「序曲」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「序曲」(2014/08/20 (水) 22:25:59) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*序曲 ◆/Q5EWoTDcQ
―――勇者という存在がある。天命を定められた英雄ではなく、その使命を神から帯びた者。
悪を懲らしめ、弱きを助け、闇に包まれた世界を剣で持って救済する勇気ある者。
勇者は仲間たちとともに幾多の苦難を乗り越え、暗黒に包まれた世界に光をもたらした。
だが魔が滅び、闇が去った世界に己の居場所はない。
父は死に、もはや母の元に戻ることも叶わぬ。―――もう勇者に、帰る場所はなかった。
“あぁ―――だが、それでもいい。何の後悔もない。自分は確かに、救えたのだから”
そう希望を胸に灯し、任を終えた勇者は姿を消した。
苦楽を共にした仲間たちと笑顔で別れ―――そして老い、勇者としての力を失った頃、誰に看取られることもなくひっそりと息を引き取った。
自分が去った後、いずれ再び闇は襲い来るだろう。
だが―――大丈夫。神に選ばれた勇者は、人類の可能性を限りなく信じていた。
どれだけ闇と悪が跋扈しようとも、人類は必ずや魔を打ち破り光を見出すと。
―――事実、勇者が英霊の座に昇った後も、それは続いた。
ある勇者は、竜の王を討ち倒した。ある勇者は、破壊の神を討ち倒した。
勇者の子孫が死に絶えた後も、戦いは続く。
ある勇者は、世界を根絶やしにしようとした魔王を討ち倒した。
ある勇者は、“光の神”として人類を欺いた魔王を討ち倒した。
ある勇者は、狭間の世界に君臨する魔王を討ち倒した。
ある勇者は、神になり変わっていた魔王を討ち倒した。
ある勇者は、暗黒の神を討ち倒した。
そして世界すらも越え、魔と人類は殺しあった。
時の勇者が、力に溺れた魔王を討ち倒した。
伝説を継承する勇者と巫女が、大邪神を討ち倒した。
鋼の勇者が、遥か彼方より飛来した機甲の魔王を討ち倒した。
光の勇者が、神の踊り子の末裔と共に魔王を封印した。
そして時には、勇者が魔王へと転ずることすらあった。
光ある限り闇もまたある―――光ある限り、再び闇は動き出す。
正義と悪は、光と闇は、秩序と混沌は表裏一体。
互いに喰らいあい、闘争という名の永遠のロンドを繰り返す。
時を越え、世界を越えてまで人と魔は争い続ける。
数えきれぬ戦争と、数えきれぬ流血を繰り返し、闇と光は互いを喰らい続ける。
“あぁ、そうさ。人類は負けない。最後には必ず勝つ。―――だが、いつまでこれを繰り返すのだ?”
このあり様を、座から見続けていた勇者の心はとうに掠れ果てていた。
いつまで戦えばいい? いつまで人類は苦しみ続ける?
人と魔は、勇者と魔王は、いつまで戦い続けるというのか。
英雄が魔を討ち倒すまでにも人は死ぬ。母が死に父は敗れ子の涙が地を濡らす。
『ゆうしゃよ よくぞわしをたおした。しかし ひかりあるかぎり やみもまたある。
わしにはみえるのだ。ふたたびやみから なにものかがあらわれよう。
だがそのときは おまえはとしおいて いきてはいまい。わはははは……』
この戦いに終わりなどありはしない。
宿敵の嘲笑う声が虚霊する。永遠に、永遠に―――
▼
命蓮寺、本堂―――
甲冑を着け、宝塔を持つ天部の神の像に見下される形で、一人の“元人間”と、一人の“英雄”が向かい合っている。
座布団に行儀よく正座し語らう彼女たちの姿は、見ようによってはお見合いにも見えるかもしれないが、その会話は一方的なもの。
グラデーションのかかった長い金髪の女性が話しかけ、蒼い甲冑を身につけた英雄は頷くか、短い答えを返すのみ。
どうやら彼女―――“八苦を滅した尼公”聖白蓮の召喚したサーヴァントは、恐ろしく無口な性分らしい。
「ええと、困っちゃったわね。ここからは私が勝手に話すけど、それでもいい?
何分お婆ちゃんのすることだから、つまらない長話になったらごめんなさい」
自身のことを『お婆ちゃん』と呼ぶ妙齢の女性に対し、サーヴァント―――“セイバー”はただ「はい」と短い答えを返した。
セイバーの顔は兜と一体化した仮面により隠されており、その表情を読み取ることはできない。だが聖は安心したようにほっと息を吐く。
「改めて自己紹介をさせていただきます。私の名は聖白蓮。僧籍に身を置き、命蓮寺にて住職を務める者。
この『聖杯戦争』を戦う同志として、よろしくお願い申し上げます」
三指をつき、尼公はセイバーへと丁寧に頭を下げる。
礼を示されたのだ。聖杯戦争を共に戦う仲間として、こちらも真名を明かすのが礼儀だろう。
己の英雄としての名を告げようとするが―――セイバーの口は、思うように動かない。
「ああっ、いいんですよ無理をしなくて。あなたの能力は“ますたぁすきる”である『透視』で既に読み取っています。
真名には少しモヤがかかっていましたが、それも少し目を凝らせば見えました。
最初は『あら、いやだ。老眼かしら?』と思ったのだけど、そういう宝具なのですね」
セイバーの宝具には、真名秘匿の能力が含まれる。
しかしそれも自身のマスターである聖には有効ではなかったようだ。
「……あなたの過去と、その想いについては理解しました。それを踏まえて、今度はわたくしのことをお話しましょう」
そして尼公は、ぽつりぽつりと語りだす。
極東の国の山奥、巨大な結界によって隔離された『楽園』。
文明の発達した現代の人間社会『外の世界』の裏で人間、妖怪、神が共存しているという郷。
遥かな昔に廃れ、現在でも衰退し続ける『神秘の力』が当たり前のように存在している世界。
それが『幻想郷』だ、と。そして彼女はその『楽園』からやってきたのだと。
―――人間と、人ならざるものが共存する地。セイバーの常識ではとても考えられない世界だ。
魔は、人を喰らう。光を喰らわねば、闇は存続できぬ。
それこそが永劫に人類と魔が争い続けた根本的な原因。
人類を『餌』としか見ない魔がいる世界で、人類が平穏に暮らすなど出来るわけがない。
「えぇ……残念ながら、幻想郷でも人を喰らう妖怪や吸血種の類は存在します。
……ですが、全ての妖怪が人を喰らうことを是とするわけではないのです」
八苦を滅した尼公は語る。
人間を殺傷しなければ存続できぬ妖怪が命蓮寺―――仏門に帰依し、殺生を止めることで功徳を積んでいると。
そして最終的に神や仏など、人類に益となる上位存在になる事を目指し、日々修行に励んでいると。
―――ガツンと、大金槌で頭を打たれたかのような衝撃だった。
ありえない。出来るわけがない。魔が人を喰らうことを止め、それどころか聖者となるべく悟りを開こうとしているなど。
あり得るわけがない。
「そんなことはありません。神も妖怪も、本質的には同質のものです。人間に敬われるか、怖れられるかの違いでしかないのです。
『人』も『妖怪』も『神』も『仏』もみな平等。全ては同じなのです」
では尼公、貴女の願いは―――
「はい、私は『方舟』の力により、人間と妖怪の平等なる社会を実現します。そして全ての世界に平穏をもたらすのです」
無論妖怪のカテゴリには、悪魔、魔物、悪神など、“魔”に類する全てが含まれる。
だが、それは魔と比類し得る強者だけの理論ではないのか? 人と魔が立場を同じくすれば、弱者である人間は喰らわれるだけではないのか?
「守ります。人間からの不当な迫害を受ける妖怪も、妖怪から虐げられる人間も、仏の教えを説き救い守りましょう」
八苦を滅した尼公は、人間の味方であり、妖怪の味方でもある。どちらかが一方的に虐げられることなどあってはならない。
良い妖怪も悪い妖怪も一緒くたに退治されることも、人間が虐殺されることも、どちらも等しく許してはならない。
人も魔も、対等な立場で互いを理解し合う世界。
それこそが永劫に続く光と闇の争いを終結させる方法ではないのか。
「セイバー、私とともに、人も妖怪もみなが共に暮らせる世界を目指してみませんか。
願わくばそれが、あなたの救いとなりますように―――」
>はい
いいえ
再び希望を胸に灯し、蒼穹の勇者は差し出された白い手を握る。
―――我が道筋に、光明を得たり。“勇者伝説の始祖”は、再び剣を取る。
【クラス】セイバー
【真名】勇者ロト(DRAGON QUESTⅢ ~そして伝説へ~)
【属性】秩序・善
【性別】???
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。
鎧の効果により大幅にランクアップしており、火炎や氷結への耐性の他
非戦闘時に限りHPを自動回復する効果(オートリカバー)も含まれる。
騎乗:A
セイバークラスに現界したことでランクダウン。
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
【保有スキル】
勇者:A+++
正しき精神と信念を持ち、英雄的運命を辿る勇気ある者。
悪に組みせず屈せず、属性が悪である相手からの精神干渉を無効化する。
また良し悪しを別にして異常な事態や状況を招きやすい。
勇者伝説の始祖とも言えるセイバーの勇者としての格は、最高クラスと言える。
精霊の加護:A
精霊ルビスからの祝福により、危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる能力。
その発動は悪しき者どもとの戦いのみに限定される。
見切り:B
敵の攻撃に対する学習能力。
相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、
同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。
但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。
【宝具】
『闇祓う蒼穹の神器(フォース・オブ・ロト)』
ランク:D~A 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~100人
かつて大魔王を討伐した際に使用した勇者の剣、鎧、盾、兜、装飾品の総称。
鎧は各種耐性を付与し、兜には真名秘匿効果が含まれる。
中でもオリハルコン製の聖剣、『王者の剣(ソード・オブ・ロト)』は勇者に対する救世の信仰と、
精霊ルビスからの祝福によりランクアップしている。
またあまりに多くの魔物を斬ってきたために、“魔”に類する対象に対して追加ダメージを与える。
真名開放を行うことで、全てを斬り刻む大竜巻を発生させるが、使用した瞬間セイバーの真名は露呈してしまうだろう。
【Weapon】
ロトの装備のみ。呪文はクラス制限に引っかかるため置いてきた。
【人物背景】
ドラゴンクエストⅢの主人公。初代勇者であり、勇者伝説の始祖。
仲間と共に各地を周りオーブを集め、全世界に平和をもたらした。
しかし大魔王討伐後、自らの装備品を残し大衆の前から忽然と姿を消してしまう。
その後人知れず死去し英霊の座に昇るが、果てなく続く“勇者と魔王”の戦いに精神を摩耗させる。
性格は恐ろしく無口であり、基本「はい」「いいえ」か、「バッチリがんばれ」など極簡単な作戦命令しか行わない。
ただの口下手なのかもしれない。
【サーヴァントとしての願い】
永劫に続く“勇者と魔王”の物語を終結させる。
【基本戦術、方針、運用法】
『最優のクラス』に相応しく安定したパラメータを誇る。
どの相手とも安定して戦える能力を持つが、『王者の剣』の真名解放を行った場合、
真名が完全に露呈してしまうというリスクを秘めている。
呪文は置いて来ているため、マスターとともに接近戦で「ガンガンいこうぜ」
しかしマスター、サーヴァントと共に戦略・戦術的方面には決して明るくはない。
聖は戦闘を生業としているわけではないし、ロトも最大4人までの冒険・戦闘指揮経験しかないためである。
「戦争」であるこの戦いにおいて、戦略に疎いという点は致命的な弱みとなり得る。
【備考】
彼の真名は『ああああ』、『くっきい』、『アベル』、『あまの』など複数の説が存在し、
またその性格も『ねっけつかん』、『きれもの』、『おちょうしもの』、『むっつりスケベ』など伝承によりまったく異なっている。
便宜上“彼”と記しているが、当然のように女性説が存在しているため、セイバーの性別すら不明となっている。
この逸話から真名はもちろん宝具や固有スキルといった重要な情報を隠蔽する能力が兜に付与されており、
手にした剣の意匠から敵が真名を想起するのを阻害する。
(というかご丁寧にも刀身に『DRAGON QUEST』とルーン文字で刻まれているため、この能力がないと真名が即バレする)
勇者としての名だけが伝えられ、真実の姿が消失してしまったことから得た能力。
―――ただロトという称号のみが残る。
※ロトの兜については『鉄仮面説』、リメイク版での『オルテガの兜説』などが存在しますが、ここでは前者を採用しています。
(グラフィック的には後年(ドラクエ1・2時代)に作り直されたのかも)
(というか『オルテガの兜』だったとしても、オルテガのグラが覆面パンツなのでやっぱり顔を隠すタイプの兜なんじゃ(ry)
※見切り能力はセーブ&ロードや、ゲームを攻略するプレイヤー側の学習・対応能力として付与しました。
【マスター】
聖白蓮@東方Project
【参加方法】
空飛ぶ穀倉「飛倉(とびくら)」からゴフェルの木片を入手。
かつては「空を飛ぶ力を持った宝物の数々」「人間を改心させる宝物」など法力のこもった宝物や物品等などが大量に所蔵されていたようだが、白蓮が封印されている間に賊によって奪われ、世界に散り散りになり失われてしまったらしい。
その中で残っていた、数少ない宝物の一つがこの『方舟』の一部、ゴフェルの木片である。
【マスターとしての願い】
人も妖怪も平等に生きられる世界の実現。
しかし人妖平等といっても対象は弱い虐げられてる妖怪である。人間側に一方的な譲歩を強いるものではない。
彼女が仏教を教えているのも、仏教の世界では人間が死を迎えても消えてなくなるわけではないという考え方を妖怪にも教える事で、存在を高めて妖怪が自分の力や存在の維持の為に人に危害を加える事や怖れさせる事で存在を誇示するという事が必要なくなるようにするためである。
【weapon】
「魔人経巻(まじんきょうかん)」
聖が所有する虹色の巻物。エア巻物。聖の能力の補助であり要。
振りかざしただけでお経を唱えた事になる無詠唱機能(オート読経モード)を搭載している。
長大な経典を上から下に流し開くことによって“読み上げた”と見立てる、「転読」と呼ばれるお経の読み方の一種の応用。
【能力・技能】
魔法を使う程度の能力。
しかし一般的にイメージされる魔法使いとは違い、その傾向は身体能力の向上に重きを置いている。
独鈷杵を柄に見立て、ビームサーベルによる斬撃も行うなど格闘戦のエキスパートである。
ちなみに能力を使わない時の身体能力は普通の人間と変わらない。
そのため彼女と交戦するならばそこを襲うべきである。(by東方求聞史紀著者)
※型月的な設定と照らし合わせるならば、「魔術を使う程度の能力」である。
【人物背景】
実在する伝説の僧侶、命蓮上人の実姉。
弟である彼から法力を学ぶが、命蓮の死を切欠に死を極端に恐れるようになり、法術ではなく妖力、魔力の類により若返りと不老長寿の力を手に入れた。
性格は礼儀正しく温厚、包容力を有する、まさに聖人と呼ばれるような人物。
その人柄ゆえに人間からの人望も非常に厚かったが、不当な迫害を受ける妖怪達を保護していたことが露見すると一転、悪魔扱いされ魔界に封印された過去を持つ。
博愛主義者であるが、人間にはこの限りではない場合も多い。
事実、『東方星蓮船』BADエンドでは霊夢、早苗、魔理沙の三人が魔界に監禁され、彼女の思想に影響を受けたり。
(これは彼女たちが幻想郷において、『強者』に分類されるからかもしれないが……)
【方針】
力も方便。「ガンガンいこうぜ」
まずはセイバーの力の程を試してみたい。
※聖たちは現在ムーンセルにより再現された「命蓮寺」を拠点としているようです。
※幻想郷から脱しているため、聖の能力が劣化していたり、燃費が悪化している可能性があります。
----
|BACK||NEXT|
|002:[[真玉橋孝一&セイバー]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|004:[[シャア・アズナブル&アーチャー]]|
|002:[[真玉橋孝一&セイバー]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|004:[[シャア・アズナブル&アーチャー]]|
|BACK|登場キャラ|NEXT|
|&color(yellow){参戦}|[[聖白蓮]]&セイバー([[勇者ロト]])|000:[[ ]]|
*序曲 ◆/Q5EWoTDcQ
―――勇者という存在がある。天命を定められた英雄ではなく、その使命を神から帯びた者。
悪を懲らしめ、弱きを助け、闇に包まれた世界を剣で持って救済する勇気ある者。
勇者は仲間たちとともに幾多の苦難を乗り越え、暗黒に包まれた世界に光をもたらした。
だが魔が滅び、闇が去った世界に己の居場所はない。
父は死に、もはや母の元に戻ることも叶わぬ。―――もう勇者に、帰る場所はなかった。
“あぁ―――だが、それでもいい。何の後悔もない。自分は確かに、救えたのだから”
そう希望を胸に灯し、任を終えた勇者は姿を消した。
苦楽を共にした仲間たちと笑顔で別れ―――そして老い、勇者としての力を失った頃、誰に看取られることもなくひっそりと息を引き取った。
自分が去った後、いずれ再び闇は襲い来るだろう。
だが―――大丈夫。神に選ばれた勇者は、人類の可能性を限りなく信じていた。
どれだけ闇と悪が跋扈しようとも、人類は必ずや魔を打ち破り光を見出すと。
―――事実、勇者が英霊の座に昇った後も、それは続いた。
ある勇者は、竜の王を討ち倒した。ある勇者は、破壊の神を討ち倒した。
勇者の子孫が死に絶えた後も、戦いは続く。
ある勇者は、世界を根絶やしにしようとした魔王を討ち倒した。
ある勇者は、“光の神”として人類を欺いた魔王を討ち倒した。
ある勇者は、狭間の世界に君臨する魔王を討ち倒した。
ある勇者は、神になり変わっていた魔王を討ち倒した。
ある勇者は、暗黒の神を討ち倒した。
そして世界すらも越え、魔と人類は殺しあった。
時の勇者が、力に溺れた魔王を討ち倒した。
伝説を継承する勇者と巫女が、大邪神を討ち倒した。
鋼の勇者が、遥か彼方より飛来した機甲の魔王を討ち倒した。
光の勇者が、神の踊り子の末裔と共に魔王を封印した。
そして時には、勇者が魔王へと転ずることすらあった。
光ある限り闇もまたある―――光ある限り、再び闇は動き出す。
正義と悪は、光と闇は、秩序と混沌は表裏一体。
互いに喰らいあい、闘争という名の永遠のロンドを繰り返す。
時を越え、世界を越えてまで人と魔は争い続ける。
数えきれぬ戦争と、数えきれぬ流血を繰り返し、闇と光は互いを喰らい続ける。
“あぁ、そうさ。人類は負けない。最後には必ず勝つ。―――だが、いつまでこれを繰り返すのだ?”
このあり様を、座から見続けていた勇者の心はとうに掠れ果てていた。
いつまで戦えばいい? いつまで人類は苦しみ続ける?
人と魔は、勇者と魔王は、いつまで戦い続けるというのか。
英雄が魔を討ち倒すまでにも人は死ぬ。母が死に父は敗れ子の涙が地を濡らす。
『ゆうしゃよ よくぞわしをたおした。しかし ひかりあるかぎり やみもまたある。
わしにはみえるのだ。ふたたびやみから なにものかがあらわれよう。
だがそのときは おまえはとしおいて いきてはいまい。わはははは……』
この戦いに終わりなどありはしない。
宿敵の嘲笑う声が虚霊する。永遠に、永遠に―――
▼
命蓮寺、本堂―――
甲冑を着け、宝塔を持つ天部の神の像に見下される形で、一人の“元人間”と、一人の“英雄”が向かい合っている。
座布団に行儀よく正座し語らう彼女たちの姿は、見ようによってはお見合いにも見えるかもしれないが、その会話は一方的なもの。
グラデーションのかかった長い金髪の女性が話しかけ、蒼い甲冑を身につけた英雄は頷くか、短い答えを返すのみ。
どうやら彼女―――“八苦を滅した尼公”聖白蓮の召喚したサーヴァントは、恐ろしく無口な性分らしい。
「ええと、困っちゃったわね。ここからは私が勝手に話すけど、それでもいい?
何分お婆ちゃんのすることだから、つまらない長話になったらごめんなさい」
自身のことを『お婆ちゃん』と呼ぶ妙齢の女性に対し、サーヴァント―――“セイバー”はただ「はい」と短い答えを返した。
セイバーの顔は兜と一体化した仮面により隠されており、その表情を読み取ることはできない。だが聖は安心したようにほっと息を吐く。
「改めて自己紹介をさせていただきます。私の名は聖白蓮。僧籍に身を置き、命蓮寺にて住職を務める者。
この『聖杯戦争』を戦う同志として、よろしくお願い申し上げます」
三指をつき、尼公はセイバーへと丁寧に頭を下げる。
礼を示されたのだ。聖杯戦争を共に戦う仲間として、こちらも真名を明かすのが礼儀だろう。
己の英雄としての名を告げようとするが―――セイバーの口は、思うように動かない。
「ああっ、いいんですよ無理をしなくて。あなたの能力は“ますたぁすきる”である『透視』で既に読み取っています。
真名には少しモヤがかかっていましたが、それも少し目を凝らせば見えました。
最初は『あら、いやだ。老眼かしら?』と思ったのだけど、そういう宝具なのですね」
セイバーの宝具には、真名秘匿の能力が含まれる。
しかしそれも自身のマスターである聖には有効ではなかったようだ。
「……あなたの過去と、その想いについては理解しました。それを踏まえて、今度はわたくしのことをお話しましょう」
そして尼公は、ぽつりぽつりと語りだす。
極東の国の山奥、巨大な結界によって隔離された『楽園』。
文明の発達した現代の人間社会『外の世界』の裏で人間、妖怪、神が共存しているという郷。
遥かな昔に廃れ、現在でも衰退し続ける『神秘の力』が当たり前のように存在している世界。
それが『幻想郷』だ、と。そして彼女はその『楽園』からやってきたのだと。
―――人間と、人ならざるものが共存する地。セイバーの常識ではとても考えられない世界だ。
魔は、人を喰らう。光を喰らわねば、闇は存続できぬ。
それこそが永劫に人類と魔が争い続けた根本的な原因。
人類を『餌』としか見ない魔がいる世界で、人類が平穏に暮らすなど出来るわけがない。
「えぇ……残念ながら、幻想郷でも人を喰らう妖怪や吸血種の類は存在します。
……ですが、全ての妖怪が人を喰らうことを是とするわけではないのです」
八苦を滅した尼公は語る。
人間を殺傷しなければ存続できぬ妖怪が命蓮寺―――仏門に帰依し、殺生を止めることで功徳を積んでいると。
そして最終的に神や仏など、人類に益となる上位存在になる事を目指し、日々修行に励んでいると。
―――ガツンと、大金槌で頭を打たれたかのような衝撃だった。
ありえない。出来るわけがない。魔が人を喰らうことを止め、それどころか聖者となるべく悟りを開こうとしているなど。
あり得るわけがない。
「そんなことはありません。神も妖怪も、本質的には同質のものです。人間に敬われるか、怖れられるかの違いでしかないのです。
『人』も『妖怪』も『神』も『仏』もみな平等。全ては同じなのです」
では尼公、貴女の願いは―――
「はい、私は『方舟』の力により、人間と妖怪の平等なる社会を実現します。そして全ての世界に平穏をもたらすのです」
無論妖怪のカテゴリには、悪魔、魔物、悪神など、“魔”に類する全てが含まれる。
だが、それは魔と比類し得る強者だけの理論ではないのか? 人と魔が立場を同じくすれば、弱者である人間は喰らわれるだけではないのか?
「守ります。人間からの不当な迫害を受ける妖怪も、妖怪から虐げられる人間も、仏の教えを説き救い守りましょう」
八苦を滅した尼公は、人間の味方であり、妖怪の味方でもある。どちらかが一方的に虐げられることなどあってはならない。
良い妖怪も悪い妖怪も一緒くたに退治されることも、人間が虐殺されることも、どちらも等しく許してはならない。
人も魔も、対等な立場で互いを理解し合う世界。
それこそが永劫に続く光と闇の争いを終結させる方法ではないのか。
「セイバー、私とともに、人も妖怪もみなが共に暮らせる世界を目指してみませんか。
願わくばそれが、あなたの救いとなりますように―――」
>はい
いいえ
再び希望を胸に灯し、蒼穹の勇者は差し出された白い手を握る。
―――我が道筋に、光明を得たり。“勇者伝説の始祖”は、再び剣を取る。
【クラス】セイバー
【真名】勇者ロト(DRAGON QUESTⅢ ~そして伝説へ~)
【属性】秩序・善
【性別】???
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具A
【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。
鎧の効果により大幅にランクアップしており、火炎や氷結への耐性の他
非戦闘時に限りHPを自動回復する効果(オートリカバー)も含まれる。
騎乗:A
セイバークラスに現界したことでランクダウン。
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
【保有スキル】
勇者:A+++
正しき精神と信念を持ち、英雄的運命を辿る勇気ある者。
悪に組みせず屈せず、属性が悪である相手からの精神干渉を無効化する。
また良し悪しを別にして異常な事態や状況を招きやすい。
勇者伝説の始祖とも言えるセイバーの勇者としての格は、最高クラスと言える。
精霊の加護:A
精霊ルビスからの祝福により、危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる能力。
その発動は悪しき者どもとの戦いのみに限定される。
見切り:B
敵の攻撃に対する学習能力。
相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、
同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。
但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。
【宝具】
『闇祓う蒼穹の神器(フォース・オブ・ロト)』
ランク:D~A 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~100人
かつて大魔王を討伐した際に使用した勇者の剣、鎧、盾、兜、装飾品の総称。
鎧は各種耐性を付与し、兜には真名秘匿効果が含まれる。
中でもオリハルコン製の聖剣、『王者の剣(ソード・オブ・ロト)』は勇者に対する救世の信仰と、
精霊ルビスからの祝福によりランクアップしている。
またあまりに多くの魔物を斬ってきたために、“魔”に類する対象に対して追加ダメージを与える。
真名開放を行うことで、全てを斬り刻む大竜巻を発生させるが、使用した瞬間セイバーの真名は露呈してしまうだろう。
【Weapon】
ロトの装備のみ。呪文はクラス制限に引っかかるため置いてきた。
【人物背景】
ドラゴンクエストⅢの主人公。初代勇者であり、勇者伝説の始祖。
仲間と共に各地を周りオーブを集め、全世界に平和をもたらした。
しかし大魔王討伐後、自らの装備品を残し大衆の前から忽然と姿を消してしまう。
その後人知れず死去し英霊の座に昇るが、果てなく続く“勇者と魔王”の戦いに精神を摩耗させる。
性格は恐ろしく無口であり、基本「はい」「いいえ」か、「バッチリがんばれ」など極簡単な作戦命令しか行わない。
ただの口下手なのかもしれない。
【サーヴァントとしての願い】
永劫に続く“勇者と魔王”の物語を終結させる。
【基本戦術、方針、運用法】
『最優のクラス』に相応しく安定したパラメータを誇る。
どの相手とも安定して戦える能力を持つが、『王者の剣』の真名解放を行った場合、
真名が完全に露呈してしまうというリスクを秘めている。
呪文は置いて来ているため、マスターとともに接近戦で「ガンガンいこうぜ」
しかしマスター、サーヴァントと共に戦略・戦術的方面には決して明るくはない。
聖は戦闘を生業としているわけではないし、ロトも最大4人までの冒険・戦闘指揮経験しかないためである。
「戦争」であるこの戦いにおいて、戦略に疎いという点は致命的な弱みとなり得る。
【備考】
彼の真名は『ああああ』、『くっきい』、『アベル』、『あまの』など複数の説が存在し、
またその性格も『ねっけつかん』、『きれもの』、『おちょうしもの』、『むっつりスケベ』など伝承によりまったく異なっている。
便宜上“彼”と記しているが、当然のように女性説が存在しているため、セイバーの性別すら不明となっている。
この逸話から真名はもちろん宝具や固有スキルといった重要な情報を隠蔽する能力が兜に付与されており、
手にした剣の意匠から敵が真名を想起するのを阻害する。
(というかご丁寧にも刀身に『DRAGON QUEST』とルーン文字で刻まれているため、この能力がないと真名が即バレする)
勇者としての名だけが伝えられ、真実の姿が消失してしまったことから得た能力。
―――ただロトという称号のみが残る。
※ロトの兜については『鉄仮面説』、リメイク版での『オルテガの兜説』などが存在しますが、ここでは前者を採用しています。
(グラフィック的には後年(ドラクエ1・2時代)に作り直されたのかも)
(というか『オルテガの兜』だったとしても、オルテガのグラが覆面パンツなのでやっぱり顔を隠すタイプの兜なんじゃ(ry)
※見切り能力はセーブ&ロードや、ゲームを攻略するプレイヤー側の学習・対応能力として付与しました。
【マスター】
聖白蓮@東方Project
【参加方法】
空飛ぶ穀倉「飛倉(とびくら)」からゴフェルの木片を入手。
かつては「空を飛ぶ力を持った宝物の数々」「人間を改心させる宝物」など法力のこもった宝物や物品等などが大量に所蔵されていたようだが、白蓮が封印されている間に賊によって奪われ、世界に散り散りになり失われてしまったらしい。
その中で残っていた、数少ない宝物の一つがこの『方舟』の一部、ゴフェルの木片である。
【マスターとしての願い】
人も妖怪も平等に生きられる世界の実現。
しかし人妖平等といっても対象は弱い虐げられてる妖怪である。人間側に一方的な譲歩を強いるものではない。
彼女が仏教を教えているのも、仏教の世界では人間が死を迎えても消えてなくなるわけではないという考え方を妖怪にも教える事で、存在を高めて妖怪が自分の力や存在の維持の為に人に危害を加える事や怖れさせる事で存在を誇示するという事が必要なくなるようにするためである。
【weapon】
「魔人経巻(まじんきょうかん)」
聖が所有する虹色の巻物。エア巻物。聖の能力の補助であり要。
振りかざしただけでお経を唱えた事になる無詠唱機能(オート読経モード)を搭載している。
長大な経典を上から下に流し開くことによって“読み上げた”と見立てる、「転読」と呼ばれるお経の読み方の一種の応用。
【能力・技能】
魔法を使う程度の能力。
しかし一般的にイメージされる魔法使いとは違い、その傾向は身体能力の向上に重きを置いている。
独鈷杵を柄に見立て、ビームサーベルによる斬撃も行うなど格闘戦のエキスパートである。
ちなみに能力を使わない時の身体能力は普通の人間と変わらない。
そのため彼女と交戦するならばそこを襲うべきである。(by東方求聞史紀著者)
※型月的な設定と照らし合わせるならば、「魔術を使う程度の能力」である。
【人物背景】
実在する伝説の僧侶、命蓮上人の実姉。
弟である彼から法力を学ぶが、命蓮の死を切欠に死を極端に恐れるようになり、法術ではなく妖力、魔力の類により若返りと不老長寿の力を手に入れた。
性格は礼儀正しく温厚、包容力を有する、まさに聖人と呼ばれるような人物。
その人柄ゆえに人間からの人望も非常に厚かったが、不当な迫害を受ける妖怪達を保護していたことが露見すると一転、悪魔扱いされ魔界に封印された過去を持つ。
博愛主義者であるが、人間にはこの限りではない場合も多い。
事実、『東方星蓮船』BADエンドでは霊夢、早苗、魔理沙の三人が魔界に監禁され、彼女の思想に影響を受けたり。
(これは彼女たちが幻想郷において、『強者』に分類されるからかもしれないが……)
【方針】
力も方便。「ガンガンいこうぜ」
まずはセイバーの力の程を試してみたい。
※聖たちは現在ムーンセルにより再現された「命蓮寺」を拠点としているようです。
※幻想郷から脱しているため、聖の能力が劣化していたり、燃費が悪化している可能性があります。
----
|BACK||NEXT|
|002:[[真玉橋孝一&セイバー]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|004:[[シャア・アズナブル&アーチャー]]|
|002:[[真玉橋孝一&セイバー]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|004:[[シャア・アズナブル&アーチャー]]|
|BACK|登場キャラ|NEXT|
|&color(yellow){参戦}|[[聖白蓮]]&セイバー([[勇者ロト]])|067:[[勇者の邂逅、聖者の会合]]|