「はっ、はっ、はっ───」

少女は駆ける。
記憶は取り戻した。
聖杯戦争、そのシステムなどは全て頭の中に入っている。
しかし───

「何なのだ、アレは・・・ッ!」

灰色の制服を風に靡かせ、駆けるその背後。
黒い図体をした理性の無い怪物が、その少女を狩らんと追い詰める。

(チィッ、まだ私のサーヴァントとも会えておらぬというのに!)

このままじゃ、やられる。
追いつかれたのち、この身体を引き裂かれてこの体は無残に意思持たぬ肉塊へと成り下がる。
それだけは御免だ。
ここまで来て、記憶を取り戻して───あと少しのところでやられるなど、我慢の出来ようはずもない。
ならば、と。
少女は怪物に向き直る。

───何度も繰り返した、内なる力を練る感覚。

「───『君臨者よ』」

掌を向け、正面の敵へ。
轟音を挙げながら、怪物は迫り来る。
直撃させる───己の意思は、その一点のみに向けられる。

「『血肉の仮面・万象・羽博き・ヒトの名を冠す者よ。
真理と節制 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ!』」

ガン、と怪物が正面に到達する。
振り上げられる極太の右腕。
直撃すれば少女の身体などひとたまりもないであろう威力。

───しかし。
彼女の身体には、触れることすらできない。
ふわり、と彼女の身体が浮き上がる。
死神として戦っていた時の身のこなし。
力を失った今でも、その動きは身体が覚えている。

「───!?」

怪物の驚愕の声が耳に届く。
それも当たり前だろう。
狙っていた子ウサギが、まるで虎のような魔力を身に滾らせ顔面直前にまで跳躍したのだ。
ビクリ、と本能が怪物の身体を震わせる。

ニィッ、と少女の口角が釣り上がる。
突き出された掌から沸き起こる魔力の奔流。
今更避けることなど、敵わない。

「破道の三十三───『蒼火墜』」

───解き放たれた蒼き炎がその身は要らぬと焼き尽くす───!!

「*****───!!!」

蒼い炎に焼かれ、怪物が暴れ狂う。
顔面を蒼き炎が呑み込み、その皮膚を焼き、爛れさせ、その動きを止める。

───それだけだった。

「****、**!!」

「な・・・に───?」

蒼火堕によって与えたダメージは、それだけだった。
普通のサーヴァントなら倒せないにしても、隙を作り逃げることも出来たかもしれない。
だが、目の前の怪物は狂戦士。
炎の痛みよりも、負ったダメージよりも、怒りと本能を最優先に行動する。

「****───!!」

グンッ!と速度を上げ、突進する狂戦士。
───ダメだ、間に合わない。
避けようにも相手はサーヴァント。
本気でこちらを狩りにきたら、反応するのは至難の技だ。

「くっ、まだここでやられる訳には───」

言葉は、届かない。
彼女の 身体 は 無残 も 砕か
───訪れない。

確実に訪れるはずの死が、訪れない。

「───?」

どんっ、と。
間の抜けた音が、足元から鳴った。

「───すまねぇな、遅れた」

恐る恐る目を開く。
そこには、意識を失い地に落ちた狂戦士と。

「ああ、そうだ一応聞いておかねぇとな」

その狂戦士の身体の上に立ち、圧倒的な存在感を漂わせる者が一人。
その者はこちらに手を開き、一言告げる。

「───問おう。お前が俺のマスターか」

狂戦士の体がサラサラと風に乗って消えていく。
ルキアは無意識に、これが霊体化というものなのだと理解できた。
撤退。その二文字が、ルキアを安堵させる。
そして。

「危ねぇ!」

ビュン!とルキアの投げた革靴が目の前の大男の顔の真横を通り抜ける。
背後の樹木に当たった革靴はそのままクルクルと宙を舞い、ルキアの手元に帰還。
素晴らしいコントロールだった。

「たわけ!もう少しで死ぬところだったではないか!
予選を突破したというのに、一体貴様はどこに居たというのだ!?」

「はっはー、そんな目尻に涙溜めた状態で怒っても何も怖くなだから危ねぇ!」

二度目の投擲。
またもや顔面スレスレの場所に革靴が飛ぶ。
美しいコントロールだった。

「・・・まあよい。結果的に生き残った訳だしな」

怒りはまだ収まらないが、とりあえずひと段落。
目の前のサーヴァント───派手な鎧に着物を纏った男───についても聞かなければならない。
勝負の基本は己を知ること。
己を知り相手を知れば百戦危うからず、とは誰が言った言葉かは知らないが、まさにその通りである。

「貴様のクラスは───見たところ、セイバーか?」

ルキアは目の前の大男が背に負う大きな刀を見て問う。
これほどの大刀、誰が見てもセイバーのクラスと思ってもおかしくはない。

「いんや。俺はランサー、槍兵のクラスだ」

大男は、ランサーと名乗った。
ランサーと言えば、槍を主武装にするクラス。
とてもじゃないが、目の前の大男がランサーとはとても信じられなかった。

「む・・・?じゃあその大刀は何だ」

「ん?話すより見せた方が速いな。んじゃあちょっくら見せてやるよ、ッと!」

抜かれる大刀。
───その名も、超刀。
ルキアの体躯など軽く越えるソレは、まるで重みなどないかのように軽々しくランサーの腕力で自由自在に動き回る。
そのまま超刀の柄に、超刀と仕舞うだけの大きさを持った鞘を差し込む。
───これが、ランサーが槍兵として召喚された由縁。
あり得ないほどに巨大な槍、『朱槍』である。

「───大きいな。こんなものを振り回せるのか?」

「当ったり前よ!これしきのモン、軽い軽い」

ドンッ!と地面を揺るがすほどの音と共に、朱槍を地面に差し、自立させる。

「で、マスター。アンタの願いはなんなんだ」

ランサーの瞳がルキアを射抜く。
脳天気なようにも見えるが、彼も一流の英霊。
そして今回は共に戦う主従。
隠し事は、ルキアとしてもしたくはない。

「私は───力を取り戻したい。
緊急事態だったとはいえ、あるヤツに力を譲り渡してしまってな。
あやつ一人に戦わせるのは私としても嫌なのだ」

正直に、全てを曝け出した。
続く言葉は、迷いの言葉。
最初は、願いが叶うとの伝承を聞いて木片を求めた。
しかし、人の命を犠牲にしても、いいのだろうか。

「そのためなら・・・私は聖杯戦争で優勝することも考え「なんだ、簡単じゃねえか」───は?」

ルキアの苦渋の決断を、ランサーはいともたやすく打ち切る。
その顔には、祭りを楽しむような笑顔があった。

「力が欲しいなら丁度いい。ここは聖杯戦争、猛者の中の猛者が集まる大喧嘩の大祭りよ!
踊る阿呆に見る阿呆、こんだけのヤツらがいるんだ、踊って楽しんで強くなりゃいい!」

聖杯などに頼むより。
己の力を聖杯戦争の最中で磨けと。
ランサーは、そう言い放った。

「幸い、相手にゃ困らねぇ。鍛えたいってんなら俺が鍛えてやるよ」

そう、これがランサー。
祭りと喧嘩をこよなく愛し、恋と愛を掲げ戦場で踊り狂う。
天下一の傾奇者。

普段なら一蹴しているほどの、無茶な理論。
だが、今回ばかりは───その姿が、その声が『彼』に似ているからだろうか───この男を、信じてみたくなった。

「では、ランサー・・・私を強くしてくれるか?」

「おうよ!任せとけってんだ!」

ランサーは笑顔で言い放つ。
ここに。
力を失った死神と、天下一の傾奇者の主従が誕生した。

ランサーが地に突き立てた朱槍を引き抜き、空へと掲げる。
目指すは至高の英雄たちとの大喧嘩。
未だ見ぬ強敵に胸を踊らせ、彼は決意の一言を言い放つ。

「サーヴァント・ランサー───前田慶次。
此度の聖杯戦争にて、いざ、罷り通る───!」
【CLASS】
ランサー
【真名】
前田慶次
【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具C
【属性】
 秩序・中立
【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
傾奇者:A
ランサーの生前の行いによって追加されたスキル。
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。

恋のかけひき:B
ランサーの戦闘技術。
あらゆる行動を途中キャンセルし、動きの異なった攻撃を放つことで相手の反応外からの攻撃を可能にする。

不殺:B
ランサーの誓いがスキルとなったもの。
如何なる時も彼の戦いは喧嘩であり、戦ではない。
相手を戦闘不能・撤退を選ばせる絶妙なラインを見定め相手を攻撃することが可能になるスキル。
しかし、相手を殺害したorしようとした場合、俊敏以外のステータスが一時的に一段階ダウンする。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

【宝具】
『喧嘩よ恋よの大回転 魅せるは前田の傾奇者』(バサラワザ)
ランク:C 種別:大軍宝具 レンジ:5~40 最大補足:50

朱槍を掲げ、目にも留まらぬ大回転を行う。
一度受けたら最後、嵐のような大回転による連撃によって防御、逃走も許さず相手を斬り伏せ叩きのめす。
その威力、素早さ、範囲は凄まじい者があり、生前はこの技で多くの武士を戦闘不能に追いやったという。

『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地』(ゆめごこち)
ランク:D 種別:- レンジ:ー 最大補足:ー

ランサーの急速な自然回復能力が宝具にまで昇華されたもの。
その場で休息(睡眠)をとることにより、体力・魔力を大幅に回復することが可能。

【weapon】
超刀
ランサーの主武装。身の丈以上の大きな刀で、重量もかなりある。
しかしランサーはこの超刀を振り回し突き立て薙ぎ払い、アクロバティックな動きで強烈な一撃をお見舞いする。
朱槍
超刀の柄に鞘を合体させたもの。巨大な槍となり、威力も更に跳ね上がる。
【人物背景】
前田夫妻の甥っ子で、前田家の風来坊。
自由をこよなく愛し、戦よりも喧嘩好き。
京の都では、老若男女問わず彼を慕う者も多く、慶次の舞う舞は絶品だとも言われている。
束縛を嫌い、普段は前田軍に属しておらず、京都で自由に暮らす遊び人として扱われている。
京の町人からは老若男女問わず人気があり、京の遊び人達を仲間として連れている。
戦場では敵を殺さないが、これは彼の卓越した戦闘技術が成せる技であり彼が戦場で戦った相手は皆撤退扱いとなった。
行く行くは「新生・前田軍」の総大将となり謙信の依頼を受けて将軍・義輝との謁見に臨む。
今回は朱槍を扱っていたことがランサーとしての適性となり、現界した。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争、この祭りを楽しむしかない。
殺しはしない。

【基本戦術、方針、運用法】
戦闘力・技術、共に高水準のサーヴァント。
基本は一対一。大勢の敵とも戦ったことがあるので二対一でもいけるだろうが少し厳しいか。
漢らしく一対一に持ち込み、傾奇者らしいトリッキーな動きで敵を翻弄し、強烈な一撃を叩き込もう。
相手を撤退・戦闘不能に追いやることに特化しているが、殺しをしようとしないのが最大の難点か。
拠点や集団を組んで安全な場所で『休息・眠りの一時 誘うは魅惑の夢心地』にて回復を狙うのも一つの手だ。
使い方によっては色々な戦法が取れるサーヴァントであり、非常に万能である。
【マスター】
朽木ルキア@BLEACH
【参加方法】
ゴフェルの木片の伝承(願いを叶える)ことを聞き、浦原商店から盗み出す
【マスターとしての願い】
死神としての能力の復活
しかしランサーの提案により、この場で強くなれるのなら優勝して叶えなくてもいいと思い始めている
【weapon】
鬼道
【能力・技能】
死神の頃に培った身体能力。
主に鬼道を使用する。
死神の能力は殆ど失われているため使用不可。
使える鬼道は以下記載
破道の四 白雷
  • 白い雷をビーム状にして発射 貫通力に特化している
破道の三十一 赤火砲
  • 対象に向け火の塊を飛ばす。直撃すると爆発・炎上。
破道の三十三 蒼火堕
  • 蒼い炎を発射する。並の虚なら一撃の威力らしい
破道の七十三 双蓮蒼火堕
  • 蒼火堕の更に上の技。威力も桁違いに上昇している。
縛道の一 塞
  • 四肢を己の背中で固めさせる。身動きが取れなくなり、その場で地面に伏せることとなる。
縛道の四 這縄
  • 指先から紐上の光を発射。敵に絡ませ動きを鈍くする。
縛道の六十三 六杖光牢
  • 六つの光の杖が、敵に突き刺さり動きを完全に止める。ダメージはないが身動きが取れなくなる。

威力は死神の力を殆ど失っているため、威力は下がりサーヴァントにはほとんど効かない。
対魔力Cもあれば完全に防がれてしまう。
しかし、人間に対しては十分の威力を持っている。
【人物背景】
護廷十三隊の十三番隊に所属し、物語開始時に初めての現世駐在任務として、本来は一ヶ月程の短期予定で空座町を担当していた死神。口癖は「馬鹿者」「たわけ」。
黒髪のセミロングで後髪がはね、真ん中辺りの前髪が鼻の付け根を通って左斜め下に向かって伸びている。
外見は小柄で、初期の頃は小学生だった一護の妹の遊子のパジャマがちょうど合うほど。
恋次曰く「どこか気品が漂っている」。
基本的にやや古風な固い言葉遣いで話し、男勝りで気が強いが、常に自分より相手を気遣う優しい性格。
一話目で一護の10倍近く生きていると言っているため、年齢は少なくとも150歳弱。
黒崎一護との接触の際、虚に襲われ重傷を負う。
家族を、ルキアを助けたいと願う一護に力を授けるが、その代わり自分の力を失ってしまった。
戦闘が続くにつれ、大虚などの強大な敵と戦う一護を見て「力があれば」と思うようになり、その時にゴフェルの木片の伝承を聞く。
浦原商店に忍び込み、手に入れることに成功した。
そして箱舟で出会ったサーヴァントは、背が高く身の丈ほどの大刀に漢らしい声。
どこか黒崎一護を思わせる青年だった。
【方針】
まずは情報収集。
力をつけるための手段も探す。
今のところは乗る気では、ない