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――私は、摩耗する。


   *   *   *


とぼとぼと冬の街を女が歩いている。
女の名は服部瞳子。
数時間前、連続ドラマのオーディションに落ちてしまったアイドル見習いだ。

『気にすることはないさ』

事務所に帰った彼女を迎えたプロデューサーは気落ちしないようにかけてくれた。
けど聞いた。聞いてしまった。
別のオーディションに彼の担当する別のアイドルが合格したということを。
かけられた優しさが辛くて、期待に応えられなかった自分が情けなくて、つい声を荒らげてしまった。

『私じゃなくて――さんのプロデュースをしてればいいでしょう!』

口をついて出た言葉がどれだけ最低な言葉だったのか。
目の前のプロデューサーの傷ついた表情がそれを何よりも物語っていた。

『……ッ! ごめんなさい!』

逃げるようにして私は事務所を飛び出した。
そして往くあてもなく、街を一人でさまよっている。

――私は、最低だ。

自己嫌悪で死にたくなる。
彼がどんなに頑張っているか、私が誰よりも知っているはずなのに。
こんな旬の過ぎたアイドルを必死に売り込んでくれている。
今でもなんとかアイドルとしてやって行けているのは彼の努力あってこそだ。
でも彼が努力すれば努力するほど、自分の無力さが嫌になる。
受けたオーディションは最後まで残れない。
なんとかとれた仕事は次につながらない。
TVでよく見るようになったあの娘は事務所の後輩だ。
焦り、劣等感、無力感――自己嫌悪。
長い混ぜになった暗い感情が自分の中に溜まっていくのがわかる。

『"生っすか!?サンデー ナイトスペシャル"、始まります!』

街の中、駅前のオーロラビジョンから聞こえてきた声に足を止める。
そこには光り輝く世界があった。
TVの向こうに広がる煌く世界。
その光に魅せられて、私は一度アイドルの門戸を叩き――そして、挫折した。
環境が悪かった、運が悪かった。いくらでも理由はあげられる。
でもそんなことは関係ない。残ったのは一度諦めたという結果だけだった。

『それにしてもスゴイですよね! 今まで何もなかったはずの月に謎の影が突然現れるだなんて――』

TVノムコウでトップアイドルがキラキラした瞳で何かを話している。
そう、一度は諦めて、でもあの光に魅せられて、私は再び夢に向かって歩き出した。
でも、それは茨の道だった。
アイドルとしては遅すぎるスタート。
そしてその年齢を武器にできるような機転も効かない。
周囲には咲き誇る多種多様なアイドルたち。
心は折れない、夢は諦めない。諦めきれない。
でもだんだんと削れていった。
心が――摩耗していった。

ポケットの振動。
見なくてもわかる。プロデューサーさんだろう。
でもあんなことを言っておいてどんな顔して帰ればいいというのだろう。
ため息を付きながら、視線を道路へと落とす。

その時、私の目に止まったのは道端に落ちていた、普通なら視線すら向けないような木の欠片だった。
何の変哲もない木の欠片に目がとまる理由なんて本来ならばない。
けれどなぜか、その時の私はその木片から目を離せなかった。

「何かしら、これ……」

その木片に触った瞬間、私の意識はブラックアウトした。

    *   *   *

「……こんなところかしら」

その後私は記憶を失った状態でよくわからない街に放り出された。
そこでも私はアイドル候補をやっていて、自己嫌悪が極まった所で本来の記憶を取り戻したのだ。
夢や希望じゃない所に自分らしさを感じ、皮肉げに口元が歪む。

「やれやれ……今度のマスターはずいぶんと難儀だな」

瞳子がいるのは彼女の所属する事務所だ。
そこには彼女のマネージャーも、同業のアイドルたちもいない。
その代わりにいるのは赤いコートのようなものを着たコスプレ青年だ。
長身でガタイの良い美形……スポーツ番組で引っ張りだこになるタイプじゃないだろうか。
自身のことをアーチャーと名乗った青年は、やれやれと肩をすくめる。

「魔術師としての素養もなければ取り立ててスキルもない。
 その上で中々いい性格をしていると来たものだ」
「仕方ないでしょ! 魔法使いだの何だのってそんなの絵本とかの世界じゃない!」

セイハイセンソウだのコロシアイだのとは程遠い世界で生きてきたのだ。
頬をつねった時の鋭い痛みがなければ、瞳子とてこれが夢だと信じていただろう。

「それでマスター、君はこれからどうするつもりだ?」
「それは勿論……帰りたいわよ……」

弱々しい声が事務所の中に響く。

「死にたくなんてないし、それに何よりプロデューサーさんに謝りたい。
 このまま行方不明になったらプロデューサーさんはきっと気に病んでしまう。
 そんなことになったら私は死んでも死にきれないじゃない……!」

あの人は私に希望を見せてくれたのだ。
そんな人を絶望に追いやるなんて……絶対に、いやだ。
それこそ自己嫌悪どころじゃない……自分を絶対に許せなくなる。

「ではどうする? 他者を蹴落とし最後の一人になるか?」
「……そんなこと、できるわけないでしょ……」

オーディションは落ちても次がある。
だがこの戦いに次はない。
敗北すれば――死ぬのだ。
他人を死に追いやるなど、現代倫理の中で育ってきた瞳子にはそうそう超えられるラインではない。

「やれやれ……進むことも引くこともできないとはね」
「うるさいわね! じゃあ一体どうすればいいっていうのよ……!」

荒げた声を赤い青年にぶつける。

「悩めばいい。そのくらいの時間はなんとか私が稼ぐとしよう」
「え……」

皮肉げな笑みを浮かべたまま、アーチャーはこちらを見つめている。

「何、残念なことに面倒事には慣れていてね。
 それに今の私は君のサーヴァントだ。
 君がしっかりしなければ、私もどうしようもない」

そのままこちらに背を向けて歩き出す。

「ちょ、ちょっと……どこ行くのよ?」
「まずは落ち着いてもらうためにも、紅茶の1つでも入れようかと思ってね。
 事が始めるまでは多少の時間があるようだ。ああ、そうだ――」

台所へと向かうアーチャーがこちらをちらりと見る。

「アドバイスだ。自己嫌悪はほどほどにしておいた方がいい。
 自分を摩耗させても――碌なことはないのだからな」

妙に実感のこもった声でアーチャーはそう言った。



【マスター】
 服部瞳子@アイドルマスターシンデレラガールズ
【参加方法】
 道端でゴフェルの木片を拾った。
【マスターとしての願い】
 元の世界に帰って、プロデューサーに謝る。
【weapon】
 なし。
【能力・技能】
 一般人であるため、戦闘に有効な技能を持たない。
 しかし特技名「負けない心」/「折れない信念」とあるように精神力だけは強い。
【人物背景】
『誰もが夢を叶えられる訳じゃないのよ、プロデューサーさん……私がスポットライトを浴びられるとでも?
 そう…それほど自信があるならいいわ…これがラストチャンスね…今年こそ、アナタに賭けてみるわ…。』
 ソーシャルゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ」の登場人物。
 25歳という割と高めの年齢は一度アイドルとしてデビューし、挫折した過去を持つため。
 そんな過去を持つためか、気楽なアイドルもいる中で割りと重めな性格をしている。
 その後、特訓後や新カード等で前向きな姿も見せてくれるのだが今回は燻っている時期からの参戦となる。
【方針】
 未定。

【クラス】
 アーチャー
【真名】
 無銘
【パラメーター】
 筋力D 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具E-~A++
【属性】
 中立・中庸
【クラススキル】
  • 対魔力:D
 一工程による魔術を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
  • 単独行動:B
 マスターからの魔力供給が無くなったとしても現界していられる能力。

【保有スキル】
  • 心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

  • 千里眼C
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

  • 魔術:C-
 オーソドックスな魔術を習得。
 得意なカテゴリは不明。

【宝具】
 無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)
 ランク:E-~A++ 種別:対人宝具 レンジ:30~60 最大補足:????
 錬鉄の固有結界。
 一度目視した剣を登録し複製することができる。

【weapon】
  • 干将・莫耶
  • 赤原猟犬(フルンディング)
  • 偽・螺旋剣(カラドボルグII)
  • 熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)
  • 永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)
 Fate/EXTRA参照。自身の投影魔術によって模倣した武具の数々を使用する。

【人物背景】
 Fate/EXTRA参照。

【サーヴァントとしての願い】
 マスターの手助けをする。

【基本戦術、方針、運用法】
 基本的にはマスターの意向に従う。