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悦楽と嘘に焼かれて死んでいけ。  ◇  ◇  ◇ 「いやぁ~。記憶ッ、問題ナッシング!」 走り鳰は何の起伏もなしに記憶を取り戻した。 代わり映えのない一日、適度に満たされた環境。 それらは鳰にとって幸せな空間だったが、障害足り得なかった。 屑紙程度の感傷しかないものに、何を抱けというのか。 与えられたものに満足して人混みに埋没していけたらどんなによかったことか。 「自我を強く持て。どんな時でも心は冷たく。暗殺者の基本っスね」 蒼一色の空が徐々に夕焼けの朱色へと解ける空の下、学校の屋上で鳰は皮肉げに顔を歪め、嘲笑う。 な~に一流の暗殺者ぶってるんだ、クソッタレとありったけの侮蔑を自分にぶつけ、転がっている石ころを脚で蹴飛ばした。 くるくると宙に舞う石ころを見て、彼女は何の気なしに思いを馳せる。 聖杯戦争。サーヴァント。願いを懸けた殺し合い。戦わなければ生き残れない。 頼んでもいないのに、幾つものキーワードが頭に流れこんでくる。 「ウチは兎角さんに刺されて死んだはずなんすけど……何の因果か地獄行きの列車から放り出されたみたいっスね」 鳰は脳内に流れてくる全てを一言で切り捨てる。 どうでもいいのだ、こんな戯言じみた雑念は。 問題は唯一つ。死んだはずの自分が再び生き延びるチャンスを掴むことが出来た。ただ、それだけだ。 ある意味真っ直ぐな彼女達を裏切ったクソ野郎にはお似合いの結末を迎え、それなりに満足していた。 されど、勝手に生き返らせて、その結末を良しとしないお月様にはたまったものではない。 自分の終わり方ぐらい自分で決める。誰かに強制された結末などまっぴらごめんである。 「別に、死んじゃってもそれはそれで良かったんすけどねぇ~。ま、せっかく拾った命、大事にしないと損っスけど。  どうせ、暗殺稼業で冥土に行く前の小休止。ウチに何を求めてるかは知らないけど精一杯楽しませてもらいますよん」 ひひっと小気味の良い笑い声を上げながら、鳰は天高く伸ばした手で月を掴む。 それは宣誓。どう足掻いても変わりやしない自分の畜生っぷりを魅せる始まりの言の葉。 「此処にいる奴等の願いは全てウチが面白可笑しくいじってもらいま~~~~っす!  ハッ、地獄のがらくた市に並べて大安売りってね。うははっ、こいつは愉快っスねぇ!」 走り鳰は在るがままで在り続ける。彼女が動く理由など、それで十全。 ニコニコ笑顔で踏み潰せるだけの胆力も、弁論も自分は備えている。 三流暗殺者も突き詰めれば、大物食いだってできるのだから。 「……や、ウチみたいな小物を入れるなんて月の聖杯さんもヤキが回ったとは思ってますけど。  こういう絶対に負けが許されない戦争にウチを呼ぶたァね。探せば、もっと適任はいるだろうに。  春紀さんみたいなバカ真面目な人なら涙を流して縋るんでしょうけど」 人の命も願いも拍子抜けするぐらい軽いものだ。 流行りのマンガにテレビドラマ、アニメやゲーム、全てに共通してモブキャラに存在価値は露程もない。 ただ其処に置かれているに過ぎないものに思いを馳せるなどある訳もなく、さらっと終わりを迎えるだろう。 そして、自分達が生きている世界と何の変わりもないのだ。 どうでもいいことに真剣になって、好きでもない異性に媚び諂って、譲れない信念とかに殉じて死んでいったりとか。 結局、人生に彩りなんて無い。楽しんじゃいけないのだ、現実を。 そんな人生に対して、真面目に向きあうだけ損なだけだ。 鳰は如何にもな軽い少女を演じていながらも、常にそう感じていた。 「くふふ、でもまあそれもまた運命なんすかねぇ。生憎と、そんなの信じちゃいないっスけど」 人の命の重さなんて、メロンパンの金額よりも軽いのかもしれない。 事実、鳰にとって他人とは、命とは、その程度の認識にすぎない。下らな過ぎて反吐が出る、命なんて。 面白くもないことに笑わざるを得ない世界が、後生大事に持っている宝物が簡単に奪われる世界が――おかしくておかしくてたまらない。 鳰は心の赴くままに楽しんでいる。自分を殺すであろう咎に溢れた人生に。自分を脅かすものが無数にある環境に。 「鳰ちゃん無神論者なんでぇ~、ごめんちゃいっ」 だから、鳰は暗殺者に対して笑顔で向き合える。 人生をより良く楽しめる可能性があるが故に。 この修羅場ならば、自分を燃え上がらせてくれる何かがあると熱を感じたから。 「まっ、この月に呼んだ神様にはプチメロ一個分ぐらいは感謝してやってもいいっスけどねぇ~。  どうせならこんなとこに呼ばなけりゃなおよかったっス」 無論、鳰にとって人を殺した経験など数え切れない。 イチイチ覚えていられないぐらいには誰かの命を踏み躙った上でここにいる。 殺人処女なんてとっくに捨てた鳰は、何の躊躇いもなく人を殺せるし利用できるだろう。 普通ならば、殺人を未知の領域、ファンタジーの領域と考えるだろうが、鳰には現実なのだ。 だから、恐怖もない。在るのは漠然とした作業感だけ。 人を殺してみたらどうなるとか、何にも感じやしない。 自分の中で渦巻いている諦観は、どうにもならない所まで蔓延っているのだから。 「そんで、いつまでだんまり決め込んでるんスか? サーヴァントさん?」 「ああ、今回の雇い主さんはどんな風か観察してたんでね。大事だろ、第一印象は?」 「大事っスね。貴方が喋らないせいでウチの心象どん底なんすけどその辺どうなんでしょうか」 「かはははっ、わりぃわりぃ。んじゃ、今度は俺が口を開く番みてーだなぁ」 そして、それは相対するサーヴァントも同じだった。 伸びきった卑下にボサボサの長髪、口元に浮かべる下衆な笑み。 どれをとっても、品行方正とは言えない下品なものである。 「ライダーのサーヴァント、アリー・アル・サーシェス。只今推参致しました、レディ?」 「うっわー、全然似合わないっスねぇ~……」 「うっせぇな、こういうのは気分だろ、気分。  まあ、ともかくだ。俺と気が合いそうな依頼主様で運がいいってことでここは一つ」 「ということは?」 まるで獰猛な野犬を相手にしているようだ。 鳰としてはここまで分かりやすいとある意味相対していて楽だから特段に気にはしていないが、一般人からするとたまったものではないだろう。 そんな鳰の気持ちなどお構いなしに、汚い笑い声を上げながら、サーシェスは舌なめずりをしながら言葉を続けていく。 「戦争屋さ、戦争を愛してやまないイカした男よ。当然、願いもこの聖杯戦争を大いに楽しむ。  強いて言えば、聖杯には楽しい楽しい戦争さんがずっと終わらない世界を作ってもらうかねぇ」 「ひゃー、モノホンのジャンキーじゃないっスか、くわばらくわばら」 「そういうことさ。詰まるところ、依頼主様と一緒に楽しみましょうってことだ。それ以上でもそれ以下でもねぇ」 「はいはい、了解致しましたよっと。んじゃ、そういう感じで――ウチも行動を取らせてもらいます」 互いに、口を釣り上げて笑う様は、傍から見たらただの悪人だろう。 だけど、仕方がないではないか。 胸に迸った欲望が鼓動を早くする。煩いぐらいに鳴り響く心音が、囁いている。 騒乱を想起させる戦争に委ねてしまえ。この世の中、楽しんだもの勝ちだと。 「ライダーさん……大いに楽しみましょうか、この戦争。とは言っても、無理は禁物。  無茶ならまだしも、ウチらの命はあくまで一つだけなんすからそこんところは頼むっスよ?」 「オーケー、大将。この時を以って俺はアンタの傘下に入ると誓うぜ。  もっとも、死んだら終わりだ。慎重に、かつ大胆にいこうか。なぁに、俺らならできるさ。  その行為に足る実力を俺らは備えている訳なんだからよォ」 そして、騒乱に恋い焦がれた激情が、自然と口を釣り上げてしまう。 歓喜が理性を蹴り飛ばし、目からは欲望の意志がどくどくと溢れている。 「そういうことっスね。機と場が揃う前は潜伏」 「揃ったら一気に出る。状況によっては同盟、裏切り、策謀を楽しむってことで」 「理解が速くて助かるっス。じゃ、今はまだウチも善良な学生を演じさせてもらいますよっ」 その言葉を終わりに、サーシェスは霊体化し、屋上には鳰一人が取り残された。 夕焼けの下、くつくつと笑い声を上げる彼女の姿は異様。 されど、戦争に向かう者としては合格なのだろう。 それがおかしかったのか、サーシェスの大笑いが脳内に聞こえてくる。 「さってと、じゃあ日常生活に戻らさせていただきますかねぇ~」 そうして、走り鳰は今まで貼り付けていた善良な笑みを浮かべ、屋上を後にした。 教室に戻ると、親友の役柄を演じているNPCが駆け寄ってくる。 ああ、普通だ。この娘は何の疑いもなく自分が一学生だと感じているのだ。 それが、偽物か本物かを全く疑いもせずに。 「どうしたの? 放課後になった途端に教室を飛び出しちゃって」 「いんや、何でもないっスよ~。鳰ちゃんは全然いっつも通りっ」 けれど、それでいい。 まだ記憶を取り戻していないのか、それとも本物のNPCなのか知らないけれど、邪魔をしない限りは鳰の敵ではない。 もっとも、何かの過程で利用なり始末するなりあるかもしれないが、そこはご愛嬌だ。 安心して死んでくれて構わない。 「ま、いいわ。それよりも早く帰ろう? 今日は帰りにクレープでも食べようよー」 「りょーかいりょーかーいっ。んじゃまぁ、ちゃっちゃっと行きましょうっ」 偽りの親友に対して放った言葉は、これまでの日常で見せてきたものと変わらない“走り鳰”だった。 ちろりと出した舌は、いつもより風を冷たく感じさせた。 【クラス】ライダー 【真名】アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダム00 【パラメーター】 筋力D 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具C 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】  騎乗:C  人が作ったものならば、大抵は乗りこなせる。  対魔力:E   騎兵のクラスに付与される対魔力。無効化はできないが、ダメージをいくらか低減できる。 【保有スキル】 戦闘続行:A 戦闘を続行する為の能力。 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。 裏工作:A 傭兵として各地を転戦していたことから裏方はお手の物。 トラップの設置や、逃走といった表に出ない技能に優れている。 【宝具】 『アルケーガンダム』 ランク:C 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1~100 最大補足:30人 異様に長く巨大な手足に反比例して細い胴体、四つ目が特徴の機動兵器。 主装備はライフルモードにもなるGNバスターソードとスカートアーマー内に10機搭載しているGNファングである。 その他にも両爪先にGNビームサーベルを隠し武器として装備。 また、背部に脱出用の小型戦闘機を装備しているが、疑似太陽炉を搭載していないため、 飛行限界はGNコンデンサーに蓄えられた粒子量に依存する。 今回は粒子量は魔力量に変換されるので宝具の動きは魔力が重要となってくる。 【weapon】 拳銃……何の変哲もない。 ナイフ……あくまで頑丈なだけのナイフ。 【人物背景】 数多の戦場を渡り歩く凄腕の傭兵。 戦いの主義主張には一切興味が無く、ただ金と戦場のスリルを求めて動く姿はまるで戦争屋。 戦場では思いのままに多くの殺戮や非人道的行為を行って楽しんでいた。 主人公である刹那の戦闘の師とも言える存在。 【サーヴァントとしての願い】 戦争を。一心不乱の争いを永遠にする。 【基本戦術、方針、運用法】 聖杯戦争を楽しむスタンス。序盤は情報集めだったりと、裏で動くこともあるが、好機と見れば普通に戦闘も行う。 宝具であるガンダム、ある程度の白兵戦を中心に敵を狩るだろう。 ただ、死んでしまったら終わりだと理解はしているので、無謀な真似はせず、撤退はきちんとする。 【マスター】走り鳰@悪魔のリドル 【参加方法】何の気なしにゴフェルの木片を持っていた。 【マスターとしての願い】面白可笑しく生きたい。 【weapon】 拳銃。 ナイフ。 【能力・技能】 催眠術……走り鳰の暗殺術。相対する人物に幻覚を見せ、自身を別人と錯覚させることで暗殺、洗脳を行う。      毒物や催眠作用のある光、タトゥーを使うと効果は上昇する。 【人物背景】 ノリが軽く、人懐っこい態度の少女。 だが、その態度の中でも時折不気味な笑顔を浮かべており、黒組に所属する少女達からは疎まれることもある。 そして、他の少女達と同じく暗殺者。暗殺に関する名門一族の一人である。 全身に催眠を誘発するタトゥーを彫っており、人前で服を脱がないし、普段着ている制服も長袖黒タイツと着込んでいる。 サービスシーンである水着回でも肌を見せなかった。 【方針】 聖杯戦争を楽しむ。ただし、命大事に。
                                      悦楽と嘘に焼かれて死んでいけ。  ◇  ◇  ◇ 「いやぁ~。記憶ッ、問題ナッシング!」 走り鳰は何の起伏もなしに記憶を取り戻した。 代わり映えのない一日、適度に満たされた環境。 それらは鳰にとって幸せな空間だったが、障害足り得なかった。 屑紙程度の感傷しかないものに、何を抱けというのか。 与えられたものに満足して人混みに埋没していけたらどんなによかったことか。 「自我を強く持て。どんな時でも心は冷たく。暗殺者の基本っスね」 蒼一色の空が徐々に夕焼けの朱色へと解ける空の下、学校の屋上で鳰は皮肉げに顔を歪め、嘲笑う。 な~に一流の暗殺者ぶってるんだ、クソッタレとありったけの侮蔑を自分にぶつけ、転がっている石ころを脚で蹴飛ばした。 くるくると宙に舞う石ころを見て、彼女は何の気なしに思いを馳せる。 聖杯戦争。サーヴァント。願いを懸けた殺し合い。戦わなければ生き残れない。 頼んでもいないのに、幾つものキーワードが頭に流れこんでくる。 「ウチは兎角さんに刺されて死んだはずなんすけど……何の因果か地獄行きの列車から放り出されたみたいっスね」 鳰は脳内に流れてくる全てを一言で切り捨てる。 どうでもいいのだ、こんな戯言じみた雑念は。 問題は唯一つ。死んだはずの自分が再び生き延びるチャンスを掴むことが出来た。ただ、それだけだ。 ある意味真っ直ぐな彼女達を裏切ったクソ野郎にはお似合いの結末を迎え、それなりに満足していた。 されど、勝手に生き返らせて、その結末を良しとしないお月様にはたまったものではない。 自分の終わり方ぐらい自分で決める。誰かに強制された結末などまっぴらごめんである。 「別に、死んじゃってもそれはそれで良かったんすけどねぇ~。ま、せっかく拾った命、大事にしないと損っスけど。  どうせ、暗殺稼業で冥土に行く前の小休止。ウチに何を求めてるかは知らないけど精一杯楽しませてもらいますよん」 ひひっと小気味の良い笑い声を上げながら、鳰は天高く伸ばした手で月を掴む。 それは宣誓。どう足掻いても変わりやしない自分の畜生っぷりを魅せる始まりの言の葉。 「此処にいる奴等の願いは全てウチが面白可笑しくいじってもらいま~~~~っす!  ハッ、地獄のがらくた市に並べて大安売りってね。うははっ、こいつは愉快っスねぇ!」 走り鳰は在るがままで在り続ける。彼女が動く理由など、それで十全。 ニコニコ笑顔で踏み潰せるだけの胆力も、弁論も自分は備えている。 三流暗殺者も突き詰めれば、大物食いだってできるのだから。 「……や、ウチみたいな小物を入れるなんて月の聖杯さんもヤキが回ったとは思ってますけど。  こういう絶対に負けが許されない戦争にウチを呼ぶたァね。探せば、もっと適任はいるだろうに。  春紀さんみたいなバカ真面目な人なら涙を流して縋るんでしょうけど」 人の命も願いも拍子抜けするぐらい軽いものだ。 流行りのマンガにテレビドラマ、アニメやゲーム、全てに共通してモブキャラに存在価値は露程もない。 ただ其処に置かれているに過ぎないものに思いを馳せるなどある訳もなく、さらっと終わりを迎えるだろう。 そして、自分達が生きている世界と何の変わりもないのだ。 どうでもいいことに真剣になって、好きでもない異性に媚び諂って、譲れない信念とかに殉じて死んでいったりとか。 結局、人生に彩りなんて無い。楽しんじゃいけないのだ、現実を。 そんな人生に対して、真面目に向きあうだけ損なだけだ。 鳰は如何にもな軽い少女を演じていながらも、常にそう感じていた。 「くふふ、でもまあそれもまた運命なんすかねぇ。生憎と、そんなの信じちゃいないっスけど」 人の命の重さなんて、メロンパンの金額よりも軽いのかもしれない。 事実、鳰にとって他人とは、命とは、その程度の認識にすぎない。下らな過ぎて反吐が出る、命なんて。 面白くもないことに笑わざるを得ない世界が、後生大事に持っている宝物が簡単に奪われる世界が――おかしくておかしくてたまらない。 鳰は心の赴くままに楽しんでいる。自分を殺すであろう咎に溢れた人生に。自分を脅かすものが無数にある環境に。 「鳰ちゃん無神論者なんでぇ~、ごめんちゃいっ」 だから、鳰は暗殺者に対して笑顔で向き合える。 人生をより良く楽しめる可能性があるが故に。 この修羅場ならば、自分を燃え上がらせてくれる何かがあると熱を感じたから。 「まっ、この月に呼んだ神様にはプチメロ一個分ぐらいは感謝してやってもいいっスけどねぇ~。  どうせならこんなとこに呼ばなけりゃなおよかったっス」 無論、鳰にとって人を殺した経験など数え切れない。 イチイチ覚えていられないぐらいには誰かの命を踏み躙った上でここにいる。 殺人処女なんてとっくに捨てた鳰は、何の躊躇いもなく人を殺せるし利用できるだろう。 普通ならば、殺人を未知の領域、ファンタジーの領域と考えるだろうが、鳰には現実なのだ。 だから、恐怖もない。在るのは漠然とした作業感だけ。 人を殺してみたらどうなるとか、何にも感じやしない。 自分の中で渦巻いている諦観は、どうにもならない所まで蔓延っているのだから。 「そんで、いつまでだんまり決め込んでるんスか? サーヴァントさん?」 「ああ、今回の雇い主さんはどんな風か観察してたんでね。大事だろ、第一印象は?」 「大事っスね。貴方が喋らないせいでウチの心象どん底なんすけどその辺どうなんでしょうか」 「かはははっ、わりぃわりぃ。んじゃ、今度は俺が口を開く番みてーだなぁ」 そして、それは相対するサーヴァントも同じだった。 伸びきった卑下にボサボサの長髪、口元に浮かべる下衆な笑み。 どれをとっても、品行方正とは言えない下品なものである。 「ライダーのサーヴァント、アリー・アル・サーシェス。只今推参致しました、レディ?」 「うっわー、全然似合わないっスねぇ~……」 「うっせぇな、こういうのは気分だろ、気分。  まあ、ともかくだ。俺と気が合いそうな依頼主様で運がいいってことでここは一つ」 「ということは?」 まるで獰猛な野犬を相手にしているようだ。 鳰としてはここまで分かりやすいとある意味相対していて楽だから特段に気にはしていないが、一般人からするとたまったものではないだろう。 そんな鳰の気持ちなどお構いなしに、汚い笑い声を上げながら、サーシェスは舌なめずりをしながら言葉を続けていく。 「戦争屋さ、戦争を愛してやまないイカした男よ。当然、願いもこの聖杯戦争を大いに楽しむ。  強いて言えば、聖杯には楽しい楽しい戦争さんがずっと終わらない世界を作ってもらうかねぇ」 「ひゃー、モノホンのジャンキーじゃないっスか、くわばらくわばら」 「そういうことさ。詰まるところ、依頼主様と一緒に楽しみましょうってことだ。それ以上でもそれ以下でもねぇ」 「はいはい、了解致しましたよっと。んじゃ、そういう感じで――ウチも行動を取らせてもらいます」 互いに、口を釣り上げて笑う様は、傍から見たらただの悪人だろう。 だけど、仕方がないではないか。 胸に迸った欲望が鼓動を早くする。煩いぐらいに鳴り響く心音が、囁いている。 騒乱を想起させる戦争に委ねてしまえ。この世の中、楽しんだもの勝ちだと。 「ライダーさん……大いに楽しみましょうか、この戦争。とは言っても、無理は禁物。  無茶ならまだしも、ウチらの命はあくまで一つだけなんすからそこんところは頼むっスよ?」 「オーケー、大将。この時を以って俺はアンタの傘下に入ると誓うぜ。  もっとも、死んだら終わりだ。慎重に、かつ大胆にいこうか。なぁに、俺らならできるさ。  その行為に足る実力を俺らは備えている訳なんだからよォ」 そして、騒乱に恋い焦がれた激情が、自然と口を釣り上げてしまう。 歓喜が理性を蹴り飛ばし、目からは欲望の意志がどくどくと溢れている。 「そういうことっスね。機と場が揃う前は潜伏」 「揃ったら一気に出る。状況によっては同盟、裏切り、策謀を楽しむってことで」 「理解が速くて助かるっス。じゃ、今はまだウチも善良な学生を演じさせてもらいますよっ」 その言葉を終わりに、サーシェスは霊体化し、屋上には鳰一人が取り残された。 夕焼けの下、くつくつと笑い声を上げる彼女の姿は異様。 されど、戦争に向かう者としては合格なのだろう。 それがおかしかったのか、サーシェスの大笑いが脳内に聞こえてくる。 「さってと、じゃあ日常生活に戻らさせていただきますかねぇ~」 そうして、走り鳰は今まで貼り付けていた善良な笑みを浮かべ、屋上を後にした。 教室に戻ると、親友の役柄を演じているNPCが駆け寄ってくる。 ああ、普通だ。この娘は何の疑いもなく自分が一学生だと感じているのだ。 それが、偽物か本物かを全く疑いもせずに。 「どうしたの? 放課後になった途端に教室を飛び出しちゃって」 「いんや、何でもないっスよ~。鳰ちゃんは全然いっつも通りっ」 けれど、それでいい。 まだ記憶を取り戻していないのか、それとも本物のNPCなのか知らないけれど、邪魔をしない限りは鳰の敵ではない。 もっとも、何かの過程で利用なり始末するなりあるかもしれないが、そこはご愛嬌だ。 安心して死んでくれて構わない。 「ま、いいわ。それよりも早く帰ろう? 今日は帰りにクレープでも食べようよー」 「りょーかいりょーかーいっ。んじゃまぁ、ちゃっちゃっと行きましょうっ」 偽りの親友に対して放った言葉は、これまでの日常で見せてきたものと変わらない“走り鳰”だった。 ちろりと出した舌は、いつもより風を冷たく感じさせた。 【クラス】ライダー 【真名】アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダム00 【パラメーター】 筋力D 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具C 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】  騎乗:C  人が作ったものならば、大抵は乗りこなせる。  対魔力:E   騎兵のクラスに付与される対魔力。無効化はできないが、ダメージをいくらか低減できる。 【保有スキル】 戦闘続行:A 戦闘を続行する為の能力。 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。 裏工作:A 傭兵として各地を転戦していたことから裏方はお手の物。 トラップの設置や、逃走といった表に出ない技能に優れている。 【宝具】 『アルケーガンダム』 ランク:C 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1~100 最大補足:30人 異様に長く巨大な手足に反比例して細い胴体、四つ目が特徴の機動兵器。 主装備はライフルモードにもなるGNバスターソードとスカートアーマー内に10機搭載しているGNファングである。 その他にも両爪先にGNビームサーベルを隠し武器として装備。 また、背部に脱出用の小型戦闘機を装備しているが、疑似太陽炉を搭載していないため、 飛行限界はGNコンデンサーに蓄えられた粒子量に依存する。 今回は粒子量は魔力量に変換されるので宝具の動きは魔力が重要となってくる。 【weapon】 拳銃……何の変哲もない。 ナイフ……あくまで頑丈なだけのナイフ。 【人物背景】 数多の戦場を渡り歩く凄腕の傭兵。 戦いの主義主張には一切興味が無く、ただ金と戦場のスリルを求めて動く姿はまるで戦争屋。 戦場では思いのままに多くの殺戮や非人道的行為を行って楽しんでいた。 主人公である刹那の戦闘の師とも言える存在。 【サーヴァントとしての願い】 戦争を。一心不乱の争いを永遠にする。 【基本戦術、方針、運用法】 聖杯戦争を楽しむスタンス。序盤は情報集めだったりと、裏で動くこともあるが、好機と見れば普通に戦闘も行う。 宝具であるガンダム、ある程度の白兵戦を中心に敵を狩るだろう。 ただ、死んでしまったら終わりだと理解はしているので、無謀な真似はせず、撤退はきちんとする。 【マスター】走り鳰@悪魔のリドル 【参加方法】何の気なしにゴフェルの木片を持っていた。 【マスターとしての願い】面白可笑しく生きたい。 【weapon】 拳銃。 ナイフ。 【能力・技能】 催眠術……走り鳰の暗殺術。相対する人物に幻覚を見せ、自身を別人と錯覚させることで暗殺、洗脳を行う。      毒物や催眠作用のある光、タトゥーを使うと効果は上昇する。 【人物背景】 ノリが軽く、人懐っこい態度の少女。 だが、その態度の中でも時折不気味な笑顔を浮かべており、黒組に所属する少女達からは疎まれることもある。 そして、他の少女達と同じく暗殺者。暗殺に関する名門一族の一人である。 全身に催眠を誘発するタトゥーを彫っており、人前で服を脱がないし、普段着ている制服も長袖黒タイツと着込んでいる。 サービスシーンである水着回でも肌を見せなかった。 【方針】 聖杯戦争を楽しむ。ただし、命大事に。

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