間桐雁夜&バーサーカー◆F61PQYZbCw



 全てを投げ捨てた。
 己を犠牲にしてまで救いたい、そう願っていた。
 迫る運命は己の身体を蝕み、それでも終盤まで生を保った。


 男は本能だけで足を動かし彼女の元へ辿り着く。
 明確な意識など無く深層心理に堕ちている感覚だけが彼を突き動かしていた。
 伸ばした腕は報われない、少女は腕を認めない。


 最後の希望も途絶えた今、男は薄暗い空間の中蟲で構成された闇に沈んでいく。
 哀れな男だ。自分を特別化しようと見栄を張った結果がこうである。
 黙って生活していれば一定の幸福を得たのだろう。今となっては無駄な結果論に過ぎないが。


 だが救いたい心は本物だった。
 彼は不器用な男だ、己を犠牲にし強制的に英雄に見立てる事でしか決断が出来なかった。
 聖杯戦争。一度魔術師の道を踏み外した彼が正当に生き残れる訳など初めから存在しないのだ。
 辛い修行と題した生命の消耗――彼の寿命などとうに残っていない。
 追い打ちを掛けるように召されるは狂戦士、彼の身体は現界を突破していた、だが終盤まで生き残った。
 それだけで奇跡、男は結果として意味の無い人生を送ったが見世物としては一級品と呼べるだろう。


「ここまで残るとはな……一つ褒美、でもないがくれてやる」


 沈み行く意識の中で最後に見るは救いたかった少女、後ろに現れる老人。
 彼が投げた一つの木片は沈む男の手に収まり、そして――。




 目覚めると見知らぬ天井。
 壁はコンクリートで構成され薄暗い廃墟のようだ。
 ひんやり冷たく感じる空気は身体に悪い、だが間桐雁夜には似合う。
 身体の中には刻印虫、何故今になっても彼の身体を蝕んでいるのか。
 しかし、今重要な事はそれではない。


 身体を起き上げると彼はどうやらソファーの上で眠っていたらしい。
 腕で頭を支えると彼は思考の梅に沈んで行く、全てを確かめるのだ。
 ガラクタの中から思い出を漁り出すと臓硯が何かを投げた事は覚えている、それだけ。
 箱の中に収まっている記憶には月の聖杯戦争と呼ばれる聞いたこともない単語が一覧となって表示されている。
 一つ一つ積み木を重ね上げるように丁寧に積み立てていくと一つの城【意味】が見えてくる。


「聖杯戦争……俺はもう一度夢を追いかけてもいいの……か」


 願いに縋った一つの戦争、そして始まるもう一つの戦争。
 この戦いに時臣は存在するのだろうか、傲慢な王は笑っているのだろうか。
 分からない、そもそも現実かどうかも理解出来ない。ならば――。
 腕を見ると其処には見慣れた令呪が宿っている、ランスロットの真名を持つ英霊ではないようだが。


「何だっていい。俺は桜ちゃんを救うんだ、一緒に葵さんの所へ戻って凛ちゃん達と笑顔で……」


 勘違いするな、其処に貴様の居場所など存在しない、哀れな男よ、甘い夢を見過ぎるな。


 間桐雁夜の願いの先にある風景は理想だ、それも己にとって最高の状態、誰も追い付けぬ遥か遠い理想郷。
 昔一瞬だけ噛み締めた甘さを何時迄も吸い続けた男は大人になった今でも蜜を貪る、情けない。
 不器用などではない。人間として欠けているのだ。現実を受け入れる覚悟が感じられない。
 そんな男に聖杯を授けた所で訪れる未来に価値はあるのだろうか、ある。
 奇跡だ。どんな形でも、他人の願いを笑う事は外道の所業。求める事は罪ではない。
 過程など関係ないのだ。表の歴史に刻まれる事のない聖杯戦争、結果だけが全てを物語る。


「お前は俺に、最期のチャンスを与えてくれるのか――バーサーカー」


 視線の先には彼と同じように白髮の男が一人、青年は細い、だが英霊だ。
 そしてクラスは狂戦士、強さは申し分ない――バーサーカーに雁夜は縁があるようだ。


 バーサーカーも雁夜と同じくイスに腰掛けているが理性や言語能力は存在しない。
 狂化の力によって底上げされた能力、魔力の消耗に拍車を掛けるがそれは強さの代償。
 端くれだが魔術師、雁夜の魔力でも速攻で消滅、その段階には達していない。
 長期的な戦闘はマスターの生命を削る。ランスロットの時のように長生き出来る保証など無い。


「俺は救いたいんだ、そして幸せになりたい――力を貸せバーサーカー」


 一度は終わった奇跡への道、それが奇妙な運命で今もう一度開かれようとしている。
 バーサーカーは不敵な笑顔、腕を大きく広げ笑いを上げる。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」


 その言葉は不明な単語の羅列にしか聞こえない。単語と明言出来る訳でもない。
 狂戦士は理性を失い戦いを貪る危険な人形になる、それが運命。
 このサーヴァントも救いたい存在が居る。


 どうしようもない屑、だが夢は、平穏を、周囲のために動く心は在る。
 理性が失われようと彼はマスターを笑ったりなどしない、本質では力になりたいと思っている。
 嗚呼、狂戦士でなければ彼らは共に夢を望む戦士として聖杯戦争を駆けていただろう。
 守りたい存在――彼らの原動力は根源的に同じ、方法や出口は違えど似た境遇の持ち主。
 雁夜にそれを知る術などない。狂戦士にそれを話す道理もない。


 彼らに光の道など似合わない。もう一度光を浴びれると思うな。


 何故闇に染まった人間が光を求める、未練が在るなら何故その道を往った。


 救い、救済――偽善を成し遂げた段階では光の道を歩む資格にはならない。


 何度だって告げてやる、貴様らに光など似合わない。


 求める行いを止める事などしない、誰も止めないのだ、他人の破滅に己を犠牲にする必要も無かろう。


 その道は一方通行だ。


 今更引き返すなど都合が良すぎる。


 守りたい存在を利用して己を崇めようなど狡い人間だ。


 もしもう一度、光を浴び、平和を求めるならば。


 染まった闇を深くして。


 聖杯を勝ち取る他に方法など無い。




【マスター】間桐雁夜@Fate/Zero



【参加方法】ムーンセルによる召還(木片は死に際に間桐臓硯から)



【マスターとしての願い】間桐桜を救い出す。



【weapon】蟲を使役する。即席のため本家である魔術師には及ばない。



【能力・技能】
 間桐の人間による蟲の使役を用いる。聖杯戦争に間に合うために行った調整では本来の力は出し得ない。
 しかし蟲と言う存在は人間に無意識で不快感を与える、そして力が無い訳ではない。


【人物背景】
 間桐の家に生まれるが、それを嫌い家を飛び出し一般人として生活を送っていた。
 好意を寄せる幼馴染がいたが彼女の幸せを案じ手を出さないでいたがその娘が間桐の家に養子に出されていることを知る。
 雁夜はその娘を救うために己の身体を犠牲にしながら魔術師の道をもう一度歩む……即席ではあるが。
 寿命を削られた男は少女を救うべく戦う。聞こえはいいが自分のためである。
 しかし少女を救う気持ち、これだけは真実だ。


【方針】
 自分に残されている時間など無い。バーサーカーの魔力消費を考えると尚更。
 聖杯に辿り着くためには構ってなど居られない、全力で勝ちに行く。



【クラス】バーサーカー



【真名】一方通行@とある魔術の禁書目録



【パラメータ】筋力A 耐久A+ 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具A



【属性】秩序・狂



【クラス別スキル】
 狂化:B
 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。



【保有スキル】
 絶対能力:A
 生前彼は学園都市最強と呼ばれる超能力者の頂点に君臨していた。
 狂戦士となり理性を失った今でも高度な計算や演算を可能にさせる能力。

 戦闘続行:C
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

 歩む道:A
 彼の感情は揺れ動く、闇に光が差し込んだから。
 だが今更素直にはなれない。彼は苦悩しながらも己の道を進み続ける。


【宝具】


『一方通行』
 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 学園都市一位の座に君臨する彼の力は「ベクトル操作」。
 触れた全ての事象を反射するその力に単純な物理攻撃は通じなく反射は自動的に行われる。
 生前未知なる魔術の前では初見で反射は不可能だったが英霊となった今ではランクD相当の魔術ならば初見で反射可能。
 単純な跳ね返しだけではなく、ベクトル操作により飛行性能を得るなど多種多様の戦法を可能にする。


『黒キ翼』
 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 その力は本人にも理解出来ない。圧倒的な黒い翼を生成する能力。
 この世に存在する全ての事象にベクトルを与え強制的に配下に置くことが出来る能力。
 魔力供給の関係上、連発可能な代物ではない。


【weapon】宝具に依存する。


【人物背景】
 学園都市最強の超能力、第一位の一方通行。
 一流の悪党と称したその生き様は闇に染まっている、虐殺も行ってきた。
 言い訳は行わない、彼は悪党、だった。


【サーヴァントとしての願い】
 バーサーカーのため不明、彼にも守りたい存在は居るようだが――。


【基本戦術、方針、運用法】
 自身の能力(宝具)により戦闘を行う。狂戦士に計画など無い。