夜の闇に浪漫を感じ、
  赤い夢の中で生きている子どもがいるかぎり、
  怪盗がいなくなることはない。



深紅のカーテンが引かれた室内。
暗赤色に染まった世界で、一組の主従がソファに並んで座りながら話しこんでいる。

テーブルの上には空のワイングラス2つのみが置かれ、
血の色をした紗幕の隙間から僅かに差し込む光にきらめいている。
これから主従の盃を交わすつもりなのだろうか。

深紅のジャケットを優雅に着こなす、貴族然とした風体の黒髪の男が先に口を開いた。
おそらくは、彼がマスターなのだろう。
「初めまして。ライダー――君、と呼んでもいいかな?」

男の隣に座しているのは、ライダーと呼ばれた小学校低学年程度の少年。
ブレザーに蝶ネクタイと、いかにも育ちの良さそうな服装をしているのに
足元は革靴ではなく、スニーカー。床に落ちていた小さなガラス片を蹴り転がして遊んでいる。

男に親しげに呼びかけられても、機嫌が悪いのか返事ひとつしない。
物珍しそうにアンティークの家具調度類を見回しているだけだ。

「まずは自己紹介…といくのが筋なんだろうが、先に調べさせてもらったよ。
 工藤新一君――いまの姿なら江戸川コナン君と呼ぶのが正しいね。
 様々な乗り物を乗りこなす、探偵のサーヴァント。
 素晴らしい頭脳を持つ君の力を借りられることを、嬉しく思うよ」

お世辞めいた言葉を並べ、マスターの男はソファの下に転がっていた未開封のワインボトルを取り上げる。
「まずは乾杯しようか、月の聖杯戦争の開幕を祝して」
「その前にさ、」
小さなライダーが、ようやく口を開いた。
隣の男を見上げ、無邪気な声で問う。
「おじさんの名前、ボクに教えてくれないの?」
「これは失礼。僕はリチャード・モア。
 これでも私立探偵の端くれでね、君を引き当てたのもきっと運命だろう」

「――――ハッ」

ライダーは不意に、声のトーンを低く落として鼻で笑った。

「その辺でやめとけよ、おじさん。いや――――怪盗クイーン」

怪盗クイーンと呼ばれた貴族風の男は、余裕の表情をくずさない。
「どうしてわかったんだい?」

「お前みたいな怪盗とは何度かやり合った事があるから、変装を見抜くのにも慣れちまったよ。
 オマエの変装術は見た目こそ完璧だが、
 ベースになっているのは催眠術、つまり一種の神秘。
 サーヴァント相手には効果が薄いんだよ――まして探偵(オレ)にはな。
 カーテンを引いて室内を暗くしたのは、見破られる危険を少しでも減らすつもりだったんだろ?」

声のトーンを戻し、幼い口調をつくりながら
ライダーは己の推理を開陳する。

「推理の材料は他にもあるよ。
 テーブルの上にはワインボトルとグラス2つだけ――
 これから乾杯をしようって体なのに、栓抜きが何処にも見当たらないのはおかしいでしょ?
 うっかり用意を忘れただけの可能性もあるけど、
 ボクのことを先回りして調べ、準備を整えてくるような周到なマスターが
 そんな些細なミスを犯すはずがないよね。
 つまり、目の前の“誰か”は
 栓抜きを使わないでボトルを開ける手段を持っている、と考えられない?」

赤い闇の中で、探偵の推理はつづく。

「物証はホラ――椅子の下に転がってたコレさ」
ライダーは爪先で転がし遊んでいた“それ”を器用に蹴り上げ、掌中に握って差し出す。
――“切断されたワインボトルの首”だった。

「NPCが残したアイテムにしては、不自然すぎる。
 ボクと契約する前に先に飲んでたみたいだけど、ゴミはちゃんと分別して捨てないとダメだよ」

(……しっかし、サーヴァント呼び出す前に飲んだくれてたって、毛利のおっちゃんかよ……)
筋立てて説明するうち、ライダーはちょっとげんなりしてくるが詰めに向けて心を立て直す。

「高度な変装術。道具を使わず物体を切断する技。
 この2つを併せ持つってだけで正体は相当絞られるよね?
 次は動機の問題――なぜ、これから戦いを共にするサーヴァントに対して
 わざわざ違う姿で会おうと思ったのか、不思議じゃない?
 単にからかうため、とは考えにくいし……
 つまり、ボクと顔を合わせたくない人間――最も考えられるのは、犯罪者だ」

ライダーが再び厳しい口調に戻っても、
男は不敵に腕を組んだまま探偵の真相解明を待ち受ける姿勢だ。

「見た目は子供、頭脳は大人。
 ――迷宮なしの名探偵(グレート・ディティクティブ)。
 真実はいつも一つ!」

カーテンが揺れ、射しこんだ月の光がライダーの眼鏡に反射してキラリと輝く。

「ある時は黒衣の未亡人、ある時は謎のスポーツ選手、またある時は17歳の美少女。
 年齢性別身長体重すべてが不明の変装の名手。
 その正体は赤い夢に生きる神出鬼没の怪盗。
 ――国際指名手配中の大泥棒、『蜃気楼(ミラージュ)』クイーン!」

宝具「迷宮なしの名探偵」(グレート・ディティクティブ)。
僅かな手がかりだけで、対象の真名から能力まで完璧に見抜く推理力。
数えきれないほどの事件を解決する中で
無辜の人々からは惜しみない賞賛を、
犯人からは限りない畏怖を集め続けた生涯の果てに、
「名探偵」という概念は一種の神秘へと昇華した。
それが、探偵のサーヴァント――≪ライダー≫工藤新一。

カーテンが開け放たれた。
ワインのように紅い世界は一瞬で壊れ、青白い月光が部屋のすみずみまで満ちる。

貴族風の男は不意に顔の前に手をやった。
黒髪の下からあふれるように現れる、光を受けてきらめく真珠色の髪。
「ご名答! 私が怪盗クイーンさ」
手を除けたあとに現れたのは、性別を感じさせない美しい顔立ち。
「君は優秀なサーヴァントだ。あらためて、よろしく頼むよ」

斬!

ボトルの首が切断され、ゴトリと落ちる。
「さあ、乾――」
「ごみはゴミ箱!」
年端もいかないサーヴァントに諭されて、とぼとぼとボトルの首を捨てに行くクイーン。
戻ってきた手には、紙パックを1つ携えている。
「そうそう。君はまだ未成年だから、ブドウジュースだね」
葡萄の芳香を豊かにふりまきながらグラスに注がれる暗紫色の液体を、
冷めた目でライダーが見つめる。手も付けようとしない。

「毒なんか入ってないよ? 君はこれから聖杯戦争をともに戦う、大事なサーヴァントなんだから」
「コソ泥に手を貸す探偵なんかいねーよ」
ライダーの口調は子供の仮面を放り捨てて、また不機嫌そうなものに戻っている。
「コソ泥? ただ金品を求めるだけで美学も何もないコソ泥と怪盗を一緒にしないでほしいね。
 怪盗は、自らの美学に沿って相応しい獲物だけを狙う。
 太陽系最古の古代遺物にして万能の願望機ムーンセルをめぐり、聖遺物『ノアの方舟』に集う者たち。
 場所、価値、謎、好敵手。天に輝くアレは、そのすべてが揃ったまさに怪盗の美学に相応しい獲物だ。
 私は、月を手に入れる。そのためにここに来たんだよ」
「どーせ、盗むんだろ」
「もちろん!」
「悪いけど、盗人の片棒担ぐ気なんてねーからな」

演技がかった仕草で、クイーンは考えこむ。
「ふむ……そういえば、君に願いはないのかい?」
「あるさ。アンタみたいな犯罪者をとっ捕まえるって願いが、な」
「成程。君にも聖杯を求めるに足る願いがあるわけだ。それは、好都合」

クイーンはワイングラスを掌中で弄びながら、滔々と語る。
「――ライダー君はこの状況、どう思う?
 聖杯を狙って、世界中からさまざまな人間が集まっている。
 願いを叶える権利を得られるのは最後のただ一組、月の聖杯戦争の本質は殺し合いだ。
 殺人をいとわない危険な犯罪者たちも、たくさんいるだろうね」
「……」
「被害が出る前に、争いの元になる聖杯を盗んでしまえば全てが丸く収まると思わないかい?
 正直に言うと、お月様にかけるような願い事なんて私にはなくてね。
 君は好きなことを願うといい。私を捕まえたい、なんて願ってみたらどうかな」
「オマエを捕まえるには、万能の願望機でもなきゃ不可能ってか。面白いコト言うじゃねーか」
分かった。月に辿りつくまで――オマエが盗みを犯さない間だけは、協力してやるよ。
そう言って、ライダーはグラスを手にとった。

ガラスの触れ合う、軽く澄んだ音。

ここに、怪盗と探偵の奇妙な共犯関係が結ばれた。

グラスをあおりながら、クイーンはクダを巻きはじめる。

「しかし、ステータスを見て驚いたよ。
 幸運以外オールE――まさしく最弱のサーヴァントだ。
 宝具にも武器はひとつもない。これはひどい!」

掌を返したような酷い言われようにもライダーはきょとんとした表情で、
スニーカー履きの足をぶらぶらさせている。
「そんなに強さばっかり気にしてさ。おじさん、そんなに叶えたい願いがあるの?」

「違うよ。私はライダーと聞いたとき、
 言葉では言い表せない『ときめき』みたいなものを感じたんだ。
 もしかしたら、ナポレオンやアレキサンダー大王に会えるんじゃないかと思ってね。
 なのに、あんまりだ! 馬さえ持ってないなんて!」
「残念だったね、おじさん」
年端もいかない少年に「おじさん」と言われるたび、クイーンの顔がちょっとずつ引き攣る。

「私は、聖杯戦争に参加するならサーヴァントはライダーと決めてたんだ。
 そのためにデータ改竄(チート)までやったのに……」
(チートなんかしたせいで、オレみたいなサーヴァントあてがわれたんじゃねーか?)
ライダーの予想(すいり)は、おそらく合っている。

「なんでライダーにそこまでこだわるの?」
「虚構世界を駿馬で駆けながら、聖杯を優雅にさらう怪盗……この上なく華麗じゃないか」
怪盗の美学は、ライダーには凡そ理解しがたいものだった。

【サーヴァントステータス】


【出典】

名探偵コナン

【クラス】

ライダー

【真名】

工藤新一

【性別】


【属性】

秩序・善

【ステータス】

筋力E++ 耐久E 敏捷E++ 魔力E 幸運EX 宝具EX

【クラス別スキル】

対魔力:E
探偵業で培った精神力と道具の防御力による抵抗。無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:B
スケートボードや自動車、パラグライダー、ヘリコプター、ジャンボジェット機まで操縦できる。

【固有スキル】

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも1日程度の現界が可能。
捜査活動:A
犯人を暴き敵の企みを看破するための手がかりを探す能力に長けている。
常人なら見落としてしまうような些末な物証、隠蔽工作なども見抜く。
探偵の宿命:A
存在しているだけで、周囲で事件が頻繁に起こる。
Aランクの英霊は、犯罪を常に引き寄せる悪運と、犯罪に巻き込まれても生還できる強運を併せ持つ。

【宝具】

「迷宮なしの名探偵」(グレート・ディティクティブ)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:2人
敵の真名や宝具の種類・トリック、思想信条や個人的な事情など、あらゆるものを僅かな手がかりをもとに看破する特殊能力。些細な物証一つ、言葉一つでさえ推理の手がかりとなり、発動が可能。ルーラーのスキル「真明看破」と異なる点は、宝具であるゆえに真名解放を必要とする点、推理という手順を踏まなければならない点、宝具の真名秘匿効果でも防ぎきれない点(看破率は下がるが、0にはならない)の3つ。また、この宝具により真名を暴かれたサーヴァントは幸運がランクダウンする。

「巨悪射抜く真実の銀弾」(シルバー・ブレット)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
犯罪組織によって小学生の姿に退行させられながらも「江戸川コナン」として陰から難事件を解決に導き続けた逸話に由来する能力。真実の姿とかけ離れた子供の姿をとることにより自らのステータスを隠蔽し、真名を看破されにくくする。マスター(共犯者)には意味が無く、自分と同じ「名探偵」には効果が薄い。なお“シルバー・ブレット”とは、この現象の引き鉄となった薬「APTX4869」の別称であり、工藤新一を指す異名でもある。

【Weapon】

「腕時計型麻酔銃」「犯人追跡メガネ」「蝶ネクタイ型変声機」
「キック力増強シューズ」「伸縮サスペンダー」「ターボエンジン付スケートボード」
「どこでもボール射出ベルト」などの道具を所持。
筋力や敏捷を一時的にアップさせてくれるものはあるが、直接戦闘のための武器はほぼ存在しない。
彼の最大の武器は探偵としての頭脳である。

【人物背景】

見た目は眼鏡をかけた小生意気な小学生「江戸川コナン」。
だがその正体は高校生探偵・工藤新一。
正義感が強く普段はクールを装っているが、大切な者が関わると熱くなることも。
頭脳明晰で機転に優れ、数多の難事件を解決してきた。
「小さくなっても頭脳は同じ、迷宮なしの名探偵。真実はいつも一つ!」

【サーヴァントとしての願い】

怪盗クイーンの逮捕

【基本戦術、方針、運用法】

直接戦闘には滅法弱い。早急に戦闘力のあるサーヴァントを有するマスターと同盟を組むのが吉だろう。

【マスターステータス】


【出典】

怪盗クイーンシリーズ

【名前】

クイーン

【参加方法】

ハッキングによる到達、参加

【マスターとしての願い】

怪盗の美学に則り、聖杯を大胆華麗に盗む

【weapon】

下記能力・技能参照。

【能力・技能】

切断術…刃物を使用せずに様々な物体を切断可能。
変装術…老若男女あらゆる人物に変装可能。
蜃気楼の術…催眠術により、自分に関する事を相手の記憶から消去したり陽炎のように気配を消すことが可能。
他にも色々ある。高度な体術のほか、予告状を美しく書くために習ったという理由で書道も得意。

【人物背景】

赤い夢に生きる誇り高き怪盗。怪盗の美学を重んじ、相応しい獲物のみを狙う神出鬼没の存在。
自由気儘な性格で「人生に大切なのはC調と遊び心」がモットー。
特技は姿形を似せるのみならず強烈な自己催眠で内面まで成り済ます「変装」と、
気配を消し周囲の人間の記憶に残らない「蜃気楼の術」。
そして刃物を使わずに物体を切断する技。
趣味はワイン収集や猫のノミとり、バランサー(ジェンガのようなゲーム)。
フランスの旅芸人の血を引いているらしい。

性別・年齢・国籍・身長・体重、すべて不明。
現在の外見はパールホワイトのロングヘアに月長石色の瞳、
赤いジャケットにフリルブラウスといった出で立ち。