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*既視の剣 ◆DpgFZhamPE ───海浜公園。 ここが、この広場の名前。 海を望む冬木市最大の公園。 水族館にバッティングセンターにと色々な施設が集まった人気のデートスポット・・・らしい。 全て通行人のNPCに聞いた情報なので、色々と不確かだが、周りの景色を見る限り間違ってはいないだろう。 「お待たせしましたー、こちら珈琲とサンドイッチになります」 こと、と音を立てて品が目の前に置かれていく。 丁寧に店員の手から置かれたのは珈琲二つに、サンドイッチ二つ。 そう、現在はカフェテラスにて朝飯の調達中なのだ。 昔は売店で簡単に麻婆豆腐を調達できたのだけど、ここではそうもいかないらしい。 「・・・なんかこれ、赤が足りないわね」 ツンツン、とサンドイッチを指先で突つくエリザベート。 本来サーヴァントは食事を必要としない筈なのだが───カフェテラスを物珍しそうに見つめる彼女を見ると、サーヴァントと食べる食事も悪くないのではないかと思えた。 何処か拠点を探し、そこで何か作って食べるという選択肢も無かった訳ではない。 凛やラニがいたのならそれも可能であっただろうが───今隣にいるのはランサー。 不用意に自炊でもしようものなら、此方が死にかけない。 誰とも会うことなくテロい飯を最期の晩餐に消えるなんて、さすがに御免だった。 「子ブタ、これからどうするの? 私の歌に聴き惚れておびき寄せたブタを叩くもよし、私の美声でリスを誘い出して叩くもよしよ!」 結果的にどちらも同じような気もするが、ランサーに急かされてとりあえず次の方針を考える。 既に一回の聖杯戦争───そしてその『裏側』の騒動───に巻き込まれたことはある。 しかし、このような形式の聖杯戦争は初めてだった。 一番最初にするべきなのは、相手・敵の情報から集めることなのかもしれない。 これは、月の聖杯戦争においても『月の裏側』においても、そしてこの場でも変わらないことだった。 ならば─── >学校に行こう うん、サボろう 学生ならば、学校に行くべきだ。 NPCも多い学校なら襲われる可能性もグッと減るだろう。 尚且つ学校にマスターがいた場合、同盟を組めるようなマスターもいるかもしれない。 凛かラニのような人物がいれば、だが。 そこで聞いた本人のランサーは─── 「え・・・ということはこれが私の記念すべき子ブタとの復活初ライブ・・・? 観客は盛大に集めないといけないわ・・・! あ、でもスカウトされたらどうしよう、ダメよ、私には子ブタというプロデューサーが! 夢と子ブタの間で戸惑う私・・・これが、ロマンス・・・?」 ───さっそく自分の世界にダイブしていたらしく、既にこちらの話など聞いてはいなかった。 ・・・こんな感じで、これから大丈夫なのだろうか。 ◆ ◆ ◆ 『───マスター。 マスターとサーヴァントを発見した』 切嗣が身を隠している屋上にて辺りを見張っている弓兵からの念話。 はっきり言って、その報告は衛宮切嗣にとって意外と言う他なかった。 聖杯戦争においては情報も大切な戦力の一つになる。 真っ当な魔術師ならばまずは拠点を構え工房を作り、連日起こるであろう戦闘と攻め入られることを予想しての対処を行うはずなのだ。 それも行わずにこんな早く敵マスターを発見できるとは、思っても見なかった。 ただの間抜けか。それとも罠か。 「アーチャー。敵マスターとサーヴァントの様子、場所は」 『海浜公園のカフェテラス、どうやら朝食を摂っているようだ』 「・・・何?」 『サーヴァントも一緒に摂っているらしい。食事から魔力を得ている可能性がある。 警戒心など欠片もないようだがな』 切嗣は部屋の窓から海浜公園を覗くが、如何せん遠すぎる。 人間の視力ではとてもではないが、多くの人間の中からマスターかNPCかなどの区別はつかない。 「狙撃できそうか」 『この身は弓兵のクラス、アーチャーのサーヴァントだ。 この程度の距離は造作も無いが・・・日中堂々と戦闘を始めるのは如何なものか、マスター。 NPCや建物に多く被害を与えるとルーラーから制裁が与えられる、という話だが』 切嗣は思案する。 普段なら己の腕で狙撃も考えるのだが───突然ここに呼ばれたための、準備不足が災いする。 手元にあるのはキャリコとコンテンダー。 普段狙撃に使用しているワルサーWA2000が無い今、遠距離において切嗣ができることは何もない。 ならば。 「・・・最小の威力でマスターだけを撃ち抜け。 周りのNPCを巻き込まない様にだ、ルーラーに目をつけられても困る」 『了解した』 「・・・いや、これだけの距離と地の利があるなら、サーヴァントの出方を見るのもいいかもしれないな。 サーヴァントには牽制程度でやってくれ」 情報が少ない今───此方から動くしかない。 舞弥によるサポートもなく、用意した情報が全て無駄になった。 幸運なことにアーチャーと敵マスターの距離は随分と開いている。 成功したら成功したで、マスターを一人減らすことができる。 失敗したなら失敗したで、サーヴァントが何か動きを見せるだろう。 その動きだけでも、此方としては得るものが沢山あるのだ。 そして。 カフェテラスのような開けた場所で寛いでいるようなヤツだ、アサシンとキャスターのクラスはあり得ない。 寛いでいるところを見ると、実体化しているだけで多くの魔力を喰うバーサーカーでもないだろう。 ならばセイバー、ランサー、アーチャー、ライダーのどれか。 マスターの狙撃を防がれた場合、この4クラスのどれかだとしたら自分の得物で狙撃を防ぐ可能性が高い。 セイバーなら剣、ランサーなら槍と言った具合に。 ライダーなら逃走に自身の宝具、または調達した移動手段を使うだろう。 アーチャーなら狙撃で反撃を行う可能性もあるが───狙撃に集中した場合、マスターの安全が疎かになる。 その瞬間を狙うのみ。 成功したとしても、失敗したとしても───こちらに損害はない。 利害を見定め、有利な時のみ仕掛ける。 これが、魔術師殺し。 これが、衛宮切嗣。 長年培った判断能力は、この戦場でも大いに役に立っていた。 ◆ ◆ ◆ ───ギリギリ、と弦を引き絞る。 弓に番えたそれは、矢ではない。 無銘の剣。本来、飛ばすものですらない。 取るに足らない無銘の剣。 しかし。 錬鉄の英雄にかかれば、それは百中百発、あらゆるものにその刀身を直撃させる鏃となる。 (───さて) 衛宮切嗣が下した命令は、とても合理的なものだった。 だからこそアーチャーも余計な口は挟まない。 その判断に不備がないのなら、アーチャーもそれに従うまで。 直前まで抱えていた思考を放棄する。 聖杯のことも、切嗣のことも───今は全て後回し。 弓と剣と、そして標的だけを意識する。 イメージするのは、標的の頭蓋を寸分違わず貫く矢の軌道。 「行け───!」 ザンッ!と音を経て、明るみを増してきた空を剣が飛ぶ。 その速度は常人には捉えることはほぼ不可能。 風を切り裂き、閃光と化し、飛んで行ったその先は─── ◆ ◆ ◆ 「・・・」 サンドイッチを完食した後のランサーは、ずっと黙ったままだった。 顎に手を当て、何か考えるような仕草でうんうんと唸っている。 どうしたのか、と声を掛けたいが、邪魔になっては逆効果なので黙っておく。 するとハッ!と、何か思いついたような表情を浮かべるとランサーは身を乗り出すように立ち上がり、 「決めたわ」 と、真面目な顔で言い放った。 何を、と問う。 「───ええ、私に足りなかったもの・・・それは刺激よ。 他の存在の知識をあえて柔軟に取り入れることをしなかったから、ああなってしまったのよ。 そうよ、いくらブタとリスが作った低級料理とはいえ、その発想は悪くないわ。 その発想を私のアイデアに組み込めば、もっと良くなるはずなのよ」 嫌な予感がする。 脳内に赤で染まり皿に盛られた、悪魔のような物質が浮かび上がる。 「そうよ、そうと決まったら立ち止まってなんかいられないわ! 子ブタ、早速拠点探しと行くわよ! キッチン付きの!」 ああ、視界が赤く染まる。 あの味と衝撃と、体力を9割近く持っていかれた魔の料理が復活を遂げようとしている。 失意の底に沈もうとした自分にランサーは満面の笑みで振り返り─── 「今日のランチ、私が作ってあげるわ!」 ───死刑宣告を言い渡された。 ああ、ごめん、名も知らぬサーヴァントよ。 君たちと生きた記憶を取り返すのは、無理かもしれない─── 「子ブタ!? え、ナニ、口から魂抜けてる!? どどど、どうやって戻すのよこれ!? そんなに嫌がらなくてもいいじゃない、次よ、次のは自信作なのよ! き、きっと美味しいわ!」 ランサーの尻尾の一撃で魂が身体に戻ってくる。 ああ、死ぬかと思った。 思い返すだけであの料理は人を殺せる───それだけのテロさなのだ。 でも。 それでも。 まごころと思いだけは、確かに詰まっているランサーの料理。 だからこそ、無下にはできないのだ。 彼女の、美味しく料理を食べてほしい───その思いだけは、本当で素晴らしいものなのだから。 ならば、ここで自分が告げる言葉は・・・ もう勘弁してくれ、ランサー >次は美味しいのをお願いす─── 「───子ブタッ!伏せなさい!」 告げようとした言葉を断ち切ったのは、眼前に迫る剣の鋒だった。 ───ガァンッ!と。 金属と金属がぶつかるような、凄まじい音が鳴り響く。 今のは、一体───? 刹那の内に出現させた槍を振り切ったランサーの周りに、カランカランと砕けた刃の破片が舞い散る。 「遠距離射撃・・・ッ!」 悔しそうに顔を顰めたランサーが呟く。 その手に持った巨大な槍は、傷一つついていない。 その姿を見て、やっと理解する。 敵襲───!! 「子ブタ!敵サーヴァントよ、多分クラスはアーチャー! この距離じゃ、手出しが───!!」 ランサーがそう言い放った瞬間、風を切る音と共に、何かが閃光の様な曲線を描いて迫ってくる。 第、二射。 ・・・いや、それだけじゃない。 閃光は一つでは終わらない。 第三射、四射、五射。 その合計四発に及ぶ閃光は、ランサーだけを狙っているものではない まず、自分を助けるために動くランサーの足止めに三発。 そしてマスター───岸波白野を仕留めるのに一発。 完全に、こちらの動きが読まれていた。 マズい。 ランサーは己に向かってくる閃光の対処で、身動きがとれない状況だ。 人間の自分では、ランサーの守りを失った自分ではサーヴァントの射撃からは逃れられない。 ランサー、と呼びかける。 異変に気づいたランサーはなんとか戻ろうとするが───己に迫る三本の閃光に対処に精一杯だった。 一秒でも判断を誤れば、その身はあの閃光に撃ち抜かれ爆ぜるであろう、絶対絶命の危機。 一度でも判断を謝れば、ランサーと共にこの体と記憶は藻屑となり、消え去るだけ。 ああ、でも。 ───この程度のことならば、何度だって切り抜けてきたはずなのだ。 「」と一緒に。 名前も姿も思い出せないけれど、確かに存在していた相棒。 今目の前にいるのは、そんな「」の前に何度も立ちはだかった強敵なのだ。 この程度の危機───力技で切り抜ける。 「───無敵モード!オン!」 次の瞬間。 全ての閃光が、ランサーの槍に叩き落とされる。 ───これが、ランサーの能力の一つ。 恋愛夢想の現実逃避(セレレム・アルモディック)。 多量の魔力を使うことで、三手のみ、確実に相手の攻撃の軌道を読む技である。 宝具や相手の渾身の一撃などは読めないこともあるが───通常の攻撃ならば完全に読んでみせる。 四射中、三射の軌道さえ読めれば後はこちらのもの。 ランサーの怪力ならば、ある程度の攻撃なら薙ぎ払える。 ブンッ!とランサーの槍が線を描き、己に迫る閃光を全て砕き、叩き落とし、塵へと変える。 そのままの勢いで槍を思い切り振り回し、勢いをつけて─── 「邪魔ッ!」 最後に、自分の身を貫こうとした閃光を貫き、砕く。 カランカラン、と音を経てて落ちる砕かれた刃の欠片。 ───何故か。 その刃から、目が離せなかった。 「子ブタ、次の指示!」 ランサーの言葉で我に帰る。 とりあえず、次は─── >逃げよう、ランサー! このまま戦おう、ランサー! 逃走の意思をランサーに伝える。 攻撃を耐え抜き、射撃が止んだ今こそが逃走のチャンス。 これを逃せば、次はいつになるかわからない。 引くのがそこまで不愉快なのだろうか、ランサーは苦渋に顔を歪ませながら指示に従うように後を着いてくる。 とりあえず射撃が来た方向とは逆の方向へ。 できるだけ、今の内に距離を離さなければ───! 一刻も早く、この場から離れなければならない。 ───なのに、何故かこの頭は。 ───あの砕けた刀身のことで一杯だった。 ◆ ◆ ◆ 『───終わったぞ、マスター」 「ご苦労、アーチャー」 狙撃を終えたアーチャーから、念話が届く。 その声に疲労はない。 「敵の情報は」 『仕留めることはできなかったが、反撃に槍を使用したのを見ると、ランサーのクラスだろう。 ドレスを着込み、角と尻尾があったが───竜の血でも入っていたのかもしれないな。 マスターの方は、見たところ普通の学生のようだ。 だが相当に場馴れしているらしい。 急な緊急事態に襲われて尚、即座に攻撃された方向を確認、逆方向に逃走するなんてのは巻き込まれた一般人にはできない行動だ』 アーチャーから渡された情報は少ないが、有益なことばかり。 こちらの姿を視認させずに、相手の姿とサーヴァントを確認できたのは中々の得だった。 アーチャーの攻撃をいともたやすく打ち落とした辺り、パワーも中々のものらしい。 「そうか。 早々に一組の情報を手に入れられたのは大きいな。 よくやったアーチャー」 『───』 アーチャーから言葉は返ってこない。 何か思うところがあるのかは知らないが───気にしている暇はない。 「行くぞ、アーチャー。 場所を移動する」 『───あ、ああ。 しかし、何処へだね?』 「不用意に動くとアサシンの格好の的になる。 早めに新しい拠点を探そう」 高い場所に拠点を作っても下から爆破されては逃げる場所すらない。 自ら逃げ道を封じる程、愚かなつもりはない。 そして『アーチャーのクラスなら狙撃を仕掛けてくるはずだ、なら見通しのいい場所に陣取るに違いない』───誰もが考えるその単純な思考そのままに動く程、切嗣は考えなしではない。 「今の狙撃を誰かに見られていた可能性もあるし、一つの場所に長く留まっては襲撃される原因にもなる。 できれば目立たないような、一軒家を拠点にしたい。 アーチャーの狙撃には不便だろうけど、まずは潜んで流れを見ないとな」 『───了解した、マスター』 アーチャーの念話が途絶える。 霊体化してこちらに向かっているのだろうか。 さて、と思考を切り替える。 目的が決まったのならグズグズしている暇はない。 フゥー、と息を吐くと共に、口に咥えた煙草の煙が宙を舞う。 「───やってみせるさ」 彼の歩む道は、ここにいる全員の血と魂を犠牲にするだろう。 ───でもこれで、最後だ。 恒久的な平和の実現。 彼はこれから数十人の命を犠牲にし、全人類を救う。 鋼の意思を胸に、衛宮切嗣は歩き出す。 弱い心を押し込めるように、煙草の煙をその身に纏いながら─── ◆ ◆ ◆ (───爺さん) 霊体化したアーチャーは、歩き出した切嗣の後を追っていた。 その切嗣の顔は酷く冷酷で。 彼の知る、おっちょこちょいで優しい彼とは全くの別人で。 その差が、彼の背負っている重みを如実に表している。 正義の味方。その呪い。 誰もが幸せで、笑っている世界。 そんな世界を聖杯に願うこの男。 そのためならば、衛宮切嗣はどんな非道なことでもやってのけるだろう。 切嗣の顔を確認する。 その顔は、とてもじゃないが気分の良さそうなものではなかった。 「・・・マスター」 その姿に耐えられなくて、実体化して声をかけた。 「・・・何だ」 「朝の栄養はきちんと採っておいた方がいい。 あの主従の真似事ではないが、朝飯は一日の始まりの栄養だ。 摂るものも摂らなければ、いざという時にヘマをするぞ」 まさかこんなことを言われるとは思っていなかったのか、切嗣は呆気に取られたような顔をしていた。 「気に障ったのならすまない。 どうやら小言が多いタイプらしいな、私は。 良い気持ちはしないだろうが、運が悪かったと諦めてくれ」 この男は、切嗣はいつもこうだった。 きちんとした料理よりハンバーグのようなジャンクフードが好きな人間なのだ。 気を抜いていたら、いつ不健康な食事に浸るかわかったものではない。 切嗣はアーチャーを不審がるような目で見ていたが───アーチャーとしては、心は穏やかだった。 「さて、行こうマスター。 早めに拠点を見つけて、食事は採れる時に採っておかなければな」 ───ああ。 ───こうして爺さんに小言を言うのも、何年振りだろうか─── 【B-7(南西)/ビル/1日目 早朝】 【衛宮切嗣@Fate/Zero】 [状態]健康 [令呪]残り三角 [装備]キャリコ、コンテンダー、起源弾 [道具] [所持金]並 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を勝ち取り、恒久的な平和の実現を 1.新しい拠点を探す 2.出来れば移動手段(自動車など)を確保したい。 3.アーチャーに不信感 [備考] アーチャーから岸波白野とランサー(エリザ)の外見的特徴を聞きました。 何処に移動するかは後続の方に任せます。 【アーチャー(エミヤシロウ)@Fate/Stay night】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:切嗣の方針に従い、聖杯が汚れていた場合破壊を 1.周囲を警戒しつつ、情報収集を。 2.爺さん─── [備考] 岸波白野、ランサー(エリザ)を視認しました。 エリザについては竜の血が入っているのではないか、と推測しましたが確証はありません。 ハッ、ハッ、ハッ─── リズム良く息を吐きながら公園の中を駆ける。 襲撃は止んだ。 遠距離射撃が飛んでくる気配もない。 ああ、危なかった。 少し何かが間違っていたら、自分は今ここにはいないだろう。 ランサーが遠距離狙撃に反応できたのも、偶然自分を注視していたからだろう。 物陰に隠れ、息を整える。 今日は学校遅刻かな、とどうでもいいことを考えてしまう。 ランサーは既に霊体化している。 戦闘の後のため、魔力を温存しようという彼女なりの気遣いなのかもしれない。 ランサーによれば、相手のクラスはおそらくアーチャー。 遠距離からの、剣を矢とした狙撃。 あんな戦法を取る者は、おそらく自分の知る中にはいない。 ああ、なのに。 ───何故この心は。 ───あの剣を、あの戦法を知っていると騒ぎたてるのだろうか。 【B-7(北東)/海浜公園/1日目 早朝】 【岸波白野@Fate/EXTRA CCC】 [状態]健康、疲労(小)、魔力消費(小) [令呪]残り三角 [装備]なし [道具]なし [所持金]普通の学生程度 [思考・状況] 基本行動方針:「 」(CCC本編での自分のサーヴァント)の記憶を取り戻したい。 1.狙撃を警戒。 2.登校するつもりだったが、学校は遅刻しそうだ。 3.拠点を確保したい。 4.自分は、あのアーチャーを知っている───? [備考] アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による攻撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。 アーチャー(エミヤ)が行った「剣を矢として放つ攻撃」にどこか既視感を感じています。 しかしこれにより「 」がアーチャー(無銘)だと決まったわけではありません。 【ランサー(エリザベート・バートリー)@Fate/EXTRA CCC】 [状態]健康、霊体化 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:岸波白野に協力し、少しでも贖罪を。 1.撤退に屈辱感 2.拠点を確保 3.ランチを作るわ! [備考] アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による襲撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。 カフェテラスのサンドイッチを食したことにより、インスピレーションが湧きました。 彼女の手料理に何か変化がある・・・かもしれません。 ---- |BACK||NEXT| |033:[[新しい朝が来た、戦争の朝だ]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|035:[[トモダチヒャクニンデキルカナ]]| |033:[[新しい朝が来た、戦争の朝だ]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|035:[[トモダチヒャクニンデキルカナ]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |008:[[衛宮切嗣&アーチャー]]|[[衛宮切嗣]]&アーチャー([[エミヤシロウ]])|048:[[戦争考察 NPC編]]| |010:[[岸波白野・ランサー]]|[[岸波白野]]&ランサー([[エリザベート・バートリー]])|:[[]]|
*既視の剣 ◆DpgFZhamPE ───海浜公園。 ここが、この広場の名前。 海を望む冬木市最大の公園。 水族館にバッティングセンターにと色々な施設が集まった人気のデートスポット・・・らしい。 全て通行人のNPCに聞いた情報なので、色々と不確かだが、周りの景色を見る限り間違ってはいないだろう。 「お待たせしましたー、こちら珈琲とサンドイッチになります」 こと、と音を立てて品が目の前に置かれていく。 丁寧に店員の手から置かれたのは珈琲二つに、サンドイッチ二つ。 そう、現在はカフェテラスにて朝飯の調達中なのだ。 昔は売店で簡単に麻婆豆腐を調達できたのだけど、ここではそうもいかないらしい。 「・・・なんかこれ、赤が足りないわね」 ツンツン、とサンドイッチを指先で突つくエリザベート。 本来サーヴァントは食事を必要としない筈なのだが───カフェテラスを物珍しそうに見つめる彼女を見ると、サーヴァントと食べる食事も悪くないのではないかと思えた。 何処か拠点を探し、そこで何か作って食べるという選択肢も無かった訳ではない。 凛やラニがいたのならそれも可能であっただろうが───今隣にいるのはランサー。 不用意に自炊でもしようものなら、此方が死にかけない。 誰とも会うことなくテロい飯を最期の晩餐に消えるなんて、さすがに御免だった。 「子ブタ、これからどうするの? 私の歌に聴き惚れておびき寄せたブタを叩くもよし、私の美声でリスを誘い出して叩くもよしよ!」 結果的にどちらも同じような気もするが、ランサーに急かされてとりあえず次の方針を考える。 既に一回の聖杯戦争───そしてその『裏側』の騒動───に巻き込まれたことはある。 しかし、このような形式の聖杯戦争は初めてだった。 一番最初にするべきなのは、相手・敵の情報から集めることなのかもしれない。 これは、月の聖杯戦争においても『月の裏側』においても、そしてこの場でも変わらないことだった。 ならば─── >学校に行こう うん、サボろう 学生ならば、学校に行くべきだ。 NPCも多い学校なら襲われる可能性もグッと減るだろう。 尚且つ学校にマスターがいた場合、同盟を組めるようなマスターもいるかもしれない。 凛かラニのような人物がいれば、だが。 そこで聞いた本人のランサーは─── 「え・・・ということはこれが私の記念すべき子ブタとの復活初ライブ・・・? 観客は盛大に集めないといけないわ・・・! あ、でもスカウトされたらどうしよう、ダメよ、私には子ブタというプロデューサーが! 夢と子ブタの間で戸惑う私・・・これが、ロマンス・・・?」 ───さっそく自分の世界にダイブしていたらしく、既にこちらの話など聞いてはいなかった。 ・・・こんな感じで、これから大丈夫なのだろうか。 ◆ ◆ ◆ 『───マスター。 マスターとサーヴァントを発見した』 切嗣が身を隠している屋上にて辺りを見張っている弓兵からの念話。 はっきり言って、その報告は衛宮切嗣にとって意外と言う他なかった。 聖杯戦争においては情報も大切な戦力の一つになる。 真っ当な魔術師ならばまずは拠点を構え工房を作り、連日起こるであろう戦闘と攻め入られることを予想しての対処を行うはずなのだ。 それも行わずにこんな早く敵マスターを発見できるとは、思っても見なかった。 ただの間抜けか。それとも罠か。 「アーチャー。敵マスターとサーヴァントの様子、場所は」 『海浜公園のカフェテラス、どうやら朝食を摂っているようだ』 「・・・何?」 『サーヴァントも一緒に摂っているらしい。食事から魔力を得ている可能性がある。 警戒心など欠片もないようだがな』 切嗣は部屋の窓から海浜公園を覗くが、如何せん遠すぎる。 人間の視力ではとてもではないが、多くの人間の中からマスターかNPCかなどの区別はつかない。 「狙撃できそうか」 『この身は弓兵のクラス、アーチャーのサーヴァントだ。 この程度の距離は造作も無いが・・・日中堂々と戦闘を始めるのは如何なものか、マスター。 NPCや建物に多く被害を与えるとルーラーから制裁が与えられる、という話だが』 切嗣は思案する。 普段なら己の腕で狙撃も考えるのだが───突然ここに呼ばれたための、準備不足が災いする。 手元にあるのはキャリコとコンテンダー。 普段狙撃に使用しているワルサーWA2000が無い今、遠距離において切嗣ができることは何もない。 ならば。 「・・・最小の威力でマスターだけを撃ち抜け。 周りのNPCを巻き込まない様にだ、ルーラーに目をつけられても困る」 『了解した』 「・・・いや、これだけの距離と地の利があるなら、サーヴァントの出方を見るのもいいかもしれないな。 サーヴァントには牽制程度でやってくれ」 情報が少ない今───此方から動くしかない。 舞弥によるサポートもなく、用意した情報が全て無駄になった。 幸運なことにアーチャーと敵マスターの距離は随分と開いている。 成功したら成功したで、マスターを一人減らすことができる。 失敗したなら失敗したで、サーヴァントが何か動きを見せるだろう。 その動きだけでも、此方としては得るものが沢山あるのだ。 そして。 カフェテラスのような開けた場所で寛いでいるようなヤツだ、アサシンとキャスターのクラスはあり得ない。 寛いでいるところを見ると、実体化しているだけで多くの魔力を喰うバーサーカーでもないだろう。 ならばセイバー、ランサー、アーチャー、ライダーのどれか。 マスターの狙撃を防がれた場合、この4クラスのどれかだとしたら自分の得物で狙撃を防ぐ可能性が高い。 セイバーなら剣、ランサーなら槍と言った具合に。 ライダーなら逃走に自身の宝具、または調達した移動手段を使うだろう。 アーチャーなら狙撃で反撃を行う可能性もあるが───狙撃に集中した場合、マスターの安全が疎かになる。 その瞬間を狙うのみ。 成功したとしても、失敗したとしても───こちらに損害はない。 利害を見定め、有利な時のみ仕掛ける。 これが、魔術師殺し。 これが、衛宮切嗣。 長年培った判断能力は、この戦場でも大いに役に立っていた。 ◆ ◆ ◆ ───ギリギリ、と弦を引き絞る。 弓に番えたそれは、矢ではない。 無銘の剣。本来、飛ばすものですらない。 取るに足らない無銘の剣。 しかし。 錬鉄の英雄にかかれば、それは百中百発、あらゆるものにその刀身を直撃させる鏃となる。 (───さて) 衛宮切嗣が下した命令は、とても合理的なものだった。 だからこそアーチャーも余計な口は挟まない。 その判断に不備がないのなら、アーチャーもそれに従うまで。 直前まで抱えていた思考を放棄する。 聖杯のことも、切嗣のことも───今は全て後回し。 弓と剣と、そして標的だけを意識する。 イメージするのは、標的の頭蓋を寸分違わず貫く矢の軌道。 「行け───!」 ザンッ!と音を経て、明るみを増してきた空を剣が飛ぶ。 その速度は常人には捉えることはほぼ不可能。 風を切り裂き、閃光と化し、飛んで行ったその先は─── ◆ ◆ ◆ 「・・・」 サンドイッチを完食した後のランサーは、ずっと黙ったままだった。 顎に手を当て、何か考えるような仕草でうんうんと唸っている。 どうしたのか、と声を掛けたいが、邪魔になっては逆効果なので黙っておく。 するとハッ!と、何か思いついたような表情を浮かべるとランサーは身を乗り出すように立ち上がり、 「決めたわ」 と、真面目な顔で言い放った。 何を、と問う。 「───ええ、私に足りなかったもの・・・それは刺激よ。 他の存在の知識をあえて柔軟に取り入れることをしなかったから、ああなってしまったのよ。 そうよ、いくらブタとリスが作った低級料理とはいえ、その発想は悪くないわ。 その発想を私のアイデアに組み込めば、もっと良くなるはずなのよ」 嫌な予感がする。 脳内に赤で染まり皿に盛られた、悪魔のような物質が浮かび上がる。 「そうよ、そうと決まったら立ち止まってなんかいられないわ! 子ブタ、早速拠点探しと行くわよ! キッチン付きの!」 ああ、視界が赤く染まる。 あの味と衝撃と、体力を9割近く持っていかれた魔の料理が復活を遂げようとしている。 失意の底に沈もうとした自分にランサーは満面の笑みで振り返り─── 「今日のランチ、私が作ってあげるわ!」 ───死刑宣告を言い渡された。 ああ、ごめん、名も知らぬサーヴァントよ。 君たちと生きた記憶を取り返すのは、無理かもしれない─── 「子ブタ!? え、ナニ、口から魂抜けてる!? どどど、どうやって戻すのよこれ!? そんなに嫌がらなくてもいいじゃない、次よ、次のは自信作なのよ! き、きっと美味しいわ!」 ランサーの尻尾の一撃で魂が身体に戻ってくる。 ああ、死ぬかと思った。 思い返すだけであの料理は人を殺せる───それだけのテロさなのだ。 でも。 それでも。 まごころと思いだけは、確かに詰まっているランサーの料理。 だからこそ、無下にはできないのだ。 彼女の、美味しく料理を食べてほしい───その思いだけは、本当で素晴らしいものなのだから。 ならば、ここで自分が告げる言葉は・・・ もう勘弁してくれ、ランサー >次は美味しいのをお願いす─── 「───子ブタッ!伏せなさい!」 告げようとした言葉を断ち切ったのは、眼前に迫る剣の鋒だった。 ───ガァンッ!と。 金属と金属がぶつかるような、凄まじい音が鳴り響く。 今のは、一体───? 刹那の内に出現させた槍を振り切ったランサーの周りに、カランカランと砕けた刃の破片が舞い散る。 「遠距離射撃・・・ッ!」 悔しそうに顔を顰めたランサーが呟く。 その手に持った巨大な槍は、傷一つついていない。 その姿を見て、やっと理解する。 敵襲───!! 「子ブタ!敵サーヴァントよ、多分クラスはアーチャー! この距離じゃ、手出しが───!!」 ランサーがそう言い放った瞬間、風を切る音と共に、何かが閃光の様な曲線を描いて迫ってくる。 第、二射。 ・・・いや、それだけじゃない。 閃光は一つでは終わらない。 第三射、四射、五射。 その合計四発に及ぶ閃光は、ランサーだけを狙っているものではない まず、自分を助けるために動くランサーの足止めに三発。 そしてマスター───岸波白野を仕留めるのに一発。 完全に、こちらの動きが読まれていた。 マズい。 ランサーは己に向かってくる閃光の対処で、身動きがとれない状況だ。 人間の自分では、ランサーの守りを失った自分ではサーヴァントの射撃からは逃れられない。 ランサー、と呼びかける。 異変に気づいたランサーはなんとか戻ろうとするが───己に迫る三本の閃光に対処に精一杯だった。 一秒でも判断を誤れば、その身はあの閃光に撃ち抜かれ爆ぜるであろう、絶対絶命の危機。 一度でも判断を謝れば、ランサーと共にこの体と記憶は藻屑となり、消え去るだけ。 ああ、でも。 ───この程度のことならば、何度だって切り抜けてきたはずなのだ。 「」と一緒に。 名前も姿も思い出せないけれど、確かに存在していた相棒。 今目の前にいるのは、そんな「」の前に何度も立ちはだかった強敵なのだ。 この程度の危機───力技で切り抜ける。 「───無敵モード!オン!」 次の瞬間。 全ての閃光が、ランサーの槍に叩き落とされる。 ───これが、ランサーの能力の一つ。 恋愛夢想の現実逃避(セレレム・アルモディック)。 多量の魔力を使うことで、三手のみ、確実に相手の攻撃の軌道を読む技である。 宝具や相手の渾身の一撃などは読めないこともあるが───通常の攻撃ならば完全に読んでみせる。 四射中、三射の軌道さえ読めれば後はこちらのもの。 ランサーの怪力ならば、ある程度の攻撃なら薙ぎ払える。 ブンッ!とランサーの槍が線を描き、己に迫る閃光を全て砕き、叩き落とし、塵へと変える。 そのままの勢いで槍を思い切り振り回し、勢いをつけて─── 「邪魔ッ!」 最後に、自分の身を貫こうとした閃光を貫き、砕く。 カランカラン、と音を経てて落ちる砕かれた刃の欠片。 ───何故か。 その刃から、目が離せなかった。 「子ブタ、次の指示!」 ランサーの言葉で我に帰る。 とりあえず、次は─── >逃げよう、ランサー! このまま戦おう、ランサー! 逃走の意思をランサーに伝える。 攻撃を耐え抜き、射撃が止んだ今こそが逃走のチャンス。 これを逃せば、次はいつになるかわからない。 引くのがそこまで不愉快なのだろうか、ランサーは苦渋に顔を歪ませながら指示に従うように後を着いてくる。 とりあえず射撃が来た方向とは逆の方向へ。 できるだけ、今の内に距離を離さなければ───! 一刻も早く、この場から離れなければならない。 ───なのに、何故かこの頭は。 ───あの砕けた刀身のことで一杯だった。 ◆ ◆ ◆ 『───終わったぞ、マスター」 「ご苦労、アーチャー」 狙撃を終えたアーチャーから、念話が届く。 その声に疲労はない。 「敵の情報は」 『仕留めることはできなかったが、反撃に槍を使用したのを見ると、ランサーのクラスだろう。 ドレスを着込み、角と尻尾があったが───竜の血でも入っていたのかもしれないな。 マスターの方は、見たところ普通の学生のようだ。 だが相当に場馴れしているらしい。 急な緊急事態に襲われて尚、即座に攻撃された方向を確認、逆方向に逃走するなんてのは巻き込まれた一般人にはできない行動だ』 アーチャーから渡された情報は少ないが、有益なことばかり。 こちらの姿を視認させずに、相手の姿とサーヴァントを確認できたのは中々の得だった。 アーチャーの攻撃をいともたやすく打ち落とした辺り、パワーも中々のものらしい。 「そうか。 早々に一組の情報を手に入れられたのは大きいな。 よくやったアーチャー」 『───』 アーチャーから言葉は返ってこない。 何か思うところがあるのかは知らないが───気にしている暇はない。 「行くぞ、アーチャー。 場所を移動する」 『───あ、ああ。 しかし、何処へだね?』 「不用意に動くとアサシンの格好の的になる。 早めに新しい拠点を探そう」 高い場所に拠点を作っても下から爆破されては逃げる場所すらない。 自ら逃げ道を封じる程、愚かなつもりはない。 そして『アーチャーのクラスなら狙撃を仕掛けてくるはずだ、なら見通しのいい場所に陣取るに違いない』───誰もが考えるその単純な思考そのままに動く程、切嗣は考えなしではない。 「今の狙撃を誰かに見られていた可能性もあるし、一つの場所に長く留まっては襲撃される原因にもなる。 できれば目立たないような、一軒家を拠点にしたい。 アーチャーの狙撃には不便だろうけど、まずは潜んで流れを見ないとな」 『───了解した、マスター』 アーチャーの念話が途絶える。 霊体化してこちらに向かっているのだろうか。 さて、と思考を切り替える。 目的が決まったのならグズグズしている暇はない。 フゥー、と息を吐くと共に、口に咥えた煙草の煙が宙を舞う。 「───やってみせるさ」 彼の歩む道は、ここにいる全員の血と魂を犠牲にするだろう。 ───でもこれで、最後だ。 恒久的な平和の実現。 彼はこれから数十人の命を犠牲にし、全人類を救う。 鋼の意思を胸に、衛宮切嗣は歩き出す。 弱い心を押し込めるように、煙草の煙をその身に纏いながら─── ◆ ◆ ◆ (───爺さん) 霊体化したアーチャーは、歩き出した切嗣の後を追っていた。 その切嗣の顔は酷く冷酷で。 彼の知る、おっちょこちょいで優しい彼とは全くの別人で。 その差が、彼の背負っている重みを如実に表している。 正義の味方。その呪い。 誰もが幸せで、笑っている世界。 そんな世界を聖杯に願うこの男。 そのためならば、衛宮切嗣はどんな非道なことでもやってのけるだろう。 切嗣の顔を確認する。 その顔は、とてもじゃないが気分の良さそうなものではなかった。 「・・・マスター」 その姿に耐えられなくて、実体化して声をかけた。 「・・・何だ」 「朝の栄養はきちんと採っておいた方がいい。 あの主従の真似事ではないが、朝飯は一日の始まりの栄養だ。 摂るものも摂らなければ、いざという時にヘマをするぞ」 まさかこんなことを言われるとは思っていなかったのか、切嗣は呆気に取られたような顔をしていた。 「気に障ったのならすまない。 どうやら小言が多いタイプらしいな、私は。 良い気持ちはしないだろうが、運が悪かったと諦めてくれ」 この男は、切嗣はいつもこうだった。 きちんとした料理よりハンバーグのようなジャンクフードが好きな人間なのだ。 気を抜いていたら、いつ不健康な食事に浸るかわかったものではない。 切嗣はアーチャーを不審がるような目で見ていたが───アーチャーとしては、心は穏やかだった。 「さて、行こうマスター。 早めに拠点を見つけて、食事は採れる時に採っておかなければな」 ───ああ。 ───こうして爺さんに小言を言うのも、何年振りだろうか─── 【B-7(南西)/ビル/1日目 早朝】 【衛宮切嗣@Fate/Zero】 [状態]健康 [令呪]残り三角 [装備]キャリコ、コンテンダー、起源弾 [道具] [所持金]並 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を勝ち取り、恒久的な平和の実現を 1.新しい拠点を探す 2.出来れば移動手段(自動車など)を確保したい。 3.アーチャーに不信感 [備考] アーチャーから岸波白野とランサー(エリザ)の外見的特徴を聞きました。 何処に移動するかは後続の方に任せます。 【アーチャー(エミヤシロウ)@Fate/Stay night】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:切嗣の方針に従い、聖杯が汚れていた場合破壊を 1.周囲を警戒しつつ、情報収集を。 2.爺さん─── [備考] 岸波白野、ランサー(エリザ)を視認しました。 エリザについては竜の血が入っているのではないか、と推測しましたが確証はありません。 ハッ、ハッ、ハッ─── リズム良く息を吐きながら公園の中を駆ける。 襲撃は止んだ。 遠距離射撃が飛んでくる気配もない。 ああ、危なかった。 少し何かが間違っていたら、自分は今ここにはいないだろう。 ランサーが遠距離狙撃に反応できたのも、偶然自分を注視していたからだろう。 物陰に隠れ、息を整える。 今日は学校遅刻かな、とどうでもいいことを考えてしまう。 ランサーは既に霊体化している。 戦闘の後のため、魔力を温存しようという彼女なりの気遣いなのかもしれない。 ランサーによれば、相手のクラスはおそらくアーチャー。 遠距離からの、剣を矢とした狙撃。 あんな戦法を取る者は、おそらく自分の知る中にはいない。 ああ、なのに。 ───何故この心は。 ───あの剣を、あの戦法を知っていると騒ぎたてるのだろうか。 【B-7(北東)/海浜公園/1日目 早朝】 【岸波白野@Fate/EXTRA CCC】 [状態]健康、疲労(小)、魔力消費(小) [令呪]残り三角 [装備]なし [道具]なし [所持金]普通の学生程度 [思考・状況] 基本行動方針:「 」(CCC本編での自分のサーヴァント)の記憶を取り戻したい。 1.狙撃を警戒。 2.登校するつもりだったが、学校は遅刻しそうだ。 3.拠点を確保したい。 4.自分は、あのアーチャーを知っている───? [備考] アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による攻撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。 アーチャー(エミヤ)が行った「剣を矢として放つ攻撃」にどこか既視感を感じています。 しかしこれにより「 」がアーチャー(無銘)だと決まったわけではありません。 【ランサー(エリザベート・バートリー)@Fate/EXTRA CCC】 [状態]健康、霊体化 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:岸波白野に協力し、少しでも贖罪を。 1.撤退に屈辱感 2.拠点を確保 3.ランチを作るわ! [備考] アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による襲撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。 カフェテラスのサンドイッチを食したことにより、インスピレーションが湧きました。 彼女の手料理に何か変化がある・・・かもしれません。 ---- |BACK||NEXT| |033:[[新しい朝が来た、戦争の朝だ]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|035:[[トモダチヒャクニンデキルカナ]]| |033:[[新しい朝が来た、戦争の朝だ]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|035:[[トモダチヒャクニンデキルカナ]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |008:[[衛宮切嗣&アーチャー]]|[[衛宮切嗣]]&アーチャー([[エミヤシロウ]])|048:[[戦争考察 NPC編]]| |010:[[岸波白野・ランサー]]|[[岸波白野]]&ランサー([[エリザベート・バートリー]])|055:[[diverging point]]|

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