾幕は火力だぜ」という言葉を象徴した宝具である。
その圧倒的な破壊力を目の前にした岡部はただ呆然とし、そして畏怖と敬意を抱いた。人間のたどり着けない境地に達した人間。彼女は正に英霊なのだ、と。

「フ、フゥーハハハ!流石は英霊というだけのことはある。いいだろう、貴様はこの狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真の仲間となるに相応しい人材だ。
この鳳凰院凶真が漆黒の魔術師(ブラックウィザード)の二つ名を捧げてやろう。光栄に思え」
「意味が分からん。ま、これで私の実力も分かったろ?……そうだ、ついでに訊いておくがマスター、あんたは何か願いがあるのか?」

岡部はキャスターの問いに声を詰まらせた。
願い。聖杯は万能の願望機、どんな願いも叶える魔法の物体だ。
過去の自分ならそれに縋ることもあったのだろう。過去を変えたいと願うことも出来るし、自分の望む未来を作り出すことだってできる。
だが、今となってはもはやそんなものに魅力を感じることはない。
過去や未来を好き勝手に改変してはいけない。それが例え万人が幸せになる結末だとしても、全ての想いをなかったことにしてはいけないのだ。
それはあの3週間を乗り越えた岡部自身が一番良く知っている。だから、聖杯は必要ない。歪な形で叶えたい願いは持っていない。

「……生憎だが俺は聖杯などというものに興味はない。俺は既に願いを叶えてしまった身だからな。だから聖杯はウィザード、お前にくれてやる」

そう言ってのけた岡部をキャスターは珍しそうに見つめて言った。

「珍しい奴だな。タダで貰えるお宝が必要ないのか?」
「フン、狂気のマッドサイエンティストに聖杯など要らぬ。俺は既に世界を征服した男だからな!フゥーハハハ!」

その子供染みた芝居を眺めながらキャスターはふと思う。自分の願いとは何であったか、と。
その人生を好きなように生きてきたキャスターにとって、おおよそ悔いの残ることはなかった気がする。
一つあるとすれば、それは生きている間に捨虫の魔法を会得できなかったことくらいだ。それにしても、生き返ってまで叶えたいというほどのものではない。
ただ、「聖杯」には興味がある。万能の願望機と言うからにはさぞかし高位の魔法が使われている筈だ。
それを手に入れてみるというのも案外悪くないかもしれない……キャスターはそこまで考え、苦笑する。全く、英霊となってからも蒐集癖は相変わらずか。どうやらこの癖だけは死んでも治らなかったようだ。
ともかく、折角の舞台だ。色々と派手に動いてみるのも悪くない。随分と変わったマスターだが、退屈はしないだろう。

「……ま、貰えるのなら貰っておくか。精々よろしく頼むぜ、マスター」

そう言いながらキャスターは岡部に向けて右手を差し出した。岡部もその手を握り返して微笑む。

「了解した。ウィザードよ、我が僕としてこの鳳凰院凶真に忠誠を尽くすが良い。この狂気のマッドサイエンティストが突き進む悪の道を共に照らし出そうではないか!」
「相変わらず何が言いたいのかさっぱり分からんな……」

【クラス】
キャスター
【真名】
霧雨魔理沙@東方project
【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷A 魔力A 幸運C 宝具A
【属性】
中立・中庸 
【クラススキル】
陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げることが可能。
ただし非常に散らかっている。

道具作成:C+
独自に魔力を帯びた器具を作成できる。

【保有スキル】
飛行:A
箒を使用して飛行することが可能。そのスピードは人間としては最速レベル。

窃盗:B
サーヴァント・人間を問わず他人の所有物を自分のものとすることが可能。効果は物品だけでなく技術にも適用される。
ただしこのスキルで盗むことが出来るのはキャスター自身が使用できるものに限られる。

喰らいボム:C
キャスター自身が危険と判断した場合、無条件で残りの魔力を放出し同ランク以下の攻撃を無効化する。

グレイズ:B
射撃武器による攻撃を命中直前で回避する。
ただし視界外からの攻撃に対しては無効。

【宝具】
『恋符・マスタースパーク』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~200 最大補足:300人
キャスターの持つミニ八卦炉から極太のレーザー光を発射する技。
その威力は凄まじいの一言だが、非常に燃費が悪いため乱用は危険である。

『彗星・ブレイジングスター』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~700 最大補足:1人
キャスターの騎乗する箒にミニ八卦炉を取り付け、マスタースパークによる爆発的な加速を得た箒で突っ込む大技。
人間としては最速レベルのスピードで突入するため、回避するのは非常に困難。

【weapon】
「ミニ八卦炉」魔力で炎を放出するマジックアイテム。その火力は山火事を起こせる程強力。単独でも相当な火力を発揮するがキャスター自身が魔力を込めることでその威力はさらに倍増し、レーザー光線を放つことも出来る。
その他にも魔除け、開運、空気清浄など様々な機能を備えている。
【人物背景】
東方Projectのもう一人の主人公。普通の魔法使い。
普段は幻想郷という世界の魔法の森で霧雨魔法店を営んでいる。努力家であるが、それを見られるのを嫌うひねくれ者。
何かと理由をつけては他人(特に妖怪)の持ち物を盗む癖がある。それは技術においても例外ではなく、「恋符・マスタースパーク」も他の妖怪から盗んだものである。
箒を使って空を飛び、その速度は人間では最速クラス。
「派手でなければ魔法じゃない。弾幕は火力だぜ」という言葉通り、得意な魔法は光線や星型の弾丸を飛ばすといった派手なものが多いが、その派手さは全て地道な作業と努力から成り立つ。
【サーヴァントとしての願い】
願いはないが、出来ることなら聖杯を手に入れたい。
【基本戦術、方針、運用法】
戦術:派手好きかつ好戦的な性格である為、真正面から突っ込んでいくタイプの戦いを好む。
もちろん肉体的には脆弱であるため、そこを考慮する必要がある。

方針:とりあえずマスターの指示に従う

運用法:彼女の宝具はどれもこれも燃費が非常に悪い為、魔力量の少ない岡部が宝具を乱発するのは危険。
キャスターというサーヴァントの性質を考えるとやはり待ち伏せ・奇襲が最も有効な手段であるが、キャスター自身がその戦法を受け入れるかどうかは別問題である。
全ては岡部の説得と運命石の扉の選択次第。

【マスター】
岡部倫太郎@Steins;Gate
【参加方法】
未来ガジェットの素材であるガラクタにゴフェルの木片が混じっていた。
【マスターとしての願い】
特に無い。早く帰りたい。
【weapon】
「携帯電話」ごく普通の携帯電話。Dメールは送れない。機関と連絡を取ることが可能。
【能力・技能】
「カマかけ(サイズハング)」
相手の心を読める、という設定の能力。
「運命探知(リーディングシュタイナー) 」
世界線を移動した際、別の世界線の記憶を引き継ぐことが出来る。上記のサイズハングとは違い正真正銘の特殊能力である。
基本的にはごく普通の学生であるため、特殊な戦闘能力などは有していない。ただ、過去を改変するために何度もタイムリープを繰り返すなど精神面はかなり強い。
【人物背景】
東京電機大学に通う学生。自称「狂気のマッドサイエンティスト・鳳凰院凶真」。親しい人物からは「オカリン」と呼ばれているが、本人はこう呼ばれるのを嫌がる。常に白衣を着用しており、好物はドクターペッパー。
秋葉原のとある雑居ビル2階に「未来ガジェット研究所」というサークルを立ち上げ、「未来ガジェット」なる発明品の製作に勤しんでいる。
酷い厨二病を患っており、唐突に通話中ではない携帯電話にむかって「機関の陰謀」などとノリノリで喋る痛い男。
他人に対する態度も尊大かつ上から目線というどうしようもない性格である為、「未来ガジェット研究所」のメンバー、通称「ラボメン」以外にはあまり友人が居ない。
一方で頭が上がらない相手や不測の事態にはあっさりヘタれたり、ラボメンのために体を張るなど、根はお人よしなごく普通の青年である。
【方針】
聖杯に興味はない。とりあえず帰る方法を探す。でもちょっとだけ戦ってみたい。