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国と力と栄えとは限りなく汝のものなればなり」(2014/08/25 (月) 22:50:05) の最新版変更点

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**国と力と栄えとは限りなく汝のものなればなり◆ACfa2i33Dc 夜も明けぬ内に、アレクサンド・アンデルセンとそのサーヴァント――或いは、ヴラド三世とその従者はホテルを出た。 夜の闇。 それを駆逐するかのように、ビル街はその灯りを煌々と煌かせている。 中世のルーマニアに生きたヴラドにとっては、サーヴァントとして知識にはあれど見たことは無い光景だった。 ――もっとも、現代世界に生きていたアンデルセンにとっても、この街並みが見知らぬ物であるということには変わりはない。 「何故だ」 神父の呟いた言葉は霊体化しているランサーに向けたモノか、或いは独り言か。 「何故方舟は、戦いにこの異教の地を選んだ?」 今回の聖杯戦争――その舞台は、彼等にとって東の極地、日本の街並みを模して作られている。 故にこの地に住まう人間は、そのほとんどがカトリックではない。異教徒だ。 「ブッディスト……あるいはシャーマニズムか、シントーか。  どれにしろ、この地が主への信仰に拠っているわけではあるまい」 カトリック――あるいは聖地、そうでなくとも(この二人には非常に業腹なことだが)プロテスタントやユダヤの地ならばまだ理解はできる。 納得はせずとも、そうなるだけの理由が存在するとは分かる。 だが、日本。 主と父の御名が届かぬ異教の地を、何故方舟は選んだのか。 『ムーンセル・オートマトン』 その疑問に、霊体化したままヴラドは返答する。 『既に知識としては知っているだろうが――この地は、ムーンセルが再現した仮初の世界に過ぎん。  この聖杯戦争に参加した者の記憶――そして、過去に聖杯戦争が行われた土地のコピーから作りだされた、な』 「聖杯戦争、か」「『主の血を受けた器』を騙るとは、不敬も過ぎる話だ」 その返答を聞いた神父は溜息を吐くと、目に宿る狂信を隠さずに呟く。 『だが、聖杯はその名に相応しい力を持つ願望機だ。  それは神父、お前の魂を拾い上げたことからでもわかろう』 「『主は私のたましいを生き返らせ、御名のために、私を義の道に導かれます。』、か?  ――そのようなことは、俺は信じてはおらぬ。  俺は救いを受けられず、地獄に堕ちる身。ならば――俺が魂を拾われたのが主の思し召しであるならば、俺にはならねばならぬ義が存在する筈だ」 主の教えの救いとは魂の救済だ。 消滅し、地獄に落ちるのみであったアンデルセンには与えられてはならぬものだ。 故に、アンデルセンはこれが救いとは信じぬ。 聖杯に救いを願うつもりもない。 この戦争がどのような結末に終わろうと、神父は地獄に落ちるのみと決めている。 『聖杯戦争を通して為すべきこと、か。  ならば神父よ。余とお前がこうして出会ったのも、或いは主の御心故、かもしれんな』 その純粋過ぎる狂信にこそ、ヴラドは好意を抱いた。 それは一種の敬意であり、同族意識でもあった。 「主の御心がまだ向けられているというならそれはお前の方だろう、王よ」 アンデルセンもまた、そんなヴラドに敬意を抱いていた。 故に彼等はマスターとサーヴァントであり、王と従者である。 『……む』 「どうした、王よ」 なにかに気を留めた風な声を挙げたヴラドに、神父は意識をやった。 殺気は感じない――敵の物だけでなく、ヴラドのそれも。 ならば襲撃者に気付いたというわけではないだろう。 『神父よ。コンビニだ』 「……」 霊体化したヴラドが指差した(と思われる)先には、24時間営業のコンビニが建っていた。 店内では、丁度NPCらしき店員が棚の整理をしている。 ヴラドの意を察した神父は、迷わずコンビニに入店した。 『知識としてはあったが、便利だな。  どのような時間でも開いている店とは』 十数分後。 パンや飲料水、牛乳を詰めたコンビニ袋を手に提げて道を歩く神父に、ヴラドは上機嫌で喋りかけていた。 「まぁ、助かりはした。  土地柄コメしか売っていないのかとも思っていたが、そうでなかったのはありがたい話だ」 サーヴァントには食事は必要ない。 アンデルセンにしても既に食事はとっていたが、これからを思えば今買っておくに越したことはなかった。 神父とランサーがホテルを離れたのは、なにも街並みを見物するのが理由ではない。 これからの戦いにおける『領土』を作るためである。 ヴラドのスキル、『護国の鬼将』。 予め地脈を確保することにより領土とし、ヴラドを領主と定めるスキルである。 領土の内で戦う限り、ヴラドは狂戦士のサーヴァントが持つ最強度の狂化スキルと同等の戦闘力強化を手に入れることができるのだ。 故に神父とヴラドは、街の外れに領地を定めるべく行動している。 手っ取り早く領地を街中に定めなかった理由は簡単だ。 『余の宝具は街中で使うには剣呑すぎるからな』 【極刑王(カズィクル・ベイ)】―― 己の領土の内に無数の杭を生み出し、敵対者を串刺しにするヴラドの宝具。 その領土の内では攻撃と防御、更に敵対者の退路を塞ぐ効果を兼ねる非常に強力な代物ではあるが、しかしそれ故に街中で使用するのは憚られる。 攻撃範囲は半径1Km、最大補足人数は666人。 領土の外ではその効力を失うため実際に市街地でそこまでの効果を発揮するかは不明瞭だが、NPCを巻き込む可能性は十分にある。 多数のNPCが存在するホテル内で使うなどもっての他だろう。 ついでに言えば、アンデルセンの勤める『役割』にも原因はあった。 孤児院の院長を務める神父――それがアンデルセンがこの聖杯戦争で割り当てられた役割である。 たとえNPCであろうとも、子供達を戦火に巻き込むような思考は神父にもヴラドにもない。 『とはいえ、何度も孤児院と拠点を行き来していれば他のマスターに勘付かれるだろうがな』 「それはこちらとしても望むところだろう? わざわざ死地へと踏み込んでくれるならば」 この場合警戒すべきは遠距離攻撃や範囲攻撃を持ったサーヴァントだろう。 如何に領地の中でのヴラドが強力であろうと、拠点ごと吹き飛ばされたり、圧倒的なアウトレンジから狙撃を受ければ不利は免れない。 その為にも、領地に籠るだけではなく孤児院での生活と街中での活動は必要だった。 こちらの脅威になる組を先んじて把握し、杯を託すに相応しい者を探す。 幸い、こちらは神父だ。マスターはともかく、NPC相手には悪い印象を与えるようなことはあるまい。 『ところで神父よ。聖杯を託すに相応しい者がいたとして、お前はどうするのだ?  この聖杯戦争、最後に残るのが一組だけなのはわかっているだろう』 「それが絶対的に決まっている訳ではあるまい。他に方法があるならばそれを探す。  俺を犠牲にしてそれが叶うならばそれでもいいだろう」 『聖杯を託すに足る者が見つかれば、お前はそいつの為に殉教すると?』 「無論だ。他に叶えるべきものがいるならば、俺の願いなど叶えられるべきではない。  無論、お前をアーカードと戦わせ、吸血鬼の逸話を一掃するというお前の願いは叶ってもらわなければ困るがな」 『ならばその者のサーヴァントが望むなら、その者とお前でサーヴァントを交換するのが一番早いだろう。  そのようなサーヴァントがいるかは疑わしいがな』 「最悪、俺とお前で勝ち残り、俺の願いと引き換えにそいつの願いを叶える。  箱舟が運ぶべきなのは、俺などの魂よりもそいつだろうよ」 数刻の後。 アンデルセンの視野に写るのは、山の近くに建てられた廃教会だった。 元は純白であったろう壁は薄汚れ、蔦が這いずっている。 広大な庭は荒れ果て、元は整えられていたのだろう光景を余計に寂しいものに見せていた。 『――廃れた教会か。  余とお前の領土としては、皮肉が効いているかもしれんな』 打ち捨てられ、見捨てられた教会。 その姿は、神に仕え、しかし神を信じるままに神より離れた存在となったアンデルセンとヴラドを象徴しているとも言えるかもしれなかった。 「俺とお前が打ち棄てられた教会ならば、あの女は正しい教会か?  それこそ下らん皮肉だぞ、王よ」 だが、アンデルセンはそれを否定した。 アンデルセンが覚醒した時、現れた管理NPC――カレン・オルテンシア。 教会は彼女の管轄下のゾーンとして扱われている――アンデルセンが『教会の神父』という役割を割り振られなかったのもそのせいだろう。 本人曰く――『司祭代理』。 代理であろうと、女性が教会の司祭を務めるなど、本来有り得ないことだ。 しかしアンデルセンが彼女に思うものがある理由は、それではない。 「奴は神に仕えるのではなく、神に仕える自分に仕えている」 『陶酔していると?』 「違う。奴にとって仕えるに足る存在であるのならば、それが何であってもいいのだ。  異教であろうと、それこそ聖杯であろうとな。  奴にとって信仰とは、自らを安定させる手段に過ぎぬ。  ――神の力に仕えるよりは好感は持てるがな。  なにより、信仰の元がどうであれ、あの女が俺と同じ狂信者には変わるまい」 そう。“悪魔を狩る信仰者”という点において、カレン・オルテンシアの原型とアレクサンド・アンデルセンには変わりがない。 だからこそ、同じ狂信者であるアンデルセンの目には彼女と自分の違いが明らかなものとして写っている。 『だから気に食わぬ、と?』 「違うさ。同じ神を信仰する以上、同胞ではある。  根こそ不安定だが、あの女の信仰は純粋だ。だが、主義は合わん」 それだけ言うと、アンデルセンはヴラドを教会の中へ入るように促してこう言った。 「『あなたは、祈るときには自分の奥まった部屋にはいりなさい。  そして、戸をしめて、隠れた所におられるあなたの父に祈りなさい。』  『そうすれば、隠れた所で見ておられるあなたの父が、あなたに報いてくださいます。』  ――祈れ、王よ。俺にはその資格は無いが、お前が祈れば神も答えるかもしれん」 【アレクサンド・アンデルセン@HELLSING】 [状態]健康 [令呪]残り二画 [装備]無数の銃剣 [道具]パンや牛乳、飲料水の入ったコンビニ袋 [所持金]そこそこある [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を託すに足る者を探す。存在しないならば自らが聖杯を手に入れる。 1.ヴラドが領土を構築するのを待つ。 2.昼は孤児院、夜は廃教会(領土)を往復しながら、他の組に関する情報を手に入れる。 3.戦闘の際はできる限り領土へ誘い入れる。 [備考] 箱舟内での役職は『孤児院の院長を務める神父』のようです。 聖杯戦争について『何故この地を選んだか』という疑念を持っています。 【ランサー(ヴラド三世)@Fate/apocrypha】 [状態]健康 [装備]サーヴァントとしての装備 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:勝利し、聖杯を手に入れる。 1.廃教会に領土を構築する。 2.アンデルセンと情報収集を行う。アーチャーなどの広域破壊や遠距離狙撃を行えるサーヴァントを警戒。 3.聖杯を託すに足る者をアンデルセンが見出した場合は同盟を考えるが、聖杯を託すに足らぬ者に容赦するつもりはない。 [備考] D-9に存在する廃教会にスキル『護国の鬼将』による領土を設定しようとしています。 ---- |BACK||NEXT| |051:[[夜の始まり]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|053:[[落とし穴の底はこんな世界]]| |051:[[夜の始まり]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|030:[[ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・エンペラー]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |009:[[アレクサンド・アンデルセン&ランサー]]|[[アレクサンド・アンデルセン]]&ランサー([[ヴラド三世]])|069:[[あなたのお家はどこですか?]]|
*国と力と栄えとは限りなく汝のものなればなり ◆ACfa2i33Dc 夜も明けぬ内に、アレクサンド・アンデルセンとそのサーヴァント――或いは、ヴラド三世とその従者はホテルを出た。 夜の闇。 それを駆逐するかのように、ビル街はその灯りを煌々と煌かせている。 中世のルーマニアに生きたヴラドにとっては、サーヴァントとして知識にはあれど見たことは無い光景だった。 ――もっとも、現代世界に生きていたアンデルセンにとっても、この街並みが見知らぬ物であるということには変わりはない。 「何故だ」 神父の呟いた言葉は霊体化しているランサーに向けたモノか、或いは独り言か。 「何故方舟は、戦いにこの異教の地を選んだ?」 今回の聖杯戦争――その舞台は、彼等にとって東の極地、日本の街並みを模して作られている。 故にこの地に住まう人間は、そのほとんどがカトリックではない。異教徒だ。 「ブッディスト……あるいはシャーマニズムか、シントーか。  どれにしろ、この地が主への信仰に拠っているわけではあるまい」 カトリック――あるいは聖地、そうでなくとも(この二人には非常に業腹なことだが)プロテスタントやユダヤの地ならばまだ理解はできる。 納得はせずとも、そうなるだけの理由が存在するとは分かる。 だが、日本。 主と父の御名が届かぬ異教の地を、何故方舟は選んだのか。 『ムーンセル・オートマトン』 その疑問に、霊体化したままヴラドは返答する。 『既に知識としては知っているだろうが――この地は、ムーンセルが再現した仮初の世界に過ぎん。  この聖杯戦争に参加した者の記憶――そして、過去に聖杯戦争が行われた土地のコピーから作りだされた、な』 「聖杯戦争、か」「『主の血を受けた器』を騙るとは、不敬も過ぎる話だ」 その返答を聞いた神父は溜息を吐くと、目に宿る狂信を隠さずに呟く。 『だが、聖杯はその名に相応しい力を持つ願望機だ。  それは神父、お前の魂を拾い上げたことからでもわかろう』 「『主は私のたましいを生き返らせ、御名のために、私を義の道に導かれます。』、か?  ――そのようなことは、俺は信じてはおらぬ。  俺は救いを受けられず、地獄に堕ちる身。ならば――俺が魂を拾われたのが主の思し召しであるならば、俺にはならねばならぬ義が存在する筈だ」 主の教えの救いとは魂の救済だ。 消滅し、地獄に落ちるのみであったアンデルセンには与えられてはならぬものだ。 故に、アンデルセンはこれが救いとは信じぬ。 聖杯に救いを願うつもりもない。 この戦争がどのような結末に終わろうと、神父は地獄に落ちるのみと決めている。 『聖杯戦争を通して為すべきこと、か。  ならば神父よ。余とお前がこうして出会ったのも、或いは主の御心故、かもしれんな』 その純粋過ぎる狂信にこそ、ヴラドは好意を抱いた。 それは一種の敬意であり、同族意識でもあった。 「主の御心がまだ向けられているというならそれはお前の方だろう、王よ」 アンデルセンもまた、そんなヴラドに敬意を抱いていた。 故に彼等はマスターとサーヴァントであり、王と従者である。 『……む』 「どうした、王よ」 なにかに気を留めた風な声を挙げたヴラドに、神父は意識をやった。 殺気は感じない――敵の物だけでなく、ヴラドのそれも。 ならば襲撃者に気付いたというわけではないだろう。 『神父よ。コンビニだ』 「……」 霊体化したヴラドが指差した(と思われる)先には、24時間営業のコンビニが建っていた。 店内では、丁度NPCらしき店員が棚の整理をしている。 ヴラドの意を察した神父は、迷わずコンビニに入店した。 『知識としてはあったが、便利だな。  どのような時間でも開いている店とは』 十数分後。 パンや飲料水、牛乳を詰めたコンビニ袋を手に提げて道を歩く神父に、ヴラドは上機嫌で喋りかけていた。 「まぁ、助かりはした。  土地柄コメしか売っていないのかとも思っていたが、そうでなかったのはありがたい話だ」 サーヴァントには食事は必要ない。 アンデルセンにしても既に食事はとっていたが、これからを思えば今買っておくに越したことはなかった。 神父とランサーがホテルを離れたのは、なにも街並みを見物するのが理由ではない。 これからの戦いにおける『領土』を作るためである。 ヴラドのスキル、『護国の鬼将』。 予め地脈を確保することにより領土とし、ヴラドを領主と定めるスキルである。 領土の内で戦う限り、ヴラドは狂戦士のサーヴァントが持つ最強度の狂化スキルと同等の戦闘力強化を手に入れることができるのだ。 故に神父とヴラドは、街の外れに領地を定めるべく行動している。 手っ取り早く領地を街中に定めなかった理由は簡単だ。 『余の宝具は街中で使うには剣呑すぎるからな』 【極刑王(カズィクル・ベイ)】―― 己の領土の内に無数の杭を生み出し、敵対者を串刺しにするヴラドの宝具。 その領土の内では攻撃と防御、更に敵対者の退路を塞ぐ効果を兼ねる非常に強力な代物ではあるが、しかしそれ故に街中で使用するのは憚られる。 攻撃範囲は半径1Km、最大補足人数は666人。 領土の外ではその効力を失うため実際に市街地でそこまでの効果を発揮するかは不明瞭だが、NPCを巻き込む可能性は十分にある。 多数のNPCが存在するホテル内で使うなどもっての他だろう。 ついでに言えば、アンデルセンの勤める『役割』にも原因はあった。 孤児院の院長を務める神父――それがアンデルセンがこの聖杯戦争で割り当てられた役割である。 たとえNPCであろうとも、子供達を戦火に巻き込むような思考は神父にもヴラドにもない。 『とはいえ、何度も孤児院と拠点を行き来していれば他のマスターに勘付かれるだろうがな』 「それはこちらとしても望むところだろう? わざわざ死地へと踏み込んでくれるならば」 この場合警戒すべきは遠距離攻撃や範囲攻撃を持ったサーヴァントだろう。 如何に領地の中でのヴラドが強力であろうと、拠点ごと吹き飛ばされたり、圧倒的なアウトレンジから狙撃を受ければ不利は免れない。 その為にも、領地に籠るだけではなく孤児院での生活と街中での活動は必要だった。 こちらの脅威になる組を先んじて把握し、杯を託すに相応しい者を探す。 幸い、こちらは神父だ。マスターはともかく、NPC相手には悪い印象を与えるようなことはあるまい。 『ところで神父よ。聖杯を託すに相応しい者がいたとして、お前はどうするのだ?  この聖杯戦争、最後に残るのが一組だけなのはわかっているだろう』 「それが絶対的に決まっている訳ではあるまい。他に方法があるならばそれを探す。  俺を犠牲にしてそれが叶うならばそれでもいいだろう」 『聖杯を託すに足る者が見つかれば、お前はそいつの為に殉教すると?』 「無論だ。他に叶えるべきものがいるならば、俺の願いなど叶えられるべきではない。  無論、お前をアーカードと戦わせ、吸血鬼の逸話を一掃するというお前の願いは叶ってもらわなければ困るがな」 『ならばその者のサーヴァントが望むなら、その者とお前でサーヴァントを交換するのが一番早いだろう。  そのようなサーヴァントがいるかは疑わしいがな』 「最悪、俺とお前で勝ち残り、俺の願いと引き換えにそいつの願いを叶える。  箱舟が運ぶべきなのは、俺などの魂よりもそいつだろうよ」 数刻の後。 アンデルセンの視野に写るのは、山の近くに建てられた廃教会だった。 元は純白であったろう壁は薄汚れ、蔦が這いずっている。 広大な庭は荒れ果て、元は整えられていたのだろう光景を余計に寂しいものに見せていた。 『――廃れた教会か。  余とお前の領土としては、皮肉が効いているかもしれんな』 打ち捨てられ、見捨てられた教会。 その姿は、神に仕え、しかし神を信じるままに神より離れた存在となったアンデルセンとヴラドを象徴しているとも言えるかもしれなかった。 「俺とお前が打ち棄てられた教会ならば、あの女は正しい教会か?  それこそ下らん皮肉だぞ、王よ」 だが、アンデルセンはそれを否定した。 アンデルセンが覚醒した時、現れた管理NPC――カレン・オルテンシア。 教会は彼女の管轄下のゾーンとして扱われている――アンデルセンが『教会の神父』という役割を割り振られなかったのもそのせいだろう。 本人曰く――『司祭代理』。 代理であろうと、女性が教会の司祭を務めるなど、本来有り得ないことだ。 しかしアンデルセンが彼女に思うものがある理由は、それではない。 「奴は神に仕えるのではなく、神に仕える自分に仕えている」 『陶酔していると?』 「違う。奴にとって仕えるに足る存在であるのならば、それが何であってもいいのだ。  異教であろうと、それこそ聖杯であろうとな。  奴にとって信仰とは、自らを安定させる手段に過ぎぬ。  ――神の力に仕えるよりは好感は持てるがな。  なにより、信仰の元がどうであれ、あの女が俺と同じ狂信者には変わるまい」 そう。“悪魔を狩る信仰者”という点において、カレン・オルテンシアの原型とアレクサンド・アンデルセンには変わりがない。 だからこそ、同じ狂信者であるアンデルセンの目には彼女と自分の違いが明らかなものとして写っている。 『だから気に食わぬ、と?』 「違うさ。同じ神を信仰する以上、同胞ではある。  根こそ不安定だが、あの女の信仰は純粋だ。だが、主義は合わん」 それだけ言うと、アンデルセンはヴラドを教会の中へ入るように促してこう言った。 「『あなたは、祈るときには自分の奥まった部屋にはいりなさい。  そして、戸をしめて、隠れた所におられるあなたの父に祈りなさい。』  『そうすれば、隠れた所で見ておられるあなたの父が、あなたに報いてくださいます。』  ――祈れ、王よ。俺にはその資格は無いが、お前が祈れば神も答えるかもしれん」 【アレクサンド・アンデルセン@HELLSING】 [状態]健康 [令呪]残り二画 [装備]無数の銃剣 [道具]パンや牛乳、飲料水の入ったコンビニ袋 [所持金]そこそこある [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を託すに足る者を探す。存在しないならば自らが聖杯を手に入れる。 1.ヴラドが領土を構築するのを待つ。 2.昼は孤児院、夜は廃教会(領土)を往復しながら、他の組に関する情報を手に入れる。 3.戦闘の際はできる限り領土へ誘い入れる。 [備考] 箱舟内での役職は『孤児院の院長を務める神父』のようです。 聖杯戦争について『何故この地を選んだか』という疑念を持っています。 【ランサー(ヴラド三世)@Fate/apocrypha】 [状態]健康 [装備]サーヴァントとしての装備 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:勝利し、聖杯を手に入れる。 1.廃教会に領土を構築する。 2.アンデルセンと情報収集を行う。アーチャーなどの広域破壊や遠距離狙撃を行えるサーヴァントを警戒。 3.聖杯を託すに足る者をアンデルセンが見出した場合は同盟を考えるが、聖杯を託すに足らぬ者に容赦するつもりはない。 [備考] D-9に存在する廃教会にスキル『護国の鬼将』による領土を設定しようとしています。 ---- |BACK||NEXT| |051:[[夜の始まり]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|053:[[落とし穴の底はこんな世界]]| |051:[[夜の始まり]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|030:[[ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・エンペラー]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |009:[[アレクサンド・アンデルセン&ランサー]]|[[アレクサンド・アンデルセン]]&ランサー([[ヴラド三世]])|069:[[あなたのお家はどこですか?]]|

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