Fate/hollow night◆ysja5Nyqn6
01/back to the stay night
――――目眩がした。
欠けた夢を、見ていたようだ。
“月を望む聖杯戦争”。
衛宮士郎(オレ)はいつの間にか、そう呼ばれる戦いに参加していた。
そこに俺の意思など関係はなかった。気が付けばすべてを忘れて、予選に参加させられていたのだ。
今でこそすべてを思い出してはいるが、それはまるで、夢を見ているような感覚だった。
……いや、その感覚は、こうして目覚めた今も続いている。
「―――問おう。貴方が、私のマスターか」
凛とした声が響く。
たったそれだけで、無理矢理招かれた事などどうでもよくなった。
それほどまでに、俺は目の前で佇む少女に目を奪われていた。
それを知ってか知らずか。少女はかつての再現のように、その言葉を続けた。
「サーヴァント・セイバー、召喚に従い参上した。
―――これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。
――――ここに、契約は完了した」
その姿を、覚えている。
僅かに振り向く横顔。どこまでも穏やかな聖緑の瞳。
たとえ地獄に落ちようと、鮮明に思い返すことが出来と確信した、その姿。
―――空には白銀に輝く真円の月。
静謐なる静寂の中、かつて騎士王と謳われた少女が、月の光に照らされていた。
†
「―――シロウ、“目は覚めましたか”?」
「あ、ああ。大丈夫、一応全部思い出した。
わるい、セイバー。心配かけちまったみたいだな」
俺の状態を確認するように、セイバーが声をかけてきた。
その声にはっと現実に立ち返り、慌ててそう答える。
「いいえ、かまいません。
シロウが周囲を心配させるのは、いつもの事ですから」
セイバーはそう言って、呆れたように小さく笑みを溢した。
「む……」
その言葉に若干の反感を覚える。が、反論の余地はないので押し黙る。
彼女の言う通り、自分が無茶をしてきた自覚はあるし、その無茶をフォローしてくれたのは主にセイバーだ。
下手に反論しては、どんなしっぺ返しが帰ってくるかわかった者じゃない。
それに―――
「それに、貴方が私を心配させるとしたら、それはこれからでしょう。
今のこの状況を、貴方が良しと出来る筈がないのだから」
「……………………」
さすがセイバー。衛宮士郎(オレ)のことをよく知っている。
「ああ、そうだな。……俺はこの聖杯戦争を止めるつもりだ」
もしこの聖杯戦争が、周囲に迷惑を掛けず、単なる魔術師同士の争いで終わるのなら、止めようとは思わなかったかもしれない。
なぜなら魔術師である、という事は常識から離れているという事であり、魔術師の本質は生ではなく死である。
死ぬ時は死に、殺す時は殺す。魔術とは、自らを滅ぼす道に他ならない。
そして相手が同じ魔術師なら、殺すことに抵抗はない―――それが俺の教わった、魔術師の初歩だからだ。
俺がするとしたらそれは、無用な被害が出ないように立ち回ることくらいだっただろう。
だがこの聖杯戦争は違う。
俺はこの聖杯戦争に、自分の意思とは関係なく強制的に参加させられた。
ならばどうして、他に同じように強制参加させられたマスターがいないなどと言えよう。
仮にも“正義の味方”を目指している以上、そんな巻き込まれてしまった人たちを見捨てるようなマネはできない。
「きっとまた、セイバーに何度も迷惑をかける事になると思う。
それでも良ければ、俺に協力してくれないか、セイバー?」
セイバーをまっすぐに見つめて、そう頼み込む。
自身の無力さは身に染みている。この聖杯戦争は、俺一人だけではどうすることもできない。
聖杯戦争を止めるには、サーヴァントであるセイバーの協力が必要だ。
「……まったく。やはりと言うべきか、貴方ならそう言うだろうと思っていました」
セイバーはため息を吐きながら、呆れ調でそう口にした。
そしてそのまま、ですが、と言葉を続ける。
「元より我が剣は貴方に預けています。貴方がそれを望むのであれば、是非もありません。
それに無辜の民、覚悟のない者を戦場に狩り立てるのは、私としても本意ではありませんしね」
「セイバー」
「行きましょう、シロウ。何をするにしても、まずは拠点を定めなくては」
セイバーはそう言って、再現された夜の街へと向けて歩き始める。
「ああ、そうだな」
その頼もしい背中を見つめながら、そう口にして彼女に続いて歩き出そうとして、
「――――え?」
セイバーが一瞬、彼女を象徴する青い衣ではなく、何か別の、黒い戦装束に身を包んでいるように見えた。
「どうしました、シロウ? 何かありましたか?」
「い、いや……何でもない。すぐ行く」
立ち止まったままの俺を不審に思ったのだろう。
そう振り返るセイバーは、いつもの紺碧と白銀の戦装束に身を包んでいる。
「気のせい……だよな。やっぱり」
たぶん、月の光で目が眩んだのだろう。
ネガポジが反転したように、一瞬だけ彼女の姿が黒く見えてしまったのだ。
「行こう、セイバー。
少しでも早く、こんな戦いを止めるために」
錯覚を振り払うようにそう口にして、セイバーと並んで歩き出す。
聖杯戦争は始まったばかりだ。
これから起こる戦いで、きっと何人ものマスターが散っていくだろう。その中には当然、無理矢理招かれたマスターもいるはずだ。
そういったマスターたちを助けるためにも、俺は、この聖杯戦争を止めなくては。
02/ Heaven’s Feel hollow night
「―――とまあ、こんな感じで“表”のオレたちの顔合わせは済んだわけだけど、」
不意にそう口にして、衛宮士郎(オレ)は目の前の少女へと声をかける。
「アンタのほうは何か思う所はあるかい、裏側の……いや、“本物のセイバー”?」
「――――――――」
“黒色の戦装束”を纏ったセイバーはその質問を黙殺し、冷たく押し殺した殺意だけをオレへと向けてくる。
実のところ、このセイバーは衛宮士郎がよく知る清廉なる騎士王ではない。
ある平行世界で『この世全ての悪(アンリ・マユ)』に呪われ黒化した、冷酷なる暴君である。
先ほどまで本来の騎士王としての姿をしていたのは、まあオレとの“契約”による特典みたいなものだろう。
「ケケ、嫌われたもんだねぇ。
ま、それも当然か。アンタからしてみれば、オレのこの姿はアンタの本来のマスターを侮辱しているようなもんだろうしな」
「よく回る口だ。だが程度を弁えぬのなら、喋れぬようその咽喉を切り裂くぞ」
セイバーはその金色の瞳に殺意を籠め、オレを射殺さんばかりに睨み付けてくる。
―――死んだ。
もし視線で人を殺せるのなら、今ので軽く三回は死んだだろう。
彼女は本気で、それほどの殺意を籠めて口にしていた。
それが成されなかったのは単に、仮にもオレが彼女のマスターであるからに過ぎない。
「随分と物騒だなセイバー。聖杯戦争において、サーヴァントとマスターの相互理解は重要だぜ」
「貴様がそれを口にするか、“アヴェンジャー”。他者の殻を被るか、憎悪(のろい)を以てでしか世界(ヒト)と関われぬ道化が」
―――アヴェンジャー。
たった今、セイバーは衛宮士郎(オレ)を指してそう呼んだ。
それは間違いではない。確かにオレは、存在しない第八のサーヴァントであると言える。
今ここにいる衛宮士郎(オレ)は、その実衛宮士郎本人ではなく、今回現界するにあたりその殻を被っただけの偽物なのだ。
第三次聖杯戦争においてアインツベルンによって召喚され、そして僅か四日で敗退したサーヴァント。
真名をアンリマユ。拝火教においてこの世の全ての悪を担う悪魔、その名を押し付けられた、ただの脆弱な人間。
そして大聖杯の中で、ようやく人々の願った存在として新生できた、人の悪性の極地。
それが今ここにいるオレの正体だ。
だが同時に、セイバーの言葉は決して正しくもなかった。
「おいおいセイバー。オレをそのクラス名で呼ぶのはおかしいぜ。
何しろオレは、アンタのマスターとして召喚されたんだからな」
「……………………」
オレの言葉にセイバーは、湧き上がる苛立ちを抑え込むように沈黙する。
そう、今のオレはアヴェンジャーではない。あえて言うのなら、クラス・マスターのサーヴァント。
この“月を望む聖杯戦争”の参加者として選ばれた、セイバーのマスターとして召喚された存在なのだ。
そしてサーヴァントを召喚する条件は、記憶を取り戻すこと。
つまり実際に予選を経験していたのは、衛宮士郎(オレ)ではなくセイバーだったのだ。
ちなみに衛宮士郎が参加していた予選の記憶は、“表側”を演じるための偽物の記憶だったりする。
―――ことの発端は、“サーヴァントとして使役されていた”セイバーが、この聖杯戦争に参加したことにあった。
ある戦いの後、彼女は大空洞内にあった『ゴルフェの木片』に接触したことで、この聖杯戦争に参加する資格を得た。
だが参加資格を得ることと、実際に参加できることは違う。たとえ資格を得ていようと、本来使役中のサーヴァントがこの聖杯戦争に召喚されることはない。
なぜなら同じサーヴァントならば、既に召喚された存在を参加させるよりも、英霊の座から新たに召喚する方が遥かに安全だからだ。
何しろどこからも不満が出ない。
マスターとの仲が悪く、状況も悪いのであればいざ知らず、もしこれが関係は良好、勝利も目前な状態で召喚されれば、そのサーヴァントの参加していた聖杯戦争は破綻する。
マスターはサーヴァントを失って無条件で敗退するし、目前だった聖杯を逃したサーヴァントが反旗を翻すことも目に見えている。
たとえ手段としては簡単であっても、結果として生じるデメリットが大き過ぎるのだ。
故に原則として、サーヴァントは座からのみ召喚されるのだ。
しかしセイバーは使役されていた状態からこの聖杯戦争に参加した。
それを可能とした理由は、大きく分けて三つ。
一、セイバーが厳密には、死者ではなく生者の区分にあること。
二、黒化の影響で受肉したことにより、より生者に近しくなっていたこと。
三、彼女が生きている内に聖杯を手にする、という英霊の契約を交わしていたこと。
これらの理由により、セイバーは一人の生者として認められ、この聖杯戦争に参加することを可能としたのだ。
しかし、ここで問題が生じた。
いかに参加者として認められようと、現在のセイバーはあくまでもサーヴァントだ。
そしてサーヴァントには、魔力を供給するマスターが必要となる。
そこでムーン・セルは、セイバーにマスターとなる存在を宛がった。
即ち、オレだ。
形のない『無』であるオレに衛宮士郎の殻を被せ、彼女のマスターとして仕立て上げたのだ。
それが可能だったのは、セイバーが受肉し依代を不要としていたことと、
オレが『繰り返す四日間』の日常側において、「セイバーのマスターである衛宮士郎」の殻を被っていたからだろう。
本質的にはサーヴァントでありながら、マスターとしての側面も持つ存在。
それ故にオレは、衛宮士郎として行動する限りにおいて、魔力を自己生成し、セイバーへ供給することを可能としていた。
そうして、契約は果たされた。
聖杯戦争の参加者となった生者(サーヴァント)と、そいつに召喚された憐れな死者(マスター)。
そんな、色々な意味で反転した主従が誕生することになったのだ。
ホント、おかしな関係である。
天の逆月――堕天(ヘブンズ・フォール)とでも言うべきか。
その関係も、その属性も、その在り方も、全てが地上(ほんらい)の聖杯戦争とは逆さまだ。
まあこれが“月を望む聖杯戦争”である以上、ある意味において相応しい関係だと言えるだろう。
………ただ一つ、どうしても分からない事があるとすれば。
それはオレがマスターに選ばれた理由だろうか。
この聖杯戦争に参戦したいと願うマスターは数多くいる。
そうでなくても、『ゴルフェの木片』に接触して資格を得た連中だっている。
ならばそいつ等の内の誰か一人をセイバーのマスターにしてもよかったはずだ。
だというのにムーン・セルは、わざわざオレをマスターに仕立て上げた。
それにどんな意味や理由があるのか、それだけがどうしても理解できなかった。
ただまあ、それは今考えたところでしょうがないし、聖杯戦争を勝ち抜いていけば分かることだ。
それに分からなかったとしても別に問題はない。
オレはただセイバーのマスター(エミヤシロウ)として行動し、その合間に“オレ”の役割を果たせればいい。
幸いにして、その機会はきちんと用意されている。
この聖杯戦争には、無力な弱者を喰い潰してでも聖杯が欲しいと願うマスターがそれなりにいる。そんな連中を殺す分には、衛宮士郎もそう文句は言わないだろう。
「ま、そんなワケだから、少しずつでも仲良くしていこうぜ、セイバー」
「……仕方あるまい。貴様がマスターとしての役割を果たす限りにおいては、その減らず口も見逃してやろう」
「お、ラッキー。早速一歩前進だ。やったね!」
「……………………」
セイバーは苛立たしげに眉を顰めると、その顔をバイザーで覆ってしまう。
同時にその戦装束が、漆黒から青色へと偽装される。
これ以上、オレと会話をするつもりはない、という事だろう。
なら、こちらも本性を見せている理由はない。
表向き、衛宮士郎に成りきって行動する。
彼女が内心でどう思っていようと、今のオレは衛宮士郎そのものだ。違いはどこにもありはしない。
なので、無理矢理参加させられた人達を助けようなどと、それらしい事を考えながら、衛宮士郎(オレ)はセイバーの横に並び立った。
頭上には孔のような真円の月。
杯のような輪郭は、まるで、そこにくべられる蜜を待ち望んでいるようだった。
「行こう、セイバー。
少しでも早く、こんな戦いを止めるために」
さあ、聖杯戦争を続けよう、アルトリア・ペンドラゴン。
――――今度こそ、君の誓いを果たす為に。
00/END
「セイ、バー――――…………!!!!!!」
左右から繰り出された双剣。
爆撃めいたその一撃は、彼女の鎧を貫通して胴を薙ぎ払った。
紛れもなく致命傷だった。
その身がサーヴァントではなく、自然治癒の力が備わっていなければ、確実に即死していただろう。
そんな、人の身でサーヴァントを倒すという偉業を、彼女の本来のマスターは成し遂げて見せた。
「は……あ――――強くなりましたね、シロウ」
彼女にとって、それは心からの賞賛だった。
自分の代わりに戦うなどと、あまりにも無謀なことを口にした未熟な少年。
そんな彼が、本気の彼女と戦い、打倒し、後は止めを残すところまで来たのだ。嬉しくないはずがなかった。
「……いえ、それは違いましたね。貴方は、始めから強かった」
そう。彼は初めから強かった。
サーヴァントを失い、片腕を失い、かつての味方が敵として立ちはだかろうとも、決して諦めず一人の少女のために戦い抜いたその心。
たとえその意思が歪なものであったとしても、その強さを認めないわけにはいかないだろう。
「さあ、決着をつけてください。急がなければ、私の体は再生する」
倒れ伏す少年へと彼女は告げた。
傷は紛れもなく致命傷。いかに強力な再生機構を持とうと、あと数分は何もできない。
あとはとどめを残すだけ。その介錯を、彼女は少年に願った。
少年をその手に掛けてしまうくらいならば、その前に彼の手で、この命を終わらせて欲しかったのだ。
………だが。
「――――――――」
「…………シロウ?」
彼女のその願いは、叶わなかった。
限界を超えた力の代償。
最後の一撃を放った時点で、少年はどうしようもないほどに終わっていたのだ。
「――――では、私の勝ちですね、シロウ」
呟く声に感情はなかった。
きっと慣れていたからだろう。
彼女とて国を救うために、村の一つを干上がらせ、そうして得た糧であまりにも多くの敵を斬り伏せてきた。
それが英雄というものだ。
いまさら人一人を死に追いやったところで、思う所がある筈もない。
今回はその相手が、自分の本来の主であったというだけの事に過ぎないのだ。
故に、涙は流れなかった。
この聖杯戦争の結末にも、もはや関心はなかった。
彼女の胸に去来していたのは、小さな哀れみと、より確かなカタチで懐いた、自らの願いだけだ。
少女――アルトリアは、王の選定をやり直すためにサーヴァントとなった。
聖剣を抜いてしまった時、国を救えなかった自分ではなく、国を救えた筈の相応しい王がいた筈だ。
故に、王の選定をやり直すことが出来るのなら、きっと国を救うこともできるはずだ、と。
そう、私は国を救えなかった。
そんな私をサーヴァントとした少年も、自らが死に追いやった。
つまるところ、私は王に相応しくなかった。王となるべきは、やはり私ではなかったのだ。
故に、私の願いは変わらない。
王の選定をやり直し、全ての運命を変える。
真に王に相応しい英雄であれば、国も、彼の事も救える筈だ。
そうして運命を覆し、国の亡びも、聖杯戦争の結末も、何もかもをやり直す。
それが仮にも王であった私の、彼のサーヴァントであった私の、残された最後の責務だろう。
……ただ、それでも。
「―――問おう。貴方が、私のマスターか」
この身が呪われたままであっても。
この再会が偽りであったとしても。
「サーヴァント・セイバー、召喚に従い参上した。
これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。――――ここに、契約は完了した」
この虚ろな夢に微睡むことくらいは、今の私にも、赦されるだろうか。
【クラス】セイバー
【真名】アルトリア
【出展】Fate/stay night
【参加方法】
大空洞内にあった『ゴフェルの木片』と接触。
大聖杯を通じて自ら召喚に応じた。
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:D 魔力:B 幸運:B 宝具:A++
↓偽装時
筋力:B 耐久:C 敏捷:C 魔力:B 幸運:B 宝具:C
【属性】
秩序・悪(偽装時は、秩序・善)
【クラススキル】
対魔力:B、騎乗:‐(偽装時は、対魔力:A、騎乗:C)
【保有スキル】
直感:B、魔力放出:A、カリスマ:E(偽装時は、直感:A、魔力放出:A、カリスマ:C)
【宝具】
『風王結界(インビジブル・エア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大補足:1個
セイバーの剣を覆う、風で出来た第二の鞘。厳密には宝具というより魔術に該当する。
幾重にも重なる空気の層が屈折率を変えることで、覆った物を透明化させることが出来る。
透明化された武器はその間合いを把握することが困難になるため、白兵戦では非常に有効な武器となる。
ただし、あくまで視覚に対する効果であるため、幻覚耐性や「心眼(偽)」などのスキルを持つ相手には効果が薄い。
また風で覆う対象は剣に限らず、オートバイに纏わせて空気抵抗を削減させたり、ビルをも覆う風の防御壁にしたりすることも可能。
セイバーの場合は基本的に聖剣を覆い不可視の剣としているが、透明化は副次的な役割であり、その本質は彼女の余りにも有名すぎる剣を隠すためのもの。
また纏わせた風を解放することで、「風王鉄槌(ストライク・エア)」という破壊力を伴った暴風として撃ち出す技ともなる。
ただし、一度解放すると再び風を集束させるのに多少時間を要するため、連発はできない。
『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』
ランクA++ 種別:対城宝具 レンジ1~99 最大補足1000人
生前のアーサー王が、一時的に妖精「湖の乙女」から授かった聖剣。
人ではなく星に鍛えられた神造兵装。聖剣というカテゴリーの中で頂点に位置し、「空想の身でありながら最強」とも称される。
神霊レベルの魔術行使を可能とし、所有者の魔力を光に変換、集束・加速させることで運動量を増大させ、光の断層による「究極の斬撃」として放つ。
攻撃判定があるのは光の斬撃の先端のみだが、その莫大な魔力の斬撃が通り過ぎた後には高熱が発生するため、結果的に光の帯のように見える。
ただし、黒化したセイバーが担うこの聖剣は、使い手の魔力を光に変換、集束・加速させるという作用の影響で、剣身や放たれる極光も黒く染まっている。
「聖剣」と呼ばれながらも黒化の影響を受け入れるのは、この宝具そのものが守り手である湖の乙女と同じく善悪両面の属性を有するため。
それ故か、この状態であっても聖剣としての格は全く喪失していない。
【weapon】
『エクスカリバー・モルガン』
セイバーが黒化した影響により、もう一つの側面である闇に染まった聖剣。
たとえ自身を黒化前に偽装していようとこの聖剣を誤魔化すことは出来ず、その刀身は禍々しい黒色となっている。
そのため、『風王結界』によって剣を隠す意味合いがより大きくなっている。
【人物背景】
通称セイバー・オルタ。
衛宮士郎のサーヴァントであったセイバー(アルトリア)が、アンリマユの影に汚染され黒化した存在。
HFルートにおいて、最強の敵として士郎たちの前に立ち塞がる。
【サーヴァントとしての願い】
王の選定も、聖杯戦争も、何もかもをやり直す。
【運用法】
マスターの影響により、黒化する前の自分へと偽装することが可能となっている。
アヴェンジャーが衛宮士郎に成りきれるように、現在の彼女も意識的に自己を反転させることが出来るのだ。
ただし、それはあくまでも偽装であり、主体が黒化した状態のセイバーであることに変わりはない(そのため偽装中でもクセ毛がない)。
また偽装状態であっても黒化の影響がなくなるわけではなく、騎乗、直感、カリスマといった精神系スキルがランクダウンしている。
さらには受肉し霊体化もできなくなっているが、セイバーはもとより霊体化が出来ない。
そのため依代が不要になり、彼女を維持するための魔力消費がゼロとなっただけである(ただし、戦闘の際にはマスターによるバックアップが必要)。
基本的な運用方法はどちらの状態でもほぼ同じ。
あえて区別するならば、偽装時は対魔術師や俊敏さを必要とする戦闘に、黒化時は近接戦闘に向いていると言える。
また魔力消費などマスターの負担を考慮しないのであれば、全ての能力値をワンランクアップさせることが出来る。
これは黒化の影響によるものであり、狂化スキルによる能力上昇とは異なる(本来の能力を超えた強化はできない)。
なお、聖剣の開放など膨大魔力を使用する場合には偽装を保つことが出来ず、黒化した彼女の姿が露わになってしまう。
【基本戦術、方針】
基本的には偽装状態で行動。シロウの方針に従い、強制参加させられたマスターの保護のために動く。
しかし可能であれば敵サーヴァントを倒し、必要であれば偽装も解く。
そして最終的には聖杯を手に入れ、全てをやり直す。
【マスター】衛宮士郎(アヴェンジャー)
【出展】Fate/hollow ataraxia
【参加方法】セイバーが参加者となったことにより、彼女のマスターとして召喚された。
【マスターとしての願い】
聖杯に託す願いはない。
強いて言えば、強制参加させられたマスターを保護し、聖杯戦争を止める事が願い。
ただしこれは衛宮士郎としてのものであり、アヴェンジャーとしての願いは不明。
【weapon】
『投影宝具』
衛宮士郎の武装。
投影魔術によって作り出した武装。
カリバーン、干将・莫邪といった宝具が代表的。
『右歯噛咬(ザリチェ)・左歯噛咬(タルウィ)』
アヴェンジャーの武装。投影という形でなら衛宮士郎も使用可能。
現界する際の元となった人物の特徴が色濃く出た、奇形の双剣。
刀剣砕き(ソードブレイカー)であり、切り裂くための武器ではなく、敵の武器を拘束する為の牙。
【能力・技能】
「セイバーのマスターの衛宮士郎」として召喚されたため、衛宮士郎と同程度の能力しかなく、分類的にはEXTRA主人公やありすなどの網霊(サイバーゴースト)に近い。
また同様の理由で、アヴェンジャーとしての能力や宝具が使用可能かどうかも不明。少なくとも、完全に衛宮士郎として行動している間は使用できない。
『投影魔術』
衛宮士郎の魔術。
想像理念、基本骨子、構成材質、製作技術、成長経験、蓄積年月の再現による物質投影。
それが「剣」であるのならば、いかなる武装でも複製できるが、彼自身の技量が未熟ため、完全な投影が出来ないものもある。
これは衛宮士郎本来の魔術である固有結界“無限の剣製”から零れ落ちたものだが、衛宮士郎の生成できる魔力量では起動させることが出来ないため除外する。
『偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)』
アヴェンジャーの宝具。本人曰く「傷を負わねば攻撃できない、クソッタレの三流宝具」。
ゾロアスター教経典「アヴェスター」の写本であり、「報復」という原初の呪い。自分の傷を、傷を負わせた相手の魂に写し共有する。
仮に右腕がなくなった場合にこの宝具を使うと、相手の右腕が同様に吹き飛ぶことはないが、感覚がなくなり、動かすことも出来なくなる。
条件さえ満たせば、高い魔術耐性を持つサーヴァントであっても問答無用で適用でき、また「共有」であるため、アヴェンジャーが自身の傷を癒さない限り、相手の傷も癒えることはない。
しかし、発動は対象一人に対して一度きり、放つのは自動ではなく任意発動。自分が軽傷ならば敵にもさしたる効果は与えられず、かつ今後同じ相手には使えなくなり、一方、致命傷を受ければ使う前に自分が死亡してしまうので発動できない。
使いどころが非常に難しい上、互いに重傷を負って動けないという困った状況が出来る。
ただし、足止め用としての性能はこの上なく高いため、止めを刺せる相棒と組めば、それなりの効果を発揮する。
『対人間(?)』
アヴェンジャーのスキル。
本人曰く、「英霊クラスの超人であろうと、人間である限り俺には勝てない」。
詳細は不明だが、おそらくセイヴァーのクラススキル「対英雄」に類するスキルの究極系であろうと思われる。
【人物背景】
「Fate/hollow ataraxia」の主人公。
繰り返す四日間の中で、謎の聖杯戦争の真相を探る。
厳密には、この衛宮士郎は「アヴェンジャーが士郎の殻を被ったもの」であり、士郎本人とは違う。
とはいっても、もともとのアヴェンジャーは虚無のものであるため、確たる性格というものはない。
そのため、彼本来の好奇心や夢など根底的な衝動などを除けば、その性格は衛宮士郎の暗黒面を現出させたものに等しい。
ちなみに“殻をかぶる”と表現されてはいるが、厳密に言うと本物の衛宮士郎との同化に近く、衛宮士郎として行動するときは完全になりきっている。
なおアヴェンジャーの持つ武装や宝具は現在の姿を形作った際に得たもので、元となった人物の特徴が色濃く出ている。
真名は「アンリマユ」。
この世全ての悪なるものを肯定する反英雄の極地であり、もとはその役割を一身に背負わされ、延々と蔑まれ、疎まれ続けた結果、「そういうもの」になってしまった普通の人間。
生まれ育った村の呪いによって、人間であった頃の名前は世界から喪失している。
決まった姿や人格を有せず、本来は人型の影として活動する。
今回はhollow時点での姿、すなわち「セイバーのマスターの衛宮士郎」という殻をかぶって召喚された。
【方針】
基本的に衛宮士郎として行動する。つまり、強制参加させられたマスターを保護し、聖杯戦争を止める。
セイバー・オルタからの指示があった場合は、一応その指示に従い、アヴェンジャーとして行動する。
アヴェンジャー個人としての行動方針は不明。あえて言うなら、自分が召喚された理由の解明。
【備考】
※予選中のセイバーの設定は、学園の風紀委員であった模様。
※令呪は衛宮士郎の左手にあるが、セイバーが召喚したという形式のためか、形状はマスターアルトリアのものとなっている。
最終更新:2014年07月24日 18:10