第9章:戦闘

 鍔なりの音も激しく、刃が盾を打つ。巨大な爪が鎧を貫き、耳をつんざくような音をたてる。ウィザードの詠唱に続いて閃光が輝き、炎が弾けて花を咲かせる。鋭い音が空気を切り裂き、モンスターの堕落した臭いごと叩き斬る。
 この章は君が君のキャラクターやモンスターに戦闘させる際、小競り合いからダンジョン内での戦闘、あるいは戦場での戦いについて必要なルールについて説明している。この章のルールはプレイヤーからDMに至るまで必要なものだ。
 DMは全てのモンスターとNPCをコントロールし、各プレイヤーは自分のPCをコントロールする。つまり、ここでの『君』という言葉はキャラクターだけでなく、モンスターをも含む言葉である。

戦闘の手順 The Order of Combat

 通常の戦闘は、二つの勢力のぶつかり合いであり、剣呑な武器を振るい、フェイントをかけ、いなし、素早く立ち回り、呪文を唱えながら進行する。ゲーム中ではこうした混沌とした状況をラウンドとターンのサイクルによって整理する。1ラウンドはゲーム世界でおよそ6秒となる。
 1ラウンドの間に、戦闘の参加者は一度ずつターンが回ってくる。ターンの順番は戦闘遭遇の最初に全員のイニシアチブロールによって決定される。全員がそれぞれのターンを実行した後、どちらか一方の側が打ち倒されたりしない限り、次のラウンドに続く。

不意討ち Surprise

 冒険者の一団が山賊のアジトに忍び寄り、木の陰から飛び出して攻撃した。ゼラチナスキューブがダンジョンの通路を滑り降り、冒険者の一団に忍び寄った。冒険者たちは仲間の一人が飲み込まれるまで、キューブに気がつかなかった。これらのシチュエーションは、戦闘に参加する一方が他方に不意討ちを行ったケースである。
 DMは誰が不意を討ったかを決定する。もし両方の側が相手に忍び寄ろうとしているなら、両者はともに相手に気がつく。そうでなければ、DMは隠れている側の【敏】<隠行>チェックと、他方の各クリーチャーの受動的な【判】<知覚>の結果を比較する。気がつかないクリーチャーないしモンスターがいれば、遭遇の最初に不意討ちが発生する。
 もし君が不意討ちされたのなら、君は最初のターンに移動やアクションをとることができず、ターン終了時までリアクションをとることもできない。ほかのメンバーが不意討ちされていなかったとしても、あるメンバーが不意討ちを受けることはあり得る。


戦闘のステップ Combat Step by Step

1.不意討ちの有無の決定:DMは戦闘時に誰が不意討ちを受けるかを決める。
2.位置の決定:DMは全てのクリーチャーやモンスターがどの位置にいるかを決定する。冒険者たちにはどのような順に並んで歩いているか、部屋などであればどのあたりにいるかを確認する。DMはそれに対して、敵のフィギュアをどこに置くか、どの向きにどれほど離れているかを決める。
3.イニシアチブを振る:戦闘に参加する者はすべてイニシアチブ・ロールを行い、戦闘に参加する順番を決める。
4.ターンを進行する:戦闘に参加している者は、先のイニシアチブの順に従い、それぞれのターンを実行する。
5.次のラウンドを開始する:戦闘の参加者はすべて、イニシアチブの順にターンを実行する。戦闘が終了するまでステップ4から5を繰り返す。


イニシアチブ Initiative

 イニシアチブは戦闘中の行動順を決める。戦闘が始まったとき、すべての参加者は【敏】チェックを行い、イニシアチブ順を決定する。DMは同じようなクリーチャーは1グループとしてまとめてロールし、そのグループは同じイニシアチブで一斉に動く。
 DMは【敏】チェックの結果が最も高かったものから、最も低かったものまでを順に並べる。戦闘ラウンド中はこの順番(イニシアチブ順)に従って行動する。イニシアチブ順は以降のラウンドにも引き継がれる。
 イニシアチブの結果が同じだった場合、DMは自分のコントロールするクリーチャーの、プレイヤーは自分たちがコントロールするキャラクターの行動順を、それぞれ決定する。モンスターとキャラクターの間で同じになった際には、DMが決定する。オプションとして、DMは同じ結果だった者たちでd20の再ロールを行わせ、結果が高い者から順に行動するとしてもよい。

君のターンでできること Your Turn

 君のターンが来たら、君は移動速度までの距離を移動し、アクションを一つ行うことができる。アクションの前に移動するか、後に移動するかは最初に決定する。君の移動速度--歩行速度ともいう--は君のキャラクターシートに記載されている。
 君が行うことのできる行動はこの章の最後の方にある”戦闘中のアクション Actions in Combat”に詳しく記載されている。多くのクラス特徴や能力は君の行動に追加のオプションを与える。この章の”移動と位置 Movement and Position”の項では移動に関するルールが扱われている。
 君は移動、アクションや、その他の行動をしなくてもよい。君が自分のターンに何をするかを決められなければ、”戦闘中のアクション”の項に記載されている回避 Dodgeアクションや待機 Readyアクションをとることもできる。

ボーナスアクション Bonus Actions

 様々なクラス特徴や呪文、能力は、君に「ボーナスアクション」と呼ばれる追加のアクションを与える。たとえば、特徴の一つである狡猾な行動 Cunning Actionは、ローグにボーナスアクションを与える。君はボーナスアクションを特殊能力や呪文、特徴などによって与えられたときにのみ使用できる。ほかの時にボーナスアクションを使うことはできない。君は君のターンでしかボーナスアクションを使うことはできず、複数のボーナスアクションを得たときには1つを選んで使用しなければならない。
 君は得られるタイミングが記載されていないボーナスアクションを君のターンのどのタイミングで得るかを選択できる。また、君が何らかの方法でアクションを行う能力を奪われたなら、君はボーナスアクションを行う能力も同時に失う。

ターン中にできるその他のこと Other Activity on Your Turn

 君がターン中にできることは、アクションや移動を必要としない、いろいろな”飾り”のようなこともある。
 話ができるなら、君のターンの時に言葉やジェスチャーを使ってコミュニケーションをとることもできる。また、移動やアクションの最中に、ものや環境に特徴的なことをなんら代償なしに使うこともできる。たとえば、君は敵に近づくために移動の途中でドアを開けることもできるし、攻撃の際にアクションの一部として武器を抜くこともできる。
 しかし、こうしたことを二つ以上したいなら、君はアクションを使わなければならない。一部のマジックアイテムや特殊な物品は使用に際してアクションが必要とされる旨が本文に記載されている。
 DMは特別な行動や通常とは違う障害のある行動に対し、アクションの使用を要求してくるかもしれない。たとえば、DMはドア止めのついたドアをこじ開けたり、跳ね橋を下ろすためのクランクを回すためにアクションが必要な合理的な理由を述べることを期待しているかもしれない。

リアクション Reactions

 ある特殊能力や呪文、状況は「リアクション」と名付けられている特殊なアクションを許される。リアクションは君のターン中、あるいは他者のターン中に起こったことをトリガーに、即座に行われる反応として行われる。この章の後半で説明されている機会攻撃opportunity attackは、リアクションの中で最もよく使われるものの一つだろう。
 もし君がリアクションをとったなら、君の次のターンが始まるまで別のリアクションを行うことはできない。リアクションが他者のターンを邪魔した場合でも、そのクリーチャーはリアクションの解決後に続けることができる。

移動と位置取り Movement and Position

戦闘中、キャラクターとモンスターは絶え間なく動き回り、時には自分に有利な位置をとろうと移動する。
君のターンでは、君は移動速度までの距離を移動できる。もっと長く、あるいは短く移動するには下記のルールを参照のこと。
君の移動にはジャンプや登攀、水泳なども含まれる。これらの異なる移動方法は歩行と組み合わせることも、どれかだけで移動を続けることもできる。ただし、移動のたびに君の移動できる距離からどの移動法であれ移動した距離を引くこと(訳註:移動方法を複数組み合わせても、合計で移動できる距離は変わらないの意)。『特殊な移動方法』については第8章にジャンプや登攀、水泳などが個別に説明されている。


君ができること Interacting with Objects Around You

以下に示すのは君が移動アクションと組み合わせて行えるアクションの例である。
  • 剣を抜く、納める
  • ドアを開ける、閉める
  • バックパックからポーションを取り出す。
  • 落ちている斧を拾う
  • 机から安物の宝石を拾い上げる
  • 自分の指輪をはずす
  • 食べ物を口に突っ込む
  • ベルトポーチから何枚かのコインを引っ張り出す
  • フラゴンに残ったエールを一気に飲み干す
  • レバーやスイッチを入れる
  • 燭台から松明を引っ張り出す
  • 手の届く書架から本を取り出す
  • 小さな火を消す
  • マスクを被る
  • クロークのフードを目深に被る
  • ドアで聞き耳をたてる
  • 小さな石を蹴る
  • 錠に挿した鍵をまわす
  • 10ft棒で地面をつつく
  • 他のキャラにアイテムを渡す


移動を振り分ける Breaking Up Your Move

 ターン中、アクションを行う前や後に、移動を振り分けることができる。例えば、君の移動速度が30ftなら、まず10倍ft移動し、アクションを行ったあと、20ft移動することができる。

攻撃をはさんだ移動 Moving between Attacks

 君が複数回攻撃できるなら、攻撃のたびに移動することができる。例えば、君が追加攻撃の特徴によって二回攻撃ができる、移動力が25ftのファイターなら、まず10ft移動し、攻撃して、さらに15ft移動して攻撃することができる。

移動速度を変える Using Different Speeds

 例えば君が歩行と飛行といったように、二つ以上の移動速度を持っているなら、君は自由に移動モードを変更し、戻すことができる。ただし、変更するたびに、それまでに君が移動した距離を、新しい移動速度から引いて、新たな移動速度とする。その距離が、君が移動できる距離となる。その結果が0となるなら、君はその移動でそれ以上移動することはできない。
例えば、君が通常の移動速度30ftを持っているとき、ウィザードがフライ呪文を唱え、飛行速度60ftを得たとする。この時、もし君が20ft飛行したなら、そのあと歩けるのは10ftだけである。その後再び飛行すれば、さらに30ftを飛ぶことができる。

移動困難地形 Difficult Terrain

 戦闘が何もない部屋や平坦な空き地で行われるのはまれなことだ。岩のごろごろしている洞窟や下生えだらけの深い森、がたつく階段など、典型的な戦場は移動困難な地形を含んでいるものだ。
 移動困難地形を1ft移動するためには、余計に1ft分の移動力が必要となる。同じ場所に移動困難となる条件がいくつか重なっていたとしても、このルールは同様に適用される。
 背の低い家具、がれき、下生え、急な階段、雪、浅い沼地などがこうした移動困難地形に数えられる。また、他のクリーチャーのいる場所は、それが敵か味方かに関わらず移動困難地形とみなされる。

伏せる Being Prone

 戦闘中、敵に殴り倒されたり、投げ飛ばされたりすることで、地面に這いつくばるというのはよくあることだ。ゲーム中、それは伏せ状態Proneとして扱われ、巻末の用語集にも記載されている。
 君は移動力を使わず伏せ状態になることができる。立ち上がるにはもう少し努力が必要となり、君の移動力の半分が必要となる。例えば、移動速度が30ftなら、立ち上がるためには移動速度を15ft分費やす必要がある。それ以下の移動力しか残っていない、あるいはそもそも移動力が0であれば、君は立ち上がることはできない。
 伏せ状態から移動するには、君は這い進むcrawlか、テレポーテーションのような魔法を使わなければならない。1ftを這い進むには、余分に1ft分を使わなければならない。それが移動困難地形であれば、さらに1ft分、つまり、1ft進むために3ft分の移動が必要となる。

敵の周りを動く Moving Around Other Creatures

 君は君に敵意を持たないクリーチャーのいるスペースを通過できる。一方、相手に敵意がある場合は、そのクリーチャーのサイズが君より2段階以上大きいか小さければ通過できる。いずれにせよ、他のクリーチャーのいるスペースは移動困難であることを忘れずに。
 それが敵でも味方でも、君は他のクリーチャーがいるところで移動を終えることはできない。
 君が敵対するクリーチャーの間合いから離れたとき、君は機会攻撃opportunity attackを受ける。詳細はこの章にて後述される。

飛行 Flying Movement

 飛行できるクリーチャーはその機動力の恩恵を大いに楽しむことができるが、一方で彼らは常に墜落の危険と隣り合わせている。もし飛行中のクリーチャーが伏せ状態にされた場合、移動速度が0になり、移動する能力を失う。また、そのクリーチャーが滞空hoverしたり、フライ呪文のような魔法でそこに浮いていることができない限り、その場で落下する。

クリーチャーのサイズ Creature Size

 クリーチャーはそれぞれ異なる範囲を占める。サイズの分類表には、戦闘中にクリーチャーがどのくらいの広さを占有するかが示されている。物体にもこのサイズ分類を適用してよい。

表:サイズの分類表

サイズ size 大きさ(ft) Space
超小型Tiny 2 1/2 × 2 1/2
小型Small 5 × 5
中型Medium 5 × 5
大型Large 10 × 10
超大型Huge 15 × 15
巨大Gargantuan 20 × 20(またはこれ以上)

大きさ Space

 クリーチャーの大きさは戦闘時にその範囲を有効に制御できていることを示すもので、実際の体の大きさを示すものではない。例えば典型的な中型のクリーチャーの幅は5ftではないが、それくらいの幅を制御している。したがって、中型のホブゴブリンが5ftの幅の戸口の前に立っていたとしても、ほかのクリーチャーがホブゴブリンをどかさないとそこを通れないということはない。
 クリーチャーの大きさは、同時にそのクリーチャーが効率的に戦うために必要な広さも反映している。そのため、戦闘中インクリーチャーの周りにいられるクリーチャーの数は限られている。戦っている者が中型であれば、周囲5ftを8体のクリーチャーで取り囲むことができる。より大きなクリーチャーならさらに大きなスペースを占めることができるため、より少ない数で相手を取り囲むことができる。大型のクリーチャーなら5体いれば、中型かより小さい者を入れる小さな部屋を作り出せる。それに対し、巨大のクリーチャーを取り囲むなら、中型のクリーチャーが20体必要となる。

無理やり入り込む Squeezing into a Smaller Space

 クリーチャーは自分の大きさより1サイズ狭いところに無理やり入り込むことができる。よって、大型のクリーチャーでも5ftの通路を通り抜けることができる。このように無理やり入り込む場合、クリーチャーは1ft移動するのに余計に1ft使わなければならず、その状態で戦うなら攻撃と【敏】セーヴに劣位を被る。また、狭いところに入り込んでいるクリーチャーを攻撃する際には優位を得る。

戦闘中のアクション Actions in Combat

 君がターン中にアクションを行うとき、君が行えるアクションの1つを実施できるほか、君がクラスや特殊能力、あるいは何らかの理由で与えられたアクションを行える。モンスターは能力の説明にこうしたアクションへのオプションが記載されている。
 もし君がルール上説明がないアクションを行うなら、DMはそのアクションが可能か否か、それを行うにはどのような判定が必要かを、そしてそれを実行しときにはその正否を説明する。

攻撃 Attack

 戦闘中、もっとも頻繁に行われるのは、剣を振る、弓から矢を放つ、拳を振るうなどといった攻撃アクションである。このアクションにより、君は一回の近接攻撃か遠隔攻撃ができる。攻撃の詳細については『攻撃を行う Making an Attack』の項を参照のこと。
 ファイターの持つ追加攻撃Extra Attackなどといった特徴は、アクション時に更なる攻撃を可能にする。

追加ルール Variant: グリッドを使う Playing on a Grid

 君がミニチュアやトークンを使って、四角いグリッド上でプレイしたいなら、以下のルールに従うこと。
マスSquares:各マスは5ft四方である。
移動速度:1ft単位ではなく、5ft単位で移動する。つまり、君は5ftずつ移動する。君の移動速度を5で割り、移動できるマス目の数として計算しておくとよいだろう。例えば、移動速度が30ftなら、6マス移動と置き換えられる。頻繁に使うようならにキャラクターシートに書いておくとよい。
マスに入る:マスに入るためには、少なくとも1マスぶんの移動距離が残っていなければならない。なお、斜めのマスにはいるのも同様である(この斜め移動に関するルールはリアリズムを犠牲にゲームをスムーズに進めるための措置である。DMGにはよりリアルな扱い方についての記載が行われる)。
 もしマスに入るのに、移動困難地形のように余計なコストがかかる地形だった場合、君はそこに入るために十分なコストが支払えなければならない。例えば、移動困難地形なら、少なくとも2マスぶんの移動力がのこっていなければならない。
角:斜め移動で曲がり角や壁、樹木といった、マスのスペースを埋めるような地形を横切るように移動することはできない。
距離:あるものからあるものへの距離はどう決めるか? クリーチャーと物で変わるか? マスで数える場合はスタート地点に隣接するマスから数えはじめ、最短距離を通って対象のいるマス目までの数を数える。

呪文を唱える Cast a Spell

 ウィザードやクレリック、そして多くのモンスターたちは、呪文を使い、戦闘に大きな影響を与える。呪文には、術者が呪文を使用するために必要なアクションを示した発動時間casting timeがあり、アクションだけでなく、リアクションであったり、分や時間単位であらわされる場合もある。したがって、呪文の詠唱そのものにはアクションは必要ではない。ほとんどの呪文の発動時間は1アクションであり、術者は戦闘中のアクションを使って呪文を使う。第10章に呪文使用に関する詳細があるので参照のこと。

ダッシュ Dash

 ダッシュを行うと、そのターンに普段よりも余計に移動できる。各種の修正を行った後の移動速度分、移動が増加する。例えば、移動速度が30ftなら、ダッシュしたターンには60ft移動できる。
 移動速度を増やしたり減らしたりする効果は、ダッシュ時に追加される移動にも同じだけ適用される。例えば、君の移動速度が30ftから15ftになった場合、君はこのターンにダッシュをすることで30ft移動できる。

離脱 Disengage

 離脱アクションを行うと、そのターン中は移動による機会攻撃を受けない。

回避 Dodge

 回避アクションは、攻撃を回避することに集中するアクションである。君の次のターンの開始時まで、攻撃者が見えているなら、君への攻撃には劣位が与えられるほか、君の【敏】セーヴには優位が与えられる。君はこれらの利益を脱力状態(付表を参照)や、移動速度が0になったとき失う。

援護 Help

 君は誰かの仕事が完成するのを援護することができる。援護アクションを行うことで、そのクリーチャーは、君の次のターンの最初まで、作業のために行う次の能力値チェックに優位を与えることができる。
 もう一つ、君は5ft以内で戦う友好的なクリーチャーの攻撃を援護できる。君はフェイントをかけ、敵の注意をひきつけるなどして、仲間がより効果的に攻撃できるようにする。援護されている仲間が君の次のターンの開始時までに攻撃を行った場合、その最初の攻撃判定に優位を得る。

隠行 Hide

 君は隠行アクションを行い、【敏】〈隠密〉を行うことで姿を隠そうと試みることができる(詳細は第7章隠れ身Hiddingの項を参照)。成功すれば、君はこの章の”不可視の攻撃と対象”の項に記載される利益を得る。

待機 Ready

 時には、敵の上に飛び乗ったり、周りの状況が整うまで機会をうかがいたいこともあるだろう。そうしたければ、君は自分のターンで待機アクションを使い、リアクションを使ってあとで行動できるようにすることができる。
 最初に、君はリアクションのためのトリガーとして、観測できる状況の変化を決める。次に、そのトリガーに対し、どんなアクションをするか、あるいは移動速度までの距離を移動するかを決める。
 例えば「狂信者が跳ね上げ戸をまたいだら、それを開けるためにこのレバーを下げる」「ゴブリンが自分の隣に来たら、そこから逃げる」などが例としてあげられるだろう。
 トリガーとなる行為が行われたら、そのトリガーが終わってからか、あるいはトリガーとなった行動を邪魔する形でリアクションを行うことができる。1ラウンドの間には1度しかリアクションはできないことを忘れずに。
 君が呪文を待機しているなら、君は通常通り呪文を唱えたが、そのエネルギーを保持した状態となり、トリガーとなる事象のリアクションとしてそれを開放する。
 待機できる呪文は発動時間が1アクションのものであり、魔力を保持している間は精神集中が必要となる(詳細は第10章を参照)。精神集中が破れたら、呪文は何の効果も発揮せずに消え去る。例えば、君がウェブ呪文のために精神集中を保っているときにマジックミサイルを待機するなら、君はマジックミサイルを敵に放つため、ウェブ呪文を停止しなければならない。また、リアクションとしてマジックミサイルを放つ前にダメージを受けたりしたら、君の精神集中は破れる。

捜索 Search

 君は捜索アクションを行うことで、何かを探すために自分の注意力をすべて注ぎ込む。どのように探すかによって、DMは【判】〈知覚 Perception〉と【知】〈調査Investigation〉いずれのチェックで行うかを決めてよい。 

物を使う Use an Object

 通常、物を扱うときは、攻撃の一部として剣を抜くなどといったように、何かの行動と同時に行うことができる。しかし、物を使うためにアクションを必要とするような場合には、君は物を扱うアクションを行う。このアクションは君のターンに複数の物を扱うような時にも使用できる。

即興のアクション Improvising an Action

 君のキャラクターは上記のアクション以外にも、ドアを叩き壊す、敵を脅す、魔法の守りの弱点を探し出す、敵に和平を呼び掛けるなど、様々なことができる。アクションの制限となるのは君の想像力と、キャラクターの能力値だけだ。第7章の能力値に関する説明を読めば、君はもっと即興で行えることを思い付くだろう。
 君がこのルールに掲載されていないことをアクションとして行いたいなら、DMはそのアクションの可能性と、それを行うためには何をすればいいか、そして実行したなら成功か失敗かを説明する。

攻撃する Making an Attack

 近接武器を叩きつけたり、遠くの敵を遠隔武器で撃ったりするとき、あるいは呪文の一部として攻撃判定を行うには、以下の単純なシステムで解決する。
1.対象を選ぶ:攻撃できる範囲にいる対象(クリーチャー、物体、場所など)を選択する。
2.修正を決定する:DMは対象に適用される遮蔽や、優位/劣位の有無などを決定する。加えて、攻撃判定にボーナスやペナルティなどの修正を与える呪文や特殊能力、その他の効果を適用する。
3.攻撃の解決:攻撃判定を行う。命中したら、攻撃が特殊な効果をもたらさない限り、ダメージを決定して適用する。一部の攻撃はダメージに加え、あるいはダメージの代わりに特殊な効果を引き起こす。
 もし君がしたアクションが攻撃かそうでないかが分からないとき、それを明確にするルールは一つだ。「攻撃判定をしたら、それは攻撃だ」。

攻撃判定 Attack Rolls

 攻撃したとき、君の攻撃判定はその攻撃が当たったかどうかを決める。攻撃判定を行うためには、君はd20を振り、適切な修正を加える。これらの合計が対象のアーマークラス(AC)以上であれば、攻撃は命中である。キャラクターのACは制作時に決められ、モンスターのACはモンスターのデータに示される。

ダイスロールへの修正 Modifiers to the Roll

 攻撃判定を行ったとき、それに与えられる修正には、能力値修正と習熟ボーナスの2つがあげられる。モンスターの場合は修正値がモンスターのデータに示される。
能力値修正:近接攻撃には【筋】、遠隔攻撃には【敏】の能力値修正をそれぞれ用いる。武器の中で、技巧finesseないし投擲thrownの特性を持つものはこのルールから外れる。また、呪文による攻撃には、呪文の発動に用いられる能力値修正が用いられる。詳細は第10章を参照のこと。
能力値修正は
習熟ボーナス:君は自分が習熟している武器を使用しているとき、攻撃に習熟ボーナスを加える。呪文による攻撃にも同様に加える。

1、20が出た Rolling 1 or 20

 運命の祝福か、あるいは呪いによって、戦闘時には新兵が攻撃を命中させ、古参兵が攻撃をはずすこともある。
 攻撃時のd20ロールで20が出たとき、修正や相手のACがいくつかによらず、その攻撃は命中する。加えて、その攻撃はこの章で後に説明されるクリティカルヒットとなる。
 一方、1が出た場合には、修正や相手のACがいくつかによらず、その攻撃は外れとなる。

不可視の敵と対象 Unseen Attackers and Targets

 戦闘時には敵の目から逃れるために物陰に隠れたり、インヴィジビリティの呪文を唱えたり、闇の中に潜んだりすることがある。
もし君が、見えていない対象を攻撃するなら、その攻撃判定には劣位が課される。このとき、君は対象がどこにいるかを推測したり、どこにいるかを音で確認したりする必要があるのは言うまでもない。そうして攻撃した場所に相手がいなければ、当然その攻撃は自動的に外れる。DMはそのような場合、通常は敵がいる場所の推測が間違っていたため攻撃が外れたことを伝える。
 クリーチャーが君のことを見えていないなら、君からの攻撃には優位が与えられる
 君が隠れていて、かつ両者とも相手が見えず、聞こえてもいなかったら、君は攻撃の時、攻撃が当たろうが外れようが隠れている場所から出なければならない。

遠隔攻撃 Ranged Attacks

 遠隔攻撃として、君は弓やクロスボウを撃ち、手斧などの手投げ武器を投げ、離れた敵を攻撃する。モンスターは尾のトゲを飛ばすこともある。また、多くの呪文は遠隔攻撃を含んでいる。

射程 Range

 君が遠隔攻撃を行う際には、対象が射程内である必要がある。
 もしその遠隔攻撃が呪文によるものなら、射程は1つであり、射程を越えて攻撃することはできない。
 一部の遠隔攻撃、例えばロングボウやショートボウには射程が2つある。短い方が通常射程normal range、長い方が最大射程long rangeである。通常射程を越える攻撃には劣位が課され、また、最大射程を越える対象を射撃することはできない。

近接戦時の射撃 Ranged Attacks in Close Combat

 すぐとなりに敵がいる時に狙いを定めて射撃するのは難しい。呪文でも武器でも他の手段であっても遠隔攻撃を行う時、君は君を見られる脱力状態ではない敵対的なクリーチャーの5ft以内で行う攻撃ロールに劣位が課される。

近接攻撃 Melee Attacks

 白兵戦において、君は間合いreach内の敵を近接攻撃できる。近接攻撃は通常、剣や斧、ウォーハンマーなどの手持ちの武器で行われる。モンスターは通常、爪や角、牙、触手などの体を使った攻撃を行う。また、一部の呪文は近接攻撃を含んでいる。
 ほとんどのクリーチャーは5ftの間合いを持ち、5ft内の敵に近接攻撃を行える。一部のクリーチャー(多くは中型より大きい)は5ftより広い間合いを持つので、それぞれの説明を参照のこと。
 君は武器なしで近接攻撃を行える。これら素手攻撃については、第5章の武器表を参照のこと。

機会攻撃 Opportunity Attacks

 戦闘の間は、互いが相手のガードが下がる瞬間を待ち構えているものだ。自らを危険にさらすことなく、無頓着に敵の回りを歩くことは難しい。そんなことをすれば、敵の機会攻撃を招くことになる。
 君は、目に入っている敵対的なクリーチャーが君の間合いから離れるとき、機会攻撃を行うことができる。機会攻撃のために、君はリアクションを使用し、相手に一回の近接攻撃を行う。攻撃は相手の移動に割り込む形で、相手が間合いから離れるまさにその瞬間に行われる。
 君は離脱Disengageアクションを行うことで、機会攻撃を避けることができる。また、テレポートや、君が自身の移動距離を使わない移動やアクション、リアクションによって機会攻撃を受けることもない。例えば、君が爆発に巻き込まれて敵の間合いから押し出されたり、落下中に間合いを通過したとしても、機会攻撃を受けることはない。

二刀流 Two-Weapon Fighting

 君が攻撃アクションを行うとき、片手に軽い近接武器light melee weaponを持っているなら、君は追加アクションbonus actionでもう一方の手に持った軽い近接武器で攻撃できる。この追加攻撃のダメージには、君の能力値修正がマイナスでない限り、能力値修正をダメージへ加えることはできない。
 持っているのが手投げ属性の武器であれば、近接攻撃の代わりに投げることができる。

掴み Grappling

 クリーチャーを掴んだり、取っ組み合いをしたいときには、攻撃アクションとして特殊な近接攻撃である掴みgrappleを行うことができる。君が攻撃アクションで複数回攻撃ができるなら、そのうちの一回を置き換えることもできる。
 掴みの対象は、君の間合い内にいなければならず、「君より1サイズ上」より大きい場合には対象に選べない。少なくとも一方の空いている手を使って、対象を掴もうとするときには、君の【筋】〈運動〉と相手の【筋】〈運動〉または【敏】〈軽業〉(対象がどちらを使うか選ぶ)の対抗判定を行う。君が勝てば、対象は君に掴まれた状態grappled conditionとなる(巻末の用語集参照)。この状態は決められた方法で終わることもあるし、君が望むときに相手を解放することもできる(アクションは必要としない)。
掴みからの脱出:掴まれた状態のクリーチャーはアクションを脱出のために使える。そうするためには、相手の【筋】〈運動〉または【敏】〈軽業〉と君の【筋】〈運動〉の対抗判定を行う。
掴んだクリーチャーを動かす:君が移動するとき、掴んでいるクリーチャーを引きずったり運んだりすることができるが、移動速度は半分となり、自分より2サイズ以上小さいクリーチャーでなければならない。

クリーチャーを突き飛ばす Shoving a Creature

 攻撃アクションを使って、君は特殊な近接攻撃としてクリーチャーを突き飛ばし、転ばせたり遠くに押し退けたりできる。君が攻撃アクションで複数回攻撃ができるなら、そのうちの一回を置き換えることもできる。
 対象は君より1サイズ以上大きくてはならず、君の間合い内にいなければならない。突き飛ばすときには、君の【筋】〈運動〉と相手の【筋】〈運動〉または【敏】〈軽業〉(対象がどちらを使うか選ぶ)の対抗判定を行う。君が勝てば相手をその場で伏せ状態proneにするか、君から5ft離れた位置まで押すことができる。

戦闘時の対抗判定 Contests inCombat

 戦闘中には君の腕前のすごさを敵に見せつけてやらねばならないこともある。こうした試みは、ゲーム中は対抗判定として表現される。この項では、戦闘中でアクションが必要とされる一般的な対抗判定、掴みと突き飛ばしが示されている。DMはこれらを参考に、ゲームに対抗判定を盛り込んでもよい。

遮蔽 Cover

 壁、樹木、クリーチャーなど、戦闘中に遮蔽、すなわち対象にダメージを与えるのを困難にするものは無数にある。対象は、攻撃やその他の効果を及ぼそうとする方向に向けた遮蔽からのみその恩恵を受けることができる。
 遮蔽には3段階ある。対象が複数の要因から遮蔽を受けている場合は、もっとも防御効果の高い遮蔽だけを適用し、効果を加算することはできない。例えば、対象がクリーチャーからの1/2遮蔽と、樹木からの3/4遮蔽を同時に受けているなら、その対象は3/4遮蔽を得ていることになる。
 1/2遮蔽を受けている対象はACと【敏】セーヴに+2のボーナスを得る。1/2遮蔽を受けるには、障害によってからだの半分ほどが隠されていなければならない。こうした障害には低い壁、大きな家具、低い木の幹、クリーチャー(敵・味方を問わない)などがある。
 3/4遮蔽を受けている対象はACと【敏】セーヴに+5のボーナスを得る。3/4遮蔽を受けるには、障害によってからだの3/4ほどが隠されていなければならない。こうした障害には落とし格子や矢狭間、生い茂った樹木などがある。
 完全遮蔽total coverを 得た対象を攻撃や呪文の直接の対象にすることはできない。ただし、一部の呪文は効果範囲の中に対象を巻き込むことができる。完全遮蔽を得た対象は、障害物によって全身が隠されている。

ダメージと回復 Damage and Healing

 D&D・世界を冒険する者にとって、傷ついたり死んだりするのは常に隣り合わせのことである。剣で斬り、矢を正確に撃ち込み、ファイヤーボール呪文から解き放たれる炎はダメージを与え、時にはそのクリーチャーの死をももたらす。

ヒットポイント Hit Points

 ヒットポイント(hp)は肉体と精神の耐久性を組み合わせた存在であり、いきる意思であり、また幸運でもある。たくさんhpを持つクリーチャーほど死に難く、hpが少ないほど脆弱である。
 クリーチャーの現在のhp(通常はこれがhpと呼ばれるものである)は最大値から0までの値を取り得る。この値はクリーチャーが傷ついたり、癒されたりすることで頻繁に変化する。
 クリーチャーがダメージを受けたとき、hpからダメージの値を差し引く。失われたhpの大きさは、hpが0になるまでクリーチャーの能力に影響を与えることはない。

ダメージの決定 Damage Rolls

 様々な武器、呪文、モンスターの能力などにより、ダメージがもたらされる。ダメージ決定の為のダイスを降り、各種修正を加え、対象へのダメージを決定する。魔法の武器や特殊能力などはダメージにボーナスを与える。
 武器で攻撃するときには、ダメージに能力値修正(命中判定に加えられる能力値と同じものを使用する)が加えられる。呪文の場合は、どのダイスを使用するか、どのような修正が加えられるかが呪文の説明に記載されている。
 呪文やその他の効果によって複数の対象にダメージを与えるような場合、ダメージはすべての対象のためにダイスを一度だけ振る。例えば、ウィザードのファイヤーボール呪文やクレリックのフレイムストライク呪文であれば、爆発に巻き込まれたすべてのクリーチャーのダメージを一回のダイスロールで決定する。

クリティカルヒット Critical Hits

 クリティカルヒットとなったときは、対象へのダメージに追加のダイスを振ることができる。攻撃者のダメージダイスの数を2倍にして、出た目を合計する。その後、通常通りダメージへの修正を加える。プレイスピードを上げるため、すべてのダイスを一度に振るとよいだろう。
 例えば、君のダガー攻撃がクリティカルした場合、ダメージは1d4ではなく2d4となり、これに能力値修正を加える。もし攻撃に、ローグの急所攻撃のような追加のダメージダイスが含まれるなら、これらのダイス数も2倍になる。

ダメージの種別 Damage Types

 攻撃やダメージ呪文、その他のダメージをもたらす効果は、それぞれ子となるダメージの種別を有する。ダメージ種別はそれ自身には特にルールはないものの、ダメージへの耐性などといったルールの摘要時に使用される。
 ダメージの種別は以下の通りであるが、DMはこれらの例をもとに新しい効果を作成してもよい。
:ブラックドラゴンのブレスとして吹き付けられたり、ブラックプディングの分泌する消化酵素がもたらすダメージは酸ダメージである。
殴打:鈍い力--ハンマーや落下、締め付けなど--は殴打ダメージを与える。
冷気:アイスデヴィルの槍が放つ地獄の冷気や、ホワイトドラゴンのすべてを凍てつかせるようなブレスは冷気ダメージを与える。
:レッドドラゴンの炎のブレスや炎を産み出す多くの呪文は火ダメージを与える。
力場:力場はダメージを産み出すことに焦点を当てた純粋な魔法エネルギーである。力場ダメージはその多くがマジックミサイルスピリチュアルウェポンといった呪文によるものである。
電撃ライトニングボルト呪文やブルードラゴンのブレスは電撃ダメージを与える。
死霊:アンデッドや一部の呪文により生じる死霊ダメージは、物質だけでなく生命そのものを衰弱させる。
刺突:スピアのような武器やモンスターの噛みつきのような、突いたり刺したりするような攻撃は、刺突ダメージを与える。
:毒棘が刺さったりグリーンドラゴンの毒ガスのブレスは毒ダメージを与える。
精神:マインドフレイヤーのサイオニックブラストのように、精神による能力によって精神ダメージはもたらされる。
光輝:クレリックのフレイムストライク呪文や、炎のように肉を焼き焦がすエンジェルの強烈なる一撃、力ある精霊の暴走などは光輝ダメージを与える。
斬撃:剣や斧、モンスターの鋭い爪などは、斬撃ダメージを与える。
雷鳴サンダーウェイブ呪文のような、辺りを揺るがすような音の爆発は、雷鳴ダメージを与える。

ダメージの効果の説明 Describing the Effects of Damage

 DMはhpの喪失を異なる形で説明できる。君の現在のhpが最大値の半分以下になるまでは、通常は特に傷ついたりはしていない。半分以下になったとき、切り傷やアザといった、弱りはじめる兆候が現れる。さらに、君のhpを0にする打撃が君を捉えたなら、出欠おびただしい傷や外傷ができたり、あるいは単に打ち倒され、気を失ってしまう。

ダメージ耐性と脆弱性 Damage Resistance and Vulnerability

 一部のクリーチャーや物体は特定のダメージでは非常に傷つけにくかったり、逆に容易に傷つけられたりする。もしクリーチャーが特定のダメージ種別に対するダメージ抵抗を持つなら、その種のダメージを半分にできる。一方、脆弱性を持っているなら、受けるダメージは2倍になる。
 耐性や脆弱性はダメージに対するすべての修正が適用されてから適用される。例えば、殴打ダメージに耐性のあるクリーチャーが25点の殴打ダメージを受けたとする。このときクリーチャーが魔法の助けにより、すべてのダメージを5点防ぐ魔法のオーラに包まれているなら、まず25点のうち5点が削減され、次いでダメージが半減されるため、受けるダメージは10点となる。
 複数の耐性や脆弱性が重なる場合は、どれか1つだけを適用する。例えば、火ダメージに対する耐性とすべての非魔法の攻撃への耐性を持っているクリーチャーが、非魔法の火による攻撃のダメージは半分になる(1/4にはならない)。

治癒 Healing

 死んでしまっていなければ、ダメージは永遠のものではない。死でさえも、強力な魔法の前では絶対のものではないのだ。休憩はクリーチャーのhpを回復し(詳細は第8章に記載されている)、キュアウーンズなどの呪文や回復のポーションはダメージを簡単に拭い去る。
 なんらかの形で治癒したクリーチャーは、hpを得て、現在のhpに加算する。hpはそのクリーチャーの最大hpを越えることはなく、越えて治癒した分はすべて失われる。例えば、ドルイドがレンジャーのhpを8点癒したとする。レンジャーの最大hpが20で現在のhpが14だとしたら、レンジャーはドルイドから8点ではなく6点回復してもらったことになる(訳注:つまり、レンジャーの現在のhpは20となる)。
 死亡したキャラクターは、リヴィヴィファイのような魔法を使わない限り、その命を取り戻すことはない。

hpが0になる Dropping to 0 Hit Points

 hpが0になったからといって、君は無条件に死んだり意識を失うわけではない。以下の説明を読むこと。

即死 Instant Death

 大きなダメージは君を即死せしめる。ダメージが君のhpを0にしてなお余りあるとき、そのダメージが君のhpの最大値を越えるなら、君は即死する。例えば、最大hpが12のクレリックの現在のhpが6だとしよう。このクレリックが攻撃により18ダメージを受けたら、hpが0になると共に12のダメージが残される。残されたダメージがhpの最大値と同値となったことから、このクレリックは死亡する。

意識を失う Falling Unconscious

 ダメージが君のhpを0にしたものの、君を死亡させていなければ、君は気絶状態となる(別表:状態異常参照)。気絶状態は、君がhpを回復したとき終了する。

デス・セーヴ Death Saving Throws

 ターンの開始時にhpが0になっているときには、君は死に近づいているか、はたまた生にしがみついていられるかを決めるデス・セーヴと呼ばれる特殊なセーヴィング・スローをしなくてはならない。このセーヴには通常とは異なり、特定の能力値を用いない。君はいまや運命の掌の上にあり、呪文や特徴のみがセーヴの成功を助けてくれる。
 d20をロールせよ。出目が10以上であればセーヴは成功である。そうでなければセーヴは失敗だ。成功や失敗そのものはなんの影響も与えない。しかし、三度目の成功は、君を安定化する(以下を参照)。そして三度目の失敗は君を死亡させる。成功や失敗は連続している必要はなく、セーヴする度に3回になるまで結果を記録しておく。正否の回数はhpが回復するか、安定化するごとに0に戻る。
1か20を振る:デス・セーヴの際に出目が1であれば、失敗2回分としてカウントする。出目が20なら、君はhpを1回復する。
ダメージでhpが0になる:hpが0の時にダメージを受けたら、デス・セーヴに1回失敗したものする。ダメージがクリティカルヒットであったら、2回失敗したものとみなす。ダメージが君の最大hp以上なら、君は即死する。

クリーチャーの安定化 Stabilizing a Creature

 hpが0になったクリーチャーを救う最良の手段は、治癒を施すことだ。治癒が不可能であれば、クリーチャーは安定化するか、あるいはデス・セーヴに失敗して死ぬ。
 君は意識を失っているクリーチャーを救うため、アクションを応急手当に使うことができる。DC10の【判】〈医術〉に成功することで、そのクリーチャーを安定化することができる。
 安定化したクリーチャーにはデス・セーヴは必要ないが、hpは0のままであり、気絶状態のままである。安定化中にダメージを受けたクリーチャーは暗影か状態が終了し、再びデス・セーヴを行わなければならない。安定化したクリーチャーは1d4時間後に1hpを得る。

モンスターの死 Monsters and Death

 多くのDMは、モンスターのhpが0になったら気絶し、デス・セーヴを行うより、なったと同時に死亡することにするだろう。
 強力な敵役や特別なNPCは通常通り、気絶とデス・セーヴのルールを摘要してもよい。

クリーチャーを気絶させる Knocking a Creature Out

 時に、敵を殺そうとするのではなく、生かしたままとらえたいこともある。攻撃側が近接攻撃でクリーチャーのhpを0にしたとき、攻撃側はクリーチャーを気絶させることを選らんでもよい。攻撃側はダメージを与えた時に、即座にどちらにするか決めることができる。

一時ヒットポイント Temporary Hit Points

 一部の呪文や特殊能力はクリーチャーに一時hpを与える。一時hpは現在のhpとは別個のものである。それは、君に与えられるダメージを吸収し、君を傷つくことから守る、hpの貯蔵庫なのだ。
 一時hpがあるときにダメージを受けたら、まず一時hpからダメージ分を差し引き、残ったダメージがあればそれをhpに適用する。例えば君が5点の一時hpを得ているときに7点のダメージを受けたとしたら、君はすべての一時hpを失い、2点のダメージを受ける。
 一時hpは現在のhpとは別のものであることから、最大hpによる制限は課されない。キャラクターはhpが最大であっても一時hpを得ることができる。
 治癒が一時hpを回復することはなく、あとから追加されることもない。君が追加hpを得ているとき、さらに追加hpを得ることがあったら、君は現在の追加hpをそのまま保つか、新しく得た追加hpに変えるかを選ばなければならない。例えば、君がすでに10追加hpを持っているとき、12点の追加hpを得たとする。このとき、君は追加hpを10点にするか12点にするかを選ばなければならず、22点になることはない。
 hpが0の時に追加hpを得ても、意識を取り戻したり安定化することはない。追加hpはダメージを直接吸収するだけのものであり、君を救うことができるのは治癒だけなのだ。なお、一時hpの持続時間が残っていたとしても、大休憩ののちはすべて失われる。

騎乗戦闘 Mounted Combat

 戦場でウォーホースを駈って突撃する騎士、グリフォンの背に跨がり呪文を唱えるウィザード、ペガサスに乗り空を自在に駆けるクレリック・・・・・・いずれも騎乗動物の移動速度と機動力を十全に活かしている。
 君は、乗用できる体の構造と、乗ろうとするものより1サイズ大きい体を持ち、騎乗を許すクリーチャーを乗騎として、以下のルールに則って扱うことができる。

乗騎への乗り降り Mounting and Dismounting

 移動中、君は5ft以内の乗騎に乗り降りすることができる。このような行動には、コストとして移動速度の半分を必要とする。例えば、君の移動速度が30ftなら、馬へ騎乗した際の移動時は15ftとなる。したがって、君がすでに移動速度の半分を移動していたり、移動力が0になったときには騎乗は行えない。
 君の乗っている乗騎がなんらかの効果で移動させられたとき、君はDC10の【敏】セーヴに成功しなければ乗騎から落ちる。その場合、5ft以内のどこかに落ち、伏せ状態となる。騎乗中に伏せ状態にされた時にも、同様にセーヴを行う。騎乗中の乗騎が伏せ状態にされた時には、君はリアクションを使って馬から降りることができ、その場合は同様に5ft内に足から降りる。そうできなければ、君は乗騎から5ft内に落ち、伏せ状態となる。

乗騎のコントロール Controlling a Mount

 君が騎乗しているなら、2つのオプションがある。君が乗騎をコントロールする方法と、君と乗騎がそれぞれ個別に動く方法である。ドラゴンなどの知性あるクリーチャーは、騎乗者と別に動くことができる。
 君は騎乗者を受け入れるよう訓練された乗騎のみ、コントロールすることができる。家畜化された馬やロバなどの生き物はこうしたトレーニングを受けているのだ。コントロールされているクリーチャーのイニシアチブは騎乗者と同じになる。通常の移動時と同様に移動できるが、アクションとしてはダッシュ、離脱、回避の3つしか行えない。コントロールされている乗騎は、騎乗者のターン中に移動したりアクションを行ったりできる。
 個別に動くことができるクリーチャーは自分のイニシアチブで行動する。騎乗者を背にしていても乗騎のアクションには影響はなく、移動も行動も望むように行うことができる。戦場からの脱出や、激しい攻撃で敵に深い傷を負わせるなど、乗騎は騎乗者の要望に応じて行動する。
 騎乗中、乗騎が機会攻撃を誘発した場合、攻撃する側は騎乗者か乗騎のいずれを攻撃するか選択できる。

水中戦 Underwater Combat

 冒険者たちは時にはサハギンの海底の棲みかに彼らを追ったり、古代の沈没船でサメと戦ったり、水に沈んだダンジョンなどの厳しい環境で戦わなければならないことがある。水中でのルールは以下の通り。
 水中で武器で攻撃する際、クリーチャーが天然にせよ魔法的にせよ水泳速度を持っていなければ、ダガー、ジャベリン、ショートソード、スピア、トライデント以外の武器での攻撃には劣位が課される。飛び道具の場合、基本射程を越える距離での攻撃は自動的に失敗となる。基本射程内であれば、武器がクロスボウ、ネット、ジャベリンのような投擲武器(スピア、トライデント、ダート)でない限り劣位が課される。
 クリーチャーでも物体でも、完全に水中にあるものは火ダメージへの耐性を有する。

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最終更新:2015年10月04日 02:24