ジョン・シルバー&バーサーカー



 ジョン・シルバーという男は、その木片を拾った時、宝にも杖替わりにもなりはしない一端のただの木の棒だと思っただろう。
 港町では、積荷、酒樽、筏といった「木片の材料」はいくらでも転がっている。だから、シルバーはその時も、所詮はそういう物だろうと流して歩こうとした。
 しかし、──これは当人にも全く気づかぬうちに──その何でもない木片を、かの男は拾い上げていた。


 いくら、あの冒険を終え、小さく勇敢な好敵手(あるいは、友人とも弟子とも我が子とも言える)──ジム・ホーキンズとの別れを経験した後であろうとも、シルバーは冒険の匂いを確かに感じ取っていたのである。



「貴様が私のマスターか────」



 シルバーの前に現れたサーヴァントは、人のカタチをしていなかった。
 獰猛なけだもの──おそらく、肉食動物。シルバーの肩でフリントが警戒し、慌てて羽ばたき始めたのをシルバーが止める。
 雪原のように真っ白な体毛、血のように真っ赤な瞳。シルバーの鼻孔を突く獣の匂い。
 その口からすらすらと人の言葉が流れ出てくる事には、流石のシルバーも僅かにだが驚きを禁じ得なかった。
 想定外のサーヴァントに、シルバーは苦笑する。

「…ああ、そうだが」

 このサーヴァントはじっくりとシルバーの様子を観察した。

「大凡の場合、人間がマスターになるとは思っていたが、いやはや、お前は只の人間ではないな。
 潮の香りがする。人の中でも肉体は頑強。服の色は気に入らないが、その瞳は誇りのある瞳だ。
 一際、面白い男とお見受けした…」

「買いかぶりすぎじゃねえかい、大イタチさんよ」

 このサーヴァントは、獰猛な白クマにも見えるが、よく見るとやはりイタチであった。その体躯は一メートル半ほど。通常のイタチの体躯の三倍、いや、それ以上か。──シルバーが見て来た野生動物たちとは大きく違った。
 しかし、その特徴からシルバーは彼がイタチの特徴を持っていると結論づけた。ジムの連れている虎が成長しても張り合えるのではないだろうか。
 とにかくイタチという生物の規格を彼は無視していた。どんな物を食えばこれだけ巨大になりえるのか、シルバーはこのアルビノのイタチの外形を見下ろしながら考える。

「…私はバーサーカー、真の名はノロイだ」

「ノロイ…ノロイか。お前の真名を聞いた奴はさぞかし怯えるだろうぜ」

 シルバーは苦笑する。

「人間、貴様の名はなんだ」

「…おっと忘れてたな。俺の名はジョン・シルバーだ」

 そんなシルバーをバーサーカーは黙って見届けた。シルバーの笑みの途絶と共にノロイは口を開いた。

「ところで、マスターよ。お前の目的を聞かせてもらおう」

「俺の目的か? …そりゃあ、聖杯とかいう物を手に入れる事さ」

「それはわかっている。だが、聖杯で叶えたい願いがあるのではないか」

 バーサーカーはそう聞く。
 ただ、実を言えばシルバーは巻き込まれたも同然で、ここに来るまでは目的らしい物はない。

 それでも──彼は聖杯が欲しかった。
 実際にこうして連れて来られたからには、自ずと目的を作り出してしまうのがジョン・シルバーという男である。
 唯一無二の存在を得たいと心から欲するこの欲望こそが、男を突き動かす。聖杯がどんな用途の物であるとしても、それを掴みとりたい本能がシルバーの中にはあるのだ。
 聖杯。──ただ、その存在がある事実こそが、シルバーを惹きつける。

「聖杯とやらで呑むラム酒がどれだけ美味いのか知りたいんだ。
 そいつがその時、俺の一番大切な物になりゃあ、設け物さ」

 いわば、そういう事だった。
 この戦いで得た杯を使って飲むラム酒の味を求めていただけである。

「一番大切な物だと? ──」

 シルバーの言葉が、バーサーカーにはわからなかった。

「ヘッ。誰にでも語る事じゃねえさ。まあ、そうだな…。
 これからお前はどうしたい。あんたらイタチには大切な物ってのはあるのか」

 そう言われると、バーサーカーにとってもシルバーの目的などどうでも良くなったのだろうか。
 彼は自らの生きがいとも言える行為を語らいだした。

「…折角、人里に召喚された以上、私は人を相手に殺しを楽しみたい。
 追いつめて楽しく殺したい。あのネズミ共のように、悲鳴を上げて人間共が死んでいくのを見たい。
 それが私の目的だ。勿論、お前はその対象外だが」

 バーサーカーが薄く笑うのを、シルバーは不愉快そうに見つめた。

「殺しか。なるべくやりたかぁねえんだが、それがあんたのやりたい事だってんなら邪魔はしねぇ」

「物わかりの良い人間だ。私のマスターに相応しい。
 面白い、面白いぞ、シルバー。カッカッカッカッカッカッ…………」

「いや…言葉を理解するイタチを見た後じゃぁな。
 それに、それだけ戦うのが好きなら、聖杯を得るのにも役に立つってもんさ」

 殺人は極力避けたいが、聖杯という宝を得る為にはシルバーは手段を択ばない。
 このノロイという真名を持つサーヴァントを利用し、参加者を減らして聖杯を手に入れるのも一向。
 また、別の方法で聖杯が得られるなら、それはそれで構わないというスタンスであった。
 ただ聖杯が欲しい。その為に真っ直ぐに動いていく自分の中にこみあげる、この刹那的な情熱こそが、今この一瞬のシルバーに満足感を与えていた。



 ────彼は一人、ジムのいない場所で新たな冒険を始めている。────


人物背景


【真名】ノロイ@ガンバの冒険
【クラス】バーサーカー

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷B+ 魔力D 幸運C 宝具D

【属性】
 混沌・悪

【宝具】
『ゆっくり殺せ…楽しく殺そう…』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:2~5
 多量の相手を片手の爪で纏めて突き刺し、掻き切る事ができる。ただし、対ネズミ時。
 身長は1メートルほどなので、人間相手でも複数名を相手にできる可能性はある。

『劇画立(トラウマ))』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:相手の視覚範囲 最大捕捉:相手の視覚範囲
 ただ立つだけで相手に恐怖を植え付ける。かなり不気味な立ち方。

【クラス別スキル】
狂化:E
 通常時は「狂化」の恩恵を受けない。代わりに、正常な思考力を保つ事ができる。

【保有スキル】
催眠術:B
 目を見た相手に催眠術をかける事ができる。

カリスマ:A
 高い指揮能力と人心掌握術を持ち、多くの仲間を集めてネズミたちを襲撃する。
 イタチたちからは絶対的な忠誠を誓われており、ネズミの支配を実質支配していた。

【weapon】
 なし

【人物背景】
 1メートルほどの巨大なアルビノのイタチ。ネズミたちを追いつめて殺す事を楽しみ、愉悦としている。
 雪のように真っ白な体をしており、内心には白い物に対する偏愛と狂気に満ちた美意識がある。白い花を汚した部下に対して怒り狂い、容赦なく粛清した事もあった。
 知能が高く、ネズミたちの言葉を学習して話す事が出来、更には真っ赤な眼光を利用した催眠術までできる。
 仲間を売ったネズミに対しては「殺す価値もない」と発言しており、やはり独自の美学の持ち主である。

【サーヴァントとしての願い】
 特になし。他者の殺戮のみが目的。

【基本戦術、方針、運用法】
 獰猛な生物としての圧倒的なパワー、鋭利な爪で敵を切り裂く事ができる。
 殺しそのものを楽しんでいるため、殺戮を主目的とするが、同時に理知的でもあり、殺戮の為に相手を仲間に招き入れて騙させる真似もする。
 主に、相手を何らかの方法で自分の下におびき出してから殺す作戦を取り、それを楽しむので、遠距離の敵も察知しておびき出す戦法を取る可能性が高い。


【マスター】ジョン・シルバー@宝島(アニメ版)
【参加方法】『ゴフェルの木片』による召喚
      本編終了後に港町で発見する
【マスターとしての願い】自分にとって一番大切な物を見つける
【weapon】杖
     フリント(オウム)
【能力・技能】左足は義足だが、一般人と同等以上の格闘能力や身体能力を持つ。特に腕力において右に出る者はいない。船乗り五人を軽くあしらうほど。
       宝の地図に示された場所に辿り着いた時には、海賊・冒険家たちの誰よりも早く宝に向かっていったほどの執念を持ち、「男は一度やろうと決めた事があれば一本の脚が二本にも三本にもなる」と発言した。
       人心掌握術に長けており、悪役でありながら善悪問わずありとあらゆる人間を引き付ける魅力を持っている。
       コックとしての腕も有能。
【人物背景】
 主人公ジム・ホーキンズとともに、伝説の海賊フリントの宝を競い合った海賊。悪役でありながらかなりのロマンチストであり、男の中の男として描かれている。
 当初は、フリントの宝を探す船にコックとして乗り込み、ジムたちとも親しくしていたが、実はフリント海賊団の元一味であり、自分が乗りこませた海賊仲間と共に島で反乱を起こす。
 脱出した船長やジムたちとは島で戦う事になり、シルバーは彼らを相手にあらゆる作戦を取り仕切って宝を争奪し合う事になった。
 しかし、その過程でジムに対して強い興味を抱き、敵ながら強い信頼と友情が芽生えていった。
 宝に対する執着は非常に強く、ただ宝を得る事に対するロマンのような物が彼を突き動かしている。その為にはどんな手段も厭わず、敵対勢力には卑劣な罠を仕掛ける事も多かった。
【方針】
 聖杯を手に入れる。
 ただし、他の参加者との協力・対話の意思もあるので、そこまで積極的に殺して回ったり、不意打ちをしかけて襲い掛かったりというやり方をする気はない。

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最終更新:2014年07月08日 16:20