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*第一回定時通達 ◆5fHSvmGkKQ 『――この『月を望む聖杯戦争』に参加しているマスター並びにサーヴァントの皆さま、こんにちは。  本来の記憶を取り戻し、令呪を宿し、サーヴァントとの契約を果たしてから幾日か経過している方もいると思います。  このたび予選期間が終了し“本選”へと進むマスターが確定したため、本日より定時通達を執り行うこととなりました。  今回の通達は私、カレン・オルテンシアが担当いたします。よろしくお願いします』 『既に聖杯から与えられた知識の中にもあったかと思いますが、通達は毎日正午12時に行われます。  なおこの通達は念話を用いていますが、遠隔及び多数同時に行っているため、非常に途切れやすいものとなっています。  しっかりと聞きたければ、せいぜい集中して耳を傾けられる環境を事前に整えておくことです』 『もし聞き漏らしなどがあった場合、可能ならば教会で対応いたしましょう。  もっとも私もルーラーも出払っているという場合もありますので、その際はあしからず。  また正午の段階での残存するマスターおよびサーヴァントの数に関するデータについては、検索施設からアクセスすることも可能です。  そちらではサーヴァントのクラスごとの数についても『方舟』によって公開されていますので、詳しく知りたい方はそちらへどうぞ』 『現時点で生存しているマスターは“28人”です』 『さて、改めて確認しますが、この聖杯戦争において“大量無差別に一般NPCを襲うこと”は禁則事項です。  全体への通達なので詳細は伏せますが、B-4地域にて重大なルール違反を行った方へ。  この通達をもって“警告”と致します。改善が見られない場合、次回は即刻ペナルティの付与を行うこともありますので、  自分の身の振り方を考えることね』 『そしてもう1点。たとえNPCを直接殺害等はしなかったとしても、  “この冬木の街の日常を著しく脅かすこととなる場合”、処罰の対象となる可能性があることをお伝えしておきます。  心当たりのある者は、以後それらを念頭に置くように』 『定時通達は以上です。  それでは明日の正午まできちんと生きていましたら、また』 ◆◆◆ 正午。教会の聖堂にて。 今この場にいるのは、監督役たるカレン・オルテンシアとルーラーのサーヴァント――ジャンヌ・ダルクの二人のみである。 あたかも見えない信徒に対して説法を行うかのように、祭壇に立っているカレン。 彼女の「定時通達」が終わったとみてジャンヌは各参加者とのパスを切り、カレンへと声をかけた。 「……ありがとうございました、カレン」 もともと通達はルーラー自身で行う予定であったのだが、カレンの強い勧めがあって、役割を交代していた。 二人での相談の結果、今回の通達ではB-4地域でのルール違反に対しての“警告”を盛り込むこととなったが、 違反の詳細が掴めていない現状で、ジャンヌがカレンほどに堂々と「ハッタリ」をかますことができるかというと若干の懸念があった。 もちろん役目である以上、職務に対して誠実にあたる心持も実力もジャンヌにはあるが、 中華飯店での岸波白野の問いがまだ尾を引いていたこともあって、カレンの申し出はジャンヌにとって正直なところありがたいものであった。 「いえ、お気になさらず。私自身通達をやってみたかったというのもありますので。  序盤から派手に立ち回っているのもいますが、そうでなくとも水面下ではみな動き始めています。  私の通達を経て、今後参加者たちはどう動いていくのか、  この聖杯戦争がどんな混沌とした様相を呈していくのか……想像すると実に楽しみです」 そう、神の信徒たるシスターには似つかわしくない嗜虐的な笑みを浮かべながら、カレンは言った。 ジャンヌは若干反応に困ったが、さほど間を置かずにカレンの表情が真顔に切り替わる。 裁定者の役割は、定時通達のほかにもまだまだたくさんある。そのことはカレン自身も理解しているのだろう。 「さて、通達も終えたところですし、これからどうします?  『泰山』で話した通り、私も現地へ赴いてみましょうか?」 カレンの反応を通して事件の真相を探る。 が、その条件は特殊でばらつきが激しい。カレン自身が言ったように、今回の件に対してカレンの体が反応するとは限らない。 闇雲に調査に臨んでは、先ほどと同じく徒労に終わる可能性が高い。 「『啓示』にあったマンション周辺で、異常は特に見受けられなかった。  NPC達の間で騒ぎ(エラー)や停滞(フリーズ)などが起きている様子もない。そうですね、ルーラー?」 「ええ。あくまで私の目で見た限りで、ではありますが」 ほんの一瞬ジャンヌの脳裏をよぎった弱気な考えが、顔に出てしまったのだろうか。 カレンは祭壇からおもむろに移動しながら、再度ルーラーに調査結果を確認した。 「……人の判断というものにはあいまいな部分があり、ある程度の“異常”は許容できるものです。  たとえヒトの常識から外れた『神秘』や本物の『魔』を目の当たりにしたとしても、  “気のせいだ”、“疲れていたのだろう”、“ただの幻覚ではないか”。  そんな風に考えたりして、異変も矛盾も看過してそのまま日常へと回帰することもできます。  それは『方舟』によって一般NPCとして再現されたデータであったとしても同様です」 「…………」 かつんかつんと静謐な聖堂に響いていたカレンの足音が、沈黙しているジャンヌの前で止まる。 「しかし閾値というものは存在します。  “NPC達の常識(ルーチン)で処理できる範疇を超える場合、その行為はこの聖杯戦争における規則違反であると見なされる”。  NPCの大量殺戮が禁止されているのも、聖杯戦争の舞台を維持する上で必要だからでもありましたね」 この『月を望む聖杯戦争』の参加者の中には、暗示や洗脳、その他の方法でNPCの思考・行動に介入することができる能力を持った者がいる。 しかしこの“幅”があるために、それらの行為自体はルールに抵触することではないとされている。 洗脳とはえてして当人にその意識はなく、またその人物の指向性を変えたり増幅するだけであったりするため、 個人の取りうる行動の範疇だと解釈することも可能であるからだ(もっとも程度や内容によっては充分ルール違反となりうるが)。 一方、“一般NPCへの度を過ぎた無差別殺戮”は明確な禁止事項として規定されている。 この『方舟』内においては、NPCに欠員が生じたとしても、新たに補填されることはない。 一度死を迎えたNPCは、その聖杯戦争の進行中に復元されることはなく、 以後そのまま「死亡」あるいは「行方不明」などの欠損した状態として扱われることになる。 街を構成しているのは人であり、支えている柱が欠けていくこととなれば――――コミュニティは瓦解する。 それ故の、禁則事項。 「……そういえば。これは是非についてではなく、ただの感想なのですが。  貴女のNPC被害に関する裁定は、私からすれば若干厳しめのように感じました。  これからは参加者同士の戦闘も激化するでしょう。建物も破壊されるでしょうし、巻き込まれるNPCの数も当然多くなる。  すべてに対処しようとしては、その身も令呪もいくつあったとしても足りなくなりますよ?」 急に変わった矛先に、ジャンヌは思わず息を呑むこととなった。 ほんのすぐ目の前で、カレンはジャンヌの紫の瞳をじっと覗き込んでいる。 その声は普段の平坦な調子ではなく“色”が乗っていて、口の端はわずかに上がってさえいる。 「それは貴女の裁定者としての役割への真摯さから来るのかしら。それとも――NPCへの同情心?  本選に進むマスターが確定した今、いずれ消去(デリート)されることが運命付けられた、ただの人形に過ぎないのに?」 「っ! それは……」 カレンの言葉に、ジャンヌは返答に詰まった。 参加者にルールとして伝えていたのは、“大量”殺戮の禁止。 “NPCに紛れている未覚醒のマスター候補の保護”という目的もあった予選期間中はともかくとして、 聖杯戦争が本格的に動き始めた今夜未明、倉庫群にジャンヌが“注意”に赴いたのは、まだ大きな被害の出ていないうちである。 付近にNPCはほとんど存在せず、明確な規則違反となりうる状況ではなかった。 過剰反応ではないかと。それはルーラーとしての立場というよりは、個人的な感傷に因るのではないかと。 そうカレンに言われてしまい、ジャンヌは強く言い返すことはできなかった。 「……まあ、話を元に戻しましょう。  ルール違反がなされているとの『啓示』は出た。しかし街の日常はつつがなく進行している。  この聖杯戦争において多少の無茶くらいならばルールの範囲内であると認められていて、『方舟』が介入するような事柄はそうそうない。  であるならば――これは“偽りの日常”。なんらかの方法を用いて表面が取り繕われているだけ……といったところかしら?  もしくは今はまだ何もないけれど、そう遠くないうちに崩壊しかねないような状況にある。そんな可能性も考えられるかもしれないわね」 カレンはいつもの抑揚のない喋り方に戻って告げる。 二点目の話は、『啓示』が現在の違反というよりは“未来の被害”に対して強く反応したのかもしれないという話である。 そうであるのならば、被害が生じていない現時点ではそもそも証拠を集めることができないのかもしれないと、そんな可能性の話。 「さて、改めて問いましょう。――これからどうしますか、ルーラー? 遠坂凛たちの要請への返答も、おいおいせねばなりません」 『啓示』が出た違反行為について、自信を持ってペナルティを与えられるだけの根拠をルーラーはつかめていない。 さきほどの“警告”によって違反者が行為を改めるのならば、それでいい。 しかし警告が無視された場合。 規則違反が見過ごされ続けるとあっては、なんのためのルールであるか。 聖杯を得ようと必死なマスターは多く、サーヴァントにも反英雄的な性質を持つ者が多い。 あっという間にルールは形骸化し、抑止力としての効果を失うだろう。 ルーラーの令呪で強制的に従わせるにしても、それが可能な回数には限りがある。 間もなく遠坂凛たちとキャスターは交戦する。そうなると中立の立場としての介入は難しくなる。 また、「ボク、これからもおぉっと悪いことしちゃいまぁーす!」と、 さらに被害を拡大させることを宣言していた新都での事件など、懸念する事案は数多い。 ジャンヌはひとつ大きく呼吸し、覚悟を決める。 迷えば迷うだけ、動ける時間が無くなる。 再び顔を上げた彼女の表情は、毅然とした聖処女、ルーラーとしてのものだ。 そこに躊躇は存在しない。少なくとも、表面的には。 「そうですね、では――――」 【?-?/教会/1日目・正午】 【ルーラー(ジャンヌ・ダルク)@Fate/Apocrypha】 [状態]:健康 [装備]:聖旗 [道具]:??? [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行。 1. ??? 2. 遠坂凛の要請をどうするか決める。 3. …………………………………………私は。 [備考] ※カレンと同様にリターンクリスタルを持っているかは不明。 ※Apocryphaと違い誰かの身体に憑依しているわけではないため、霊体化などに関する制約はありません。 【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】 [状態]:健康 [装備]:マグダラの聖骸布 [道具]:リターンクリスタル(無駄遣いしても問題ない程度の個数、もしくは使用回数)、??? [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行時々趣味 1. ??? [備考] ※聖杯が望むのは偽りの聖杯戦争、繰り返す四日間ではないようです。 ※そのため、時間遡行に関する能力には制限がかかり、万一に備えてその状況を解決しうるカレンが監督役に選ばれたようです。 他に理由があるのかは不明。 [通達について] ※マスターおよびサーヴァントを対象に、ルーラーを介した念話によって行います。ただし睡眠中の者、集中状態にない者等には通じません。 ※正午時点でのマスターおよびクラスごとのサーヴァントの残存人数については、検索施設にて閲覧が可能です。 ---- |BACK||NEXT| |078-b:[[心の在処]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|080:[[対話(物理)]]| |078-b:[[心の在処]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|080:[[対話(物理)]]| |BACK|登場キャラ:[[追跡表]]|NEXT| |078-b:[[心の在処]]|ルーラー([[ジャンヌ・ダルク]])|108:[[ゼア・イズ・ア・ライト]]| |~|[[カレン・オルテンシア]]|113-a[[角笛(届かず)]]| &link_up(▲上へ)
*第一回定時通達 ◆5fHSvmGkKQ 『――この『月を望む聖杯戦争』に参加しているマスター並びにサーヴァントの皆さま、こんにちは。  本来の記憶を取り戻し、令呪を宿し、サーヴァントとの契約を果たしてから幾日か経過している方もいると思います。  このたび予選期間が終了し“本選”へと進むマスターが確定したため、本日より定時通達を執り行うこととなりました。  今回の通達は私、カレン・オルテンシアが担当いたします。よろしくお願いします』 『既に聖杯から与えられた知識の中にもあったかと思いますが、通達は毎日正午12時に行われます。  なおこの通達は念話を用いていますが、遠隔及び多数同時に行っているため、非常に途切れやすいものとなっています。  しっかりと聞きたければ、せいぜい集中して耳を傾けられる環境を事前に整えておくことです』 『もし聞き漏らしなどがあった場合、可能ならば教会で対応いたしましょう。  もっとも私もルーラーも出払っているという場合もありますので、その際はあしからず。  また正午の段階での残存するマスターおよびサーヴァントの数に関するデータについては、検索施設からアクセスすることも可能です。  そちらではサーヴァントのクラスごとの数についても『方舟』によって公開されていますので、詳しく知りたい方はそちらへどうぞ』 『現時点で生存しているマスターは“28人”です』 『さて、改めて確認しますが、この聖杯戦争において“大量無差別に一般NPCを襲うこと”は禁則事項です。  全体への通達なので詳細は伏せますが、B-4地域にて重大なルール違反を行った方へ。  この通達をもって“警告”と致します。改善が見られない場合、次回は即刻ペナルティの付与を行うこともありますので、  自分の身の振り方を考えることね』 『そしてもう1点。たとえNPCを直接殺害等はしなかったとしても、  “この冬木の街の日常を著しく脅かすこととなる場合”、処罰の対象となる可能性があることをお伝えしておきます。  心当たりのある者は、以後それらを念頭に置くように』 『定時通達は以上です。  それでは明日の正午まできちんと生きていましたら、また』 ◆◆◆ 正午。教会の聖堂にて。 今この場にいるのは、監督役たるカレン・オルテンシアとルーラーのサーヴァント――ジャンヌ・ダルクの二人のみである。 あたかも見えない信徒に対して説法を行うかのように、祭壇に立っているカレン。 彼女の「定時通達」が終わったとみてジャンヌは各参加者とのパスを切り、カレンへと声をかけた。 「……ありがとうございました、カレン」 もともと通達はルーラー自身で行う予定であったのだが、カレンの強い勧めがあって、役割を交代していた。 二人での相談の結果、今回の通達ではB-4地域でのルール違反に対しての“警告”を盛り込むこととなったが、 違反の詳細が掴めていない現状で、ジャンヌがカレンほどに堂々と「ハッタリ」をかますことができるかというと若干の懸念があった。 もちろん役目である以上、職務に対して誠実にあたる心持も実力もジャンヌにはあるが、 中華飯店での岸波白野の問いがまだ尾を引いていたこともあって、カレンの申し出はジャンヌにとって正直なところありがたいものであった。 「いえ、お気になさらず。私自身通達をやってみたかったというのもありますので。  序盤から派手に立ち回っているのもいますが、そうでなくとも水面下ではみな動き始めています。  私の通達を経て、今後参加者たちはどう動いていくのか、  この聖杯戦争がどんな混沌とした様相を呈していくのか……想像すると実に楽しみです」 そう、神の信徒たるシスターには似つかわしくない嗜虐的な笑みを浮かべながら、カレンは言った。 ジャンヌは若干反応に困ったが、さほど間を置かずにカレンの表情が真顔に切り替わる。 裁定者の役割は、定時通達のほかにもまだまだたくさんある。そのことはカレン自身も理解しているのだろう。 「さて、通達も終えたところですし、これからどうします?  『泰山』で話した通り、私も現地へ赴いてみましょうか?」 カレンの反応を通して事件の真相を探る。 が、その条件は特殊でばらつきが激しい。カレン自身が言ったように、今回の件に対してカレンの体が反応するとは限らない。 闇雲に調査に臨んでは、先ほどと同じく徒労に終わる可能性が高い。 「『啓示』にあったマンション周辺で、異常は特に見受けられなかった。  NPC達の間で騒ぎ(エラー)や停滞(フリーズ)などが起きている様子もない。そうですね、ルーラー?」 「ええ。あくまで私の目で見た限りで、ではありますが」 ほんの一瞬ジャンヌの脳裏をよぎった弱気な考えが、顔に出てしまったのだろうか。 カレンは祭壇からおもむろに移動しながら、再度ルーラーに調査結果を確認した。 「……人の判断というものにはあいまいな部分があり、ある程度の“異常”は許容できるものです。  たとえヒトの常識から外れた『神秘』や本物の『魔』を目の当たりにしたとしても、  “気のせいだ”、“疲れていたのだろう”、“ただの幻覚ではないか”。  そんな風に考えたりして、異変も矛盾も看過してそのまま日常へと回帰することもできます。  それは『方舟』によって一般NPCとして再現されたデータであったとしても同様です」 「…………」 かつんかつんと静謐な聖堂に響いていたカレンの足音が、沈黙しているジャンヌの前で止まる。 「しかし閾値というものは存在します。  “NPC達の常識(ルーチン)で処理できる範疇を超える場合、その行為はこの聖杯戦争における規則違反であると見なされる”。  NPCの大量殺戮が禁止されているのも、聖杯戦争の舞台を維持する上で必要だからでもありましたね」 この『月を望む聖杯戦争』の参加者の中には、暗示や洗脳、その他の方法でNPCの思考・行動に介入することができる能力を持った者がいる。 しかしこの“幅”があるために、それらの行為自体はルールに抵触することではないとされている。 洗脳とはえてして当人にその意識はなく、またその人物の指向性を変えたり増幅するだけであったりするため、 個人の取りうる行動の範疇だと解釈することも可能であるからだ(もっとも程度や内容によっては充分ルール違反となりうるが)。 一方、“一般NPCへの度を過ぎた無差別殺戮”は明確な禁止事項として規定されている。 この『方舟』内においては、NPCに欠員が生じたとしても、新たに補填されることはない。 一度死を迎えたNPCは、その聖杯戦争の進行中に復元されることはなく、 以後そのまま「死亡」あるいは「行方不明」などの欠損した状態として扱われることになる。 街を構成しているのは人であり、支えている柱が欠けていくこととなれば――――コミュニティは瓦解する。 それ故の、禁則事項。 「……そういえば。これは是非についてではなく、ただの感想なのですが。  貴女のNPC被害に関する裁定は、私からすれば若干厳しめのように感じました。  これからは参加者同士の戦闘も激化するでしょう。建物も破壊されるでしょうし、巻き込まれるNPCの数も当然多くなる。  すべてに対処しようとしては、その身も令呪もいくつあったとしても足りなくなりますよ?」 急に変わった矛先に、ジャンヌは思わず息を呑むこととなった。 ほんのすぐ目の前で、カレンはジャンヌの紫の瞳をじっと覗き込んでいる。 その声は普段の平坦な調子ではなく“色”が乗っていて、口の端はわずかに上がってさえいる。 「それは貴女の裁定者としての役割への真摯さから来るのかしら。それとも――NPCへの同情心?  本選に進むマスターが確定した今、いずれ消去(デリート)されることが運命付けられた、ただの人形に過ぎないのに?」 「っ! それは……」 カレンの言葉に、ジャンヌは返答に詰まった。 参加者にルールとして伝えていたのは、“大量”殺戮の禁止。 “NPCに紛れている未覚醒のマスター候補の保護”という目的もあった予選期間中はともかくとして、 聖杯戦争が本格的に動き始めた今夜未明、倉庫群にジャンヌが“注意”に赴いたのは、まだ大きな被害の出ていないうちである。 付近にNPCはほとんど存在せず、明確な規則違反となりうる状況ではなかった。 過剰反応ではないかと。それはルーラーとしての立場というよりは、個人的な感傷に因るのではないかと。 そうカレンに言われてしまい、ジャンヌは強く言い返すことはできなかった。 「……まあ、話を元に戻しましょう。  ルール違反がなされているとの『啓示』は出た。しかし街の日常はつつがなく進行している。  この聖杯戦争において多少の無茶くらいならばルールの範囲内であると認められていて、『方舟』が介入するような事柄はそうそうない。  であるならば――これは“偽りの日常”。なんらかの方法を用いて表面が取り繕われているだけ……といったところかしら?  もしくは今はまだ何もないけれど、そう遠くないうちに崩壊しかねないような状況にある。そんな可能性も考えられるかもしれないわね」 カレンはいつもの抑揚のない喋り方に戻って告げる。 二点目の話は、『啓示』が現在の違反というよりは“未来の被害”に対して強く反応したのかもしれないという話である。 そうであるのならば、被害が生じていない現時点ではそもそも証拠を集めることができないのかもしれないと、そんな可能性の話。 「さて、改めて問いましょう。――これからどうしますか、ルーラー? 遠坂凛たちの要請への返答も、おいおいせねばなりません」 『啓示』が出た違反行為について、自信を持ってペナルティを与えられるだけの根拠をルーラーはつかめていない。 さきほどの“警告”によって違反者が行為を改めるのならば、それでいい。 しかし警告が無視された場合。 規則違反が見過ごされ続けるとあっては、なんのためのルールであるか。 聖杯を得ようと必死なマスターは多く、サーヴァントにも反英雄的な性質を持つ者が多い。 あっという間にルールは形骸化し、抑止力としての効果を失うだろう。 ルーラーの令呪で強制的に従わせるにしても、それが可能な回数には限りがある。 間もなく遠坂凛たちとキャスターは交戦する。そうなると中立の立場としての介入は難しくなる。 また、「ボク、これからもおぉっと悪いことしちゃいまぁーす!」と、 さらに被害を拡大させることを宣言していた新都での事件など、懸念する事案は数多い。 ジャンヌはひとつ大きく呼吸し、覚悟を決める。 迷えば迷うだけ、動ける時間が無くなる。 再び顔を上げた彼女の表情は、毅然とした聖処女、ルーラーとしてのものだ。 そこに躊躇は存在しない。少なくとも、表面的には。 「そうですね、では――――」 【?-?/教会/1日目・正午】 【ルーラー(ジャンヌ・ダルク)@Fate/Apocrypha】 [状態]:健康 [装備]:聖旗 [道具]:??? [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行。 1. ??? 2. 遠坂凛の要請をどうするか決める。 3. …………………………………………私は。 [備考] ※カレンと同様にリターンクリスタルを持っているかは不明。 ※Apocryphaと違い誰かの身体に憑依しているわけではないため、霊体化などに関する制約はありません。 【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】 [状態]:健康 [装備]:マグダラの聖骸布 [道具]:リターンクリスタル(無駄遣いしても問題ない程度の個数、もしくは使用回数)、??? [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行時々趣味 1. ??? [備考] ※聖杯が望むのは偽りの聖杯戦争、繰り返す四日間ではないようです。 ※そのため、時間遡行に関する能力には制限がかかり、万一に備えてその状況を解決しうるカレンが監督役に選ばれたようです。 他に理由があるのかは不明。 [通達について] ※マスターおよびサーヴァントを対象に、ルーラーを介した念話によって行います。ただし睡眠中の者、集中状態にない者等には通じません。 ※正午時点でのマスターおよびクラスごとのサーヴァントの残存人数については、検索施設にて閲覧が可能です。 ---- |BACK||NEXT| |078-b:[[心の在処]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|080:[[対話(物理)]]| |078-b:[[心の在処]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|080:[[対話(物理)]]| |BACK|登場キャラ:[[追跡表]]|NEXT| |078-b:[[心の在処]]|ルーラー([[ジャンヌ・ダルク]])|108:[[ゼア・イズ・ア・ライト]]| |~|[[カレン・オルテンシア]]|113-a:[[角笛(届かず)]]| &link_up(▲上へ)

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