禍々しくも聖なるかな ◆devil5UFgA



「それじゃあ、行ってきます」


島村卯月は暗い表情のまま、家の内に居る母親へと声をかける。
心配そうな声が帰ってくる。
卯月は、いつもとは異なる弱々しさで、笑顔を見せる。
母に背中を向け、制服に身を包み、しかし、普段の通学路は異なる道を歩き始めた。
卯月が向かう場所は自身が通う高等学校ではない。
葬儀が行われる会館へと向かうのだ。



――――本田未央の葬儀へと、足を運んでいるのだ。



「未央ちゃん……」

『裁定者 <<ルーラー>> 』の使いが現れたのは、今朝方の事だった。
まだ陽も登りきらない時間帯、早朝のトレーニングへと向かっていた卯月。
その卯月へと、『ジョーカー』なる『軽』違反者の討伐令を持って現れたのだ。
『彼』は『ジョーカー』と『バーサーカー』への怒りを露骨なまでに現した。
状況に戸惑っていた卯月には、どこか劇がかったような仕草に見えた。
まるで、テレビのニュースを見ているような感覚だった。

「……ッ」

その『怒り』と取れる感情を納めた『彼』は、少々言いにくそうに、言葉を告げた。
卯月は、そこで理解した。
聖杯戦争を、ではない。
聖杯戦争から生まれる死という意味を、だ。

『裁定者 <<ルーラー>> 』の使いである『彼』は、NPCとしての『本田未央』の死を、告げたのだ。

『彼』――――『東金朔夜』は大きな動きは行わなかった。
ただ、卯月にジョーカーの討伐令と、本田未央の死を告げただけだった。
大きな揺さぶりは行わなかった。
なのに、卯月の心は嵐に曝される吊り橋のように不安定なものになっている。
その不安定さのまま、東金朔夜は放っておいた。
渋谷凛へ行ったアプローチとは異なるアプローチであった。

『マスター』
「……なんですか?」

重い足取りの卯月へと向かって、ライダーのサーヴァントが念話によって話しかけてくる。
卯月はその歩みを止めることなく、短く返した。
そこの声は、足取りよりも重かった。
マーズは二の句を躊躇ったが、言葉を続けた。

『彼女は友人だったのかい?』
「……はい」
『これから、彼女を弔いに行くんだね』
「……はい」
『地球の人間は、どういう意図を持って、死んだものを弔うんだい?』

マーズの言葉に卯月はついに足を止めた。
目頭が熱くなるのをこらえ、なんとか言葉を口にした。
自身のサーヴァントは、答えを求めているからだ。


「その、詳しくはわからないです」
『……わからないのに、その儀式に足を運ぶのかい?』
「きっと、意味は別にあると思うんです。
 でも、私にとっては、確かめるためなんです。
 確かめなきゃ、何も出来ないから……心が、落ち着かないから……
 その、未央ちゃんが本当に……その……」
『わかったよ』

マーズは卯月の言葉を遮るように応えた。
その言葉を、言わせることで卯月を傷つけたくはなかった。

『マスターを守る、その事実になんの変わりもない。
 僕は貴方のサーヴァントだ、従います……だから、しっかりと、確かめてください』
「……」
『大事なことです、親しい人をきちんと『知る』ことは……とても、大事なこと』

彼女は理解しきれていないのだ。
死という概念を、二度と会えないという事実を。
知識としては知っていても、それを現実のものだと捉えきれていない。
マーズが、人間というものの真の姿を知りたがっているように。
本田未央という存在の終わりを知ろうとしているのだ。

「それじゃあ、行きますね……わがままばかりで、すみません」
『いいさ……それが、人間だ』

マーズはその言葉を最後に、言葉を出さなかった。
卯月も、自身の中の感情を、上手く言葉に出来ないため、会話を行わなかった。
故に、マーズも卯月も、自身の思考を深めていく。
マーズの思考を深めていくのは、卯月と同じ、地球人への思いだった。
地球人のことは、鮮明に思いだせる。
最後の言葉を、幾らでも思いだせる。


『全部お前のせいじゃないか!』


『顔も見たくない! 消え失せろ!』


『俺たちはマーズなんてしらねえよ!』


『なんで俺たちだけこんな目にあうんだ!』



違う、マーズは地球を破壊させる爆弾の、直接的な引き金に過ぎない。
爆弾のスイッチを握ったのはマーズだ。
しかし、爆弾を作らせたのは人間だ。
人間の攻撃性だ。
地球を破壊させたのは、人間なのだ。
その想いに、マーズは納得していた。
しかし、しかしだ。



『わたしの夫と息子を返して!』


『わしの息子を返せ! 家族を返せ!』


その言葉が、マーズの耳に響き渡る。
あまりにも醜い姿から飛び出した、哀しみを塗り固めた言葉。
爆弾を作らせたのは人間だが、人間とは、本当に悪なのか?
それがわからない。
マスターである島村卯月が見せるこの哀しみは、悪から生まれるものなのか?
人間は、醜い。
それは間違いない、と、思ったのだ。
その想いを、今でも抱くのかどうか。
それを確かめるために、マーズは、明日笑うために泣く理由を確かめに行く少女の後ろ姿を眺める。

『……マスター、ぶつかるよ』

いつの間にかついていた葬儀を行う会館ビルへと辿り着いていた。
マーズと同じように、卯月もまた、考え事をしていた。
そのため、目の前に置かれた『箱』に気づいていないようだった。
マーズは念話で注意を促し、卯月はハッとしたようにぶつかりそうなった身体を動かした。

「あわっ、す、すみません!」
「……」

卯月がぶつかりそうになった『箱』は、清掃用具を詰めた台車だった。
埃を遮るためにマスクをつけた清掃員は、卯月の声に振り返し、帽子を抑えながら軽く頭を下げた。
そして、神経質な性質なのだろう、心配そうに用具籠の中を覗きこんでみせる。

「あ、ありがとうございます、ライダーさん」
『君が怪我をすれば本末転倒だよ……しかし、彼は日本人ではないようだね』
「そうですね」
『……それほど珍しいことじゃないってことか』

卯月の相槌と呼べる簡素な言葉から、マーズは外国人の労働者など珍しいものではないと読み取った。
事実、この東京に限らず、この時代の東京と呼ばれる類の街には、様々な『人間』というものが詰め込まれている。
日本の各地から東京に集まり、また、外国からも様々な理由で東京に居着く人間が居る。
物理的な土地こそが狭いが、あらゆる『深さ』を持った都市だった。

その『深さ』を潜っていけば、あるいは、人間の本性というものが確かにわかるかもしれない。

『……それを僕に見せてくれ、マスター』
「えっ?」
『なんでもないさ、さあ、行こう』

マーズは思わず零れた言葉を誤魔化し、歩みを促す。
卯月は一瞬だけ不審な表情を見せたが、すぐに本田未央の葬儀の場へと向かった。
場所は五階、階段よりもエレベーターを使うべきだろう。
見れば、周囲には卯月と同年代の少年少女が集まっている。
未央の葬儀に参加するものだろう、みんな表情が暗い。
NPCという言葉に、未だに慣れを見せない卯月だが、こんな場所でも未央が皆から慕われていたことに、安堵した。

「っ………! 卯月、じゃない……」

どこか浮いたものを感じながらエレベーターを待ち続ける。
そんな卯月に、声がかかった。
聞き慣れた声だった。
恐らく、今一番聞きたかった声だ。


「あ、あれ……? 凛ちゃん?」

居ても不思議ではない。
島村卯月と、渋谷凛と、本田未央。
ある意味、この三人は同じ場所にいて当然の存在なのだ。
卯月は前髪を無造作に流し、後ろ髪を無造作に縛っている。
そして、縁の大きな伊達眼鏡で顔の輪郭を誤魔化している。
見知ったものならばわかる、といった類の変装だった。

「あ、その、え、凛ちゃんも……」
「……今は、ね」

卯月の動揺の前に、凛は小さく人差し指を口元に当てた。
凛はトップアイドルだった。
ここで騒ぎ出せば、未央の葬儀に『未央を弔う』という意図以外のものを生みかねない。

「……今日は、静かに、ね」
「う、うん……」

ふと、死んでしまった『本田未央』のように、トップアイドルとして設定された『渋谷凛』が遠い存在のように感じた。
そこから生じる感情は、妬みでも祝福でもなく、心をざわつかせる孤独感だ。
それが深くなれば嫉妬へと変わり、それを乗り越えられれば祝福へと変わる。
そんな、別の何かを生みだす類の感情だった。

『マスター』
「……?」
『霊体化したサーヴァントは、マスターのような人間はもちろん、僕らでも殆ど認識できない。
 気配察知の類のスキルがあれば、別だろうけど、僕にはない
 ……だから、気を抜いちゃダメだ』

マーズの言葉の真意が分からず、卯月は曖昧に頷いてみせる。
言葉の裏に潜む、真意。
『渋谷凛は卯月の生命を狙っているかもしれない』
そんな意図を読み取ることが出来なかったのだ。
マーズはそれを明確な言葉にして、告げるようなことはしない。
相手の善性を信じているような卯月を悪戯に弄ぶようなことはしたくなかった。

「その、未央ちゃんの……」
「……今日の朝、偶然知ってさ。お通夜には行けなかったけど、せめて葬儀ぐらい」

ともに葬儀の行われる五階会場へと向かいながら、卯月と凛は言葉を交わす。
普段よりも少ない言葉数と、消すことの出来ない違和感を覚えていた。
『二人になった』という事実が、二人の間に重く伸し掛かっていた。

沈黙の中で、チン、とエレベーターが目的の階を知らせる音を立てた。
二人は、互いの間に蔓延する空気と同じような重い足取りで向かう。
そこには、喪主である本田未央の両親が居た。
凛が頭を下げながら、ペンを走らせる。
卯月も、習うようにペンを走らせた。

「あの、その……今回のことは……」
「……未央の、未央の顔を見てもいいですか?」

卯月が、どのような言葉を言えばいいのか迷っている中で、凛は柩へと顔を向けながら尋ねた。
親は顔を伏せた。
卯月は、哀しみと受け取った。
凛は、その一歩先を察した。





「訳あって、その、未央……は、葬儀に……出ないことになっています」



両親の、何かを隠すような言葉。
卯月は『哀しみ』と『疑問』を相混ぜにした表情で、その言葉を受け止めた。
一方で、凛は心のうちに『哀しみ』と『怒り』を織り交ぜた。
凛の中で、八つ当たりから生まれる勇猛さが芽生え始めていた。
卯月は、ただ哀しみを深めた。









僧侶が車から降りてきて、葬儀屋が出迎えた。

【筒のついた】【拳銃】

葬儀屋の背後に居た道化師が、サイレンサーのついた銃を取り出した。



空気を抜くような音を立てて銃口から銃弾が飛び出した。

【血の滴る】【法衣】

僧侶の額を綺麗に貫き、返す銃口で葬儀屋も殺した。



清掃員はズルズルと、物陰へと僧侶の死体を引きずっていく。

【転がる】【人間】

追い剥ぎのように僧侶の法衣を剥ぎとった。



道化師は懐から白塗を取り出した。

【手についた】【白塗】

幾度と無く塗り続けたために白く染まった指を使って、道化師は自身の顔を白く染めていく。


清掃用具入れの中から幾つかの銃器を取り出した。

【安っぽい】【爆弾】

そして、法衣の懐へとリモコンを入れた。






隣だって座った卯月と凛の間に、言葉はなかった。
周囲も同じだ。
皆が、何かの人形のように、呆けた表情で時を待っている。
死体の入っていない柩を眺めていると、本当に、まるで悪い冗談なのではないかと思える。

『フフ』

そんな中で、凛にだけ聴こえる嘲笑があった。
歯を食いしばる音で、凛は自身が従えるランサーのサーヴァントであるアドルフ・ヒトラーへと不快感を訴えた。

『確かめに来たのであろう?』
「……」
『本田未央の死を……『死』は間違いではなかったようだ』
「……」
『マスター、これで歩くしかなくなったぞ。我が神聖にして魔に染まりし槍を持って、打ち払うしかなくなったぞ』

凛がここに訪れた意味は、ただルーラーの使いの言葉の真偽を確かめるだけではない。
ただ、顔を見なくなっただけで、実は本田未央は死んでなんかいないのじゃないか。
ここに来なければ、そんな想いを抱いたままに日々を過ごしてしまうのではないかと思ったからだ。
そして、それが葬儀の大きな意味でもある。
他者の死に直面することで、その死を確かに受け入れる。
それをどう受け止めるかわからない。
わからないが、受け止めなければ先に進むことが出来ない。
そこから生まれる感情が、善きにせよ、悪しきにせよ、だ。

「……静かにして」
『御心のままに』

ヒトラーは、やはり嘲るように言った。
不快感だけを募らせる言葉であった。
それを振り払うように、隣を見る。
曇った表情があった。
彼女もまた、この場に来て、落ち込んでいた。
胸が裂かれそうになった。
彼女を、守らなければいけないと思った。
そのためにも、自身こそが未央の死を受け入れ、乗り越えなければいけないと思った。
自身が、卯月を救うために。

「それでは、そろそろ住職さんが来てくださるそうです」
「……本日は、娘の葬儀にお越しいただきありがとうございます」

暗い表情のまま、未央の両親が
人が死ぬということが、理解出来つつあった。
もう二度と、誰も未央に会うことは出来ないのだと、そう感じた。
静寂が場を支配した。
エレベーターの扉が開いた。
ふと、ぴちゃ、と水温が凛の耳に届いた。

血だ。

『……マスター、どくんだ!』

凛も、卯月もその意味に気付かなかった。
マーズだけが反応した。
ヒトラーは、気づいていたが、反応しなかった。
攻撃を仕掛けようとして、その腕が動く姿が見えた。
マーズは実体化し、その姿を衆目に晒した。


「ら、ライダーさん!?」
「……卯月、まさか、そんな!?」

卯月と凛の反応は、いや、周囲の人間の視線はライダーにだけ注がれる。
その全てを無視して、マーズは卯月と凛の前に立ち、髪を翻して硬化させる。
それで、マーズの燃えるような赤い髪を盾となる。
『銃弾』なら弾けるほどの、あまりにも強固な盾に。
しかし、その盾が覆ったのは、卯月と凛だけだった。
故に、葬儀のために呼ばれた住職、その姿をした道化師が手に持った銃器。
サブマシンガンという、人を殺す弾を幾つも弾き出す武器から守ることが出来るのは。
卯月と、凛だけだった。



「サプラァァーーーイズ…………パァーティィイー!!! 」





サブマシンガンは耳をつんざく音を立てて、銃弾を発射し続ける。
住職に扮したジョーカーは狂ったようにサブマシンガンの引き金を引き続ける。
人々の身体に穴が空いていく。
卯月や凛の心のように、穴が空いていく。
ジョーカーの嬌笑と耳をつんざく銃声が響いた。

「な、なに……なに!?」
「HAHAHAHAHAHAHA!!!!!!!!!!」
「ジョーカーとやらだろうなぁ」
「ジョー、カー……!」

気づくと、ヒトラーも実体化していた。
いや、ジョーカーが引き金を引いた瞬間から実体化していたのだ。
なんせ、凛が死ねばヒトラーも退場せざるを得ない。
それがルールだからだ。
故に、すぐに庇えるようにしていた。

「ああ……」

やがて、銃弾が切れると、ジョーカーをサブマシンガンを躊躇いもなく投げ捨てた。
そして、手袋を脱ぎ捨てる。
そこには、奇妙な刻印が刻まれていた。

「――――令呪を以って命ずる」

ジョーカーの手に刻まれた、捻くれた悪意のような刻印が光りだす。
銃声と硝煙によってチカチカと空間が歪む中で、光る令呪。
その令呪の光は、ピエロの嘲笑のようにも、赤ん坊の泣き顔のようにも見えた。





「一緒にクソヤローどもをぶち殺しまくろうぜ、バーサーカー」




瞬間、空間が歪む。
そこに現れたものは、世界を侵食するものだった。
周囲が赤く染まる。
紅い月による月光ではない。
バーサーカーのサーヴァント、ギーグ。
もはや実態すら持たないそのサーヴァントは、周囲を歪めて、無数の赤ん坊のような黒ずみを生み出した。
その赤ん坊のような空間の歪みを、ジョーカーは『ギーグ』と呼んだ。

「HAHAHAHAHA!!! 楽しいか、おい、楽しいかバーサーカー!」
『アァァア……』

その者の持つ超自然的な力は、人の心に潜む悪を増長させる。
膨らみに膨らんだジョーカーを、興奮剤さながらに掻き立てる。
この安っぽい、それこそ一ヶ月の給与で買える銃器で人を殺すのも悪くない。
お前の生命は一ヶ月の労働で賄える、そんな悪いジョークを呟いているような気分になる。
しかし、ギーグで遊ぶのは、それよりも楽しい。

「HAHAHAHAHAHA!!!!!」

束縛してくるような法衣の中に溜まった熱気を吐き出すように、ジョーカーは笑った。
卯月は恐怖に瞳を歪め、凛は恐怖と怒りに瞳を染めた。
マーズは卯月からジョーカーを隠すように仁王立ちし、ヒトラーは凛の視線を遮らぬように並び立って実体化した。

「おう?」
「フハハハ! これは当たりだぞ、マスター!」
「……凛、ちゃん?」
「我が聖杯を手にした仮面の幸運とシンデレラの逸話、伊達ではないぞ。
 恐らく、我々が討伐競争の一等賞だ!
 おっと、同率一位というべきか。
 失礼したな、御友人」
「……………卯月、下がってて。逃げて」

卯月もまた、凛がサーヴァントのマスターであることに気づいた。
凛は、卯月の問には答えず、逃げるんだと言った。
自身の中に生まれる、抑えきれない怒りを、無謀な蛮勇へと変える。
しかし、凛の脚は震えていた。
蛮勇では覆いきれない恐怖の現れだった。

「リ、凛ちゃん……凛ちゃん……」

凛自身は逃げないのか、と卯月は問いたかった。
ただ、言葉が出なかった。
何を言えばいいのか、そもそも何が起こっているのか。
卯月は、何も理解が出来なかった。


「眠るんだ、君は今、悪い夢を見ている」
「……ライダー、さん」
「……耐えられないことを耐える必要はない」

そんな卯月へと、マーズは、努めて優しく語りかける。
卯月は今にも倒れてしまいそうな目眩の中で、その燃えるような赤い髪を眺めた。
赤い髪が、まるで意思を持つかのように棚引いた。
その髪の毛が一本の針となり、ジョーカーへと向かう。

『ネス、サン……?』

しかし、その針はピタリと空中で止まった。
そして、空気を震わせない声が響いた。
バーサーカーのサーヴァント、ギーグの超自然的な声である。

『ネス、サン……ネスサン、ネスサン……ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン』

その声は力強さを増していき、ついに空気を震わせる。
卯月はおぞましさに顔を引き攣らせ、凛は自身を叱咤するように唇を噛み締めた。
それでも、恐怖は凛の蛮勇を嘲笑うように這いより、卯月の恐怖と共振し始める。

「……チッ!」

空気の震えは増していき、マーズから飛び出した針のような髪の毛は砕かれた。
そして、周囲の死体もまた震えていく。
パン、と、物体が弾けた。

「あっ…………」

本田未央の両親の死体だった。

『あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ』
「ああ……あ、ああ……!!」

釣られるように、周囲の死体全てが震えだす。
パン、パン、と。
時間差を置いて死体が弾けていく。
床を突き破って、死体が湧き上がっていく。
天上が崩れてきて、死体が落ちてくる。

「ああああああああああああああ!ああ!あああああああああ!!!!」
「……いや、これ……やっぱり、未央……!!」

ギーグの超能力によって、死体は弾けていく。
ただ、弾けるだけではない。
表面の皮膚だけを弾き飛ばされた遺体があった。
眼球が脳みそを突き破り、後頭部に両の目が埋め込まれた死体があった。
ギュルギュルと両腕と両脚、四本の棒を交差させて、シャンデリアのように天に突き刺さった屍体があった。
顔のない死体と、前頭部と後頭部に二つの顔がある死体があった。
腕が四本ある脚のない死体があった。
鼻の穴に目がある死体があった。
ギーグが震える度に、奇天烈な死体が増えていった。
ギーグに意思があるのだろうか。
それは違う。
ギーグと直接的なパスが繋がれたことで、ジョーカーのはただギーグを見るだけの人間よりも強く刺激されている。
それは同時に、ジョーカーがギーグへと影響を与えることも出来る、ということである。
ジョーカーの歪んだユーモアセンスが、ギーグの心へと影響を与えているのだ。
そのユーモアは、その死体を見たいからでも、死体を芸術品と見ているからでもない。
ただ、目の前の少女をおちょくるためだけのユーモアだった。


「……ッ!」

その惨状を見て、マーズは怒りを露わにした。
言語化しづらいほどの怒りだった。
ただ、マーズは両手を天へと掲げた。
一度、そうしたように。
両手を天へと掲げた。
世界を破滅へと導く、その姿とその言葉。



「ガイアアアアアアアァァァァ!!!!!!」




蜃気楼の如き歪みの中から、巨大な『指』が飛び出る。
その指は光を放ち、卯月の身を包み始める。
これこそがマーズの宝具だ。
存在そのものが、地球規模で『例外』とされる人類に訪れる禁忌。

――――『軍神よ、光の力を振るえ<<ガイアー>>』の限定的な解放だ。

指から放たれる卯月とマーズを包む繭のようになり、ギーグの超能力を拒絶する。
念動力によって生み出される隔絶障壁は、ギーグの絶対的な超能力をも弾き飛ばすのだ。
もっとも、何時迄も防ぎ続けることが出来るわけではない。

その様子を見て、ヒトラーは小さく笑った。

『フフ』
「あっ……」

瞬間、卯月は気を失った。
膨大な精神的なショックと、大きな魔力消費が重なったことによる失神だ。

「面白い玩具を持っておるな」
「卯月……!」
「我がマスターも入れてくれんかね、このままでは首輪を付けられた野良犬になってしまうよ」
「……」

マーズはヒトラーの言葉を無視する。
ヒトラーは肩をすくめた。

「ならば、我が仮面で守るしかないと来たものだ……あまり、良いものではないぞ、マスター」

言葉とは裏腹に、ひどく嬉しそうに顔を歪めて、ヒトラーは槍を翻した。
血に染まった床から、青白い光が伸びる。
ヒトラーを円で囲むように照らすその光は、地から天空を照らす。



「くとぅるふ・ふたぐん、にゃるらとてっぷ・つがー、しゃめっしゅ、しゃめっしゅ……」


ヒトラーの呪言が響き渡る。
凛に、マーズに、ジョーカーに、眠っている卯月にすら。
形容しがたい、悪寒と呼ぶのが最も近い感情が走った。
槍兵は、仮面のように張り付いた嘲笑をそのままに、言語化不能のおぞましさを増していく。
何かが変わったわけではない、だが、何かが変わっていく。
何が変わったかわからないのに、ただ、変わっていくことだけがわかる。


「にゃるらとてっぷ・つがー、くとぅるふ・ふたぐん……」


穂先を向ける槍兵の涅が這いよるような異常に、ジョーカーは笑みを深めた。
自らが従える槍兵から溢れだすおぞましさに、凛は目を背けた。
思いがけず、窓から外を覗く形となる。
いや、正確に言えば外を眺めることはなかった。
いや、しかし、そんな。
居るはずがない。
こんなものが、この世界に居ていいはずがない。


「にゃる・しゅたん、にゃる・がしゃんな……
 にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな!」


いや、そんな!

あの手は――――あの顔はなんだ!

ああ!

窓に!


窓に!!!







【Sainty Check】



  • ジョーカー『成功』

  • ギーグ『無効』

  • 渋谷凛『失敗』

  • ヒトラー『チェック対象外』

  • 島村卯月『気絶中によりチェック対象外へ』

  • マーズ『失敗』





禁止された宝具の一部を掠め取って使用するスキル、『月に吠えるもの』を開放したヒトラー。

『あ、あ、あ、あ、あ、ああああああああああああああああああああああ!!!!』

ギーグはそのおぞましさを否定するように、攻撃を仕掛けた。
しかし、その超能力による攻撃は、正体不明の触手に弾かれる。
触手には、無数の仮面が張り付いていた。
ヒトラーと同じような、余りにも不快な嘲笑が張り付いた仮面だ。

「ぁあ…………」
「おやすみ、シンデレラ。靴のサイズを合わせる時には起こしてあげよう」

その仮面の群れを見た瞬間、凛の意識が途切れる。
膨大な魔力の放出……というよりも、理解の内から生まれる理解の外の存在を直面したがゆえの、精神的ショック。
同時に、ガシャン、と激しい音を立てて、窓の外から異形のものが乗り込んできた。
これこそが、触手の主。
ヒトラーのペルソナ、『月に吠えるもの』。

「ふははは! 太陽と並び立つ紅き月へと向かい、吠え続けるもの!
 これこそが我が仮面<<ペルソナ>>よ!」

人は誰しもが仮面を被って生きている。
その仮面、ペルソナを集合的無意識の中に眠る神霊などを媒体にして現界させる。
ヒトラーのペルソナは、スキル名と同じ、『月に吠えるもの』。
複数の触手を携えた、名状しがたき存在が窓を突き破り、ヒトラーの背後へとそびえ立つ。

「冒涜の偶像聖槍が貴様を貫く、存分に暴れさせてもらおう」

『神聖魔槍・失楽園<<ロンギヌス・オリジナル>>』と『偶像聖槍・失楽園<<ロンギヌス・コピー>>』。
月に吠えるものの触手は二つの槍を握り、存在すら曖昧に歪めたギーグへと向かって放たれる。
空気が、いや、ギーグが震え、槍を弾く。
月に吠えるものの触手が蠢く。
ギーグが染めた赤い空気が蠢く。
激しい音だけが、響き渡る。

「……ああ、アンタ知ってるぜ」
「ほほう」
「誰でも知ってるさ。俺たちアメリカ人と、会ったこともないドイツ人ならな。
 アレだろう、アレ」

ヒトラーはニヤニヤと嗤いを続け、ジョーカーもまた嘲笑いを作り続けた。
マーズは、覚めた目でその二人の様子を見ていた。
同時にこの狂気にその身を晒され、顔を歪めて気絶する二人の少女へと顔を向けた。
この二人と、目の前の二人。
同じ地球人だとは思えなかった。
そんなマーズを無視して、ギーグと月に吠えるものは攻撃を繰り返し、ジョーカーとヒトラーは笑みをかわし続ける。

「アンタ、『チャールズ・チャップリン』だろう」
「…………ほほう」

釣りあがった頬を、さらに釣り上げる。
ジョーカーもまた頬を釣り上げた。
マーズは不快感を募らせる。
『チャールズ・チャップリン』、すなわち、世紀の喜劇王だ。
恐らく、機会が機会ならば、サーヴァントとして召喚され得る人物。

ヒトラーを『演じた経験』のある、ある意味では、『アドルフ・ヒトラー』以上に『ヒトラー』に近い人物と言えるだろう。


「なるほどなるほど、面白い男だ。殺すには余りにも惜しい」

ジョーカーとて、本気でヒトラーのことをチャップリンだと思っているわけではないだろう。
しかし、『ヒトラー』を『アドルフ・ヒトラー』と認識していなかった。
そして、ジョーカーを気に入ったというのもまた、真実だった。

「よく見たさぁ……喜劇は好きだ、大好きだ。
 ただ、今のアンタの姿の映画はちょっとメッセージ性が強すぎてな。
 もっと、馬鹿らしく行こうじゃないか……それがアンタの持ち味じゃないのかい?」
「同意見だ、演者に固めた仮面を与えるのは一時の間だけでいい」
「なら、一緒に遊ぶかい? 俺は別に、アンタと組んでもいい。
 いや、こいつはいい玩具だし、正直な話はアンタよりもバッツと遊びたいがね」
「貴様なら私を『バッツ』に出来るかも知れんぞ?」

その瞬間、ジョーカーは表情を固めた。
すぐに嘲笑ってみせるが、ジョーカーにとって、そのジョークは面白くないジョークだった。

「気を悪くするな……何、貴様のように、私もこういった悪意のないイタズラが大好きでね」
「悪意のない……悪戯だというのか?」

釣り上がった頬から生み出される、嘯くようなヒトラーの言葉。
その言葉に反応したのは、マーズだった。

「おおっと、そう怒るな……恐らく、ライダーのサーヴァントだろう?
 話し合おうじゃないか、我々はそのために言葉を持っている。
 違うかな、白塗の道化師に紅い騎兵よ」
「話し合うことなんてない、僕のマスターは傷ついている」

自身の感情は語るまでもない、と言外に伝えていた。

「造られた生命であり、与えられた設定とは言え、友達を失った……その痛みに癒やすための儀式さえも穢された。
 きっと、マスターの心は、もう癒えない。
 一生、その痛みを思い出すんだ。
 お前のマスターもそうなはずだ……なのに、なぜだ。
 なぜ、そんな弄ぶようなことが出来る」
「人間こそ、所詮は宇宙の中心で蠢く盲目にして白痴なる者よ、そう脆いものじゃあない。
 癒えない傷かもしれないが、しかし、お前のマスターはいつか楽しそうに笑ってみせるさ。
 本当に楽しそうに、幸せを謳歌してみせるさ。
 この惨状を忘れても居ないのに、幸せになってしまうさ。
 人間とは、そういうものだ。
 だからこそ、愛おしい――――」

『玩具なのだよ』

ヒトラーは笑みを深めこそしたが、その言葉は口にしなかった。
相変わらず釣り上がった頬はマーズに不快感を与えてくる。

「その言葉と行動で傷つけたんだ、お前たちの言葉はそういう類のものだ。
 知識はそんなものじゃないはずだ、言葉とはナイフになり得るはずのないものだ。
 そんな奴と、交わす言葉はない」
「私を理解したと?」
「そうさ、お前たちは、悪だ。死を笑うものだ」
「自分たちはそうではない、と。死を笑うことはない、と」
「そうだ、人が死んでいるんだ……なぜ、笑える」
「フハハ! お前も笑うさ、お前の仲間も笑うさ!」

人の死を笑う、とヒトラーは言った。
マーズは否定しようとしたが、ヒトラーの言葉が重なった。


「汚いものが浄化されるさまを見て微笑むように、貴様も笑うだろうさ。
 笑みに上等も下等も有りはしない」
「世界は神様の出来の悪いジョークなのさ」

ジョーカーも言葉を続ける。
マーズはただ、その言葉を聞き続ける。

「この舞台に立たせてもらったお礼に、精々笑ってやろうじゃないか。
 出来の悪いジョークでも、相手を思うなら笑ってやるのが優しさってもんだぜ」

この世界こそがジョークなのだと語る。
本気になどなるな、と言っているかのように。
マーズは、その言葉で確信した。
目の前の二人は言葉こそ同じものを使っているが、会話が出来ない存在なのだと。

「話すことなんてない。
 そして、信じられない……君たちが人間であるかどうかすら」
「俺ぁ人間だよ」
「私は人間の模範存在だ、教科書にだって載るぞ」

戯けるような二人の言葉に、マーズは怒りを募らせた。

「……特別だよ、お前たちは。
 あの人達やマスターが、お前たちと同じ生き物だなんて思えない。
 あの醜い獣ですら、お前たちと同じだとは思えない。
 お前たちは、獣ですらない、醜くすらない、何かだ……
 お前たちが人間の全てなら、何千年も待つ必要はない。即座に爆破していたさ」
「しかし、人間だ」

ヒトラーの言葉を無視するように、マーズは光の中へと消えた。
卯月を優しく抱き上げ、月に吠えるものが破壊して吹き抜けとなった壁の穴から飛び降りようとする。
地上五階の高さだが、サーヴァントであるマーズには大きな意味はない。

「忘れるな、盲目の騎兵よ」

マーズの背中へと言葉を投げかける。
マーズはその類まれな聴覚で、その言葉を聴いてしまった。

「目の前の道化師は人間だ……ならば、全ての人間は道化師の可能性を持っておる。
 我と我が相対者すら見抜けぬ人間の本質を、貴様ごときが見抜けると思い上がるでないぞ」

嘲笑に彩られていた言葉。
ジョーカーは消えていったマーズへと、肩をすくめながら呟いた。

「俺が知りたいって言うなら、ナイフの刃を自分にむけて、口に咥えてみりゃいいのさ」
「その心は?」
「世の中のこと全部を笑いやすくなる」

ヒトラーはまた笑ってみせた。
出来の悪いジョークには、笑ってやるのが礼儀というものだからだ。


「しかし……いっそのことお前のようなものの影となれば、私も楽なのだろう。
 だが、しかし、今の私は灰かぶり姫の影よ。
 もっとも、そこに不満などないがね。良き光となれる人材だよ、あの少女はね」
「交渉決裂だな、スポンサーとは不満ってわけだ」
「私をチャールズと称する貴様のセンスは……正直な話、大好きだよ」

ヒトラーは笑みを深める。
その答えこそを待っていたと言わんばかりの笑みだった。

「チャールズを気取るにしては、今の脚本には喜劇性が足りなくてね。
 舞台演出と脚本とスポンサーがぶつかり合っていて、『我輩』も第三帝国の領地から出られんわけだ。
 我輩なりに仮面を揃えようとしているのだが、なかなか上手く行かぬものよ。
 そんな中で、スポンサーの申し出は悪くない」
「じゃあ、遊べばいいさ。俺と一緒にね」
「ただ、状況が揃いすぎていてね。
 喜劇を演じようとしたところに、灰かぶりを導く道化師と死のメタファーが姫の前へと都合よく現れる幸運。
 いやはや、これは天啓……その礼に、一つ挨拶と行こうか」

ヒトラーは神聖魔槍を翻した。
ギーグの超能力と数十合打ち合ったその槍と偶像の聖槍には、傷ひとつない。
もっとも、代わりにギーグにも傷一つ与えていないが。
ギーグも、ヒトラーもただ刃を交えるだけで、本気で生命を狙いに行った一撃は行わなかったからだ。

「無貌の我、千の貌を持つもの……故に道化なり」

瞬間、ジョーカーは、ヒトラーの顔に自身の顔を幻視した。
しかし、それは一瞬と呼ぶのも馬鹿らしいほどの間であった。
単なる幻視にすぎない。


「我は◆◆◆◆◆◆◆◆、運命を嘲笑う者」



月に吠えるものが、蠢いた。
その奥に、更に潜む、形状し難き淀んだ土のような影が見えた。
ギーグを嘲笑で迎えたジョーカーですら、その背中を震わせた。
人だけを震わせる、闇だった。

「ふははは、機会があればまた会おうではないか!
 白い顔に、渾沌の仮面を持つ道化よ!」






「フラレちまったよ、ギーグ」

契約を捨てて、ヒトラーと再契約を結ぼうじゃないかとすら言っていた口で、ジョーカーは着やすく語りかける。
しかし、ギーグの破壊された精神は、ジョーカーのその意図すら捉えない。
ただ、自身が赤く染めた空間を震わせるだけだ。
ジョーカーは肩をすくめた、しかし、不満はなかった。
ジョーカーと同じ聖杯戦争の参加者には逃げられたが、元々会うことすら予想外だったのだ。
今回は花火を上げるだけのつもりだけだった。
ジョーカーは懐から一枚の封筒を取り出した。

――――『討伐令』だった。

「――――『ジョーカー』と『バーサーカー』を倒したものに、令呪を与える。
 だってよ、HAHAHA!」

ジョーク、と言いたいところだが、そうではないだろう。
恐らく、本気でジョーカーにもジョーカーの討伐令を出したのだ。
ジョーカーが『ジョーカーとバーサーカー』を討伐した場合、ジョーカーに令呪の一画と情報が与えられる。
そう言った仕組みだ。

「まあ、もっと、笑ってやろうじゃないか。
 俺たちの笑い声さ、全員に聴こえるぐらいがいいだろう?」

ジョーカーは法衣を脱ぎ捨て、階段を伝って降りていく。
多くの人間が避難をしていた。
数少ない人間はギーグが内側から破壊していく。
ジョーカーは懐の栄養剤を口にした。
疲労は少ない。
恐らく、ギーグの攻撃に耐えられる人間というのは、本当に限られているのだろう。
ギーグは手の届かないところに手が届く。
ジョーカーが爆弾でないと出来ない殺人を、ギーグは動くような容易さで行うことが出来る。
そう、爆弾だ。
ギーグはあまりにもお手軽な爆弾なのだ。
爆発させて、自らも含めた全てを壊してしまう。
だから、自分たちの存在を爆弾で知らせてやるのだ。

清掃員の振りをして、ビルのあちらこちらに爆弾を仕掛けた。

それを爆破して、自身の存在を知らせてやるのだ。
ジョーカーはビルから離れながら、遠隔操作のためのリモコンを取り出す。
足元には血と赤で染まっている。

「Let's go!」

そら行け!と勢い良く、ボタンを押した。
そして、すぐさまに耳を塞ぐ。

「……Oh?」

しかし、爆音を響かなかった。
ジョーカーは眉を潜めて、何度もボタンを押す。
押して、押して、押して。
一向に反応をしない。
さすがに安上がりにし過ぎたかと、ジョーカーが思いかけた瞬間。

「おっ」

ドン、と音が響いた。
ジョーカーは満足そうに笑みを深め、遠隔操作用のリモコンを放り投げた。
背後から爆音が響く。
会場が壊れ、死体達は土とコンクリートの中へと消えていく。
世界が見せたジョークへの、ジョーカー流の反応だった。


時計の針が、十二時を指した。
ジョーカーの花火によって、新しい情報が記された。



【A-3/渋谷/1日目 十二時】

【渋谷凛@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]気絶中。精神的に不安定。犯罪係数不明。間力を消費。
[令呪]残り3画
[装備]手持ちバッグ(散歩グッズ入り)、変装用の伊達眼鏡。
[道具]なし
[所持金] 手持ちは高校生のおこづかい程度。
[思考・状況]
基本行動方針:私は……
1:気絶中。
2:ジョーカーに対し強く敵意を抱きました。人を殺す……?
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の情報と容姿を把握しました。
※島村卯月をマスターとして認識し、マーズの容姿と宝具の一部を把握しました。

【ランサー(アドルフ・ヒトラー)@ペルソナ2罪】
[状態]健康、魔力を消費。
[装備]ロンギヌス
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:愉しむ。
1:事件が起こって凄く愉しい。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の容姿と情報を把握しました。
※島村卯月をマスターとして認識し、マーズの容姿と宝具の一部を把握しました。

※<検閲済み>

【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]気絶中。精神的にひどく動揺。魔力を消費。
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]手持ちは高校生のおこづかい程度。
[思考・状況]
基本行動方針:何もわからない。
1:気絶中。
2:ひどく動揺しています。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の情報と容姿を把握しました。
※渋谷凛をマスターとして認識し、ヒトラーの容姿を把握しました。

【ライダー(マーズ)@マーズ】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:人間を見定める。
1:ヒトラーとジョーカーへの強い嫌悪感。
2:ギーグの悪を刺激する有り様と、月に吠えるもののおぞましさを目撃し、無自覚に動揺しています。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の容姿と情報を把握しました。
※渋谷凛をマスターとして認識し、ヒトラーの容姿とスキル『月に吠えるもの』を認識しました。
※<検閲済み>



【ジョーカー@ダークナイト】
[状態]魔力を消費。
[令呪]残り2画
[装備]不明
[道具]不明
[所持金]不明
[思考・状況]
基本行動方針:この世界流のジョークを笑って、自分なりのジョークを見せる。
1:楽しい。
2:。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の全てを把握しています。
※渋谷凛をマスターとして認識し、ヒトラーの容姿を把握しました。
※島村卯月をマスターとして認識し、マーズの容姿と宝具の一部を把握しました。

【????@????】
[状態]??
[装備]??
[道具]??
[所持金]??
[思考・状況]
基本行動方針:??????
1:????????
[備考]
※??????
※??????
※??????
※??????



※ギーグの宝具が発動しているため、ギーグの状態表を閲覧できません。


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008:Who is in the center it is chaos? 渋谷凛&ランサー(アドルフ・ヒトラー 019:GOSSIP→PERSONA
000:DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 島村卯月&ライダー(マーズ 025:人間(ひと)の手がまだ触れない
000:DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 ジョーカー&バーサーカー(ギーグ 018:遠き山に日落ちずとも -あるいは命堕ちる家路-

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最終更新:2015年12月26日 02:01