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POINT OF VIEW」(2014/08/13 (水) 01:32:28) の最新版変更点

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**POINT OF VIEW ◆S8pgx99zVs ひどく静かな夜だった。 草木も眠る丑三つ時とは言うが、それにしても静か過ぎるだろうと少女――遠坂凜は思う。 目の前に写るのはなんら変哲もない風景。いつもの、幾日か過ごしたはずの仮想の生活の中で得た記憶と同じ風景。 尤も、常に優等生であろうとする凜にとって(少なくともこの世界においては)深夜の外出など経験はなく、昼と比べれば印象も変わるのだが、 それにしても変わらないものだなと凜は思うのであった。 昼の内から閉じているのが散見できた商店街のシャッターは全て閉じられており、所々に立つ自販機だけが光を発し自己主張している。 途中、細い路地に入れば途端に明かりは少なくなり恐怖という名の闇色が足元に忍び寄る。ゴミ捨て場のすえた匂いもそれに一助していた。 しかし少女はひるまない。彼女――遠坂家の魔術師である遠坂凜は闇夜の中こそが自分の舞台だと知っているのだから。 “聖杯戦争”は開始された。 ただの一度で何もかもが失われ、栄光と誉れを頂くのはただの一組。いや、聞いた話の上では成功した例などないという無謀無茶な魔術儀式。 分の悪い賭けだと言う者もいるだろう。しかし魔術師らはそうは思わない。科学とて同じだろうと言う。 大いなる成功には夥しい数の挑戦と犠牲という試行の結果が必要なのだ。 四度目の聖杯戦争も誰の目論見も達することなく、更には悲惨な結果となって終結した。しかしそれを嘆くものはいない。少なくとも魔術師としては。 遠坂凜は一介の魔術師として当然の如く、この箱舟の聖杯戦争にも挑む。 その一手目がこの深夜の哨戒だ。此度の聖杯戦争は事前の通告はなく、なんら戦略的な用意をせずに始められてしまった。 故に、他のマスターらよりも抜きん出る為、最後には出しぬく為に凜は幼い身には似つかわしくない夜へと身を躍らせた。 開始の状況が曖昧だっただけに、すでに動き出しているマスターがいるかもと考えればそれは当然の判断だろう。 しかし、もしここに更に遠き日の遠坂凜がいればこのかつての自分を叱責したことだろう。 なにも用意がないのに迂闊が過ぎる。自陣以外が全くの不明のこの仮想の戦場(フィールド)。 ましてやルールすらも自分の知る冬木の聖杯戦闘とは違うのに、どうして自らが先手を打とうと考えるのか。初手は見とするのが定石ではないかと。 実は幼い凜はこれと同じことをすでに己のサーヴァントに忠告されている。 クー・フーリン――今の凜には知る由もないことだが、縁浅からぬ間柄である。遠き日の凜とは対決する立場にあり、刃を交わしたこともある。 彼は本来、好戦的で獰猛な戦士である。好敵手と戦うことが望みであり、サーヴァントとして召喚された時点で願いが叶うような稀有な存在である。 それでも彼は凜に忠告した。 ひとつは彼女が弱いということ。遠坂の血筋であり、すでに才能の片鱗を見せているとはいえまだまだ幼い。能力も技術も経験も足りない。 ひとつに彼女が想いに囚われているということ。今、彼女は父母を奪った聖杯戦争への敵愾心と遠坂家の魔術師であるプライドとがない交ぜになっている。 仮に首尾よく敵へ先制できたとしても、とても勝ちを得られる状態ではないのだ。 それでも、凜は夜の世界へと出た。そこになにか別の勝算があった――わけではない。やはり彼女はただ幼かったのだ。   Ж Ж Ж 遠坂凜は繁華街を避け深く寝静まった住宅街の中を歩く。繁華街を避けたのはある失敗に起因する無意識的なものか、それは不明だ。 ともかくとして、しばらく夜道を往くと大きな森林公園の入り口が見えてきた。 風に揺られざわざわと笑う木々に凜は息を飲む。 この公園は凜も仮の生活の中で歩いたことがあった。昼間はとても緑が美しくて、休みの日には芝生の上でピクニックする家族連れなんかも見られる。 それが深夜となると全く様相を変えていた。 立ち並んだ木々は鬱蒼として見通しが悪くその懐に深い闇を湛え、足元では生い茂った草が凜をあざけ笑うようにサラサラと音を鳴らしている。 景観の為か街灯は少ない。点々とした乏しい明かりの中、この公園の中はまるで海の底の様に蒼く染まっている。 凜は緑の草木を避け、赤い煉瓦が敷かれた道の上をコツコツと小さな音を鳴らして歩く。 そして、魔術師としての矜持と子供としての素直な気持ちがせめぎあいを始めた頃になって、その二人を発見した。 道の先、街灯の作り出すスポットライトの下に学生服の男女の姿がある。 どちらも高校生だろうか。男の方は白い学ランを、女の方はブラウスにスカートという姿だった。 更に述べれば、白ランの青年は肌も白く細い身体をして顔は神経質そうで、女の方はというと髪型はふたつのおさげ、顔には眼鏡とかなり地味だ。 所謂、深夜のデート。人目を憚りこんな時間にこんな場所で逢引をする生真面目な学生カップル――というのが第一の印象。 こちらは子供なので万が一にでも警察等に通報されてはまずい。 凜は元の道を引き返そうと踵を返し――しかし踏みとどまる。次の瞬間、凜の目の前には彼女の、ランサーのサーヴァントが顕現していた。 「………………」 無言。しかし確かな気迫と共に青い装束を纏ったランサーは真紅の直槍を白ランの青年へと突きつける。 彼我の距離は大よそ20メートル。しかし彼からすればたった一足の距離でしかない。一度マスターが命じれば、次の瞬間には相手は串刺しになる。 「“そっち”じゃないわランサー!」 まず真っ先に凜の高い声が静寂を破った。その言葉の意味、そっちじゃないとは? ランサーの頭の上に疑問符が浮かぶ。 「女のほうが“サーヴァント”よ。……ライダーのサーヴァント」 続く言葉を聞いてランサーの口から「む……」と声が漏れる。そして改めて相手側の気配を探れば確かにマスターの言っている通りだった。 だがしかし、このランサーの勘違いは致し方ない。 それほどまでに目の前の白ランの青年――『狭間偉出夫』は逸脱した存在なのだ。 正真正銘、生身の高校生でありながら単身魔界へと乗り込み、悪魔を手懐けて創造神の一柱であるズルワーンを下したほどの実力者であり、 神に成り代わることこそは人の身の若さ故に叶ってはいないが、魔神皇として魔界の支配者として君臨するほどの大魔導なのである。 仮に、(彼の性格上、そういう仕組みだとはいえ誰かの下につくなど想像もできないが)キャスターとして召喚されることがあれば英霊の中でも随一だろう。 そして、そうでなくとも彼は英霊すらも下に置くほどの実力の持ち主である。 いざ相対してみればその眼光は禍々しく、ランサーが咄嗟にこちらがサーヴァントだと判断したのは無理もない。 翻って、彼のサーヴァントである女子高生――希望崎学園の鏡子は“弱い”。 恐らく今回呼び出されたサーヴァントの中でも断トツに弱い。今対峙しているランサー相手は勿論、“ただの戦闘”となれば幼い凜にすら負けてしまうだろう。 彼女の身体能力はサーヴァントとして召喚されてなお人間の範疇を超えない程度しかないのだ。故にこちらもランサーが見誤るのも無理はない。 そして、これらを指摘した凜にしても、どうしても狭間の方へと意識を取られてしまう。それほどまでに彼の魔神皇としての存在感は圧倒的だった。 「(ライダーだと……)」 どちらにも対応できるよう赤い穂先を揺らしながらランサーは内心「これはよくないな」と思った。 彼自身は如何なるサーヴァントが相手であろうと互角以上の健闘ができる実力と、それを保証するスキルを持っている。 ではそんな彼の弱点はなにか? それは脆弱なマスターの存在だ。幼いながらもさすがは遠坂の血。魔力の供給は問題ないが、今現在の凜に戦闘中に己を守る実力はない。 故に、同じ聖杯戦争の参加者を発見すればいくらかはマスターより離れて行動できるランサーのみが敵に当たる――というのが当初の予定であった。 あわよくば密かに相手を尾行し根城を確定できれば上々。 その後はゆっくりと観察した上で万全を期してから殲滅に当たる。これこそが魔術師の戦争の理想である。 もし戦闘になることがあっても、適当なところで逃げ出せばよいし、万が一マスター諸共に接敵することとなればマスターを抱いて逃げればよい。 そう段取りは打ち合わせていたのだが……、 「(見た目はこの時代の女となんら変わりがねぇ。なら正体を隠すスキルを持っているのか……いや、その気配すらない。ということは――)」 『ライダー』とはつまり、文字通り何かに乗る者だ。そして目の前の害のなさそうな女学生のサーヴァントは一見戦闘ができるようには見えない。 それはつまり、このサーヴァントの真価は『騎乗』のスキルの中にあると見るべきだという話。必ずなんらかの英霊となり得る宝具を備えているはずなのだ。 これこそがランサーの懸念だ。 この場合、『凜を抱いて逃げれば何か乗った二人に追われる可能性がある』。そして、そんな状態での戦闘は不利になるに違いない。 ならば、事前の打ち合わせにはないがここでマスターの姿を曝したままで勝負をするという選択肢も浮かび上がってくる。 「おい、マスター。どうする?」 言外にやれと命じられればやるぞと含みを持たせてランサーは凜に問う。だが返ってきたのは、 「ぁ……、あ…………」 ただの子供が戦慄く吐息、それだけであった。   Ж Ж Ж 僅かに風が吹き木々がざわめく。風が止めばまたぴたりとした静寂が戻ってくる。 相対した4人に動きはない。白ランの男も女学生も仕掛けてくる様子はない。では会話できるかというとそれは剣呑な雰囲気が拒否していた。 そして凜はというと、明らかに格上の魔術師に相対したからか完全に“呑まれて”いる。もうこの場面では役に立たないだろう。 全ては自らの一手か。覚悟を決めるとランサーは僅かに腰を落とした。 油断なき構え。こうなればこの男に隙は存在しない。 飛び道具であればいかなるものであろうと避けてみせるし、接近し一撃を喰らわせようとしても彼の槍捌きを縫って肉薄することは至極至難。 なにやら魔術を使おうとも、一瞬でも抵抗できれば次の瞬間にはその魔術の圏内から逃げおおせてみせる。 ランサーは強いのだ。遠坂凜の呼び出したクー・フーリンは最強の内の一人と数えていいほどの実力を持ったサーヴァントなのだ。 それから数瞬。先に動きを見せたのは相手側の方だった。 ランサーの覚悟を察した故か、マスターをその場に留めてライダーが、ただの制服の女学生にしか見えない女がゆっくりと歩いてくる。 そして彼我の中心。ランサーからして10メートルほどのところで止まると、片手を上げて―― 「こんばんは」 と微笑んだ。にっこりと、朗らかに、なんら害がないのだと示すように。 この態度にランサーの理性はこの相手とは話し合えるかもしれないと判断する。 なにも他の聖杯戦争参加者と遭遇したからといって、必ずそこで決着をつけなくてはならないというルールはないのだ。 聖杯戦争の決着までに無数の戦闘を超えなければならないのが想定されているなら、まずは手ごろな相手と同盟を組み共闘関係を得るのが定石。 初っ端より戦闘に明け暮れただいたずらに損害を積み上げていくことは愚の骨頂とも言える。それはどのマスターとサーヴァントでも同じはずだ。 だが、ランサーの本能は違う判断をした。 ランサーの本能はライダーの害のない笑みに得体の知れないなにかを感じ取っていた。 いや、感じ取るなどというものではない。 その笑みを見た途端、つま先から頭の頂点までにおぞましいものが走り、闘いに浸りきった後のような熱が頭の中に沸き上がっていたのだ。 その正体を思考が判ずるよりも前にランサーはそれを危険だと感じた。それは間違ってなかった。だが、完全に正解でもなかった。故に次の判断を誤った。 「しぃ…………ッ!?」 ランサーは逃げるべきだと、なにはともあれ距離を取るべきだと反射的に飛び退った。これが間違いだった。 仮に、最早ランサーが飛び退っている以上言っても詮無きことだが、 ランサーが別の判断をし破れかぶれで女に一突きを食らわせていれば、女はその一撃で絶命し彼は初戦による勝利を得ていただろう。 だが、現実には彼は10メートルほど飛び退り、女から離れてしまったが故に――。 「んふっぐおぅわあああぁぁぁぁぁああんんんんんん!?!?」 絶叫。悲鳴とも雄たけびとも判別できない声を静寂な森林公園に響き渡らせる。 その手から槍を零し、両膝を折って地面に突っ伏すと叫びながらになにかを地面に撒き散らした。溶けた泥の塊が落ちるような音が続けて鳴り響く。 次の瞬間、ランサーは「何が?」と思考する。しかし思考が続いたのはそこまでで、次の瞬間にはまた 「ぅんぐぅおぉおおおおおぉぉおおおおんんんんんふううううううううぅぅぅ!?!?!?」 犬の様に四つん這いになり、足を突っ張って尻を突き上げビクビクと痙攣しながらランサーは腹の下から、よく観察すれば股間から液体を撒き散らす。 彼のマスターである凜はこの突然の状況に唖然としていた。まさに理解が及ばない場面だ。急にランサーがおかしくなった様にしか見えない。 もし僅かでも冷静に思考できていればこれは魔術による呪いの一種ではないか、であれば自分がディスペルしなくては等と考えもできただろうが、 しかし目の前の異常な光景――自らのサーヴァント、彼の股間の“逸物”、その逸物から液体が吐き出されるとなれば冷静な思考は一切に不可能でしかなく、 ただただそれを見れば見るほど、彼の嬌声を聞けば聞くほど、凜の頭の中は彼と同じく茹で上がりまだ小さく未発達な身体は奇妙な熱を帯びるだけなのだ。 そしてそこから目を離せない凜は、ランサーの股間から垂れ下がる逸物にそれを握る『手』がついていることに気づく。 乳液に浸したようにぬらぬらと照るその手がまるで牛の乳を搾るように動けば、同様に先端から白い液体が噴き出し、地面に大きな白濁の水溜りを作るのだ。 この行為の意味を幼い凜はよく理解していない。ただ、ただただ理解はなくともその光景は凜の中に眠る本能を激しく徒に打ち鳴らしていた。   Ж Ж Ж 「……立派な“槍”ね♪」 手鏡の中に潜らせた右手が得る剛直の感触に鏡子はうっとりとそう漏らした。 この手鏡こそが彼女の宝具。ランサーが懸念し、実際その通りであった彼女にとって唯一の手段であり切り札でもある『ぴちぴちビッチ』である。 手鏡の中に半径2キロメートル以内の光景を自由に写し、“猥褻な目的に限ってのみ”その鏡面を通して干渉できるという能力。 そう、至極簡単に言ってしまえば、鏡子は鏡越しにランサーの陰茎を握り、扱くことで射精させているのである。 しかもただの射精ではない。幾多の並行世界、あらゆる時間軸において並ぶものなしとされる鏡子の手技をもって“擦れば”、 通常の生理ではありえない連続した、しかも大量の射精をそれに見合った快感と共にさせることが可能であるし、 その悦楽によって相手の思考や動作を奪うことなど、例え相手が英霊であろうが、神であろうが“造作もない”ことなのである。 「んふぅおおぉんんんんんはぁあああぁぁぁぁんんんんん!!!!」 未だ悦叫を上げ続けるランサーにくすりと笑みを浮かべると鏡子は悠々と彼へと歩み寄る。 ちらりとその傍にいる彼の幼いマスターを見るが、彼女はこの光景に気圧され真っ赤に顔を染めて震えているだけだ。 仮に彼女がなにかをしようとすれば後ろに控えている狭間が瞬時に彼女を射抜いてしまうだろうが――そうなる前にと、鏡子は行動を開始することにした。 「はい、おちんちん♪」 鏡子が鏡の中でそれをシフトレバーの様にくくっと動かすと、途端、ランサーの身体が跳ねたかの様に裏返る。 この様に、鏡子ほどの性技の持ち主となれば愛撫による反射動作でもって相手を操ることすら容易い。その気になればフラメンコを踊らせることも可能だろう。 「あ、あぉが……テ、メェ……んんんっぐぅ……ッ!!」 “敵”を視界に捉えたことで僅かに理性が戻ったのだろう。快楽に蕩けていたランサーの顔が険しいものに変化する。 脳内のシナプスが全てセックスで上書きされかねないこの快感の中でそれだけでも抵抗できたというのはさすが英霊だと賞賛すべきだ。 だが、彼の抵抗もそこまでである。そして、彼は鏡子の次の行動を見て“ゾッとしながら身体を喜びの期待に震わせた”。 鏡子が“パンツを脱ぎ捨てた”のである。 校則通りの膝丈のスカートの中に手を入れてそこから出てきたのは、彼女の地味な外見からは想像もできないほど扇情的な下着であった。 なんでもないことのように普通に脱いでみせると彼女はそれを地面に落とす。びちゃと、まるでよく水を吸った雑巾が落ちたような音がランサーの耳に届いた。 これが何を意味するのか、例えればそれは『武士が鞘から刀を抜く』、あるいは『ボクサーがグローブ』を外す等ということに相当する。 「ンヒィ……や、…………やめ、は……ひゃあぁぁあああああ!!!」 圧倒的性的暴力の予感に険しさを見せたランサーの顔は、気づけば泣き笑いのようなものへと変じていた。   Ж Ж Ж 「おぎょおおおおんほおおおんおんおんんんんんんんうぅんひぃいいいいいぃぃぃっっ!!!!」 最早この世のどんな生き物の鳴き声にも聞こえない悦叫が夜の中に木霊する。 自らが吐き出した精液の水溜りの中で仰向けにチンチンのポーズを取らされていたランサーは只今絶賛逆レイプの真っ最中。 パンツを脱ぎ捨てた鏡子に『騎乗』され、ただただ彼の存在そのものを溶かして精液を吐き出し続けていた。 彼の『槍』が“それ”に飲み込まれた時、その瞬間、彼は自らの心象風景の中に“涅槃”を見た。どこまでも透き通った世界。真の常楽我浄。 だが、次の瞬間快楽地獄に落とされる。正常な意識を保てたのは1秒を半分に割ること数十回分ほどで、刹那の間に彼の思考は快楽に溶けた。 「私はね……君にいっぱい気持ちよくなってもらいたいだけなんだよ♪」 ひたすらに精を吐き出す彼の上で鏡子は自らも快感を得ながら『バラタナティヤム(インド舞踊)』の様に彼の上で踊る。 人が快感を得るのは性器からだけだろうか? いやそうではない。それ以外の場所でも性技が達者なら快感は生まれる。まして、鏡子がとなれば全身に性感を覚えない場所はない。 鏡子の指先が様々に形を変え、擦り、摩って、摘まみ、なぞり、擽り、押して、掻いて、扱けばランサーは応じて精を吐く。 鏡子が舌先に唾液を湛え、舐めて、吸って、噛んで、挟んで、浸して、吹きかければランサーは益々もって精を吐く。 「うぉるげやらはらうわぉおおわらわあぁぁあああががぁぁぁああああああっ!!!」 ランサーの吐き出した精液は鏡子の胎を満たし、溢れかえると彼女の愛液と混じって周囲に撒き散らかされる。 『騎乗』と『槍』の“直接対決”が始まって十数分。すでに周囲は咽返るほどの精の匂いで満たされ、吐き出された精液は数万リットルに達していた。 常人であればとっくの昔に枯れ果てている量だ。その快感だけにしても常人なら百回廃人にしても足りないほどのものが彼には与えられている。 それでも未だ顕現していられるのは英霊という存在の器の大きさか。 翻って、鏡子はというとすればするほどにつやつやと存在に輝きを増してゆく。 サーヴァントとマスターが魔力のパスをつなぎ魔力のやりとりをしているのは、この聖杯戦争に参加している者であれば誰でも知るところだが、 実はこれを性行為をもって行えばより効率よく行えるという事実も一部ながら知られていることである。 そして、鏡子とランサーは互いにサーヴァント同士であるがそれと同じことが今起きているのだ。 ランサーが精を吐き出せば吐き出すほど、鏡子が精を胎に受け止めれば受け止めるほど、彼の魔力が彼女へと移されていくのである。 「もう……かな。私の“セックス”にここまで耐えた人なんて、初めてかも……」 腰を振る鏡子の下で、遂にはランサーという存在の希薄化が始まる。彼の中にある顕現に必要な魔力が尽きようとしているのだ。 このままでは後間もなく、1分もしない内にランサーは魔力を絞り取り尽くされこの場から消え去るだろう。 しかしそれでも鏡子は腰を振る手を弱めることはしない。このまま彼を枯死させるつもりであった。  ここで、諸兄諸姉の中には疑問を持った方がおられるだろう。“鏡子はセックスでは相手を殺さないはず”だと。  その言葉は正しい。“ある場合”において彼女はセックスで相手を死に至らしめることを忌諱している。  その“ある場合”が重要だ。逆にそうでなければ彼女はセックスで相手を殺しうるのだ。  彼女がセックスにより相手を殺すことを忌諱する様になったのはある『転校生』との性的な決闘が原因だ。  そこで彼女と彼は互いにイかせあい、最終的に『転校生』は死亡した。  この時、鏡子は死んでしまっては彼はもうこの快感の記憶を反芻することができないと、そんな当たり前のことに気づいたのだ。  下品に言えば、『彼はもう思い出しオナニーしてくれないのね。すごく悲しい』となる。  鏡子のアイデンティティは相手が快感を得る姿にある。つまり相手を死に至らしめることは自分を殺すのと同義なのだ。  故に当然の帰結として鏡子はセックスによる殺害を封印することとなる。  だが、例外的事態がここで生まれる。この聖杯戦争に限って言えば、鏡子はサーヴァント相手なら絞り殺すことができるのだ。  端的に述べるとサーヴァントはここで死んでも死なないからである。ここで消滅しても記憶を持って『座』に戻るだけである。  その証左は今鏡子に搾り取られ存在の危機にあるランサー自身である。  彼は“前回”参加した聖杯戦争の記憶を保持したまま今回の聖杯戦争に召喚されている。これは英霊が記憶を失わない紛れもない証拠である。  つまり、ここで鏡子にセックスで殺されても英霊の『座』に戻ればそこで思い出しながらシコり放題だぜ(やったね☆)という話なのだ。  だから、鏡子はこの聖杯戦争においてはサーヴァント相手に限り、セックスで相手を殺すことができる!  ……この場合、サーヴァントと一蓮托生なマスターも死んでしまうことに疑問を抱く方もいるかもしれない。  だが、それに関してはより安心してほしい。彼女は自分が相手を枯死させること以外の死については(自身の命を含め)非常に淡白である。 そして、遂にその時が訪れる。   Ж Ж Ж 「ぅぇろ……が、は……………………ぁ…………」 遂にその射精を最後にランサーの身体が一切の力を失った。顔は恐怖に強張った様な形相で白目を剥き、鼻水と涎を垂れ流している。 そんな姿を見て鏡子は少し残念だなと思った。 これは聖杯戦争であり、戦争の中では敵同士は殺し合うのが慣わしなのだから相手を死に至らしめるのは当然の行動だ。 だが、出来うるならこの“性”をもっと楽しみたかった。闘いを忘れて、“犬”同士の様に……。 鏡子が精液塗れの姿でそんな感傷に浸っていると、不意にランサーのマスターである少女がかくっと力を失い地面へと倒れた。 おそらくはサーヴァントを失った結果としてマスターの権利をも失い死に至ったのだろう。 彼女に対しては恨みつらみも思い入れもないが、セックスを経験せずに死んでしまうのだけは可哀相だなと鏡子は思う。 「……あれ?」 何かがおかしい。鏡子がそう思った瞬間、彼女の姿は宙にあった。 「な…………は、……っ!?」 最初に感じたのはドンッという下から突き上げる衝撃だった。 あまりに不意だったので鏡子には一瞬理解できなかったが、同時に身体が絶頂していることでそれが彼の『槍』によるものだと数瞬後に気づけた。 だが、気づけたとして鏡子には為す術ががない。ただ胎に溜め込んでいた精を零しながら宙に放物線を描き、落下するのみである。 「……ぐっ! ……イ、ったぁ…………!」 赤煉瓦の舗装路にしたたかに腰を打ちつけた鏡子が顔を上げた時、もうそこにはランサーも彼のマスターの姿もなかった。(ついでに彼が落としたはずの槍も) 後に残されたのは新しく池を作ったような大量の精液のみである。 つまり、殺しきれてなかったのだ。 ランサーはぎりぎりまで絞られることに耐え、そこで力尽きたと見せ、鏡子が動きを止めたところを見計らい残していた一撃で持って跳ね飛ばしたのだろう。 マスターが倒れたのも、あれは死んだのではなく最後の一撃を振り絞ったサーヴァントに急に魔力を吸われた結果だと推測できる。 「ふふ……ふふふ……ふふふふふふ…………」 精液と愛液とが交じり合った小さな池の中で頭からずぶ濡れの鏡子は心底おかしそうに身体を震わせる。 ランサーは死ななかったのだ。そう、だから―― ――またセックスができる。 そんなすごく楽しそうな鏡子の後方、 街灯にもたれかかりながら虚ろな目で彼女を見る狭間偉出夫は、この聖杯戦争における戦略をこれからどう修正しようかそればかりを考えていた。 彼女の能力は実に有用だ。それは今証明された。そして彼女にはこのような実戦に慣れた感もある。ただの女でないというのは悪くはない。 だが、あまりにもその戦い方が卑猥すぎる。精神衛生に悪い。 魔神皇としての威厳や、健全な男子高生としての尊厳。色いろと踏みにじられている感が、彼の小さな心を苛むのだった。 余談。 この後、各サーヴァントがこの公園に撒き散らかした精液と愛液は普通の人間には見えないまま地面へと吸収されていったのだが、 それに当てられたのか、これよりしばらくこの周囲の犬猫が一斉に発情期を迎えたり、この公園で普段より過剰にいちゃつくカップルが頻繁に見られたり、 レス気味だった夫婦がここに家族でピクニックに来た後、急に盛んになって新しい家族が増えたなどということがあったらしい。 【C-5/森林公園/1日目 早朝】 【狭間偉出夫@真・女神転生if...】 [状態] げんなり [令呪] 残り二画 [装備] [道具] [所持金] 不明 [思考・状況]  基本行動方針:聖杯戦争に勝つ。  1.聖杯戦争に挑むにあたっての戦略をもう一度検討しなおそう。 [備考]  まだ童貞。 【鏡子@戦闘破壊学園ダンゲロス】 [状態] つやつや [装備] [道具] 手鏡 [所持金] 不明 [思考・状況]  基本行動方針:いっぱいセックスする。  1.一度お風呂に入らないといけないかな? [備考]  クー・フーリンと性交しました。   Ж Ж Ж 「…………ゼェ、ハァ」 屋敷に戻ってきたランサーは凜をソファに横たえると、もう力尽きたとばかりに床へと膝をついた。そして実際に彼は精根尽き果てていた。 「くっそ……なんだあのサーヴァント。どこが、『ライダー』なんだよ……」 魔術と性は近いところにある。英雄色を好むなどという言葉もある。なので“性豪”の英霊がいるというのも考えられなくはない。 時のポルノスター。君主に摂りつき国を傾けさせた美女。そういう者が英霊となれば、『性技』というスキルを持つことがあってもおかしくないだろう。 だが、ランサーの体験したあれは常軌を逸していた。 「あいつ……」 ランサーは実際に体験したからこそ、それを理解していた。あのサーヴァントは――それだけだ。 隠し能力も正体もないもない。ただ、“セックスが上手い”というだけで英霊になってしまった人間(女)だ。 今はもう土気色のランサーの肌色がその事実になお悪くなる。吐いてしまいそうだった。鏡子という存在そのもののおかしさに。 「…………ランサー?」 「気づいたか」 いつの間にか意識を取り戻していた凜がソファからランサーを見上げていた。 その表情は弱々しく感じるが、肌色を見れば命に別状はないことがわかる。おそらく急激に魔力が減少したことで貧血に似た症状を起こしたのだろう。 「悪い。今回は完全に俺の不覚だ。……まさかあんなサーヴァントがいるだなんて想像もしてなかった」 ランサーはそのまま頭を下げる。言葉も一切の偽りなく本心だった。 そして、凜の方も身体を起こすと自分の不明を恥じると頭を下げ、目じりに涙の粒を浮かべた。 やはりまだ幼いのだなと彼女の行く末を知るランサーは感傷を覚え、殊更に明るい表情を浮かべるとすくっと立ち上がって見せる。 「なに、同じ相手に不覚を取る俺じゃねぇ。次はあんなことはないさ」 この言葉も全く嘘というわけでもない。相見えた感触としてあのライダーはセックス以外の武器を持たず、本体の能力は極貧弱だ。 ならば槍の一撃さえ届けばたったそれだけで勝つことが出来る。これを知っていれば、少なくとも同じ状況でならもう不覚を取ることはありえない。 懸念されるのはあの鏡による遠隔攻撃。あれがどの程度の距離まで届くのか、視覚の中でないと発動しないのか等々、ランサーはまだなにも知らない。 一度でも触れられたら終わりなだけに、その点については慎重に探っていくことが求められるだろう。尤も、もう二度と会いたくないというのが本心だが。 「じゃあ、俺はちょっと周りを見てくる。お前はよく休んでおきな。マスターであるお前が回復しないと俺の方も全力を出せないんでな」 くるりと手先で槍を回してランサーは凜に背を向ける。 本当なら彼も休息をとりたい所だったが、あの公園から逃げ出してここまで、尾行や他の参加者らの目を気にする余裕はなかった。 最悪、すでにここに監視がつけられている可能性もある。だとすれば命を賭しマスターの盾となるのがサーヴァントの役割だろう。 「ごめんさい。……それと、気をつけてね。あんたがやられたら私も終わりなんだからさ」 応と背中で返したランサーの姿は次の瞬間には凜の前から消え去っていた。 「……………………」 ランサーの気配が遠ざかったの確認すると凜はのろのろとソファから立ち上がる。向かう先は寝室――ではなく、風呂場だ。 未だ眩暈を覚えながら脱衣場まで行くと、これものろのろともどかしげにゆっくりと服を脱ぎ捨てていく。 「う、うぅ…………」 鏡の中に映る彼女の顔が紅潮し、またしても涙の粒が浮かぶ。 マスターとして参加した聖杯戦争に圧倒されたのだろうか、それとも間近に感じた死に恐怖を抱いたのか、あるいは英霊という存在に畏怖を覚えたのか。 はたまた、濡れた下着を見てもうおもらしなんかする年ではないと恥を感じたのか。 あるいは、それは――しかし、彼女の名誉の為に真相を突き止めることはせず、この話はここで終了する。 窓の外では夜が白み始めていた。そう、聖杯戦争は始まったばかりなのだ。まだ、これはたった一晩にも満たない話でしかない。 【B-4/遠坂邸/1日目 早朝】 【遠坂凛@Fate/Zero 】 [状態] 魔力ほぼ枯渇、憔悴 [令呪] 残り三画 [装備] アゾット剣 [道具] [所持金] 不明 [思考・状況]  基本行動方針:遠坂家の魔術師として聖杯を得る。  1.今は休息。  2.学校はどうしようか……? [備考]  特になし。 【クー・フーリン@Fate/stay night 】 [状態] 魔力ほぼ枯渇、憔悴 [装備] 槍 [道具] [所持金] 不明 [思考・状況]  基本行動方針:遠坂凜のサーヴァントとして聖杯戦争と全うする。  1.屋敷に近づく者、監視する者がいないか見張る。  2.出来る限り回復に努めたい。  3.あのライダー(鏡子)にはもう会いたくない。最大限警戒する。 [備考]  鏡子とのセックスの記憶が強く刻み込まれました。 ---- |BACK||NEXT| |043:[[アンダーナイトインヴァース]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|045:[[戦中の登校者]]| |042:[[鋏とおさげ]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|045:[[戦中の登校者]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |016:[[狭間偉出夫@真・女神転生if...、ライダー]]|[[狭間偉出夫]]&ライダー[[鏡子]]|056:[[電脳淫法帖]]| |000:[[遠坂凛&ランサー]]|[[遠坂凛]]&ランサー[[クー・フーリン]]|:[[]]| ----
**POINT OF VIEW ◆S8pgx99zVs ひどく静かな夜だった。 草木も眠る丑三つ時とは言うが、それにしても静か過ぎるだろうと少女――遠坂凜は思う。 目の前に写るのはなんら変哲もない風景。いつもの、幾日か過ごしたはずの仮想の生活の中で得た記憶と同じ風景。 尤も、常に優等生であろうとする凜にとって(少なくともこの世界においては)深夜の外出など経験はなく、昼と比べれば印象も変わるのだが、 それにしても変わらないものだなと凜は思うのであった。 昼の内から閉じているのが散見できた商店街のシャッターは全て閉じられており、所々に立つ自販機だけが光を発し自己主張している。 途中、細い路地に入れば途端に明かりは少なくなり恐怖という名の闇色が足元に忍び寄る。ゴミ捨て場のすえた匂いもそれに一助していた。 しかし少女はひるまない。彼女――遠坂家の魔術師である遠坂凜は闇夜の中こそが自分の舞台だと知っているのだから。 “聖杯戦争”は開始された。 ただの一度で何もかもが失われ、栄光と誉れを頂くのはただの一組。いや、聞いた話の上では成功した例などないという無謀無茶な魔術儀式。 分の悪い賭けだと言う者もいるだろう。しかし魔術師らはそうは思わない。科学とて同じだろうと言う。 大いなる成功には夥しい数の挑戦と犠牲という試行の結果が必要なのだ。 四度目の聖杯戦争も誰の目論見も達することなく、更には悲惨な結果となって終結した。しかしそれを嘆くものはいない。少なくとも魔術師としては。 遠坂凜は一介の魔術師として当然の如く、この箱舟の聖杯戦争にも挑む。 その一手目がこの深夜の哨戒だ。此度の聖杯戦争は事前の通告はなく、なんら戦略的な用意をせずに始められてしまった。 故に、他のマスターらよりも抜きん出る為、最後には出しぬく為に凜は幼い身には似つかわしくない夜へと身を躍らせた。 開始の状況が曖昧だっただけに、すでに動き出しているマスターがいるかもと考えればそれは当然の判断だろう。 しかし、もしここに更に遠き日の遠坂凜がいればこのかつての自分を叱責したことだろう。 なにも用意がないのに迂闊が過ぎる。自陣以外が全くの不明のこの仮想の戦場(フィールド)。 ましてやルールすらも自分の知る冬木の聖杯戦闘とは違うのに、どうして自らが先手を打とうと考えるのか。初手は見とするのが定石ではないかと。 実は幼い凜はこれと同じことをすでに己のサーヴァントに忠告されている。 クー・フーリン――今の凜には知る由もないことだが、縁浅からぬ間柄である。遠き日の凜とは対決する立場にあり、刃を交わしたこともある。 彼は本来、好戦的で獰猛な戦士である。好敵手と戦うことが望みであり、サーヴァントとして召喚された時点で願いが叶うような稀有な存在である。 それでも彼は凜に忠告した。 ひとつは彼女が弱いということ。遠坂の血筋であり、すでに才能の片鱗を見せているとはいえまだまだ幼い。能力も技術も経験も足りない。 ひとつに彼女が想いに囚われているということ。今、彼女は父母を奪った聖杯戦争への敵愾心と遠坂家の魔術師であるプライドとがない交ぜになっている。 仮に首尾よく敵へ先制できたとしても、とても勝ちを得られる状態ではないのだ。 それでも、凜は夜の世界へと出た。そこになにか別の勝算があった――わけではない。やはり彼女はただ幼かったのだ。   Ж Ж Ж 遠坂凜は繁華街を避け深く寝静まった住宅街の中を歩く。繁華街を避けたのはある失敗に起因する無意識的なものか、それは不明だ。 ともかくとして、しばらく夜道を往くと大きな森林公園の入り口が見えてきた。 風に揺られざわざわと笑う木々に凜は息を飲む。 この公園は凜も仮の生活の中で歩いたことがあった。昼間はとても緑が美しくて、休みの日には芝生の上でピクニックする家族連れなんかも見られる。 それが深夜となると全く様相を変えていた。 立ち並んだ木々は鬱蒼として見通しが悪くその懐に深い闇を湛え、足元では生い茂った草が凜をあざけ笑うようにサラサラと音を鳴らしている。 景観の為か街灯は少ない。点々とした乏しい明かりの中、この公園の中はまるで海の底の様に蒼く染まっている。 凜は緑の草木を避け、赤い煉瓦が敷かれた道の上をコツコツと小さな音を鳴らして歩く。 そして、魔術師としての矜持と子供としての素直な気持ちがせめぎあいを始めた頃になって、その二人を発見した。 道の先、街灯の作り出すスポットライトの下に学生服の男女の姿がある。 どちらも高校生だろうか。男の方は白い学ランを、女の方はブラウスにスカートという姿だった。 更に述べれば、白ランの青年は肌も白く細い身体をして顔は神経質そうで、女の方はというと髪型はふたつのおさげ、顔には眼鏡とかなり地味だ。 所謂、深夜のデート。人目を憚りこんな時間にこんな場所で逢引をする生真面目な学生カップル――というのが第一の印象。 こちらは子供なので万が一にでも警察等に通報されてはまずい。 凜は元の道を引き返そうと踵を返し――しかし踏みとどまる。次の瞬間、凜の目の前には彼女の、ランサーのサーヴァントが顕現していた。 「………………」 無言。しかし確かな気迫と共に青い装束を纏ったランサーは真紅の直槍を白ランの青年へと突きつける。 彼我の距離は大よそ20メートル。しかし彼からすればたった一足の距離でしかない。一度マスターが命じれば、次の瞬間には相手は串刺しになる。 「“そっち”じゃないわランサー!」 まず真っ先に凜の高い声が静寂を破った。その言葉の意味、そっちじゃないとは? ランサーの頭の上に疑問符が浮かぶ。 「女のほうが“サーヴァント”よ。……ライダーのサーヴァント」 続く言葉を聞いてランサーの口から「む……」と声が漏れる。そして改めて相手側の気配を探れば確かにマスターの言っている通りだった。 だがしかし、このランサーの勘違いは致し方ない。 それほどまでに目の前の白ランの青年――『狭間偉出夫』は逸脱した存在なのだ。 正真正銘、生身の高校生でありながら単身魔界へと乗り込み、悪魔を手懐けて創造神の一柱であるズルワーンを下したほどの実力者であり、 神に成り代わることこそは人の身の若さ故に叶ってはいないが、魔神皇として魔界の支配者として君臨するほどの大魔導なのである。 仮に、(彼の性格上、そういう仕組みだとはいえ誰かの下につくなど想像もできないが)キャスターとして召喚されることがあれば英霊の中でも随一だろう。 そして、そうでなくとも彼は英霊すらも下に置くほどの実力の持ち主である。 いざ相対してみればその眼光は禍々しく、ランサーが咄嗟にこちらがサーヴァントだと判断したのは無理もない。 翻って、彼のサーヴァントである女子高生――希望崎学園の鏡子は“弱い”。 恐らく今回呼び出されたサーヴァントの中でも断トツに弱い。今対峙しているランサー相手は勿論、“ただの戦闘”となれば幼い凜にすら負けてしまうだろう。 彼女の身体能力はサーヴァントとして召喚されてなお人間の範疇を超えない程度しかないのだ。故にこちらもランサーが見誤るのも無理はない。 そして、これらを指摘した凜にしても、どうしても狭間の方へと意識を取られてしまう。それほどまでに彼の魔神皇としての存在感は圧倒的だった。 「(ライダーだと……)」 どちらにも対応できるよう赤い穂先を揺らしながらランサーは内心「これはよくないな」と思った。 彼自身は如何なるサーヴァントが相手であろうと互角以上の健闘ができる実力と、それを保証するスキルを持っている。 ではそんな彼の弱点はなにか? それは脆弱なマスターの存在だ。幼いながらもさすがは遠坂の血。魔力の供給は問題ないが、今現在の凜に戦闘中に己を守る実力はない。 故に、同じ聖杯戦争の参加者を発見すればいくらかはマスターより離れて行動できるランサーのみが敵に当たる――というのが当初の予定であった。 あわよくば密かに相手を尾行し根城を確定できれば上々。 その後はゆっくりと観察した上で万全を期してから殲滅に当たる。これこそが魔術師の戦争の理想である。 もし戦闘になることがあっても、適当なところで逃げ出せばよいし、万が一マスター諸共に接敵することとなればマスターを抱いて逃げればよい。 そう段取りは打ち合わせていたのだが……、 「(見た目はこの時代の女となんら変わりがねぇ。なら正体を隠すスキルを持っているのか……いや、その気配すらない。ということは――)」 『ライダー』とはつまり、文字通り何かに乗る者だ。そして目の前の害のなさそうな女学生のサーヴァントは一見戦闘ができるようには見えない。 それはつまり、このサーヴァントの真価は『騎乗』のスキルの中にあると見るべきだという話。必ずなんらかの英霊となり得る宝具を備えているはずなのだ。 これこそがランサーの懸念だ。 この場合、『凜を抱いて逃げれば何か乗った二人に追われる可能性がある』。そして、そんな状態での戦闘は不利になるに違いない。 ならば、事前の打ち合わせにはないがここでマスターの姿を曝したままで勝負をするという選択肢も浮かび上がってくる。 「おい、マスター。どうする?」 言外にやれと命じられればやるぞと含みを持たせてランサーは凜に問う。だが返ってきたのは、 「ぁ……、あ…………」 ただの子供が戦慄く吐息、それだけであった。   Ж Ж Ж 僅かに風が吹き木々がざわめく。風が止めばまたぴたりとした静寂が戻ってくる。 相対した4人に動きはない。白ランの男も女学生も仕掛けてくる様子はない。では会話できるかというとそれは剣呑な雰囲気が拒否していた。 そして凜はというと、明らかに格上の魔術師に相対したからか完全に“呑まれて”いる。もうこの場面では役に立たないだろう。 全ては自らの一手か。覚悟を決めるとランサーは僅かに腰を落とした。 油断なき構え。こうなればこの男に隙は存在しない。 飛び道具であればいかなるものであろうと避けてみせるし、接近し一撃を喰らわせようとしても彼の槍捌きを縫って肉薄することは至極至難。 なにやら魔術を使おうとも、一瞬でも抵抗できれば次の瞬間にはその魔術の圏内から逃げおおせてみせる。 ランサーは強いのだ。遠坂凜の呼び出したクー・フーリンは最強の内の一人と数えていいほどの実力を持ったサーヴァントなのだ。 それから数瞬。先に動きを見せたのは相手側の方だった。 ランサーの覚悟を察した故か、マスターをその場に留めてライダーが、ただの制服の女学生にしか見えない女がゆっくりと歩いてくる。 そして彼我の中心。ランサーからして10メートルほどのところで止まると、片手を上げて―― 「こんばんは」 と微笑んだ。にっこりと、朗らかに、なんら害がないのだと示すように。 この態度にランサーの理性はこの相手とは話し合えるかもしれないと判断する。 なにも他の聖杯戦争参加者と遭遇したからといって、必ずそこで決着をつけなくてはならないというルールはないのだ。 聖杯戦争の決着までに無数の戦闘を超えなければならないのが想定されているなら、まずは手ごろな相手と同盟を組み共闘関係を得るのが定石。 初っ端より戦闘に明け暮れただいたずらに損害を積み上げていくことは愚の骨頂とも言える。それはどのマスターとサーヴァントでも同じはずだ。 だが、ランサーの本能は違う判断をした。 ランサーの本能はライダーの害のない笑みに得体の知れないなにかを感じ取っていた。 いや、感じ取るなどというものではない。 その笑みを見た途端、つま先から頭の頂点までにおぞましいものが走り、闘いに浸りきった後のような熱が頭の中に沸き上がっていたのだ。 その正体を思考が判ずるよりも前にランサーはそれを危険だと感じた。それは間違ってなかった。だが、完全に正解でもなかった。故に次の判断を誤った。 「しぃ…………ッ!?」 ランサーは逃げるべきだと、なにはともあれ距離を取るべきだと反射的に飛び退った。これが間違いだった。 仮に、最早ランサーが飛び退っている以上言っても詮無きことだが、 ランサーが別の判断をし破れかぶれで女に一突きを食らわせていれば、女はその一撃で絶命し彼は初戦による勝利を得ていただろう。 だが、現実には彼は10メートルほど飛び退り、女から離れてしまったが故に――。 「んふっぐおぅわあああぁぁぁぁぁああんんんんんん!?!?」 絶叫。悲鳴とも雄たけびとも判別できない声を静寂な森林公園に響き渡らせる。 その手から槍を零し、両膝を折って地面に突っ伏すと叫びながらになにかを地面に撒き散らした。溶けた泥の塊が落ちるような音が続けて鳴り響く。 次の瞬間、ランサーは「何が?」と思考する。しかし思考が続いたのはそこまでで、次の瞬間にはまた 「ぅんぐぅおぉおおおおおぉぉおおおおんんんんんふううううううううぅぅぅ!?!?!?」 犬の様に四つん這いになり、足を突っ張って尻を突き上げビクビクと痙攣しながらランサーは腹の下から、よく観察すれば股間から液体を撒き散らす。 彼のマスターである凜はこの突然の状況に唖然としていた。まさに理解が及ばない場面だ。急にランサーがおかしくなった様にしか見えない。 もし僅かでも冷静に思考できていればこれは魔術による呪いの一種ではないか、であれば自分がディスペルしなくては等と考えもできただろうが、 しかし目の前の異常な光景――自らのサーヴァント、彼の股間の“逸物”、その逸物から液体が吐き出されるとなれば冷静な思考は一切に不可能でしかなく、 ただただそれを見れば見るほど、彼の嬌声を聞けば聞くほど、凜の頭の中は彼と同じく茹で上がりまだ小さく未発達な身体は奇妙な熱を帯びるだけなのだ。 そしてそこから目を離せない凜は、ランサーの股間から垂れ下がる逸物にそれを握る『手』がついていることに気づく。 乳液に浸したようにぬらぬらと照るその手がまるで牛の乳を搾るように動けば、同様に先端から白い液体が噴き出し、地面に大きな白濁の水溜りを作るのだ。 この行為の意味を幼い凜はよく理解していない。ただ、ただただ理解はなくともその光景は凜の中に眠る本能を激しく徒に打ち鳴らしていた。   Ж Ж Ж 「……立派な“槍”ね♪」 手鏡の中に潜らせた右手が得る剛直の感触に鏡子はうっとりとそう漏らした。 この手鏡こそが彼女の宝具。ランサーが懸念し、実際その通りであった彼女にとって唯一の手段であり切り札でもある『ぴちぴちビッチ』である。 手鏡の中に半径2キロメートル以内の光景を自由に写し、“猥褻な目的に限ってのみ”その鏡面を通して干渉できるという能力。 そう、至極簡単に言ってしまえば、鏡子は鏡越しにランサーの陰茎を握り、扱くことで射精させているのである。 しかもただの射精ではない。幾多の並行世界、あらゆる時間軸において並ぶものなしとされる鏡子の手技をもって“擦れば”、 通常の生理ではありえない連続した、しかも大量の射精をそれに見合った快感と共にさせることが可能であるし、 その悦楽によって相手の思考や動作を奪うことなど、例え相手が英霊であろうが、神であろうが“造作もない”ことなのである。 「んふぅおおぉんんんんんはぁあああぁぁぁぁんんんんん!!!!」 未だ悦叫を上げ続けるランサーにくすりと笑みを浮かべると鏡子は悠々と彼へと歩み寄る。 ちらりとその傍にいる彼の幼いマスターを見るが、彼女はこの光景に気圧され真っ赤に顔を染めて震えているだけだ。 仮に彼女がなにかをしようとすれば後ろに控えている狭間が瞬時に彼女を射抜いてしまうだろうが――そうなる前にと、鏡子は行動を開始することにした。 「はい、おちんちん♪」 鏡子が鏡の中でそれをシフトレバーの様にくくっと動かすと、途端、ランサーの身体が跳ねたかの様に裏返る。 この様に、鏡子ほどの性技の持ち主となれば愛撫による反射動作でもって相手を操ることすら容易い。その気になればフラメンコを踊らせることも可能だろう。 「あ、あぉが……テ、メェ……んんんっぐぅ……ッ!!」 “敵”を視界に捉えたことで僅かに理性が戻ったのだろう。快楽に蕩けていたランサーの顔が険しいものに変化する。 脳内のシナプスが全てセックスで上書きされかねないこの快感の中でそれだけでも抵抗できたというのはさすが英霊だと賞賛すべきだ。 だが、彼の抵抗もそこまでである。そして、彼は鏡子の次の行動を見て“ゾッとしながら身体を喜びの期待に震わせた”。 鏡子が“パンツを脱ぎ捨てた”のである。 校則通りの膝丈のスカートの中に手を入れてそこから出てきたのは、彼女の地味な外見からは想像もできないほど扇情的な下着であった。 なんでもないことのように普通に脱いでみせると彼女はそれを地面に落とす。びちゃと、まるでよく水を吸った雑巾が落ちたような音がランサーの耳に届いた。 これが何を意味するのか、例えればそれは『武士が鞘から刀を抜く』、あるいは『ボクサーがグローブ』を外す等ということに相当する。 「ンヒィ……や、…………やめ、は……ひゃあぁぁあああああ!!!」 圧倒的性的暴力の予感に険しさを見せたランサーの顔は、気づけば泣き笑いのようなものへと変じていた。   Ж Ж Ж 「おぎょおおおおんほおおおんおんおんんんんんんんうぅんひぃいいいいいぃぃぃっっ!!!!」 最早この世のどんな生き物の鳴き声にも聞こえない悦叫が夜の中に木霊する。 自らが吐き出した精液の水溜りの中で仰向けにチンチンのポーズを取らされていたランサーは只今絶賛逆レイプの真っ最中。 パンツを脱ぎ捨てた鏡子に『騎乗』され、ただただ彼の存在そのものを溶かして精液を吐き出し続けていた。 彼の『槍』が“それ”に飲み込まれた時、その瞬間、彼は自らの心象風景の中に“涅槃”を見た。どこまでも透き通った世界。真の常楽我浄。 だが、次の瞬間快楽地獄に落とされる。正常な意識を保てたのは1秒を半分に割ること数十回分ほどで、刹那の間に彼の思考は快楽に溶けた。 「私はね……君にいっぱい気持ちよくなってもらいたいだけなんだよ♪」 ひたすらに精を吐き出す彼の上で鏡子は自らも快感を得ながら『バラタナティヤム(インド舞踊)』の様に彼の上で踊る。 人が快感を得るのは性器からだけだろうか? いやそうではない。それ以外の場所でも性技が達者なら快感は生まれる。まして、鏡子がとなれば全身に性感を覚えない場所はない。 鏡子の指先が様々に形を変え、擦り、摩って、摘まみ、なぞり、擽り、押して、掻いて、扱けばランサーは応じて精を吐く。 鏡子が舌先に唾液を湛え、舐めて、吸って、噛んで、挟んで、浸して、吹きかければランサーは益々もって精を吐く。 「うぉるげやらはらうわぉおおわらわあぁぁあああががぁぁぁああああああっ!!!」 ランサーの吐き出した精液は鏡子の胎を満たし、溢れかえると彼女の愛液と混じって周囲に撒き散らかされる。 『騎乗』と『槍』の“直接対決”が始まって十数分。すでに周囲は咽返るほどの精の匂いで満たされ、吐き出された精液は数万リットルに達していた。 常人であればとっくの昔に枯れ果てている量だ。その快感だけにしても常人なら百回廃人にしても足りないほどのものが彼には与えられている。 それでも未だ顕現していられるのは英霊という存在の器の大きさか。 翻って、鏡子はというとすればするほどにつやつやと存在に輝きを増してゆく。 サーヴァントとマスターが魔力のパスをつなぎ魔力のやりとりをしているのは、この聖杯戦争に参加している者であれば誰でも知るところだが、 実はこれを性行為をもって行えばより効率よく行えるという事実も一部ながら知られていることである。 そして、鏡子とランサーは互いにサーヴァント同士であるがそれと同じことが今起きているのだ。 ランサーが精を吐き出せば吐き出すほど、鏡子が精を胎に受け止めれば受け止めるほど、彼の魔力が彼女へと移されていくのである。 「もう……かな。私の“セックス”にここまで耐えた人なんて、初めてかも……」 腰を振る鏡子の下で、遂にはランサーという存在の希薄化が始まる。彼の中にある顕現に必要な魔力が尽きようとしているのだ。 このままでは後間もなく、1分もしない内にランサーは魔力を絞り取り尽くされこの場から消え去るだろう。 しかしそれでも鏡子は腰を振る手を弱めることはしない。このまま彼を枯死させるつもりであった。  ここで、諸兄諸姉の中には疑問を持った方がおられるだろう。“鏡子はセックスでは相手を殺さないはず”だと。  その言葉は正しい。“ある場合”において彼女はセックスで相手を死に至らしめることを忌諱している。  その“ある場合”が重要だ。逆にそうでなければ彼女はセックスで相手を殺しうるのだ。  彼女がセックスにより相手を殺すことを忌諱する様になったのはある『転校生』との性的な決闘が原因だ。  そこで彼女と彼は互いにイかせあい、最終的に『転校生』は死亡した。  この時、鏡子は死んでしまっては彼はもうこの快感の記憶を反芻することができないと、そんな当たり前のことに気づいたのだ。  下品に言えば、『彼はもう思い出しオナニーしてくれないのね。すごく悲しい』となる。  鏡子のアイデンティティは相手が快感を得る姿にある。つまり相手を死に至らしめることは自分を殺すのと同義なのだ。  故に当然の帰結として鏡子はセックスによる殺害を封印することとなる。  だが、例外的事態がここで生まれる。この聖杯戦争に限って言えば、鏡子はサーヴァント相手なら絞り殺すことができるのだ。  端的に述べるとサーヴァントはここで死んでも死なないからである。ここで消滅しても記憶を持って『座』に戻るだけである。  その証左は今鏡子に搾り取られ存在の危機にあるランサー自身である。  彼は“前回”参加した聖杯戦争の記憶を保持したまま今回の聖杯戦争に召喚されている。これは英霊が記憶を失わない紛れもない証拠である。  つまり、ここで鏡子にセックスで殺されても英霊の『座』に戻ればそこで思い出しながらシコり放題だぜ(やったね☆)という話なのだ。  だから、鏡子はこの聖杯戦争においてはサーヴァント相手に限り、セックスで相手を殺すことができる!  ……この場合、サーヴァントと一蓮托生なマスターも死んでしまうことに疑問を抱く方もいるかもしれない。  だが、それに関してはより安心してほしい。彼女は自分が相手を枯死させること以外の死については(自身の命を含め)非常に淡白である。 そして、遂にその時が訪れる。   Ж Ж Ж 「ぅぇろ……が、は……………………ぁ…………」 遂にその射精を最後にランサーの身体が一切の力を失った。顔は恐怖に強張った様な形相で白目を剥き、鼻水と涎を垂れ流している。 そんな姿を見て鏡子は少し残念だなと思った。 これは聖杯戦争であり、戦争の中では敵同士は殺し合うのが慣わしなのだから相手を死に至らしめるのは当然の行動だ。 だが、出来うるならこの“性”をもっと楽しみたかった。闘いを忘れて、“犬”同士の様に……。 鏡子が精液塗れの姿でそんな感傷に浸っていると、不意にランサーのマスターである少女がかくっと力を失い地面へと倒れた。 おそらくはサーヴァントを失った結果としてマスターの権利をも失い死に至ったのだろう。 彼女に対しては恨みつらみも思い入れもないが、セックスを経験せずに死んでしまうのだけは可哀相だなと鏡子は思う。 「……あれ?」 何かがおかしい。鏡子がそう思った瞬間、彼女の姿は宙にあった。 「な…………は、……っ!?」 最初に感じたのはドンッという下から突き上げる衝撃だった。 あまりに不意だったので鏡子には一瞬理解できなかったが、同時に身体が絶頂していることでそれが彼の『槍』によるものだと数瞬後に気づけた。 だが、気づけたとして鏡子には為す術ががない。ただ胎に溜め込んでいた精を零しながら宙に放物線を描き、落下するのみである。 「……ぐっ! ……イ、ったぁ…………!」 赤煉瓦の舗装路にしたたかに腰を打ちつけた鏡子が顔を上げた時、もうそこにはランサーも彼のマスターの姿もなかった。(ついでに彼が落としたはずの槍も) 後に残されたのは新しく池を作ったような大量の精液のみである。 つまり、殺しきれてなかったのだ。 ランサーはぎりぎりまで絞られることに耐え、そこで力尽きたと見せ、鏡子が動きを止めたところを見計らい残していた一撃で持って跳ね飛ばしたのだろう。 マスターが倒れたのも、あれは死んだのではなく最後の一撃を振り絞ったサーヴァントに急に魔力を吸われた結果だと推測できる。 「ふふ……ふふふ……ふふふふふふ…………」 精液と愛液とが交じり合った小さな池の中で頭からずぶ濡れの鏡子は心底おかしそうに身体を震わせる。 ランサーは死ななかったのだ。そう、だから―― ――またセックスができる。 そんなすごく楽しそうな鏡子の後方、 街灯にもたれかかりながら虚ろな目で彼女を見る狭間偉出夫は、この聖杯戦争における戦略をこれからどう修正しようかそればかりを考えていた。 彼女の能力は実に有用だ。それは今証明された。そして彼女にはこのような実戦に慣れた感もある。ただの女でないというのは悪くはない。 だが、あまりにもその戦い方が卑猥すぎる。精神衛生に悪い。 魔神皇としての威厳や、健全な男子高生としての尊厳。色いろと踏みにじられている感が、彼の小さな心を苛むのだった。 余談。 この後、各サーヴァントがこの公園に撒き散らかした精液と愛液は普通の人間には見えないまま地面へと吸収されていったのだが、 それに当てられたのか、これよりしばらくこの周囲の犬猫が一斉に発情期を迎えたり、この公園で普段より過剰にいちゃつくカップルが頻繁に見られたり、 レス気味だった夫婦がここに家族でピクニックに来た後、急に盛んになって新しい家族が増えたなどということがあったらしい。 【C-5/森林公園/1日目 早朝】 【狭間偉出夫@真・女神転生if...】 [状態] げんなり [令呪] 残り二画 [装備] [道具] [所持金] 不明 [思考・状況]  基本行動方針:聖杯戦争に勝つ。  1.聖杯戦争に挑むにあたっての戦略をもう一度検討しなおそう。 [備考]  まだ童貞。 【鏡子@戦闘破壊学園ダンゲロス】 [状態] つやつや [装備] [道具] 手鏡 [所持金] 不明 [思考・状況]  基本行動方針:いっぱいセックスする。  1.一度お風呂に入らないといけないかな? [備考]  クー・フーリンと性交しました。   Ж Ж Ж 「…………ゼェ、ハァ」 屋敷に戻ってきたランサーは凜をソファに横たえると、もう力尽きたとばかりに床へと膝をついた。そして実際に彼は精根尽き果てていた。 「くっそ……なんだあのサーヴァント。どこが、『ライダー』なんだよ……」 魔術と性は近いところにある。英雄色を好むなどという言葉もある。なので“性豪”の英霊がいるというのも考えられなくはない。 時のポルノスター。君主に摂りつき国を傾けさせた美女。そういう者が英霊となれば、『性技』というスキルを持つことがあってもおかしくないだろう。 だが、ランサーの体験したあれは常軌を逸していた。 「あいつ……」 ランサーは実際に体験したからこそ、それを理解していた。あのサーヴァントは――それだけだ。 隠し能力も正体もないもない。ただ、“セックスが上手い”というだけで英霊になってしまった人間(女)だ。 今はもう土気色のランサーの肌色がその事実になお悪くなる。吐いてしまいそうだった。鏡子という存在そのもののおかしさに。 「…………ランサー?」 「気づいたか」 いつの間にか意識を取り戻していた凜がソファからランサーを見上げていた。 その表情は弱々しく感じるが、肌色を見れば命に別状はないことがわかる。おそらく急激に魔力が減少したことで貧血に似た症状を起こしたのだろう。 「悪い。今回は完全に俺の不覚だ。……まさかあんなサーヴァントがいるだなんて想像もしてなかった」 ランサーはそのまま頭を下げる。言葉も一切の偽りなく本心だった。 そして、凜の方も身体を起こすと自分の不明を恥じると頭を下げ、目じりに涙の粒を浮かべた。 やはりまだ幼いのだなと彼女の行く末を知るランサーは感傷を覚え、殊更に明るい表情を浮かべるとすくっと立ち上がって見せる。 「なに、同じ相手に不覚を取る俺じゃねぇ。次はあんなことはないさ」 この言葉も全く嘘というわけでもない。相見えた感触としてあのライダーはセックス以外の武器を持たず、本体の能力は極貧弱だ。 ならば槍の一撃さえ届けばたったそれだけで勝つことが出来る。これを知っていれば、少なくとも同じ状況でならもう不覚を取ることはありえない。 懸念されるのはあの鏡による遠隔攻撃。あれがどの程度の距離まで届くのか、視覚の中でないと発動しないのか等々、ランサーはまだなにも知らない。 一度でも触れられたら終わりなだけに、その点については慎重に探っていくことが求められるだろう。尤も、もう二度と会いたくないというのが本心だが。 「じゃあ、俺はちょっと周りを見てくる。お前はよく休んでおきな。マスターであるお前が回復しないと俺の方も全力を出せないんでな」 くるりと手先で槍を回してランサーは凜に背を向ける。 本当なら彼も休息をとりたい所だったが、あの公園から逃げ出してここまで、尾行や他の参加者らの目を気にする余裕はなかった。 最悪、すでにここに監視がつけられている可能性もある。だとすれば命を賭しマスターの盾となるのがサーヴァントの役割だろう。 「ごめんさい。……それと、気をつけてね。あんたがやられたら私も終わりなんだからさ」 応と背中で返したランサーの姿は次の瞬間には凜の前から消え去っていた。 「……………………」 ランサーの気配が遠ざかったの確認すると凜はのろのろとソファから立ち上がる。向かう先は寝室――ではなく、風呂場だ。 未だ眩暈を覚えながら脱衣場まで行くと、これものろのろともどかしげにゆっくりと服を脱ぎ捨てていく。 「う、うぅ…………」 鏡の中に映る彼女の顔が紅潮し、またしても涙の粒が浮かぶ。 マスターとして参加した聖杯戦争に圧倒されたのだろうか、それとも間近に感じた死に恐怖を抱いたのか、あるいは英霊という存在に畏怖を覚えたのか。 はたまた、濡れた下着を見てもうおもらしなんかする年ではないと恥を感じたのか。 あるいは、それは――しかし、彼女の名誉の為に真相を突き止めることはせず、この話はここで終了する。 窓の外では夜が白み始めていた。そう、聖杯戦争は始まったばかりなのだ。まだ、これはたった一晩にも満たない話でしかない。 【B-4/遠坂邸/1日目 早朝】 【遠坂凛@Fate/Zero 】 [状態] 魔力ほぼ枯渇、憔悴 [令呪] 残り三画 [装備] アゾット剣 [道具] [所持金] 不明 [思考・状況]  基本行動方針:遠坂家の魔術師として聖杯を得る。  1.今は休息。  2.学校はどうしようか……? [備考]  特になし。 【クー・フーリン@Fate/stay night 】 [状態] 魔力ほぼ枯渇、憔悴 [装備] 槍 [道具] [所持金] 不明 [思考・状況]  基本行動方針:遠坂凜のサーヴァントとして聖杯戦争と全うする。  1.屋敷に近づく者、監視する者がいないか見張る。  2.出来る限り回復に努めたい。  3.あのライダー(鏡子)にはもう会いたくない。最大限警戒する。 [備考]  鏡子とのセックスの記憶が強く刻み込まれました。 ---- |BACK||NEXT| |043:[[アンダーナイトインヴァース]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|045:[[戦中の登校者]]| |041:[[破戒すべき全ての電人(ルールブレイカー)]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|045:[[戦中の登校者]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |016:[[狭間偉出夫@真・女神転生if...、ライダー]]|[[狭間偉出夫]]&ライダー[[鏡子]]|056:[[電脳淫法帖]]| |011:[[遠坂凛&ランサー]]|[[遠坂凛]]&ランサー[[クー・フーリン]]|049:[[シンデレランサー]]| ----

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