Omen(予兆) ◆CVsYM00PVA
月のない夜に現れる赤い月をみた者には願いがかなう。
されど、強き願いをもつ人間は月に囚われ姿を消してしまう。
まことしやかにささやかれるこの噂話は誰とはしれない友人たちから伝え聞いた話だ。
都市伝説。
それは誰かの作り話かもしれない。
しかし、噂話は人の心を映す鏡。
そこには「なにか」からのメッセージが隠されていることがある。
探偵、白鐘直斗はとある事件を追っていた。
ある日を境にこの東京や各地で起こり始めた連続失踪事件だ。
事件が起こる日。決まってそれは新月――月のない闇夜だった。
被害者の年齢、性別、職業に一致はなく、複数箇所にて同時に起きている。
単独犯でないならば複数犯いや…
これは「人」ではなし得ない。
噂話と失踪事件。
白鐘直斗にとって身に覚えのあるキーワードだった。
かつて、とある地方の町で起こった殺人事件と失踪事件に直斗は深く関わることになったのだが、この事件の発端と解決の鍵は一つの噂話だったのだ。
しかしながら、この事件においてもっとも重要視されるべきことは、公にされることの無かったもう一つの世界の存在だ。
犯人はこの世界を利用し、卑劣な犯行を行った。
隣り合わせに存在する世界を知る何者かが、犯行を模倣した可能性があるのではないだろうか。
探偵、白鐘直斗が導き出した結論は一つ。
赤い月はもう一つの世界へ繋がる<鍵>であると。
▽ ▽ ▽
「次は新宿ー新宿ー…Next…」
スピーカーから発せられた車内アナウンスによって、思考の世界から現実へと呼び戻された。
時計をみると高校生が出歩くには遅すぎる時間をとうにすぎている。
警察への協力をしている探偵とはいえ、普段は学業を生業とする学生なのだ。
無理を言って警察署で事件の資料を読ませてもらっていたが、ここまで遅くなってしまうなんて。
事件の間は家に帰らずホテルを使うことも多いが、家には祖父と祖母がいる。
連絡がなければきっと心配していることだろう。
携帯電話に取り出し、視線を落とした。
画面には共に戦い、ともに笑い、心からの友となった仲間たちとの写真。
花村先輩とクマくんは相変わらず兄弟みたいな掛け合いをしているだろうか。
巽くんも混ざって男子たちで騒いでいるのかもしれない。
天城先輩と里中先輩は今でも直斗のことを気にかけて連絡をくれるし、久慈川さんもアイドルとしての仕事が忙しい中息抜きに誘ってくれる。
結局は彼女のショッピングに付き合うことになってしまうのだが。
鳴上先輩も夏休みには稲羽市に戻ってくるといっていたから、こちらも仕事の調整ができればいいが…。
このところ顔を合わせることもできていないが、彼らは確かに直斗の心の拠り所となっていた。
携帯に表示された日付をみてふと思い出す。
今日は新月の日ではなかったかと。
向かい側の車窓に目を向ける。
――月はない。
振り向いて座席越しに空を見上げる。
――月は…
▽ ▽ ▽
目にした瞬間に思わず息を飲んだ。
月の器に注がれた血が滴り落ち、東京がさびた鉄色に染まっている。
夕焼けではない。これは赤い月の光に包まれているのだ。
はっとして周りを見渡す。
いない。満員とはまではいかないが電車内に乗り合わせていたはずの酔いつぶれたサラリーマンや残業続きだったのか疲れきった顔をしていたOLも。
一人取り残されている。
いや、一人だけ足を踏み入れてしまったというほうが正しいのかもしれない。
キィと耳障りな音を立てながら、電車は動きを止めた。
ドアが開かれ、駅のホームへと降り立つ。
あたりの様子をうかがうが、眠らない街にいるというよりも田舎の無人駅にいるかのように閑散としている。
まるで世界が時を止めたかのように。
胸ポケットに潜めていた銃を取り出すと、ゆっくりと改札へ向けて歩を進めた。
そのとき、誰もいなかったはずの背後から低い声が響いた。
「お前が俺の主<マスター>か」
ゆっくりと声のした方へ顔を向ける。
暗がりから月の光のもとに現れた人影。
見上げてしまうほどの長身。凛として彫りの深い顔。
偉丈夫と呼ぶにふさわしい大男がそこにいた。
視線が合うと男は深々と礼をした。
「魯粛、字を子敬と申す」
▽ ▽ ▽
「神の血を受けた聖なる杯。それを手に入れた者には願いが叶うというわけですか。
かのアーサー王や旧ドイツ軍も捜し求め、見つかることのなかった聖遺物がここに存在すると」
紅い月に魅入られた人間が集い、杯を手に入れるために戦いあう。ここは決戦の地だと男は語る。
ムーンセル――ここは間違いなく直斗のいた世界ではない。
現実とは異なる世界だとすれば、この世界に聖杯が存在することも否定できない。
しかし、直斗が呼ばれた時点でいまだ存在するということは、手にした人間が存在しないという可能性も十分にある。
「どんな願いもかなう――なんて、都合のいいものが簡単に存在するとは僕には思えない。
何者かが戦いを生むために描いた絵にも見えます。
聖杯が真実にせよ虚構にせよ…証明するためのピースが今は足りない。
これは、あなた自身にも言えることですが」
<魯粛>と名乗ったこの男。
直斗の記憶に間違いがなければ、彼は中国古代、後漢末期(俗に言う三国時代)の人間である。
三国志というのは日本でも有名な物語のひとつで、後に蜀の皇帝となる劉備の立身出世と戦いを描いたものだ。
それを献身的に補佐した諸葛亮の神算鬼謀もよく知られている。
ところで、彼といえば脇役の中の脇役で、諸葛亮に振り回される気弱な男である。
名を借りた別人としか思えない。
「はっはっは!おもしろい。
お前は聖杯の存在を疑問視するというのだな。
女性(にょしょう)とはいえこれほどの思慮深さとは恐れ入った。
少しばかり甘くみていたことを許してくれないか」
男は直斗の疑念さえ笑い飛ばすように豪快に声を上げた。
正直なところ、馬鹿にされていたということよりも、女であることに気づいた眼力に舌を巻く。
今はもう女であることを隠すつもりもないが、探偵王子などとあだ名される直斗のことを未だ少年だと信じている者もいるからだ。
彼は直斗へのマイナス印象さえ臆面もせずに告げている。
確かに切れ者ではあるだろうが、さっぱりとした性格は好感がもてる。
「いえ…僕もあなたのことを偏った見方をしていました。気にとめる必要はありませんよ」
直斗は空を見上げる。紅く輝く月。いや…あれは本当に月を模した聖杯なのかもしれない。
「白鐘家の探偵として、僕は誇りをかけて<聖杯>の謎を突き止めたい。
だからこそ、あなたに改めて問います。
僕の右腕<サーヴァント>になってくれますか、ライダー」
「お前が真実を求めるというのであれば、最期まで付き合ってやろう」
そういうと彼は無造作に手を伸ばしたかと思うと直斗の頭をぽんと叩いた。
「な、何をするんですか!急に」
斜めになってしまった帽子を慌ててかぶりなおす。
動揺を隠せない直斗の姿をみるや、ライダーはまた声を立てて笑い、眩しそうに目を細めた。
どうやら子ども扱いをやめる気はないらしい。
「俺の前で背伸びする必要はない。
お前はただ前だけを見ていろ。道を作るのは俺の役目だ」
ブンと腕を振り上げ、ライダーは自身の得物――九歯金巴を構えた。
指し示すのは天に捧げられた聖杯。
▽ ▽ ▽
赤く染まる空を見たことがある。
太陽の光ではない。
月の光でもない。
あれは大河を焼き尽くす船団の炎。
吐く息さえも焦がしてしまうほどの一面の炎。
やがて、天をつかむであろう一人の男はこぶしを掲げた。
その後ろ姿を少女と重ね合わせる。
赤は始まりの色。
そして勝利の色だ。
紅き猛虎は月を呑み込み天高く吠えた。
▽ ▽ ▽
視界にノイズが走る。
目を開くとそこにはいつもと変わり映えのしない東京の姿。
幾万もの摩天楼の光にあふれ、月は青白い光をたたえていた。
行き交う人々の姿。
直斗は大きく深呼吸をし、歩き始めた。
午前0時。
魔都――東京
▽ ▽ ▽
【マスター】白鐘直斗@Persona4
【マスターとしての願い】聖杯を見極める
【Weapon】拳銃(でいだらのおやじの美術品のため殺傷能力は低い)
【能力・技能】 ペルソナ召喚(スクナヒコナ)
心の形を具現化したもの。魔術師ではないが、多少の魔術行使が可能。
即死系(ハマ・ムド)が得意ではあるが、魔術素養のあるマスターや対魔力のあるサーヴァントには無力。
【人物背景】
白鐘家の5代目探偵。
警察とは捜査協力をしている。公安警察にもパイプを持つ。
容姿端麗で冷静沈着。探偵王子の異名を持つ。真面目で礼儀正しいが、人付き合いは苦手。
小柄な体格で、キャスケット帽がトレードマーク。実は男装の女子なのでボクっこ。
女性であることにコンプレックスを抱いていたが、稲羽市にて起きた連続殺人事件を追う仲間たちと出会い、変わっていく。
P4U2の後(ゴールデンウィーク後)を想定。
【方針】聖杯についての情報を集める
【CLASS】ライダー
【真名】魯粛@真・三國無双7
【ライダー】筋力C 耐久C 敏捷E 魔力C 幸運D 宝具A
【クラススキル】
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
北方の出身のため騎馬の心得もあり、呉の都督(総軍司令)でもあるため船団の指揮も可能。
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【属性】 混沌・中庸
【保有スキル】
軍略:C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
話術:A
言論にて人を動かせる才。 国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
赤壁の戦いでは劉備との同盟の他、降伏論に傾きかけていた軍を開戦へと導く。
勇猛:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
無辜の怪物:D
本人の意思や姿とは関係なく、風評によって真相をねじ曲げられたものの深度を指す。
三国志演義でのお人好しで諸葛亮に振り回される人物ととらえられることが多い。
一部スキルやステータスにマイナス補正あり。
【宝具】
『単刀赴会』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:99 最大補足:ー
単身で敵地に乗り込み、現代では軍神ともたとえられる関羽と正面から堂々と交渉した荊州の地を取り返した逸話に基づく。
故事成語で伝えられている単刀赴会は三国志演義からのもので逆の内容だが、正史では上述の通りである。
効果範囲内における宝具の使用を無効化および一切の攻撃を中止させることが可能であるが、自らも相手への攻撃が無効化される。
使用条件としてマスターを除いて効果範囲内に共闘者がいないこと。効果範囲内にいる第三者も強制的に戦闘行動が中止される。
『孫呉大都督』ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
赤壁の戦いにて曹操軍を打ち破った孫呉の誇る大船団と兵卒達を召喚する。
兵卒たちは数時間の現界が可能(魔力消費あり)。火計を得意とし、遠方からの火矢にて一面を焦土と化す。
二代目都督(総軍司令)とされ赤壁の戦いへの参軍はしているが、周瑜よりも使用時のランクは落ちる。
【Weapon】
九歯金巴(きゅうしは)※金+巴で一つの漢字。
鍬のような長物。西遊記にでてくる猪八戒の武器と同等。
地形により発動する力が変化する。地面を隆起させるなどの攻撃も可能。
史実では撃剣の心得の他、盾を射抜くほどの騎射の技術を持つとされるが適正が下がっている。
【人物背景】
後漢末期の人物。周瑜に見いだされ、後の呉の皇帝孫権に仕える。
若きころから先見の明があったが、周りからは理解されず、「狂児」(変わり者)とあだ名された。
もともとは土着の豪族であり、周瑜に蔵ごと食料をわけあたえたとの逸話もある。
また、いち早く天下二分、そして三分を唱えたことでも知られる。
物語としての三国志における気弱な印象とは異なり、豪放磊落な男である。
上背は高く、筋肉質。豪胆で武術の心得もあるが、戦うよりも交渉に持ち込むような駆け引きが得意。
稀代の軍師と称される諸葛亮にも一目置かれている。
後輩からも慕われる、頼れるおじさん。
最終更新:2015年01月18日 07:26