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破戒すべき全ての電人(ルールブレイカー) ◆ZTnr6IpaKg


錯刃大学、春川研究室。電人HALはそこにいた。
パソコンを使い、朝早くから仕事を片づけている…
という体裁を整え、洗脳した人間から逐一送られてくる情報を処理する。
電人が実体があるキーボードを一々叩くというのも妙ではあるが、
現在のHALは『春川英輔』としてここにいることになっている。
一応、外面だけでも人間として取り繕っておくのは、情報秘匿の観点からも無駄ではないだろうという考えだ。
当然ながら、キーを叩きながらも電人としての能力を駆使してパソコンを通じて処理を行っているため、
実際の作業量としては見かけ以上に膨大なものとなっている。

アサシンは既に周囲の見回りを済ませ、HALの背後に待機している。
流石に畑違いであるためか、画面に映る情報からでは有効な考えを引き出せないようだ。
この仮想空間という場での専門家であるHALが基本的な戦術戦略全般を担当し、
戦闘に関わる領域ではアサシンが主導するというのがこの二人のスタイルである。
つまり、今現在は電人HALが仕事をする場面だということである。
得られた情報から、今後の立ち回りを考えなくてはならない。

「ふむ…ネットワークにはある程度網を張ったが、どうしても手を出しにくい領域が幾つかある。
 私以外のハッキングによる侵入者…。特に、極めて高度な外部演算装置の補助を得ているモノがいる。
 ……私以上に電脳世界で力を持つなど、私が元いた時代では有り得ぬことだ。
 未来か、より技術が進んだ世界からの参加者といったところか」

「"ますたぁ"は、本来その"ねっとわぁく"や電脳世界とやらに生きる存在だと聞いたが、
 それでも手が出せぬ、と?」

「コンピューター…私の力の源でもある、この絡繰の性能が違いすぎるようだ。
 私以上の処理能力を持つ、というのは非常に興味深いがな。
 それでも、外部から侵入して行われる補助と、内部から直接電人としての力を使える私では、
 私の方が力を行使しやすいという優位がある。それ故にどうにか直接対峙せずに済んでいる。
 ハック能力を持つ数人の参加者は、私の存在を察しているかもしれないが、こちらの所在が割れることはない。
 ……迅速に始末する必要はあるがな」

この拮抗がいつまで続くかはわからない。
彼がアドバンテージを保つためには、この仮想世界で彼に対抗できるマスターとは、
可能な限り早めに決着をつける必要がある。無論、サーヴァントの力を以て。
ネットワークから自由に情報を得られるのは、その後の話である。

「それよりはわしの任となるな。
 …しかし、やはり、わしが直に探るのではなく、お主の手下が絞り込んでからになるか」

「情報源としては、洗脳した人間の方が優位であるからな。現状は。数が必要だ。
 ……ままならぬものだ。ここはあくまで仮想空間だというのに」

現実世界での限界を"0"と"1"の世界で越えるための存在が、
仮想世界において人間のふりをして実体を保ち、人間を第一の情報源として当てにするとは中々の皮肉だ。
HALは、そう自嘲した。
もしも街中のパソコンや監視カメラ等のデバイスを掌握できれば、マスター探しも楽に済む。
その能力もあるのだが、そこまで派手にやらかすと、逆に位置がばれる可能性が高い。
故に、情報収集は洗脳した人間を使い、地道に行うこととした。 

地道だが、これが一番確実ではある。
攻撃されないNPCという、安全を保障された目を町中にばら撒いておけるのは大きな優位である。
殆どの手駒が大学の人間といっても、一日中大学にいるわけではない。
日中からそれなりの人数が外に出ていても、決して不自然ではない。
情報の受け渡しはメールなどによるものが主となるが、
彼の元へと送られるものだけであれば盗聴されないように回線を保護するのは容易い。

それに、病院に洗脳済みの人間を入れることができたのも大きい。
大学病院だからこそ、医学部の人間を送り込んでも不自然ではなかった。
多くの人間が集まり、また令呪の有無をごく自然に調べることができる場所だ。
怪我をしたマスターが来ることもあるかもしれない。
……流石にそれは話が旨過ぎるか。

ともかく、現時点では順調であり、情報もそれなりに集まっている。
殆どは戦闘の痕跡を見つけた程度のものであり、マスターを直接捉えたような決定的なものは無いが。
ある程度マスターとサーヴァントの居場所を絞り込めることは可能である。
手下に、目星を付けた地点へ行き、自然にうろついて監視を行うように指示を飛ばす。
今は、こちら側で網を張る時。



 ◆ □ ■ ◇ ◆ □ ■ ◇ ◆ □ ■ ◇



……しかし。

「この『方舟』とやらは、聖杯戦争をまともに管理する気など無いらしいな」

腑に落ちないのは、この聖杯戦争のルールのあまりの杜撰さである。
自分が電人だからこそ、仮想世界で行われるこの戦争に対する違和感をどうしても無視できない。

"0"と"1"による演算を支配する電人である自分は、自らが構築した電子世界内で無敵と言ってもいい力を振るえる。
ここが『方舟』が構築した仮想世界というならば、『方舟』もまた同様、いやそれ以上の力を持つはずだ。
ならば、『方舟』がルーラーなる監督役を用意し、それに一切の仕切りを任せているのはなぜだ?
『方舟』自身が参加者を監視し、違反者を消せばよいだけではないか。
もし自分がこの戦争を管理するなら、そうするだろう。仮想空間内ならその方が確実だ。

そのルーラーにしても、監督役として十分な力を持っているとは言い難い。
相応の実力や特権はあるのだろうが、ルーラーはあくまでサーヴァントに過ぎず、
つまり参加者の手によって打倒され得る存在でしかない。
ルーラーは各サーヴァントに対する二画の令呪を持つ?
確かにそれは脅威だ。だがマスターが持つ令呪は三画だ。
極端な話、ルーラーの令呪による命令をこちらの令呪で相殺するように使用すれば、
マスターとサーヴァントは令呪一画を確保したままルーラーの支配から抜け出せるのだ。
つまり、ルーラーは本気で反抗しようとするマスターとサーヴァントに対し、
独力でそれを押さえきることができる力を持っていない。

そして、この冬木市もまた戦争の舞台として適しているとは言い難い。
メモリーデータを思い出す予選に必要であるから用意したというならば理解できなくもない。
しかし、そのままここで戦い続ける必要は無いはずだ。NPCの殺害にペナルティがあるからである。
なぜNPCへの被害が出る危険性を放置するのだ。
適当なバトルフィールドを構築してそこにマスターとサーヴァントを跳ばせばよいはず。

あるいは、NPCの殺害に対するペナルティそのものが不合理というべきか。
仮想データに過ぎないそれらを監督役が保護するなど必要あるまい。
たとえ未覚醒のマスター候補が混じっているのだとしても、だ。予選落ちした以上、考慮に値する存在ではない。
NPCを保護するルールがわざわざ存在するからこそ、冬木で戦争をすることに不都合が生じている。
何らかの必要性を以て保護しているというなら、「過度に殺害するとペナルティ」といったように
ある程度の被害を許容するようなルールを敷く理由も無い。殺した時点で厳罰に処せばよいだけのはず。
管理者側にとって、NPCを守る意味も、その重要性も、非常に曖昧過ぎる。





総じて、ルール違反となる行為を定めておきながら同時に許容し、その抑止力も甘過ぎるということだ。
このような矛盾に満ちたルールを『方舟』があえて採用した理由があるとすれば、それは……。

(本気でルールの網を掻い潜り、破れるならば、やっても構わない、ということか…?)

聖杯戦争のルールは、破られることを想定されている。
NPCは、もともと魔力源として消費される役割も想定されている。
それを咎めるルーラーもまた、排除されることをも役目として想定されている。

『方舟』が、『聖杯』が、それを想定している。

その、可能性。

ルールを守って戦争するのも、リスク覚悟で破るのも任意。
戦争が公平円滑に進行するように、一定の縛りが設けられていることは確かである。
しかし、それを逸脱してまで自分の戦術戦略を通そうとする主従がいるなら、それはそれで構わず。
それができる能力があるか、また実行するか否かということもまた、戦いの要素として組み込まれているのではないか。
ルール違反のペナルティなど、『ルーラー』というプログラムの一つに与えられた役割以上の意味はないのではないか。

そうであると、するならば。

他の連中がルールに縛られている中、逆にルールを打破することで圧倒的な有利に立つこともできるはず。
ならば、破る方を目指すのも手の一つ。
自分の持つ『コードキャスト:電子ドラッグ』が、その理由となる。
この街のNPC全てを洗脳することができれば、それは戦争の舞台そのものの掌握に等しい。
全ての参加者に対し、圧倒的な優位を持てる。
それを阻むのがルーラーだというならば、排除を狙う価値はある。

(仮説の裏付けと、ルーラーにどの程度の能力があるのか、詳しく知る必要があるな。
 こちらの違反行為をどのように感知するのか、状況をどのように把握しているのか。そして実力。
 出し抜くことは不可能ではない。意外と穴は多そうだ)

自分は、既に一度ルーラーがその権限を振るった場面を捕捉していた。
無論、正確には、自分が電子ドラッグで洗脳したNPCが、である。
そのNPCは、既に洗脳した大学の人間を通じて電子ドラッグで洗脳したチンピラであった。
大学の教員や学生が大勢で夜中まで外をうろうろしていることは不自然であるため、
隠蔽の為にそういった時間帯でも行動していて不思議ではない人種を少数だが確保していたのだ。
それが早速役に立った。

そのNPCは、新都の廃ビルが倒壊する現場にたまたま居合わせた。
ビルから溢れ出た赤黒い液体と、そこからはい出た人間の様なものに襲われたところ、
旗を持った少女が現れ、走り寄り、ビルの壁面を駆け上がり、
その直後、こちらに襲いかかろうとした液体と人間たちは消え去った。

この報告だけでもルーラーの能力の限界が一部推測できる。
『ルーラーは、直接現場を押さえるか、証拠が無い限り、その権限を振るえない』
わざわざ走って現場まで来たということは、少なくとも通常の戦闘行為に関しては、
監督役の権限として遠隔視や参加者の現状把握を行い、遠距離から警告する能力は無いのだろう。
ルーラーが現れたタイミングが良すぎることから、何らかの感知能力があるのかもしれないが、
NPCへの被害を感知できるというならば、大学の人間を数百人単位で洗脳した自分の所へ来ない理由は無く、
目の前にいた洗脳済のNPCを見過ごすことも無いはずだ。
つまり、感知能力があったとしても、サーヴァントの位置や戦闘の現場がどこなのか知る程度。

(あくまで仮説ではあるが、そこまで大きく外れているとも思えない。
 そう考えると、市一つをカバーするには能力が不足していると言わざるを得ないが…。
 もしそこまでザルだとすると、逆に本命の監視がいて、ルーラーはその囮という可能性もある、か?
 …たとえそうだとしても、令呪を二画持ち、戦闘を強制中断できる力があることは軽視できることではないが。
 こちらを放置しているのも、とりあえず現段階でNPCに直接的な被害が無いから見逃しているだけかもしれん)

だが、現在の情報からでも、ルーラーの排除が不可能ではないことは間違いあるまい。
ならば、それを目標の一つとして考えておく必要はある。

(少しでも情報を、というならば、もうすぐのルーラーからの通達以降だな。
 ルーラーが電子ドラッグの事をどれだけ把握しているのか、何かアクションがあるかもしれん。
 そこからでも、わかることはあるか)

無論、他の主従のことに関しても。
通達を機に、行動を開始する主従は多いだろう。
つまり、ルーラーも含め参加者の情報を得る最大のチャンスだということだ。
通達後もひとまず研究室に留まり、自分の尖兵から上がってくる情報を解析し、
より重要度の高い組に対してはアサシンによる偵察を、可能ならば暗殺を試みる。

「アサシン。当面の方針が決まった」



 ◆ □ ■ ◇ ◆ □ ■ ◇ ◆ □ ■ ◇



("るぅらぁ"を仕留めるか…。
 大将首どころではないな。恐ろしいことを考えるものよ)

再び周囲の偵察に戻ったアサシンは、HALから伝えられ、相談し合った戦略を反芻する。

この戦における約定、それを司るルーラーの排除による優位の確立。
採用する可能性がある戦略の一つだというが、その有効性には疑い様が無い。
他者を意のままの傀儡とする、甲賀や伊賀にも存在しなかった魔性の術。
その枷を全て解き放つ、それはこの戦の趨勢を決めるものとなろう。

その戦略に否やは無い。元より、基本的な方針を定めるのはHALに任せてある。
自身の業を上回る輩が跋扈するであろうこの戦、闇討ちだけで全て片が付くとも思えず、
ならば虎穴に入ってでも敵に先んじる必要もあろう。
そのためにルーラーを倒す必要があるのであれば、全力を以てそれを成す覚悟はある。

しかし、アサシンは一つの懸念をHALに伝えていた。

("るぅらぁ"を討ち取ったとて、枷が解けるのは、我らだけではない。
 他の"さぁばんと"もまた、己が意のままに暴れ回ることとなろう。
 不戦の誓いを破られるやいなや、憎しみのまま殺し合った伊賀と甲賀の様に。
 ……その時、我ら以上の力を振るう者共がおらぬとは限らぬ)

抑止力の排除、それによる戦況の変化は、HALにもアサシンにも完全には予測できない。
アサシンと想い人の運命を狂わせた、あの混沌とした殺し合いを、この『方舟』で再現しかねない一手である。
悪い様に考えれば、ルーラーの排除によりNPCへの保護が無くなるということは、
事実上無尽蔵の魔力補給の機会を敵に与え、強大な宝具の使用を許すに等しい。
そのことが、NPCの掌握による優位を覆す可能性もまた存在する。
無差別の広域破壊の様な攻撃を解禁してしまうと、アサシンに対しては極めて不利なのも問題である。
故に。

(事を起こす前に、"彼奴(きゃつ)"の力が通じている間に、
 我らを凌駕し得る者共を、探し、討つ。それが、まずわしが成さねばならぬこと。
 そして機を見て事を成し、"ますたぁ"の術で戦場を手中に収める)

忍の業を活かしての暗殺を行うならば、ルーラーの存在はむしろ有難いものだ。
アサシンが持ちえない、敵の火力を抑制してくれる。
ならば、それを利用することもまた必要。
ルールの庇護の下で潜在的な脅威を消し、その後にNPCの洗脳で一気に王手をかける。

鍵は、まずどれだけ他の組の秘密を暴き、始末するべき相手を選び、処理できるか。
そして、戦略を転換する時期を間違わぬこと。
そしてやはり、最重要目標であるルーラーの能力の見極め。

容易いことなど何一つ無い苦難、どれだけ続くかもわからぬ茨の道。
だが、伊賀との、朧との戦を強いられたことに比べれば何だというのか。
その全てを踏み越えてみせよう。彼女の元へ辿り着くまで。

朝日が昇り、目覚め始める街に眼を向ける。
その向こうにいる敵を見定める様に。

【C-6/錯刃大学・春川研究室/1日目 早朝】
※【C-6】に錯刃大学を配置しました。
 病院と同エリア内であり、更に病院を錯刃大学付属の大学病院としました。

【電人HAL@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]『コードキャスト:電子ドラッグ』
[道具] 研究室のパソコン、洗脳済みの人間が多数(主に大学の人間)
[所持金] 豊富
[思考・状況]
基本行動方針:勝利し、聖杯を得る。
1. ルーラーを含む、他の参加者の情報の収集。
2. ルーラーによる12時の通達の後に、得られた情報をもとに行動方針を是正する。
3. 通達の後、特に注意すべき参加者の情報が得られた場合、アサシンによる偵察や暗殺も考える。
 『ハッキングできるマスター』はなるべく早く把握し、排除したい。
[備考]
○『ルーラーの能力』『聖杯戦争のルール』に関して情報を集め、
 ルーラーを排除することを選択肢の一つとして考えています。
 ルーラーは、囮や欺瞞の可能性を考慮しつつも、監視役としては能力不足だと分析しています。
○大学の人間の他に、一部外部の人間も洗脳しています。
○洗脳した大学の人間を、不自然で無い程度の数、外部に出して偵察させています。
○C-6の病院には、洗脳済みの人間が多数入り込んでいます。
○ビルが崩壊するほどの戦闘があり、それにルーラーが介入したことを知っています。
 ルーラー以外の戦闘の当事者が誰なのかは把握していません。
○他の、以前の時間帯に行われた戦闘に関しても、戦闘があった地点はおおよそ把握しています。
 誰が戦ったのかは特定していません。

【アサシン(甲賀弦之介)@バジリスク~甲賀忍法帖~】
[状態] 健康
[装備] 忍者刀
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:勝利し、聖杯を得る。
1. HALの戦略に従う。
2. 自分たちの脅威となる組は、ルーラーによる抑止が機能するうちに討ち取っておきたい。



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