Fate/Another Servant HeavensFeel 2 第5話

──────Lancers & Fighters  Side──────

 ついに闇が到来する。
 それぞれのマスターの思惑が交錯する中、世界はいつも通りに冬木を夜に染め上げていく。


「よし。これで準備は全て完了っと」
 綾香は出かける準備を済ませ、頬を叩いて気合を入れてみる。
 バチン!とちょっと威勢が良すぎる音が炸裂する。
 ……いたい……しまった、少々力を入れすぎたらしい。
 今度は逆に叩いた頬を撫で擦る。

「はっはっは!主殿はお茶目でござるのぅ」
 ランサーに今の恥かしい様をバッチリ見られていたらしい。
「ランサーうるさい」
「おっと、これは失敬した」
 などど謝罪の言葉を口にしながらも、霊体化しているランサーの口元がニヤついているのは気配でわかる。
「ふんだ。準備も出来たんだし早く行くわよ」
 ランサーを置いてズンズンと部屋を出る。

「ところで主殿。少し顔色が優れんようでござるが大丈夫か?」
 先に行く綾香の背にランサーは少し心配そうに声をかけた。
「え?顔色悪いのわたし?」
「うむ、少し青い気がするゆえ問うてみたのでござる」
「う~ん。特に体調が悪いとも感じないから……恐らく、緊張のせいじゃないかしら?」
 そう言いならが綾香は特に問題なさそうに笑った。
「まあ主殿がそう言うのであれば、それ以上は拙者は何も言わぬよ」

 ランサーはそう言って綾香の背後に無言で忠犬のように寄り添う。
 二人で山門を潜り、馬鹿長い階段を下る。
 いよいよなのだ。

 これが初陣。沙条綾香にとって自分の意思で戦う最初の戦。

「そうだ主殿!拙者訊き忘れていたことがござった!」
 初陣という現実に少し緊張し始めた頃、唐突にランサーが大きな声を上げた。
「ひゃっ!!?ちょ、ちょっとランサー!びっくりさせないでよ!!」
「いや申し訳ござらん。だがどうしても訊きたい事があったんでござるよ!」 
 驚かされて少し怒る綾香にもランサーは侘びはすれど、それ以上に大事なんだと言わんばかりの真剣さ詰め掛けた。
「ん、で?何が訊きたかったの?」
 あまりのランサーの真剣さに流石の綾香も何事かと耳を傾ける。
 ランサーはすぅっと一呼吸だけ深呼吸をした。

「────徳川の天下は終わるのでござるか?」
「─────」

 ランサーの口から飛び出したのは聖杯戦争とはなんら関係ない事柄。
 だがそれはこの侍にとってはとても、とても大切な事柄だった。

「───ん。そうよ。残念だけど徳川の世は終わるわ」
 だからこそ、彼には嘘偽り無い真実を告げてあげた。

「─────。そうか、徳川の天下もついに終わりを迎える時が来たのでござるなぁ」
 だが思いのほかにランサーの返事は軽やかなものだった。
「あら、もっと残念がるのかと思ったんだけど?」
「いやそりゃ残念と言えば物凄く残念ではあるが……。
 それでもこの戦乱続きだったこの国を何十年何百年と統治したのでござるから、我が主君の徳川家康もきっと満足してござろう」

 そう締め括ったランサーの声はやはりさっぱりとしたこの侍らしいものであった。

 だからふと大事なことを思い出した。
 このもう何も願いなんて無い、なんて言わんばかりの未練も何も無いサッパリとした声で。
「そう言えばランサー。凄くバタバタしてたから訊きそびれちゃったんだけど……貴方何が望みで召喚に応じたの?」
 サーヴァントも何らかの願いがあるからマスターの召喚に応じる。
 彼女の祖父の説明では確かにそう言っていた。
 だからマスターはサーヴァントの願いを知っておかないといけないとも。 

「ん?拙者が召喚に応じた理由でござるか?
 いや単に英霊なんていうつわもの、もののふ、それに猛者といった連中と戦ってみたかったからでござるが?」
「─────は?」
「ん?────拙者、何か変なこと言ったか?」
 などど小首を傾げる侍。
 有り得ない。普通有り得ない。戦いたいから人間の下に付く神様が何処にいると言うんだろうか?
「真面目に応えて欲しいんだけど、ランサー?」
「主殿は意外と失礼でござるな。拙者をホラ吹きのような扱いにするとは!」
「だって普通に考えたらまず有り得ないわよ!」
「いやいやそれこそ早計でござるよ!なにせ拙者生前は己の好きな戦いなどしたこと無かったでござるからな?」
「………ちゃんと訊いてあげるから少し説明してくれない?」

「言葉通りの意味でござる。拙者が徳川家に仕えていたことは既に主殿も知っての通り。
 そうして拙者は徳川に仕える武士として忠節に励み、戦いで得た勝利は全て徳川に捧げた。
 それは手柄の褒美を貰っても拙者が出世しても変わらぬこと。
 だが……こうも思ったことは確かにあったのだ。
 とある合戦の際に果した一騎打ち。
 ああいう戦いを徳川の武将本多忠勝としてではなく、武士本多忠勝として果し合ってみたいと。
 しかしそれでも本多家は父祖代々徳川に仕えてきた。拙者も徳川に仕え徳川の為に死ぬのが自身の忠道と心得ておったからな。
 彼の豊臣秀吉殿からの誘いもそれを理由に断った以上はそのような私情で戦をするなど言語道断」

 そこでランサーは一旦言葉を切る。
「……だがしかし、死して今、こうしてたった一度の機会を与えられた。
 徳川の武士本多忠勝ではなくランサーのサーヴァント本多忠勝に戦う機会が与えられたのでござる。
 ───ならばこのたった一度の好機、逃がす手はあるまい?」

 そう言ってニッと口元に笑みを浮かべるランサーの顔はとても生き生きとしていた。
 それはとても嘘を言っているような顔には見えない。

「それに、だ。このような愛らしい女子が主人と言うのも真に貴重な経験でござるからな」
 なんて茶化してランサーはこの話を締めた。


 綾香とランサーは深山の中心地へ足を進める。
 とりあえず敵の痕跡を探すならまず中心部から始めよう。



      ◇       ◇


「マスターらしき人間を見つけたぞファイター。こちらの網に気付かれた様子は無いな。どうやら大した腕ではないらしい」
 民家の屋根の上に陣取った遠坂がファイターに声をかけた。
 どうやら町の中に張っていた網に何者かが掛かったようだ。

 夜が深くなるのを待った遠坂たちは他のマスターよりもいち早く町へと繰り出し網を張った。
 そうしならが遠坂はらしくないと思いながらも敵を求めている自分に苦笑した。
 ”まったく、本当にらしくないな今日の私は”
 どうも今朝から調子が悪い。
 つまらない夢などに苛立ちを覚え、ましてやそれを引きずるなど本当にらしくない。
 それから数時間ほど町に網を張って獲物が掛かるのを待ったがついに当たりが出たのだ。

「ならどうする遠坂殿?このまま即行で仕掛けるのか、それとも様子見をするのか?」
「勿論、即仕掛けるような愚は犯さんよ。暫らく様子を見る」
 ファイターの問いに即答する。
 そう、いくら今日の彼がいつもと違いらしくない行動をとったとしてもその根底は変わらない。
 故にどんな敵かも見定める前から仕掛けるなんて愚行は絶対に犯さない。

 遠坂は偵察に翡翠で出来た鳥を空へ放った。
 使い魔は空高くに飛び上がるとそのまま標的の付近に一直線に飛んでいく。

「遠坂殿は敵は何のクラスだと思う?」
「………キャスターかアサシン以外だろうな」
 暫らく黙考し、彼なりの推理をする。

「まず、あれがマスターだとすると当然サーヴァントも側に居る筈だ。キャスターとアサシンはその時点で矛盾が出る。
 そのどちらかを引いた場合、普通はまずあんな風に堂々と外を出歩かない。
 暗殺者と魔術師のクラスは根本的な戦略が他の戦士系クラスとは違うからな。
 となると直接的な戦闘力に長けた三大騎士クラスかライダー、バーサーカーのような真っ向勝負のサーヴァントだが……さて」

 ファイターのクラスがある時点で今回の聖杯戦争は基本の七クラスではない。
 となると必ず除外されたクラスがあるのだがそれは果たして何のクラスか。

「昨日までに確認が取れたクラスはファイター、セイバー、それにキャスターらしきクラスか。
 三騎士クラスの除外はまず有り得ないであろうから……残りはライダーかバーサーカーそれとアサシン。一応キャスターもか。
 ……とりあえずそのどれかが除外だろうな」
 昨日までに知りえた情報と予め自身が知っている情報を整理する。
「遠坂殿的には一番除外されて都合がいいのはアサシンか?」
「当然だ。私がというよりは全マスター的に、だな。私としてもアサシン対策の為にも早めに全クラスを確認しておきたいところだ」

 マスター殺しのアサシンクラスが居なければ此度の彼の聖杯戦争の勝率はさらに上がる。
 影からこちらの足元を掬おうとする輩が居なければ戦局は真っ向勝負の色が強くなる。
 そうなれば戦闘力に優れるファイターの勝算は高い。

「確かに闇から忍び寄るアサシンが居なければ私の警戒の負担も軽くなるからな」
 そう軽口を言いながらもファイターは周囲の気配に気を張り続ける。
「もしアサシンが現界していた場合は私ではまず気付けない。そうなった場合はファイター、お前の持つ超感覚が頼りだ」
「ああ、判っている。周辺は私が見張るから遠坂殿は敵マスターらしき人影の監視を」

 その後両者は無言で各々の担当に力を注いだ。


          ◇      ◇ 


「………う~ん。なんとなく見られているよう~な、いないよう~な気がしないでもないでござるな」
 深山の中心へ着いてからしばらくしてランサーはそんな不穏当な発言をしてきた。
「え!?ちょっと見られてるってまさかマスター!?」
「いや、霊体化している今の拙者ではマスターの視線を感じるのは無理だ。だからこれはもしやだが───」
「サーヴァント───?」
 驚きと戦慄の入り混じった声を上げる綾香にランサーは、かもしれぬ。とだけ返した。

「もしかしてわたしたち……バレてる?」
「う~~~む。もしかすると敵マスターの妖術に引っ掛かったのやもしれぬな。そういう事も魔術師と言うのは出来るんでござろう?」
「え、ええ。確かにそういう感知したりする魔術はあるわ。でもわたしは……」
 綾香はそれに気付かなかった。
 しかし、現に彼女は遠坂が張った網に見事に引っ掛かっている。
「ううん。わたし以上の魔術師が居ればわたしじゃきっと気付けない。既に網に引っ掛かってる可能性は十分にある」
 現状自分たちが置かれている可能性を素早く、決して驕らずに判断する。

 あとしなければいけないのは───そうだ、頼りになる相棒の助言を訊くことだ。

「ランサー、こういう場合どう出るのがいいの?」
「………仮に敵に主殿が見つかっていたとしても、初めから敵を釣るつもりで我等は町に出てきた。
 ならばいっそあからさまに気配を発して挑発するのも手でござるな。どっちみち拙者は真っ向勝負しか出来ぬのだし」
「なるほどね。ならそれでいきましょう」
「良いのか主殿?これだと雑魚が釣れるか鯨が釣れるのかまでは流石に判らぬでござるぞ?」
「いいの。町に出るって決めた時から戦うこともちゃんと計算に入ってた。
 それに相手が雑魚だろうと鯨だろうと最後には戦わないといけないんなら同じことよ」

 勝ち気に言ってのけてから移動を開始する。
 アドバイス通りにランサーと一緒に自身もこれでもかっ!ってくらいに気配放ってやる。
 それから出来るだけ広い場所も探す。
 どうせやるのならランサーの足を活かせるこちらに有利なある程度広さを持つ戦場だ。


 二人は足早に戦場とするべき場所を探しながら移動する。
 彼女たちは気付かないが既に何人かは二人の思惑通りに餌に喰らいつきかけていた。
 誰が釣れるのかはあとは綾香達の竿を引き上げるタイミング次第であった。



       ◇      ◇


「これはこれは、随分と思い切りの良いことだ」
 そう呟く遠坂の顔は呆れているのか喜ばしいのか判断が付きにくい顔をしている。
「ん?何か動きがあったのか遠坂殿?」
 そんな主の変化に気付いたファイターは遠坂に一声かけた。
「一応な。監視しているマスターらしき人影だがマスターと断定していい。
 サーヴァント共々ああも気配を放たれてはマスターで無いと弁護する方が難しい」
 なんて苦笑交じりにファイターへ事情を説明する。
「サーヴァント共々気配を放っている……?遠坂殿、ならそれは」
「ああ。明らかに私たちに対する挑発だな。
 こういう戦術に出るのなら真っ向勝負を前提としたサーヴァントタイプで有る可能性が非常に高い。
 マスターが違うからセイバーを除外すると、残るはランサーかライダーだな」
「バーサーカーの可能性は?」
 ほぼ断言するような口調の遠坂にファイターが残っている可能性を示唆する。
「いや、恐らくバーサーカーである可能性は低い。
 バーサーカーのクラスと言うのはクラススキルの狂化で生前よりも遥かにパワーアップさせられる。
 しかしその恩恵の代わりにとりわけマスターに掛かる魔力負担が非常に大きいクラスでもある」
 遠坂は淡々とファイターに説明を続ける。
「だから通常のマスターならあんな複数回戦闘するかもしれないような戦術はまず取れない。
 私であってもバーサーカーで二連戦するかもしれないような状況に陥る戦術は取らないだろうからな」

「なるほど、となると確かにランサーかライダーの可能性が高そうだ。でマスターこの後の行動は?私ならいつでもいけるが」
 ファイターが今後の行動を促して来る。
 挑発に乗るか、観察だけ続けるか。
 普段の遠坂ならば当然観察を選ぶところだが。

「挑発に乗ってやれファイター。私は戦場の近くで身を隠匿し援護する。何か指示があったらこちらから出そう」
 マスターは戦場の近くで身を隠して戦況を見守り必要ななったら援護、または指示を出す。
 これは後の聖杯戦争でも常道となる基本戦術の一つだった。

「了解した。────ああそうそう、大事なことを訊き忘れていた」
 うっかりしていたといった風な口調でファイターが言う。
「ん?なにをだね?」
「私はどこまでやっていいのだマスター?」
 主人のGOサインを待つ猟犬のように、ファイターは自信に満ちた声で訊いてきた。
「倒せるのなら倒してしまって構わない。だがそうだな、リスクが大きい魔剣は使うな。
 だがお前が必要だと判断すれば『尖輪猟犬』の方の使用は許可しておく」
 まあそれでも使わないで済むのならそれも出来るだけ使うな。と付け加えてファイターに指示を出した。


           ◇       ◇


 二人がその男の気配に気付いたのはつい先程の事だった。
 自分たちに有利な戦場を探し当て奇襲に備えて周囲を警戒しながら陣取ることおよそ10分強。
「主殿、お目当ての魚が釣れた様でござるぞ」
 ランサーは綾香に素早く注意を促す。
「………意外と早かったわね」
「ここまで堂々と現れるとは───恐らくは拙者と同様に真っ向勝負を基本とするサーヴァントでござろうな」
 敵の気配はゆっくりと此処に近づいてきている。
 敵もランサーたちと同様に気配を全く隠そうともしない。

 そしてついにその敵は槍兵たちの前に姿を現わした。

 男の姿に合わせてランサーも実体化し主の前に立つ。

「───────────」

 三者共に押し黙ったまま何も言葉を発しない。
 緊迫した空気の中でお互いに相手の姿を観察する。
 ランサーたちの前に現れた男は決して豪奢とは言えない外套を纏っていたが、それでも数多の戦場を潜り抜けてきたのが雰囲気だけで判る。
 全体的にガチガチに固めた重武装では無く、動き易く頑丈そうな装束を中心に装備している。
 だが男の服の上からでも判る鍛え抜かれた筋肉がこの男の強靭さを確かに主張していた。
 腰から下げた鞘には少し変わった柄をした剣を収めている。
 立派な顎鬚はこの男に良く似合っており、並々ならぬ風格を漂わし。
 こちらを見つめる眼は穏やかでありながら激しい意志を湛え、ハッキリと今から戦うと告げていた。

 ランサーの方は黒い鎖帷子のような、こちらも堅さよりも動き安さを重視した軽装で全身をピッタリと覆っていた。
 あまり大きくは無い体格をしている。
 故に、嫌でもその不釣合いな獲物が眼に入る。
 一際目立つ肩に預けた槍は呪布か何かで包まれているが、体の割合に対して普通ならば有り得ない程の大きさでその存在をこちらに知らしめていた。
 髪を後ろに流した短髪に顎から生えている無精髭。
 退くことなぞ知らぬわと言わんばかりの力強い瞳がファイターの視線と交差する。

「─────」
 一方の綾香は緊張から声が出せなかったがライダーに襲われた時に比べると思考を巡らせるだけの余裕があった。
 ”マスターが居ない?”
 敵のサーヴァントの姿はあるのに周囲を見回してもマスターの姿が何処にも見当たらない。

「我らが誘いに応えてくれるとは、中々に骨のある武人とお見受けするが───おぬし如何なサーヴァントか」
 隙無く問いかけるランサーに男はファイターのサーヴァントと名乗る。
「なるほど。ところでファイターおぬしの主、姿は見えぬようだが何処でござるかな?」
 と、ランサーも気付いていたらしく敵マスターの所在を主の変わりに問い詰めた。
 だがファイターは目を瞑り、さてな。と言うだけでそれ以上は何も言わなかった。
 詰問が無駄だと悟るとランサーは綾香にマスターが近くに潜んでいるかもしれない旨を伝えると数歩前に歩み出た。



 ファイター達から数十m以上離れた木の上に遠坂の姿はあった。
 ファイターの戦闘状況を随時把握でき、なおかつ自身の姿を魔術による迷彩で隠匿出来る場所がここだった。
 既に彼によりここら一帯には人払い用の結界が敷かれており無関係の人間の立ち入りを禁じている。

「ほう、あの女が連れていたのはランサーか。それに見た感じ……侍か?」
 となるとあのランサーは日本出身の英雄でしかも武将である可能性が高い。
 そう判断すると素早く脳裏に槍兵になり得そうな人物を羅列していく。
 その中には本多忠勝の名前も当然のように入っていた。

「あの槍に巻かれた呪布が少々邪魔だな……形状が正確に把握できない。なるほど実力は大した事は無くとも知恵は回るようだ」
 あの撹乱用の幻惑魔術が施されている布は効果自体はそう高くは無いが、有るのと無いのでは天と地ほどに差がある。
 ここに身を隠している以上、遠坂では手が出せない。

 となれば───。
 ”ファイター。ランサーの持っている槍の呪布を外させろ”
 ファイターへ向かって念話を飛ばす。すると即時ファイターからの返信があった。
 ”───アレはまず間違いなく宝具だぞ?”
 ”構わん。宝具を使用をさせたいのではなく、宝具の全容を見たいのだ。あのランサーはこの国の英雄である可能性が非常に高い”
 ”なるほど。あれだけ特徴的な大槍だ、地元の遠坂殿ならもしかすると特定も可能という事か───了解した”

 遠坂は短くファイターへ指示を飛ばし、今から始まる戦いを見守った。 



 ランサーの歩みに応じてファイターは鞘から剣を抜き、ゆったりと眼前へ構えた。
 両者の激突は数秒後か、あるいは数分後か。
 だが確実に起こる戦いに綾香は息を呑む。
 二人から滲み出る殺気に息が止まりそうになる。
 だが殺気だけで息を止められてる場合じゃない。
 サーヴァントにはサーヴァントの役割があるように、マスターにもマスターの役割がある。 
 聖杯によりマスターに与えられた透視能力でサーヴァントの能力を正確に把握し自分のサーヴァントに適切な指示を与える事。

 そうだ、その為にここに居るのだ。あくまで戦う為にこの場所に立っているんだから───。

「ランサー!そいつ攻撃力と防御力がとんでもなく優れてる!真正面から行っちゃ駄目、速さで勝負して!それと宝具の使用は貴方が判断しなさい!!」
「応よ───!」
 綾香の叫びを皮切りに二人の戦が始まった。

 ランサーは自慢の脚を使い一瞬にしてファイターとの距離を詰め寄る。
 標的との間合いは3mと半分。
 必殺の速度を以って大槍を突く。
 だがそれに呼応して逆袈裟から切り上げられたファイターの尖剣が槍の到達を阻む。

 ファイターはネイリングに魔力はまだ込めない。
 マスターの指示に従いまずは敵の大槍を蔽った呪布を開帳させるように誘導する。

 一方ランサーは敵から遠く離れた間合いの長さを存分に利用し攻撃を繰り出す。
 しかしまだ脚は使わない。
 いつでも使えるように準備はしているがまずは敵の技量を見極めるのが先決だ。
 空気を切り裂く音と共に槍が飛んで来る。
 ファイターも手にした名剣を存分に振るい迎撃するがランサーとの距離が詰めきれない。

 打ち合う数が一打、一打と増えてゆく。
 時間が一秒、一秒と刻まれてゆく。
 いくら弾いても即座に次が襲い掛かってくる刃。
 敵との距離が詰められない。敵との距離が離せない。
 小手調べする両者は見事に膠着していた。

 もう何度目になるのか敵が放つ槍の穂先を逸らす。
 槍の速度も速いがそれ以上に敵までが遠い───!
 ランサーは通常では有り得ない程に遠い間合いから攻撃を放ってくる。
 あの槍兵の振るう大槍は決して見掛け倒しではない!
 心臓に真っ直ぐ飛んで来る穂先を剣で逸らし、その出来た隙を突いて一気に間合いを詰める。
 だが、たちどころに真横から旋風が凪がれる。
「ふっ、ちぃ!」
 素早く身を屈めてやり過ごすがその僅かな隙に大槍の刺突が散弾の様に降りかかり元の距離に押し戻される。

 ランサーは穂先をファイターの体の中心に向けて構え直した。
 一方のファイターも左の掌を前に突き出し、体を横向きに、右手に握った剣先をランサーの喉許へ真っ直ぐ向けて構える。

 ファイターが獣のように大地を蹴り、猛然と槍兵に向かって襲い掛かった。
 突風を纏い外套をはためかせながら獣は距離を詰める。
 それに応戦する大槍はまるで獣を狩る猟師の技のように無駄なく迫る獣の命を狙う。

「ぬああああっ!!!」
 雄叫びを上げ、渾身の力で薙がれた尖剣は命を取りにきた敵の刃を見事に弾きランサーにたたらを踏ませた。
「くお───!?」
 大槍は手放さなかったがランサーの体は大きくバランスを崩し、絶対の隙をファイターの前に曝け出す。
 そして、その隙をこの戦士が決して見逃す筈も無い───!
「ランサー!!」
 綾香の叫び声をランサーの頭もろとも切り裂くような一刀が侍の頭上に打ち下ろされる。
 が、ファイターのとどめとなる一撃は虚しく宙だけを斬っただけで、決してランサーには届いていなかった───。 
 頭上から振り下ろされた一刀をランサーはまるで見切っていたとばかりに舞うようにして身を回転させて避けると、一気に後方へと飛び退いて距離を開く。

 一瞬の攻防。
 ファイターが突進をかけて一秒も経過していないこれだけの攻防が繰り広げられたことを二人のマスターは理解できない。

「なるほど。主殿が申す通り相当の力自慢のようだ」
「そういう貴殿こそ、その自慢の大槍と脚は使わぬのか?」
「なんだ、使って欲しいのでござるかファイター」
 互いに離れた距離を利用し一息つく。
 戦況は端から見ると全くの互角だった。
 しかし当事者達の認識は全く違った。

 ”大槍を隠匿している呪布の開放まで後、もう一押しと言ったところか……。”
 ”あれが外海の英傑の力……ライダーも強かったでござるが奴は桁が違う───!”

 ファイターとランサーでは基本能力に差がある。
 ここまで差がついてしまうとランサーはその長大な間合いを使いレンジに進入してくるファイターを迎撃するだけではとても抑え切れない。
 ファイターも攻め切れなかったとはいえ現にランサーはファイターを追い散らすのが手一杯の状態だった。
 おまけに両者の破壊力にこれだけ差が開くとランサーはまた先程の様な槍ごと弾き飛ばされるという自体に陥りかねない。

「いいだろうランサー。貴殿が出し惜しみすると言うのであれば……こちらが先に手の内を曝すだけだ」
 そう呟き右手に持つ風変わりな剣を下ろした。
 しかしよくよく見ればあの尖剣、変わっているどころの話では無い。
 あれは一体……?
 ───瞬間。その尖剣は物凄い勢いで回転し始めた!

 ランサーにはそれが空気を引き千切りながら獰猛な牙を剥いている猟犬のように見えた。
 ”なんと卦体な武器を……これが奴の言っていた手の内か!?”
 敵はとんでもない武器を持っていた。
 ───あれが奴の宝具なのか?

 ランサーのその一瞬の懸念が致命的な後手に繋がった。

 ドウッ!っという地面を踏み砕く音と共に猟犬が槍兵の首を喰いちぎる為にその牙を剥く。
 ───右前方に転がれ───!
「───!?」
 咄嗟に頭によぎった直感に全生命を賭け金に出して、賽を振る。
 賭けは見事に勝ち無様に転がりながらも回避はギリギリで成功。
 敵の刃は敵ごと後方に滑り流れていく。
 だが初撃はなんとかかわせただけに過ぎない。
 ファイターならば即座に次弾を放ってくる。
 迎撃を、迎撃しなければ死ぬ───!!

 ファイターは初撃を外すと素早く体を反転させ、再びランサーへ目掛けて突っ込んだ。
 魔力を叩き込んで攻撃力を増強したネイリングの打突はさながらライフル弾の様に空気を切り裂きながら直進する。
 狙いは敵の額。
 避けられた場合は即座に薙ぎ払いに転換出来るような、首を狙う一撃を繰り出す。 

 体勢を立て直したランサーの大槍がファイターの肋骨を粉砕せんと迫る。
 槍の穂先はとうに体の背後にある。柄の部分なぞ所詮はただの鉄の棒。
 我が肉体ならば十分に耐えきれる。
 ───粉砕できるものならば……粉砕してみるがいい、ランサー!!

 大槍の柄が敵のあばらに喰らいつく。
 しかしファイターは止まりもしなければ防御すらもしなかった。
 人を何かで殴りつける様な鈍い音が鳴る。
「──っ」
 槍の打撃を受けてもまったく止まらないファイター。
 否、これは単純にまともに効いていないだけの話。

 ファイターが迫る。ランサーの額を狙っている。
 それはかわせる、だが間髪入れない二撃目必ずある。
 無理だ、避けきれない。二撃目がどうやっても避けられない。
 拙者の首が落とされて終わる。

 迫る敵の姿を目に焼きつけ……一瞬の深呼吸をして精神を集中させる。
 血流は魔力。
 サーヴァントにとっての魔力は即ち、力そのものだ。
 全身に滾る魔力を全て使えばこの桁違いの敵とも拮抗出来る。

 ───良いだろうファイター。そんなに見たいのであらば、槍兵の武器であるこの速さ───
「とくとご覧頂こうか───!!!」

「───!!?」
 驚愕はファイターからのものだった。
 敵の額に剣先を突き込み、間髪入れずに敵の首を跳ねに掛かった。
 これは必殺の一撃。
 ファイターはランサーの額への攻撃は敢えて避けやすいように放っていた。
 当然敵は回避する。だが、だからこそ回避した頭を追うように二発目の牙を用意していたのだ。
 ……なのに。
 なのに……その跳ね飛ばす筈の敵の首が存在しなかった。

 ファイターの前方15m先にランサーが着地する。
 あの一瞬でその場での回避は無理と判断し体ごと飛び退くとは。
 飛び退いたランサーへ追撃をかけようとするファイター。
 だがそれは未遂で終わった。
 大槍と尖剣が弾け合う音が響く。

「速い!?」
「遅い!!」

 窮地から脱出した後のランサーはさっきまでとはまるで違った。
 ファイターの突進を迎撃していただけの戦法から一転して、その脚を存分に利用して自身から攻撃を仕掛けてきた。
 草原を駆けるチーターのような実に滑らかな疾走。
 脚が生み出した突進力を不足している攻撃力に上乗せする。
 咄嗟に防ぐファイターの隙を見逃さずに速攻で三連撃を打ち込む。
 反撃するファイターの攻撃が空を切る。
 ランサーはファイターとの距離を一瞬で0にし、攻撃が終わると一瞬で10に開く。
 故にファイターの攻撃はランサーには当たらない。
 いや、それは違った。
 ランサーはファイターの攻撃が当たらないように攻撃していた。
「っ!またか!反撃に転じ難い箇所ばかりを───ランサーめ頭もキレるな!」
 再びファイターの剣が空を切る。
 ブルルルルゥゥルゥウウ!と回転するネイリングは獲物に食い付けなくて不満を漏らすような音を奏でる。

 ファイターが突撃をかけても即座に左右後方に飛ばれて追いつけない。
 今のランサーは広い戦場と槍の長大な間合い、そして脚の速さを存分に使っていた。
 手強い───!
 二人の脳裏を通り過ぎる同じ言葉。

 それはランサーにとっても同じだった。
 やはりあのファイターは恐ろしく強い。
 いくら宝具を封印したままとはいえランサーは本気に近い状態でファイターを攻め立てている。
 なのになかなかあの戦士には隙が出来ない。
 あまつさえ攻め方が甘ければその隙を狙って反撃してくるのだ。
 ファイターの単純な戦闘力は明らかにランサーよりも上だった。

 ”────だが、そうでなければ意味が無い……”
 そうだ、意味が無い。
 自分は不満だったのだ。武士として忠節を尽くし抜けた人生には何一つとして不満は無い。
 全ては主の為の戦、主の為の勝利、主の為の栄光だった。
 だがあの戦国の時代。
 数多の駆け抜けた戦で討ち取った数々の敵の手応えの無さに……拙者は一抹の詰まらなさを感じていたのもまた事実。
 だからこれでいい。
 好敵手とはこうでなくてはならない。

 このくらいは強くなくて貰わねば───現世まで召喚に応じた意味が無い!!

「おおおおおお!!」
 気合を爆発させ敵へと突貫する。
 走り抜けながら蜻蛉切を覆う呪布を解放した。

 ──我が名は忠勝なり。
 その名に掛けられた意味の如く、如何な敵を前にしても、ただ勝つのみ。
 決して敵を前にして下がらぬ怯えぬ退かぬ、この身は我が相棒と同じく直進するのみよ───!!!!



 ランサーは気合と共に超突進を掛けてくる。
 大槍に巻かれている呪布が開放され、その全容をハッキリと曝け出す。
 それと同時に呪布の魔術によって阻害されていた名大槍の魔力も解放された。
 ついにランサーがファイターへ本気で牙を剥いたのだ!

 ”これで遠坂殿の指示通りの結果は出せた─────しかしこれは!?”

 真っ直ぐにこちらへ疾走してくるランサー。
 だがランサーには真名を解放しその能力を発動させる気配がまるで無い。
 マズイという予感がファイターの脳裏に浮かぶ。
 宝具を使わせる前に速めに叩いておくべきだったかも知れない。
 内心焦りの色が濃くなる。
 焦りの理由は唯一つ失敗したかもしれないという疑念。

 音速で打ち出された必殺の一撃。
 これ以上に無い会心の一刺は、

「───がほっ!!!」

 ファイターの流血を以ってその結果を出した───!

 彼の嫌な予感は見事に的中。
 困惑、激痛、焦燥感が脳裏を埋め尽くす。

「───シャッ!!」
 一撃目と同等の速度を以って第二激が打ち出される。
 頭の反応が一瞬遅れた。
 だがファイターの肉体は思考よりも先に為すべき事を完遂していた。
 ブルルルルルルルゥゥゥゥウウウウ!!
 ネイリングは一段と激しく回転しながら槍を払う。
「……かはっ!?」 
 今度は吐血。
 肉体を鈍痛が蝕む。
 打たれる前に打つ!
 ランサーが刺突の後に引いた大槍の穂先を払い除けて懐に入ろうとする。
「くぅ!!」
 単純な攻撃力だけならファイターが圧倒的に有利だ。
 パワーに物言わせて敵の武器を払い除ける程度造作も無い。
「が──?あ?」
 謎の鋭利な痛みが体に走り抜ける。
 槍の攻撃は受けていない。というよりこちらが逆に攻撃したのだ。

 一体何故!?
 混乱するファイターは一旦、飛び退いて距離を開く。
 だが。そんな事を許す槍兵ではなかった。
 大槍を持った旋風が突っ走ってくる。

「逃さぬでござるぞ!ファイターァァァ!!」
 超広範囲の薙ぎをお見舞いする。
 考える時間は与えない。
 『前進する大幻槍』と共にひたすらに前進し前進し前進して奴を土俵から叩き落す。

 だが焦りがあるのはランサーも同様だった。
 なにせランサーとファイターでは地力で差が開いている。
 この局面で宝具を使われた場合どうなるのか。
 彼はこの場で一番理解していた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
 槍の刺突と返しが残像のせいでスローで見えるほどの超高速の槍の雨。
 散弾のような大槍の爆撃は瞬く間に防ぎに入る尖剣の持ち主を嬲りモノにしてゆく。

 だが幻槍に嬲られながらもファイターの経験と戦闘理論がある一つの結論に辿り付いていた。
 ───槍の穂先を払い除けただけでダメージを受けた先の奇怪な現象と今のこの状態を考えるとあの大槍の能力は……。

 穂先に触れる者にダメージを与える大槍かなのか───!!?

「……ぶぐっふ、プッ!!」
 槍の散弾を弾き落とす度に流血する。
 槍の散弾を叩き落とす度に損傷を伴う。

 あえてもう一度言うがランサー本人の地力はファイターと比べるべくも無い。
 竜種すらも仕留めたファイターならば宝具など使用せずともランサーを倒せる。
 だが、ランサーが宝具を手にして戦った場合話は別だ。
 あの宝具を使用して戦うと、ランサーの戦力は倍加する───!

 ランサーの大槍に滅多打ちにされる。
 肉体に一撃たりともまともに喰らっていなくともあの大槍を防いだ時点で既に手遅れだ。
 ならば槍に触らなければいい話だが生憎ファイターの敏捷ではとてもじゃないが全弾全ては避け切れない。
 いや、あの侍が速さを武器とするランサークラスで現界した段階で彼の槍はかわし切れるものではなかった。
 よってファイターは回避可能な攻撃は出来るだけ避け、避け切れないものは打ち落としているのだが………

 傷を受けるに伴ない焦りがどんどん広がっていく。

 このままではまずい……持久戦になったらこちらが先に力尽きるのは明白!
 ───がその時。
 突然見る見るうちにファイターの傷が塞がっていった。

「「「───な!??」」」

 驚きはファイター、ランサー、綾香の三者から。
 そして咄嗟にその真相に気付いたのは他ならぬファイター自身であった。

 ”この治療魔術───遠坂殿か!”

 瞬く間にファイターの傷は全て塞がってしまった。

 ”────これならば圧し通れる!”
 それを好機と判断したファイターはランサーの槍の弾幕に被弾する事も顧みず突破しようと前進する。

 そう、彼らはすっかり失念していたが聖杯戦争とはサーヴァントとサーヴァントの潰し合いだけではない。
 マスターとサーヴァントが入り乱れたバトルロワイヤルなのだ。
 それは同時にタッグマッチの側面も持ち合わせている。
 なら……相方の援護をするのは至極当然!

「あの傷の回復───小癪な、ファイターのマスターの援護でござるか!!?」
 より一層苛烈に大槍をファイターに突き込んでいく。
 耳障りなほどに唸りを上げて切り裂かれる風と鉄が奏でる爆音。
 既にファイターとランサーの戦いで彼らの周囲はズダズダの有様だっだ。

 より強く、より速くランサーは大槍を操る。
 そう簡単に近づけさせるわけにはいかない。
 敵は持ち前の防御力とマスターによる傷の回復を足掛かりに強引に間合いを詰めてくるという戦法に切り替えてきた。
 奴は被弾を覚悟している。
 ファイターのマスターの回復を信頼しているのかランサーの蜻蛉切のダメージを全く恐れていない。
 ファイターはまるで重装甲の戦車のようにズンズンと槍の嵐の中を突き進んでいた。

 おまけに奴は───ライダーとは違う!?
 怒りを起爆剤にして立っていたライダーとは違い、明らかに戦闘続行スキルか何かを持っていると直感する。
 あの闘志は奴の……ここまでの人生で築き上げてきたものでござろうか?

 ランサーは知らない。
 常に独りで数々の怪物達と戦い勝利してきたファイターが得た不屈の闘志。
 それがファイターに備わった戦闘続行スキルの根底だった。

「ふ、はっ!───ぐ、ジャ!かはっ……!ダァ!!どうした、ランサー?このままでは詰められるぞ!?」
「ふん、刻一刻と切り刻まれておる癖によく吼えるでござるなファイター!」

 大槍を剣で弾き、逸らし、避け、被弾し、それでも前進するファイターと。
 大槍で敵の前進を妨げ、押し返し、刺し、少し後退し、それでも間合いを詰めさせないランサー。

 両者一進一退の攻防。
 傾かない天秤、変動しない立場。
 膠着状態の末、剣戟の隙を見つけたランサーによる後方跳躍で仕切り直された。

 二人の決闘者の距離が再び開く。

「ふぅ……このままでは埒が明かぬでござるな」
「私的には別にあのままでも構わなかったが?」
「いやいや、あのままではあまり”すまーと”ではござらぬよ」
 そう言ってランサーは軽く笑って見せる。
 しかしその表情も直ぐに引き締まったものに変貌した。

「御主ほどの強者の首級が欲しいのであらば───拙者も、少し芸を凝らす事にしよう」
 ───途端、ランサーの纏った空気が一変した。

 ”拙者とて手の内は出来るだけ隠しておきたいところだったが……このままでは出さぬ前に負けるでござるからな”

 ランサーの眼光までもが変わる。
 ここに来てランサーは目の前の敵を最強の敵と認識し、とうとう彼に『必殺の戦い』を覚悟させた。

「─────!」
 ランサーの変化にファイターも緊迫感に包まれた。
 あの男、ついに本気で殺しに来る。
 彼の狙いは一目瞭然だった。
 凍りついた空気、周囲に発散される殺気。全身に奔る魔力。
 そして何よりランサーの瞳が”貴様を最強の敵と認め全力で殺しに行く”とはっきり語っていた。

 ファイターは即座にさっきまでで得られた情報を分析する。
 あのランサーの大槍が利器型の宝具である以上は真名の解放による一撃必殺の攻撃ではない筈だ。
 おまけに彼は芸を凝らすと言った。
 ならば奇策や奇襲か技か、もしくは先程とは違った戦法でこちらの首を落としに来る。
 ランサーの通常攻撃力はそこまで強力なものではない。
 サーヴァントいうカテゴリの中で言えば平均以上のものではあるがファイターとは比ぶるべくもない攻撃力だろう。
 ということは当然力押しではなく、彼の自慢のスピードを最大限に利用してくるはずだ。

 よって……ランサーが次に仕掛けてくる攻撃はスピードを利用した奇策の類になる筈───。

 ファイターは今までで培ってきた経験と理論で敵が次に仕掛けてくるであろう技を予測する。
 だが大まかな輪郭は分かっていても実際に受けてみないことにはどうなるかなんて全く判らない。

 ”───否、小細工は無用だ。ランサーが必殺で来ると言うのであらば、こちらも宝具を使って応じるまで───!!”

 瞬時に手の内を隠したまま応戦するという考えを切り捨てネイリングの使用を決断する。
 偶然か、幸運か、マスターからネイリングの使用許可は最初から下りていた。

 もう一度だけ両者の視線が絡み合い───

「────ゆくぞ!ファイター!!!!」

 二人の必殺の攻防が開始されようとしたその瞬間。

 どさり。

 と、あまりにも似つかわしくない音が割り込んできた。
「───え?」
 咄嗟にファイターから視線を逸らすランサー。
 その目線の先には倒れ伏した綾香の姿があった。
「あ……主殿!?しっかりするでござる!」
 放っていた殺気も、全身に奔っていた魔力も、そして戦闘すらも放置してランサーは綾香の許へ駆け寄る。
「あ、───は、ふぅ……ふぅ」
「主殿!主殿───!!」
 綾香を抱き起こしてユサユサと揺すってみるも全く効果が無い。
 倒れた綾香は明らかに魔力不足による衰弱を起こしていた。
「───くぅぅ!拙者が付いていながら……付いていながら何たる、何たる不覚!!!」
 ランサーは自身の不甲斐無さに歯をギリギリと鳴らす。

 ところで、サーヴァントを召喚したマスターは暫らくまともに行動する事ができない。
 突然サーヴァントという強力な使い魔と契約したマスターは、普段とは比べ物にならない位の負担が掛かるからだ。
 なにせいくら聖杯が補助してくれるからといっても英霊などという破格の存在を、この世に留めるだけの魔力は魔術師にはない。
 故にサーヴァントの召喚直後などは特にその影響を受けやすい。
 サーヴァントを召喚した直後に気を失なった間桐や一日不調に陥ったソフィアリは割と当然の反応と言えた。

 では綾香は……?
 ランサー召喚時のトラブルで緊張状態だった心身は契約により彼女に掛かっていた負担を誤魔化し続け、それは祖父との決別を終えて初陣という今までの間ずっと続いていた。
 サーヴァントとの契約による魔力負担。
 祖父の葬儀で大勢の人間に使用した暗示やガンドの魔力消費。
 そしてたった今行なわれたサーヴァント戦の過剰な魔力供給。
 それらの要因がついに心身の緊張状態程度では誤魔化し切れない程に綾香を追い込んでいた。
 つまり肉体の方がとうとう限界を迎えてしまったのだった。


「主殿?主殿!せめて意識があるのかどうかを!返事をするでござるぞ主殿!」
「……………ん………らん、サー……?」
 綾香は胡乱気な瞳でランサーを見上げる。
「良し意識はある。撤退するでござるぞ主殿。これ以上は無理だ!」
 そう言いながらランサーは綾香を背負い、いままで傍観していたファイターへ振り返った。

「何故、仕掛けてこなかったファイター?」
「─────」
 黙したままでいるファイターはずっと二人の様子を手を出さずに見守っていた。
「……いや、突然の事態で驚いてしまっただけだ」
 ファイターは目を瞑ったままランサーの問いに静かに答える。
「御主はそんな細い胆ではござらんだろう」
 だが、ランサーの方はとてもじゃないが納得できない。
「拙者に手心を加えたつもりでござるか?そんなもの頼んだ覚えは無いぞ」
 ランサーの武士としての誇りが敵に情けを掛けられたという事実を不愉快そうに受け止めていた。
「いや、手心を加えたつもりは無い。
 確かに背後から奇襲を掛けられはしたが───そうなると私も手の内を曝さなければならなくなっていただろうからな」
 と、ファイターはそんな言葉を口にした。

 あの状況で彼女達を襲えば間違いなくランサーは必死になっただろう。
 先の段階で既に全力を覚悟していたのだ。
 ならば己のマスターを守る為とあれば尚更手の内を隠すなんて真似はしないだろう。
 そうなると当然ファイターも然るべきモノを見せなければならなくなる。
 しかしそうなってしまうと、聖杯戦争の序盤では出来るだけ手の内を隠しておきたい、という遠坂の方針を守れなくなってしまう。

 だからこそファイターはランサー達に手を出さなかったのだ。
 ランサーのマスターが突然倒れた理由はファイターには依然不明のままだが、彼はあくまで遠坂の命令を優先した。

「なるほど。拙者程度ではいつでも獲れると、そういう腹積りか」
「いや、私は単にマスターの方針を守っただけだ。
 マスターが手の内を曝してでも倒していいと言うのであれば今すぐにでも仕留める。
 故に去るのならば早くすることだ。私はマスターの命令を優先するぞランサー?」

 そう言ってファイターは剣を鞘に納め、目を瞑った。
 あくまで今は。ではあるが戦闘の意思は無いと言うアピールなのだろう。

「ふん、そういう事にしておいてやるでござる。だがファイター次はその上等な首級、確かに頂戴するぞ?」
「───ああ。何時でも挑戦は受けようサムライ」

 それだけの言葉を交わすとランサーは主を連れて撤退しようとする。
 ───だが。それを見逃してくれるほど甘い敵ではなかった。

 ”ファイター。手の内を見せても構わない、そのランサーは今後強敵となり得る。絶対に逃がすな”

 この戦場を監視していた遠坂がファイターに戦闘の続行サインを出してきた。
 頭上から反響して響く声は魔術の効果なのだろう。声の出所が全く掴めない。

「────!!?ぐっ……。やはり普通はそうするでござろうなぁ……」
「……と言う訳だ。残念だがランサー、貴殿にはここで倒れてもらおう」

 ファイターが再び剣を抜き放つ。
 開かれたその瞳にあるのは同情でも憐憫でも無く、ただ強敵を倒すという確固とした意思だけだった。
 遅いと思えるぐらいにファイターはゆっくりとランサーたちの方へ歩いていく。

「逃がしはしないが主殿を降ろす時間くらいはやろうとは……薄情なのか律儀なのか良く判らぬ漢でござるな御主」
「マスターを背負ったままではその娘は確実に巻き込まれよう。
 最終的にどうなるかまでは保障出来んが背負って戦うよりは降ろして戦った方がまだ希望は有ると思うがランサー?」
 軽く毒づくランサーにファイターは素っ気無くも綾香の身を案じる言葉を掛けた。
「あ~あ~。律儀な方でござったか」

 ともかくこれでまず逃げられまい。
 なにせ離脱する為に背中を見せたが最期、その瞬間に背負った綾香が真っ先に死ぬだろう。
 だからファイターは綾香を降ろせと言ったのだ。
 背負って自分相手にどうにかしようとするよりは、地面に降ろして彼女が目を覚ますのに賭けた方が良いと。

 ファイターのマスターが倒れた綾香を放って置くとも思えなかったが、
 それでもファイター相手に背負ったまま戦うよりはずっとマシだと判断するとランサーは覚悟を決めた。

 ファイターと戦う為にランサーが地面に綾香を降ろそうするのと同時に。
 ”─────ん!?待てファイター!何者かがこの場所に入ってきた!”
 頭上から反響して響く遠坂の声と。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 獣の咆哮とも発破の炸裂音とも取れるような爆音が戦場中に轟いた。

「「今度はなんなんだ────!!!?」」

 ランサー、ファイターそれに監視していた遠坂の三人は爆音がした方向へ目を向ける。
 二度目の外野からの介入の驚きよりもむしろ困惑が先にきた。

 ソレはこの戦場となっている広い空き地の端の方に突然現れた。
 だが『この場』に現れたという時点で彼らが何者かなぞもはや一々訊くまでもない。
「あれは………バーサーカーか?」
「どの角度で見ても狂戦士でござろうなあの様子じゃ……」
 ファイターたち二人が呆れるほどに新しく乱入してきたサーヴァントは判りやすかった。

 不必要なまでに撒き散らされた殺気。
 理性の無い両眼は目の前のモノに襲いかかる為だけについており。
 その両の腕は周囲のモノを破壊する為だけに存在し。
 物言わぬ口は殺意に振るえガチガチと乱杭歯を鳴らしている。
 そしてその右手には禍々しい妖気を放つ剣が鞘に収められたままの状態で握られていた。

 ────バーサーカー。
 聖杯が用意するクラスの中でも特殊なクラスであり、同時に最も注意が必要なクラスでもある。
 彼らはクラススキルとして理性を剥奪される代償に生前の力をも上回る肉体強化を与えられる。
 ヒトとしての機能を捨て去り、破壊する為だけの狂気の戦闘兵器に身を墜す役割。
 そのためマスターに掛かる負担も他のクラスの比ではないまさに諸刃の剣のクラスと言える。

 ……それがファイター、ランサーたちの前に新たに現れたサーヴァントだった。

「今の声は遠坂か?どこに隠れているのかは知らないけどどうよ俺のサーヴァント!めっちゃ強そうで凄くねえ?」
 などど、バーサーカーの横に立つマスターらしき男が空に───いや遠坂に向かって話しかけた。

 ”……………まさか君が参加するとはな。どういう風の吹き回しだ雨生?”
「あ、ひっでー。お前さ自分で呼んでおいて普通そういう事言う?俺傷付いちゃうぜ」
 遠坂の反応に雨生はテンション高くケラケラと笑っている。
「マスター、バーサーカーのマスターと知り合いなのか?」
 顔見知り風な二人の間にファイターが割って入る。
 ”ああ、深い交流は無いが顔見知り程度のな。彼、雨生は一応私が呼んだ。
  海外から魔術師を呼び寄せるよりも日本に居る雨生の方が何かと早かったため、一応のつもりで声をかけたのだが………正直、彼が来ることは期待していなかった”
「おいおいそのお呼びじゃないような言い方止めてくんねー?」
 意外そうな声の遠坂とは別に雨生はあくまで楽しそうだった。
 ”当然だろう私はむしろ君は来ないと思っていたからな。雨生は自身の研究にしか興味は無い。
  だから私も無駄と承知で使い魔を送ったくらいだからな。再度訊くが、一体どういう風の吹き回しだ?”
 遠坂の疑念に対し雨生の回答は実にシンプルだった。

「は、ははは!そりゃ望みがなんでも叶うからさ!!」
 雨生は両手を広げてまるで今から大観衆の前で演説でもするかのようで実に楽しそうだ。
 ”……本気か?君は今まで自分の研究以外でこういう他の魔術師が執り行う魔術儀式には見向きもしなかっただろう”

「いいや。これは自分の研究のためさ。なんでも望みが叶うのなら何人でも人を殺してもいい世界も手に入るとは思わない?
 今のままじゃまるで研究のサンプルが足りないんだよねえ。でもあんまやり過ぎると協会が黙って無いだろ?
 人間の腹の中には絶対に『神の座』に通じる臓物とか血とかがあるんだよ。
 それを証明する為にも開く腹の数は多ければ多いほどいいに決まってるじゃん?」
 そう言うと雨生はその光景を思い浮かべたのか本当に楽しそうに笑い出した。

 ”なるほど、それが参加理由か。しかし君も参加するなら参加すると連絡してくれれば良かっただろうに。
  我が家に訪れてくれればお茶のもてなしくらいはしてやったのだが?”

「あははははー!冗談。俺が聖杯戦争に参加する以上は遠坂お前は敵じゃん、わざわざ敵の本拠地に行く訳が無いだろ?
 ……それに俺、お前と違って紅茶派じゃなくて緑茶派なんだ」

 ”ふ、それもそうだった。確かに……私と君は敵同士だったな”

 ケッと遠坂の口上に皮肉を返す雨生とその皮肉をさらりと流した遠坂。
 だがその瞬間、二人の間の空気が決定的に変質した。

「そういうこと。ま、そういう訳だから───あんたら、いっちょ死んでみてくれない?」
 雨生が一歩足を前に踏み出す。
「……やれやれ、連戦になりそうだな。しかしなるほど、私とランサーが消耗したところを狙い二人纏めて、か。随分と欲張りな男だな」
「───だがまあ、狂戦士の魔力負担を考えると、それなりに悪くはない作戦でござるな」

 ファイターとランサーは面倒臭そうにぼやき合う。
 バーサーカーは明らかに彼らを狙っている。
 雨生の最低でも一人、上手くいけば纏めて二人、サーヴァントを脱落させようという魂胆は明らかだった。

「──────」
 ランサーは無言のままバーサーカー、それにファイターとの距離を測る。
 バーサーカーが自分とファイターのどちらを襲うかまだ判らない。

 ”だが───ここで奴と戦う前に主殿を安全な所に連れて行くのが最優先だ!”

 ランサーは綾香を背中に背負ったままの体勢で素早く自身が取るべき行動を決定した。
 バーサーカーから放たれるプレッシャーはファイターほどは感じない。
 だがそれでもマスターのサーヴァント透視能力を持たないランサーは実際打ち合ってみるまでは相手の力量を正確には把握できない。
 ならば主を危険に晒してまであの狂戦士と戦うのは愚行と言えた。

 いやそんな理屈を抜きにして動けない主を連れたままの状態で自分はこの場所に居てはいけない─────!

 ランサーが一旦この場から離脱するために足に力を籠めたと同時に。
「イィィィヤッホウ!!!蹂躙しちまえ!バァァァアアアアサァアアアアアカァアアアッ!!!!!」
「■■■■■■■■■■■ーーー!!!!!!!!」
 新たに現われた二人の刺客が吼え猛った。
 闘牛のような躍動感と勢いでファイターとランサー目掛けて突っ込んでくるバーサーカー。

「ファイターすまぬで御座るな、主殿を非難させるために少々席を外させて貰うぞ?」
「───フッ。やれやれこれでは私はバーサーカーの相手が忙しくてランサーを追えないな」

 ファイターは口元に微笑を湛えながらそんなことを言うと、ランサーの方にではなくあえてバーサーカーの方に向かって行った。
 綾香を背負ってこの戦場から離脱するランサー。
「ファイター。武人としての心遣い、真に恩に着る!」
 背を向けたままファイターへ向かって礼を言う。

 綾香を抱えて走り去っていくランサーの背後からはズガン!という激突音が響いていた。







──────V&F Side──────

助けろ!ウェイバー教授!!第五回

V「ヘイ!怒涛の第五話の筈じゃなかったのか?」
F「すいません、中途半端に長くなったため後半戦が分割になりましたorz」
V「まあ……そういうこともあるよな?な?」
F「そうですよ!」
綾「ごめんなさいは?」
V「ああ、すまんすまん(葉巻スパスパやりながら)」
F「ええ、すいませんすいません(タバコ型チョコをポリポリやりながら)」
綾「くっこいつら……」

V「さて今回はベーオウルフVS本多忠勝の戦いだったがどうだろうか?」
F「先生……俺凄い事を思いつきました!!」
V「なんだ?言ってみろ」
F「はい!俺思ったんですけど戦闘シーンにFateのBGMをかければなんと!
  なんかそこはかとなくですけどFate臭がしてくるようなこない気がしないようなするようなで駄文があっという間にパワーアップです!」
V「フラット頭良いなお前!BGMの力って恐ろしいなっ!」
F「ですよね!?エミヤとかかけまくったら最高ですよ!!」
V「この馬鹿たれが!!」
F「ぐあっ!!?久しぶりのこの感触!何をするんですか先生!」
V「エミヤはな、エミヤをかけていいのは1ルートに付き三回までだ!アレは最終戦とかで流れるからチビるんだろうが」
F「せ、先生……!す、すいませんでしたぁぁぁああ!!!やっぱそうですよね!?俺が間違ってました!!」
V「まあ判ればいい。フラットは『激突する魂』でもかけてなさい」
F「でもまあ正直な話、戦闘シーンだけはブッチきりで自信全然無いですからねえ。昼パートとかは割と簡単に書けますけど」
V「ラメセスやローランや安陽王がネタキャラ化し始めてるからな。まあギャグ要員は居てくれた方がありがたいからいいが」
F「失礼な!ラメセスとローランには元ネタからしてそういう要素があるんですって!」
V「ローランがバーサーカークラスではなくわざわざセイバークラスにしたのだってアレだからだしな」
F「もう皆だってわかってますよ。あの男はバーサーカークラスにしておくのはあまりに勿体無いって」
V「しかし戦闘シーン苦手だから戦闘総数を大幅にカットしていっても良いんだが……
  そうすると途端に内容や密度が薄くなるからなぁ。基本的にASは聖杯戦争での闘争が中心テーマだから」
F「zeroやSN、HAとは違って解決する主要テーマが無いですもんね」

V「まあとりあえずコーナーの本来の主旨に戻すが、現在の状況はベーオウルフと本多忠勝が戦闘をした。
  様子見の戦法にとったファイター陣営と宝具を使ってでも倒しに行ったランサー陣営との差が出たな」
F「あのベオさんがボコボコに、ポンダム恐るべし……流石は皆に地味チートとか呼ばれるだけはありますよ」
V「あと他の連中の動きも気になるところだな、ファイター組以外の連中も近くに居るかもしれん」
F「ご、ごくり……!」
V「しかし、ファイターはランサーを庇ってバーサーカーと二連戦する破目になるとは、中々甘い奴だな」
F「せめて男気があるっていいましょうよ先生!格好いいじゃないですか!」
V「あれはマスター視点で言わせて貰えば馬鹿げた行動以外のなにものでもないだろう。
  ランサーをみすみす逃がしただけでなく、もしバーサーカーに負けでもしたらどうする?
  あの行動はリスクだけで利益は無いぞ」
F「ちゃんとベーオウルフさんは勝ちますよ!」
V「だがな───」
F「ベーオウルフさんの方が能力値もずっと強いんだから勝ちますよ!本多忠勝さんが戻って来て共闘してくれますよ!」
V「わかったわかった、では次回六話でまた会おうマスター候補の諸君!」
F「アデュー!」

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最終更新:2014年11月22日 18:49