第十章 まさし


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しょうへいの家へ帰っている途中。
あと少しで家・・・というところでしょうへいの家から黒ずくめの男が玄関の門から出て

きてすれ違った。

(うちでなにやってたんだアイツ?しかもなんか生臭いし・・・)

家につきいつもの癖でポストを確認するガッキー。
しょうへいに初めてラブレターがきたあの日から毎日こうやって監視しているのだった。

(ん?)
ポストには黄色い箱。

(んだこりゃ。まさかしょうへいに贈り物・・・)

家に入り急いでリビングへ行き箱を置いて、三枝子のコレクションがうなりをあげている

武器庫で適当な引き出しから鉈を拝借してきた。
引き出しには
{銘刀 磨螺鉈 
 作者・・城能}

と書かれていた。

「ブッフーブッブブブッフフーーー」
息ずかいを荒ませながら一気に箱を切り裂くガッキー。

中には一枚の紙とカセットテープ。
紙はどうやら歌詞カードのようだ。

歌詞カードをみてみるガッキー。



~三枝子~

三枝子!三枝子!三枝子!三枝子!

三枝子三枝子三枝子

僕の腕の中で寝息をたてて眠る
三枝子三枝子三枝子 ねえ、三枝子
この世界は美しいね
君が嘆いている
消えてしまいたいと
僕は止められない
あぁ、あぁ、それなのに

ねえ、三枝子
君を放っておけない
僕の指を噛む三枝子
あぁ、三枝子
君の夢を見させて
今夜はずっと ただ三枝子を抱いてる

三枝子三枝子三枝子
僕の夢の中で光を浴びて踊る
三枝子三枝子三枝子 ねぇ、三枝子
この世界は美しいね
君が叫んでいる
全て偽物だと
間違っていない
あぁ、あぁ、それなのに
ねぇ、三枝子
君を無下にできない
僕の腰を抱く三枝子
あぁ、三枝子
君の温もり浴びて
今夜もきっと あぁ三枝子を抱いてる
三枝子!三枝子!三枝子!三枝子!
三枝子!三枝子!三枝子!三枝子!
三枝子!三枝子!三枝子!三枝子!
三枝子!三枝子!三枝子!三枝子!
君が疑うなら
形にしようよ
一緒に暮らそう
あぁ、あぁ、離れない
ねえ、三枝子
君を家族にさせて
面倒見るよ ねえ、まさし
あぁ、まさし
君を閉じ込めさせて
これからずっと あぁ三枝子愛してる
三枝子!三枝子!三枝子!三枝子!


~~~~~~~~~~~~~

「なんっだこの、、、、歌は…・
かあ、、、さん、、。、の歌?
なら一応・・・」
そういってカセットテープをセットしようとするガッキー。

バタンッ!
勢いよく扉が開くと般若のような恐ろしい形相の三枝子が立っていた。
ズカズカとあきのりに近づきそれらを取り上げる三枝子。
「かあさん、、、
それはいったい・・・?」

「これはね、警告よ…・
ある男からのね・・・」

「ある男って?」

「そろそろ話すときかしら…
男の名は斉藤涼!通称ファンデ
お母さんがすすむの前に付き合ってた人よ」

「でもなんでその人からこんなものが送られてくるの?
かあさんもしかして脅されてるの?」

三枝子は一瞬ためらった…
あきのりにどこまで教えるべきなのか
すべてを知ったらあきのりもファンデに何かされるのではないかと思ったからだ。

そして決心して三枝子は話しはじめた。

「そう今から26年前のこと…

当時私は、国営の最先端極秘技術開発局に携わっていたわ。

そしてある日、韓国から、若くして超天才技術師とうたわれた人物が赴任してきた。
そう、それが彼…

開発局は極秘の存在だったから、メンバーそれぞれに偽名が与えられていたの…。
彼に与えられた偽名が『斎藤 涼』。


そして、彼は日本にくるなり、偉大な…
いや…この世を激動させる発明をしたわ。

当時、日本は不況による失業者の自殺や、残された遺族が精神的に追い詰められるケース

があとを絶たなかった。

そんな荒んだ社会に終止符を打つために彼が開発したのが

『P-ウィルス』

正式名称、ペチンガー・ウィルス…
その薬は『人間のあらゆる負の感情に反応し、それを活力に変える』というものだった…


P-ウィルス…
当時の技術では到底つくることなどできない代物だったわ。

だから、そんな絵に描いた餅のような開発案を出した彼は他の研究員からバカにされたわ


私もその時はかわいそうな人ね、としか思っていなかった。

当然、彼の研究に付き合うという者などおらず、彼はたった一人で研究をつづけた。


来る日も来る日も惨めな背中を見ていた私は、ある日、声をかけてみたの。

『なんで、そこまでして研究を続けるの?
いくらあなたが天才と言えど、こんな技術、絶対無理よ!!

あなた、影でみんなからなんて言われてるか知ってる!?

孤独が…

辛くないの?…』


『……

無理とか…そういうことじゃないんだ…

僕たちがこうやって平穏な日常を送っている間に、家族を失った悲しみ、孤独にうちひし

がれてる人がごまんといるんだ…

孤独は辛い…


だからこそ…

だからこそ!!

僕はみんなを救わなくちゃいけないんだ!!!



そしてみんなに笑顔で

ケナンチェヨ

そう言わせてみせるんだ』

『ケナンチェヨ…?』

『あぁ…
韓国語で『大丈夫』って意味なんだ』


私は彼の言葉に心を打たれたわ…。
同じ技術者として…
同じ人間として…

そして、一人の女として…。

その日から私は彼の研究に付き合うようになったわ。

研究をともに続けているうちに、彼と私の間には、いつしか特別な関係ができていた…。


そのうち、他の研究員たちも彼の執着心に影響されて、次第に研究に協力していった…。

最終的に開発局一丸となってP-ウィルスを完成させた。
それからというもの、自殺者の数は激減。
社会はすっかり活気を取り戻したわ。

平和の訪れを知らせるかのように、私と彼の間にも新たな命が宿った…。

私たち3人は訪れた平和をすっかり満喫していた。


だけど…

だけど……

幸せはそう長くは続かなかった…。


P-ウィルス完成から三年、各地である噂が流れるようになった。
尻を蒟蒻で叩きながら全裸の女性が人を襲うというものだった。


噂は次第に事実へと変わってった…。


ある日の朝、私はいつも通り目覚めたわ。
布団が半分めくれていて、となりで寝ているはずの彼の姿はなかった。

『いつもは私が先に起きるのに、今日は早いのね(笑)』
その日はちょうど、私たちが付き合い始めた記念日だった。


彼を探しに私はリビングへ向かった。

彼の名を呼びながら、他の部屋も探してみる。

そして彼が家にいないことに気付いた。

『はは~ん…
きっとサプライズだなぁ(笑)』
そう呟きながらニヤける私は、テレビのスイッチをつけた。


『速報です!今、街中で話題になっていた蒟蒻で尻を叩きながら人を襲う、全裸の女性の

正体がわかりました!!

原因は三年前から普及が始まった精神安定活力剤『P-ウィルス』の副作用だということ

が判明しました。

政府はこのP-ウィルスによって産み出された生物の正式名称を『ペチンガー』と発表し

ました。

なお、このP-ウィルスは感染の恐れがあります!
未だ、女性のみの発症しか確認しておりませんが、ペチンガーは凶暴です!
絶対に外出はしないようにしてください!!』


心の奥底で何かがクシャンと壊れる音がした…

『うそ…

早く知らせなきゃ』

私は彼が先に研究所に行ってると思い、急いで研究所へ向かった。





研究所に彼の姿はなかった…。

『おい、三枝子くん、大丈夫か!?
まったく、あいつがあんなヤツだったなんて…』
そう私に話しかけてきた局長。
机に置いてある資料には彼の写真と『国際指名手配』の文字が載っていた。

『彼は、日本を混乱に陥れるため、潜入していたテロリストだったんだ…
私たちはとんでもない大犯罪に荷担してしまった…』

『うそ…

うそよ…


いやぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ

ぁぁぁああああああああ!!!!』



“孤独は辛い…”


彼の言葉が頭によぎった…。

彼の一言、一言があたまの中を駆け巡ってゆく…。
すべてがウソだったんだ…

私はどうしたらいいかわからなかった…
頭の中がぐちゃぐちゃになって、

そのあと、真っ白になった。


気づいたら私は病院にいた。
隣には小さな息を繰り返す赤ん坊がいた。

『あ、お目覚めですか?
お母さん、かわいらしい元気な男の子ですよ~』
近くにいた看護婦がそう言った。

私はつい先ほどまでふくれていた自分のお腹に手をあてた。

そして、となりに置いてある赤ん坊を手にとった。


『きゃぁぁぁああああ!!!』
病室に悲鳴が響き渡る。

気づくと私はその赤ん坊のチューリップほどのちい顔を自らの爪でぐちゃぐちゃにかきむ

しっていた。

爪の間に挟まっている肉片を見ても、手のひらにしたたる鮮やかな血を見ても、泣き叫ぶ

我が子の声を聞いても、その時の私の頭の中にはただただ『憎しみ』しか存在しなかった


私の頭の中は、今度は真っ黒に染まっていった…。


そして、次に目を開けたとき、私の目にはススム、そうパパの姿が映ってたの。