第2の座――狩人の目


 2人の人間が戦っていた。
 それぞれの人間が手下を操り、自らに代わって戦わせていたようだった。
 常人とは思えない、凄まじい身体能力で戦う手下達は、いわゆるサーヴァントというものだった。

 片方は透き通るような槍を振るい、果敢に相手を攻め立てている。
 片方はちょこまかと駆け回りながら、無数の武器を繰り出している。
 前者はランサーで確定だろう。後者は立ち回り方からしてアサシンだろうか。
 直接戦闘に向いているのはランサーの方だ。
 故にそちらが優勢ではあったが、アサシンもまた負けず劣らず、必死に食らいついていた。

 そもそもの事の起こりは、こうだ。
 まずアサシンのマスターが、己のサーヴァントを手に入れた。
 しかし彼はその現場を、他の人間に見られてしまった。
 彼はサーヴァントを秘匿するため、アサシンにその少女を攻撃させた。
 しかし彼女もまたマスターだった。ランサーのサーヴァントを従えていたのだ。
 こうして予選も終わらぬうちから、意図せず始まった戦いは、幕を開けることになったのだ。

 やがてランサーの持つ槍が、眩い光を放ち始めた。
 宝具の力を解放し、一挙にとどめを刺すつもりのようだ。
 アサシンもその気配を察知し、身構えるようにして間合いを取った。
 ランサーの槍を握る手に、一際力がこもった瞬間。

 ずどん――と響いた音と共に、両者の動作は停止した。

 アサシンの姿が消えていく。
 ダメージを受けていないにもかかわらず、暗殺者のサーヴァントが消滅する。
 そして困惑するランサーをよそに、もう一発、ずどんと音が響いた。
 そうして今度はランサーの方が、瞬く間に姿を消してしまった。

 彼らを従えていたはずのマスターもまた、いつの間にかいなくなっていた。
 サーヴァント達が戦っている間に、何者かに殺されていたのだ。

 英霊同士の戦いは、第三者の遠距離狙撃という形で、呆気なく幕を閉じたのだった。


「……とまぁ、ざっとこんなもんだ」
 ビルの上から全てを見下ろし、機械の弓矢を構えていたのは、異形の鎧を纏う男だった。
 薄緑色のスーツの上から、更に赤い装甲を被ったような、独特なフォルムをしている。
 両の手足についた毛皮は、さながら雪国の狩人のようだ。
 アーマードライダー・シグルド――竜殺しの英雄を冠したその名こそが、鎧に与えられた称号だった。
「どうだ? これで俺の実力ってもんが分かっただろ?」
 かつんかつんと音が鳴る。
 手にした弓を肩にかけ、おどけた動作で鳴らしてみせる。
 正確無比な狙撃によって、一度にマスター2人を倒した男は、背後の人影に向かって問いかけた。
 男はアーチャーのサーヴァントだったのだ。
 そしてサーヴァントである以上は、そのマスターが存在する。
「ああ……見た目以上には使えそうだ」
 宵闇の中に潜むような。
 暗色の襤褸を纏った男こそが、このアーチャーのマスターだった。
 プラチナブロンドの長髪は、その高貴な色合いとは裏腹に、まるで獣のようにごわついている。
 鋭く伸びた犬歯も、ぎょろりとした金眼も、全てが人ならぬ野獣のようだ。
 それもそのはず、この男は、ただの人間ではなかった。
 螺旋王ロージェノムによって生み出された、獣の力を持つ人造人間――獣人。
 その獣人軍団の中でも、かつて極東方面軍を率いていた男、ヴィラル。
 それが闇の中から英霊を覗く、金髪の男の正体だった。
「ま、英霊なんて言われても、俺はこいつがなかったら、ただの一般人だからなぁ」
 言いながら、アーチャーが己の腰に手を伸ばす。
 ベルトの部分についていた、小さな機械を取り外す。
 それはサクランボのマークのついた、さながら錠前のようなアイテムだった。
 それがベルトから離れた瞬間、鎧は立ちどころに消滅し、髭面の男が姿を現した。
 これがシグルドの正体だ。
 パラメーターはほとんどがE――何ら特別な力を持たない、吹けば倒れそうなこの男が、アーチャーのサーヴァントだったのだ。
「お前のような下品な男が、英霊に名を連ねていることの方が驚きだ」
「おいおいそりゃねぇだろ。わざわざ俺を疑うマスターに付き合って、こうして力を見せてやったんだぜ?」
 こんなに心の広い奴はいないだろうと、アーチャーはヴィラルに向かって言う。
 そういうところが気に食わないのだと、そう言いかけた言葉を飲み込んで、ヴィラルはふんと鼻を鳴らした。
 こんな奴を英霊として送りつけるとは、聖杯戦争を仕掛けた連中の程度も知れるというものだ。
「まぁ何だ。せっかく聖杯戦争なんてもんに参加してんだから、優勝目指して頑張ろうぜ」
 帽子を被った髭面の男は、ヴィラルに向かってそう言うと、階段の方へと歩いて行った。
(聖杯戦争……か)
 ヴィラルは静かに思考する。
 己の置かれた状況を、目を伏せ改めて考え直す。
 この聖杯戦争に勝ち抜いた者は、万能の願望器を手に入れ、願いを叶えることができるという。
(そうは言われても、な)
 それでもヴィラルには、願いがなかった。
 正確には何を叶えるべきなのか、明確に定まらなかったのだ。
 螺旋王という寄辺を喪い、新政府にも馴染めない身には、世界のどこにも居場所がなかった。
 地上に100万の猿が満ちた時、地上に現れるという何か――それも気にはなるものの、だからとてどうすることもできない。
 その中で何をどうしたいというのが、何も思いつかなかったのだ。
(まぁ、後から考えれば済むことだ)
 これ以上考えても仕方があるまい。
 そう考えると獣人は、それまでの思考を打ち切った。
 勝ち残った後にどうするかというのは、後から考えるべきことだ。
 まずはこの戦いを生き残ることを、何より優先して考えるべきだ。
 ここは電脳空間とのことだが、ここで脱落した場合、現実の自分がどうなるのか、まるで分かったものではない。
 目的のない人生だが、生憎と死ぬことは御免だ。故に生き残ることを優先し、上手く立ち回る必要があった。
 戦わなければ生き残れない。であれば戦う他に道はない。
 そうしてヴィラルは闇の中で、静かに牙を研ぎ澄ませていた。


(あんな調子で大丈夫なのかね)
 シグルドの変身者――シドは、内心でヴィラルを笑っていた。
 一応状況は認識しているようだが、どうにも覇気が感じられない。
 何が何でも勝ち残るというより、死にたくないから生き残るという、そういう受け身の気配を感じる。
 その程度の低い志で、聖杯戦争に勝てるのかと、己がマスターを嘲っていたのだ。
(ま、それならそれで構わんさ。奴さんが要らねぇっていうのなら、俺が聖杯を使うまでだ)
 シドには聖杯にかける願いがある。
 生前からずっと抱き続けてきた、成し遂げたいと思う悲願がある。
 彼は服従を嫌っていた。
 人間を超えた存在となり、誰にも指図されることのない、自由と力を手に入れたかった。
 彼はそのために異世界の力――願いを叶える「知恵の実」を欲した。
 願望器を求める戦いは、これで二度目だったのだ。
(もう一度チャンスが巡ってきたんだ……今度こそはしくじったりしねぇ)
 異世界ヘルヘイムの森にある、あらゆる願いを叶える力。
 シドはそれを手に入れるため、森に挑む力を欲し、森の怪物達とも戦った。
 しかしその戦いの果てに、怪物の王の力に屈して、あえなく命を落としてしまった。
 目前まで近づいておきながら、あと少し伸ばせば届く手が、知恵の実に届かなかったのだ。
 二度目を生を受けてみて、改めて考えたからこそ分かる。あれはこの上ない屈辱だった。
 もう二度とミスは繰り返さない。次なる願望器は何が何でも、この手に掴み取ってみせる。
(俺は今度こそ人間を超える……誰にも文句を言わせねぇ、超然の存在になるんだ!)
 常にシニカルな仮面を被り、周囲を嘲笑ってきたシド。
 それでもその時彼が浮かべた、獰猛さを笑みだけは、彼の素顔であるように見えた。



【マスター】ヴィラル
【出典】天元突破グレンラガン
【性別】男性

【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。獣人のコミュニティの物資に、木片を使った雑貨が紛れていた

【マスターとしての願い】
模索中

【weapon】
なし

【能力・技能】
獣人
 獣の力を与えられた人造人間。螺旋力は持っていないが、五感や身体能力が、通常の人間よりも高められている。

不死身の体
 ロージェノムの改造によって得た体。
 常識外れの治癒力の他、獣人共通のデメリットである、冬眠を必要としなくなっている。

格闘術
 生身での格闘戦闘術。徒手空拳の他、刀剣を使った戦いに長ける。

ガンメン操縦技術
 大型機械兵器・ガンメンを操縦する技術。

【人物背景】
螺旋王ロージェノムに仕える獣人軍団の所属で、元人間掃討軍極東方面部隊長。
獣人に反旗を翻す大グレン団とは、幾度となくぶつかり合い、グレンラガンと死闘を繰り広げた。
その中で獣人より弱い体を持ちながら、自分達に食い下がる人間達に興味を抱き、「人類とは何なのか」とロージェノムに問いかける。
ロージェノムはその答えとして、獣人の領域を超えた不死身の体を与えるのだが、
それは自らが死んだ後、その生き様を永劫に語り継ぐ、「語り部」としての役割を求めたからに過ぎなかった。
彼の真意を知り、同時にロージェノムを喪ったヴィラルは、世の中に馴染むこともできず、反政府ゲリラに見を落としたのだった。

正々堂々とした戦いを好む武人であり、卑怯な作戦を好まない。
しかしやさぐれてしまったためか、現在はぶっきらぼうな態度と、斜に構えたような発言も目立っている。

【方針】
何を願うかは未定。しかし死にたくはないので、勝ち残るために戦う。



【クラス】アーチャー
【真名】シド
【出典】仮面ライダー鎧武
【性別】男性
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:E(C)
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
 『赤き眼光の狩人(チェリーエナジーアームズ)』発動時にはCランクに変化し、第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】
千里眼:B
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
 さらに高いランクでは、未来視さえ可能とする。

仕切り直し:C
 戦闘から離脱する能力。
 また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。

話術:D
 言論にて人を動かせる才。
 交渉から詐略・口論まで幅広く補正が与えられる。

【宝具】
『赤き眼光の狩人(チェリーエナジーアームズ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:B
 異界の果実の力を封じたアイテム・ロックシードにより、鎧の戦士「アーマードライダー・シグルド」へと変身する。
 チェリーエナジーロックシードにより発動するこの力は、初期型とは一線を画した性能を持つ新世代のライダー。
 弓型の武器・ソニックアローは、両端に刃が備えられており、接近戦・遠距離戦共に威力を発揮する。

【weapon】
ゲネシスドライバー
 上級のアーマードライダーに変身するためのベルト。チェリーエナジーアームズに対応している。

シドロックシード
 特定のモチーフが存在しない、シド専用にチューンされたと思しきロックシード。
 他のロックシードを遠隔操作する機能があるらしく、劇中ではスイカロックシードを同時に4つ操作していた。

スイカロックシード
 向日葵の種を象ったロックシード。合計2つ用意されている。ゲネシスドライバーに対応していないため、変身に使うことはできない。
 大玉モード・ヨロイモード・ジャイロモードの3形態を持つ大型ロックシードであり、その性能は新世代ライダーにも引けを取らない。
 エネルギー消耗が激しく、戦闘後はしばらく使用できなくなる。

【人物背景】
沢芽市にてインベスの監視実験を行っている、ユグドラシル・コーポレーションのエージェント。
戦極ドライバーのテストの際には、錠前ディーラーとして町にロックシードおよびドライバーをばら撒く役割を担っていた。
テストが終了した後は、ゲネシスドライバーを支給され、アーマードライダー・シグルド(仮面ライダーシグルド)へと変身する。
戦極凌馬から知恵の実の存在を知らされており、自分の願いを叶えるためにそれを追っていた。

口の悪い皮肉屋であり、同時に自信家でもある。
ビートライダーズの若者達を子供扱いして見下しており、度々自らを「大人」と称して、彼らとは違うということをアピールしていた。
しかし彼が知恵の実にかけた願いは、「誰の言いなりにもなりたくない」というものであり、本質的には子供っぽさを捨てきれていない。

知恵の実確保の最大の障害と見なしていた、呉島貴虎を始末した後は、ヘルヘイムの森への入り口を破壊した上でユグドラシルを離反。
単身森へと飛び込んで、オーバーロードの本陣へと殴り込みを仕掛けた。
しかしオーバーロードの王・ロシュオ相手には歯が立たず、ベルトを破壊された末、壮絶な最期を遂げている。

戦闘時にはソニックアローを弓矢として用いた、遠距離戦闘を行うことが多い。
本人の戦闘スタイルも容赦のないものがあり、敵を一方的にいたぶろうとするような場面が目立っていた。

【サーヴァントとしての願い】
人間を超え、誰からも指図されない存在になる。



BACK NEXT
第1の座――迷える拳 投下順 第3の座――信念の行方
第1の座――迷える拳 時系列順 第3の座――信念の行方

BACK 登場キャラ NEXT
参戦 ヴィラル ファースト・ラウンド
参戦 アーチャー(シド

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2014年09月24日 21:34