御堂筋翔の朝は早い。
親戚の家に引き取られた彼は、早起きして弁当を作ってくれと厚かましく頼める立場ではないからだ。
登校時間からかなりの余裕をもって起床、残り物のご飯をおむすびにしてアルミホイルに包んでいく。
具は鮭、梅、そしてきゅうりの浅漬けもタッパーに詰めてもっていく。
あまり手間をかけるのもバカバカしいし、自転車競技に適した栄養を補給できればそれでいい。
必要なのは塩分、炭水化物、消化にいいこと。冷蔵庫で冷やした水もボトルに詰めて、これでだいたいはオーケーだ。
次は昨日の残り物を暖めて朝食の準備。

「おはよう、いつも早いわね」
「……おはようございます」

この時間に起きてきた親戚のおばさんに挨拶するころには既に食べ終わっていた。
食器を重ねて流し台へ運ぶ。

「いいわよ、そこにおいといてくれれば後でまとめて洗うから」
「スイマセン、じゃボクは学校出かけるんで、お願いします」
「ええ、いってらっしゃい。部活、がんばってね」

部活――御堂筋翔は超高校級のロードレーサーだ。
先日のインターハイで衝撃の全国デビューを果たし、専門誌にも脅威の新人として大きく取り上げられた。
総合タイトルには届かなかったが、一年生ながら個人タイトルを複数獲得し、その未来に大きな展望が持てると評されていた。
月海原学園自転車競技部、期待のルーキー――、


「……ボクゥは京都伏見の御堂筋翔クンや」


そうだ、ここは本来の世界ではない。
この町も、この制服も、こんなものに覚えはない。
ここでやるべきことはマスターやサーヴァントらを殺し、勝ち残ることだ。
だが御堂筋には、その上でさらにやるべきことがある。
仮初の世界であろうと、ここには死があるなら、その意味ではれっきとした現実だ。
頂点を獲るために必要なトレーニングを欠かすことは許されない。
メットをかぶり、自分の愛車で仮初の通学先へと走る。
これもトレーニングの一環だ。
デジタル式のサイクルコンピューターをチェックしながら一定のペースで走り続けていく。

「……アサシン、おるかぁ」
「いるよ、ここにね」

霊体化してつき従う、アサシンのクールでけだるげな声。
返事をしてからため息をひとつ、そして言葉を続ける。

「マスター、あんたもよくやるよね。毎日毎日かかさずトレーニング。優勝すれば努力なんかしなくても望みは叶うってのにさ」
「アホゥ。前も言うたやろ。ボクは聖杯なんぞに叶えてもらう夢はいらん。そんなもんは只のニセモンや」
「……私らが望む願いが偽物だってのかい」
「ボクの願いは『自分の力で』世界一になることや。最初から見当違いなんよ。聖杯が要る願いと要らん願いがあるってだけや」

アサシンは沈黙。
まもなく学校が見えてくる頃だ。
ゆるい坂がその手前に控えているが、御堂筋はものともせずに登っていく。

「その意味でホンマ、見当違いで呼ばれてえらい迷惑や。聖杯にすがってる他力本願のお前らだけで勝手にやってろっちゅうねん」
「……っ」
「こんなロクでもないモンに、望んで召喚されるヤツもぎょうさんおるいうんやから、ホンマキモイでぇ。キモッ! キモッ!」

御堂筋は吐き捨てるように言った。
聖杯戦争に奇跡を望んで縋る者たちに、唾を吐きかけるように。
そしてそれは、目の前のアサシンを嘲笑うことと同義だ。
例外はいるにせよ、サーヴァントの大多数は、御堂筋が嘲笑う、奇跡に縋る者たちなのだから。

「……アサシン。ひょっとして怒ったぁ?」
「…………別に。なんでこんなヤツと組まされたのかって聖杯のクソ野郎加減に呆れてたとこさ」
「……ぷっ、ひゃひゃひゃひゃひゃぁ……いや、ホンマになあ! まったく聖杯とかいうのはホンマキモイわ」

大仰に吹き出すしぐさをしてから、ぎょろりと爬虫類のような目を見開き、そして顔面を引き裂いたような笑みを浮かべて、御堂筋は嗤う。
そうこうしているうちに学校だ。
ホームルームまでは少し時間がある。登校してきている生徒もまだ、まばらだ。
御堂筋は自転車から降りて校門をくぐる。
自転車置き場ではロードバイクを止められないので、部室まで引いてゆっくりと歩いていく。
そうしているうちに、周りに生徒は見えなくなった。
それを確認してから、御堂筋は再び口を開いた。

「……アサシン、さっきの話やけどなあ」
「何さ」
「いや、ホンマ聖杯キモイんやけどな。君ィが勝って望みを叶えたいゆうなら、ボクと組むことになったのはええことやと思うで?」
「…………はぁ? 何でそうなるわけ。正直にいって、私はアンタのことが嫌いだね」

アサシン――アニ・レオンハートの外見は小柄でクールな美少女である。
しかしその顔立ちには一癖あって、目つきの鋭さにかけては大の男も怯ませるものをもっている。
今のアニは男すら怯ませる、そういう怒ったときの声色をしていた。
だが御堂筋は、それを受けても不気味な薄笑いを崩さない。

「ボクは君の過去を知ってる。君もボクの過去を知ってる。まあァ、つまり君がどうして負けたのかも知ってる」
「……」

サーヴァントとマスターは睡眠時、気絶時などに己の意識を共有しあう。
だから互いに何故、聖杯を望むほどの強い願いを持つことになったのかも知られてしまう。

「君は非情になり切れんかったんや。お友達を助けようとして、逆にお友達に罠に嵌められて、負けて全てパァになった。そうやろ!」
「……そうさ、私は――」
「わかっとんのやろ。だったら捨てな。捨てた方がエエで、つまらん感傷や思い出話なんか」
「……ッ」

アニは思い出していた。
自分を罠に嵌めた『お友達』のことを。
いや、もとからお友達などではなかった。
最初から、こちらが裏切って殺すつもりだった。
だが、スパイとして潜入してから二年がたち、寝食を共にし、命をかける戦場で命運を共にし、そしていつしか――、


『――あんたさ……私がそんな良い人に見えるの?』


『――良い人か……それは……その言い方は僕はあまり好きじゃないんだ。
 だって、それって……自分にとって都合の良い人のことをそう呼んでいるだけのような気がするから。
 すべての人にとって、都合の良い人なんていないと思う。
 誰かの役に立っても、他の誰かにとっては悪い人になっているかもしれないし……、
 だから……アニがこの話に乗ってくれなかったら、アニは僕にとって悪い人になるね……』


アニは彼らにとって、悪い人だったのだ。
その上で、友達は――アルミンはアニを罠に嵌めた。
彼は悪くなどない。悪いのは最初から自分だった。
そしてそれを徹することができなかった。

「……捨てることができんキモイ奴らは甘く見とるんや。そんな捨てんでも勝てる。または、そこまでして勝つことはないとかな。
 君ィは違うやろ。負けて全部なくしたんやから捨てれるやろ。まぁた捨てることができなかったら、まぁた全部パァやで」
「わかってるさ。もう負けるのはたくさんだ」

冷たい刃のような声だった。
ソレを受けて御堂筋は歪な笑みをさらに歪める。

「エエことや。アサシン、今の君ィほんのちょっとだけキモくなかったで」
「あっそ。私はアンタのことが大嫌いだけどね」
「ほな今日も校内の偵察いっとこか。ボクら以外のマスターを把握する。まずはそっからや。よろしく頼むで」
「――了解」

そして声は聞こえなくなった。
御堂筋は目だけで笑い、自分の教室に向けて歩みだすのだった。






【CLASS】
アサシン

【真名】
アニ・レオンハート

【出展】
進撃の巨人

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷B+ 魔力E 幸運B 宝具B

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
気配遮断:B サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】
変身:A  巨人化によって14m級の巨体に変身する。感覚は人体とかわりなく素早い対応を可能とし、大木やビルもなぎ倒す。
     変身後に受けた傷はたちどころに回復するが、首の後ろの延髄部分に本体が存在するため、そこが弱点となる。

見切り:B 敵の攻撃に対する学習能力。
      相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。
      但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。

無窮の武練:A+ ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
        心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。


【宝具】
『巨人の鉄槌(ハマー・デア・リージン)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:3~30 最大補足:20人
巨人化したときのみ使用可能。肉体を一部硬化させて、その蹴りや拳を巨大なハンマーと化す。
高速で激突する巨大な質量は、数十人をまとめて一撃で肉塊に変える。
また、攻撃を受ける際に硬化することで防御力上昇に使うこともできる。

『立体機動装置(フリューゲル・デア・フライハイト)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:1人
アンカーが付いた二つのワイヤーの射出機が腰ベルトに付けられ、操作装置を兼用する剣の柄部分と繋がっている。
このワイヤーを打ち出し、壁や巨人の体に突き立てて高速で巻き取ることによって、素早い空中移動を可能にする。
本来はカートリッジ式の噴射用ガスボンベや取替え式ブレードの予備が必要だが、宝具なので魔力の限り無限に補充が可能。


【weapon】
徒手格闘。投打極全てにおいて隙の無いオールラウンダー。
立体機動戦闘においても、歴戦の戦士である調査兵団戦士を一撃で葬ることができる腕前。

【人物背景】
作中の主人公であるエレン・イェーガーと同じく104期訓練兵団に所属。訓練成績4位で卒業。身長は153cm、体重は54kg。
クールで口数が少なく、人との関わりを避けがち。それ故に冷たい印象を与えるが、同期の友人は「実は優しいよね」と評している。
いわゆる強いこと、正しいことが本当にそれでいいのか、弱いことがそんなに悪いことなのかと、
そんな疑問を投げかけるような態度を作中で幾度か見せている。
その度に「お前のどこが弱いんだよ」とツッコミをくらうのが毎度のパターンであった。
父親に教え込まれた格闘術が特技で、自分より身長が30cmも上の男をやすやすと投げ飛ばすほどの実力を持つ。
訓練兵団ではエレンに自らの格闘術を指南し、元々優秀だったエレンの格闘技術の向上に大きく貢献した人物である。
立体機動においても勿論優秀で、教官からは「斬撃の進入角度に非の打ちどころがない、目標を深くえぐり取る」と評される。
父親に関しては複雑な感情があるらしく、現実離れした理想に酔い、自分に格闘術を仕込んだ父親を憎む一方で、
自分をこの世で一番愛していた父の愛情の深さを忘れられずにいる。
その正体は、第57回壁外調査で調査兵団と遭遇し、甚大な被害をもたらした「女型の巨人」。
生け捕りにされた巨人を殺し、研究を妨害した犯人でもある。
現在巨人であったことが判明している三人の中では唯一、憲兵団という身分で内地に侵入していた潜入工作員、いわば巨人のスパイ。
体長は14m級。皮膚の硬質化、絶叫で巨人を呼び寄せる能力、肉体回復力の調整など、巨人化能力者としての能力は一通りそろえている。
かつ、アニ本来の格闘術も相まって、並の巨人を遥かに凌駕する実力を持つ。
変身後の疲労も厳しくなく装備の破損もないため、変身を解いてもすぐに臨戦態勢に入ることが可能。
ただし、皮膚の硬質化は「鎧の巨人」とは違い、常に維持することは不可能。
スパイとして各所で暗躍していたが、自分と親しかった同期の調査兵団員を殺さぬように配慮したことが容疑をかけられる発端となった。
後に、皮肉にもアニが助けようとした同期のアルミンによって罠に嵌められ、スパイであることが判明する。
最初から友人に疑われていたことを悟った彼女は珍しく絶望したような反応を見せ、巨人に変身した。
追い詰められた彼女は戦況不利と見て逃走、壁をよじ登って壁外に逃亡を謀るも、ミカサとエレンの絶技によってついに倒される。
進退窮まったアニは、人間態のまま体を強固な水晶体で覆い(おそらくアニ本人は仮死状態)、自らを犠牲にして一切の情報を秘匿した。

【サーヴァントとしての願い】
故郷に帰る。

【基本戦術、方針、運用法】
魔力の消費を抑えつつ暗殺。巨人化は目立つ上に、魔力もそれなりに消費するので、あくまで奥の手としておくべき。



【マスター】
御堂筋翔(みどうすじ・あきら)

【出展】
弱虫ペダル

【参加方法】
インターハイ最終日で力尽きて倒れた瞬間に、道脇にあったゴフェルの木片が触れた。

【マスターとしての願い】
世界一のロードレーサーになることだが、聖杯の力を借りる気はない。

【weapon】
小さめのフレームサイズに、長めのシートポストとステムをセッティングしたデ・ローザのロードバイク。

【能力・技能】
超高校級のロードレーサー

【人物背景】
細長い体躯に薄い唇、低い鼻、変化の少ない真っ黒な目をした、爬虫類のような不気味な青年。
1年生ながら全国常連校のエースを張り、戦略など状況全てを計算する、頭も切れる実力者。
風貌・行動ともに個性的で、“勝利”という結果にのみ価値を置き、異常なほどの執着心を抱いている。
綺麗事には一切興味を持たず、逆に「努力」や「仲間」を讃える他者の姿勢には「キモッ」を連発する。
脚質については作中に明記されていないが、非常に能力の高いオールラウンダーとして描かれている。
回想によると、彼が自転車に目覚めたのは、幼少期の病院通いがきっかけ。
山向こうの病院に入院していた病弱な母親を見舞うため、毎日、自転車に乗っていたという。
しかし不器用だった幼い彼は学校で軽くイジメを受けており、しかも貧弱であったため碌にやり返すことも出来ずにいた。
そして、唯一愛していた母親が夭折してしまったことにより、現在の性格、勝利への固執が形成されたと思われる。
今は、親戚の家に住んでいるらしい。親戚との仲は普通であり、家では大人しいらしい。

【方針】
勝利あるのみ。