第2の座――狩人の目
2人の人間が戦っていた。
それぞれの人間が手下を操り、自らに代わって戦わせていたようだった。
常人とは思えない、凄まじい身体能力で戦う手下達は、いわゆるサーヴァントというものだった。
片方は透き通るような槍を振るい、果敢に相手を攻め立てている。
片方はちょこまかと駆け回りながら、無数の武器を繰り出している。
前者はランサーで確定だろう。後者は立ち回り方からしてアサシンだろうか。
直接戦闘に向いているのはランサーの方だ。
故にそちらが優勢ではあったが、アサシンもまた負けず劣らず、必死に食らいついていた。
そもそもの事の起こりは、こうだ。
まずアサシンのマスターが、己のサーヴァントを手に入れた。
しかし彼はその現場を、他の人間に見られてしまった。
彼はサーヴァントを秘匿するため、アサシンにその少女を攻撃させた。
しかし彼女もまたマスターだった。ランサーのサーヴァントを従えていたのだ。
こうして予選も終わらぬうちから、意図せず始まった戦いは、幕を開けることになったのだ。
やがてランサーの持つ槍が、眩い光を放ち始めた。
宝具の力を解放し、一挙にとどめを刺すつもりのようだ。
アサシンもその気配を察知し、身構えるようにして間合いを取った。
ランサーの槍を握る手に、一際力がこもった瞬間。
ずどん――と響いた音と共に、両者の動作は停止した。
アサシンの姿が消えていく。
ダメージを受けていないにもかかわらず、暗殺者のサーヴァントが消滅する。
そして困惑するランサーをよそに、もう一発、ずどんと音が響いた。
そうして今度はランサーの方が、瞬く間に姿を消してしまった。
彼らを従えていたはずのマスターもまた、いつの間にかいなくなっていた。
サーヴァント達が戦っている間に、何者かに殺されていたのだ。
英霊同士の戦いは、第三者の遠距離狙撃という形で、呆気なく幕を閉じたのだった。
◆
「……とまぁ、ざっとこんなもんだ」
ビルの上から全てを見下ろし、機械の弓矢を構えていたのは、異形の鎧を纏う男だった。
薄緑色のスーツの上から、更に赤い装甲を被ったような、独特なフォルムをしている。
両の手足についた毛皮は、さながら雪国の狩人のようだ。
アーマードライダー・シグルド――竜殺しの英雄を冠したその名こそが、鎧に与えられた称号だった。
「どうだ? これで俺の実力ってもんが分かっただろ?」
かつんかつんと音が鳴る。
手にした弓を肩にかけ、おどけた動作で鳴らしてみせる。
正確無比な狙撃によって、一度にマスター2人を倒した男は、背後の人影に向かって問いかけた。
男はアーチャーのサーヴァントだったのだ。
そしてサーヴァントである以上は、そのマスターが存在する。
「ああ……見た目以上には使えそうだ」
宵闇の中に潜むような。
暗色の襤褸を纏った男こそが、このアーチャーのマスターだった。
プラチナブロンドの長髪は、その高貴な色合いとは裏腹に、まるで獣のようにごわついている。
鋭く伸びた犬歯も、ぎょろりとした金眼も、全てが人ならぬ野獣のようだ。
それもそのはず、この男は、ただの人間ではなかった。
螺旋王ロージェノムによって生み出された、獣の力を持つ人造人間――獣人。
その獣人軍団の中でも、かつて極東方面軍を率いていた男、ヴィラル。
それが闇の中から英霊を覗く、金髪の男の正体だった。
「ま、英霊なんて言われても、俺はこいつがなかったら、ただの一般人だからなぁ」
言いながら、アーチャーが己の腰に手を伸ばす。
ベルトの部分についていた、小さな機械を取り外す。
それはサクランボのマークのついた、さながら錠前のようなアイテムだった。
それがベルトから離れた瞬間、鎧は立ちどころに消滅し、髭面の男が姿を現した。
これがシグルドの正体だ。
パラメーターはほとんどがE――何ら特別な力を持たない、吹けば倒れそうなこの男が、アーチャーのサーヴァントだったのだ。
「お前のような下品な男が、英霊に名を連ねていることの方が驚きだ」
「おいおいそりゃねぇだろ。わざわざ俺を疑うマスターに付き合って、こうして力を見せてやったんだぜ?」
こんなに心の広い奴はいないだろうと、アーチャーはヴィラルに向かって言う。
そういうところが気に食わないのだと、そう言いかけた言葉を飲み込んで、ヴィラルはふんと鼻を鳴らした。
こんな奴を英霊として送りつけるとは、聖杯戦争を仕掛けた連中の程度も知れるというものだ。
「まぁ何だ。せっかく聖杯戦争なんてもんに参加してんだから、優勝目指して頑張ろうぜ」
帽子を被った髭面の男は、ヴィラルに向かってそう言うと、階段の方へと歩いて行った。
(聖杯戦争……か)
ヴィラルは静かに思考する。
己の置かれた状況を、目を伏せ改めて考え直す。
この聖杯戦争に勝ち抜いた者は、万能の願望器を手に入れ、願いを叶えることができるという。
(そうは言われても、な)
それでもヴィラルには、願いがなかった。
正確には何を叶えるべきなのか、明確に定まらなかったのだ。
螺旋王という寄辺を喪い、新政府にも馴染めない身には、世界のどこにも居場所がなかった。
地上に100万の猿が満ちた時、地上に現れるという何か――それも気にはなるものの、だからとてどうすることもできない。
その中で何をどうしたいというのが、何も思いつかなかったのだ。
(まぁ、後から考えれば済むことだ)
これ以上考えても仕方があるまい。
そう考えると獣人は、それまでの思考を打ち切った。
勝ち残った後にどうするかというのは、後から考えるべきことだ。
まずはこの戦いを生き残ることを、何より優先して考えるべきだ。
ここは電脳空間とのことだが、ここで脱落した場合、現実の自分がどうなるのか、まるで分かったものではない。
目的のない人生だが、生憎と死ぬことは御免だ。故に生き残ることを優先し、上手く立ち回る必要があった。
戦わなければ生き残れない。であれば戦う他に道はない。
そうしてヴィラルは闇の中で、静かに牙を研ぎ澄ませていた。
◆
(あんな調子で大丈夫なのかね)
シグルドの変身者――シドは、内心でヴィラルを笑っていた。
一応状況は認識しているようだが、どうにも覇気が感じられない。
何が何でも勝ち残るというより、死にたくないから生き残るという、そういう受け身の気配を感じる。
その程度の低い志で、聖杯戦争に勝てるのかと、己がマスターを嘲っていたのだ。
(ま、それならそれで構わんさ。奴さんが要らねぇっていうのなら、俺が聖杯を使うまでだ)
シドには聖杯にかける願いがある。
生前からずっと抱き続けてきた、成し遂げたいと思う悲願がある。
彼は服従を嫌っていた。
人間を超えた存在となり、誰にも指図されることのない、自由と力を手に入れたかった。
彼はそのために異世界の力――願いを叶える「知恵の実」を欲した。
願望器を求める戦いは、これで二度目だったのだ。
(もう一度チャンスが巡ってきたんだ……今度こそはしくじったりしねぇ)
異世界ヘルヘイムの森にある、あらゆる願いを叶える力。
シドはそれを手に入れるため、森に挑む力を欲し、森の怪物達とも戦った。
しかしその戦いの果てに、怪物の王の力に屈して、あえなく命を落としてしまった。
目前まで近づいておきながら、あと少し伸ばせば届く手が、知恵の実に届かなかったのだ。
二度目を生を受けてみて、改めて考えたからこそ分かる。あれはこの上ない屈辱だった。
もう二度とミスは繰り返さない。次なる願望器は何が何でも、この手に掴み取ってみせる。
(俺は今度こそ人間を超える……誰にも文句を言わせねぇ、超然の存在になるんだ!)
常にシニカルな仮面を被り、周囲を嘲笑ってきたシド。
それでもその時彼が浮かべた、獰猛さを笑みだけは、彼の素顔であるように見えた。
【マスター】ヴィラル
【出典】天元突破グレンラガン
【性別】男性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。獣人のコミュニティの物資に、木片を使った雑貨が紛れていた
【マスターとしての願い】
模索中
【weapon】
なし
【能力・技能】
獣人
獣の力を与えられた人造人間。螺旋力は持っていないが、五感や身体能力が、通常の人間よりも高められている。
不死身の体
ロージェノムの改造によって得た体。
常識外れの治癒力の他、獣人共通のデメリットである、冬眠を必要としなくなっている。
格闘術
生身での格闘戦闘術。徒手空拳の他、刀剣を使った戦いに長ける。
ガンメン操縦技術
大型機械兵器・ガンメンを操縦する技術。
【人物背景】
螺旋王ロージェノムに仕える獣人軍団の所属で、元人間掃討軍極東方面部隊長。
獣人に反旗を翻す大グレン団とは、幾度となくぶつかり合い、グレンラガンと死闘を繰り広げた。
その中で獣人より弱い体を持ちながら、自分達に食い下がる人間達に興味を抱き、「人類とは何なのか」とロージェノムに問いかける。
ロージェノムはその答えとして、獣人の領域を超えた不死身の体を与えるのだが、
それは自らが死んだ後、その生き様を永劫に語り継ぐ、「語り部」としての役割を求めたからに過ぎなかった。
彼の真意を知り、同時にロージェノムを喪ったヴィラルは、世の中に馴染むこともできず、反政府ゲリラに見を落としたのだった。
正々堂々とした戦いを好む武人であり、卑怯な作戦を好まない。
しかしやさぐれてしまったためか、現在はぶっきらぼうな態度と、斜に構えたような発言も目立っている。
【方針】
何を願うかは未定。しかし死にたくはないので、勝ち残るために戦う。
【クラス】アーチャー
【真名】シド
【出典】仮面ライダー鎧武
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
対魔力:E(C)
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
『赤き眼光の狩人(チェリーエナジーアームズ)』発動時にはCランクに変化し、第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
【保有スキル】
千里眼:B
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
さらに高いランクでは、未来視さえ可能とする。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
話術:D
言論にて人を動かせる才。
交渉から詐略・口論まで幅広く補正が与えられる。
【宝具】
『赤き眼光の狩人(チェリーエナジーアームズ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:B
異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・シグルド」へと変身する。
チェリーエナジーロックシードにより発動するこの力は、初期型とは一線を画した性能を持つ新世代のライダー。
弓型の武器・ソニックアローは、両端に刃が備えられており、接近戦・遠距離戦共に威力を発揮する。
【weapon】
ゲネシスドライバー
上級のアーマードライダーに変身するためのベルト。チェリーエナジーアームズに対応している。
シドロックシード
特定のモチーフが存在しない、シド専用にチューンされたと思しきロックシード。
他のロックシードを遠隔操作する機能があるらしく、劇中ではスイカロックシードを同時に4つ操作していた。
スイカロックシード
向日葵の種を象ったロックシード。合計2つ用意されている。ゲネシスドライバーに対応していないため、変身に使うことはできない。
大玉モード・ヨロイモード・ジャイロモードの3形態を持つ大型ロックシードであり、その性能は新世代ライダーにも引けを取らない。
エネルギー消耗が激しく、戦闘後はしばらく使用できなくなる。
【人物背景】
沢芽市にてインベスの監視実験を行っている、ユグドラシル・コーポレーションのエージェント。
戦極ドライバーのテストの際には、錠前ディーラーとして町にロックシードおよびドライバーをばら撒く役割を担っていた。
テストが終了した後は、ゲネシスドライバーを支給され、アーマードライダー・シグルド(仮面ライダーシグルド)へと変身する。
戦極凌馬から知恵の実の存在を知らされており、自分の願いを叶えるためにそれを追っていた。
口の悪い皮肉屋であり、同時に自信家でもある。
ビートライダーズの若者達を子供扱いして見下しており、度々自らを「大人」と称して、彼らとは違うということをアピールしていた。
しかし彼が知恵の実にかけた願いは、「誰の言いなりにもなりたくない」というものであり、本質的には子供っぽさを捨てきれていない。
知恵の実確保の最大の障害と見なしていた、呉島貴虎を始末した後は、ヘルヘイムの森への入り口を破壊した上でユグドラシルを離反。
単身森へと飛び込んで、オーバーロードの本陣へと殴り込みを仕掛けた。
しかしオーバーロードの王・ロシュオ相手には歯が立たず、ベルトを破壊された末、壮絶な最期を遂げている。
戦闘時にはソニックアローを弓矢として用いた、遠距離戦闘を行うことが多い。
本人の戦闘スタイルも容赦のないものがあり、敵を一方的にいたぶろうとするような場面が目立っていた。
【サーヴァントとしての願い】
人間を超え、誰からも指図されない存在になる。
最終更新:2014年09月24日 21:34