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*形なき悪意 ◆IbPU6nWySo 「ああっ!」 折角寝ようとした時にジナコ・カリギリは重要な事に気づいてしまう。 今日は燃えるゴミの日。引きこもりとはいえゴミ屋敷に引きこもりたくない。 今日こそ、今日こそはゴミは出さなくては。 脳裏に浮かぶ黒い影(黒い生物の方が正しいか) しかし、ヤクザことアサシンはここにはいない。 ジナコは引きこもりとはいえ以前も買い物をする為には外には出るくらいだ。 「うー…折角ケーキ買いに行ってくれたのに呼び戻しちゃうなんて  もったいないッスよね…このくらいは……」 それが凶だった。 ジョンス・リーはある程度の買い物を済ませた。 テイクアウトの牛丼を二つ。(サーヴァントは食事がいらない) そして包帯。 近頃のコンビニには何でも揃っている。 ジョンスも本当にあるのかと半ば疑ったくらいだ。 そして、閑静な住宅街にある遊具が二つ程度しかない公園のベンチで待つれんげのところへ戻った。 「ほら買ってきたぞ」 「八極拳、ありがとなん!すごいん!朝から牛丼!!」 「あと飯食う前にだな…」 「手、洗うん!!」 案外、律儀だな… 公園の水道で手を洗うれんげ。 彼女が戻って来ると、右手の甲にあった令呪を少し見つめてから 「これ。落ちないん」 「…」 ジョンスは黙ってれんげが差し出す手に包帯を巻いた。 令呪を見せびらかす事はマスターであると自分から晒しに向かうのようなもの。 れんげは聖杯戦争を理解していないからこそ最低限の事はジョンスもしてやった。 包帯を巻き終えると、れんげは不思議そうにジョンスへ問う。 「病気なん?」 「こうしておけば治る。包帯取んじゃねェぞ」 「わかったん!」 何事もなかったかのように「いただきます」の掛け声をした後、れんげは牛丼を食べ始める。 ジョンスは何故だが溜息を漏らした。 子供の子守りなんて性に合わないものの、カッツェをこの手で倒す術を見つけるまでだ。 その時、ふとした疑問が浮かぶ。 カッツェを倒した時――れんげはどうなるのだろうか、と。 「あのぉ…すいません。そこいいでしょうかぁ……」 「……」 オドオドしくジョンスに話しかけてきたのはいかにもホームレスの容姿をした男。 他にも何人かのホームレスの姿があり、別のベンチでたむろい出していた。 どうやらここはホームレスの格好の場らしい。 確かにここは子供すら近づかないだろう。 ジョンスは食事をしているれんげを確認してから答えた。 「飯食い終わるまで待ってろ」 「はぁ……でも私もたらい回しにされているんですよ…  ほら、近頃物騒じゃないですか。そのせいで警察の人たちに移動しろ移動しろって……」 「そいつは運が悪かったな。飯食い終わったらどいてやる」 ジョンスが牛丼を口にしようとした時。 前ぶれもなく男がジョンスに掴みかかってきた。 その衝撃はれんげにも及び、彼女が手にしていた牛丼が地面に放り出され、 あっとれんげは全てを理解すると虚しさがこみあげ、涙を浮かべた。 そんなこと露知らず、ホームレスの男は言う。 「こっちの事情も知らないで、何だテメェーーー!!!  人前で飯なんか食いやがって!こちとらまだ食事にもありつけてねぇってのに!!!」 一瞬、一撃を食らわせようと考えたジョンスだが手を止めた。 NPCへの被害を及ぼさない為にルーラーが出現したこと。 彼女は再度通告があるようならばペナルティを設けるという話を忘れていない。 アーチャーやアサシンが何もアクションを起こさないということは この男はマスターではなくNPCのはず…もしや、またルーラーが出現するのでは。 「はァ…面倒くせェ……」 ジナコが見た光景は向かいにある公園での喧嘩だった。 聖杯戦争の一環なのかと疑ったが、どうやらそうではないらしい。 だが、明らかに異様を感じる。 男が無抵抗なことではなく、周囲の状況だ。 いくら街外れとはいえジナコのように住人はいる。 近所の住人や公園でたむろっていたホームレスもその光景に目を取られて立ち止まっていた。 しかし、警察が駆けつける様子がない。 誰も止めに入ろうとはしない。 それどころか学生などが面白半分に動画や写真撮影をしているのだ。 狐に包まれたような感覚を覚えたジナコは、一際目立つ少女の存在に気づく。 あの子…もしかして、あの人の娘さんか何かッスかね……? 第三者であるジナコは異常を覚えたものの。 決して関わろうとはしなかった。 すると、その喧嘩の間に男が一人割り込む。 赤いコートを着た男はかなりの長身で、ジナコも日本人ではないだろうと推測できた。 ホームレスの男の方が言う。 「なんだテメェ!」 「なにも問題ない」 男の声には妙な説得感があった。 ジナコも男の声に痺れそうになったものの何とか正気を保っている。 周囲の野次馬を見渡してから、男はもう一度 「なにも問題はない」 「……なにも 問題 ない…」 ゾロゾロと人々が立ち去って行く。 折角、拠点を作ろうとしたホームレスたちも虚ろな目をして立ち去って行った。 学生は学校へ、サラリーマンは仕事場へ、主婦は自宅へ。 全員がそれぞれの巣へ戻るかのように散り散りとなった。 この異様な光景にジナコは戦慄を覚える。 なんッスかこれ!?ま、まさか、サーヴァント!? ジナコがあわあわと眺めていると、例の赤いコートの男が真っ直ぐ自分を捉えているのに気付いた。 「ひぃぃっ!」 ちょっとでもいいや、と慢心したのを後悔しながらジナコは慌ててアサシンを呼ぼうと判断する。 が。 背後から肩を叩かれ、それどころではなくなる。 ビクッ!と反応しながら振り向くと 赤いコートの男よりも長身な存在がニタリと笑みを浮かべてジナコの背後にいたのだ。 突然のことにジナコは叫ぶ暇もない。 「おはにゃんぱすーwwwwwwwww  あらぁ~よく見たらかわいい子ぉ。それじゃぁwwwwwwwwww」 「え!?ええっ!?ちょ、んっ、~~~~~~~~~~~~っ!?!?!??!」 キスされた。 いきなりキスされた。しかも、奇怪な存在に、長身でいかにも不審者で、しかもサーヴァント相手に。 ジナコにとってこれだけで十分。 彼女は気絶した。 お祭り騒ぎが終わったかのような静寂感。 誰もいなくなった公園にいるれんげたち。 これ…… この空漠はれんげも以前感じていた。 彼女の村も今は似たような雰囲気を醸し出していた。 「うちの村だけじゃないん…都会もこうなっているのん……」 「普通だろ」 ジョンスは落ちた牛丼に溜息ついて、自分の牛丼をれんげに差し出した。 それを受け取りながられんげは話す。 「…うちの村……みんな仲良かったん。のんびりのどかな村だったのん……  でも最近なんだか八極拳にしたみたいな喧嘩するん。うち、みんなに仲良くなって欲しいん…」 「……」 「あ!あっちゃん、かっこよかったん!ありがとなん!!  あっちゃんもかっちゃんみたいな宇宙人さんなんですかっ!」 「私は吸血鬼だが」 ジョンスはアサシン(カッツェ)が宇宙人なのか、という突っ込みをしたかったが。 れんげにとってはアーチャーが吸血鬼だという事実に衝撃を受けていた。 ジョンスも冷静になって思う。 もう太陽が出ている。 日光直下。 しかし、アーチャーは平然と存在していた。 「あっちゃん!早く日影に行くんーーーーーーーーー!!死んじゃうんーーーーーー!!!」 「私は太陽が苦手なだけだ。別に死にはしない」 「で、でも!一応日影に行くん!!大変なのん!!」 「…そうか」 「ニンニクとか嫌いなん?」 「泳ぐのは面倒なくらいだ」 「血とか…その食べるん?」 「…吸って欲しいか?」 「あっ、ま、待って欲しいん……心の準備が…」 「なんで吸われる前提になってんだよ。冗談はやめておけ、アーカード」 ジョンスに言われ、アーチャーはニタニタと笑う。 それから別の話題を口にした。 「我が主、先ほどの奴だが」 「なにかしたんだろ。言われなくとも分かってるぜ」 「いいや違う。私はアレが妙だと感じだ。我が主はどうだ?」 「…」 要するにあの状況。 ジョンスにホームレスが絡んだ状況。 野次馬たちが取り囲んでいた、あの状況。 全てなにもかも。 アーチャーも化物とはいえ気づいていない訳ではなかった。 周囲の雰囲気。 状況。 傍観。 それはまるでアーチャーも以前体験したブラジル・リオでのホテル立てこもりを思わせるものだった。 人間であったが、人間であったからこそアーチャーは感じる。 先ほどのNPCが起こした騒動。 NPCたちの様子。 『何か』がある。 妙、だと? まさかサーヴァントの仕業だというのか? ジョンスには俄かに信じがたいものであった。 すると、この場に愉快な声と存在が出現した。 「カッツェさん降臨wwwwwwwwwwwwwwwwwww」 「かっちゃん!」 パッと表情を明るくしたれんげ。 アサシンは周囲を見回して、わざとらしく声をあげた。 「あれれー?wwwwwwジョンスりん~?wwwwwwwwwww  なにかあったのぉ~wwwwwwwwwwwww」 「あっちゃんが助けてくれたん!すごかったん!!」 「マジィ?もーwwwれんちょん、旦那のこと好きすぎぃ!  ミィとどっちが好きなんですかっwwwwwwwwwwwww」 「っ!?ど、どど、どっちも好きなん…」 「嘘乙wwwwwwはいはいワロスwwwwwwwww」 ジョンスはアーチャーとは違い、助ける前ぶれすらなかったアサシンに対して問う。 「カッツェ。お前は何をしていた」 問いに対して、アサシンはニタリと笑みを浮かべあるものを取り出す。 スマートフォン。 携帯電話機の一種である。 本来、アサシンが所持しているものではない。故にNPCから奪ったものだろう。 「そりゃあもう!ミィと旦那のお・た・の・し・みの準備ですよぉーwwwwwwwwwwwwwww  これからミィたちで素敵なパーティ開催させまぁすwwwwwww  一緒に世界アップデートさせちゃいましょぉ?」 ジョンスではなくアーチャーの方にいやらしくすり寄って来るアサシン。 アーチャーは嫌悪感を抱くどころか好感的笑う。 「なるほどそれはとても楽しみだ。ところで、それはなんだ?」 アーチャーが指指すのは気絶してへばっているジナコである。 何気なくアサシンが連れてきたものだった。 れんげがつんつんとジナコをつついてから 「動きません!」 「気絶してるだろ…」 ジョンスが溜息をついてジナコを眺めると、彼女の手の甲に令呪があるのを発見した。 今度は女……しかも少し太った… ジョンスはまた厭きれながらアサシンに言う。 「どこで拾って来たんだ、まったく…元あった場所に戻して来い」 「っていうかぁwwwwwwこの子、どこ住んでるか分かんないんですけどwwwwwwwwwww」 「…くそ……」 思わず毒吐いた。 気絶している女性を放置するなんてまた事件になりそうなことをジョンスが請け負いたくはない。 ふむと唸ってからアーチャーが 「おおよその見当はつく。近所の人間だろう。鍵の開いた家を探せばいい」 「あっちゃん頭いいん!」 大体、こいつのサーヴァントは何をしているんだ…… ジョンスが疑問を抱くジナコのアサシン(ゴルゴ)についてはまた別の話となる。 【B-10/公園/一日目 早朝】 【ジョンス・リー@エアマスター】 [状態]健康、アサシン(カッツェ)に対する苛立ち [令呪]残り1画 [装備]なし [道具]なし [所持金]そこそこある [思考・状況] 基本行動方針:闘える奴(主にマスターの方)と戦う 1.アサシン(カッツェ)を八極拳で倒す方法を探す 2.れんげを殺しても意味はないので、一応保護する 3.ジナコの家を探す。なおジナコと戦うつもりはない 4.アサシン(カッツェ)を殺した場合、れんげがどうなるか疑問 【アーチャー(アーカード)@HELLSING】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:主(ジョンス・リー)に従う 1.アサシン(カッツェ)が起こそうとしている戦争には興味がある [備考] ※野次馬(NPC)に違和感を感じています。 【宮内れんげ@のんのんびより】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備]包帯(右手の甲の令呪隠し) [道具]牛丼(ジョンスの分) [所持金]十円 [思考・状況] 基本行動方針:ふぇすてぃばるん! 1.う、うち、かっちゃんもあっちゃんも好きなんっ! 2.変装ふぇすてぃばるん! [備考] ※聖杯戦争のシステムを理解していません。 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]健康 [装備]なし [道具]携帯電話 [思考・状況] 基本行動方針:真っ赤な真っ赤な血がみたぁい!聖杯はその次。 1.ジョンスたちを利用してメシウマする [備考] ※他者への成りすましにアーカード(青年ver)、ジナコ・カリギリが追加しました。 【ジナコ・カリギリ@Fate/EXTRA CCC】 [状態]健康、昼夜逆転、気絶、精神的ショック [令呪]残り3画 [装備]黒い銃身<ブラックバレル>-魔剣アヴェンジャー-聖葬砲典 [道具]PC現行ハイエンド機 [所持金]ニートの癖して金はある [思考・状況] 基本行動方針:引きこもる。欲しい物があったらゴルゴをパシらせる。 0.キスされた…… 1.寝る [備考] ※装備欄のものはいずれもネトゲ内のものです。 ※密林サイトで新作ゲームを注文しました。明日(二日目)の昼には着く予定ですが…… 「なんつってwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 ジナコが気絶した後。 アサシンことベルク・カッツェはれんげたちの蚊帳の外でこのような事を口走っていた。 「ワラワラワラワラワラワラ~wwwww旦那涙目ぇ~wwwwwwwwwww  もしかして怒ってるゥ?ルーラーちゃんがおこになっちゃうから自重してるのぉー?  ブフフwwwwwwwwwwwwクッソキモイんだけどwwwwwwwww」 決して偶然ではない。 この『形のなき悪意』はベルク・カッツェが引き起こしているのだ。 ベルク・カッツェがベルク・カッツェたる能力。 潜在能力。 そこにいるだけの悪。 ジョンスたちに襲いかかった悪意も れんげの村に広がった悪意も 全てがベルク・カッツェに収束されている。 「ぶっ殺しちゃぇばいいですやーん!何もかもぶっ壊しちゃえばいいですやぁーん!!  それともぉ?旦那ってルーラーちゃんに怒られちゃいましたぁー?  自害せよ、アーチャー。って言われちゃうかもしれないですねぇぇwwwwww  NPCに手を出すのガクブルですね!!!!!!!!!!」 だが、カッツェ――アサシンはピタリと動きを止めて 「ま。ミィもそう思ってたんですけどねぇ……」 アサシンはアーチャーを贔屓にしているようだが、その通りである。 好感を以って自身の暴動を期待してくれる存在など、アサシンにとってはれんげよりも重要なのだ。 アーチャーは歌うように答えた。 何度でも滅ぼしてやろう、と。 その期待に答えずにどうするというのか。 そして、それを妨害するかもしれないルーラーをアサシンが警戒しない訳がなかった。 「もーマジ、ルーラーちゃんにおこだよ!  どぉーしてミィと旦那の邪魔するんですかぁー!うざぁーい!!  折角、素敵な旦那見られると思ったのにぃ!!  予定変更ォーーーーーーー!うざいのでルーラーちゃん泣かせちゃいまーすwwwwwww  旦那とパーティー出来ないようじゃ意味ないんでwwwwww  ルーラーちゃん涙目にしてメシウマぁぁああぁあぁーーーーっ!!!!」 アサシンはオペラのように語り始めた。 「親愛なる月海原のみなさぁん  この世界を憂うあなたたちを素敵なパーティーへご招待致しましょう  今まで見られなかった不思議と幻想の世界を思う存分ご堪能くださぁい  人生は一度きりです!後悔のないように!!」 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]健康 [装備]なし [道具]携帯電話 [思考・状況] 基本行動方針:真っ赤な真っ赤な血がみたぁい!聖杯はその次。 1.ジョンスたちを利用してメシウマする 2.ルーラーがウザイので困らせてみる [備考] ※他者への成りすましにアーカード(青年ver)、ジナコ・カリギリが追加しました。 ※アーチャー(アーカード)にルーラーの介入があったと推測しています。 ※具体的に何をしでかすかは不明です。後の書き手さんにお任せします。 ---- |BACK||NEXT| |046:[[何万光年先のDream land]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|048:[[戦争考察 NPC編]]| |046:[[何万光年先のDream land]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|048:[[戦争考察 NPC編]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |031:[[せんそうびより]]|[[ジョンス・リー]]&アーチャー([[アーカード]])|060:[[Imitation/午前9時52分]]| |~|[[宮内れんげ]]&アサシン([[ベルク・カッツェ]])|060:[[Imitation/午前9時52分]]| |036:[[働け]]|[[ジナコ・カリギリ]]|060:[[Imitation/午前9時52分]]|
*形なき悪意 ◆IbPU6nWySo 「ああっ!」 折角寝ようとした時にジナコ・カリギリは重要な事に気づいてしまう。 今日は燃えるゴミの日。引きこもりとはいえゴミ屋敷に引きこもりたくない。 今日こそ、今日こそはゴミは出さなくては。 脳裏に浮かぶ黒い影(黒い生物の方が正しいか) しかし、ヤクザことアサシンはここにはいない。 ジナコは引きこもりとはいえ以前も買い物をする為には外には出るくらいだ。 「うー…折角ケーキ買いに行ってくれたのに呼び戻しちゃうなんて  もったいないッスよね…このくらいは……」 それが凶だった。 ジョンス・リーはある程度の買い物を済ませた。 テイクアウトの牛丼を二つ。(サーヴァントは食事がいらない) そして包帯。 近頃のコンビニには何でも揃っている。 ジョンスも本当にあるのかと半ば疑ったくらいだ。 そして、閑静な住宅街にある遊具が二つ程度しかない公園のベンチで待つれんげのところへ戻った。 「ほら買ってきたぞ」 「八極拳、ありがとなん!すごいん!朝から牛丼!!」 「あと飯食う前にだな…」 「手、洗うん!!」 案外、律儀だな… 公園の水道で手を洗うれんげ。 彼女が戻って来ると、右手の甲にあった令呪を少し見つめてから 「これ。落ちないん」 「…」 ジョンスは黙ってれんげが差し出す手に包帯を巻いた。 令呪を見せびらかす事はマスターであると自分から晒しに向かうのようなもの。 れんげは聖杯戦争を理解していないからこそ最低限の事はジョンスもしてやった。 包帯を巻き終えると、れんげは不思議そうにジョンスへ問う。 「病気なん?」 「こうしておけば治る。包帯取んじゃねェぞ」 「わかったん!」 何事もなかったかのように「いただきます」の掛け声をした後、れんげは牛丼を食べ始める。 ジョンスは何故だが溜息を漏らした。 子供の子守りなんて性に合わないものの、カッツェをこの手で倒す術を見つけるまでだ。 その時、ふとした疑問が浮かぶ。 カッツェを倒した時――れんげはどうなるのだろうか、と。 「あのぉ…すいません。そこいいでしょうかぁ……」 「……」 オドオドしくジョンスに話しかけてきたのはいかにもホームレスの容姿をした男。 他にも何人かのホームレスの姿があり、別のベンチでたむろい出していた。 どうやらここはホームレスの格好の場らしい。 確かにここは子供すら近づかないだろう。 ジョンスは食事をしているれんげを確認してから答えた。 「飯食い終わるまで待ってろ」 「はぁ……でも私もたらい回しにされているんですよ…  ほら、近頃物騒じゃないですか。そのせいで警察の人たちに移動しろ移動しろって……」 「そいつは運が悪かったな。飯食い終わったらどいてやる」 ジョンスが牛丼を口にしようとした時。 前ぶれもなく男がジョンスに掴みかかってきた。 その衝撃はれんげにも及び、彼女が手にしていた牛丼が地面に放り出され、 あっとれんげは全てを理解すると虚しさがこみあげ、涙を浮かべた。 そんなこと露知らず、ホームレスの男は言う。 「こっちの事情も知らないで、何だテメェーーー!!!  人前で飯なんか食いやがって!こちとらまだ食事にもありつけてねぇってのに!!!」 一瞬、一撃を食らわせようと考えたジョンスだが手を止めた。 NPCへの被害を及ぼさない為にルーラーが出現したこと。 彼女は再度通告があるようならばペナルティを設けるという話を忘れていない。 アーチャーやアサシンが何もアクションを起こさないということは この男はマスターではなくNPCのはず…もしや、またルーラーが出現するのでは。 「はァ…面倒くせェ……」 ジナコが見た光景は向かいにある公園での喧嘩だった。 聖杯戦争の一環なのかと疑ったが、どうやらそうではないらしい。 だが、明らかに異様を感じる。 男が無抵抗なことではなく、周囲の状況だ。 いくら街外れとはいえジナコのように住人はいる。 近所の住人や公園でたむろっていたホームレスもその光景に目を取られて立ち止まっていた。 しかし、警察が駆けつける様子がない。 誰も止めに入ろうとはしない。 それどころか学生などが面白半分に動画や写真撮影をしているのだ。 狐に包まれたような感覚を覚えたジナコは、一際目立つ少女の存在に気づく。 あの子…もしかして、あの人の娘さんか何かッスかね……? 第三者であるジナコは異常を覚えたものの。 決して関わろうとはしなかった。 すると、その喧嘩の間に男が一人割り込む。 赤いコートを着た男はかなりの長身で、ジナコも日本人ではないだろうと推測できた。 ホームレスの男の方が言う。 「なんだテメェ!」 「なにも問題ない」 男の声には妙な説得感があった。 ジナコも男の声に痺れそうになったものの何とか正気を保っている。 周囲の野次馬を見渡してから、男はもう一度 「なにも問題はない」 「……なにも 問題 ない…」 ゾロゾロと人々が立ち去って行く。 折角、拠点を作ろうとしたホームレスたちも虚ろな目をして立ち去って行った。 学生は学校へ、サラリーマンは仕事場へ、主婦は自宅へ。 全員がそれぞれの巣へ戻るかのように散り散りとなった。 この異様な光景にジナコは戦慄を覚える。 なんッスかこれ!?ま、まさか、サーヴァント!? ジナコがあわあわと眺めていると、例の赤いコートの男が真っ直ぐ自分を捉えているのに気付いた。 「ひぃぃっ!」 ちょっとでもいいや、と慢心したのを後悔しながらジナコは慌ててアサシンを呼ぼうと判断する。 が。 背後から肩を叩かれ、それどころではなくなる。 ビクッ!と反応しながら振り向くと 赤いコートの男よりも長身な存在がニタリと笑みを浮かべてジナコの背後にいたのだ。 突然のことにジナコは叫ぶ暇もない。 「おはにゃんぱすーwwwwwwwww  あらぁ~よく見たらかわいい子ぉ。それじゃぁwwwwwwwwww」 「え!?ええっ!?ちょ、んっ、~~~~~~~~~~~~っ!?!?!??!」 キスされた。 いきなりキスされた。しかも、奇怪な存在に、長身でいかにも不審者で、しかもサーヴァント相手に。 ジナコにとってこれだけで十分。 彼女は気絶した。 お祭り騒ぎが終わったかのような静寂感。 誰もいなくなった公園にいるれんげたち。 これ…… この空漠はれんげも以前感じていた。 彼女の村も今は似たような雰囲気を醸し出していた。 「うちの村だけじゃないん…都会もこうなっているのん……」 「普通だろ」 ジョンスは落ちた牛丼に溜息ついて、自分の牛丼をれんげに差し出した。 それを受け取りながられんげは話す。 「…うちの村……みんな仲良かったん。のんびりのどかな村だったのん……  でも最近なんだか八極拳にしたみたいな喧嘩するん。うち、みんなに仲良くなって欲しいん…」 「……」 「あ!あっちゃん、かっこよかったん!ありがとなん!!  あっちゃんもかっちゃんみたいな宇宙人さんなんですかっ!」 「私は吸血鬼だが」 ジョンスはアサシン(カッツェ)が宇宙人なのか、という突っ込みをしたかったが。 れんげにとってはアーチャーが吸血鬼だという事実に衝撃を受けていた。 ジョンスも冷静になって思う。 もう太陽が出ている。 日光直下。 しかし、アーチャーは平然と存在していた。 「あっちゃん!早く日影に行くんーーーーーーーーー!!死んじゃうんーーーーーー!!!」 「私は太陽が苦手なだけだ。別に死にはしない」 「で、でも!一応日影に行くん!!大変なのん!!」 「…そうか」 「ニンニクとか嫌いなん?」 「泳ぐのは面倒なくらいだ」 「血とか…その食べるん?」 「…吸って欲しいか?」 「あっ、ま、待って欲しいん……心の準備が…」 「なんで吸われる前提になってんだよ。冗談はやめておけ、アーカード」 ジョンスに言われ、アーチャーはニタニタと笑う。 それから別の話題を口にした。 「我が主、先ほどの奴だが」 「なにかしたんだろ。言われなくとも分かってるぜ」 「いいや違う。私はアレが妙だと感じだ。我が主はどうだ?」 「…」 要するにあの状況。 ジョンスにホームレスが絡んだ状況。 野次馬たちが取り囲んでいた、あの状況。 全てなにもかも。 アーチャーも化物とはいえ気づいていない訳ではなかった。 周囲の雰囲気。 状況。 傍観。 それはまるでアーチャーも以前体験したブラジル・リオでのホテル立てこもりを思わせるものだった。 人間であったが、人間であったからこそアーチャーは感じる。 先ほどのNPCが起こした騒動。 NPCたちの様子。 『何か』がある。 妙、だと? まさかサーヴァントの仕業だというのか? ジョンスには俄かに信じがたいものであった。 すると、この場に愉快な声と存在が出現した。 「カッツェさん降臨wwwwwwwwwwwwwwwwwww」 「かっちゃん!」 パッと表情を明るくしたれんげ。 アサシンは周囲を見回して、わざとらしく声をあげた。 「あれれー?wwwwwwジョンスりん~?wwwwwwwwwww  なにかあったのぉ~wwwwwwwwwwwww」 「あっちゃんが助けてくれたん!すごかったん!!」 「マジィ?もーwwwれんちょん、旦那のこと好きすぎぃ!  ミィとどっちが好きなんですかっwwwwwwwwwwwww」 「っ!?ど、どど、どっちも好きなん…」 「嘘乙wwwwwwはいはいワロスwwwwwwwww」 ジョンスはアーチャーとは違い、助ける前ぶれすらなかったアサシンに対して問う。 「カッツェ。お前は何をしていた」 問いに対して、アサシンはニタリと笑みを浮かべあるものを取り出す。 スマートフォン。 携帯電話機の一種である。 本来、アサシンが所持しているものではない。故にNPCから奪ったものだろう。 「そりゃあもう!ミィと旦那のお・た・の・し・みの準備ですよぉーwwwwwwwwwwwwwww  これからミィたちで素敵なパーティ開催させまぁすwwwwwww  一緒に世界アップデートさせちゃいましょぉ?」 ジョンスではなくアーチャーの方にいやらしくすり寄って来るアサシン。 アーチャーは嫌悪感を抱くどころか好感的笑う。 「なるほどそれはとても楽しみだ。ところで、それはなんだ?」 アーチャーが指指すのは気絶してへばっているジナコである。 何気なくアサシンが連れてきたものだった。 れんげがつんつんとジナコをつついてから 「動きません!」 「気絶してるだろ…」 ジョンスが溜息をついてジナコを眺めると、彼女の手の甲に令呪があるのを発見した。 今度は女……しかも少し太った… ジョンスはまた厭きれながらアサシンに言う。 「どこで拾って来たんだ、まったく…元あった場所に戻して来い」 「っていうかぁwwwwwwこの子、どこ住んでるか分かんないんですけどwwwwwwwwwww」 「…くそ……」 思わず毒吐いた。 気絶している女性を放置するなんてまた事件になりそうなことをジョンスが請け負いたくはない。 ふむと唸ってからアーチャーが 「おおよその見当はつく。近所の人間だろう。鍵の開いた家を探せばいい」 「あっちゃん頭いいん!」 大体、こいつのサーヴァントは何をしているんだ…… ジョンスが疑問を抱くジナコのアサシン(ゴルゴ)についてはまた別の話となる。 【B-10/公園/一日目 早朝】 【ジョンス・リー@エアマスター】 [状態]健康、アサシン(カッツェ)に対する苛立ち [令呪]残り1画 [装備]なし [道具]なし [所持金]そこそこある [思考・状況] 基本行動方針:闘える奴(主にマスターの方)と戦う 1.アサシン(カッツェ)を八極拳で倒す方法を探す 2.れんげを殺しても意味はないので、一応保護する 3.ジナコの家を探す。なおジナコと戦うつもりはない 4.アサシン(カッツェ)を殺した場合、れんげがどうなるか疑問 【アーチャー(アーカード)@HELLSING】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:主(ジョンス・リー)に従う 1.アサシン(カッツェ)が起こそうとしている戦争には興味がある [備考] ※野次馬(NPC)に違和感を感じています。 【宮内れんげ@のんのんびより】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備]包帯(右手の甲の令呪隠し) [道具]牛丼(ジョンスの分) [所持金]十円 [思考・状況] 基本行動方針:ふぇすてぃばるん! 1.う、うち、かっちゃんもあっちゃんも好きなんっ! 2.変装ふぇすてぃばるん! [備考] ※聖杯戦争のシステムを理解していません。 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]健康 [装備]なし [道具]携帯電話 [思考・状況] 基本行動方針:真っ赤な真っ赤な血がみたぁい!聖杯はその次。 1.ジョンスたちを利用してメシウマする [備考] ※他者への成りすましにアーカード(青年ver)、ジナコ・カリギリが追加しました。 【ジナコ・カリギリ@Fate/EXTRA CCC】 [状態]健康、昼夜逆転、気絶、精神的ショック [令呪]残り3画 [装備]黒い銃身<ブラックバレル>-魔剣アヴェンジャー-聖葬砲典 [道具]PC現行ハイエンド機 [所持金]ニートの癖して金はある [思考・状況] 基本行動方針:引きこもる。欲しい物があったらゴルゴをパシらせる。 0.キスされた…… 1.寝る [備考] ※装備欄のものはいずれもネトゲ内のものです。 ※密林サイトで新作ゲームを注文しました。明日(二日目)の昼には着く予定ですが…… 「なんつってwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 ジナコが気絶した後。 アサシンことベルク・カッツェはれんげたちの蚊帳の外でこのような事を口走っていた。 「ワラワラワラワラワラワラ~wwwww旦那涙目ぇ~wwwwwwwwwww  もしかして怒ってるゥ?ルーラーちゃんがおこになっちゃうから自重してるのぉー?  ブフフwwwwwwwwwwwwクッソキモイんだけどwwwwwwwww」 決して偶然ではない。 この『形のなき悪意』はベルク・カッツェが引き起こしているのだ。 ベルク・カッツェがベルク・カッツェたる能力。 潜在能力。 そこにいるだけの悪。 ジョンスたちに襲いかかった悪意も れんげの村に広がった悪意も 全てがベルク・カッツェに収束されている。 「ぶっ殺しちゃぇばいいですやーん!何もかもぶっ壊しちゃえばいいですやぁーん!!  それともぉ?旦那ってルーラーちゃんに怒られちゃいましたぁー?  自害せよ、アーチャー。って言われちゃうかもしれないですねぇぇwwwwww  NPCに手を出すのガクブルですね!!!!!!!!!!」 だが、カッツェ――アサシンはピタリと動きを止めて 「ま。ミィもそう思ってたんですけどねぇ……」 アサシンはアーチャーを贔屓にしているようだが、その通りである。 好感を以って自身の暴動を期待してくれる存在など、アサシンにとってはれんげよりも重要なのだ。 アーチャーは歌うように答えた。 何度でも滅ぼしてやろう、と。 その期待に答えずにどうするというのか。 そして、それを妨害するかもしれないルーラーをアサシンが警戒しない訳がなかった。 「もーマジ、ルーラーちゃんにおこだよ!  どぉーしてミィと旦那の邪魔するんですかぁー!うざぁーい!!  折角、素敵な旦那見られると思ったのにぃ!!  予定変更ォーーーーーーー!うざいのでルーラーちゃん泣かせちゃいまーすwwwwwww  旦那とパーティー出来ないようじゃ意味ないんでwwwwww  ルーラーちゃん涙目にしてメシウマぁぁああぁあぁーーーーっ!!!!」 アサシンはオペラのように語り始めた。 「親愛なる月海原のみなさぁん  この世界を憂うあなたたちを素敵なパーティーへご招待致しましょう  今まで見られなかった不思議と幻想の世界を思う存分ご堪能くださぁい  人生は一度きりです!後悔のないように!!」 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]健康 [装備]なし [道具]携帯電話 [思考・状況] 基本行動方針:真っ赤な真っ赤な血がみたぁい!聖杯はその次。 1.ジョンスたちを利用してメシウマする 2.ルーラーがウザイので困らせてみる [備考] ※他者への成りすましにアーカード(青年ver)、ジナコ・カリギリが追加しました。 ※アーチャー(アーカード)にルーラーの介入があったと推測しています。 ※具体的に何をしでかすかは不明です。後の書き手さんにお任せします。 ---- |BACK||NEXT| |046:[[何万光年先のDream land]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|048:[[戦争考察 NPC編]]| |046:[[何万光年先のDream land]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|050:[[主よ、我らを憐れみ給うな]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |031:[[せんそうびより]]|[[ジョンス・リー]]&アーチャー([[アーカード]])|060:[[Imitation/午前9時52分]]| |~|[[宮内れんげ]]&アサシン([[ベルク・カッツェ]])|060:[[Imitation/午前9時52分]]| |036:[[働け]]|[[ジナコ・カリギリ]]|060:[[Imitation/午前9時52分]]|

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