衛宮切嗣&セイバー ◆WRYYYsmO4Y
「師か仲間か、どちらでも好きな方を選べ」
師を切り捨てず、仲間諸共に死に絶えるか。
師を切り捨て、仲間とだけでも生き残るか。
選択肢は二つ、それ以外を選ぶ資格は無い。
『あとの事は頼みましたよ。仲間を、みんなを護ってあげてくださいね』
何よりも護りたかった人が、目の前に座っている。
背中を向けた彼の首を刎ねれば、仲間を救い出せる。
その代償に、断ち切られた首はもう二度と微笑まない。
『もし俺がおっ死んだら――先生の事を、頼む』
護りたい者の為に戦った仲間が、背後に横たわっている。
大切な者をこの手で斬れば、彼等は命を繋げられる。
その代償に、砕かれる絆はもう二度と直らない。
選ぶのに、そう時間はかからなかった。
彼はきっと誰よりも、護りたい人の意思を理解していたから。
分かっていたからこそ、手にした刃を振り上げる。
「――――――ありがとう」
その一言が、師からの最期の言葉。
一閃は首を断ち、理想を断ち、絆すらも断ち切る。
そうして彼は、生存の代償に、全てを喪った。
"努力"は実らず、"友情"を喪い、"勝利"すら掴み損ねた。
そんな敗者の、たった一つの業の物語。
■ ■ ■ ■ ■ ■
ナタリア・カミンスキーを手にかけた瞬間は、今でも鮮明に思い出せる。
屍者の揺り籠と化した飛行機、それを操縦するナタリア、そして海上で待機する僕。
もし飛行機が無事に空港に辿り着けば、きっと何百人もの犠牲が出るだろう。
僕は鴎が飛び交う中、一切の躊躇もなく重火器の引き金を引いた。
煙を吐きながら墜ちていく飛行機、鴎達は歓迎する様に、僕の周りを滑空する。
あの瞬間、僕は大勢の人間を救ったに違いない。
無数の亡者とナタリアを犠牲にして、僕は正義に殉ずる事が出来たんだ。
そう、出来てしまったからこそ、僕は正義に絶望した。
打ちひしがれ、泣き叫んで、絶望して、心はすっかり冷え込んでしまった。
あの頃からずっと、僕の瞳は光を写してはいない。
あの嘆きがあったからこそ、僕は聖杯を求める。
もう誰も犠牲にならない、どんな戦いも起こらない永遠の平和。
僕一人の力では無理でも、万能の願望器の力があれば実現可能な願いだ。
例えそれが、冬木の聖杯とは異なる、赤い月の聖杯だったとしても。
薄暗い路地裏に、僕の傀儡は待ち構えていた。
室外機を椅子代わりにして、少年雑誌を読み耽っている青年。
僕のサーヴァント――セイバーは、一見すると極めて頼りない男だ。
死んだ魚の様な眼に天然パーマ、一挙一動に気品さがまるで感じられない。
僕自身を美化する様な言い方だが、どうしてこんな英霊が用意されたのか、当初はまるで理解できなかった。
だが、あの夢を見てからその評価は見事一転した。
戦場が臨める崖の上で、恩師の首を刎ねた銀色の侍。
そうした罪の代価として、仲間を救い出した英雄的行為。
たしかに奴は、僕の為のサーヴァントで間違いない。
一を救って百を救ったという僕の過去が、あのセイバーを呼び寄せたんだ。
「夢を見たよ。君が恩師を殺す夢を」
少年雑誌を捲る指が、途端に停止した。
心の何処かで、恩師殺しの罪を重荷にしている証拠だ。
ああも自堕落な風袋であっても、罪の意識はあるらしい。
「……だからどうしたってんだよ」
「どうもしないさ。ただ、心底気に喰わないと思ってね」
そうだ、僕はこのサーヴァントが気に入らない。
僕と同じ罪を抱えながら、僕とは真逆の生き方をするこの男が。
元より英霊に好感など持てる筈もないが、彼に対する嫌悪感はそれとは全く異なる物だ。
だが、具体的に何故嫌なのかと問われると、閉口する程度には不明瞭な感情でもある。
とにかく、僕はセイバーに対し良い印象を持っていなかった。
「ッたくよ、気分悪いぜ。こちらとジャンプで士気を高めようとしてたってのに」
露骨に悪態をつくセイバーも、僕への第一印象はそれほど良くないのだろう。
彼はまだ、僕がナタリアを――親同然の存在を殺した過去を知らない。
小指で耳をほじくり、掘り出した耳滓を息で吹き飛ばして、セイバーは言葉を続ける。
「大体、何が"夢は世界平和"だよ。そういうのはジャンプ適年齢の純粋な子供が見る夢なんだよ」
不快な目に遭わされた仕返しなのだろうか。
セイバーは僕を見据えながら、皮肉気にそう言った。
ジャンプというのは、彼がついさっきまで読んでいた少年雑誌の事だ。
「死んだ魚みたいな眼したオッサンが見る夢じゃねえんだよ、そういうのは」
そう言い残して、セイバーは僕の前から姿を消した。
少年雑誌に興味を失くして、現界する理由も無くなったからだろう。
セイバーが座っていた室外機へ歩み寄り、そこに置かれた雑誌を手に取る。
上部に「ジャンプ」の字がでかでかと掲載されたそれには、ヒーローの姿が描かれていた。
百と一のどちらを救うかと問われれば、百と一を救おうとする、そんなヒーローが。
こちらを見つめる誌上の英雄の瞳は、僕なんかとは比べ物にならない程、綺麗な眼をしていた。
"友情"と"努力"さえあれば、どんな敵にだって"勝利"できると信じて疑わない、そんな瞳だった。
現実は漫画の様に上手くいかない。
"友情"はいずれ朽ちるものだし、"努力"が実を結ばないなんてザラだ。
そして、"勝利"が必ずしも幸福を齎すとも限らない。
ナタリアを撃ち落とした、あの頃の僕と同じように。
それでも、今はそう考えているとしても。
僕にもかつては、純粋な瞳をしていた時期があった。
純真な夢を描いていた僕の心は、夢と希望に溢れていて。
絶望なんて露知らずのまま、ひたむきに理想を信じていたんだ。
■ ■ ■ ■ ■ ■
どうしても思い出せない。
あの日、僕は彼女に何を言おうとしたのか。
なあ、シャーレイ。
僕はあの頃、何になりたかったんだろう?
【クラス】
セイバー
【真名】
坂田銀時@銀魂
【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:C 宝具:C(平時)
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:C 幸運:C 宝具:C(白夜叉)
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
対魔力:E
無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。
セイバーはセイバークラスではあるが、科学技術が進歩した江戸という神秘の薄い時代の英霊であるため、申し訳程度のクラス別補正として得ている。
騎乗:E
乗り物を乗りこなす能力。
現代の乗り物、特にスクーターなら乗りこなせる。
【保有スキル】
甘党:A
糖分過多で糖尿病寸前になる程度には甘いものが好き。
甘味の摂取による魔力の回復量が多くなる。
直感:B(A)
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。Aランクの第六感はもはや未来予知に近い。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
心眼(真):B(A)
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
護国の鬼将:C(B)
特定の範囲を"自らの護る国"とし、その領域内の戦闘において、セイバーはD(C)ランク『狂化』に匹敵する戦闘力ボーナスを獲得出来る。
セイバーの剣が届く範囲が、彼の護る国である。なお、このスキルは"護る為の戦い"でなければ機能しない。
【宝具】
『白夜叉』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
攘夷戦争にて鬼神の如き強さを振るったという伝承が宝具となったもの。
戦闘が長引けば長引くほど、セイバーの中に眠る「白夜叉」としての技量が目覚めていく。
そして、それに呼応する様にステータス、及び各種スキルのランクも上昇する。
【weapon】
『妖刀・星砕』
辺境の星にある金剛樹という樹齢一万年の大木から作られた木刀。
通信販売で購入可能。お値段一万千七百六十円也。
【人物背景】
一(恩師)を切り捨て百(仲間)を救った侍。
【マスター】
衛宮切嗣@Fate/zero
【マスターとしての願い】
恒久的世界平和。
【weapon】
『起源弾』
切嗣の肋骨の一本に魔術加工を施して作りだした魔弾。
この弾丸に対し魔力で応戦した者は、全身の魔術回路が暴走を起こし、肉体に壊滅的な被害が及ぶ。
【能力・技能】
『固有時制御』
衛宮家の研究していた「時間操作」の魔術を戦闘向けにアレンジした代物。
固有結界を自らの体内に展開し、自身の時流を制御する事で、高速移動等が可能となる。
解除時の反動が極めて大きい魔術な為、通常は二倍速が限度である。
【人物背景】
一(母親)を切り捨て百(民衆)を救った魔術師。
【方針】
優勝狙い。
最終更新:2015年01月26日 23:17