見上げた夢に堕ちていく。





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生まれた時から、少女は満たされなかった。
病院に入院しがちなやわな身体。ちょっとした運動でも倒れてしまう苦しさ。
他の人が簡単にできることが自分はできない。
それが、悔しくて、悲しくて――泣くことでしか怒りの矛先を下ろすことが出来なかった。

「だから、願ったっていうのか。やり直しを」
「ええ、そうよ。悪い?」

それでも、いつかは良くなると思っていた。
健康的な身体になって、他の人達と同じように好きなことが出来る今どきの女の子として振る舞えると願っていた。
だが、それは無理な話だ。病院と常に隣り合わせの自分が他の女の子と同じように夢を追える訳がなかった。

「欲しいんだ。弱いアタシじゃない、強いアタシが」

少女の夢はアイドルになることだった。清らかな偶像、高みへと登りつめる快感。
夢を叶える為ならレッスンでさえ楽しい。滴り落ちる汗も、断続的な息も、全て糧になっているのだから。
普通ならば。こんな貧弱な身体でさえなければ、少女はもっとスムーズにアイドルへの道を進めたはずだ。

「他の皆と一緒に汗を流せて、病院なんかに通うことがなくて」

少女だけが、違う。他のアイドル候補生である友人達と違って、少女は一人取り残されていた。
少しのレッスンで身体は動かず、断続的な息も酸素が回らないまでに辛い。
どうして。少女は思う。何故。少女は苦しむ。

「そんな、当たり前の身体。当たり前の自由」

結局、自分一人が何も掴めないのだ。仲が良かった親友が先にデビューしていく。
幾ら努力を使用共、一向に伸びることのない体力。自分の言うことを聞かない枯れ果てた身体。
もう、うんざりだった。どれだけ努力しても意味なんてないと理解させられてしまった。

「当たり前が、アタシにはないから」

そうして、少女は何かに期待することを諦めた。
大切だった夢を何処かへと投げ捨てて、享楽に生きてしまおう。
その為に他者を犠牲にした所で何の感傷も湧きはしない。

「欲しいって願ったんだよね、当たり前が。そしたら、いつの間にかに此処にいたの」

何も掴めない自分の為に――全員捻れて折れ曲がれ。
私こそが願いを叶え、健康な身体を手に入れる。
そして、夢を叶えるのだ。

「貴方もそうなんでしょう? アタシの思いが届いたから……」

それが、北条加蓮が望んだ最良だったはずだ。

「……ああ、そうだ」

けれど、心中には未だ迷いが残留している。

「……」
「偽りの幸せから抜け出し、本物の幸せを掴もうと足掻いている」

人を、殺す。その行為は北条がいた世界では禁忌とされ、大抵の一般人が忌避しているものだ。
無論、一般人の枠を出ない北条もその例に漏れなかった。
人殺しを触れてはいけない腫れ物のような扱いという認識を、持っている。

「…………ッ」
「願ったんだろ、人並みに健康な身体を」

もっとも、相対するサーヴァントはそんなこと知ったことではない。
今必要なのは選択を選ぶ覚悟。何を切り捨てて、何を掴み取るかを決める一歩なのだ。
サーヴァントは、北条の気持ちなどお構いなしに内面へと踏み込んだ。
迅速に、雷の如く。無表情のまま、彼は言葉を続けていく。

「それで、お前はどうする」
「どうするって……」
「お前は殺せるのか? 願いの為に切り捨てられるのか?」

何かを叶えるには同等の対価が存在する。
北条の願いと比例して、誰かの願いもこの月には無数に散らばっているのだから。
聖杯戦争ではありふれた茶飯事であり、特段に悩むことはないはずだった。

「そんなの……」

だが、北条はごく一般的な女の子だ。
同年代よりもひねくれていて、おしゃれに人一倍気を遣う普通の女の子なのだ。
そんな彼女が、いきなり願いを叶える為に人を殺してくださいと言われて、出来るだろうか。
否、北条はそこまで自分のエゴに他人を巻き込める程強くなかった。
他者のことも人並みに思いやれる少女だからこそ、迷っている。

「覚悟の程を見誤ると死ぬぞ? オレが言いたいのはそれだけだ。
 生き残りたいなら戦えばいい。戦いたくないなら他者との共存を選べばいい。
 だが、その選択の果てに何が待っていても――後悔だけはするな」

迷いは死に直結している。彼が英霊に成り果てる前に、嫌という程にわからされた教訓だ。
そして、後悔を拭えぬまま絶望に取り憑かれてしまうのだ。

「…………何も残らないのは、堪えるぞ」

そんな経験を彼女にさせるには酷だろう。
生前に残した優しき少女に姿を被らせたのか、らしくない助言をしてしまった。
言葉にこそ出さないが、幾許の優しさを言葉に添えて、サーヴァントは再び霊体化した。






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見上げた絶望に堕ちていく。





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アドルフ・ラインハルトが生前に護れたものなんてほんの少しにも満たなかっただろう。
マーズランキング二位という座にありながら、仲間を満足に助けることすら叶わない。
多勢に無勢、運が悪かった。そんなものは言い訳だ、大切なのは過程ではなく結果だ。
護り抜くことができたか、できなかったか。
ただそれだけなのだから。

「オレは、護れなかった」

欠けていく自分の体。涙を流し、自分の名を何度も呼びかける仲間達。
カチコチと刻まれる破滅へのスイッチ。全てを飲み込んでいく爆炎。
満足のいく結末など、断じてなかった。
自分を慕ってくれた仲間達を巻き添えに、死んでいった自分は大馬鹿者だ。

「だから、オレはやり直しを望んだ」

願わくば彼らとの“再び”を。今度こそ、自分の存在全てを懸けて、護り切ってみせる。
リトライを望むなんて諦めが悪いことだと理解はしているけれど、それでもだ。
アドルフを信頼してくれた仲間に報いる為にも、二度目の“戦争”に飛び込もう。

「もっとも、マスターにはその気があまりないようだが」

自分のマスターである少女は、修羅場など潜ったことのない一般人だ。
手を汚すことも、誰かと手を繋ぐことも恐れている普通極まる少女である。
それは、この聖杯戦争を戦うにあたって大きな枷となるだろうとアドルフは予測していた。
普通の少女が生き残れる程、聖杯戦争は優しくない。
このまま彼女の方針が定まらないならば、彼女にはリタイアを勧めるべきだと理屈では理解しているが、できなかった。

「もう、ここまで来たら戻れない」

一度踏み込んでしまったら、最後まで進むしかない。
棄権者を保護してくれるシステムなんて端から期待していなかった。
負け犬を救ってくれる優しさなど戦争にあるのだろうか。
断言できる、そんなものはありやしない、と。

「ならば、何とか方向性だけでも定めるのがオレの仕事か」

結局、アドルフのすることは英霊になる前と変わらなかった。
誰かを導いて、護る。
例え、マスターに理解されずとも、この雷光で七難八苦を打ち破るのみ。
彼の根本は英霊になろうとも、揺らがない。
言葉少なだが、確かな意志の強さを胸に秘め突き進む。
それが、アドルフ・ラインハルトなのだから。




【マスター】北条加蓮@アイドルマスターシンデレラガールズ

【参加方法】木のアクセサリーに使われていたのがゴフェルの木片だった。

【マスターとしての願い】人並みに動ける健康的な身体

【weapon】なし

【能力・技能】なし

【人物背景】
 アイドルマスターシンデレラガールズに登場するアイドルの一人。
 病弱な身体で、斜に構えた態度が特徴的なイマドキ女子高校生。
 もっとも、アイドルを続けていく内に素直になっていき、今では立派な姿を見せている。
 今回は初期状態参戦である。詰まるところ、斜に構えて努力をアホくさいと感じている時期である。
 ちなみに、現実でもCDデビューしたので買おう! 

【方針】願いはあるけれど、優勝を狙うだけの覚悟も、誰かと手を取り合う覚悟も持てない。




【クラス】
アーチャ―

【真名】
アドルフ・ラインハルト@テラフォーマーズ

【パラメーター】
筋力B 耐久D 敏捷C 魔力C 運E 宝具C

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:E
 魔力への耐性。無効化は出来ず、ダメージを多少軽減する。

単独行動:D
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。

【保有スキル】

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地においても、戦況を冷静に分析できる。

戦闘続行:B
不屈の闘志と頑健な肉体。
瀕死の傷であっても戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り勝利を諦めることはない。
仲間を護る為に、限界まで戦った生前の逸話から。

ドーピング:B
特殊な薬剤を注入することで、宝具、ステータスの能力を上昇させる。
上昇具合はその場のノリ。


【宝具】

『闇を裂く雷神』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1

雷を自在に操る能力。
武器である手裏剣を投げて、突き刺し、放電することで敵の急所へ的確な攻撃を行なうこともできる。
また、特殊薬剤を過剰摂取することで、状況によっては数億ボルトの雷すら操れるようになる。
他にも、微弱な電流を発して敵を探知することが出来る他、
皮膚もウナギ状のヌルヌル状態になるようで、作中でゴキブリの強烈なパンチを粘液で受け流したりなど多彩な戦術をこなしている。

【Weapon】

避雷針搭載の特殊手裏剣。

能力向上に繋がる特殊薬剤。

【人物背景】
襟長の服を着て常に口元を隠した27歳の金髪青年。妻子持ち。
普段は淡泊で冷酷な態度とは裏腹に、内面は優しさで満ち溢れている。上司にしたいイケメン。
幼少時より軍に買われて実験体として扱われた為に、自分の命に価値を見出だせず、絶望の中で生きていた時に現在の妻に出会う。
妻に対しては、仕事で忙しい中でも電話したりするなど、深く尊敬し愛している。
だが、妻は実際に浮気している上に、子供も間男の遺伝子を引き継いでいるので本当に不憫である。
詰まるところ、寝取られ薄幸金髪青年。

【サーヴァントとしての願い】

今度こそ仲間達を護りたい。

【基本戦術、方針、運用法】
三騎士クラスなだけあって、正面からの戦闘も可能。
だが、耐久力、持久力に難あり。短期決戦、奇襲といった戦術で戦うのがベストだろう。