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*days/only illusion ◆Ee.E0P6Y2U ぬかるみの日常。退屈な繰り返し。何てことのない、何時もの生活。 その中で人は生きている。 しかし、それは本当に盤石なものだろうか。 自分たちが何の上に立っているのか、人は本当に気づいているのだろうか。 自らの足元を覗き込めば。 あるいは、そこに広がっているのは恐ろしい闇かもしれない。 忘れてはならない。 人は日常に生き、日常に死ぬものだということを。 (days/only illusion) ◇ ふわぁ、と欠伸を噛みしめながら真玉橋孝一は学園へとやってきた。 天気は快晴、そよぐ風も気持ちよく、爽やかな登校日和――であるが、孝一は退屈だといわんばかりの顔を浮かべている。 周りでは真面目そうな顔をした学生たちがたくさんいる。彼らはみな吸い込まれるように校門へと向かっている。 彼らを見て孝一は再度欠伸をした。 バーサーカーとの一件こそ孝一を本気にさせたが、こんな学園生活にはかったるいとしか言いようがない。 ペンギン帝国での戦いにあっても、学校というものは枷にしかならなかった。世界の為に戦っていたというのに。 聖杯戦争でもそうだろう。だが、それでも孝一がサボらずに登校したのはそれ以外に目標も指針もなかったことと、そして気まぐれの部分が大きい。 やる気は起きないし意味も感じられないが、それ以外特にやることもない。 そんな状況だったからこそ、孝一は彼としては普通の態度で、しごく模範的な時間に、学生として真面目に登校したのだった。 聖杯戦争のマスターとしては、というとセイバーを連れきてはいるが霊体化させている。 これもマスターとしては普通――セイバーの方から言い出した訳だが――孝一にとって学園にいる時間というのは寝る時間とほぼ同義なので、まぁ、別にどうでもよかったのだろう。 と、いう訳で聖杯戦争一日目、孝一は珍しく――ある意味では幸運なことに――学生としてもマスターとしても別段おかしなことをしていなかった。 少なくとも、彼の中では。 空っぽの鞄を片手で持ちながら孝一は三度欠伸をする。 そして、校門を通った。 ――途端、 「待て、真玉橋孝一」 声がした。 実直さを滲ませたその鋭い一声はまっすぐに孝一へと届いていた。 ああん、と孝一が気だるげに唸りそちらを見るとそこには、 「何度言えば分かるのだお前は、校則というものを守れ!」 灰色の制服に身を包んだ眼鏡の少年がいた。 彼は頭を抱えながら孝一へと近づき「喝!」と言ってのけた。 「おいおい何だよ一成、朝っぱらから」 眼鏡の少年のことを孝一は知っていた。 というかこの学園の生徒ならば知らなければおかしい。 柳洞一成。何せ彼は生徒会長である。真面目実直の寺の子であり、敏腕生徒会長。 孝一も予選の頃から知っていたし、何度か話したこともある。 「何だではない。何だでは。  校則違反だ。校則違反。」 そんな彼がどういう訳か自分に青筋を立てている。 孝一は困惑を滲ませながら、 「校則違反? 俺が何したってんだ」 「制服だ。制服。流石に堪忍袋の緒が切れるぞ」 「制服?」 言われて孝一は視線を下げ己の服装を確認した。 別に丈も長くないし、ズボンの裾もおかしくない。黒い生地に金のボタンのコントラストも映える。 この男らしい学ランを、孝一はいたく気に入っていた。 「この制服のどこが違反なんだよ」 「全部だ、馬鹿者」 言って一成は登校していく生徒たちを肩で示した。 そこにいるのは黄土のような赤みを帯びた制服に身に包んだ生徒たち。 孝一の纏うクラシックな学ランは、彼らの現代的な制服とはかけ離れている。 「お前が来ているのは前の世代の制服だ。どこで手に入れたのか知らんがとっと着替えろ」 「はぁ? 硬派な男は黒い学ランと決まってんだろ。あんな軟弱な制服着れるか。  第一お前だって制服ちげえじゃねえか」 一成の制服もまた一般性ととは違う。デザインは基本同じだが色がダークグレーに変っているのだ。 「これは区別の為だ。別にルールから離れている訳ではない」 「ほいほい、分かったから」 「今日という今日は実力行使に出るぞ、真玉橋孝一」 その言葉になにか凄みを感じた孝一はたじろぐ。 実力行使……その言葉から想像されることはまさか、 「い、一成……」 一部女子生徒の間でまことしやかに語られる噂を思い出す。 孝一はごくりと息を呑んで、 「俺を押し倒す気か。こんな往来で」 「違うわ馬鹿者!」 不用意な一言で更に怒りを加速させてしまった。 一成の隙を見計らい、孝一は走り出した。 こんなところで足止めを喰らう訳にはいかない。説教されるのはごめんだった。 「待て、真玉橋孝一。まだ話は終わってないぞ!」 「じゃあな一成、せいぜい頑張ってくれよ」 孝一は校舎へと向かった。とりあえず教室に入ってしまえばあっちもそこまでは追ってこまい。 と、その最中女子生徒たちの姿が視界に入った。 和やかに談笑する彼女の隣を孝一は風となって駆けていく。 ――その刹那、 ふわり、とささやかな布地が舞った。 駆け抜けた風が黄色のスカートをさらい、重力の枷から解き放っていく。 一つ、二つ、三つ……朝の学校に花が咲いた。 青。ピンク。白。 そして、そこに少女たちの声が重なる。 「きゃ、きゃああああ!」 「っ、最低! 今日日スカートめくりなんか小学生でもしないのに」 「ケイネス先生に言いつけてやるんだからー!」 『……はぁ』 少女たちの声を背景に、なははははは、と孝一は哄笑する。心なしか自分のサーヴァントの声も聞こえたが気にしない。 学園生活などたるいとしか言いようがないがこういうことができるは最高だ。 心なしかこの学園、化け物みたいな乳の奴がちらほらいることだし。 そうして孝一は登校した。 ごくごく平和な、退屈でありつつも楽しみがない訳ではない、そんな、日常が。 ◇ 朝。 海に赴いた。青を見た。そして涙した。 それは決して日常ではなかった。そのあとも邂逅も含めて、鋭い刺激を伴った非日常だった。 だからだったのだろうか。 「何時も通り」登校しているのに、彼女の身体から痺れに似た昂揚が引かないのは。 目を閉じれば蘇る。視界を埋め尽くす青色がフラッシュバックし、ざ、ざ、と穏やかな波の音が鳴り響く。 加えて――先ほど出会った男性の存在感もまた、彼女の中で靄のように残っていた。 落ち着かない、のかもしれない。 感動と恐怖と困惑、そして疎外感がないまぜになった心地だった。 地に足付いて歩いている。 目的も、思考も、信念も、願いも、何一つぶれてはいない。 だというのに、一歩一歩に重みが感じられない。 立体起動の鋭い三次元運動とは対極の、ふわふわとした感覚。 雲の上を歩いているよう、とでもいうべきか。 現実味がないのかもしれない。 自分の周りで広がる日常の姿を見渡して、彼女は思った。 照り返すアスファルトは鈍く黒く光っていた。舗装された道を学生たちは当たり前のように歩いている。 彼らはみな足下を見ていない。隣りの友人だったりあるいは空だったりを見て、ある者は笑い、またある者は寝むそうに眼をこすっている。 それでも彼らは迷うことなく歩いて行く。流れに従うまま、堂々と何の恐れもなく。 話し声が聞こえた。そのどれも意味もなく、重みもない、雑多なものだ…… その流れにあって彼女は取り残された心地だった。 目の前を通り過ぎている筈の彼らとの間には、しかし、長い長い空白が隔たっている。そんな気がしてならない。 手を伸ばせば触れることが出来る筈――いや本来ならば自分もまた、彼らと同じ流れの中にいるべきなのだ。 校門へと、学園へと続く一つの支流。 自分もまたその一部の筈だ。 少なくともこの場では、仮初といえども自分はここにいる。 しかし、遠い。 距離がある気がした。 与えられた制服の襟元を正す。 何度も手を通した服装だ。最初は生地や構造に戸惑いはしたが、もう慣れた。 しかし、今日はこの服さえも妙な座りの悪さを感じる。 固さ、だろうか。しかしこれは緊張とはまた違う。 そんな彼女――ミカサを現実へと引き戻したのは、悲鳴だった。 朝の学校、どこからか聞こえてきた悲鳴。重なる声。女性のものだ。 瞬間、ミカサはその身を硬くする。 すっ、と小さく息を吸う。制服に忍ばせたナイフを咄嗟に握りしめ、迅速かつ静かに辺りを警戒した。 しかし、辺りの様子は変っていなかった。 学生たちは何ら変った様子はない。当たり前のように笑い、当たり前のように歩いている。 彼らはミカサを置いていった。 急に立ち止まった彼女に振り返る様子もなく、学校へと流れ込んでいく。 取り残された。 そんな表現が今の状況には似合う気がした。 異変があれば即座に思考を切り替え戦場に適応する。 それはあまりにも当たり前のことだった。その当たり前は、しかしここでは、自分の周り数メートルの間でしか通用していなかった。 それはある意味当然のことだろう。自分にとってここは戦場だが、しかし彼らにとっては違う。 『……危険、ではないようだ』 背後からランサーの声が聞こえた。 確かに別に異変は感じられない。目の前では「平和」な日常が盤石の姿勢で横たわっている。 ミカサは無言で悲鳴の聞こえた方を確認する。そこには声を荒げる女子生徒らがいた。 顔に不満を滲ませてはいるものの、そこに切迫したものはない。ただその視線の先には走り去る一人の男が居た。 着ている服が違うな、とミカサは思った。 一般生徒用の黄土色のものとも、一部生徒の灰色のものとも違う、真っ黒な服だ。 学園内にあって一人浮いている。 端的にいえば、怪しい。 とはいえ――ランサーの言う通り別に危険な状況ではなさそうだった。 何があったのかは知らないが、女子生徒たちにも切迫したものは感じられない。 あの男の方も怪しいが、マスターであると決まった訳ではない。マスターであるならば何故あんな目立つ行動を取る意味も分からない。 ミカサは息を吐いた。 何にせよ、今日もまた平穏に「登校」できそうだった。 彼女自身全く学校というものを知らない訳ではない。実戦に耐えうるレベルまで若者を指導する場所、という意味では訓練兵団も学校といえば学校だ。 理解はできている。しかし、この月海原学園の雰囲気には僅かに戸惑いを覚える。 いや、この方舟の中にあって最初当惑しなかったものなどないと言っていいのだが、この学校は特に難しかった。 恐らく人が居るからだろう。全く違う人が、遠く決して交わらない筈のところにいた人が、ここには沢山いる。 『マスター』 ランサー、セルべリアが呼びかけてくる。 分かっている、と目で示す。あまり呆と立ち止まっている訳にはいかない。 序盤戦においてマスターとして露見することは絶対に避けねばならない。その為にもこの場所にも適応する。 難しくはないだろう。知識は与えられているし、目立つ行動さえ避ければ溶け込むことはできる。 月海原学園中等部三年在籍。ドイツからの転校生として、それらしく振舞う。それが昼の課題だった。 とはいえ――それも何時まで続くか分からない。 明日か、明後日か、もしかしたら次の瞬間にもこの学園が戦場と化すかもしれない。 故に警戒は忘れない。 目立つ為そう多く武装は持ちこめないが、それでも制服に幾つかナイフを潜ませている。 そして何よりランサーが居る。可能な限り霊体化させてその存在を秘匿するつもりだが、有事の際は躊躇わない。 一瞬の迷いは絶対の死を招く。そのことを彼女は知っていた。 だから学生たちの流れに紛れながら、ミカサは校門をくぐった。 その先に広がっているのは何時も通りの日常であり、戦場だ。 先の昂揚は既に収まっている。 一度意識を切り替えたことで逆に落ち着きが返ってきた。 この世界は遠いし、戸惑うことばかりで、そして――美しい。 だからこそ、彼女はこの道を歩くのだ。 そうして高まる集中の下、ミカサは見た。 大きく開け放たれた校門。その一角に潜んだ違和感を。 小さな小さな影だった。 ともすれば見逃してしまいそうな小ささで、しかし目を凝らせばはっきりとした存在感を持っている。 それは虫だった。 学園に打ちこまれた――毒蟲。 ◇ 「さて」 その小屋は捨てられたようなものだった。 元より貧相なものでしかなかっただろうが放置されたことで更に寂れ、床は塵が散乱し、立てつけは軋み、ぬめりと湿った空気は黴が生えているよう。 備え付けられた電球は黒澄み時節ばちばち、とか細い悲鳴を上げた。 人々から、そして街から忘れ去られた場所なのだろう。 あとは朽ちていくのみ。そこに滅びの美学などありはしない。ただ薄汚れ腐っていくだけだ。 だが、そんな空気をキャスター、シアン・シンジョーネは拒んではいなかった。 好悪を別にしても自分のような存在には似合っている、と思っていた。 近くで桜は眠りを取っている。 疲れていたのだろう。黴の生えた布団の寝心地など決してよくはないだろうが、すぅ、すぅ、と上下する胸は存外穏やかなものだった。 もしかすると――彼女もまたこの小屋を気に入っているのかもしれない。彼女もまた薄汚い暗闇に浸かって生きてきた。 「私は、私の仕事をしよう」 言いつつシアンを魔力の糸を辿っていた。 地下を走るマナラインに手を加え、この小屋を中心に渦巻くよう操作する。 作業自体はさほど難しいものではない。より代替的な拠点を構えるのならば話は別だが、この程度ならば数時間で終わるだろう。 進捗はまずまずといったところだった。キャスターとしての陣地作成スキルを活用し、この暗闇に魔力の糸をするすると通していく。 作業をしながら、シアンは己が得た情報を精査していく。 情報――それはかねてより「仕込み」をしていた月海原学園に関するものだ。 月海原学園はこの街の西部に位置する巨大な学園である。 規模は非常に大きく、初等部、中等部、高等部まで。知識としてしか学校を知らないシアンであるが、それでも大きな学校であることは分かった。 最も在籍人数が多いのは高等部で、次いで中等部。その在籍人数的にこの街に住む若者の大半はこの学校に通っていると言ってもいいだろう。 学力レベルも並、だがその割には海外からの留学生と思しき人間も多い。 部活動に目立ったものはないが、そこそこ大きな弓道場があるのが特徴か。その辺りは桜の知る穂群原学園と共通する。 桜と共に見聞した学園名簿だが、いわゆる「おかしな名前」探しはあまり効果的でないことが分かってきた。 理由は単純。多過ぎるからだ。転校生や奇妙な名前の生徒や教師は一人や二人ではなかった。学園の規模が大きいこともあって全てをマークするのは困難だった。 この辺りは予選に際して多くの若者をここに割り振った為だろうと予想できる。となると桜と話したジナコ・カリギリの名前もあまり怪しいとはいえなくなってきた。 マスターである可能性は高いが、予選に敗れたものかもしれない。ならば扱いはNPCと同じだ。 やはりそう簡単に「ずる」はできないか。 シアンは特に残念に思うことなく、次に打ち込んだ策について勘案する。 校門に隠した二匹の蟲。 あれによって得られた情報もまた芳しくなかった。 桜にも語ったことだが、露骨な対応をする者は登校する生徒の数と比して少ない。 加えて学園の規模も問題だ。おかしな名前の生徒の数が多いため得られる情報もまた過多といっていい。 蟲による監視はできても判断を下すのは自分だ。デジタルに処理することができない以上、どうしても時間がかからざるを得ない。 故に難航していた。情報を一つ一つ確認するのは、さしもの彼女といえど時間がかかった。 とはいえ――それも終わった。シアンは蟲が送ってきた情報を今しがた見聞し終えていた。 結果、最初に思いのほか成果が得られていた。 その中で確認できた反応は――四つ。 一人は眼鏡をした黒い髪の少女。制服からして中等部。 おさげを揺らす気の弱そうな彼女を蟲は捉えていた。 彼女は別に露骨な態度を取った訳ではない。だが結果的に彼女が最も分かりやすく反応してくれた。 校門を通る直前、彼女の身体を中心にして魔力の反応があったのだ。 一瞬、ほんの僅かな間であったが何らかの魔術が彼女の身体に作用し、気が付けば彼女は「転んで」いた。 その一瞬を潜んでいた蟲が感知した。 恐らく一方の、目立つように仕掛けた蟲の方を警戒したのだろう。 蟲が感知用なのか攻撃用なのか看破できなかった為、安全を期す為校門を通る瞬間に何らかの魔術を行使し――もう一方の蟲に察知された。 彼女にしてみれば慎重を期したのだろうが、度を越した慎重さは迂闊な行動に繋がる。 何もしなければシアンは彼女を見逃していただろう。ごくごく普通の少女である彼女は、最初から監視の対象に入っていなかった。 もしあれがサーヴァントがマスターを庇ってのものだとすれば、それはマスターをあまりにも信用していない。 「片方に気付いて過剰な対応――評価は『下』か」 評価を下したシアンは次の反応を思い起こす。 二人目は紫髪の少女。その容姿からこの街において異国の者と思われる。 彼女は校門を通る際、片方の蟲に注視している様子を見せた。 分かりやすく仕掛けた方には気付いたようだった。とはいえそれも一瞬のこと。特に何もせず彼女は校門を通っていった。 その反応には迷いはなく、確かな力量と経験を感じさせた。 そして、恐らくあれは――シオン・エルトナム・アトラシア、だ。 初期に桜が指摘した名前だけあって簡単な特徴などは入手していた。その特徴に彼女はことごとく合致している。 確認は必要だが、まず間違いない。 三人目はまたしても異国の少女。黒い髪をした西欧系の顔立ちをした中等部の女子生徒だ。 目立つよう仕掛けた蟲を見つけ、そして明らかに雰囲気が変った。 例えるならば鋭いナイフのように、すっと集中を高めたのだった。 しかし具体的に動きを見せた訳ではない。見つけたのち、過ぎに無言でその場を去っている。 ただあの反応は明らかに設定された「現代」の少女のそれではない。シアンの知る時代ように世界に危険がまだ溢れ――中でも彼女は戦いに身を置いていた人間であることが推し量れた。 「片方に気付いたがその場は無視――評価は『中』」 彼女らは佇まいには隙はなかった。こうして補足できたのも、彼女らがこの場にあって異国の存在という分かりやすい特徴があったからだろう。 そして、四人目。 最後の一人は教員だった。 額の広い金髪の教師、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト――教師は数が少ないため照合が簡単だ――はある意味最も警戒せねばならないだろう。 彼は全学園関係者中唯一もう一方の「本命」の蟲に気が付いた。 そして気が付いた上で、それらをこちらに喧伝してきた。 「両方に気付く――評価は『上』。だが……」 気付いた上で、それをこちらにわざわざ教えてくる。 それは魔術師としての確かな実力と高い自尊心を感じさせた。 かかってこい、とこちらに言ってきているのだ。それはあまりにも好戦的だが、同時にそれがなせるだけの力もまだ示している。 好戦的かつプライドの高い実力者。力量は底知れない。最も警戒すべき存在だ。 蟲が感知できたのはその四人だった。 やはり多い、とシアンは判断する。この時点で穂群原学園の三人の魔術師を越えている。 加えて何故か違った制服で登校してくる男など、怪しいは他にもいた。恐らくまだマスターが潜んでいる。 情報をまとめ終わったところで、シアンは思考を巡らせる。 手にしたこの情報をどう扱うべきか。この確かなアドバンテージをを生かさない手はない。 「まず警戒だな。『上』の者とは利用はおろか交渉も難しいだろう」 こちらの仕掛けた罠を看破した上で、わざわざそれを突き付けてくるようなマスターだ。 力に自信を持っている。底が見えない以上、不用意な接触は避けるべきだろう。 できれば策を弄し罠にかけるなり徒党を組むなりして叩きたい。 「次に『中』と『下』か……」 脳裏に浮かぶ三人の少女。 協力を求めるならば『中』の異国の少女たちに、利用を求めるならば『下』の眼鏡の少女に、それぞれ接触するべきだ。 力量としては恐らく『下』の少女が一番低い。だからこそ協力も不可能ではないだろうが、慎重過ぎる、あるいはマスターにも信用を置かないスタンスは組むに当たって厄介だ。 直接接触するのではなく、間接的に誘導することを狙うか。 『中』の二人はどちらも隙がない。魔術師として、あるいは戦士としての経験を感じた。 中でも紫髪のマスターは侮れない。見せた反応も本当に一瞬だった。 力量では彼女の方が上だろう。だがシアンは黒髪の少女の方に興味を持った。 「あれは、強いな」 力、ではない。 願いが、だ。 ある種正道を行く者の、揺るぎない意志を感じた。 統率された意志は時に最も強き刃となる。シアンはそのことを身を以て知っていた。 「……ともかく、一先ずは桜が目覚めるのを待つか」 シアンは眠りに耽る桜を見下ろし言った。 どんな選択を取るにせよ、勝手な行動をする気はない。 どうせ陣地作成が終わるまでは動けない。それが終わるまでは桜が起こすこともないだろう。 これが不自然な欠席とならないよう、桜はここ数日病弱な生徒を演じていた。 何よりこの人数だ。ちゃんと届け出を出せば一日休んだところで怪しまれはしないだろう。 故にシアンは待つ。 薄暗い闇の中に陣地を据え、次なる展開へ向けて息を潜めて待ち続ける…… 【C-1/山小屋/1日目 午前】 【間桐桜@Fate/stay night】 [状態]健康、睡眠 [令呪]残り三角 [装備]学生服 [道具]懐中電灯、筆記用具、メモ用紙など各種小物 [所持金]持ち出せる範囲内での全財産(現金、カード問わず) [思考・状況] 基本行動方針:生き残る。 1.キャスターに任せる。NPCの魂食いに抵抗はない。 2.直接的な戦いでないのならばキャスターを手伝う。 3.キャスターの誠意には、ある程度答えたいと思っている。 [備考] ※間桐家の財産が彼女の所持金として再現されているかは不明です。 ※キャスターから強い聖杯への執着と、目的のために手段を選ばない覚悟を感じています。  そして、その為に桜に誠意を尽くそうとしていることも理解しました。  その上で、大切な人について、キャスターにどの程度話すか、もしくは話さないかを検討中です。子細は次の書き手に任せます。 ※学校を休んでいますが、一応学校へ連絡しています。 【キャスター(シアン・シンジョーネ)@パワプロクンポケット12】 [状態]健康 [装備]学生服 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マナラインの掌握及び宝具の完成。 1.工房の完成。 2.学園に関する情報収集。 3.桜に対して誠意ある行動を取り、優勝の妨げにならないよう信頼関係を築く。 4.食料などの確保を行う。 [備考] ※工房をC-1に作成しています。 ※学園の入り口にはシアンの蟲が隠れており、名簿を見てマスターの可能性があると判断した人物の動向を監視しています。  日本人らしくない名前の人物に対しては特に注意しています。  ただし距離の関係から虫に精密な動作はさせる事はできません。 →結果としてほむら、ミカサ、シオン、ケイネスの情報を得ました。 ※『方舟』の『行き止まり』を確認しました。 【C-3/月海原学園/一日目 午前】 【ミカサ・アッカーマン@進撃の巨人】 [状態]:健康 [令呪]:残り三画 [装備]:無し [道具]:シャアのハンカチ 身体に仕込んだナイフ     (以降自宅)ヴァルキュリアの槍、立体起動装置、スナップブレード、予備のガスボンベ(複数) [所持金]:普通の学生程度 [思考・状況] 基本行動方針:いかなる方法を使っても願いを叶える。 1.月海原学園で日常をこなす。 2.シャアに対する動揺。調査をしたい。 [備考] ※シャア・アズナブルをマスターであると認識しました。 ※中等部に在籍しています。 ※校門の蟲の一方に気付きました。 【ランサー(セルベリア・ブレス)@戦場のヴァルキュリア】 [状態]:健康 [装備]:Ruhm [道具]:ヴァルキュリアの盾 [思考・状況] 基本行動方針:『物』としてマスターに扱われる。 1.ミカサ・アッカーマンの護衛。 [備考] 無し。 【真玉橋孝一@健全ロボ ダイミダラー】 [状態]健康 [令呪]残り2画 [装備]学生服(月海原学園の制服に手を加えたもの、旧制服に酷似しているらしい) [道具]学生鞄、エロ本等のエロ目的のもの [所持金]通学に困らない程度(仕送りによる生計) [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い 1.今のところは普通に通学する。 でもかったるい。 2.ウェイバーたちと話し合ってみる。 [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。 【セイバー(神裂火織)@とある魔術の禁書目録】 [状態]健康  [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い 0.はぁ…… 1.マスター(考一)の指示に従い行動する 2.バーサーカー(デッドプール)に関してはあまり信用しない [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。 ※Hi-ERo粒子により補充された魔力は消費しました。 そして本鈴が鳴り響き、月海原学園は新たな一日を迎えた。 それぞれのクラスで児童や生徒たちが席につく。教師たちや事務員たちも己の職務に従事し始めた。 今日この日、何時ものように学園へとやってきたマスターは七人。 高等部教師ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは仮初の主の言葉に従い、ぎこちなくも教師を行っている。 高等部三年生の本多正純は今までにない生活に戸惑いつつも適応し、己のサーヴァントと連絡を取りつつも生活に適応している。 高等部n年生のシオン・エルトナム・アトラシアはキャスターの蟲に気付き、そして担任のケイネスと視線を交わらせた。 高等部二年生の真玉橋孝一は何も考えず、何も偽らず、己が欲望に忠実であろうとした。 高等部一年生の武智乙哉は明るく笑い、辺りに善意を振りまきながら、その鋏を懐に忍ばせている。 中等部三年生のミカサ・アッカーマンは世界への動揺を強い意志で落ち着かせ学園へと赴いた。 中等部二年生の暁美ほむらはもう一人の自分に手を引かれ「友達」を作れと囁かれた。 そして、学園に潜むサーヴァントはセイバー、アーチャー、ランサー、キャスター二騎……の五騎。 真玉橋孝一とシオン、ミカサ、暁美ほむらは自らのサーヴァントを連れ添って登校した。 教師ケイネスのキャスター、ヴォルデモートは生徒たちを洗脳し狡猾な罠を巡らしている。 それだけではない。この学園を取り巻く外部にも、影はある。 間桐桜のキャスター、シアン・シンジョーネは外部に拠点を終え学園を狙っている。 衛宮切嗣は搬入業者に暗示を掛け学園に忍び込ませようとした。 そして、購買部店員言峰綺礼は与えられた役割に従事する為、購買の搬入へと向かっていた。 こうして学園を渦巻く因縁は重なっていく。 表面上は何時もと何も変わらなくとも、そこは既に戦場だった。 それでも鐘はなる。 何時もと変らぬ調子、何時もの変わらぬ音を鈍く響かせる。 始まりの鐘が。 ---- |BACK||NEXT| |070:[[ソラの政治家達]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|072:[[Devil Flamingo ]]| |070:[[ソラの政治家達]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|072:[[Devil Flamingo ]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |059:[[何処までも暗い闇の中]]|[[間桐桜]]&キャスター([[シアン・シンジョーネ]])|094:[[蟲のキャスターは餌を撒く]]| |038:[[母なる海]]|[[ミカサ・アッカーマン]]&ランサー([[セルベリア・ブレス]])|094:[[蟲のキャスターは餌を撒く]]| |040:[[故郷とおっぱいは遠くにありて思うもの]]|[[真玉橋孝一]]&セイバー([[神裂火織]])|090:[[健全ロボダイミダラー 第X話 悲劇! 生徒会副会長の真実!]]|
*days/only illusion ◆Ee.E0P6Y2U ぬかるみの日常。退屈な繰り返し。何てことのない、何時もの生活。 その中で人は生きている。 しかし、それは本当に盤石なものだろうか。 自分たちが何の上に立っているのか、人は本当に気づいているのだろうか。 自らの足元を覗き込めば。 あるいは、そこに広がっているのは恐ろしい闇かもしれない。 忘れてはならない。 人は日常に生き、日常に死ぬものだということを。 (days/only illusion) ◇ ふわぁ、と欠伸を噛みしめながら真玉橋孝一は学園へとやってきた。 天気は快晴、そよぐ風も気持ちよく、爽やかな登校日和――であるが、孝一は退屈だといわんばかりの顔を浮かべている。 周りでは真面目そうな顔をした学生たちがたくさんいる。彼らはみな吸い込まれるように校門へと向かっている。 彼らを見て孝一は再度欠伸をした。 バーサーカーとの一件こそ孝一を本気にさせたが、こんな学園生活にはかったるいとしか言いようがない。 ペンギン帝国での戦いにあっても、学校というものは枷にしかならなかった。世界の為に戦っていたというのに。 聖杯戦争でもそうだろう。だが、それでも孝一がサボらずに登校したのはそれ以外に目標も指針もなかったことと、そして気まぐれの部分が大きい。 やる気は起きないし意味も感じられないが、それ以外特にやることもない。 そんな状況だったからこそ、孝一は彼としては普通の態度で、しごく模範的な時間に、学生として真面目に登校したのだった。 聖杯戦争のマスターとしては、というとセイバーを連れきてはいるが霊体化させている。 これもマスターとしては普通――セイバーの方から言い出した訳だが――孝一にとって学園にいる時間というのは寝る時間とほぼ同義なので、まぁ、別にどうでもよかったのだろう。 と、いう訳で聖杯戦争一日目、孝一は珍しく――ある意味では幸運なことに――学生としてもマスターとしても別段おかしなことをしていなかった。 少なくとも、彼の中では。 空っぽの鞄を片手で持ちながら孝一は三度欠伸をする。 そして、校門を通った。 ――途端、 「待て、真玉橋孝一」 声がした。 実直さを滲ませたその鋭い一声はまっすぐに孝一へと届いていた。 ああん、と孝一が気だるげに唸りそちらを見るとそこには、 「何度言えば分かるのだお前は、校則というものを守れ!」 灰色の制服に身を包んだ眼鏡の少年がいた。 彼は頭を抱えながら孝一へと近づき「喝!」と言ってのけた。 「おいおい何だよ一成、朝っぱらから」 眼鏡の少年のことを孝一は知っていた。 というかこの学園の生徒ならば知らなければおかしい。 柳洞一成。何せ彼は生徒会長である。真面目実直の寺の子であり、敏腕生徒会長。 孝一も予選の頃から知っていたし、何度か話したこともある。 「何だではない。何だでは。  校則違反だ。校則違反。」 そんな彼がどういう訳か自分に青筋を立てている。 孝一は困惑を滲ませながら、 「校則違反? 俺が何したってんだ」 「制服だ。制服。流石に堪忍袋の緒が切れるぞ」 「制服?」 言われて孝一は視線を下げ己の服装を確認した。 別に丈も長くないし、ズボンの裾もおかしくない。黒い生地に金のボタンのコントラストも映える。 この男らしい学ランを、孝一はいたく気に入っていた。 「この制服のどこが違反なんだよ」 「全部だ、馬鹿者」 言って一成は登校していく生徒たちを肩で示した。 そこにいるのは黄土のような赤みを帯びた制服に身に包んだ生徒たち。 孝一の纏うクラシックな学ランは、彼らの現代的な制服とはかけ離れている。 「お前が来ているのは前の世代の制服だ。どこで手に入れたのか知らんがとっと着替えろ」 「はぁ? 硬派な男は黒い学ランと決まってんだろ。あんな軟弱な制服着れるか。  第一お前だって制服ちげえじゃねえか」 一成の制服もまた一般性ととは違う。デザインは基本同じだが色がダークグレーに変っているのだ。 「これは区別の為だ。別にルールから離れている訳ではない」 「ほいほい、分かったから」 「今日という今日は実力行使に出るぞ、真玉橋孝一」 その言葉になにか凄みを感じた孝一はたじろぐ。 実力行使……その言葉から想像されることはまさか、 「い、一成……」 一部女子生徒の間でまことしやかに語られる噂を思い出す。 孝一はごくりと息を呑んで、 「俺を押し倒す気か。こんな往来で」 「違うわ馬鹿者!」 不用意な一言で更に怒りを加速させてしまった。 一成の隙を見計らい、孝一は走り出した。 こんなところで足止めを喰らう訳にはいかない。説教されるのはごめんだった。 「待て、真玉橋孝一。まだ話は終わってないぞ!」 「じゃあな一成、せいぜい頑張ってくれよ」 孝一は校舎へと向かった。とりあえず教室に入ってしまえばあっちもそこまでは追ってこまい。 と、その最中女子生徒たちの姿が視界に入った。 和やかに談笑する彼女の隣を孝一は風となって駆けていく。 ――その刹那、 ふわり、とささやかな布地が舞った。 駆け抜けた風が黄色のスカートをさらい、重力の枷から解き放っていく。 一つ、二つ、三つ……朝の学校に花が咲いた。 青。ピンク。白。 そして、そこに少女たちの声が重なる。 「きゃ、きゃああああ!」 「っ、最低! 今日日スカートめくりなんか小学生でもしないのに」 「ケイネス先生に言いつけてやるんだからー!」 『……はぁ』 少女たちの声を背景に、なははははは、と孝一は哄笑する。心なしか自分のサーヴァントの声も聞こえたが気にしない。 学園生活などたるいとしか言いようがないがこういうことができるは最高だ。 心なしかこの学園、化け物みたいな乳の奴がちらほらいることだし。 そうして孝一は登校した。 ごくごく平和な、退屈でありつつも楽しみがない訳ではない、そんな、日常が。 ◇ 朝。 海に赴いた。青を見た。そして涙した。 それは決して日常ではなかった。そのあとも邂逅も含めて、鋭い刺激を伴った非日常だった。 だからだったのだろうか。 「何時も通り」登校しているのに、彼女の身体から痺れに似た昂揚が引かないのは。 目を閉じれば蘇る。視界を埋め尽くす青色がフラッシュバックし、ざ、ざ、と穏やかな波の音が鳴り響く。 加えて――先ほど出会った男性の存在感もまた、彼女の中で靄のように残っていた。 落ち着かない、のかもしれない。 感動と恐怖と困惑、そして疎外感がないまぜになった心地だった。 地に足付いて歩いている。 目的も、思考も、信念も、願いも、何一つぶれてはいない。 だというのに、一歩一歩に重みが感じられない。 立体起動の鋭い三次元運動とは対極の、ふわふわとした感覚。 雲の上を歩いているよう、とでもいうべきか。 現実味がないのかもしれない。 自分の周りで広がる日常の姿を見渡して、彼女は思った。 照り返すアスファルトは鈍く黒く光っていた。舗装された道を学生たちは当たり前のように歩いている。 彼らはみな足下を見ていない。隣りの友人だったりあるいは空だったりを見て、ある者は笑い、またある者は寝むそうに眼をこすっている。 それでも彼らは迷うことなく歩いて行く。流れに従うまま、堂々と何の恐れもなく。 話し声が聞こえた。そのどれも意味もなく、重みもない、雑多なものだ…… その流れにあって彼女は取り残された心地だった。 目の前を通り過ぎている筈の彼らとの間には、しかし、長い長い空白が隔たっている。そんな気がしてならない。 手を伸ばせば触れることが出来る筈――いや本来ならば自分もまた、彼らと同じ流れの中にいるべきなのだ。 校門へと、学園へと続く一つの支流。 自分もまたその一部の筈だ。 少なくともこの場では、仮初といえども自分はここにいる。 しかし、遠い。 距離がある気がした。 与えられた制服の襟元を正す。 何度も手を通した服装だ。最初は生地や構造に戸惑いはしたが、もう慣れた。 しかし、今日はこの服さえも妙な座りの悪さを感じる。 固さ、だろうか。しかしこれは緊張とはまた違う。 そんな彼女――ミカサを現実へと引き戻したのは、悲鳴だった。 朝の学校、どこからか聞こえてきた悲鳴。重なる声。女性のものだ。 瞬間、ミカサはその身を硬くする。 すっ、と小さく息を吸う。制服に忍ばせたナイフを咄嗟に握りしめ、迅速かつ静かに辺りを警戒した。 しかし、辺りの様子は変っていなかった。 学生たちは何ら変った様子はない。当たり前のように笑い、当たり前のように歩いている。 彼らはミカサを置いていった。 急に立ち止まった彼女に振り返る様子もなく、学校へと流れ込んでいく。 取り残された。 そんな表現が今の状況には似合う気がした。 異変があれば即座に思考を切り替え戦場に適応する。 それはあまりにも当たり前のことだった。その当たり前は、しかしここでは、自分の周り数メートルの間でしか通用していなかった。 それはある意味当然のことだろう。自分にとってここは戦場だが、しかし彼らにとっては違う。 『……危険、ではないようだ』 背後からランサーの声が聞こえた。 確かに別に異変は感じられない。目の前では「平和」な日常が盤石の姿勢で横たわっている。 ミカサは無言で悲鳴の聞こえた方を確認する。そこには声を荒げる女子生徒らがいた。 顔に不満を滲ませてはいるものの、そこに切迫したものはない。ただその視線の先には走り去る一人の男が居た。 着ている服が違うな、とミカサは思った。 一般生徒用の黄土色のものとも、一部生徒の灰色のものとも違う、真っ黒な服だ。 学園内にあって一人浮いている。 端的にいえば、怪しい。 とはいえ――ランサーの言う通り別に危険な状況ではなさそうだった。 何があったのかは知らないが、女子生徒たちにも切迫したものは感じられない。 あの男の方も怪しいが、マスターであると決まった訳ではない。マスターであるならば何故あんな目立つ行動を取る意味も分からない。 ミカサは息を吐いた。 何にせよ、今日もまた平穏に「登校」できそうだった。 彼女自身全く学校というものを知らない訳ではない。実戦に耐えうるレベルまで若者を指導する場所、という意味では訓練兵団も学校といえば学校だ。 理解はできている。しかし、この月海原学園の雰囲気には僅かに戸惑いを覚える。 いや、この方舟の中にあって最初当惑しなかったものなどないと言っていいのだが、この学校は特に難しかった。 恐らく人が居るからだろう。全く違う人が、遠く決して交わらない筈のところにいた人が、ここには沢山いる。 『マスター』 ランサー、セルべリアが呼びかけてくる。 分かっている、と目で示す。あまり呆と立ち止まっている訳にはいかない。 序盤戦においてマスターとして露見することは絶対に避けねばならない。その為にもこの場所にも適応する。 難しくはないだろう。知識は与えられているし、目立つ行動さえ避ければ溶け込むことはできる。 月海原学園中等部三年在籍。ドイツからの転校生として、それらしく振舞う。それが昼の課題だった。 とはいえ――それも何時まで続くか分からない。 明日か、明後日か、もしかしたら次の瞬間にもこの学園が戦場と化すかもしれない。 故に警戒は忘れない。 目立つ為そう多く武装は持ちこめないが、それでも制服に幾つかナイフを潜ませている。 そして何よりランサーが居る。可能な限り霊体化させてその存在を秘匿するつもりだが、有事の際は躊躇わない。 一瞬の迷いは絶対の死を招く。そのことを彼女は知っていた。 だから学生たちの流れに紛れながら、ミカサは校門をくぐった。 その先に広がっているのは何時も通りの日常であり、戦場だ。 先の昂揚は既に収まっている。 一度意識を切り替えたことで逆に落ち着きが返ってきた。 この世界は遠いし、戸惑うことばかりで、そして――美しい。 だからこそ、彼女はこの道を歩くのだ。 そうして高まる集中の下、ミカサは見た。 大きく開け放たれた校門。その一角に潜んだ違和感を。 小さな小さな影だった。 ともすれば見逃してしまいそうな小ささで、しかし目を凝らせばはっきりとした存在感を持っている。 それは虫だった。 学園に打ちこまれた――毒蟲。 ◇ 「さて」 その小屋は捨てられたようなものだった。 元より貧相なものでしかなかっただろうが放置されたことで更に寂れ、床は塵が散乱し、立てつけは軋み、ぬめりと湿った空気は黴が生えているよう。 備え付けられた電球は黒澄み時節ばちばち、とか細い悲鳴を上げた。 人々から、そして街から忘れ去られた場所なのだろう。 あとは朽ちていくのみ。そこに滅びの美学などありはしない。ただ薄汚れ腐っていくだけだ。 だが、そんな空気をキャスター、シアン・シンジョーネは拒んではいなかった。 好悪を別にしても自分のような存在には似合っている、と思っていた。 近くで桜は眠りを取っている。 疲れていたのだろう。黴の生えた布団の寝心地など決してよくはないだろうが、すぅ、すぅ、と上下する胸は存外穏やかなものだった。 もしかすると――彼女もまたこの小屋を気に入っているのかもしれない。彼女もまた薄汚い暗闇に浸かって生きてきた。 「私は、私の仕事をしよう」 言いつつシアンを魔力の糸を辿っていた。 地下を走るマナラインに手を加え、この小屋を中心に渦巻くよう操作する。 作業自体はさほど難しいものではない。より代替的な拠点を構えるのならば話は別だが、この程度ならば数時間で終わるだろう。 進捗はまずまずといったところだった。キャスターとしての陣地作成スキルを活用し、この暗闇に魔力の糸をするすると通していく。 作業をしながら、シアンは己が得た情報を精査していく。 情報――それはかねてより「仕込み」をしていた月海原学園に関するものだ。 月海原学園はこの街の西部に位置する巨大な学園である。 規模は非常に大きく、初等部、中等部、高等部まで。知識としてしか学校を知らないシアンであるが、それでも大きな学校であることは分かった。 最も在籍人数が多いのは高等部で、次いで中等部。その在籍人数的にこの街に住む若者の大半はこの学校に通っていると言ってもいいだろう。 学力レベルも並、だがその割には海外からの留学生と思しき人間も多い。 部活動に目立ったものはないが、そこそこ大きな弓道場があるのが特徴か。その辺りは桜の知る穂群原学園と共通する。 桜と共に見聞した学園名簿だが、いわゆる「おかしな名前」探しはあまり効果的でないことが分かってきた。 理由は単純。多過ぎるからだ。転校生や奇妙な名前の生徒や教師は一人や二人ではなかった。学園の規模が大きいこともあって全てをマークするのは困難だった。 この辺りは予選に際して多くの若者をここに割り振った為だろうと予想できる。となると桜と話したジナコ・カリギリの名前もあまり怪しいとはいえなくなってきた。 マスターである可能性は高いが、予選に敗れたものかもしれない。ならば扱いはNPCと同じだ。 やはりそう簡単に「ずる」はできないか。 シアンは特に残念に思うことなく、次に打ち込んだ策について勘案する。 校門に隠した二匹の蟲。 あれによって得られた情報もまた芳しくなかった。 桜にも語ったことだが、露骨な対応をする者は登校する生徒の数と比して少ない。 加えて学園の規模も問題だ。おかしな名前の生徒の数が多いため得られる情報もまた過多といっていい。 蟲による監視はできても判断を下すのは自分だ。デジタルに処理することができない以上、どうしても時間がかからざるを得ない。 故に難航していた。情報を一つ一つ確認するのは、さしもの彼女といえど時間がかかった。 とはいえ――それも終わった。シアンは蟲が送ってきた情報を今しがた見聞し終えていた。 結果、最初に思いのほか成果が得られていた。 その中で確認できた反応は――四つ。 一人は眼鏡をした黒い髪の少女。制服からして中等部。 おさげを揺らす気の弱そうな彼女を蟲は捉えていた。 彼女は別に露骨な態度を取った訳ではない。だが結果的に彼女が最も分かりやすく反応してくれた。 校門を通る直前、彼女の身体を中心にして魔力の反応があったのだ。 一瞬、ほんの僅かな間であったが何らかの魔術が彼女の身体に作用し、気が付けば彼女は「転んで」いた。 その一瞬を潜んでいた蟲が感知した。 恐らく一方の、目立つように仕掛けた蟲の方を警戒したのだろう。 蟲が感知用なのか攻撃用なのか看破できなかった為、安全を期す為校門を通る瞬間に何らかの魔術を行使し――もう一方の蟲に察知された。 彼女にしてみれば慎重を期したのだろうが、度を越した慎重さは迂闊な行動に繋がる。 何もしなければシアンは彼女を見逃していただろう。ごくごく普通の少女である彼女は、最初から監視の対象に入っていなかった。 もしあれがサーヴァントがマスターを庇ってのものだとすれば、それはマスターをあまりにも信用していない。 「片方に気付いて過剰な対応――評価は『下』か」 評価を下したシアンは次の反応を思い起こす。 二人目は紫髪の少女。その容姿からこの街において異国の者と思われる。 彼女は校門を通る際、片方の蟲に注視している様子を見せた。 分かりやすく仕掛けた方には気付いたようだった。とはいえそれも一瞬のこと。特に何もせず彼女は校門を通っていった。 その反応には迷いはなく、確かな力量と経験を感じさせた。 そして、恐らくあれは――シオン・エルトナム・アトラシア、だ。 初期に桜が指摘した名前だけあって簡単な特徴などは入手していた。その特徴に彼女はことごとく合致している。 確認は必要だが、まず間違いない。 三人目はまたしても異国の少女。黒い髪をした西欧系の顔立ちをした中等部の女子生徒だ。 目立つよう仕掛けた蟲を見つけ、そして明らかに雰囲気が変った。 例えるならば鋭いナイフのように、すっと集中を高めたのだった。 しかし具体的に動きを見せた訳ではない。見つけたのち、過ぎに無言でその場を去っている。 ただあの反応は明らかに設定された「現代」の少女のそれではない。シアンの知る時代ように世界に危険がまだ溢れ――中でも彼女は戦いに身を置いていた人間であることが推し量れた。 「片方に気付いたがその場は無視――評価は『中』」 彼女らは佇まいには隙はなかった。こうして補足できたのも、彼女らがこの場にあって異国の存在という分かりやすい特徴があったからだろう。 そして、四人目。 最後の一人は教員だった。 額の広い金髪の教師、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト――教師は数が少ないため照合が簡単だ――はある意味最も警戒せねばならないだろう。 彼は全学園関係者中唯一もう一方の「本命」の蟲に気が付いた。 そして気が付いた上で、それらをこちらに喧伝してきた。 「両方に気付く――評価は『上』。だが……」 気付いた上で、それをこちらにわざわざ教えてくる。 それは魔術師としての確かな実力と高い自尊心を感じさせた。 かかってこい、とこちらに言ってきているのだ。それはあまりにも好戦的だが、同時にそれがなせるだけの力もまだ示している。 好戦的かつプライドの高い実力者。力量は底知れない。最も警戒すべき存在だ。 蟲が感知できたのはその四人だった。 やはり多い、とシアンは判断する。この時点で穂群原学園の三人の魔術師を越えている。 加えて何故か違った制服で登校してくる男など、怪しいは他にもいた。恐らくまだマスターが潜んでいる。 情報をまとめ終わったところで、シアンは思考を巡らせる。 手にしたこの情報をどう扱うべきか。この確かなアドバンテージをを生かさない手はない。 「まず警戒だな。『上』の者とは利用はおろか交渉も難しいだろう」 こちらの仕掛けた罠を看破した上で、わざわざそれを突き付けてくるようなマスターだ。 力に自信を持っている。底が見えない以上、不用意な接触は避けるべきだろう。 できれば策を弄し罠にかけるなり徒党を組むなりして叩きたい。 「次に『中』と『下』か……」 脳裏に浮かぶ三人の少女。 協力を求めるならば『中』の異国の少女たちに、利用を求めるならば『下』の眼鏡の少女に、それぞれ接触するべきだ。 力量としては恐らく『下』の少女が一番低い。だからこそ協力も不可能ではないだろうが、慎重過ぎる、あるいはマスターにも信用を置かないスタンスは組むに当たって厄介だ。 直接接触するのではなく、間接的に誘導することを狙うか。 『中』の二人はどちらも隙がない。魔術師として、あるいは戦士としての経験を感じた。 中でも紫髪のマスターは侮れない。見せた反応も本当に一瞬だった。 力量では彼女の方が上だろう。だがシアンは黒髪の少女の方に興味を持った。 「あれは、強いな」 力、ではない。 願いが、だ。 ある種正道を行く者の、揺るぎない意志を感じた。 統率された意志は時に最も強き刃となる。シアンはそのことを身を以て知っていた。 「……ともかく、一先ずは桜が目覚めるのを待つか」 シアンは眠りに耽る桜を見下ろし言った。 どんな選択を取るにせよ、勝手な行動をする気はない。 どうせ陣地作成が終わるまでは動けない。それが終わるまでは桜が起こすこともないだろう。 これが不自然な欠席とならないよう、桜はここ数日病弱な生徒を演じていた。 何よりこの人数だ。ちゃんと届け出を出せば一日休んだところで怪しまれはしないだろう。 故にシアンは待つ。 薄暗い闇の中に陣地を据え、次なる展開へ向けて息を潜めて待ち続ける…… 【C-1/山小屋/1日目 午前】 【間桐桜@Fate/stay night】 [状態]健康、睡眠 [令呪]残り三角 [装備]学生服 [道具]懐中電灯、筆記用具、メモ用紙など各種小物 [所持金]持ち出せる範囲内での全財産(現金、カード問わず) [思考・状況] 基本行動方針:生き残る。 1.キャスターに任せる。NPCの魂食いに抵抗はない。 2.直接的な戦いでないのならばキャスターを手伝う。 3.キャスターの誠意には、ある程度答えたいと思っている。 [備考] ※間桐家の財産が彼女の所持金として再現されているかは不明です。 ※キャスターから強い聖杯への執着と、目的のために手段を選ばない覚悟を感じています。  そして、その為に桜に誠意を尽くそうとしていることも理解しました。  その上で、大切な人について、キャスターにどの程度話すか、もしくは話さないかを検討中です。子細は次の書き手に任せます。 ※学校を休んでいますが、一応学校へ連絡しています。 【キャスター(シアン・シンジョーネ)@パワプロクンポケット12】 [状態]健康 [装備]学生服 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マナラインの掌握及び宝具の完成。 1.工房の完成。 2.学園に関する情報収集。 3.桜に対して誠意ある行動を取り、優勝の妨げにならないよう信頼関係を築く。 4.食料などの確保を行う。 [備考] ※工房をC-1に作成しています。 ※学園の入り口にはシアンの蟲が隠れており、名簿を見てマスターの可能性があると判断した人物の動向を監視しています。  日本人らしくない名前の人物に対しては特に注意しています。  ただし距離の関係から虫に精密な動作はさせる事はできません。 →結果としてほむら、ミカサ、シオン、ケイネスの情報を得ました。 ※『方舟』の『行き止まり』を確認しました。 【C-3/月海原学園/一日目 午前】 【ミカサ・アッカーマン@進撃の巨人】 [状態]:健康 [令呪]:残り三画 [装備]:無し [道具]:シャアのハンカチ 身体に仕込んだナイフ     (以降自宅)ヴァルキュリアの槍、立体起動装置、スナップブレード、予備のガスボンベ(複数) [所持金]:普通の学生程度 [思考・状況] 基本行動方針:いかなる方法を使っても願いを叶える。 1.月海原学園で日常をこなす。 2.シャアに対する動揺。調査をしたい。 [備考] ※シャア・アズナブルをマスターであると認識しました。 ※中等部に在籍しています。 ※校門の蟲の一方に気付きました。 【ランサー(セルベリア・ブレス)@戦場のヴァルキュリア】 [状態]:健康 [装備]:Ruhm [道具]:ヴァルキュリアの盾 [思考・状況] 基本行動方針:『物』としてマスターに扱われる。 1.ミカサ・アッカーマンの護衛。 [備考] 無し。 【真玉橋孝一@健全ロボ ダイミダラー】 [状態]健康 [令呪]残り2画 [装備]学生服(月海原学園の制服に手を加えたもの、旧制服に酷似しているらしい) [道具]学生鞄、エロ本等のエロ目的のもの [所持金]通学に困らない程度(仕送りによる生計) [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い 1.今のところは普通に通学する。 でもかったるい。 2.ウェイバーたちと話し合ってみる。 [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。 【セイバー(神裂火織)@とある魔術の禁書目録】 [状態]健康  [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝狙い 0.はぁ…… 1.マスター(考一)の指示に従い行動する 2.バーサーカー(デッドプール)に関してはあまり信用しない [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。 ※Hi-ERo粒子により補充された魔力は消費しました。 そして本鈴が鳴り響き、月海原学園は新たな一日を迎えた。 それぞれのクラスで児童や生徒たちが席につく。教師たちや事務員たちも己の職務に従事し始めた。 今日この日、何時ものように学園へとやってきたマスターは七人。 高等部教師ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは仮初の主の言葉に従い、ぎこちなくも教師を行っている。 高等部三年生の本多正純は今までにない生活に戸惑いつつも適応し、己のサーヴァントと連絡を取りつつも生活に適応している。 高等部n年生のシオン・エルトナム・アトラシアはキャスターの蟲に気付き、そして担任のケイネスと視線を交わらせた。 高等部二年生の真玉橋孝一は何も考えず、何も偽らず、己が欲望に忠実であろうとした。 高等部一年生の武智乙哉は明るく笑い、辺りに善意を振りまきながら、その鋏を懐に忍ばせている。 中等部三年生のミカサ・アッカーマンは世界への動揺を強い意志で落ち着かせ学園へと赴いた。 中等部二年生の暁美ほむらはもう一人の自分に手を引かれ「友達」を作れと囁かれた。 そして、学園に潜むサーヴァントはセイバー、アーチャー、ランサー、キャスター二騎……の五騎。 真玉橋孝一とシオン、ミカサ、暁美ほむらは自らのサーヴァントを連れ添って登校した。 教師ケイネスのキャスター、ヴォルデモートは生徒たちを洗脳し狡猾な罠を巡らしている。 それだけではない。この学園を取り巻く外部にも、影はある。 間桐桜のキャスター、シアン・シンジョーネは外部に拠点を終え学園を狙っている。 衛宮切嗣は搬入業者に暗示を掛け学園に忍び込ませようとした。 そして、購買部店員言峰綺礼は与えられた役割に従事する為、購買の搬入へと向かっていた。 こうして学園を渦巻く因縁は重なっていく。 表面上は何時もと何も変わらなくとも、そこは既に戦場だった。 それでも鐘はなる。 何時もと変らぬ調子、何時もの変わらぬ音を鈍く響かせる。 始まりの鐘が。 ---- |BACK||NEXT| |070:[[ソラの政治家達]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|072:[[Devil Flamingo ]]| |070:[[ソラの政治家達]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|072:[[Devil Flamingo ]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |059:[[何処までも暗い闇の中]]|[[間桐桜]]&キャスター([[シアン・シンジョーネ]])|094:[[蟲のキャスターは餌を撒く]]| |038:[[母なる海]]|[[ミカサ・アッカーマン]]&ランサー([[セルベリア・ブレス]])|~| |040:[[故郷とおっぱいは遠くにありて思うもの]]|[[真玉橋孝一]]&セイバー([[神裂火織]])|090:[[健全ロボダイミダラー 第X話 悲劇! 生徒会副会長の真実!]]|

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