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シュレディンガーの性別」(2015/02/02 (月) 16:46:13) の最新版変更点

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*シュレディンガーの性別 ◆IbPU6nWySo 『マスター……』 「あぁ、分かっている」 セイバーへの返答に対し、真玉橋は雑誌を食い入るように眺めながら独り言じみた呟きをする。 何か事態が発生した為による呼びかけではない。 セイバーはいつも通り、厭きれを抱いた呼びかけしかしなかった。 真玉橋の視線。 雑誌に載るのは――やはりというか、やっぱり女性。 女の姿しかいない。 それでも、真玉橋は至って真剣にソレを丹念に眺めているのだから、一体どうしたことかとNPCたちも困惑している。 ここはすでに学園ではなく本屋であった。 真玉橋は帰路につかず、かといってウェイバーにも接触することなく。 何故か本屋に立ち寄り、様々な女性雑誌を眺めてばかりなのだ。 あまりの真剣っぷりからか店員のNPCも茫然とするか、あるいは見知らぬフリをしている。 少々目立つからいっそ雑誌を買ってみたらどうか。 そう提案でもしようかとセイバーだが、改める。 副会長の一件は真玉橋に新たな一歩(?)を踏み入れさせた。 相も変わらずエロのみで語れる男だが、果たして彼は聖杯戦争――真の『戦争』をどうするのか? 何とかするとはいえ。まさかエロだけで何とかできるものではない。 「セイバー。帰ってからでいいんだが、後で尻を――」 『ウェイバー・ベルベットとバーサーカーとの接触はいかがなされますか?』 ようやく真玉橋は雑誌を置き、本屋から離れた。 「ウェイバーが帰って来る時間帯は大体決まってるしな。その頃に部屋尋ねるぜ」 『分かりました。相手は意味不明なバーサーカーです。用心して下さい』 奇行には用心するべきだが、妄言は耳を傾けずともよい。 挑発に含まれるものならともかく、バーサーカーらしく狂気に満ち足りた世界観を語っているだけ。 喋る空気だと済ませれば大した問題はない。 セイバーが関心を惹くのはウェイバーの方。 彼は聖杯戦争をどうする方針なのか? バーサーカーの妄言を鵜呑みにはしない。直接問うのだ。 無血の優勝を遂げるには彼の方針が重要である。 セイバーはある可能性を賭けていた。 それは――『聖杯戦争に意図せず参加した者』の存在。 彼らがわずかながらおり、聖杯戦争に困惑し、苦悩している。存在することを。 今回の聖杯戦争。 参加にはまず『ゴフェルの木片』との接触が必要。 接触した者に願いがあれば方舟までは至れる。 そして、予選を突破にするには方舟の日常そのものに違和感を覚える事、記憶を取り戻すことが条件。 予選突破に才能も何もない。 数多の魔術師たちが聖杯を賭け、参加をしたことだろう。 それでも、参加できなかった者はそれだけで終わる。 逆に、魔術師でもなんでもない『木片』に運悪く、意図せず接触し、そして参加してしまった者もいる。 結局のところ『願い』の判定に大きいも小さいもない。 『願い』に反応して参加させられたにしても、ささやかなちっぽけな『願い』を抱く者ならば 人を殺してまでその『願い』を叶えるかどうかだ。 セイバーが無血の優勝に至るのに彼らの存在が大きいのだ。 「ん?」 その時、真玉橋もセイバーもあるものと遭遇した。 奇抜な髪、独特なスーツ、映えるハイヒールと菱形の尾が揺らめく。 以上の風貌を備えた奇怪なサーヴァントが電灯の上に存在しているのだ。 やがて、そのサーヴァントも不気味な瞳を前髪の隙間から覗かせ、真玉橋たちの方へ振り返る。 セイバーは戦闘体勢を取るべく、実体化をした。 「マスター、気をつけて下さい。霊体化もせず目立つような真似……こちらを挑発しているのでしょう」 冷静に分析をするセイバーに対して「あ、あぁ」と曖昧な返答をするマスターの真玉橋。 エロの真理を追究するかの如く、女性への痴漢行為を及んでいた彼にとって初めての邂逅、そして戦闘になるこの瞬間。 多少の動揺は隠せないのだろう。 ここは先導するべきだとセイバーは意を決した。 真玉橋は「いや」と改めてセイバーを制する。 「待て、セイバー。俺はコイツに聞きたい事がある」 「話が通じる相手ならば良いのですが」 赤いバーサーカーのように全うなものでなければ話も叶わないだろう。 アサシンのサーヴァントはニタニタと笑みを浮かべ、聞かれてもいないのに答えた。 「いいっすよwwwwwミィもお話ししたいと思ってたところっすぅwwwwwwwww」 「まず一つ目だが――マスターはどこにいるんだ」 確かにマスターらしき者はどこにもいない。 首を奇怪に傾げながらアサシンは返答する。 「あっちにいるっすwwwれんちょんは『あっち』でアーカードの旦那とイチャイチャしてるっすwwwwww」 「『れんちょん』っていうのがマスターで『アーカード』は他のマスターってことか?」 「旦那は真っ赤な血が大好物なアーチャーっすよぉwwwwwwミィも大好きっすwwwww」 表現を馬鹿らしくしているが、『血』が好物だというアサシンも、アーカードと呼ばれるアーチャーも 到底、善良なサーヴァントだとは思えない。 セイバーは顔をしかめさせながら口を開いた。 「何故、そのようなサーヴァントと自身のマスターを同行させているのでしょうか?  あなたはマスターへの不安など一切していない、との解釈でよろしいですか」 「あwwwwwwwwサーセンwwwwサーセンwwwwww  ミィ、間違えちゃいましたwwwwれんちょんは『こっち』にいるっすwwwwwwwww」 わざとらしく大げさに頭を下げながら、アサシンは見当違いの方向を指差す。 「れんちょんは『こっち』でジナコさんとお昼寝してるっすwwwwwwww」 また違う名前が出てきた。 これでは、アーカードというサーヴァントは果たして存在するのか信用にならない。 口先だけの戯言かもしれない。 「ジナコさんってすんごぉいマジキチなんすよぉwwwwwwwww  街で突然暴れ出してwwwwww人に暴力振るおデブちゃんなんすよwwwwwwww  怖いっすねぇwwwwwカクブルですねぇwwwww  そんなジナコさんと一緒にいるれんちょんカワイソスwwwwwwwwwwww」 どうにもアサシンは悪評ばかりを悪意をもってわざと口にしている。 恐らく、バーサーカーの妄言以上に信用してはならない――そもそも、会話に内容すら込められていないはずだ。 セイバーは冷淡に言う。 「それも嘘ですね」 「嘘じゃないっすwwww嘘ついていないっすぅwwww」 やはりこれも挑発だ。会話になっていない。 しかし真玉橋は至って真面目に 「要するに、どっかにいるってことだろ?」 「そうっすwwwそれっすwwwwどこかにいるっすwwwwwww」 全然答えになっていない。 さらさら情報を漏らす気も、話をするつもりもないのだろう。 「ならマスターを探しに来たって訳か?」 「ちょwwwwおまwwwwww馬鹿?wwwwwwwwww  ねぇwwwwww馬鹿なの君?wwwwwwwwwwwwwwwww  聖杯戦争で何してるってwwwww聖杯戦争しかないっしょwwwwwwww」 念の為、セイバーは先手を打つ準備だけはしておく。 「さっきもwwwwwwwしんちゃん死んじゃいましたもんねぇwwwwwwwwwww  もしかしてwwwww君たちまだなぁんにもしてないの?wwwwww  やっぱりお馬鹿ちゃんっすかぁwwwwwwww」 まさかマスターかあるいはサーヴァントを殺した―― 違う。 これも嘘だ。何の意味もない挑発に過ぎない。 「お馬鹿チャンカチャンカチャンカwwwwwwwwww  セイバーチャンカチャンカwwwお馬鹿チャンカチャンカwwwwwww」 「聖杯戦争で何を望んでいる?」 真玉橋の問いがいかにも滑稽だとアサシンは嘲笑した。 「別に聖杯欲しくないッスwwwwwwwwどうでもいいっすwwwww  カッツェさんは真っ赤っ赤な血が見たくて堪らないのぉwwwwww  旦那もミィもジョンスりんも、みぃんなwwwwwwマジキチっすからぁwwwwwwwww  ここにいる皆そう思ってるに決まってるじゃないですかぁwwwwwwwww  だ・か・らwwwミィを召喚したったれんちょんもそうっすよぉwwwwwww」 要するに、アサシンを含んだ闘争集団が結成されているのだろうか。 アーカードとジョンスなる人物と、マスターの『れんちょん』が……? 果たしてどうか。断言できない。 やはり、これもバーサーカーの妄言同じく――無意味な対話なのだ。 「セイバーたんもそうでしょぉwwwwwwww真っ赤っ赤な血が大好きなんでしょぉwwww」 違う! と、高々叫ぶのは真玉橋であった。 「俺は女子のおっぱいと尻とパンツを求める―――とにかくエロいことをする為に聖杯戦争をするのだ!!」 「え?」 さすがのアサシンも草が生えなかった。 真玉橋考一による熱意は止まる事を知らない。 いや、もはやこうなった真玉橋がどうなるのかセイバーが承知しているのだから。 「女の体は全て正義だ、いや宝! ――しいてたとえるなら、サーヴァントの宝具に匹敵する!  俺はセイバーの濃厚なおっぱいだけで世界平和が実現できると豪語できるぜ!!」 「あの、君なに言ってんの」 話題の急変に困惑するアサシン。真玉橋は高々と問いかけた。 「だからこそ聞く! これこそ俺にとって最も重要な質問だあぁぁぁっ!!」 ◆ ◆ ◆ 「お前は! 男なのか、女なのか!! どっちなのか答えろ!!!」 ◆ ◆ ◆ 予想はできたが――真玉橋考一という人間はエロいことしか考えていない。 聖杯戦争の最中だろうが、本物のサーヴァントと対峙しようが、さらにいえば ドス黒い悪意をいくら振りかけられようとも、やはり思考の九割九分がエロで埋め尽くされていた。 セイバーは真玉橋の問いに困惑する。アサシンも口を開けたままだ。 恐る恐るセイバーが尋ねた。 「ま、マスター? 私には質問の意味がよく……」 「セイバー。あのサーヴァント……女かもしれない」 今度は一体どうしたことだろう。セイバーもさすがに理解に苦しむ。 彼女の認識としてアサシンは『男』と捉えていた。故に分からないのである。 セイバーは思うに 声は男だし、胸もないし、あの長身もやっぱり男っぽいし、奇怪なポージング……はともかく。 何をどう見てもアレは『男』だ。 馬鹿馬鹿しい話なのに、それでも真玉橋は真剣だった。 「俺も最初は男と疑ったが、見れば見るほど――『部分』ごとにエロさを感じる!!」 「えっと……」 何を隠そう、真玉橋がアサシンを見て動揺したのはコレなのだ。 彼は挑発まじりのアサシンの言葉など耳を傾けず、質問で時間を稼ぎつつ、アサシンの肉体ばかり観察をしていた。 確かに『男』っぽい。 このアサシンは『男』っぽい。のに くびれや魅力的な尻やスタイルや仕草……どことなく漂う『女』のエロさを感じる。 オカマの領域で真玉橋を惹きつける訳がない。 やはり『女』だ。『女』だけども『男』に見える。 真玉橋が説明する通り、アサシンの肉体は部分ごとに『女』の要素が散りばめられ、属にいう中性的な印象を与えていた。 『男』か『女』か。 真玉橋にとってこれより重要な命題はない。 女ならば胸を揉むし パンツの色だって拝めなければならない くびれから尻にいたる滑らかなラインを堪能しなければならない。 たとえそれが、英霊だろうとも反英霊だろうとも。要するにサーヴァントなのかは然したる問題ではない。 女ならばセクハラせずにはいられない!!! だからこそ真玉橋はアサシンの性別を問うたのだ。 セイバーは思わず溜息をついた。もはや呆れて反論しなかった。 何より、こんな馬鹿馬鹿しいマスターをあのサーヴァントはどう見るのか。 ゲラゲラと笑った。 案の定バカにしている。 嘲笑している――と思えば、アサシンはこう続けた。 「面白いっすねぇwwwwwwwwwwミィにそんなこと聞いてきたの君が初めてっすよwwww」 セイバーが予想外なアサシンの反応に困惑する中。 アサシンは愉快に問い返す。 「君の名前はなんすか?wwwwwwwwwww」 「俺か? 真玉橋考一だ」 「考一たぁんwwwwwwwwwwwww考一たんに『なぞなぞ』出したげるぅwwwwww」 「は?」 「問題wwwwジャジャンwwwwwwwwwww『男でも女でもないものってなぁんだ?』wwwwwwwww」 「男でも女でもない、だと!? そんなものある訳ないだろうが!」 「ちょっと難しかったっすかぁ?wwwwwwじゃあ考えておいてねwwwwwwwwwwww」 何もせず。ただ挑発し、嘲笑し、悪意を振りまいただけでアサシンはノイズを残し姿を消した。 肝心な性別を聞けず、真玉橋が納得する訳ない。 「セイバー!」 「瞬間移動――もしくは気配遮断でしょう。恐らく近くにはいません」 アサシンは名の通り暗殺に特化している。セイバーとの戦闘を避けたのだ。 にしては相当目立った、間抜けなアサシンではないか。 矛盾した行動にセイバーも妙だと感じた。 そもそも、気配遮断もせずここにいたからにはサーヴァントと出くわした場合の有効打を持ち合わせているはず。 さんざんセイバーを煽り、攻撃するよう誘っていた。 なのに、何故退いたのか? 「くそぉ! 性別が分からず仕舞いじゃねぇか!! どうすりゃいいんだ!」 「……」 ハタから見ればアホらしい喚きを上げる真玉橋。 しかし、セイバーはもしやと一つの可能性を口にした。 「マスター、あくまで私の見解ですが……性別など然したる問題ではありません。  多少失礼な問いかけだったかもしれませんが、性別を明かすことは何もリスクがないはずです」 性別なんてどうでもいい質問である。 胸がなかった副会長に、実は男なのかと真玉橋が問いかけた時も 多少の気まずさを持って、副会長はしぶしぶ胸がないのだと告白した。 その程度の問題のはず。 だがしかし、どういう訳かアサシンは煙に巻き、性別を明かす事なく消えた。 「性別を明かされる事が致命的になる、もしくは『男でも女でもないもの』。  それがあのアサシンの正体。そういう可能性です」 「なんだと!? オカマってことか!?」 「……私はマスターの着眼点に一目置いています」 真玉橋は不思議そうな顔をする。 セイバーでなくとも、真玉橋のどスケベ根性に厭きれることだろう。 しかし、エロに対する情熱に嘘偽りはない。 「私はアサシンを男のように感じましたが、マスターは女性らしさを感じられた。それに狂いはないという事です」 なぞなぞの問いかけ、それがアサシンの正体。 『男でも女でもないもの』 女にも見えるし、男にも見える。男のようだし、女のようでもある。 まさしく文字通りの存在。 だが、それが事実だとしたらあのアサシンは『ただ』の英霊ではない。 血や争いを好む、反英霊。反英霊にしても半ば人の理を越えた『なにか』だ。 セイバーは続ける。 「争いを好むあのアサシンの正体を暴けば、奴を止める手段になりえると思います」 アサシンの言葉通り。 その他の仲間や『れんちょん』というマスターが実在するならば 彼らの動きを、決壊しようとしている闘争のダムを固め止めることが出来るはず。 どうにかして血を流すことなく聖杯戦争を優勝するには、あのような悪意とも対峙しなくてはならないのだ。 だからこそ、ある意味ではエロで全てを賄う真玉橋は重要な存在――なのかもしれない。 「それも一理あるな。とにかく、アサシンの性別をハッキリさせるのが重要だ!  あと、マスターの『れんちょん』ってのも響きからして女じゃねぇか?」 アサシンの言葉は正直、ウェイバーのバーサーカー以上に信憑性がない。 仮に事実だとしてジナコもアーカードもジョンスなる人物も、あるいはマスターの『れんちょん』も。 アサシンのような戦闘狂、あるいは愉快犯となる。 あるいは彼らが実在したとしても、争いを好まない人物でないと断言できない。 だからこそ、今この瞬間だけはセイバーもただ信じた。 『れんちょん』というマスターが、可愛らしい女の子で争いを好まない事を…… 【B-5/住宅街/夕方】 【真玉橋孝一@健全ロボ ダイミダラー】 [状態]健康、乳のためとやる気出た [令呪]残り2画 [装備]学生服(月海原学園の制服に手を加えたもの、旧制服に酷似しているらしい) [道具]学生鞄、エロ本等のエロ目的のもの [所持金]通学に困らない程度(仕送りによる生計) [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い。救われぬ乳に救いの手を 1.マンションでウェイバーの帰宅を待つ。 2.貧乳が相手の場合、何とかする。 3.アサシン(カッツェ)の性別を明らかにさせる。 [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。正純がマスターだとは気づいていません。 ※アサシン(カッツェ)のステータスを把握しました。 【セイバー(神裂火織)@とある魔術の禁書目録】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い 1.マスター(考一)の指示に従い行動する。 2.バーサーカー(デッドプール)に関してはあまり信用しない。 3.他のマスターやサーヴァントを生かしたまま聖杯を入手する術はないか、模索する。 4.アサシン(カッツェ)を止めるべく正体を模索する。 5.聖杯戦争に意図せず参加した者に協力を求めたい。 [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。正純がマスターだとは気づいていません。 ※アサシン(カッツェ)の話したれんげたちの情報はあまり信用していません。 ※アサシン(カッツェ)は『男でも女でもないもの』が正体ではないかと考察しています。  同時に正体を看破される事はアサシン(カッツェ)にとって致命的だと推測しています。 ◆ ◆ ◆ 何故アサシンは退いたのか? 全ての挑発も嘲笑も悪意も無視し、自身を探り当てようとした真玉橋考一を警戒した為であった。 あんなエロ男子が、下らない理論を引っ提げてアサシンをどうにかできる訳がない。 どうせ暴力を駆使する。最初はそう考えたのだが―― 事実、アサシンは暴力も駆使しない少女に看破され、存在を吸収されてしまった。 馬鹿らしい、アホらしい、そんな訳がない。だが慢心し油断し、結果がサーヴァントだ。 あの時と感覚が似ているからアサシンは退いたのだ。 ◆ ◆ ◆ 改めてアサシンの行動を確認しよう。 アサシンのB-4での報酬といえば、ニンジャのアサシンとそのマスターを追いやった愉悦。 だけだった。 結果は散々である。 ルーラーと接触できたものの、NPCに対する干渉不可能を食らい。 アサシンが得意とする誘導戦術が一切使用できなくなってしまったのだから、最悪である。 悪意が通用しない真玉橋孝一との接触もアサシンにとっては不利益でしかなかった。 事実、彼らはアサシンの正体へ一歩踏み入れている。 ルーラーと真玉橋孝一を無視する訳ではない。 いづれ、どうにかするだろう。 今は『そういう気分』ではないだけで――まぁ、負け惜しみである。 現在の状態ではアサシンも満足に楽しむことはできないのだ。 ルーラーを涙目にするどころか、ジョンスたちを利用することすら叶わない。 いくらサーヴァントとマスターにはアサシンの術が通じるとは言え、その程度『祭り』は知れたもの。 キャスターと手を組もうにも、それだけではルーラーに対抗できるとは到底想像つかない。 また、一度令呪を使用されているかもしれないアーチャー(アーカード)もだ。 仮にこの三人が協定を取ったところで、ルーラーが不利となるかも定かではない。 結論を述べると、ルーラーに手札を全て奪われたアサシンに切り札はないのだ。 故にアサシンはB-4から――深見町から立ち去る事を決定した。 散々振りまいた悪意なんてどうでもいい、キャスターなんてどうでもいい。 別にアサシンは馬鹿真面目に悪意を振りまくサンタクロースではない。 徹底的に悪意を行う悪の秘密結社でもない。 遊び半分で悪意を振りまくだけの子供なのだ。 一方で苛立ちは募ってばかり。 ルーラーと悪意に耐えるセイバー・神裂火織、悪意に無関心な真玉橋孝一のせいでイライラする。 折角、真玉橋たちで苛立ちを解消しようとしたのに、これでは何も満たされない。 ツマラナイ。 誰か相手になれるのはいただろうか? 「あwwwwwジナコさぁんwwwwwwwwwwww」 そうだ。ジナコ・カリギリがいたではないか。 丁度、真玉橋孝一と影が重なる例の少女に似た口調をするあの太った女。 また彼女をいじめよう、彼女を追い詰めよう、絶望させよう。孤独にさせよう。 「……って、またジナコさぁん?」 アサシンもジナコが気に食わないとはいえ何度も追い詰めるのは厭きた。 人の不幸は好物だが、折角なら色んな不幸を味わいたい。一つの味ばかりじゃツマラナイ。 ならジナコ以外を探さなくては。 しかし、アサシンが把握している者で、B-4にいないであろう者は限定されている。 アーカード。 正しくはアーチャーと呼称するべきか。 しかし、アーカードを挑発しても彼はジョンスの命令を優先する。 いくらアサシンが彼を誘惑しても、中々うまく乗って来る事はなく、ジョンスの命令を待った。 ならば――― 「ジョンスりん?」 ジョンス・リー。 どうやら彼はアサシンへ殺意があるらしい。煽る必要も何もない。 対等の勝負をするように持ちかければ、案外思い通りになってくれるかもしれない。 そうじゃなくとも、いつぞやのガッチャマンのように自身の無力さを思い知らせ、精神をえぐり 身も心も喪失させて、ただの人間のようにしてしまうのも楽しい。 気に食わないとだけ判断してた。 ジナコほどではないが『気に入らない』と思っている。 彼がいる以上、アーカードもアサシンの意図に乗らないのだから。 第一、アーカードは『アーチャー』のサーヴァント。 単独行動のスキルを保有しているならマスターが死んでもある程度は大丈夫なはず。 あぁ、もう面倒だ。 ジョンスが邪魔ならば始末するのも一興として楽しもう。 それか あるいは または 宮内れんげ。 アサシンが『聖杯戦争』の真実をれんげに事実を告げないのは、彼女が最後の最期に取っておくデザートだからだ。 彼女がそれを知れば、どのように絶望するか想像するだけで歓喜してしまう。 人を殺さなければ村へ帰る事すら叶わない。残酷な現実に打ちのめされた彼女が、どのようになるのか期待してしまう。 純粋無垢な恋心を抱いたアーカードに殺されるか、アーカードを殺すか。 二択を選択させ、その解答をどのように下すのか。楽しみで堪らない。 他にもいくらでもある。そんな、とびきり甘美な不幸の果実だった。 あぁ、やはりまだ最後まで取っておくべきか。 「……そんなのぉ、どおでもいいんですよねぇ」 悪意は悪意を込めて、言葉を紡ぐ。 言葉には嘲笑は含まれていない。 真の意味での『悪意』しか込められていなかった。 「どっちでもいいんですよぉ、ホント。れんちょんでもいいし、ジョンスりんでもいいし……  出会った方勝ちっすねぇ。……ワラワラワラ!!!」 ただ欲を満たす為だけ。 悪意は新都へ足を戻すのだった。 【B-5/一日目/夕方】 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]魔力消費(中)、宝具にダメージ(小)、最悪の気分、NPCに対する干渉不可能、ルーラーに対する激しい怒り [装備]なし [道具]携帯電話(スマホタイプ) [思考・状況] 基本行動方針:真っ赤な真っ赤な血がみたぁい!聖杯はその次。 1.まずは苛立ちを解消させる。その対象はれんげかジョンス。 2.ジナコさんの相手はまた今度するっすwwww 3.真玉橋孝一とルーラーへの対抗策を模索する。 [備考] ※他者への成りすましにアーカード(青年ver)、ジナコ・カリギリ、野原みさえが追加されました。 ※NPCにも悪意が存在することを把握しました。扇動なども行えます ※喋り方が旧知の人物に似ているのでジナコが大嫌いです。可能ならば彼女をどん底まで叩き落としたいと考えています。 ※ジナコのフリをして彼女の悪評を広めました。 ケーキ屋の他にファミリーレストラン、ジャンクフード店、コンビニ、カラオケ店を破壊しました。 死人はいませんが、営業の再開はできないでしょう。 ※『ルーラーちゃん顔真っ赤涙目パーティ』を計画中です。今のところ、スマホとNPCを使う予定ですが、使わない可能性も十分にあります。 ※カッツェがジナコの姿で暴れているケーキ屋がヤクザ(ゴルゴ13)の向かったケーキ屋と一緒かどうかは不明です。 ※真玉橋組を把握しました。また真玉橋に悪意の増長が効きにくい為、ある程度の警戒を抱いています。 ---- |BACK||NEXT| |110:[[標的を斬る]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|112:[[スタンド・アップ・フォー・リベンジ]]| |110:[[標的を斬る]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|112:[[スタンド・アップ・フォー・リベンジ]]| |BACK|登場キャラ:[[追跡表]]|NEXT| |100:[[くだらぬ三文劇]]|[[真玉橋孝一]]&セイバー([[神裂火織]])|126:[[俺とお前はよく似てる/少年よ我に帰れ]]| |108:[[ゼア・イズ・ア・ライト]]|アサシン([[ベルク・カッツェ]])|| &link_up(▲上へ)
*シュレディンガーの性別 ◆IbPU6nWySo 『マスター……』 「あぁ、分かっている」 セイバーへの返答に対し、真玉橋は雑誌を食い入るように眺めながら独り言じみた呟きをする。 何か事態が発生した為による呼びかけではない。 セイバーはいつも通り、厭きれを抱いた呼びかけしかしなかった。 真玉橋の視線。 雑誌に載るのは――やはりというか、やっぱり女性。 女の姿しかいない。 それでも、真玉橋は至って真剣にソレを丹念に眺めているのだから、一体どうしたことかとNPCたちも困惑している。 ここはすでに学園ではなく本屋であった。 真玉橋は帰路につかず、かといってウェイバーにも接触することなく。 何故か本屋に立ち寄り、様々な女性雑誌を眺めてばかりなのだ。 あまりの真剣っぷりからか店員のNPCも茫然とするか、あるいは見知らぬフリをしている。 少々目立つからいっそ雑誌を買ってみたらどうか。 そう提案でもしようかとセイバーだが、改める。 副会長の一件は真玉橋に新たな一歩(?)を踏み入れさせた。 相も変わらずエロのみで語れる男だが、果たして彼は聖杯戦争――真の『戦争』をどうするのか? 何とかするとはいえ。まさかエロだけで何とかできるものではない。 「セイバー。帰ってからでいいんだが、後で尻を――」 『ウェイバー・ベルベットとバーサーカーとの接触はいかがなされますか?』 ようやく真玉橋は雑誌を置き、本屋から離れた。 「ウェイバーが帰って来る時間帯は大体決まってるしな。その頃に部屋尋ねるぜ」 『分かりました。相手は意味不明なバーサーカーです。用心して下さい』 奇行には用心するべきだが、妄言は耳を傾けずともよい。 挑発に含まれるものならともかく、バーサーカーらしく狂気に満ち足りた世界観を語っているだけ。 喋る空気だと済ませれば大した問題はない。 セイバーが関心を惹くのはウェイバーの方。 彼は聖杯戦争をどうする方針なのか? バーサーカーの妄言を鵜呑みにはしない。直接問うのだ。 無血の優勝を遂げるには彼の方針が重要である。 セイバーはある可能性を賭けていた。 それは――『聖杯戦争に意図せず参加した者』の存在。 彼らがわずかながらおり、聖杯戦争に困惑し、苦悩している。存在することを。 今回の聖杯戦争。 参加にはまず『ゴフェルの木片』との接触が必要。 接触した者に願いがあれば方舟までは至れる。 そして、予選を突破にするには方舟の日常そのものに違和感を覚える事、記憶を取り戻すことが条件。 予選突破に才能も何もない。 数多の魔術師たちが聖杯を賭け、参加をしたことだろう。 それでも、参加できなかった者はそれだけで終わる。 逆に、魔術師でもなんでもない『木片』に運悪く、意図せず接触し、そして参加してしまった者もいる。 結局のところ『願い』の判定に大きいも小さいもない。 『願い』に反応して参加させられたにしても、ささやかなちっぽけな『願い』を抱く者ならば 人を殺してまでその『願い』を叶えるかどうかだ。 セイバーが無血の優勝に至るのに彼らの存在が大きいのだ。 「ん?」 その時、真玉橋もセイバーもあるものと遭遇した。 奇抜な髪、独特なスーツ、映えるハイヒールと菱形の尾が揺らめく。 以上の風貌を備えた奇怪なサーヴァントが電灯の上に存在しているのだ。 やがて、そのサーヴァントも不気味な瞳を前髪の隙間から覗かせ、真玉橋たちの方へ振り返る。 セイバーは戦闘体勢を取るべく、実体化をした。 「マスター、気をつけて下さい。霊体化もせず目立つような真似……こちらを挑発しているのでしょう」 冷静に分析をするセイバーに対して「あ、あぁ」と曖昧な返答をするマスターの真玉橋。 エロの真理を追究するかの如く、女性への痴漢行為を及んでいた彼にとって初めての邂逅、そして戦闘になるこの瞬間。 多少の動揺は隠せないのだろう。 ここは先導するべきだとセイバーは意を決した。 真玉橋は「いや」と改めてセイバーを制する。 「待て、セイバー。俺はコイツに聞きたい事がある」 「話が通じる相手ならば良いのですが」 赤いバーサーカーのように全うなものでなければ話も叶わないだろう。 アサシンのサーヴァントはニタニタと笑みを浮かべ、聞かれてもいないのに答えた。 「いいっすよwwwwwミィもお話ししたいと思ってたところっすぅwwwwwwwww」 「まず一つ目だが――マスターはどこにいるんだ」 確かにマスターらしき者はどこにもいない。 首を奇怪に傾げながらアサシンは返答する。 「あっちにいるっすwwwれんちょんは『あっち』でアーカードの旦那とイチャイチャしてるっすwwwwww」 「『れんちょん』っていうのがマスターで『アーカード』は他のマスターってことか?」 「旦那は真っ赤な血が大好物なアーチャーっすよぉwwwwwwミィも大好きっすwwwww」 表現を馬鹿らしくしているが、『血』が好物だというアサシンも、アーカードと呼ばれるアーチャーも 到底、善良なサーヴァントだとは思えない。 セイバーは顔をしかめさせながら口を開いた。 「何故、そのようなサーヴァントと自身のマスターを同行させているのでしょうか?  あなたはマスターへの不安など一切していない、との解釈でよろしいですか」 「あwwwwwwwwサーセンwwwwサーセンwwwwww  ミィ、間違えちゃいましたwwwwれんちょんは『こっち』にいるっすwwwwwwwww」 わざとらしく大げさに頭を下げながら、アサシンは見当違いの方向を指差す。 「れんちょんは『こっち』でジナコさんとお昼寝してるっすwwwwwwww」 また違う名前が出てきた。 これでは、アーカードというサーヴァントは果たして存在するのか信用にならない。 口先だけの戯言かもしれない。 「ジナコさんってすんごぉいマジキチなんすよぉwwwwwwwww  街で突然暴れ出してwwwwww人に暴力振るおデブちゃんなんすよwwwwwwww  怖いっすねぇwwwwwカクブルですねぇwwwww  そんなジナコさんと一緒にいるれんちょんカワイソスwwwwwwwwwwww」 どうにもアサシンは悪評ばかりを悪意をもってわざと口にしている。 恐らく、バーサーカーの妄言以上に信用してはならない――そもそも、会話に内容すら込められていないはずだ。 セイバーは冷淡に言う。 「それも嘘ですね」 「嘘じゃないっすwwww嘘ついていないっすぅwwww」 やはりこれも挑発だ。会話になっていない。 しかし真玉橋は至って真面目に 「要するに、どっかにいるってことだろ?」 「そうっすwwwそれっすwwwwどこかにいるっすwwwwwww」 全然答えになっていない。 さらさら情報を漏らす気も、話をするつもりもないのだろう。 「ならマスターを探しに来たって訳か?」 「ちょwwwwおまwwwwww馬鹿?wwwwwwwwww  ねぇwwwwww馬鹿なの君?wwwwwwwwwwwwwwwww  聖杯戦争で何してるってwwwww聖杯戦争しかないっしょwwwwwwww」 念の為、セイバーは先手を打つ準備だけはしておく。 「さっきもwwwwwwwしんちゃん死んじゃいましたもんねぇwwwwwwwwwww  もしかしてwwwww君たちまだなぁんにもしてないの?wwwwww  やっぱりお馬鹿ちゃんっすかぁwwwwwwww」 まさかマスターかあるいはサーヴァントを殺した―― 違う。 これも嘘だ。何の意味もない挑発に過ぎない。 「お馬鹿チャンカチャンカチャンカwwwwwwwwww  セイバーチャンカチャンカwwwお馬鹿チャンカチャンカwwwwwww」 「聖杯戦争で何を望んでいる?」 真玉橋の問いがいかにも滑稽だとアサシンは嘲笑した。 「別に聖杯欲しくないッスwwwwwwwwどうでもいいっすwwwww  カッツェさんは真っ赤っ赤な血が見たくて堪らないのぉwwwwww  旦那もミィもジョンスりんも、みぃんなwwwwwwマジキチっすからぁwwwwwwwww  ここにいる皆そう思ってるに決まってるじゃないですかぁwwwwwwwww  だ・か・らwwwミィを召喚したったれんちょんもそうっすよぉwwwwwww」 要するに、アサシンを含んだ闘争集団が結成されているのだろうか。 アーカードとジョンスなる人物と、マスターの『れんちょん』が……? 果たしてどうか。断言できない。 やはり、これもバーサーカーの妄言同じく――無意味な対話なのだ。 「セイバーたんもそうでしょぉwwwwwwww真っ赤っ赤な血が大好きなんでしょぉwwww」 違う! と、高々叫ぶのは真玉橋であった。 「俺は女子のおっぱいと尻とパンツを求める―――とにかくエロいことをする為に聖杯戦争をするのだ!!」 「え?」 さすがのアサシンも草が生えなかった。 真玉橋考一による熱意は止まる事を知らない。 いや、もはやこうなった真玉橋がどうなるのかセイバーが承知しているのだから。 「女の体は全て正義だ、いや宝! ――しいてたとえるなら、サーヴァントの宝具に匹敵する!  俺はセイバーの濃厚なおっぱいだけで世界平和が実現できると豪語できるぜ!!」 「あの、君なに言ってんの」 話題の急変に困惑するアサシン。真玉橋は高々と問いかけた。 「だからこそ聞く! これこそ俺にとって最も重要な質問だあぁぁぁっ!!」 ◆ ◆ ◆ 「お前は! 男なのか、女なのか!! どっちなのか答えろ!!!」 ◆ ◆ ◆ 予想はできたが――真玉橋考一という人間はエロいことしか考えていない。 聖杯戦争の最中だろうが、本物のサーヴァントと対峙しようが、さらにいえば ドス黒い悪意をいくら振りかけられようとも、やはり思考の九割九分がエロで埋め尽くされていた。 セイバーは真玉橋の問いに困惑する。アサシンも口を開けたままだ。 恐る恐るセイバーが尋ねた。 「ま、マスター? 私には質問の意味がよく……」 「セイバー。あのサーヴァント……女かもしれない」 今度は一体どうしたことだろう。セイバーもさすがに理解に苦しむ。 彼女の認識としてアサシンは『男』と捉えていた。故に分からないのである。 セイバーは思うに 声は男だし、胸もないし、あの長身もやっぱり男っぽいし、奇怪なポージング……はともかく。 何をどう見てもアレは『男』だ。 馬鹿馬鹿しい話なのに、それでも真玉橋は真剣だった。 「俺も最初は男と疑ったが、見れば見るほど――『部分』ごとにエロさを感じる!!」 「えっと……」 何を隠そう、真玉橋がアサシンを見て動揺したのはコレなのだ。 彼は挑発まじりのアサシンの言葉など耳を傾けず、質問で時間を稼ぎつつ、アサシンの肉体ばかり観察をしていた。 確かに『男』っぽい。 このアサシンは『男』っぽい。のに くびれや魅力的な尻やスタイルや仕草……どことなく漂う『女』のエロさを感じる。 オカマの領域で真玉橋を惹きつける訳がない。 やはり『女』だ。『女』だけども『男』に見える。 真玉橋が説明する通り、アサシンの肉体は部分ごとに『女』の要素が散りばめられ、属にいう中性的な印象を与えていた。 『男』か『女』か。 真玉橋にとってこれより重要な命題はない。 女ならば胸を揉むし パンツの色だって拝めなければならない くびれから尻にいたる滑らかなラインを堪能しなければならない。 たとえそれが、英霊だろうとも反英霊だろうとも。要するにサーヴァントなのかは然したる問題ではない。 女ならばセクハラせずにはいられない!!! だからこそ真玉橋はアサシンの性別を問うたのだ。 セイバーは思わず溜息をついた。もはや呆れて反論しなかった。 何より、こんな馬鹿馬鹿しいマスターをあのサーヴァントはどう見るのか。 ゲラゲラと笑った。 案の定バカにしている。 嘲笑している――と思えば、アサシンはこう続けた。 「面白いっすねぇwwwwwwwwwwミィにそんなこと聞いてきたの君が初めてっすよwwww」 セイバーが予想外なアサシンの反応に困惑する中。 アサシンは愉快に問い返す。 「君の名前はなんすか?wwwwwwwwwww」 「俺か? 真玉橋考一だ」 「考一たぁんwwwwwwwwwwwww考一たんに『なぞなぞ』出したげるぅwwwwww」 「は?」 「問題wwwwジャジャンwwwwwwwwwww『男でも女でもないものってなぁんだ?』wwwwwwwww」 「男でも女でもない、だと!? そんなものある訳ないだろうが!」 「ちょっと難しかったっすかぁ?wwwwwwじゃあ考えておいてねwwwwwwwwwwww」 何もせず。ただ挑発し、嘲笑し、悪意を振りまいただけでアサシンはノイズを残し姿を消した。 肝心な性別を聞けず、真玉橋が納得する訳ない。 「セイバー!」 「瞬間移動――もしくは気配遮断でしょう。恐らく近くにはいません」 アサシンは名の通り暗殺に特化している。セイバーとの戦闘を避けたのだ。 にしては相当目立った、間抜けなアサシンではないか。 矛盾した行動にセイバーも妙だと感じた。 そもそも、気配遮断もせずここにいたからにはサーヴァントと出くわした場合の有効打を持ち合わせているはず。 さんざんセイバーを煽り、攻撃するよう誘っていた。 なのに、何故退いたのか? 「くそぉ! 性別が分からず仕舞いじゃねぇか!! どうすりゃいいんだ!」 「……」 ハタから見ればアホらしい喚きを上げる真玉橋。 しかし、セイバーはもしやと一つの可能性を口にした。 「マスター、あくまで私の見解ですが……性別など然したる問題ではありません。  多少失礼な問いかけだったかもしれませんが、性別を明かすことは何もリスクがないはずです」 性別なんてどうでもいい質問である。 胸がなかった副会長に、実は男なのかと真玉橋が問いかけた時も 多少の気まずさを持って、副会長はしぶしぶ胸がないのだと告白した。 その程度の問題のはず。 だがしかし、どういう訳かアサシンは煙に巻き、性別を明かす事なく消えた。 「性別を明かされる事が致命的になる、もしくは『男でも女でもないもの』。  それがあのアサシンの正体。そういう可能性です」 「なんだと!? オカマってことか!?」 「……私はマスターの着眼点に一目置いています」 真玉橋は不思議そうな顔をする。 セイバーでなくとも、真玉橋のどスケベ根性に厭きれることだろう。 しかし、エロに対する情熱に嘘偽りはない。 「私はアサシンを男のように感じましたが、マスターは女性らしさを感じられた。それに狂いはないという事です」 なぞなぞの問いかけ、それがアサシンの正体。 『男でも女でもないもの』 女にも見えるし、男にも見える。男のようだし、女のようでもある。 まさしく文字通りの存在。 だが、それが事実だとしたらあのアサシンは『ただ』の英霊ではない。 血や争いを好む、反英霊。反英霊にしても半ば人の理を越えた『なにか』だ。 セイバーは続ける。 「争いを好むあのアサシンの正体を暴けば、奴を止める手段になりえると思います」 アサシンの言葉通り。 その他の仲間や『れんちょん』というマスターが実在するならば 彼らの動きを、決壊しようとしている闘争のダムを固め止めることが出来るはず。 どうにかして血を流すことなく聖杯戦争を優勝するには、あのような悪意とも対峙しなくてはならないのだ。 だからこそ、ある意味ではエロで全てを賄う真玉橋は重要な存在――なのかもしれない。 「それも一理あるな。とにかく、アサシンの性別をハッキリさせるのが重要だ!  あと、マスターの『れんちょん』ってのも響きからして女じゃねぇか?」 アサシンの言葉は正直、ウェイバーのバーサーカー以上に信憑性がない。 仮に事実だとしてジナコもアーカードもジョンスなる人物も、あるいはマスターの『れんちょん』も。 アサシンのような戦闘狂、あるいは愉快犯となる。 あるいは彼らが実在したとしても、争いを好まない人物でないと断言できない。 だからこそ、今この瞬間だけはセイバーもただ信じた。 『れんちょん』というマスターが、可愛らしい女の子で争いを好まない事を…… 【B-5/住宅街/夕方】 【真玉橋孝一@健全ロボ ダイミダラー】 [状態]健康、乳のためとやる気出た [令呪]残り2画 [装備]学生服(月海原学園の制服に手を加えたもの、旧制服に酷似しているらしい) [道具]学生鞄、エロ本等のエロ目的のもの [所持金]通学に困らない程度(仕送りによる生計) [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い。救われぬ乳に救いの手を 1.マンションでウェイバーの帰宅を待つ。 2.貧乳が相手の場合、何とかする。 3.アサシン(カッツェ)の性別を明らかにさせる。 [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。正純がマスターだとは気づいていません。 ※アサシン(カッツェ)のステータスを把握しました。 【セイバー(神裂火織)@とある魔術の禁書目録】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い 1.マスター(考一)の指示に従い行動する。 2.バーサーカー(デッドプール)に関してはあまり信用しない。 3.他のマスターやサーヴァントを生かしたまま聖杯を入手する術はないか、模索する。 4.アサシン(カッツェ)を止めるべく正体を模索する。 5.聖杯戦争に意図せず参加した者に協力を求めたい。 [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。正純がマスターだとは気づいていません。 ※アサシン(カッツェ)の話したれんげたちの情報はあまり信用していません。 ※アサシン(カッツェ)は『男でも女でもないもの』が正体ではないかと考察しています。  同時に正体を看破される事はアサシン(カッツェ)にとって致命的だと推測しています。 ◆ ◆ ◆ 何故アサシンは退いたのか? 全ての挑発も嘲笑も悪意も無視し、自身を探り当てようとした真玉橋考一を警戒した為であった。 あんなエロ男子が、下らない理論を引っ提げてアサシンをどうにかできる訳がない。 どうせ暴力を駆使する。最初はそう考えたのだが―― 事実、アサシンは暴力も駆使しない少女に看破され、存在を吸収されてしまった。 馬鹿らしい、アホらしい、そんな訳がない。だが慢心し油断し、結果がサーヴァントだ。 あの時と感覚が似ているからアサシンは退いたのだ。 ◆ ◆ ◆ 改めてアサシンの行動を確認しよう。 アサシンのB-4での報酬といえば、ニンジャのアサシンとそのマスターを追いやった愉悦。 だけだった。 結果は散々である。 ルーラーと接触できたものの、NPCに対する干渉不可能を食らい。 アサシンが得意とする誘導戦術が一切使用できなくなってしまったのだから、最悪である。 悪意が通用しない真玉橋孝一との接触もアサシンにとっては不利益でしかなかった。 事実、彼らはアサシンの正体へ一歩踏み入れている。 ルーラーと真玉橋孝一を無視する訳ではない。 いづれ、どうにかするだろう。 今は『そういう気分』ではないだけで――まぁ、負け惜しみである。 現在の状態ではアサシンも満足に楽しむことはできないのだ。 ルーラーを涙目にするどころか、ジョンスたちを利用することすら叶わない。 いくらサーヴァントとマスターにはアサシンの術が通じるとは言え、その程度『祭り』は知れたもの。 キャスターと手を組もうにも、それだけではルーラーに対抗できるとは到底想像つかない。 また、一度令呪を使用されているかもしれないアーチャー(アーカード)もだ。 仮にこの三人が協定を取ったところで、ルーラーが不利となるかも定かではない。 結論を述べると、ルーラーに手札を全て奪われたアサシンに切り札はないのだ。 故にアサシンはB-4から――深見町から立ち去る事を決定した。 散々振りまいた悪意なんてどうでもいい、キャスターなんてどうでもいい。 別にアサシンは馬鹿真面目に悪意を振りまくサンタクロースではない。 徹底的に悪意を行う悪の秘密結社でもない。 遊び半分で悪意を振りまくだけの子供なのだ。 一方で苛立ちは募ってばかり。 ルーラーと悪意に耐えるセイバー・神裂火織、悪意に無関心な真玉橋孝一のせいでイライラする。 折角、真玉橋たちで苛立ちを解消しようとしたのに、これでは何も満たされない。 ツマラナイ。 誰か相手になれるのはいただろうか? 「あwwwwwジナコさぁんwwwwwwwwwwww」 そうだ。ジナコ・カリギリがいたではないか。 丁度、真玉橋孝一と影が重なる例の少女に似た口調をするあの太った女。 また彼女をいじめよう、彼女を追い詰めよう、絶望させよう。孤独にさせよう。 「……って、またジナコさぁん?」 アサシンもジナコが気に食わないとはいえ何度も追い詰めるのは厭きた。 人の不幸は好物だが、折角なら色んな不幸を味わいたい。一つの味ばかりじゃツマラナイ。 ならジナコ以外を探さなくては。 しかし、アサシンが把握している者で、B-4にいないであろう者は限定されている。 アーカード。 正しくはアーチャーと呼称するべきか。 しかし、アーカードを挑発しても彼はジョンスの命令を優先する。 いくらアサシンが彼を誘惑しても、中々うまく乗って来る事はなく、ジョンスの命令を待った。 ならば――― 「ジョンスりん?」 ジョンス・リー。 どうやら彼はアサシンへ殺意があるらしい。煽る必要も何もない。 対等の勝負をするように持ちかければ、案外思い通りになってくれるかもしれない。 そうじゃなくとも、いつぞやのガッチャマンのように自身の無力さを思い知らせ、精神をえぐり 身も心も喪失させて、ただの人間のようにしてしまうのも楽しい。 気に食わないとだけ判断してた。 ジナコほどではないが『気に入らない』と思っている。 彼がいる以上、アーカードもアサシンの意図に乗らないのだから。 第一、アーカードは『アーチャー』のサーヴァント。 単独行動のスキルを保有しているならマスターが死んでもある程度は大丈夫なはず。 あぁ、もう面倒だ。 ジョンスが邪魔ならば始末するのも一興として楽しもう。 それか あるいは または 宮内れんげ。 アサシンが『聖杯戦争』の真実をれんげに事実を告げないのは、彼女が最後の最期に取っておくデザートだからだ。 彼女がそれを知れば、どのように絶望するか想像するだけで歓喜してしまう。 人を殺さなければ村へ帰る事すら叶わない。残酷な現実に打ちのめされた彼女が、どのようになるのか期待してしまう。 純粋無垢な恋心を抱いたアーカードに殺されるか、アーカードを殺すか。 二択を選択させ、その解答をどのように下すのか。楽しみで堪らない。 他にもいくらでもある。そんな、とびきり甘美な不幸の果実だった。 あぁ、やはりまだ最後まで取っておくべきか。 「……そんなのぉ、どおでもいいんですよねぇ」 悪意は悪意を込めて、言葉を紡ぐ。 言葉には嘲笑は含まれていない。 真の意味での『悪意』しか込められていなかった。 「どっちでもいいんですよぉ、ホント。れんちょんでもいいし、ジョンスりんでもいいし……  出会った方勝ちっすねぇ。……ワラワラワラ!!!」 ただ欲を満たす為だけ。 悪意は新都へ足を戻すのだった。 【B-5/一日目/夕方】 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]魔力消費(中)、宝具にダメージ(小)、最悪の気分、NPCに対する干渉不可能、ルーラーに対する激しい怒り [装備]なし [道具]携帯電話(スマホタイプ) [思考・状況] 基本行動方針:真っ赤な真っ赤な血がみたぁい!聖杯はその次。 1.まずは苛立ちを解消させる。その対象はれんげかジョンス。 2.ジナコさんの相手はまた今度するっすwwww 3.真玉橋孝一とルーラーへの対抗策を模索する。 [備考] ※他者への成りすましにアーカード(青年ver)、ジナコ・カリギリ、野原みさえが追加されました。 ※NPCにも悪意が存在することを把握しました。扇動なども行えます ※喋り方が旧知の人物に似ているのでジナコが大嫌いです。可能ならば彼女をどん底まで叩き落としたいと考えています。 ※ジナコのフリをして彼女の悪評を広めました。 ケーキ屋の他にファミリーレストラン、ジャンクフード店、コンビニ、カラオケ店を破壊しました。 死人はいませんが、営業の再開はできないでしょう。 ※『ルーラーちゃん顔真っ赤涙目パーティ』を計画中です。今のところ、スマホとNPCを使う予定ですが、使わない可能性も十分にあります。 ※カッツェがジナコの姿で暴れているケーキ屋がヤクザ(ゴルゴ13)の向かったケーキ屋と一緒かどうかは不明です。 ※真玉橋組を把握しました。また真玉橋に悪意の増長が効きにくい為、ある程度の警戒を抱いています。 ---- |BACK||NEXT| |110:[[標的を斬る]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|112:[[スタンド・アップ・フォー・リベンジ]]| |110:[[標的を斬る]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|112:[[スタンド・アップ・フォー・リベンジ]]| |BACK|登場キャラ:[[追跡表]]|NEXT| |100:[[くだらぬ三文劇]]|[[真玉橋孝一]]&セイバー([[神裂火織]])|126:[[俺とお前はよく似てる/少年よ我に帰れ]]| |108:[[ゼア・イズ・ア・ライト]]|アサシン([[ベルク・カッツェ]])|131:[[悪意の所在]]| &link_up(▲上へ)

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