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エミヤの霊圧が……消えた……?」(2014/11/30 (日) 15:19:36) の最新版変更点

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*エミヤの霊圧が……消えた……? ◆OSPfO9RMfA 【C-8】  アーチャーのサーヴァント、エミヤシロウは己のマスター、衛宮切嗣を抱えてビルの屋上を移動していた。  先ほどの戦場、図書館から離れたビルを選ぶと、そこに腰を落ち着かせることにした。場所はC-8の北西。ちょうど真西に橋がある位置だ。  エミヤは切嗣を物陰に隠すようにして寝かせる。  移動中の姿を他の主従に見られ、狙撃され無いとも限らないからだ。  エミヤ自身も多少の傷は負っているが、霊体化して休む余裕はない。先の戦闘で気を失った切嗣が覚醒するまで、実体化したまま見張りを続けることにする。 「(……少し、情報を整理するか)」  図書館に着いてから連戦が続き、それに伴い確認済みのサーヴァントも増えた。サーヴァントと戦う者の努めとして、敵対するサーヴァントの情報を整理するのは当然の仕事だ。  一騎目、貴婦人のランサー。早朝、主従伴って屋外で食事をしていたランサーだ。切嗣が図書館で調べたところ、まだまだ情報不足とのことだ。  二騎目、爆弾魔のアサシン。午前、ホームセンターで遭遇した猫人のサーヴァントだ。ステータス隠匿や気配遮断に優れることからアサシンと推測。手に触れた物を爆弾に変える能力を持つ。マスターがサーヴァントと余りにも距離を取りたがらないことに疑問を感じる。こちらも真名の特定はできなかったのこと。  三騎目、ロトのサーヴァント。午後、切嗣が図書館で検索している間、図書館前で戦闘していたサーヴァントの一騎。その剣の刀身に記された文字から『ロト』が読み取れた。エミヤの知る最強のセイバー、アルトリアに匹敵する剣技、宝具、戦闘力などから、勇者の始祖、ロト本人と推測する。そこまで分かっているが、残念ながら、情報検索は行えていない。  四騎目、朱のサーヴァント。ロトのセイバーと交戦していたサーヴァント。脅威的な再生能力を誇り、無数の魔を使役する。後に自身も交戦。頭を破壊してもすぐに再生したときはさすがに驚愕した。魔の使役からキャスターを予想したが、奴は自身が放った十六の矢を一つ残らず二丁拳銃で撃ち落とした。その腕前からアーチャーの可能性も考えられる……剣を扱うアーチャーの自分が言えた口ではないが。切嗣が『死徒』ではないかと疑い、妙な拘りを見せている。無理をするようなら止めに入った方が良いだろう。  五騎目、仮面のバーサーカー。夕方、B-9にて二騎のサーヴァントが交戦しているのを見て、好機の瞬間に狙撃。仮面のバーサーカーはこちらに対象を変え、迎撃してきた。黒刀を投げつけてきたので、それを肩で受け、トレースした。情報を得たのでそこで撤退。斬魄刀を用いる死神。真名を探るに十分な情報があるが、未だ情報検索を行えていない。  六騎目、ロボット乗りのサーヴァント。仮面のバーサーカーと交戦していたサーヴァント。4mほどのロボットに乗る。観察した時には既に戦闘の途中で、また、不意打ちの好機が早く訪れたため、あまり観察できていない。ただ、あの不意打ちの矢は確実に当たったはずだ。外すはずがない。だと言うのに、無傷で健在しているのが確認できた。何らかのスキルか宝具か。仮面のバーサーカーが迎撃してきたので、詳しく確認する余裕はなかった。情報はかなり不足している。 「(自身を除けば二十七騎。うち六騎を確認か)」  本来の七騎で行う聖杯戦争であればこれで終わりなのに、あと二十一騎も存在する。なかなか難儀な話である。  だが、彼を知り己を知れば百戦殆うからず。情報収集は依然として必要だ。 「(これぐらいか。あとは見張りに専念……む)」  見覚えのある影が視界に入る。  仮面のバーサーカー。彼は実体化したまま、ビルの屋上を駆けていた。 「(バーサーカーが実体化したまま移動? 何をしている?)」  自身の体を物陰に隠しながら、バーサーカーの様子を伺う。  既にこちらの射程範囲内の距離で、しかし相手の射程距離外だ。攻撃をすれば、確実に先手が取れる。  だが、今はマスターの切嗣が気絶中だ。できれば戦闘を起こしたくない。  この場はやり過ごし、観察に努めよう。  そう判断する。  しかし―― 「――ッ!?」  バーサーカーは少しの間だけ足を止めると、駆ける方向を変えた。  エミヤの居るビルに向けて、真っ直ぐへと。 「(こちらの場所がバレた?! どうやって!? いや、今は後だ!)」  黒塗りの弓を手にし、無銘の剣を射る。  しかし、バーサーカーは姿をかき消すほどの速度でビルの隙間に逃げた。  障害物が多く、射線が通らず、目視もできない。  だが、奴が近づいてくるのだけは分かる。 「(マスターを連れて撤退……いや、無理だ。あの速度なら追いつかれる! 迎撃してマスターから距離を離すしかない!!)」  干将・莫耶をその手に投影し、身構える。このビルその物が破壊されたり、切嗣が直接狙うケースも警戒する。  そして気配を感じ振り向く。  背後に、バーサーカーはいた。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「ちっ!」  バーサーカーは右腕を伸ばし、掴みかかってきた。  それを干将で切り払い、莫耶で脇腹を狙う。  しかし―― 「ぐあっ――!?」  干将は半ばまで食い込んだところで腕が超速再生し、力の運動を止めてしまう。莫耶も根本まで刺さらず、怯みもしない。  対するバーサーカーの腕はエミヤの喉を掴み、強く圧迫する。  ならば霊核を狙うのみ。抜く間も惜しい双剣を手放し、再度その手に干将・莫耶を投影する。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「がっ!?!」  だが、それよりも速く、バーサーカーの拳がエミヤの顔を打ち抜いた。  一瞬で意識を刈り取られ、気を失う。干将・莫耶が魔力として霧散する。 「がああああああぁっっっ!!!?」  それも、束の間。  バーサーカーの足が、エミヤの右足の甲を踏み砕いた。その痛みで覚醒する。 「■■■■■■■■■■――――!!!」  バーサーカーは吼えると、エミヤを放り投げた。 ◆  黒崎一護は狂化により理性と言語能力を喪失している。  そして保有スキル:完全虚化によって自我も消失している。  残っているのは、美遊・エーデルフェルトを護るという意思のみ。  だが、それもままならない。  令呪で《B-4に存在するサーヴァントを殺せ》と命じられたからだ。  美遊は今はC-9にいる。側にいなければ護ってやることができない。  彼女もB-4に連れて行く方法もあったが、その時対峙していた主従がそれを許さないであろう。  だから、一護にできることは、できるだけ速くその命令を済ませ、一刻も早く美遊の元に戻ることだった。  実体化したままビルの屋上を駆ける。真っ直ぐB-4に向かう。  その途中、見知った霊圧を感じた。  エミヤだ。  兄でありながら、兄の役割を放棄した男だ。  許せない。  一片たりとも存在を認めない。  消し炭にしてもなお事足りない。  それは憎しみのごとく、怒りをかき立てる。  本来守護のスキルにより、戦わぬ者に対しては襲うことはできない。  ならば許すか? 否だ。この男を許せば、己の兄としての尊厳も失う。  まるで異教徒に対するイスカリオテのごとく、奴を殲滅せよと心が叫ぶ。  令呪の命にも逆らい、そちらへ向かおうとする。  だが、令呪は一護を縛る。即刻B-4のサーヴァントを殺せと。  一護は抗う。エミヤを殺したい、と。  足が止まる。  一護の中で、令呪の命と己の狂気が反発し、混ざり合う。  そして令呪か、バーサーカーか、どちらとも言えぬ悪魔のような囁きが、脳裏を走る。  ――ナラ アイツ ヲ B-4 デ 殺セバ イイジャナイカ  令呪と狂気が歯車のように噛み合う。  仮面の下で唇を釣り上げ、エミヤに向けて駆け出した。 ◆ 【C-7】 「(私を投げ飛ばした……マスターと距離を取らせるためか!?)」  空中に放り投げられながら、エミヤは思案する。  “マスターからサーヴァントを引きはがす”。  エミヤはバーサーカーの戦法をそう判断した。エミヤとしては有り難くもあり、また危惧を抱いていた。  気絶中の切嗣から戦線を遠ざけるのは、エミヤとしては願ったり叶ったりだ。だが、相手のマスターの所在が知れない。相手のマスターが、切嗣に接触してなんらかの行為をしないとも限らない。令呪を使わせるなどの手段を取るかもしれない。  バーサーカーからあえて距離を取る手段を選んだのだ。その可能性は十分にありうる。  通常時であれば、適度にバーサーカーと距離を取った後、令呪を使ってエミヤを呼び戻せばいい。だが、切嗣が気を失ってるため、それができない。  戦闘をしながら敏捷性に勝るバーサーカーを撒き、バーサーカーより速く切嗣の元に戻らねばならない。  まずはこの宙を浮く状況を打破しなければならない。  地を踏みしめられない宙は得手ではなく、対するバーサーカーは宙を駆けることもできる。  ならば、地を踏むのが第一歩だ。 「――――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う)」  言葉自体には意味のない、精神統一のための呪文を口ずさむ。  右手に投影したのは、鎖付きの短剣。かの冬木市の聖杯戦争でライダーが使っていた武器だ。短剣を投げ、橋の中央に刺す。  そこを支点とし、孤を描くように着地する。川の対岸まで飛ばされるとすら思えたエミヤの身体は、橋の半ばほどで落ちた。 「■■■■■■■■■■――――!!!」  バーサーカーは人目を憚ることなく吼え、道路を走る車を踏みながらエミヤを追う。先ほどの戦いから学んだのか、空を一直線に駆けてはこない。  エミヤは役目を果たした短剣を放り、弓を番える。バーサーカーを無銘の剣で射るが、斬魄刀によってことくごとく弾かれる。『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』は橋が破壊されるおそれがあるので、できれば使いたくない。 「(斬魄刀が使えないわけではない。先ほど素手で投げたのは、やはり、マスターとの距離を離すのが目的か)」  エミヤはそう判断する。  ならば尚のこと、無防備な切嗣を護るため、直ぐにでも戻る必要がある。  だが、敏捷性では勝るバーサーカーを直線距離で振り切ることはできない。さらに、右足の甲をバーサーカーに砕かれ、移動力が激減している。 「(撒くには場所を変える必要があるな)」  橋を渡って深山町まで行けば、新都ほどではないものの、コンクリートジャングルと化したビル街がある。足の遅さをカバーするためには、地の利を生かすしかない。  一端は自主的に切嗣から遠ざかることになるが、急がば回れだ。最短距離だけが最適解ではない。  エミヤはバーサーカーから背を向け、深山町の方へ駆け出した。 ◆ 【B-6】  深山町のビル街の北部、B-6で二騎のサーヴァントが舞う。  日はまだ落ちておらず、人通りも多い。音速で戦う二騎の姿を、何十と言うNPCが見たであろう。  神秘を隠匿すべき聖杯戦争ではないが、人前での戦闘は愚考である。己の姿を、技を、宝具を人前に晒すことになり、それは人伝に他の主従にも伝わるだろう。  だが、バーサーカーにそのデメリットを説き、戦闘を中断させるのは無意味だ。  それを考慮するだけの理性が残っていれば、そもそも白昼堂々攻撃はしてこまい。  しかし、霊体化して逃げるのもいくつか問題がある。  霊体化は現界に必要な魔力消費を少なくし、物質への干渉を極力減らす。それでも、完全に無敵になるわけではない。宝具によっては霊体化した状態のサーヴァントを攻撃することも可能であり、その逆は存在しない。防御すらできず、一方的にやられるのみだ。  そして、霊体化は一瞬ではできない。戦闘中にあからさまな隙を見せるのは自殺行為でしかない。  バーサーカーの猛撃は、エミヤに霊体化する隙すら与えなかった。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「しつこい! どこまで追ってくるつもりだ!!」  愚痴を口に出しながら、刀身がピンク色のシャムシールを振るう。  バーサーカーの動きは変わることなく、斬魄刀で襲いかかる。シャムシールで受け流すと、刀身が飴細工のごとく粉々になった。 「これもダメか」  今散ったシャムシールは、誘惑の剣という、相手を混乱させる効果を持つ剣だ。しかし、やはりと言うべきか、宝具ですらないそれはバーサーカーには効果を発揮しなかった。  光を屈折させ、音波を放ち、闇に紛れ、魔力を散らせ、五感を狂わせる。  エミヤはあの手この手を使い、バーサーカーから逃れようとする。  だが、バーサーカーはしつこく付きまとう。  現時点で、エミヤは多くの点で不利だ。  スペックを比較すると、バーサーカーの方が大きく上回っている。  エミヤは右足の甲を砕かれ、距離を取ったり、逃亡する為の機動力を封じられている。  バーサーカーはエミヤの霊圧を感知し、エミヤはそれに対する対抗策を知らない。  バーサーカーは強力な再生能力を持ち、魔力の限り負傷することはない。  唯一エミヤが勝ってる点、それは保有魔力の量。  エミヤは多数の剣を投影しているが、そのどれもが魔力消費が多い物ではなく、依然としてその身に魔力を十分に確保している。いざとなれば、気絶中の切嗣から吸い上げることも可能だ。  対するバーサーカーは、現界するだけで多大の魔力を消費し、戦闘により、さらに魔力を消費している。本来は美遊とカレイドステッキ・サファイアによって魔力を補われているが、今はそれができない状況にある。美遊の身を案じるバーサーカーは、現界と戦闘に消費する魔力を、己の身から優先的に消費させている。  故に、戦闘を長引かせるほど、エミヤの有利に傾く。加えて、バーサーカーはB-4でエミヤを殺すつもりであり、四肢を狙うばかりで霊核を狙わない。  また、マスターの美遊は現在無力化されており、切嗣を狙う事もない。それどころか、バーサーカーも、美遊も、切嗣の存在には気付いていない。  勿論、他の主従に襲われる可能性はあるが、今の所は切嗣を狙う者は居ない。  その為、現状を維持する事がバーサーカー撃退の最適解であり、今現在、バーサーカーも決して有利な状況とは言えない。  だが、それはあくまで神の視点によるもの。  エミヤは知る由もなく、一刻も早く切嗣の元に戻るために、焦りを感じていた。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「ぐあぁっ!!」  バーサーカーの足がエミヤの腹部に入り、ビルへと蹴り飛ばされる。ガラスを割り、フロアに入る。  良いことと悪いことが重なった。  良いことは、そのビルが廃ビルであったこと。人気はなく、NPCに被害が出なかったこと。  悪いこと、それは――その廃ビルが、暁美ほむらが作った陣地だと言うこと。  ――ワイヤーが引かれ、無数の銃火器が、エミヤに向けられて火を噴く。 「トレース、オン!!」  それはもはや反射だった。エミヤは無意識のうちに、四本の大剣を自身の四方に投影し、さらに強化も施す。魔力を少量込めた程度の弾丸は、大剣の前にむなしく弾かれた。 「まさか、こんな罠があるとはな」  大剣を解除し、深く息をつく。  それは、全くの偶然。  バーサーカーが暁美ほむらの仕掛けた罠を知るはずもない。たまたま、エミヤを飛ばした方向に、その廃ビルがあったと言うこと。  だが、エミヤはそうとは考えない。 「誘い込まれたわけか――」  バーサーカーは当然、この罠を知っていて誘い込んだと考える。  サーヴァントを殺すには稚拙な罠だとか、バーサーカーが何故この罠を仕掛けたのかとか、そこまで深く考える前に、一つの推測がよぎる。 「――なるほど。“私をマスターから引き離す”のが目的ではなく、“私をどこかに誘い込む”のが目的なのだな」  急所を狙わぬ戦い方。エミヤを逃がさぬように追い詰める戦法。引き離すには余りにも離れた距離。  感じていた違和感を理解した。 「ならば――」 「■■■■■■■■■■――――!!!」  バーサーカーが吼えながら、廃ビルに入る。斬魄刀を振り上げ、エミヤに迫り――  ――二騎のサーヴァントは、忽然と消えた。 ◆ 【?-?】  そこは、荒野だった。  地には無数の剣が大地に突き刺さり、空には回転する歯車。  地平線すら見え、赤き大地が無限に続くとすら思えた。  ビル街から場所が急転し、エミヤを見失ったバーサーカーは辺りを見回す。 「ここは私の固有結界」  エミヤの言葉に、バーサーカーは振り向く。  エミヤは燃えさかる炎を背に立っていた。  ――無限の剣製(Unlimited Blade Works)。  ここは、エミヤの心象風景で塗りつぶされた世界。  結界により外界から隔離されたこの地に、B-4などという地区は存在しない。 「私を倒さぬ限り、この地からは出られんぞ。どうする、バーサーカー?」  エミヤが一振りの剣を抜き、バーサーカーに突きつける。 「■■■■■■■■■■――――!!!」  バーサーカーが吼え、斬魄刀を振り上げ地を駆ける。  エミヤは剣を煌めかせた。  斬魄刀を手にしたバーサーカーの腕が宙を舞う。  エミヤの抜いた剣は、ただの剣ではない。  それは、人の手によって作られた。  それは、伝説の金属でできていた。  それは、ありとあらゆる魔を切り裂いた。  それは、魔を打ち払う最強の剣。  刀身に刻まれた『DRAGON QUEST』の意匠――  ――『王者の剣(ソード・オブ・ロト)』 「行くぞ、バーサーカー!!」 「■■■■■■■■■■――――!!!」  バーサーカーは即座に腕を再生し、斬魄刀を呼び寄せる。  二騎のサーヴァントが、荒野を駆け抜けた。 ◆ 【固有結界――無限の剣製――】  エミヤは王者の剣から剣技を吸い上げる。あらゆる魔と戦ったロトの剣技を模倣する。  バーサーカーは四肢を狙い、戦闘力を削ぐ戦法を止める。B-4への輸送を諦め、結界から脱出するために殺しに掛かる。  観客の居ない戦場で、二騎は激しく交差する。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「くっ……!!」  バーサーカーの斬魄刀を、エミヤは受け流した。エミヤのいた場所を刀が通り、荒野を抉る。  バーサーカーの力は強く、エミヤは振るわれた刀を“受け止める”ことができなかった。故に、力の向きを変え、“受け流す”ことで回避する。その為には体捌きも必要だ。自身の体も動かし、刀を外す。  だが、ここでもまた、右足の甲の傷がエミヤの足を引っ張る。  満足でないその足は余計な労力を使わせ、エミヤの身から魔力を削ぐ。  一方、バーサーカーは戦闘続行スキルは無い物の、超速再生スキルによって負傷を無くも同然の戦いが可能となる。  さらに、バーサーカーのスタンスが“B-4まで生かして運ぶ”から“即座に殺す”に変わったため、攻撃は以前より苛烈なものとなった。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「はあぁっ!!」  王者の剣はバーサーカーの身体を容易く切り裂く。だが、切り裂いている間は王者の剣が使えないと言うことでもある。  肉を切って骨を断つ。バーサーカーが魔力の大量消費を覚悟でその戦法に出たとき、エミヤは防戦に回るしかなかった。  技量を塗りつぶす、純粋な力の差を改めて思い知らされる。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「がっ……!」  二十七回目の刃の交差で、戦況が大きく動く。  受け流し損ねたバーサーカーの斬魄刀が、エミヤの右足首を切り落とした。  エミヤは転がって距離を取り、片膝立ちになる。足首を失っては立つことも回避することも難しい。 「■■■■■■■■■■――――!!!」 「こうなれば……」  バーサーカーが雄叫びをあげながら迫り来る。  エミヤはバーサーカーの上空を囲うように、剣を投影する。その数、十九本。バーサーカーのインファイトにより、自身への誤射を恐れて使わなかったそれを、解放する。  近距離の『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』で自身にも被害が及ぼうとも、下手すれば相打ちになろうとも、勝つためにはこれしかない。 「行けっ!!!」  覚悟を決め、一斉掃射する。 「■■■■■■■■■■――――!!!」  バーサーカーが斬魄刀を振り下ろす。  ――エミヤの霊圧が、消えた。 ◆ 【B-6】  B-6に存在する廃ビルのワンフロアに、突如バーサーカーが出現する。  見覚えのある風景に、バーサーカーは理解する。  固有結界が解除されたのだと。  だが、令呪の効力が消え去ったわけではない。  投影された剣が刺さることはなかったが、エミヤとの戦闘で多大の魔力を消費してしまった。  これ以上の戦闘は、美遊からも魔力を補う必要があるかもしれない。  最後の太刀でエミヤを切った感触は無かった。  何らかの方法で逃げおおせたのだろう。  奴だけはいずれ滅ぼす必要がある。  だが、今は令呪の命令が身を強く縛る。エミヤを探しに行くのは困難だ。  バーサーカーはB-4へと駆けていった。 【B-6/市街地/一日目 夕方】 【バーサーカー(黒崎一護)@BLEACH】 [状態]健康、エミヤへの激しい怒り、魔力消費(大) [装備]斬魄刀 [道具]不明 [所持金]無し [思考・状況] 基本行動方針:美遊を守る 1.令呪・《B-4に存在するサーヴァントを殺す》 2.1を果たし速やかに美遊の元へ戻る 3.エミヤは殺す。 [備考] ※エミヤの霊圧を認識しました ※白昼堂々戦闘を行いました。バーサーカー(黒崎一護)が多数のNPCによって目撃されています。また、ビルや橋、車などが一部破壊されました。その情報がどのように流布されるか、ルーラーがペナルティを与えるか否かは、次の書き手に任せます。 ◆ 【C-8】 「『飛べ、アーチャー』」  切嗣の令呪が煌めき、一画が消失する。  令呪の効力により、エミヤは空間を『飛んで』切嗣の元に現れた。  切嗣は頭を抱えながら、傷を負ったエミヤを見て眉をひそめる。 「すまない、マスター。令呪を使わせてしまった」 「待ってくれ。まだ頭がはっきりしないんだ。少しずつ、事情を説明してくれ」  切嗣は覚醒してまもなく、念話でエミヤに令呪による命令を指示された。  あまり意識がはっきりしていない状況だったが、その指示の必死さに、理由を聞かずに従った。  切嗣からしてみれば、自身がどれだけ眠っていたか、エミヤの傷は朱のサーヴァントに付けられたものなのか、それすらわからない。 「あぁ、わかった。だが、一度ここを離れよう。移動しながら説明する」 「頼んだ」  エミヤは切嗣を抱えると、片足でビルの屋上を跳ぶ。  それはバーサーカーとの再会を恐れ、東の方角であった。 【C-8(東)/ビル屋上/一日目 夕方】 【衛宮切嗣@Fate/Zero】 [状態]健康、毛細血管断裂(中)、腹部にダメージ(中)、軽い目眩(直に回復) [令呪]残り二角 [装備]キャリコ、コンテンダー、起源弾 [道具]地図(借り物) [所持金]豊富、ただし今所持しているのは資材調達に必要な分+α [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を勝ち取り、恒久的な平和の実現を 0.アーチャー(エミヤシロウ)から気絶中の出来事を聞く。 1.使えそうなNPC、および資材の確保のため街を探索する。 2.昼を回ったら暗示をかけたNPCに連絡を取り、報告を受ける。 3.B-4で起きるであろう戦闘を監視する。 [備考] ※この街のNPCの幾人かは既に洗脳済みであり、特に学園には多くいると判断しています。 ※NPCを操り戦闘に参加させた場合、逆にNPCを操った側にペナルティが課せられるのではないかと考えています。 ※この聖杯戦争での役割は『休暇中のフリーランスの傭兵』となっています。 ※搬入業者3人に暗示をかけ月海原学園に向かわせました。昼食を学園でとりつつ、情報収集を行うでしょう。暗示を受けた3人は遠坂時臣という名を聞くと催眠状態になり質問に正直に答えます。 ※今まで得た情報を基に、アサシン(吉良)とランサー(エリザ)について図書館で調べました。しかし真名まではたどり着いていません。 ※アーチャー(エミヤシロウ)については候補となる英霊をかなり絞り込みました。その中には無銘(の基になった人)も居ます。 ※アーチャー(アーカード)のパラメーターを確認しました。 ※アーカードを死徒ではないかと推測しています。そして、そのことにより本人すら気づいていない小さな焦りを感じています。この焦りが今も続いているかどうかは不明です。 【アーチャー(エミヤシロウ)@Fate/Stay night】 [状態]右腕負傷(小)、右肩負傷(小)、左足と脇腹に銃創(小)、魔力消費(中)、右足首消失、腹部に打撲 [装備]実体化した時のための普段着(家主から失敬してきた) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:切嗣の方針に従い、聖杯が汚れていた場合破壊を 0.今はこの場から離れ、切嗣に状況を報告する。 1.出来れば切嗣とエミヤシロウの関係を知られたくない。 [備考] ※岸波白野、ランサー(エリザ)を視認しました。 ※エリザについては竜の血が入っているのではないか、と推測しましたが確証はありません。 ※『殺意の女王(キラークイーン)』が触れて爆弾化したものを解析すればそうと判別できます。ただしアーチャーが直接触れなければわかりません。 ※右腕、左足、脇腹、腹部は軽傷であり、霊体化して魔力供給を受けていれば短時間で完治する程度のものです。 ※右足首は消失しており、霊体化して魔力供給を受けても、短時間で完治しません。完治には適切な治療か、多大な魔力、もしくは長時間の休養が必要です。 ※キリコを『ロボットに乗る』『何らかの手段で攻撃を無効化する』と認識しました。 ※ルリ、美遊についての認識していません。 ※黒崎一護は『何らかの手段でエミヤを感知する』『エミヤをどこかへ連れて行こうとしていた』と認識しました。 ※白昼堂々戦闘を行いました。アーチャー(エミヤシロウ)が多数のNPCによって目撃されています。また、ビルや橋、車などが一部破壊されました。その情報がどのように流布されるか、ルーラーがペナルティを与えるか否かは、次の書き手に任せます。 [共通備考] ※C-7にある民家を拠点にしました。 ※家主であるNPCには、親戚として居候していると暗示をかけています。 ※吉良吉影の姿と宝具『殺意の女王(キラークイーン)』の外観のみ確認しました。宝具は触れたものを爆弾にする効果で、恐らくアサシンだろうと推察していますが、吉良がマスターでキラークイーンがサーヴァントだと勘違い。ただし吉良の振る舞いには強い疑念をもっています。 ※黒崎一護を『仮面をつけた』『黒刀の斬魄刀を所持する』『死神』と認識しました。 ※レンタカーは図書館付近の駐車場に停車してあります。 ※B-6の暁美ほむらが仕掛けた罠は使用されました。

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