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シャア・アズナブル&アーチャー ◆F61PQYZbCw


 マンションの一室では幼い少女が一人眠気と戦っている。
 頭を揺らしながらも帰りを待つ、大切な人の帰りを待ち続けているのだ。
 外は深夜、家の中ぐらいは暖かくしていたい。電気を付けテーブルの上にはご飯を用意済み。
 お風呂も沸かしており布団も敷いてある、彼がどんな行動をとっても安全に対応することが出来る。


 幼い少女だが家事の腕前は大人にも勝る、制服の上に重ねているエプロンも似合っている。
 念の為に記述しておくが待っている人は男だ、だが彼女の夫ではないし血の繋がりもない。
 恋人でもなければ友達でもないのだ、言わば赤の他人の存在。


 彼は記憶を失くしている――聖杯戦争のマスターとして方舟に召された後遺症。
 願いを求めて何人の人間が召されたか、されど記憶を取り戻さない限り意味など訪れない。
 どんな願いだろうが意志だろうが忘れている人間に奇跡を縋る資格は与えられず。
 件に関しては己の力で道を開けるしか無いのだ、それも出来ない者に聖杯を求めることなど笑止。


 そして幼い少女はサーヴァントだ、記憶を失くしたマスターと共に暮らしている。
 マスターには自分で記憶を取り戻して貰いたいため彼女から聖杯戦争の事は告げない。
 彼のためを思っている、思い出せないのならそのまま眠るのも彼のためだ、勝ち抜けるとは限らない。
 今の仮初の暮らしにはある程度満足している、彼女には訪れなかった平和的な日常を演じれるから。
 何時までこの生活を続けるのか、可能ならば永遠に続けるのも悪くない。


 誰かのために尽くせる事は苦ではない、むしろ生き甲斐を感じる。
 敵だろうが何だろうが困っている人を、他者を救うことに間違いなど無いのだ。
 それが導く事や背中を任せる形になっても本質は変わらない。


 彼女の生前――英霊となる前も、それは優しい存在だった。
 敵をも救った彼女、その行いは英霊に相応しい所業であり此度の聖杯戦争に召されたのも納得だ。
 逆にこの幼い少女もまた、英霊として召された意味、つまり他界済みである。
 笑顔の裏側には哀しい過去や逸話があるかも知れない、だがマスターに不安を与えたくない。
 だから彼女は笑い続ける、自分がサーヴァントであることを隠しながら。


 風を浴びようと窓を開けベランダに出る、夜空が広がり神秘的だ。
 街は所々に明かりを灯しながらも静かに、眠っているように静かである。
 このままマスターが記憶を取り戻さなかったら。それはそれでいいのかもしれない。
 彼は悩んでいた、記憶を失くしながらも人々の意思に絡みつかれ、独りで抱え込み何かに抗っていた。
 忘れたままこの世から消える事が出来るのならば、それはある意味での幸福なのかもしれない。


「……あっ!」


 ガチャリと響く音、玄関から聞こえてくるのは帰還の声だ、彼が帰ってきた。
 少女は窓を閉めるとそのまま玄関へ向かう、カーテンを閉め忘れるほどの速さで。
 玄関の明かりを灯すとスーツ姿の彼が居た、その顔は何やら深い面立ちで考え事をしているかのよう。
 金髪のオールバック、彼は靴を脱ぐと少女を無言で見つめる。


「お帰りなさい、ご飯にする? それともお風呂かな?」


 無言の睨みに若干怯えるが彼は疲れている、判断した少女は幾つかの選択肢を与える。
 それは苦渋の決断を迫るものではなくどれを一番求めているかを尋ねる言わば慈愛の導き。
 少女の言葉を聞いた男は無言で部屋の奥に足を進め始めた。
 この行動に少女は驚きと少しの悲しみを覚えるが黙って後を着いて行く。
 男はソファーに腰掛けると手を組み何やら考え事を始める、それも深刻な顔で。
 帰宅時も考えていたが何かをまた考え始める、しかし少女には分からない。
 彼女は彼を見つめると再度言葉を掛ける、パートナーとして。


「今日は疲れたのね、うん、いいわ! お布団も敷いてあるからスーツはちゃんと掛けてね?」


 彼女に出来る事は彼を支える事だけだ。
 親身になり支える、永遠のパートナーではなくても誰かのために尽くす。
 優しい彼女だからこそ行える真の優しさだ。


「……いや、いい。私は望んでいないのだよ」


 少女の提案を男は小さく深い声で否定、そのまま彼女を何度目か分からない程見つめる。
 望んでいない、つまり彼はご飯も風呂も睡眠も求めていない事になってしまう。
 根源は其処ではない。


「ご、ごめんなさい……私、その……」


 少女は息が詰まる、彼の事を思って行動したが裏目に出てしまい彼に重圧を掛けてしまった。
 悩む彼には出来るだけの支えになりたかったがそれも不要なお節介と捉えられたのだろうか。
 震える声で謝罪する、ごめんなさい、と。


「もういい――アーチャーよ」


 止まる時は明鏡止水、流れる流星は蒼く心に沈む。
 彼は全てを思い出した、己の記憶、使命、運命、願い、そう何もかも。


 男は聖杯戦争に参加したのは事故だ、本意ではない。
 だが月に召された事実、察するに彼は何かしらの願いを持っていたのは確かかもしれない。
 聖杯に懸ける願いは人それぞれだ、彼も己の信念と呼べる何かが在るのかもしれない。


「記憶が戻ったのねマスター、うん。腕に令呪も宿ってるわね」

「私も最初は驚いたよ、まさか君が私のサーヴァントとはな」

「黙っていてごめんなさい……貴方には自分で気づいて欲しかったの」

「君のような少女に負担を掛けてしまったか、私も年齢だけは一人前に過ぎていくようだな」


 男――シャア・アズナブルは自分を嘲笑うように微笑みながら少女の謝罪を慰める。
 不慮の事故とはいえ記憶を失くすとは情けない、その程度の意思ならば必要ないのだ。
 違和感は感じていた。毎日悩み、けれど答えは一向に出て来なかった。
 抜け出せない迷路、出口の明かりは見えようが踏み込む勇気が無かったのだ、嗚呼情けない。


 少女――英霊であるアーチャーとの生活は悪くは無かった。
 自分のために尽くしてくれる幼い少女に母の役割を求めていたのだ。
 情けない、大人になっている筈の彼は未だ過去の悲劇に囚われ進めていなかった。
 いや、進んではいるのだ。成長もしている、だが、今一つ次の段階へ辿り着けていなかった。
 彼の運命は他人には想像出来ない程の道を進んでいる。
 それは全ての事象が重なりあった結果螺旋をも超える捻じれを引き起こし彼の人格に多大な影響を与えてしまった。
 彼と言う存在こそが運命であり、運命と言う事象が彼と言っても過言では無い程に。


「気にしなくていいの。それで……マスターはやっぱり皆を裁くの……?」


 シャア・アズナブルは人類に一つの終わりと答えを与えようとしていた。
 繰り返される戦争、失われていく命、学習しない人間、滅び行く自然。
 人類は高度な文明を築き上げた、そして世界を滅ぼしていく愚かな存在でも在る。
 政治上で不要な、野心に触れてしまった者は力を行使し人民に業を背負わせ自分達は幸福に浸る。
 恰も自分達を選ばれた人間のように扱い、邪魔をする者は処刑、暗殺……その心は淀み過ぎている。
 革命とは一部のインテリが引き起こす傍迷惑な所業だ、戦争はビジネスなのか。
 その心や思想も理解出来る、だが人類が求めているのは戦火ではなく平穏だ。


「……人の心の暖かさ。私もそれは知っている、触れたことがある。
 だが人類は一度考えを根源から改めないといけない……。
 人類はこのまま腐敗していくだけだ、選ばれない人間だげが苦しみを味わう世の中に存在する価値などあるというのか」


 人間は『きっかけ』がないと動けない、本気になれない哀れな生物である。
 危機が迫らなければ課題に手を付けない、やるべき事があるのに気が乗らないから後回し……。


「残念だが私には人類に叡智を授ける事は出来ない……分母を減らす事でしか導けないのだよ」

「駄目……駄目よ! 貴方の言う通り人は間違いを犯すわ、でもそれが理由にならないのよ!
 間違ったなら反省することは出来る、全員は無理かもしれないけど確実に前へ進めるわ」

「……ならば今すぐ愚民共を導けるのか!? 空論だけでは何も進まない、誰かが犠牲にならなければならんのだ!
 そうして気付いた者が行動を起こす、だが泥と批難を浴びるのだ! 勝ち負けなど関係なく世論は悪という勝手な記号を押し付ける。
 単純な答えでしか物事を受け入れられない人類など……ッ。

 済まない……英霊である君に当たっても仕方が無いな……」


 大人である彼が、少なくとも年齢換算で大人であるシャアが少女に持論を感けるなど情けない。
 溜め込んだ感情は吐き出さないと己を壊す、それが世直しに繋がり結果として世界に不安を蔓延らせる。
 彼もまだ成長して切れていない感情があるようだ。


 言葉を吐いたがシャアの心に光が差し込む訳でもない。
 英霊とは言え見た目が普通の少女である彼女に情けない姿を見せてしまった。
 その行動と発言に心が苦しくなる、こんな所だけは成長していた。


「いいのよ……もう、いいの」


 アーチャーはシャアの言葉を聞いても彼に反発すること無く歩み寄る。
 そのまま彼の前まで辿り着くと手を握る、小さいがとても暖かい。


「一人で背負い込まなくていいのよ、マスター。今は私が居る。
 私には貴方の生き様や苦悩は分からない、ごめんなさい……でも貴方にだって大切な人は居る筈よ。
 親族、親友、好敵手、最愛の存在……そんな人達を思い浮かべて。心の光、感じない?
 感じられなくてもいいの、ただ忘れないで。人類はまだ希望が無くなった訳じゃないことを……そして。
 貴方は一人じゃない、無理に自分を殺して道化を演じる必要もないのよマスター。
 聖杯に懸ける願いは人それぞれ……それまでにもう一度考え直す時間だって、ね?」


 彼女は知っている、人類の戦争を。
 生前は彼女も戦争に参加し多くの命を奪い、多くの命を散らしながら我が国のために全力を尽くした。
 だから戦争の愚かさ、正当さ、仕方無さは理解出来ている、それだけではない。
 彼女は敵国の兵士も救ったのだ、シャアに当て嵌めると地球の重力に甘んじている人間でさえ彼女は救ったのだ。


 けれど彼女は戦争で沈んだのだ、無論敵国によって。
 戦争だ、仕方が無い、諦めろ、甘さを捨てろ、受け入れろ。


 それでも彼女は心の暖かさを信じているのだ。
 だから目の前で苦悩しているシャア・アズナブルを見棄てることは出来ない。
 彼のサーヴァントに召された使命、それが彼女の役目ならば全力で引き受けよう。


「私は急ぎ過ぎているのかもしれんな……。
 世直しの先にあるビジョン、その先を見極めるのも悪くはない、か……」


 論されたシャアは少しだけ頭が冷え思考の回りが早くなる。
 一人で背負い込んだって何も変わらない、ならば誰に縋るか。
 その存在が彼の周りに居なかった、頼るには『彼』は遠すぎる存在だ、気楽に相談出来る間柄ではない。
 アーチャーはその役目を引き受ける、彼に見せるのだ。



 人の心の暖かさを。



 握られた手を握り返すシャア。
 小さい掌だが伝わる感覚は暖かく全てを包み込む母性が感じられる。
 見た目は少女だが英霊としての格は、精神的にもマスターより勝っている。


 彼はアーチャーの言葉を聞いて冷静になったが本質は何も変わっていない。
 そんな言葉の一つや二つで変わる信念や感情ではない、これで変わったらそれこそ道化。
 聖杯に懸ける願い――それは『未定と表わすのが一番正しい』状態だ。


 願いを叶える在りもしない奇跡があるのだ、人間は全力で向かうだろう。
 泥に塗れ、醜く、醜態を晒し、不意打ちや裏切り……負の感情が溢れだすのは目に見えている。
 だが彼の好敵手……因縁の存在のように前を進み続ける者もいる、一概に人類と言う記号ではまとめられない。


 だから彼はこの聖杯戦争で見極めるのだ。


 人類の行方を、己だけ正当化し高い場所から見下ろすように。


 何も変わらないならば願いは粛清に繋がる。


 希望を見出し、委ねれる存在が居るならばその願い、生き様は前に進むだろう。


「私を導いてくれるか――アーチャーよ」


「もちろんよ、マスター!」


 お互いに手を強く握り感じ合う。
 生きている、こうして人類は手を取り合って生きていける、と。
 アーチャーはシャアに暖かさを伝えなければならない、見捨てていい命など存在しないのだから。


 彼らの運命はもう止められない、廻る因果は誰にも止められない。
 シャア・アズナブル、その男の在り方は全ての世界に影響を与え世界の中心になっていた。
 今宵の聖杯戦争――その歴史に彼は何を刻みこむのか。


(私はこの先何処へ辿り着くと言うのだ、私は何のために――ララァ)


 カーテンの隙間から窓を介して夜空を覗く。


 一つの白い流星が流れ、消えていった――。



【マスター】シャア・アズナブル@機動戦士ガンダム 逆襲のシャア



【参加方法】ムーンセルによる召還(木片の所在は不明、だが本人は何か思い当たる節があるようだ)



【マスターとしての願い】彼の真意についての言及は控えさせていただく。強いて言うならば、迷っている。



【weapon】なし



【能力・技能】
 MSと呼ばれる機動兵器の操縦技術に関しては天才の領域に達しており、ライダーのクラスとして英霊に選ばれる可能性もある。
 彼はニュータイプと総称される力を所有しており、その運命は重く深く絡み合っている。
 並外れた直感と洞察力を持ち相手の心情を察知する力がある。その大きすぎる力は惹かれ合い共鳴を起こし悲劇を招く。
 一言言うならば、人殺しの道具ではない。

【人物背景】
 悲劇のニュータイプである彼は様々な顔を持つ。パイロット、テロリスト、レジスタンス、政治家……。
 彼の記述は控えさせていただきたい。そして本質を考えてもらいたい。


【方針】
 人類の可能性によって答えを見出だせていない彼は聖杯戦争に導きを求める。
 向かってくる輩は倒す、その先に進むべき道が現れるかどうかは分からないが今更引き返すことは出来ない。



【クラス】アーチャー



【真名】雷@艦隊これくしょん



【パラメータ】筋力D 耐久B 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具D++



【属性】秩序・善



【クラス別スキル】
 単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。

 対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
 艦娘:A
 生前戦艦だった存在を少女として転生させた者達が持つ能力。
 水上ではステータス以上の力を発揮することが可能である。
 また「近代改修」により鉄や燃料などの資材を消費することにより地力を上昇させることが可能。

 救済:A
 例え救う価値の無い存在でも。敵であっても救う優しい力。

 尽力:A
 自分のためよりも他者のために戦った時、本来以上の能力を発揮する力。 

 戦闘続行:C
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。


【宝具】


『砲雷撃戦』
 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1~200 最大捕捉:1000
 駆逐艦としての装備を展開する能力。
 その大きさは当時と変わらず対人戦では圧倒的な火力で相手を殲滅する。
 能力のイメージとしては何もない空間から装備を具現化させる。
(ギルガメッシュの王の財宝に近いイメージです)


『第一水雷戦隊暁型三番艦駆逐艦雷』
 ランク:D++ 種別:対軍宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
 生前の姿である駆逐艦を海域と共に展開し相手を制圧殲滅するアーチャー最大の切り札である固有結界。
 雷自身は魔術師ではなく元は駆逐艦であるが乗組員全員が心象風景を共有し、皆で展開することにより結界を継続させる。
 展開される領域は海域だが陸地も存在する。相手が陸地にいるか海域に居るかは相手の幸運に左右される。
 結界発動時、雷とマスターは駆逐艦に乗り込むことになり、乗組員の承認を得ればマスターが指揮を執る事も可能である。。
 なお、魔力供給の関係上発動可能回数は多く見積もって二回、三回目は現界を超える。


【weapon】12.7cm連装砲(立ち絵、初期装備)。



【人物背景】
 艦隊これくしょんに出てくる駆逐艦。
 その言動や仕草、心遣いから人気は高く彼女にパートナーとしての価値を求める提督も多い。
 その真名はかつて存在していた駆逐艦雷そのものである。少女の姿は仮初だ。
 彼女の軍艦としての生き様は是非その目、その耳で確かめて貰いたい。


【サーヴァントとしての願い】
 マスターに全てを捧げる。



【基本戦術、方針、運用法】
 出来る限り戦いは行いたくない。だが、マスターの願いならば話は別になるだろう。




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