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母なる海  ◆MQZCGutBfo


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―――見知らぬ海。


経験したことのない、夜戦を含んだ46時間にも及ぶ長期戦。

イギリス、オランダ、アメリカ……会ったことのない国の子達を『敵』と見定め。

那智が、羽黒が、主砲を全弾撃ち尽くし。
挟撃にまわった妙高と足柄が、『敵』に砲撃を叩きこんでいく。

私にも攻撃命令が発せられて。

俊敏さを活かして敵艦―――「エクセター」という子―――に向かって間近に接近。
魚雷を発射して真横に命中、煙を上げてその子は沈没していく。


これが、戦争。
他者の命を奪い合うモノ―――


沈没していく船。溺れていく『敵』の兵達。
勝利に沸く軍の人達。


―――私は。


例え偽善だとしても。
助けたい、と思った。


そして、独断でも艦長は言ってくれたの。乗組員を救助せよ、って。


妹の電と一緒に、溺れている人達にロープを差し出して。
誰もが先に助かりたいはずなのに、イギリス人の士官さんが号令をかけるとパニックにはならなくて。

先に動ける人から上がって、と私の乗組員の人達が言うのだけれど、
彼らは首を横に振って、怪我をした人から順番に。みんなで一斉にロープを引いて艦に上げていったの。
助かった人達はサンキュウって。笑顔で敬礼していた。


人間って凄いと、心から思った。
殺し合いの中での偽善かもしれない。


でも。


確かに、光を。


心の暖かさを、感じたの―――


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―――まだ日も昇らぬ時間。
私はベッドで目を覚ました。


夢。


一年戦争で大切なモノを失った『あの時』の夢。
私はそればかりを見せられていた。
そして毎夜、うなされていたのだ。


だが、今日は違う。
胸にあるのは、暖かさ。


あれは、雷の夢。
―――いや、過去そのものだったのか。


機械が魂に共感する。ナンセンスだ、などと言うつもりはない。

『月』で生まれたサイコフレーム。
あれは人の意識を拡大させ、共感させることさえ可能だろう。
そして、カミーユ・ビダンが見せたという光。あれも機械が共感していたと言っていい。


なにより、ここに紛うことなく存在している。
彼女に溺れるのではなく、まさしく揺蕩うような、包まれるような感覚。


―――だが、傍らで共に眠ったはずの、彼女の姿がない。


まさか、あの存在こそが夢だったのかと。
ベッドから飛び起き、リビングへと向かった。


―――とんとんとん。


鼻歌交じりに、包丁がまな板を叩く音が聴こえる。
可愛らしい外見と、母のような慈愛の心を持った女性―――雷が、リビングから見えるキッチンで料理をしていた。

不覚にも、安堵の溜息を吐く。
彼女はこちらに気づき。

「あっ!ごめんなさい、マスター。起こしちゃった?」

火を止め、エプロンで手を拭いてから、スリッパでぱたぱたと音を立ててこちらへやってくる。

「………いや」
「そう、良かった~。
 おはよう、マスター。昨日はよく眠れ……てないわよね」

心配そうにこちらの顔を覗き込む。

「おはよう、雷。いや……ここ数年で、一番良い寝覚めだ」
「そう……? ふふ、じゃあ良かった」


私の責任ではあるが。
昨日までの、心配をかけさせていた時の表情とは違う、
生来の明るさであろう笑顔を、雷は取り戻し始めていた。

そして何より、彼女との『繋がり』を確かに感じる。

「今から寝直すのもちょっとあれよね……。
 んー。じゃあぱぱっと作っちゃうから、シャワーでも浴びておいたらどうかしら」
「……そうさせてもらおう」

雷は私を見て笑顔で頷くと、再びぱたぱたとキッチンへと戻っていく。




眠ることも、勝ち抜くための作業の一つだった。

サーヴァントは眠る必要はないが、眠ることで魔力をほんの少しだけ回復できるという。

だが、セルベリアには直感に類するスキルは存在しなかった。
本当ならずっと眠ってもらって、少しでも魔力を得たいところだが、
私が街をまわる最中、いつ敵にマークされるか分からない。
居場所が他者に押さえられていない確証は何もないのだ。
だから、街では常に霊体化して傍にいてもらっていた。

夜については交代で睡眠を取っていた。
彼女を労わっているわけではない。そうでないことは、伝えてある。
魔力がほとんどない私自身が眠るよりも、ランサー本人が眠る方がわずかに回復量が上なのだ。
巨人の襲撃に怯え、いつでも戦闘態勢に移れるよう準備していた頃と何ら変わらない。

ランサーが眠っている間。
背中に自由の翼が刺繍されている、調査兵団の服装で立体起動装置を装着し、いつでも襲撃に対応できるよう備えていた。
これを着ていると、戦いのスイッチが入りやすいのだ。

セルベリアから託されたヴァルキュリアの槍であれば、
ラグナイトエネルギーを照射させるためだけでなく、私が直接防御するための防具として使用できる。
ランサーの見立てでは、私の反応速度は並のサーヴァントの攻撃ならば反応しうる可能性がある、と判断されていた。
彼女が目を覚ますまでの一瞬を、自分自身で稼ぐことができるのだ。

それでも、仮にアサシンにマークされていたのなら―――私では絶対に対処は無理だという。
そろそろ明日……もう今日か、以降はランサーに常夜番を行って貰う必要があるだろう。


「……マスター」

ランサーが申し訳なさそうに起きてくる。
私はこくり、と頷く。

「私を物として扱えと」
「分かってる。……明日からは寝ずの番をお願い」
「心得た」

ホッとしたようにセルベリアが頷く。

彼女にとって、主人に番をさせるというのは、寝心地が悪かったのだろう。
勝ち抜くため、魔力のためだと無理やり眠らせていたのだ。


「今日も日課か、マスター」

再びこくり、と頷く。

日課として、早朝はジョギングを行っていた。

毎日の行動であれば、不審がられることはないだろう。
足を使い、直接現地を見ておくのだ。
どこが戦場になるかは分からないからだ。

調査兵団の服装から、全身を隠せるジャージに着替える。
兵団で鍛え抜いた身体を見せてしまうと、他者に違和感を感じさせてしまうかもしれないから。

ジャージに着替え終わり、マフラーを巻き。

「行こう、ランサー」
「了解だ」

ランサーはその恵まれた体型で揺らしながら頷くと、霊体化し、私についてくる。

仮初の親は、まだ眠っている。
毎日ジョギングすることは伝えてあるので、朝起きて私がいなくても不審がることはない。

「……行ってきます」

小さな声で、仮の親に伝える。
二組の両親に言っていた言葉を。

―――感情を、抑える。


今日は、『海』を見てみるつもりだった。
図書館で知った海という存在。
もしその付近で戦闘になった場合、私が途惑わないよう、先にこの目で見ておく必要があった。




「……ごちそうさま」
「ふふ、お粗末様でした。こんなに早い時間に食べて大丈夫だった?」
「ああ、問題ない。……美味しかったよ、雷」

雷はパァァと花が開くかのように笑顔になる。

ごはんに味噌汁、卵焼きに鮭に漬物。日本の朝食だと言う。


母、アストライアが料理を作ってくれた記憶はない。
だが、確かにこの料理からは『母』を感じることができた。
なんと満たされる感情だろうか。


地球では空に星が見えるの。
一番大きくてまあるいのが『お月様』。
そのお月様が半分になって、細くなって、また丸くなる回数を数えて。
その回数が百回になるころには必ず行くわ。
だから……待っていて。

母が、涙を流しながら、私とアルテイシアを見送っていた。
―――その『月』に呼ばれ、こうして雷と出会ったことは、何の因果であろうか。


「今日はお仕事の予定、あるんでしたっけ?」

二人で食器を流し場へ運び、雷が洗いものを始めながら問う。

私が記憶を取り戻す前にやっていた仕事。
それは政治家、正しくはその候補者だった。

総理を勤めていた父が不慮の死を遂げ。
父の意志を継ぎ、地方都市から政界に立候補する息子、という地位だった。
父は日本人のハーフ、母は英国人という設定、らしい。

その仮初の父が残した莫大な財産があり、
このマンションの部屋も既に全額支払い済である。

「ふむ、今日は午後に後援会との会合があるくらいだな」

記憶を取り戻した今。
後援会の人間との会合は、また違った意味を持ってくる。


何故、ルーラーは作り物であるはずのNPCの殺害を禁じるのか。
何故、作り物であり、がらんどうであるはずのNPCから、『魂』食いを出来るのか。


単純に考えれば―――彼らもまた、以前の私のような。
目を覚まさない人間達が数多くいる、ということだろう。

愚民どもに叡智を授けることは出来なかった。
だが、各々が元々目的を持ってきた人間であるのならば―――何かを感じることができるかもしれない。


「そ、じゃあ午前中はのんびりできるわね」
「……雷。今日は海を見ておきたい気分だ。ついてきてくれるか?」
「あら。ええ、まっかせてよ。マスターはしっかり守るわ」


今朝の夢のことを伝えようか迷ったが、
雷の顔を見ていたら些細なことか、と伝えずにいた。

だが、あの海の光景。
雷が過ごしたという母なる海を、見てみたくなったのだ。


スーツに着替え、サングラスをかける。
雷は制服……ではなく、秘書のようなスーツを着てもらった。

「ふふ、普段は霊体化しておくのに」
「ああ。だが、会合には一緒に出てほしい。何か君も感じ取れるかもしれない」
「ふうん? 分かったわ。それじゃ、行きましょうか」

二人でマンションの部屋を出て、地下駐車場まで下りる。


―――真っ赤な専用の車。

無意識化で購入した車もまた、赤だった。

キーをまわし、エンジンを噴かす。
直列4気筒DOHCエンジンが唸りを上げる。

傍らには、雷がいる。
アクセルを踏み込み、海岸まで車を飛ばしていく。





貫くような、一面の蒼。
先を見通しても、どこまでもどこまでも蒼が続いている。


「――――――これが」


海。
原初の海。


ビデオで見た映像そのものだが、ここに現実感を伴って、圧倒してくる。

そして、心地のよい、波の音。
いつまでもいつまでも、ここに居たいと思わせる。


「エレンにも―――」


見せてあげたい。
きっと、喜ぶだろう。

すっげえええええええ!!!!!
と大声をあげて両手を上げて叫ぶかもしれない。

その様子を見て、私は微笑むのだ。


『マスター』

ハッとして、ランサーが念話で呼び掛けるのと同時に、気配を感じ後ろを向く。


「おや。びっくりさせてしまったかな」

両手を小さく上げて話しかけてくる、金髪にサングラス、スーツの怪しい男。
心の警戒レベルを最大まで引き上げる。

「……なんでしょう」
「すまないね、お嬢さん。
 海を見て涙を流せるほどのシャープな感性が、少し、気になってしまってね」

気がつけば、また涙が流れている。
慌てて涙を拭おうとしたところに、ハンカチが差し出される。

「……ありがとう、ございます」

警戒したまま、ハンカチを受け取る。
魔術的な何かがかかった物かもしれない。

『問題ない……ように感じる』

霊体化したままハンカチを確認したランサーが告げる。
肌触りが滑らかな、高級そうなハンカチを使い、涙を拭く。


―――と、サングラス男は『ランサーがいるはずの位置』を見ている。


霊体化した状態では感知できない……はずだ。
相手がマスターで、もしも近くにそのサーヴァントがいたとしても、霊体化していれば反応はないはずだ。
現に、自分の令呪に反応はない。


「あの……何か」
「いやすまない。……私は、シャア・アズナブル。この選挙区で立候補しようと思っている者だ」

男はサングラスを外し、自分の名を告げる。

こちらの名前を言うべきか、偽名を使うべきか、誤魔化して言わないべきか。瞬時に判断する。
相手が情報を握りやすい立場なら、偽名を使った場合、後々苦しくなる。

「―――ミカサ、です」
「ミカサか。いい名前だ。海に合っている名だと感じる」
「……」

じっと見つめてくるこの男に、どう反応していいか分からず、途惑う。

このシャアという人間の目、やはり冷たい目だ。
人に絶望したような目。
だが、やはり、奥底に温かみを持っている種の人間。


『マスター』


引き込まれそうになっている自分を、ランサーが注意を促す。
魔術か何かをかけられそうになっていたのか。

「あの……そろそろ時間なので、帰ります」
「そうか……それはすまない。
 また、会えるといいな」
「はい、それでは」

話を打ち切り、逃げるようにその場を離れる。




―――あの少女。

ニュータイプとしての感覚ではない。
士官学校に入ってからもう20年近く。
数多くの軍人を見てきた経験から分かる。

彼女の一挙一動は、訓練された軍人のそれだ。

ほぼ間違いなく、マスターだろう。
何より、傍に雷のような存在を間違いなく感じた。
恐らく、サーヴァントが霊体化していたのであろう。

『ふぅ~……緊張した~』

霊体化を解いて、その雷が姿を現す。

「……良かったの? マスター」
「ああ。また出会う機会もあるだろう」
「ふーん」

そう言う雷は、何故か少し機嫌が悪かった。


「それよりも雷。海を見ようか」

手を繋ぎ、雷を誘導する。

「もう……ふふ」


海。
―――母なる海。


地球はきれいないいところなのよ。
空がどこまでも青くて、山や森があって。
大きな大きな、広い海があるの。


私が汚染させようとした地球。
アクシズを落とせば、この『海』にも、当然被害が出るだろう。

ぎゅっと、握られる手が強くなる。

「私はここにいるわ、マスター。大丈夫よ」
「……ああ」


【A-3/海岸/一日目 早朝】

【シャア・アズナブル@機動戦士ガンダム 逆襲のシャア】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:無し
[道具]:シャア専用オーリスカスタム(防弾加工)
[所持金]:父の莫大な遺産あり。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争によって人類の行方を見極める。
1.午前中は各マスターを探して会ってみる。
2.午後に後援会の人間との会合に行き、NPCから何か感じられないか調べる。
3.ミカサが気になる。
[備考]
ミカサをマスターであると認識しました。

【アーチャー(雷)@艦隊これくしょん】
[状態]:健康、魔力充実
[装備]:12.7cm連装砲
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる。
1.シャア・アズナブルを守る。
[備考]
無し。




駆け足で、逃げるように自宅へと戻る。


『……マスター』
『うん』
『あの男、只者ではないな。霊体状態の私を感知していた』


手元には立体起動装置も、ブレードもない。
そして何より―――セルベリアの魔力は限られている。

令呪であれば魔力を満たせることができると、セルベリアの見解とも一致している。
使用できる二画は、魔力供給に使う他ないだろう。
他の不慮の事態で使うことにならないような立ち回りをしなければならない。

戦える回数は限られている。
私達にとって、剣を抜く時は『必殺』でなければならないのだ。


シャアという男のサーヴァントが分からない以上、
こちらから無調査で仕掛けることはあり得ない。

だが……。


『あの男の目。魔性の類ではない。
 ―――殿下と同じく、人として人を惹きつけるモノだ』
『……そう』


張り詰めた糸が、海の存在で一瞬緩んでしまったためか。
初めて、敵のマスターに存在を知覚されてしまったためか。


―――動揺してしまったのだ。


【A-3/海岸付近/一日目 早朝】

【ミカサ・アッカーマン@進撃の巨人】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:無し
[道具]:シャアのハンカチ
    (以降自宅)ヴァルキュリアの槍、立体起動装置、スナップブレード、予備のガスボンベ(複数)
[所持金]:普通の学生程度
[思考・状況]
基本行動方針:いかなる方法を使っても願いを叶える。
1.家に戻り、着替えて月海原学園へ学生として行く。
2.シャアに対する動揺。調査をしたい。
[備考]
シャア・アズナブルをマスターであると認識しました。

【ランサー(セルベリア・ブレス)@戦場のヴァルキュリア】
[状態]:健康
[装備]:Ruhm
[道具]:ヴァルキュリアの盾
[思考・状況]
基本行動方針:『物』としてマスターに扱われる。
1.ミカサ・アッカーマンの護衛。
[備考]
無し。



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