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*戦中の登校者 ◆ggowmuNyP2 戦前 もしくは前線 配点(行ってきます)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄            ● 正純は、フラついていた。 ……いかんなー……。 ライダーは弱小の存在ではあるが、サーヴァントである事には変わりはない。 自身も気付かぬ内に拝気を消耗しているのだろう。 「消耗、か」 戦闘系でない自分にはやや実感が伴わないところではあったが、 「葵の、……不可能の力」 それを改めて思い起こす。 しかし、ここにあの馬鹿はいない。 流体燃料や、それに相当するような物も探す必要があるかもしれんな、と正純は思う。しかし、 「無いんだよなー……」 無いのだ。貧しいのだ。極貧なのだ。 金の話だ。胸ではない。 こんなとこまで再現せずとも良いだろう、と言いたくなるがまあ仕方ない。 バイトの給金は最低限の食費を除き、ほぼ全額を草紙の購入に回すという生活はこちらでも続けていたのだ。 ……内燃拝気を回復する為の瞑想も必要になるし、夜間のバイトは危険度が高くなるしなあ。 ともかく、現状では金銭取引を行うのは難しい。 それは何も、戦いに関連する事項に限った話ではない。故に、 ……空腹だ。 朝食を抜きにしたのが悪かった。 恐らく、今の自分の体調が悪いのは、魔力云々よりもそちらの方が原因だ。 『まー』 ツキノワが、慰めるような鳴き声を発した。 ……ツキノワは可愛いなあ! お前の分の食費はきちんと捻出してやるから安心しろ、と頬ずりする。 「……ここの学園では、こういった事も気軽には出来なくなるな」 だから家でも存分に行ったのだが、それを見ていたライダーが妙な顔をしていたのは何故だろうか。 心なしか輪郭もかなりテキトーになって頭身も縮んでいた気がするが、あれはユニコーンのようなものだろうか。 走狗《マウス》の有用性について語ったところ納得を得たようだったので、それはいいのだが。 しかし『マウスはいいな。ヤークトティーガーもゴリアテも好きだ。ホルニッセの、ナースホルンの88mm《アハトアハト》は心が躍る』とか言っていたが何か脱線してはいなかったろうか。 「――ん」 歩道に設置されたベンチに腰を下ろす。 ……行き倒れとか、本気で洒落にならんからな。 正純は、往来の流れを見つめた。 今、正純は徒歩での登校の最中だ。 この街には四輪駆動の自動車を始めとして、見慣れないものもかなりある筈だが、不思議と迷いを感じる事はない。 着用している制服にしても、精神的にはともかく肉体的な違和感はない。気が利いている、と言うべきか。 それについて、思うところはあるが――。 「お」 自分と同じく、徒歩で登校してくる生徒達の姿。その中に、見知った顔があった。 後輩らしい女生徒と何やら語り合っていた彼女はこちらを見ると、女生徒に手を振ってからこちらへと向かってきて、 「おはよ、正純」 Jud.、と正純は頷いた。 「ああ。――おはよう、第四特務」            ● は? と、彼女が目を丸くした。 ……しまった! ついいつものノリで普通に挨拶してしまった。 ここにいる彼女は、正純の知る彼女ではないのだろう。 その背にある筈のもの――黒翼が見当たらない以上、それは明らかだ。 彼女は武蔵アリアダスト教導院の第四特務ではなく、月海原学園の一生徒なのだ。 一度呼吸を整えて、改めて挨拶する。 「あー……おはよう、ナルゼ」 「大丈夫? 顔色、変だけど」 「あ、ああ。最近、肥満体型の中年独逸軍人と同棲する事になってな。それでまあ、少し調子が悪いかもしれん」 『軍人と』の辺りから猛スピードでネーム切りを始めたナルゼを見て、この辺は変わらんなー、と少し安心する。 いや、安心するべきではないのかもしれないが。 「そう、調子悪いの。――じゃあアンタが朦朧としてる間にちょっとゴリ押ししたい事があるんだけど、いいかしら?」 「そこはもうちょっと包み隠せよ!!」 まあ、と一応頷く。 「とりあえず言ってみろ。……まともな判断力は残っているつもりだからな」 こちらの瞳を見つめたナルゼは、 「知り合いネタにして同人誌描いてるんだけど、それ今度の祭りで売り物にしていいわよね?」 「いいわけあるかあ――――――!!」 いかんいかん、大声を出しては怪しまれるか。しかしここは抗議しておくべき所だろう、常識的に考えて。 「言っとくけど私とマルゴットだけの話じゃないから。さっきの子、瀬尾って言うんだけど、そこのサークルとの合同。  ネタとしては、今回は女性方面。まず兎角と晴。それとユミルとクリスタ、黒子と御坂。基本と言えば基本ね。  で、それに加えて、羽ピンと蒼香、アサリとヤモト、雪子と千枝、カズと朱里、それから――」 「幾ら内容の解説したって決定が覆ると思うなよ……!」 というか知らない名ばかりだがここでは一体どんな交友関係を築いているのか。 そもそもこの外道なノリに巻き込んで大丈夫なのかこれは。いや、今名の上がった人物が全て学園に居るわけではないだろうが、大丈夫じゃないだろう確実に。 ナルゼは舌打ちを一つした後、 「会長のイッセーだと絶対アウトだろうから副会長狙いで行ったんだけど、やっぱダメか」 「何故私なら行けると思ったのか知りたいんだが……」 そのままこちらから背を向けたナルゼは、 「マキはサッキヤマとの組み合わせもアリだと思うのよね……」 などと呟きながら学園へと向かっていった。 ……なんだかなー。 その背を見送りながら、ふと、思う事がある。 「副会長、か」 生徒会に所属している、その立場を活用できる事もあるかもしれないとは思う。 ネシンバラ辺りなら『令呪の存在を秘匿するために生徒全員にオリジナルの紋章をその身に刻ませようよ!』とか提案するかもしれん。 だが、今思うのはそうではなく、生徒会の会長を務める人物の事だ。 「やはり、馬鹿はいないのだな」 あの馬鹿と、そしてホライゾンの存在は、武蔵の人間の中では非常に大きい。 だからこそ、先程の会話ではそこに大きな違和感を得た。 勿論この空間でも常時全裸だったり女装だったりワカメだったり餃子だったりされたら本当に違和感どころの話ではないのだが。 いや、いるとしたら即逮捕だろうから結果的に目に入らないだけなのか? そこは置いておこう。 ……それに。 外道分も足りていなかった。 何しろナルゼが許可など求める筈がない。というか実際無許可で制作販売されていたしな私の本。 ともあれ、 「やはり手抜きと言うかやる気がないと言うか、そんな印象も受けるが……」 ――否、そうではない。 聖杯はこちらの脳内に直接情報を伝えて、更には記憶を操作しているのだ。 そこまでやっておいて、あえて違和感を持たせるような世界の作り方をする。 それには、何らかの意図がある筈だ。まず考えられるのは、 「他のマスターとの兼ね合いか」 正純が存在していた環境は、ありたいていに言ってしまえば、かなり特殊なものだ。 あの狂人共を完全再現した場合、正純はともかくそれ以外の者が大いに困惑する事は疑いない。 ……しかし、新しく武蔵に来た連中は、割と馴染んでる事多いんだよなー……。 まあ何人かはあっさり適応してしまうかもしれんが、大抵はダメだろう。多分。 「まず、名前の時点で訝しがられるかもしれんしな」 正純は襲名に失敗した身ではあるが、名前はそのまま名乗っている。 また、先のナルゼのように、歴史上の人物にあやかった名も多い。 ナルゼの場合は、松平の武将である成瀬・正義、ないし次代の成瀬・正成だが、 「私の名は、……どうなのだろうな」 本多・正純という人物は、それほどメジャーとは言えないが、かといってマイナーとも言えない。 その名の持つ意味に気付く者もいるだろう。 無論、そうでない者もいるだろうし、それこそあやかっただけだと思われる可能性もある。 ……流石にサーヴァントが学生になってるって発想する奴はいないよな? いない、と断言できないのが怖いところだ。 何にせよ、 「マスターは、この冬木という土地――二十世紀前後の日本の環境に慣れている者が多いという事か」 こちらは、そういった者達に合わせられたと見るのが自然だ。 そうは言っても、本戦まで進んだ者の大半がこの時代の者だとは限らない。正純のように、違和感を持ったが故に記憶を取り戻した者もいるだろう。 「それに、……ヒントを与えている、という事もあるか」 『元と何ら変わりない環境』を用意された場合、そこから抜け出す事は困難になる。 聖杯戦争は、あくまでも参加者同士の戦いがメインだ。 気付くか気付かぬか、微妙な範疇でヒントを与えてくるというのは考えられる。 だが、腑に落ちない点もある。 「何故、この舞台を継続して使っているのか、だよな」 戦いと、その勝者のみを求めるのなら、予選が終了した時点で新規に専用の舞台を作った方が管理が楽であるのは明らかだ。 過度のNPCの殺害の禁止を始めとする、参加者の行動を抑制するルールを用意してまでこの舞台を引き続き使う必要はない。 NPCの殺傷が咎められない場合は、無差別な大量破壊を可能とする宝具を持つサーヴァントが有利となる可能性はある。 互いに準備を整えた上で一対一で戦う決闘方式の場合は、正面からの戦いを苦手とするサーヴァントが不利となるだろう。 だが、そもそも真に公平なルール、取り決めなどというものは存在しないのだ。 故に武蔵でも正純は自陣営が有利となるように交渉を行ってきて結果的に戦争になったりした。うむ、別に好きで戦争に持ち込んだ訳ではない。 しかし正純と違い、聖杯はあらゆる参加者よりも上の立場にいる、いわば主催者だ。 単に管理を行いやすいようなルールを制定すれば、それでいい。 そもそも、本当にルールを順守させたいと言うなら、もう少し強制力を高めるべきだ。 極端な話、監督役という監視者を置く以前に、予選の段階で記憶を操作したように、最初からルールを破れないように行動を制限してしまえばいいのだから。 逆に言えば、 「それでもこの舞台で、このルールで戦いを行わせる理由がある」 ……思い当たる事はある。 それは、 「――再現だ」 聖杯は時代を越えて、人物を、土地を、英霊を、あらゆるものを再現している。 この聖杯戦争そのものも、その再現の一環であったとしたら。 そのルールも、何時か何処かで行われたであろう聖杯戦争のルールを再現しているのだとしたら。 人類が再び天上へと登るため、聖譜に則って歴史再現を行ってきたように、 「聖杯は、聖杯戦争という事象を再現する事で、自らの望むものを観測しようとしている訳か」 また、聖杯による再現は完全なものではなく、ある程度の解釈が含まれている。 例えば、ライダーはかつて自身の部下であった戦鬼の徒をサーヴァントとして召喚するという宝具を持つ。 しかし生前のライダー――少佐は、そのような能力は有していない。あくまでも、最後の大隊の指揮官として彼らを率いていただけだ。 こういった事は、歴史再現を行う襲名者達の間では全く珍しい事ではない。 ごく一部を挙げるだけでも、異端の術式である"地動説"と"天動説"を用いて戦闘を行うK.P.A.Italiaのガリレオや、傭兵王ヴァレンシュタインとの二重襲名で亡霊戦士団"加賀百万G"を使役するP.A.ODAの前田・利家などがいる。 それに二つの球を合わせてチューチューして何度も引っ張って街中を大騒ぎにした"マクデブルクの半球"のゲーリケも直接交渉した事もあって記憶に残っている。そういえば彼も独逸人だったな。 過去の時代にも"兵士同士の結婚"を推奨したバレンタイン司教や、アキレスと亀のパラドクスの実験中にアキレス役が亀に追い付きそうになったのでアキレス腱固めをかけて実力阻止したゼノンが存在していた。 これらと同じものとして見ていいかどうかは、かなり、かなり微妙なところだが、何にせよ聖杯は完全な再現を行っている訳ではない。 つまり――。 「こちらが行う“解釈”もまた通用する。少なくとも、聖杯は解釈を行っている。意思がある」 この推論が正しいとも限らない。聖杯との交渉以前に行うべき事も山とある。それでも、交渉材料は見えてきた。 ……しかし、その為に、調べねばならない事があるか。 正純は、学生鞄からノートを取り出し、そのページ上に鳥居型の表示枠《サインフレーム》を展開。 周囲からはノートに書き込みを行っているように見せながら、表示枠にメモを取っていく。 それが終わった後に、新規に画面を表示する。 行うのは実況通神《チャット》だ。 その相手は、 ・副会長:『――いいだろうか、少佐』 ・戦争狂:『構わないとも、武蔵副会長』 正純が学園にいる時間帯、ライダーとは別行動を取っている。その理由は単純なもので、共に行動するメリットが薄いからだ。 仮に正純がマスターである事が既に把握されていたとしても、諸々のリスクを考えれば、日中の学園内で真正面から堂々とこちらに仕掛けてくる相手はいないだろう。 だが、周囲に人がいない状況など、襲撃者にとっての好条件が整った場合はどうか。 "暗殺者"という、そのものズバリのクラスのサーヴァントが存在している以上、警戒はしておくに越した事はない。 一般的なサーヴァントであれば、そういった事態に備えたり、逆に相手を牽制する為に、霊体となってマスターに同行するのが定石なのだろうが、 ……ライダーは、そのどちらも無理だからなあ。 "戦鬼の徒"を常時展開すれば話は別だろうが、それはあまりにも非効率的だ。 幸いと言うべきか、ムーンセルの解釈によるものか、ライダーも単独で表示枠を表示させることができる。 通神帯《ネット》の機能には多少制限があるようだが、冬木市の情報に関しては問題なく検索が可能だ。 それならば、正純は十全に注意を払いつつ学園に向かい、ライダーは自宅に待機し別方面で情報収集を行うというのが落とし所になる。 そして何か発見などした場合は、互いに連絡を取り合う事になっていた。            ● ・戦争狂:『――再現、か。成程。で?』 それが、 ・戦争狂:『それがどうした? 聖杯には意思がある感情がある願望がある、プログラムに沿って動くだけの機械ではない。ああそうだろう、そうだろうとも。       そうでなければ、私のような君のような者を放置しておくまい。反攻もまた聖杯の望むところなのだろうさ。それを再確認したところで、何を言いたい』 表示枠に映されるのは、挑発的ではあるが、続きを促す言葉だ。 ・副会長:『今後、如何なる情報を重点的に集めていくか、……それについて提案をしたい』 息を吸い、身体に冷気を入れつつ、正純は文字をタイピングしていく。 ・副会長:『私は、再現元である聖杯戦争についての調査を行いたいと考えている』 いいか? ・副会長:『聖杯が真に万能の願望機であり観測機であるのなら、このような試みを行う必要すらない筈だ。とはいえ、聖杯の演算能力そのものに関しては疑う余地はない』 ならば、 ・副会長:『一見しただけでも参加者間の公平性が保たれているとは決して言えず、穴も多いルールで行われるこの聖杯戦争。       莫大な能力を持つ聖杯が敢えてそのような方法で“観測”を図ろうとするからには、表には出ていない、隠された何かがある筈だ。       交渉にしろ戦争にしろ、聖杯に挑むに際して、それを知っておくべきだと思う』 ・戦争狂:『では、監督役に接触するか? 敗北主義者のように頭を垂れるか、ゲシュタポのように尋問にかけるか、方法は政治家に任せるとしよう』 自身の顔に苦笑が生じた事を、正純は知覚した。 ……解った上で言っているな、これは。 ・副会長:『方法はともかく、……いずれ対面せねばならぬ相手ではあるだろう。しかし、情報提供は期待できないな。       特定の陣営に肩入れを行うようでは公平な監督役とは言えないし、現状の我々の戦力では戦闘に持ち込む事すら出来まい。       ルールに抜け道があるように、監督役にも隙がある可能性は、勿論ある。だが、今の段階で目を付けられるのは回避したい』 ・戦争狂:『ならば、どうする。どうするどうするどうする、君ならどうするねお嬢さん《フロイライン》』 ・副会長:『――他のマスターとの交渉。それが現時点で有効な一手だろう』 続ける。 ・副会長:『それも、私のように巻き込まれた者ではなく、自ら望んで方舟へと乗り込んだマスターとの交渉だ。       準備を整え、必勝の態勢でこの戦いに挑んだマスターならば、事前に聖杯戦争についての知識も得た上でやって来たと推測できる』 正純は、そこで一旦息を吐いた。 ……言葉にしてしまうのは簡単なんだが、な。 ・副会長:『無論、交渉に至るまでには様々な障害があるだろう。まずは捜索から行う必要があるし、そのマスターについての調査も必要だ。       都合良くこちらの望む情報を持っているとも限らないし、更に他のマスターに接触したり、行動によって我々の正当性を高めたりする必要があるかもしれない。       そういった過程をすっ飛ばして交渉に当たらねばならないような事態も考えられる』 だが、 ・副会長:『だが、この方針自体最初から決定されていた事だ。あくまでも優先的に接触すべき相手についての話だと、そう思って頂きたい。       出会ったマスターが、喪失を望まず、ただ生存を願う相手であるのならば、当然ながら協力を持ちかけていく』 ・戦争狂:『ふん、いいだろう。では――ひとつ聞こうか』 ――来るか。 幻視する。 表情を読み取らせない眼鏡のその奥にある、狂気を含んだ瞳。 首を傾け、両腕を大きく振り上げ、演説でも行うようにこちらに語りかける、その姿を。 ・戦争狂:『自ら戦争に臨んだ、彼の、彼女の、あるいはどちらでもない者の望みを。聖杯などという化物に縋り付かねばならなかった感情を。       悲嘆を淫蕩を嫌気を強欲を虚栄を傲慢を憤怒を暴食を嫉妬を、君は受け止める事ができるのかな』 「――――」 戦争が始まった今となって、改めて問われている。 他者を喪失させる事でしか叶えられぬような悲願と、その覚悟を持った相手。 その相手と如何にして交渉を行うか、ではなく。 その身をもって相対する事は出来るのか、と。 「……決まっている」 打ち込むのは、ただの一語だ。それは、 ・副会長:『Jud.』            ● Judgement.――ああ、我ら聖罰を受ける者なり。 ・副会長:『何度でも言おう。私は、喪失も、それによってもたらされる救いも、認めない』 可能性を食らいて行く被罰者なり。 ・副会長:『聖なる遺物であろうが、それに願いを託す者であろうが、認める事はないだろう』 されど我ら、――悲しみを与えぬ者達なり。 ・副会長:『故に私は、この聖杯戦争を“解釈”する。あくまでも聖杯がそれを認めないというのであれば――』 ・副会長:『戦争をしよう。一心不乱の大戦争を』            ● ・戦争狂:『ならそうしよう。今しばらくは政治家に表舞台を任せるとしよう。何、雌伏だって慣れているし、後に待つものを思えば中々楽しいものだ』 ……まったく。 本当に、ごく当たり前の事を再確認しただけ、という風だ。 手強い相手だと、改めて思う。 とはいえ、確かに今やった事と言えば、情報収集の方針について伝えただけではある。 もう少しコミュニケーションというものを取ってみるべきかもしれない、とは思うが、 ……急がねば、授業が始まるか。 ・副会長:『そろそろ、こちらは時間になる。そちらも、何かあったら連絡を寄越してくれ。出来る限りは返答を返すつもりだ』 ・戦争狂:『征くがいいさ武蔵副会長。良い戦争が出来るようにな』 その時正純は、こう思った。 ……こういう時、最後に何か、言っておくべきだよな。 ネタならある。 ライダーに出会った当初から考えていたものだ。 ――よし。 ・副会長:『では、最後の大隊の指揮官よ。――だいたい、そんな感じで頼む』            ● 十数秒の沈黙の後、手刀で表示枠を叩き割ってから正純は立ち上がった。 ――よし。 何がよかったのかは解らんが、まあよしだ。 交差点を曲がれば、すぐに校門が見えてくる。 正純は一度伸びをして、 「――行こう」 呟きと共に、一歩を踏み出した。 【C-3/月海原学園付近/一日目 早朝】 【本多・正純@境界線上のホライゾン】 [状態]空腹 [令呪]残り三画 [装備]学生服、ツキノワ [道具]学生鞄、各種学業用品 [所持金]極貧 [思考・状況] 基本行動方針:他参加者と交渉することで聖杯戦争を解釈し、聖杯とも交渉し、場合によっては聖杯と戦争し、失われようとする命を救う。 1.マスターを捜索し、交渉を行う。その為の情報収集も同時に行う。 2.聖杯戦争についての情報を集める。 3.可能ならば、魔力不足を解決する方法も探したい。 【C-3/正純の自宅/一日目 早朝】 【ライダー(少佐)@HELLSING】 [状態]健康 [装備]拳銃 [道具]不明 [所持金]不明 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯と戦争する。 1.暫くは待機し、通神帯による情報収集を行う。 ---- |BACK||NEXT| |044:[[POINT OF VIEW]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|046:[[何万光年先のDream land]]| |044:[[POINT OF VIEW]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|046:[[何万光年先のDream land]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |015:[[本多正純&ライダー]]|[[本多・正純]]&ライダー([[少佐]])|:[[]]|
*戦中の登校者 ◆ggowmuNyP2 戦前 もしくは前線 配点(行ってきます)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄            ● 正純は、フラついていた。 ……いかんなー……。 ライダーは弱小の存在ではあるが、サーヴァントである事には変わりはない。 自身も気付かぬ内に拝気を消耗しているのだろう。 「消耗、か」 戦闘系でない自分にはやや実感が伴わないところではあったが、 「葵の、……不可能の力」 それを改めて思い起こす。 しかし、ここにあの馬鹿はいない。 流体燃料や、それに相当するような物も探す必要があるかもしれんな、と正純は思う。しかし、 「無いんだよなー……」 無いのだ。貧しいのだ。極貧なのだ。 金の話だ。胸ではない。 こんなとこまで再現せずとも良いだろう、と言いたくなるがまあ仕方ない。 バイトの給金は最低限の食費を除き、ほぼ全額を草紙の購入に回すという生活はこちらでも続けていたのだ。 ……内燃拝気を回復する為の瞑想も必要になるし、夜間のバイトは危険度が高くなるしなあ。 ともかく、現状では金銭取引を行うのは難しい。 それは何も、戦いに関連する事項に限った話ではない。故に、 ……空腹だ。 朝食を抜きにしたのが悪かった。 恐らく、今の自分の体調が悪いのは、魔力云々よりもそちらの方が原因だ。 『まー』 ツキノワが、慰めるような鳴き声を発した。 ……ツキノワは可愛いなあ! お前の分の食費はきちんと捻出してやるから安心しろ、と頬ずりする。 「……ここの学園では、こういった事も気軽には出来なくなるな」 だから家でも存分に行ったのだが、それを見ていたライダーが妙な顔をしていたのは何故だろうか。 心なしか輪郭もかなりテキトーになって頭身も縮んでいた気がするが、あれはユニコーンのようなものだろうか。 走狗《マウス》の有用性について語ったところ納得を得たようだったので、それはいいのだが。 しかし『マウスはいいな。ヤークトティーガーもゴリアテも好きだ。ホルニッセの、ナースホルンの88mm《アハトアハト》は心が躍る』とか言っていたが何か脱線してはいなかったろうか。 「――ん」 歩道に設置されたベンチに腰を下ろす。 ……行き倒れとか、本気で洒落にならんからな。 正純は、往来の流れを見つめた。 今、正純は徒歩での登校の最中だ。 この街には四輪駆動の自動車を始めとして、見慣れないものもかなりある筈だが、不思議と迷いを感じる事はない。 着用している制服にしても、精神的にはともかく肉体的な違和感はない。気が利いている、と言うべきか。 それについて、思うところはあるが――。 「お」 自分と同じく、徒歩で登校してくる生徒達の姿。その中に、見知った顔があった。 後輩らしい女生徒と何やら語り合っていた彼女はこちらを見ると、女生徒に手を振ってからこちらへと向かってきて、 「おはよ、正純」 Jud.、と正純は頷いた。 「ああ。――おはよう、第四特務」            ● は? と、彼女が目を丸くした。 ……しまった! ついいつものノリで普通に挨拶してしまった。 ここにいる彼女は、正純の知る彼女ではないのだろう。 その背にある筈のもの――黒翼が見当たらない以上、それは明らかだ。 彼女は武蔵アリアダスト教導院の第四特務ではなく、月海原学園の一生徒なのだ。 一度呼吸を整えて、改めて挨拶する。 「あー……おはよう、ナルゼ」 「大丈夫? 顔色、変だけど」 「あ、ああ。最近、肥満体型の中年独逸軍人と同棲する事になってな。それでまあ、少し調子が悪いかもしれん」 『軍人と』の辺りから猛スピードでネーム切りを始めたナルゼを見て、この辺は変わらんなー、と少し安心する。 いや、安心するべきではないのかもしれないが。 「そう、調子悪いの。――じゃあアンタが朦朧としてる間にちょっとゴリ押ししたい事があるんだけど、いいかしら?」 「そこはもうちょっと包み隠せよ!!」 まあ、と一応頷く。 「とりあえず言ってみろ。……まともな判断力は残っているつもりだからな」 こちらの瞳を見つめたナルゼは、 「知り合いネタにして同人誌描いてるんだけど、それ今度の祭りで売り物にしていいわよね?」 「いいわけあるかあ――――――!!」 いかんいかん、大声を出しては怪しまれるか。しかしここは抗議しておくべき所だろう、常識的に考えて。 「言っとくけど私とマルゴットだけの話じゃないから。さっきの子、瀬尾って言うんだけど、そこのサークルとの合同。  ネタとしては、今回は女性方面。まず兎角と晴。それとユミルとクリスタ、黒子と御坂。基本と言えば基本ね。  で、それに加えて、羽ピンと蒼香、アサリとヤモト、雪子と千枝、カズと朱里、それから――」 「幾ら内容の解説したって決定が覆ると思うなよ……!」 というか知らない名ばかりだがここでは一体どんな交友関係を築いているのか。 そもそもこの外道なノリに巻き込んで大丈夫なのかこれは。いや、今名の上がった人物が全て学園に居るわけではないだろうが、大丈夫じゃないだろう確実に。 ナルゼは舌打ちを一つした後、 「会長のイッセーだと絶対アウトだろうから副会長狙いで行ったんだけど、やっぱダメか」 「何故私なら行けると思ったのか知りたいんだが……」 そのままこちらから背を向けたナルゼは、 「マキはサッキヤマとの組み合わせもアリだと思うのよね……」 などと呟きながら学園へと向かっていった。 ……なんだかなー。 その背を見送りながら、ふと、思う事がある。 「副会長、か」 生徒会に所属している、その立場を活用できる事もあるかもしれないとは思う。 ネシンバラ辺りなら『令呪の存在を秘匿するために生徒全員にオリジナルの紋章をその身に刻ませようよ!』とか提案するかもしれん。 だが、今思うのはそうではなく、生徒会の会長を務める人物の事だ。 「やはり、馬鹿はいないのだな」 あの馬鹿と、そしてホライゾンの存在は、武蔵の人間の中では非常に大きい。 だからこそ、先程の会話ではそこに大きな違和感を得た。 勿論この空間でも常時全裸だったり女装だったりワカメだったり餃子だったりされたら本当に違和感どころの話ではないのだが。 いや、いるとしたら即逮捕だろうから結果的に目に入らないだけなのか? そこは置いておこう。 ……それに。 外道分も足りていなかった。 何しろナルゼが許可など求める筈がない。というか実際無許可で制作販売されていたしな私の本。 ともあれ、 「やはり手抜きと言うかやる気がないと言うか、そんな印象も受けるが……」 ――否、そうではない。 聖杯はこちらの脳内に直接情報を伝えて、更には記憶を操作しているのだ。 そこまでやっておいて、あえて違和感を持たせるような世界の作り方をする。 それには、何らかの意図がある筈だ。まず考えられるのは、 「他のマスターとの兼ね合いか」 正純が存在していた環境は、ありたいていに言ってしまえば、かなり特殊なものだ。 あの狂人共を完全再現した場合、正純はともかくそれ以外の者が大いに困惑する事は疑いない。 ……しかし、新しく武蔵に来た連中は、割と馴染んでる事多いんだよなー……。 まあ何人かはあっさり適応してしまうかもしれんが、大抵はダメだろう。多分。 「まず、名前の時点で訝しがられるかもしれんしな」 正純は襲名に失敗した身ではあるが、名前はそのまま名乗っている。 また、先のナルゼのように、歴史上の人物にあやかった名も多い。 ナルゼの場合は、松平の武将である成瀬・正義、ないし次代の成瀬・正成だが、 「私の名は、……どうなのだろうな」 本多・正純という人物は、それほどメジャーとは言えないが、かといってマイナーとも言えない。 その名の持つ意味に気付く者もいるだろう。 無論、そうでない者もいるだろうし、それこそあやかっただけだと思われる可能性もある。 ……流石にサーヴァントが学生になってるって発想する奴はいないよな? いない、と断言できないのが怖いところだ。 何にせよ、 「マスターは、この冬木という土地――二十世紀前後の日本の環境に慣れている者が多いという事か」 こちらは、そういった者達に合わせられたと見るのが自然だ。 そうは言っても、本戦まで進んだ者の大半がこの時代の者だとは限らない。正純のように、違和感を持ったが故に記憶を取り戻した者もいるだろう。 「それに、……ヒントを与えている、という事もあるか」 『元と何ら変わりない環境』を用意された場合、そこから抜け出す事は困難になる。 聖杯戦争は、あくまでも参加者同士の戦いがメインだ。 気付くか気付かぬか、微妙な範疇でヒントを与えてくるというのは考えられる。 だが、腑に落ちない点もある。 「何故、この舞台を継続して使っているのか、だよな」 戦いと、その勝者のみを求めるのなら、予選が終了した時点で新規に専用の舞台を作った方が管理が楽であるのは明らかだ。 過度のNPCの殺害の禁止を始めとする、参加者の行動を抑制するルールを用意してまでこの舞台を引き続き使う必要はない。 NPCの殺傷が咎められない場合は、無差別な大量破壊を可能とする宝具を持つサーヴァントが有利となる可能性はある。 互いに準備を整えた上で一対一で戦う決闘方式の場合は、正面からの戦いを苦手とするサーヴァントが不利となるだろう。 だが、そもそも真に公平なルール、取り決めなどというものは存在しないのだ。 故に武蔵でも正純は自陣営が有利となるように交渉を行ってきて結果的に戦争になったりした。うむ、別に好きで戦争に持ち込んだ訳ではない。 しかし正純と違い、聖杯はあらゆる参加者よりも上の立場にいる、いわば主催者だ。 単に管理を行いやすいようなルールを制定すれば、それでいい。 そもそも、本当にルールを順守させたいと言うなら、もう少し強制力を高めるべきだ。 極端な話、監督役という監視者を置く以前に、予選の段階で記憶を操作したように、最初からルールを破れないように行動を制限してしまえばいいのだから。 逆に言えば、 「それでもこの舞台で、このルールで戦いを行わせる理由がある」 ……思い当たる事はある。 それは、 「――再現だ」 聖杯は時代を越えて、人物を、土地を、英霊を、あらゆるものを再現している。 この聖杯戦争そのものも、その再現の一環であったとしたら。 そのルールも、何時か何処かで行われたであろう聖杯戦争のルールを再現しているのだとしたら。 人類が再び天上へと登るため、聖譜に則って歴史再現を行ってきたように、 「聖杯は、聖杯戦争という事象を再現する事で、自らの望むものを観測しようとしている訳か」 また、聖杯による再現は完全なものではなく、ある程度の解釈が含まれている。 例えば、ライダーはかつて自身の部下であった戦鬼の徒をサーヴァントとして召喚するという宝具を持つ。 しかし生前のライダー――少佐は、そのような能力は有していない。あくまでも、最後の大隊の指揮官として彼らを率いていただけだ。 こういった事は、歴史再現を行う襲名者達の間では全く珍しい事ではない。 ごく一部を挙げるだけでも、異端の術式である"地動説"と"天動説"を用いて戦闘を行うK.P.A.Italiaのガリレオや、傭兵王ヴァレンシュタインとの二重襲名で亡霊戦士団"加賀百万G"を使役するP.A.ODAの前田・利家などがいる。 それに二つの球を合わせてチューチューして何度も引っ張って街中を大騒ぎにした"マクデブルクの半球"のゲーリケも直接交渉した事もあって記憶に残っている。そういえば彼も独逸人だったな。 過去の時代にも"兵士同士の結婚"を推奨したバレンタイン司教や、アキレスと亀のパラドクスの実験中にアキレス役が亀に追い付きそうになったのでアキレス腱固めをかけて実力阻止したゼノンが存在していた。 これらと同じものとして見ていいかどうかは、かなり、かなり微妙なところだが、何にせよ聖杯は完全な再現を行っている訳ではない。 つまり――。 「こちらが行う“解釈”もまた通用する。少なくとも、聖杯は解釈を行っている。意思がある」 この推論が正しいとも限らない。聖杯との交渉以前に行うべき事も山とある。それでも、交渉材料は見えてきた。 ……しかし、その為に、調べねばならない事があるか。 正純は、学生鞄からノートを取り出し、そのページ上に鳥居型の表示枠《サインフレーム》を展開。 周囲からはノートに書き込みを行っているように見せながら、表示枠にメモを取っていく。 それが終わった後に、新規に画面を表示する。 行うのは実況通神《チャット》だ。 その相手は、 ・副会長:『――いいだろうか、少佐』 ・戦争狂:『構わないとも、武蔵副会長』 正純が学園にいる時間帯、ライダーとは別行動を取っている。その理由は単純なもので、共に行動するメリットが薄いからだ。 仮に正純がマスターである事が既に把握されていたとしても、諸々のリスクを考えれば、日中の学園内で真正面から堂々とこちらに仕掛けてくる相手はいないだろう。 だが、周囲に人がいない状況など、襲撃者にとっての好条件が整った場合はどうか。 "暗殺者"という、そのものズバリのクラスのサーヴァントが存在している以上、警戒はしておくに越した事はない。 一般的なサーヴァントであれば、そういった事態に備えたり、逆に相手を牽制する為に、霊体となってマスターに同行するのが定石なのだろうが、 ……ライダーは、そのどちらも無理だからなあ。 "戦鬼の徒"を常時展開すれば話は別だろうが、それはあまりにも非効率的だ。 幸いと言うべきか、ムーンセルの解釈によるものか、ライダーも単独で表示枠を表示させることができる。 通神帯《ネット》の機能には多少制限があるようだが、冬木市の情報に関しては問題なく検索が可能だ。 それならば、正純は十全に注意を払いつつ学園に向かい、ライダーは自宅に待機し別方面で情報収集を行うというのが落とし所になる。 そして何か発見などした場合は、互いに連絡を取り合う事になっていた。            ● ・戦争狂:『――再現、か。成程。で?』 それが、 ・戦争狂:『それがどうした? 聖杯には意思がある感情がある願望がある、プログラムに沿って動くだけの機械ではない。ああそうだろう、そうだろうとも。       そうでなければ、私のような君のような者を放置しておくまい。反攻もまた聖杯の望むところなのだろうさ。それを再確認したところで、何を言いたい』 表示枠に映されるのは、挑発的ではあるが、続きを促す言葉だ。 ・副会長:『今後、如何なる情報を重点的に集めていくか、……それについて提案をしたい』 息を吸い、身体に冷気を入れつつ、正純は文字をタイピングしていく。 ・副会長:『私は、再現元である聖杯戦争についての調査を行いたいと考えている』 いいか? ・副会長:『聖杯が真に万能の願望機であり観測機であるのなら、このような試みを行う必要すらない筈だ。とはいえ、聖杯の演算能力そのものに関しては疑う余地はない』 ならば、 ・副会長:『一見しただけでも参加者間の公平性が保たれているとは決して言えず、穴も多いルールで行われるこの聖杯戦争。       莫大な能力を持つ聖杯が敢えてそのような方法で“観測”を図ろうとするからには、表には出ていない、隠された何かがある筈だ。       交渉にしろ戦争にしろ、聖杯に挑むに際して、それを知っておくべきだと思う』 ・戦争狂:『では、監督役に接触するか? 敗北主義者のように頭を垂れるか、ゲシュタポのように尋問にかけるか、方法は政治家に任せるとしよう』 自身の顔に苦笑が生じた事を、正純は知覚した。 ……解った上で言っているな、これは。 ・副会長:『方法はともかく、……いずれ対面せねばならぬ相手ではあるだろう。しかし、情報提供は期待できないな。       特定の陣営に肩入れを行うようでは公平な監督役とは言えないし、現状の我々の戦力では戦闘に持ち込む事すら出来まい。       ルールに抜け道があるように、監督役にも隙がある可能性は、勿論ある。だが、今の段階で目を付けられるのは回避したい』 ・戦争狂:『ならば、どうする。どうするどうするどうする、君ならどうするねお嬢さん《フロイライン》』 ・副会長:『――他のマスターとの交渉。それが現時点で有効な一手だろう』 続ける。 ・副会長:『それも、私のように巻き込まれた者ではなく、自ら望んで方舟へと乗り込んだマスターとの交渉だ。       準備を整え、必勝の態勢でこの戦いに挑んだマスターならば、事前に聖杯戦争についての知識も得た上でやって来たと推測できる』 正純は、そこで一旦息を吐いた。 ……言葉にしてしまうのは簡単なんだが、な。 ・副会長:『無論、交渉に至るまでには様々な障害があるだろう。まずは捜索から行う必要があるし、そのマスターについての調査も必要だ。       都合良くこちらの望む情報を持っているとも限らないし、更に他のマスターに接触したり、行動によって我々の正当性を高めたりする必要があるかもしれない。       そういった過程をすっ飛ばして交渉に当たらねばならないような事態も考えられる』 だが、 ・副会長:『だが、この方針自体最初から決定されていた事だ。あくまでも優先的に接触すべき相手についての話だと、そう思って頂きたい。       出会ったマスターが、喪失を望まず、ただ生存を願う相手であるのならば、当然ながら協力を持ちかけていく』 ・戦争狂:『ふん、いいだろう。では――ひとつ聞こうか』 ――来るか。 幻視する。 表情を読み取らせない眼鏡のその奥にある、狂気を含んだ瞳。 首を傾け、両腕を大きく振り上げ、演説でも行うようにこちらに語りかける、その姿を。 ・戦争狂:『自ら戦争に臨んだ、彼の、彼女の、あるいはどちらでもない者の望みを。聖杯などという化物に縋り付かねばならなかった感情を。       悲嘆を淫蕩を嫌気を強欲を虚栄を傲慢を憤怒を暴食を嫉妬を、君は受け止める事ができるのかな』 「――――」 戦争が始まった今となって、改めて問われている。 他者を喪失させる事でしか叶えられぬような悲願と、その覚悟を持った相手。 その相手と如何にして交渉を行うか、ではなく。 その身をもって相対する事は出来るのか、と。 「……決まっている」 打ち込むのは、ただの一語だ。それは、 ・副会長:『Jud.』            ● Judgement.――ああ、我ら聖罰を受ける者なり。 ・副会長:『何度でも言おう。私は、喪失も、それによってもたらされる救いも、認めない』 可能性を食らいて行く被罰者なり。 ・副会長:『聖なる遺物であろうが、それに願いを託す者であろうが、認める事はないだろう』 されど我ら、――悲しみを与えぬ者達なり。 ・副会長:『故に私は、この聖杯戦争を“解釈”する。あくまでも聖杯がそれを認めないというのであれば――』 ・副会長:『戦争をしよう。一心不乱の大戦争を』            ● ・戦争狂:『ならそうしよう。今しばらくは政治家に表舞台を任せるとしよう。何、雌伏だって慣れているし、後に待つものを思えば中々楽しいものだ』 ……まったく。 本当に、ごく当たり前の事を再確認しただけ、という風だ。 手強い相手だと、改めて思う。 とはいえ、確かに今やった事と言えば、情報収集の方針について伝えただけではある。 もう少しコミュニケーションというものを取ってみるべきかもしれない、とは思うが、 ……急がねば、授業が始まるか。 ・副会長:『そろそろ、こちらは時間になる。そちらも、何かあったら連絡を寄越してくれ。出来る限りは返答を返すつもりだ』 ・戦争狂:『征くがいいさ武蔵副会長。良い戦争が出来るようにな』 その時正純は、こう思った。 ……こういう時、最後に何か、言っておくべきだよな。 ネタならある。 ライダーに出会った当初から考えていたものだ。 ――よし。 ・副会長:『では、最後の大隊の指揮官よ。――だいたい、そんな感じで頼む』            ● 十数秒の沈黙の後、手刀で表示枠を叩き割ってから正純は立ち上がった。 ――よし。 何がよかったのかは解らんが、まあよしだ。 交差点を曲がれば、すぐに校門が見えてくる。 正純は一度伸びをして、 「――行こう」 呟きと共に、一歩を踏み出した。 【C-3/月海原学園付近/一日目 早朝】 【本多・正純@境界線上のホライゾン】 [状態]空腹 [令呪]残り三画 [装備]学生服、ツキノワ [道具]学生鞄、各種学業用品 [所持金]極貧 [思考・状況] 基本行動方針:他参加者と交渉することで聖杯戦争を解釈し、聖杯とも交渉し、場合によっては聖杯と戦争し、失われようとする命を救う。 1.マスターを捜索し、交渉を行う。その為の情報収集も同時に行う。 2.聖杯戦争についての情報を集める。 3.可能ならば、魔力不足を解決する方法も探したい。 【C-3/正純の自宅/一日目 早朝】 【ライダー(少佐)@HELLSING】 [状態]健康 [装備]拳銃 [道具]不明 [所持金]不明 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯と戦争する。 1.暫くは待機し、通神帯による情報収集を行う。 ---- |BACK||NEXT| |044:[[POINT OF VIEW]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|046:[[何万光年先のDream land]]| |044:[[POINT OF VIEW]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|046:[[何万光年先のDream land]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |015:[[本多正純&ライダー]]|[[本多・正純]]&ライダー([[少佐]])|070:[[ソラの政治家達]]|

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