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風が、吹き荒ぶ。

記憶を失っても。
嫉妬と羨望の眼差しを向けられない日常を送っていたとしても。
彼の心の奥底では、常に風が鳴り響いていた。

仮初めの平穏程度が、彼の心に渦巻く風を止められる道理もなく。
故に、彼がその音に気付き、真なる己を取り戻す事も、また決まりきっていた事なのだろう。

「――ああ、随分とくだらねえ夢を見てたみたいだな」

クク、と自嘲混じりの空虚な笑みを男、秋葉流は浮かべる。
自身の家としてあてがわれたのは、自分が裏切った少年の生家を模した寺院。
なんとも趣味の悪い冗談だ。
この戦争の主催者は生粋のサディストに違いないと、呆れ半分に呟く。
悪趣味ついでと、流の足が外へと向かう。
辿り着いたのはあの化け物が封じられていたという土倉。
あの化け物でも縫い止められていないかと、軽い気持ちで扉を開く。
一瞬、言葉を失った。
そこにいたのは、『槍』を持つ『虎を連想させる色合いの髪』をした一人の女性だった。

「お前、は……」
「寅丸星、毘沙門天様の使いをやっております。此度はランサーのサーヴァントとして呼び出されました。貴殿が私のマスターでしょうか」

違った。
あいつらは関係なかった。
安堵のため息を吐いた直後、ランサーの発言を理解した流は改めて硬直した。

「あ、ああ。そうだと思うけどよ。あんた今、毘沙門天の使いって言ったか?」
「はい、未だ未熟者の身なれども、毘沙門天様の使いとして、日々勤めを果たしております」

絶句。
彼とて仏門に身を置く身である。毘沙門天がどのような存在であるのか、知らないはずがない。
その使いをしているものだと言われては、さしもの彼であっても驚愕は隠し得なかった。
だが、その驚愕も一瞬。
次に表れた感情は疑問。
毘沙門天といえば仏像によっては邪鬼を足蹴にしたものもある、言わば魔を払う存在だ。
何故そのような神の使いが、私欲で大妖・白面の者の側へ裏切った自分のサーヴァントとして呼ばれたのか。

「時に、不躾な質問をさせていただきますが」

流の思考をランサーの言葉が遮る。

「マスターは槍を持つ者に、何か特別な思い入れでも?」

想定外の質問に、流は自身の表情が瞬時に強張るのを感じた。
はねあがった鼓動が嫌でも感じ取れる。

「確かに、随分と不躾だな。毘沙門天様の使いが、相手の心を読めるなんて話は聞いた事がないぜ」

軽薄な表情を装い、軽口を叩く。
何故、目の前の女は会ったばかりの自身に対し、そのような事を聞くのか。
流の中で、自身のサーヴァントへの警戒心が高まっていく。

「あ、いえ、私にはそのような神通力はございません。ただ、私がランサーとして顕現すること事態が、まずありえない事でしたので……」

自身の主にあからさまな警戒心を持たれ、ランサーは慌てて訂正をする。
本来であれば、ランサーとして呼ばれる事はイレギュラー。
ランサーが語る。
本来の彼女ならば、召喚されたとしても呼び出されるのであれば、アーチャーかキャスター。
ランサーの適性もなくはないが、彼女の宝具であるビームを放つ宝塔の存在、そして彼女自身が肉弾戦をそこまで得意としておらず、また、宝塔そのものがランサーで召喚されると使用ができない。
故にランサーとしての召喚は、そもそもの槍や槍兵に対してのなんらかの執着をもったマスターにでも呼ばれない限り、まずあり得ない事なのだと。

「なるほどな、その疑問に答える為に俺も一つだけ質問がある。……その髪の色から想像しただけなんだが、あんた虎の化身かなんかか?」

その問いに、ランサーは微かに瞬巡しながらも答える。
どうやら、彼女も脛に傷を持つ身であるらしいことを流は察する。
そして、流は何故自分に対して彼女が呼び出されたのか理解できた。
サーヴァントの中ではマスターと何らかの関連性をもったものが呼ばれる可能性があるという。
自身が身を置く仏教に属し、そして、あの二人を象徴するかのように槍を扱う虎に酷似した何か。
このランサーを呼ぶには充分すぎる要因というものだ。

「なるほどな、確かにあんたが槍兵で呼ばれたのは、俺が原因らしい。しかし、そうなると十全に力を発揮できないサーヴァントを俺は呼んじまった事になるか」

それは困った事になった、と流は内心頭を抱える。
頼みもしてないのに巻き込まれた聖杯戦争で、呼び出されたのは本調子でないサーヴァント。
この戦争の主催者は自分に怨みでも持っているのかと毒づきたくなってくる。

「はい、これでも長年、お忙しい毘沙門天様に代わって代理を勤めてきた身です。法力には一日の長があるという自負はありますが、数多の英雄との戦を切り抜けられるかと言うと……」
「まあ、その、なんだ」

呼び出した流が原因だというのに申し訳なさそうなランサーの言を、苦笑混じりに流が遮る

「足りない分は戦い方次第でどうともなる。幸いにも法力を駆使しての戦いって点に関しては俺だってそれなりの自負があるし、そこに関しては、まあ、どうとでもなるだろうさ」

ただ、と流は続ける。

「正直に言わせてもらうぜ。俺は聖杯に抱く望みなんぞねえ。正確にはその望みが叶うかもしれねえって時に呼び出されて迷惑してる。可能なら今すぐ聖杯をぶっ壊してでも元の世界に戻りたい」

その発言にランサーは目を見開く。
巻き込まれたに同然で脱出を優先するであろう参加者の存在は知らされていたが、運悪く自分が呼び出される事になるとは思いもよらなかったのだろう。
運の悪いサーヴァントもいたものだと、流は同情する。

「優勝する以外に方法がない、としたら貴方はどうしますか?」
「そりゃ、最短で優勝を目指すさ。同盟、暗殺、騙し討ち。使えるものはなんでも使ってな」

軽薄な表情で事も無げに流は言ってのける。
実質、彼はそれができるのだ。
自分を信じ真っ直ぐに見つめる、あの眼差しを、己の為だけに裏切った男が、その程度の事を躊躇う道理がない。
ただ、と流は続ける。

「仮にもっと簡単に聖杯戦争を抜け出す方法があり、あんたがそれを隠していたとするなら、俺はあんたの願いを聖杯に願ってでも邪魔してやるよ」

そういって自身を見据えるマスターに、ランサーはゾクリと怖気を覚えた。
軽薄な表情は変わらない。
だがその瞳の奥に、かならずやり遂げるという、どす黒い悪意を読み取ったからだ。
背筋を冷たい汗が一筋流れた。

「毘沙門天様に誓って、嘘は申しません」

一息、呼吸を整え、流の放つ怖気に負けぬ程の気を放つ。

「サーヴァントとして知識を与えられた私の知り得る限り、優勝をする以外にこの戦を抜ける手立てはありません。故に私達は勝ち残る以外に己が望みを叶える術がない」

沈黙。
互いの視線が交差する。
緊張状態を先に破ったのは流だった。
ため息を一つ、視線を外し、肩を竦める。

「ま、それしか手段はねえってんなら、しょうがねえか。改めて、あんたのマスターをさせてもらう秋葉流だ。毘沙門天様の使いを顎で使うなんざ畏れ多いけどよ、よろしく頼むぜ」

これ以上の詮索は無意味と判断し、流が折れた。
ククッという笑い声を挙げながら浮かべた笑みには、既に剣呑な雰囲気は感じられない。
ほっ、とランサーは安堵のため息をつく。
踵を返し、土蔵を出ようとした流の足が不意に止まった。

「そういや、あんたの望みを聞いてなかったな。正直、あんたみたいなの望みなんて『衆生の救済』くらいしか浮かばないけどよ」
「いえ、私の願いは……」

ふとした疑問。
軽い気持ちで聞いた質問を、流はいつかは知る事であっても『聞かなければよかった』と後悔した。

「人と妖怪が手を取り平等に暮らせる世界です」

『行くぜとらーッ!!』
『命令するんじゃねぇ!クソチビ!』

咄嗟に浮かんだのは、彼らの姿だった。
『人』と『妖怪』からなる最強のコンビ。
口ではなんだかんだと悪態をつきながらも、互いが互いを補いあい、最大の力を発揮する二人で一つの「妖」
ごくごく小規模な話かもしれないが、それはランサーの望む世界を体現した存在だと言えるのではないだろうか。
皮肉な話だと、乾いた笑みが流に浮かぶ。
流の世界では、人と妖怪それぞれが、その白面の者に対して力を蓄えていた。
そして、その二つの種族を繋ぎうる存在が、彼らだった。
しかし、その白面の者によって二つの陣営から彼らの記憶は根こそぎ奪いとられ、互いが相争い合うように仕向けられている。
そして、その二人の理解者たる自分はその白面の者の刺客として、彼らを殺害する為に動いている。
ランサーが勝ち自分が優勝すれば、自身はランサーの願いを踏みにじる行為をなすのだ。
つくづく、この戦争の主催者は悪趣味だと、流は感じた。

「どうか、しましたか?」

自身の願いを聞いた瞬間に様子のおかしくなった流を気遣うように、ランサーが声をかける。

「ああ、いや……」

ランサーへと向けられた顔は逆光に照らされ、良く見えなかった。
急に強い風が土蔵内へと入り込む。

「優勝の暁には迷惑料代わりに、主催者様へ恨み言ついでのキツい一発でもかましてやろうと思っただけさ」

『うんと、法力を込めた一撃をな』とは口には出さなかった。
風の音が聞こえる。
あの化け物と、あの少年と再び相見えるまでは。
彼の中に響く風音が止む事はきっとないのだろう。

流、“とら”と出会うの縁 了



【クラス】ランサー

【真名】寅丸星@東方project

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具A

【属性】
秩序・善 

【クラススキル】
対魔力:B 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
飛行:A
飛行能力。
このランクであれば単身で自由に空を飛べる

神性:B
毘沙門天の代理として、長年勤めてきた事で得た信仰と神性

財宝を集める程度の能力:A
財宝の妖怪としての権能。
所有者のいない宝具や礼装が手に入れやすくなる。

法力:B
仏教に属するものが持つ、仏の加護による力。
毘沙門天の代理であるランサーは最高クラスの法力をもつが、ランサーのクラスで召喚された為ランクが低下し、十全に扱う事ができなくなっている。
魔の属性を持つ者に対して、ランサーの法力を込めた攻撃は通常以上のダメージを与える。

【宝具】
妖邪打ち払いし法灯の独鈷杵(法力「至宝の独鈷杵」)
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大補足:50人

ランサーが携えた独鈷杵に法力を注ぐ事で、独鈷杵の両端から法力による刃を形成する。
この宝具は近接武器としての使用の他、投擲武器としても使用でき、投擲した独鈷杵は自動でランサーの元へ戻り停滞する。
独鈷杵は二本あるので、一本を投擲武器、もう一本を近接武器としても使用可能。
また、この宝具は法力によって機動しているため、魔の属性を持つ者に対しては威力が向上する。

捨身飼虎 (寅符「ハングリータイガー」)
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大補足:10人

自分の体の倍以上の法力を纏ったランサーが槍を携え突撃する。宝具というよりも、法術の類の技。
突撃が終了した時点で纏った法力は周囲に拡散し無差別に攻撃を加える。
また、法力での攻撃である為、魔の属性を持つ者に対しては威力が向上する。


【weapon】

槍:普通の槍、法力を纏えるので魔の属性を持つ相手には威力が向上する。

【人物背景】

元は人食い妖怪だったが、白蓮と出会い改心をした後、彼女は毘沙門天の代理として推薦された。毘沙門天に疑われこそしたものの根は真面目で優秀だった為、聖白蓮が封印され、千数百年の後に復活を遂げて以降も毘沙門天の代理としての職を全うしている。
対外的には温厚で冷静な人物だが、仲間内で見せる本当の姿は感情的で激昂する事もある。また大酒のみでようと態度が大きくなる。
聖白蓮復活の際に宝塔をどこかに無くしてしまった為、うっかり属性がついてきやすいが、今回はランサーとして召喚されたので宝塔がオミットされただけであり、うっかり無くした訳では無い。繰り返して言うがうっかり無くした訳では無い。

【サーヴァントとしての願い】
人と妖怪が手を取り合う平等な世界の実現

【基本戦術、方針、運用法】
弾幕及び宝塔を介した攻撃はランサーのクラスで召喚されたので全てオミットされている。
槍は持っているが接近戦は不得手なので、飛行能力を活かした一撃離脱戦法が主体。宝具もマスターとの兼ね合いからある程度多用はできるので、ミドルレンジでの戦闘もできる。
射身飼虎は回避したと思わせた途端に周囲に法力がバラまかれ至近距離にいるものを吹き飛ばす初心者殺し宝具。
魔性の属性を有する者に対しては強く出れるので、相手を選んでの戦闘も重要。


【マスター】秋葉流@うしおととら

【参加方法】
使用している錫杖にゴフェルの木片が使われていた。
「自分の本気が出せない」という虚無感が呼び寄せられるトリガーになったが、
あと一歩のところで現実でそれが叶う筈だった。

【マスターとしての願い】
元の世界に戻り、とらと全力で戦い、潮に本当の自分を見せつける。

【weapon】
錫杖:法力僧が扱う錫杖。接近戦にも使用できる。
独鈷:法具。流の場合は主に結界を張る為に使われる。

【能力・技能】
法術、特に結界を張る術に長けている。
その他、三日月型の法力の弾を浴びせる弧月、高速回転する大型の法力弾を放つ月輪といった攻撃用の法術も使用できる。

【人物背景】
獣の槍伝承者候補の1人。しかし、獣の槍自体に興味は無く、その伝承者である蒼月潮ととらに興味を持ち、潮のいい兄貴分として振る舞っていた。
幼少期から何でも出来る天才肌だった為に社会から孤立し、自分は本気で生きてはいけない。人生って奴を楽しんではいけないという思考になってしまっていた。次第に潮の信頼を重みに感じるだけでなく、多くの人妖の信頼を勝ち取って行く姿に羨望を感じていた矢先に、白面の使いからの勧誘を受ける。
白面から心の虚無感を指摘された上で、本気で戦える相手としてとらの存在を示唆された事で、裏切りを決意。白面の者の側へとついた。
この戦争には裏切り~潮達との遭遇の間の期間に戦争へと呼び出された。

【方針】
最短で優勝を目指すが、真っ向からの勝負は余程の事がなければ選ばない。
本文中にある通り、同盟・裏切り・暗殺なんでもする予定。
当座は同盟を組めそうな相手か、騙し討ちできそうな相手を探す。