ナノカ・フランカ&アーチャー ◆Mti19lYchg


 町の一角。深夜で人が寝静まった頃。
 金属同士が触れ合う音、削られる音が響き渡る。
 その原因である一軒家には『プロスペロ発明工房・方舟支店』の看板が立てかけてあった。

「わったしはっまち~の発明屋さん~。
 家族ぐるみの後押しが~。
 明るいあしたを呼んでいる~」
 家の厨房内にちょっと調子の外れた歌声が響く。
「そろそろですね。スラッシュ、ナノカさんを呼んできて下さい」
 歌いながら調理をしていたメイド服の少女は、側でうずくまっていた黒豹に話しかけた。
 スラッシュと呼ばれた黒豹はのそりと起き上り、騒音が発せられている現場に向かった。

「かが~くの光で世界を照らせ~。
 だ~けどマズイね~、チェレンコフ光~」
 工房の内部では、やはり調子の外れた歌声が響いていた。
 中央にはオープンカーが鎮座し、その真下に歌い手が潜り込んでいる。
「おーい、ナノカ。メシができるとよ」
「うーん、もうちょっとー」
 自動車の底から、声が返ってきた。
「配線をつないで……よし、完成です!!」
 バタン、と閉める音が鳴り、車の下から1人の少女が姿を現した。
 白地に青のラインが入った服。その上に貫頭衣の様に首から通したタブリエを、ベルトで腰に止めている。
 さらにポニーテールにしても腰まで届く赤い髪が目を引く。
 少女の名前は“ナノカ・フランカ”。聖杯戦争のマスターであり、弱冠14歳で幾多もの発明をした工房士である。

「じゃ、ご飯にしよっか」
「その前に風呂に入って来いよ。顔がすげえことになってるぜ」
 スラッシュの言う通り、ナノカの顔にはオイルがかかり真っ黒に染まっていた。
「はーい」
 と、明るく返答しナノカは風呂場へと駆けていった。

 10分後、一人と一匹はリビングに現れた。
 メイド服の少女、まほろさんは食卓に料理を並べながら、スラッシュの毛が濡れている事実を見咎めた。
「どうしたんですか、スラッシュ。毛皮がしっとりさんですけど」
「……銭湯で身体を洗われた事はあるが、バスタオル代わりにされたのは初めてだ……」
 スラッシュは憮然として答えた。
「あはは、洗った後でタオルを忘れた事に気づきまして。
 なかなか見つからなくて湯冷めしちゃいそうだったので、つい」
 悪気のない顔でナノカは笑った。
「でも、スラッシュの毛皮ってきれいだよね。汗かかないし」
「知るかよ……」
 スラッシュはそっぽを向いた。

 食卓を囲む2人と一匹。スラッシュは床の犬用食器を使っているが。
 正座しているまほろさんに対し、ナノカは胡坐をかいている。
 行儀が悪い、というよりタブリエがないと下着が見えそうだ。
「ところで、ナノカさん。作業の方は終了しましたか?」
「はい、ミサイルにはレーダー自動追尾装置をつけ、自律誘導を可能に!
 標準火器に20mm×6回転式多砲身ドグラノフ、71口径88mmメガ・ドグラノフを搭載! 
 さらに星型複列28気筒エンジンを採用し、最高時速280kmに10秒で到達可能です!」
「なんつーか……もう護身用じゃねえな……」
 喜々として解説するナノカに対し、スラッシュは突っ込みを入れた。

 初めは聖杯戦争の本選開始後、外を出歩く際に護身用として防御装備を備えた自動車を製造するはずだった。
 だが、ナノカはまほろさんが生前、内部に武器を備えたBMWの改造車に乗っていた事を知り一変。
 BMWのスペック、内蔵されている兵器などを根掘り葉掘り聞きだし、図書館で資料を調べ、遂にまほろさんが生前使用していたBMWを製造してしまった。

「大体狙撃銃まで自分で作っといて、護身もクソもないもんだ」
 ナノカはBMWと並行して、自分が使う狙撃銃を弾丸まで含めて製造していた。
「戦場に身を置いたら、目の前に立ちふさがる者は可能な限り速やかに、全力で排除せよ。と教わってきましたから」
「おまえの保護者の苦労が分かるなあ……いろんな意味で」
 スラッシュは大きくため息をついた。
「でも、ここが月に向かう方舟の中って未だにびっくりですよ。
 Eシップは何度か乗った事あるけど、こんな巨大なのは見たことがありませんし」
「正確には方舟内部の仮想空間ですね。一つの都市が丸ごと再現されていますから、ここに匹敵する宇宙船は数少ないでしょう」
「月にはムーンセルの他にマスドライバーやマイクロウェーブ発信装置があるんでしょうか? 月はいつもそこにあります!」
「なんかいろいろ混じってますけど……どこで覚えたんですか?」
「時々壊れたスツーカが言ってたんですよ。
 そのやたら渋い声で『君は、刻の涙を見る……』とか言ってたから、覚えちゃいました」
 ナノカは物真似なのか、やや低い声で呟いた。

 食事を終え、まほろさんはナノカと自分にお茶を入れた。
 まほろさんはお茶を飲み終えた湯呑みを卓に置き、ナノカと向かい合った。
「時間を考えますと、恐らくそろそろ予選の期限のはずです。
 これから本格的に聖杯戦争が始まるにあたり、改めて尋ねますが、ナノカさん。本当に聖杯へ託す願いは無いのですね?」
 まほろさんの真剣な表情に対し。
「本音を言うと……調べてみたいですね」
 そう言って、ナノカは懐からペンダントを取り出した。
「これは、お父さんとお母さんが残したオリハルコンの試作品です」
 オリハルコン。それはアトランティスで用いられていたという伝説の金属。
 だが、このオリハルコンは蒼い輝きを放つ結晶だ。 
「オリハルコンはパシアテ文明の根幹を成す重要な物質で、お父さん達だけが製造に成功したんです。
 これ一つだけを残して死んじゃったんだけど」
 ナノカの世界におけるオリハルコンは演算装置、記憶装置、動力源、エネルギーなど様々な役割を果たす重要な物質だ。
 組成も製造法も全て不明。先史文明のパシアテ文明のみがこの物質の量産に成功し、ナノカ達後世の人類は遺跡で偶然発掘されるわずかな量を用いている。
「ムーンセルを構成しているフォトニック純結晶は、光を内部に封じ込めて計算や記憶を行っているんですよね。
 オリハルコンも性質の一部に光がありますから、聖杯の技術の延長線上に、オリハルコンの精錬技術が繋がっていると思うんです」
 発掘に頼らず、安定供給するためオリハルコンを研究する者は大学者から町の発明家まで数多い。
 当然ナノカもその一人だ。技術者として、是非とも調べたいというのは当然の欲求だろう。
「でもそのために人殺しはちょっと……。
 それに、早く帰らないとスツーカに、椅子に座れなくなるくらいお尻を叩かれますから」
 スツーカとは、ナノカの保護者兼護衛兼友達兼ペットの狼型ロボットである。
 余談だが、まほろさんが召喚したスラッシュを見たナノカは「スツーカの初期設定みたい」と言い、スラッシュを引かせたとか。

 まほろさんは、ナノカの言葉を聞き納得した。
 ナノカはあらゆる願いを叶える聖杯と、無断外泊のお仕置きとを天秤にかけている。
 結局ナノカにとって、聖杯は必要ないのだろう、と。
「では、聖杯に叶えてもらう願いは無いのですね?」
「はい。夢は叶えるものじゃなくて、追い続けるものだと思います」
 ナノカはまほろさんの顔を見つめ、答えた。
「でも、まほろさんはいいんですか?
 サーヴァントには願いがあるから、召喚に応じるそうですけど」
 ナノカの問いに対し、まほろさんは胸に手を当て、微笑んだ。
「ご心配なく。私の夢は既に叶っています」

「ところで、つかぬ事をお聞きしますが、ナノカさんの夢とはどのようなものですか?
 オリハルコン製造に成功した後、追い続ける夢というのは何でしょう」
「私はいつか宇宙船を作りたいんです。恒星間を行き来できるような。
 それで別の星にある世界を目指すの。この方舟があるってことは、他の惑星に文明があるって証拠でしょう?
 辿り着いたら髪を青く染めちゃって、異星の人たちと交易を」
「それ以上はやめてください! まずいですから、いろんな意味で!!」
 まほろさんは慌てて、両手を振った。
「じゃ『抵抗は無意味だ』と」
「もっとまずいです!! ていうかそれじゃ侵略者です!!」
「それは冗談ですけど」
「どっちがですか……ナノカさん、ちょっと怖いです……」
 まほろさんは柳眉をひそめるとまではいかない、微妙な表情をした。

「先程の冗談は別にしても、無事に辿り着いても侵略者と見做されて、いきなり攻撃されるかもしれませんよ」
「それでも波を恐れちゃ船出はできません!」

 ナノカが言った所で時計が12時を回り、鐘が鳴った。

「あ、もうこんな時間ですか。
 それでは、キリの良い時間になったので、只今を以って聖杯戦争本選が開始されたとしましょうか!」
「はい、一緒に聖杯戦争を止めましょう!」
「おーっ! です! がんばっていきまっしょい!!」
 満面の笑みを浮かべてガッツポーズをするナノカとまほろさん。
『……この天然お気楽ぼけ思考のコンビ。オレッチがしっかり手綱締めねえと、あっさりおっ死んじまいそうだぜ……』
 その姿を見るスラッシュは、強い不安を感じていた。

「ところで、ずーっと思ってたんだけどよ……お前ら声がすごい似てないか?」
「でしょう!? やっぱり私たちの声ってそっくりですよ、ナノカさん」
「そうかな? 自分じゃよく分からないんだよね」






【マスターステータス】

【出展】

 蒼い海のトリスティア

【マスター】

 ナノカ・フランカ

【参加方法】

 トリスティアの中枢部を探索したところ、何故か厳重に保管されていた木をさわって。

【マスターとしての願い】

 願いは特になし(あえて言うならムーンセルを調べてみたい)。

【weapon】

スプレンディッド・インパクト
 ナノカがいつも持っているノギスとマイクロメーターとハンマーとバールを合わせたような外見の万能工具。ドリルも飛び出す。
 ある程度の重力を制御でき、威力は親父の拳骨並から小隕石衝突レベルまで自在に変えられる。背負うと少し身が軽くなる。
ロングドグラノフ・ナノカSP
 ナノカが製造した狙撃銃。
 使用するのは.30-06スプリングフィールド弾。Fate/Zeroで衛宮切嗣がトンプソン・コンテンダーで撃ったものと同じ。
 狙撃手の腕が良ければ、1キロ先のフットボールも撃ちぬける……かもしれない。
 余談だがナノカの世界でドグラノフは、硝酸塩燃料を燃やして重金属弾を発射する熱機関武器の総称なので、拳銃も小銃も狙撃銃も大砲も全てドグラノフと呼ばれる。
オリハルコンのペンダント
 ナノカの両親の形見。

【能力・技能】

 発明全般が得意。新料理のレシピ制作に始まり調理器具、観光土産、新素材開発、工作機械製造、絵画の贋作、イベントの仕切りや建設企画書。
 果ては医療用マイクロマシン、ロボット(ナノカの世界ではゴーレムと呼ぶ)、兵器製造まで何でもあり。
 発明の失敗で爆発を起こしたり、アカデミーの構内で核実験を行ったと噂されたり、イルカのアレを弄って知性化処理を施したりと結構マッド気味。
 体術は、不意を突けば兵士2人を即座に倒すくらい。スツーカの教育のお蔭でスプレンディッド・インパクトを全力で振り下ろすなど容赦がない。
 狙撃も得意で、30cmの的を狙っての必中レンジが500mという驚異の14歳。

【人物背景】

 14歳で既に先史パシアテ文明の技術『Eテクノロジー』を研究、開発しものづくりを行う工房士と呼ばれる職業についている。
 天才天然お気楽思考の持ち主。というかキャラクター性が「まほろまてっぃく」に登場するマホロ博士に近い。
 正義感が強く「こうみえてもワル者には容赦しないタチなんですよ」とは本人談。
 発明に文句を言われると、うっかり憎まれ口を叩く黒い面もある。

【基本戦術、方針、運用法】

 第一目的は聖杯戦争からの脱出。
 第二目的は聖杯戦争の廃止。悪い人が悪い事をしようとしているなら、それを止める。
 ナノカはそこそこ戦えても、近接戦に優れたマスター相手だと分が悪い。
 スラッシュを護衛兼観測手にし、狙撃手としてまほろさんのサポートをさせるべし。





【サーヴァントステータス】

【出典】

 まほろまてぃっく

【CLASS】

 アーチャー

【真名】

 安藤まほろ

【ステータス】

 筋力B 耐久D 敏捷A 魔力B 幸運A++ 宝具B

【属性】

 秩序・善

【クラス別能力】

対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】

千里眼:B
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 さらに透視を可能とする。

心眼(真):A
 天賦の才と豊富な実戦経験によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

騎乗:A
 騎乗の才能。全ての乗り物を自在に操れる。

星の観測者:EX
 星を代表し、知的生命体の是非を判断する存在。
 あらゆる精神干渉を完全に無効化し、常に『正しい答え』を導き出す。

【宝具】

『Summon』

ランク:B 種別:召喚宝具 レンジ:- 最大補足:-

 宝具の本体はまほろさんがつけているブローチ。真名を唱える事で発光し、亜空間よりサポートメカを召喚する。
 アーチャーとして現界したため、召喚できるのは「SYLPHEED」と「SLASH」の二体のみ。

『SHINING OF THE DARK(輝ける闇)』

ランク:EX 種別:対星宝具 レンジ:1~999 最大補足:1~1000人

 まほろさんが命を削って放出する、太陽系より遥か彼方にある星の光を収束した最終兵器。
 対人規模から、星を砕く規模まで自在に範囲を調整できる。
 魔力とは無関係に発動できるが、この宝具を使用した寿命の減少は魔力提供により回復しない。

【weapon】

メイド服
 一着398000円のオーダーメイド。ただそれだけの普通の服。

拳銃
 二丁を装備。命中すればちょっとした爆発が起こるほどの大口径の銃。

短刀
 二本一組。何らかの機能が備わっているのか、ロボットの装甲を軽々と切断する切れ味を誇る。

戦闘用スーツ
 Dランク以下の攻撃を防ぐ障壁を張る機能を持つ。
 手甲にはワイヤーアンカーが内蔵されている。

苦無
 爆薬が仕込まれており、数本でビル一棟を破壊する。

反物質封球弾
 対城宝具級の威力を持つ武器だが、魔力消費もまた高ランクの対城宝具並である。

BMW
 ナノカが製造した。武装はアクティブレーダーホーミングミサイル、20mmガトリングガン、71口径88mmカノン砲。最高時速280km。
 サーヴァントには通用しないが、人間相手には過剰すぎる武装である。

【人物背景】

 「ヴェスパー」が生み出した最強の戦闘用アンドロイド。残り稼働日数が僅かになった事を契機に引退を許可された為、メイドとして美里家で働き始める。
 常に心優しく、心清らかな「完璧な心」の持ち主と評されるが、結構天然で暴力的な一面も。
 特にえっちなものには厳しく、「えっちなのはいけないと思います!」が口癖。

【サーヴァントとしての願い】

 ナノカを無事に元の世界へ返す。

【基本戦術、方針、運用法】

 宝具の輝ける闇を使わないと決定力に欠ける。
 反物質封球弾で補うにしても魔術師で無いナノカの魔力供給では安定して使用するのは難しいので、結局輝ける闇を使わざるを得ない。
 ただ使用するほど寿命に近づくので、継続して戦い続けるのは不安。誰かとチームを組む必要がある。
 弱点は生前縁のない魔術。対魔力が低い、知識も乏しいのでキャスターチームと組むと丁度いいかも。