ルパン三世&セイバー



「おぉ、こいつはすごいんじゃねぇの?」

営業を終えて非常灯だけで薄く照らされた地下駅のホームに一人の男が立っていた。
他に人の姿が見えないそこで男は両手を広げて喝采する。
しかし、何の変哲もく、むしろ寂しげなこの風景のどこが彼を感動させるのだろう?

「いやぁ、ちょいと俄かには信じられねぇな。まるで催眠術かとんでもないペテンかってもんだが、まさか……」

男はコツコツと音を鳴らしてホームを歩くと、ペタペタと柱や椅子を手で撫でて回り、ゴミ箱の中に頭をつっこむとその匂いに顔をしかめた。

「……こいつが、仮想現実(バーチャルリアリティ)なんてよォ」

自分が立つ仮想現実の出来栄えに感動するその男の名前は――怪盗ルパン三世といった。
知らぬ人はほとんどいまい。この世に盗めないものはないと豪語し、それを実現させてきたあの稀代の大泥棒である。

「しっかし、“爺様”もとんでもねぇもんを隠し持ってたもんだ」

ルパンは真っ赤なジャケットのポケットからひとつの木片を取り出し、掌の上で転がす。
一見すれば親指大のただの木片にしか見えない。実際これがただの木片であることは確かだ。ただ、何の木かというのが重要だった。

「見つけた時にはまさかと思ったが、……実際、この光景を見せられちゃあ信じるしかあるめぇよな」

手の中に木片を握りルパンは周囲を見渡す。目に映るのは何の変哲もない光景にしかすぎない。
ルパンがこの木片を見つけたのは数年前、祖父である初代アルセーヌ・ルパンの遺品を整理していた時のことだった。
偶然見つけた隠し棚の奥、入念に鍵をかけられた宝石箱を見た時、ルパンは色めき立った。これはよほどのお宝が見られるのだろうと。
しかし、その箱を開いてみてルパンは困惑する。そこにあったのは古びた、何の形もしていないただの木片だったからだ。

「“こいつ”はまさしく世紀のお宝だぜ」

それは包みに記されていた名前からすると『ゴフェル』というらしい。ルパンはそれがノアの箱舟の材料の名であるとすぐにピンと来た。
では何故、祖父がそんなものを大事に隠していたのか。決して眉唾ではないだろうと祖父を信じるとルパンは『ゴフェル』の調査を開始する。
そしておよそ2年前にひとつの答えに行き当たった。それは――『ゴフェルの木片』は今も宙を行く『ノアの箱舟』への片道切符だと。
荒唐無稽にもほどがある話だ。だがルパンはそれを信じた。
“期日”が近づくにつれ世界中の秘密結社の動きが活発になっていること。そしてなにより、祖父がこの話を信じたという事実に。

「まぁ、ただの与太話でした――ってのも、それはそれでロマンだと思ったんだがよ」

ルパンは木片をポケットに仕舞うと、そのまま後ろを振り返る。薄暗い駅のホームにはいつの間にかに淡く輝く魔方陣が浮かんでいた。

「さぁて鬼が出るか、蛇が出るか……期待しちゃうぜ?」

魔方陣の上に人影が浮かぶ。そこに現れたのは――。






  Ж Ж Ж


「貴方様が私のマスターなのですね♪」

歌のように軽やかに弾む声が光の中から発せられる。

「わぉ……」

ルパンの口から溜息が零れた。そこに現れたのは見目麗しい少女だ。
それも一見して普通でないとわかる、魂を奪われかねないほどの珠のような少女だった。
ふわりと波打つ髪は淡く白金色に輝き、白磁のような肌も、青い瞳も輝きを放っているように見える。
幾重にもフリルの重なる白いドレスを纏い、王冠を頂き、腰には一振りの“剣”と可愛らしいクマのぬいぐるみ。
人知のものではない、一見して『英霊』だと理解できる、そんな気品とオーラを纏う少女が顕現していた。

「いやぁ、ちぃとお子様だけど、俺様可愛い子には目がないからこいつはついてるや」

ウシシと笑うとルパンは揉み手で少女の前へと歩み寄る。身長差は頭ひとつ分ともう少しだろうか、少女はかなり幼く見えた。
少女は顎を上げてまっすぐにルパンの顔を見つめる。そしてにこりと笑うとその桜の花びらのような唇を開いた。

「ふふふ、お口が上手でいらしますのね♪ では、貴方様のお名前を聞かせてもらってもよいでしょうか?」

少女に見上げられ、ルパンはコホンと咳払いをすると、今更ながらにかしこまり彼女の足元に傅くと自分の名を名乗った。

「私めはルパン三世と申すものです。
 ちんけな泥棒の身ではありますが、このルパンに盗めぬものは存在しません。
 貴女が聖杯を欲するのであれば、この私。万難を排し、いかなる罠をも掻い潜り、この身が滅びようとも必ずやその御手に聖杯を齎してみせましょう」

そんなルパンの姿に少女は薄く微笑むと、顔を上げさせて今度は自分の名前を名乗った。

「私の名は、――キング・アーサー」

ルパンの顔が驚きに固まる。二、三度口を戦慄かせ、そしてようやく声が出た。

「じゃあするってぇと、あの伝説のアーサー王? ブリテンを蛮族の侵攻から守ってたっていう……」

『聖杯戦争』の趣旨や仕組みをルパンは理解している。
ここで植えつけられた知識にしてもほとんどは事前の調査により既知となっていたものであった。
だから英霊というものに対してもなんらかの歴史上の有名人が現れるのだろうとわかっていたし、自分に宛がわれるのは誰だろうと想像もしていた。
例えば、鼠小僧次郎吉や石川五右衛門なんかとお目見えできるのではなんて期待もあった。
しかし、実際に目の前に現れた『サーヴァント』は全くの予想外のものだった。
とはいえ、ルパンはそのことに驚いたわけではない。ただ単純に、“アーサー王が女性、しかも女の子だった”ということに驚いたのだ。

「ええ、円卓の騎士を従えブリタニアを守護しているのは紛れもなく私です。……けれど、私ってそんなに伝説ですか?」

指を顎に当て、きょとんとする姿はただの女の子にしか見えない。誰も見た目だけでは彼女のことをアーサー王だとは信じないだろう。

「いやぁ、まさかかのアーサー王がこんな可愛い子だとは思いも寄らなくてさ。そんな話、“どこでも”聞いたことなんかないし」

笑うルパンに、しかし当のアーサーはきょとんとしたままだ。

「……もしかすれば、“あの方”の話が私のものとして後世に伝わったのかもですね」
「ん? 何か言ったかい?」
「あぁ、いえいえ。こちらの話ですわ。けれど、ご安心ください。ブリタニアのアーサー王とは紛れもなくこの私のことですから」

一瞬ルパンの顔に怪訝な表情が浮かぶが、アーサーがにこりと微笑めばそれもあっさりと消えた。


  Ж Ж Ж


「ルパン様はこのような地下にお住まいを持っておられるのですか?」
「そりゃあ、こちとら泥棒稼業なもんで仕事が控えてるとなれば、そう易々と人に見つかる場所にはいられないよ」

アーサーとルパンは並び立ち、線路が走るトンネルの中を歩いている。その長い洞窟は明かりも乏しく、足音がよく響くほどにしんと静まり返っていた。

「『聖杯』を求められているのですよね?」
「あぁ、聖杯って言っちゃあ古今東西、王も貴族も探検家も泥棒も求めたお宝中のお宝だ。その“本物”があるってぇならそりゃあ泥棒の手も疼くさ」

駅から離れ、しばらく進んだところでルパンは先につけておいた目印に従い通路を脇にそれる。
地下は複雑だ。線路が通っているトンネルだけでなく、車両を退避させるスペースや電源や空調の為の部屋にそれらを繋ぐメンテナンス用の通路、
新しく線路を通す為に掘られているトンネルや、掘ったはいいが事情により途中で中断になっているものまで、蟻の巣のように張り巡らされている。

「では、聖杯に叶えて欲しい願いがあるのですよね?」

アーサーに問われ、ルパンは僅かに答えあぐねる。

「……それは、どうかな。聖杯は拝みたい。が、俺に願いがあるとしてもそこで叶えてもらいたいとは思わないな」
「そうなのですか?」
「俺は泥棒だからさ。なんでも自分で盗んでこそなのよ。与えられたり恵まれたものに喜んだりはしないのさ。とはいえ……」

ルパンは頭を掻くと苦笑した顔をアーサーに見せる。

「少なくとも、ここに呼ばれるだけの理由(願い)が俺の中にはあったって言うのも間違いないんだ。
 それがなんだってのはいまいち自分でもピンとこねぇんだがよ……で、アーサーはどうなんだ? 俺の聞いた話じゃ王は聖杯を求めたって聞いてるが」

アーサーはルパンからの問いに、こくと頷く。

「確かに、聖杯を追い求めたことはありますね。……パーシヴァルといっしょだったでしょうか。見つけて、今はキャメロットのどこかにあると思いますけど」
「あらら……あっさりしたもんだ。そんでアーサーはその時になにか願いを叶えたのかい?」
「いえ、特にはなかったように思いますけど……でも、そうですね。此度の聖杯で願いが叶うのだとすれば、私はやはり世界を愛で満たしたいと思います」
「……愛?」

はい♪ とアーサーは笑う。

「私の時代ではどこの国もが軍備を増強し、覇を争いあうことで絶え間ない戦争が続いていました。
 けれど、それは一人の『英雄』の出現によって終わりを告げたのです」
「するってぇと、その英雄とやらが“愛”を……?」
「はい。彼は愛に満ちたお方でした。ある日突然地上へと舞い降りた彼。その愛に、各国の主導者たちも絆され、遂には国家の争いは収束したのです」
「天から舞い降りた愛の救世主……って聞くと、まるで天使のようだな」

足を止めると、アーサーはルパンに向かい恍惚とした表情を見せる。

「ええ、彼はまさしくこの『星』が終わらぬ争いの輪廻から抜けられぬ私達に遣わした『救世の英雄』だったのです♪」

ルパンはただはぁと息を漏らす。どうやら伝え聞くアーサー王の物語と実際には大きな隔たりがあるらしい。



その後、ルパンはアーサーから『救世の英雄』について聞かされながらアジトを目指した。
どこか知らないところの色男の活躍話を延々と聞かされるのは正直おもしろくはなかったが、そんな時はアーサーの笑顔を見れば紛らわすことができた。



【クラス】 セイバー
【真名】 アーサー
【属性】 秩序・善

【ステータス】
 筋力:C 耐久:C 敏捷:A 魔力:A 幸運:A 宝具:A

【クラススキル】
 対魔力:B 第三節以下の詠唱による魔術を完全に無効化。大魔術、儀礼呪方等の大掛かりな魔術を持ってしても傷つけることは難しい。
 騎乗:B 騎乗の才能。人が作り出したあらゆる乗り物の運転が可能。魔獣、聖獣等神秘的な乗り物に関してはこのスキルは発揮されない。

【保有スキル】
 アイドル:A
  生まれ持った人を魅力する美貌と才能。
  歌声で鼓舞して味方を一致団結させると共に、敵対者に対してはその心を惑わし心を絆す効果が発揮される。

 王道:B
  臣民を率いる王としての能力とカリスマ。
  軍団を率いる能力として発揮される。また、戦場の先頭に立つことで味方に王の存在を知らしめ、ステータスに上昇補正を加える。

 超再生:A
  『奇跡』を起こすことにより、生命や物質の状態を健全だった時へと一瞬にして戻す能力。
  この発現は非常に鮮烈に力を放射する為、奇跡が起きたこと、起きた場所は魔術の素養があるものらには簡単にそれが伝わってしまう。

【宝具】
 『愛満ちる奇跡の剣(エクスカリバー)』
 ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
 聖剣による、大魔力の放出による破壊。
 エクスカリバーを構え、魔力を一直線に全放出することで目の前の敵、そして城などの構造物を一切破壊してしまう技。
 白く眩い光はあらゆる抵抗を無視し、相手が邪悪であればあるほどより効果を発揮する。

【weapon】
 『届けよこの想い(ライヴロデズ)』
 手にする者の魔力を吸いとり、それを波として放つ短剣。
 僅かな魔力を消費することで刃と化した魔力の波を飛ばし、それで相手を攻撃することができる。
 短剣そのものは武器として使えるほどのものではない。また魔力の波は斬撃ではなく魔法の攻撃として扱われる。

【人物背景】
 出展は「英雄*戦姫」
 円卓の騎士を率い、ブリタニアを守る王女。
 ブリタニアにおいてアイドルとしても慕われる愛を歌う王女であり、国民と臣下からの人気と信頼は厚い。
 円卓の騎士を率いるその武力は全世界を見ても随一だと言われるが、無闇な侵略を忌諱し専守防衛に努める為、実力に比して見ると領土は少ない。
 だが、一度その力を世界へと向ければ世界征服は一瞬だと世界中の国から警戒されていた。

 「さぁ、戦場に愛の歌を響かせましょう♪」

 本人は明るい性格で物腰穏やか。
 のほほんとしてるとすら見れるほどだが、好奇心を抱いたものに関しては追求せずにはおられず、勝手に城を抜け出して……なんてことも。
 また部下の進言を無碍にするような性格ではないが、自分がこうと決めたら譲らない頑固なところもある。
 価値観の中心は『愛』であり、愛による世界平和を常に夢見ている。
 魔術師マーリンや円卓の騎士の力添えもあるが、本人も王として優秀。能天気なふりをしても常に民と世界のことを考えているのである(はず)。

【サーヴァントとしての願い】
 世界に愛を満ちさせ、完全な平和を実現する。

【基本戦術、方針、運用法】
 まずは交渉より入り、味方に引き入れるのであれば同盟を、それが無理でも可能であれば不可侵条約を結ぶ。
 どちらも不可能であり衝突するしかないとなれば戦うことも辞さない。
 アーサーは少女に見えるが王であり、また歴戦の勇士でもある。かつての戦場の経験と知恵に基づき、相手側をよく見定め適格な判断で撃破する。
 基本的に戦闘は時間をかけず圧倒することで、互いの被害を最小限にすることを狙う。


【マスター】 ルパン三世

【参加方法】
 祖父の遺した『ゴフェルの木片』を発見し、聖杯戦争のことを突き止め、自主的に参加した。

【マスターとしての願い】
 不明?

【weapon】
 『ワルサーP38』
 第二次大戦中、ドイツ陸軍で正式採用されていた自動拳銃。
 当時としては新しいダブルアクションタイプの自動拳銃で、口径は9mm、パラベラム弾を使用、装弾数は8。
 今となっては古い銃だが、何度か交換しつつもルパンはこの銃を使い続けている。

 『怪盗グッズ』
 全身及び服装の中に仕込まれた道具の数々。
 変装用の人口皮膚から、小型爆弾、発信機、ワイヤー射出装置、ナイフ、火打石、火薬、変声機、エアバッグ、粘着剤、等々。
 それらは身体であれば耳の中や、歯の中、爪や皮膚の下などに仕込まれており、
 服装の中であれば各ポケットだけでなくネクタイピン、ベルトのバックル、靴の踵、シャツのボタンやカフスボタンなどの中に仕込まれている。
 常に100近い道具を携帯し、ルパンはその隠し場所と使い道を熟知しているので状況に応じ適確に使用することができる。

【能力・技能】
 『怪盗』
 お宝を鮮やかに盗み出すための能力。
 鮮やかに盗んでこそ怪盗であり、これは強盗などの下品な犯罪に適用されるスキルではない。
 狙ったお宝が貴重であるほど、盗むのが難しいほどそれを盗み出すための知恵を絞るよう頭の回転が早くなる。
 また、予告状を送るなどして盗みの難度を上げ、更に注目を浴びることでこのスキルはより強力に発揮されるようになる。

 変装術や逃走術、ハッキングテクなど、怪盗として活動する過程で必要とされる技術もここに含まれる。

 『紳士』
 女性の前に立つ男としてのスキル。
 紳士らしい振る舞いからドレスコードや各種マナー、利き酒、料理の腕前、等々、紳士として必要なあらゆる知識と所作を修めている。

 『道具作成』
 怪盗として必要となる道具を自分で作成する能力。
 科学化学を問わず高度で幅広い知識を持ち、またあわせて持つ高い加工技術によりその作成を実現させる。

【人物背景】
 出展は「ルパン三世シリーズ」
 かの名高き怪盗アルセーヌ・ルパンの孫(三世)と称して活動している大泥棒。
 国籍、出身、年齢、経歴、色いろと憶測はされているが全てが謎に包まれており、性別すらも確かではなく、知られている顔も変装かもしれないという。
 このように経歴については一切がはっきりとせず、アルセーヌ・ルパンの孫という触れ込みも自称でしかない。
 泥棒としてのスタンスは大物狙いであり目立ちたがり屋。予告状を送り、その上で厳重な警備を掻い潜って盗むのを楽しんでいる。
 活動は世界全体に及び、被害件数と額もあり各国から国際手配されており、インターポールからは専任の捜査官がルパン追跡に派遣されている。

 怪盗として多くの蓄えを持つが、贅沢をするというのはあまり好んでいないようで食生活などは実に慎ましい。
 また大の女好きで、紳士として振舞おうとするものの下心を隠すのが上手ではない為、ボロを出してはよく手痛い目にあっている。
 ただし、好みの女性はスタイルのいい大人の女なので、少女が相手だと最後まで紳士であることを務められる。

 基本的に善人寄りではあるが、リアリストでもある為、必要な殺人は厭わない。

【方針】
 無論、『聖杯』を目指して進んでいく。
 ただし、最初は様子見をして血気盛んな奴らがぶつかり合い消耗するのを待ち、できるだけ自分が有利な状況が訪れるのを待ちたい。
 その最中に仮想空間内を調査し、その仕組みや、『箱舟』そのものをどうにかできないか等、色いろと考える。