第5章:装備品

 大都市の市場は様々な売り手と買い手でいっぱいだ。ドワーフの鍛冶屋、エルフの木彫師、ハーフリングの農夫、ノームの宝石商、それに言うまでもなくあらゆる姿、体格、肌の色をしたヒューマンたち。彼らは民族的、文化的な出自も多種多様だ。きわめて大きな都市では、異国の香辛料や豪奢な衣服から、枝を編んだ籠や実用的な剣まで、およそ想像し得る限りのものは何でも売りに出されている。
 冒険者にとっては、武器や鎧、背嚢、ロープなど、その種の品物が手に入るかどうかが、何にも増して重要だ。ダンジョンや野生の荒野においては、適切な装備が生死を分けるからだ。この章では、ありふれた、あるいは風変わりな品々について詳述する。D&Dの諸世界が差し出す脅威に直面する時、冒険者たちはたいてい、それらが役に立つことを発見するだろう。

初期装備 Starting Equipment

 キャラクターを作成時に受け取る装備は、クラスと背景情報の組み合わせによって決まる。あるいはその代わりに、クラスによって決まった額の金貨(gold peace/gp)を受け取り、それを使ってこの章にある各種の一覧表からアイテムを購入してもよい。「表:クラスごとの初期所持金」を見て、何gp使えるのかを決定しよう。
 プレイヤーは、初期装備をどうやって手に入れたのかを決定する。それは相続財産かもしれないし、キャラクターが成長を通じて買い込んできた品物なのかもしれない。君が装備している武器、鎧、背嚢は軍務に由来するのかもしれない。自分で盗んできた可能性さえある。武器は世代から世代へと受け継がれてきた重代の家宝であり、ついに今、君のキャラクターがその衣鉢を継いで、先祖の冒険の足跡を追うことになったのかもしれない。

表:クラスごとの初期所持金
クレリック 5d4 × 10 gp
ファイター 5d4 × 10 gp
ローグ 4d4 × 10 gp
ウィザード 4d4 × 10 gp

財産 Wealth

 D&D世界における財産の姿は様々であり、コインや宝石の原石、交易品、美術品、動物などがある。また、その性質はキャラクターの経済状態を反映している可能性がある。小作農の取引では必需品が物々交換され、税は穀物やチーズで支払われている。貴族階級は鉱山、港、農地の権利といった法的権利を取引する。あるいは金の延べ棒を使い、コインの枚数ではなくポンド単位で黄金をやり取りをする。商人や冒険者や専門的なサービスを提供する人々だけが日常的にコインを使って取引をするのだ。

コインの種類 Coinage
 一般的なコインには何種類かあり、その材質となる金属の相対的な価値に応じて異なる通貨単位として通用している。もっとも一般的なのは、金貨(gold piece/gp)、銀貨(silver piece/sp)、銅貨(copper piece/cp)の3種類だ。
 金貨が1枚あれば、キャラクターは矢筒ひとつ、良質のロープ50フィート、ヤギ一頭などが買える。熟練の(だが達人というほどではない)工匠であれば、1日に金貨1枚を稼げる。金貨というコインはめったに使われないにせよ、金貨相当額は標準的な富の指標だ。商人たちが金貨数百枚あるいは数千枚の価値を持つ商品の取引を行うにあたっては、実際のコインのやり取りは普通しない。金貨で何枚というのは標準的な価値の指標であり、実際には金の延べ棒や、信用手形、高価な商品などが交換される。
 金貨1枚は銀貨10枚に相当する。銀貨は一般庶民に一番広く流通しているコインだ。銀貨1枚で買えるのは、ダイス1セット、オイルランプ1瓶、つましい宿での一晩の宿泊といったところ。
 銀貨1枚は銅貨10枚に相当する。肉体労働者や物乞いの間で一般的なコインだ。銅貨1枚で買えるのは、ろうそく1本、松明1本、チョーク1かけなどだ。
 これらに加えて、その他の貴金属でできた一般的でないコインが財宝の山から見つかることがある。エレクトラム貨(electrum piece/ep)やプラチナ貨(platinum piece/pp)は滅亡した帝国や失われた王国に起源をもち、時には取引に使うと怪しまれたり疑われたりすることもある。エレクトラム貨には銀貨5枚相当の価値があり、プラチナ貨には金貨10枚相当の価値がある。
 標準的なコインは1オンスの1/3の重量があるので、50枚で1ポンドの重量になる。

表:標準的な交換レート
コイン cp sp ep gp pp
銅貨(cp) 1 1/10 1/50 1/100 1/1,000
銀貨(sp) 10 1 1/5 1/10 1/100
エレクトラム貨(ep) 50 5 1 1/2 1/20
金貨(gp) 100 10 2 1 1/10
プラチナ貨(pp) 1,000 100 20 10 1

財宝を売る Selling Treasure
 君が探検するダンジョンは、財宝、装備品、武器、鎧、そしてそれ以上の物が見つかるチャンスにあふれている。通常、財宝やトリンケットを売ることができるのは町やそのほかの居留地に帰ってきた時ということになる。ただしそれも、戦利品に興味を持つ買い手や商人がいればの話だ。
 武器、鎧、装備品 一般的なルールとしては、無傷の武器、鎧、及びそのほかの装備品は、市場で売ると価格の半額が手に入る。武器や鎧をモンスターが使っていた場合、それが売り物になる状態である可能性は小さい。
 マジック・アイテム マジックアイテムを売るのは問題が多い。ポーションやスクロールの買い手を見つけるのはそれほど難しくない。しかしそれ以外のアイテムに関しては、最高に裕福な貴族以外はほとんど問題外となる。同様に、数少ない一般的なマジック・アイテムを除けば、マジック・アイテムや呪文を購入する機会にぶつかることなどほとんどないだろう。魔法は単なる金銀よりも遥かに価値があり、そのように扱われるべきだ。
 宝石、装飾品、美術品 これらの品は市場価格そのままの価値を維持している(訳注:売却時に半額になるわけではないという意味)。普通にコインで売買することもできるし、他の取引の際に通貨として使用することもできる。DMは、例外的に高い価値を持つ宝物に関しては、まず大きな町(あるいはもっと大きな共同体)で買い手を見つける必要があることにしてもよい。
 交易品 辺境の地では、多くの人々が物々交換で取引を行う。宝石や美術品のように、交易品――鉄の延べ棒、塩の袋、家畜など――は市場価格そのままの価値を維持しており、通貨として使用することもできる。

鎧と盾 Armor and Shields

 D&D世界は多種多様な文化からなる巨大なタペストリーであり、それぞれの文化は固有の技術水準にある。この理由により、冒険者たちが使える鎧の種類はレザー・アーマーからチェイン・メイル、高価なプレート・アーマー、さらにそれらの間に位置する何種類かの鎧までと、様々だ。「表:鎧」は、ゲーム内のいつどこでも一番手に入りやすい各種の鎧を集めたもので、それらを軽装鎧、中装鎧、重装鎧という3つのカテゴリーに分類してある。多くの戦士たちは、盾を使うことで鎧の効果を補強している。
 「表:鎧」には、D&D世界で着用される一般的な各種の鎧について、価格、重量、そのほかの特徴が記載されている。
 鎧習熟 鎧を着用し、ストラップで腕に盾を着けることは誰にでもできる。しかし効果的に着用する方法を知っているのは、その鎧の使用に習熟している者だけだ。それぞれのクラスごとに、どの種類の鎧に習熟しているかが決まっている。習熟していない鎧を着用している場合、キャラクターは【筋力】【敏捷力】に基づく能力値判定、セーヴィング・スロー、攻撃ロールに劣位を被り、加えて呪文を唱えることができない。
 重装鎧 重装鎧は着用者が素早く、隠れて、自由に移動するのを妨げる。表:鎧のある鎧タイプの【筋力】の列に「【筋】13」あるいは「【筋15】」などと書かれている場合、着用者の筋力が表の数値以上でない限り、その鎧を着用すると移動速度が10フィート減少する。
 隠密 表:鎧の「隠密」の列に「劣位」と書かれている場合、【敏捷力】(隠密)判定に劣位を被る。
 アーマー・クラス(AC) 鎧は着用者を攻撃から守る。着用する鎧(と盾)によってキャラクターのベース・アーマー・クラスが決まる。
  盾は木製もしくは金属製で、片手で使う。盾を装備するとアーマー・クラスは2上昇する。一度に効果を発揮する盾は1枚だけである。

軽装鎧 Light Armor
 柔軟で薄い素材でできた軽装鎧は素早い冒険者に有利だ。運動性を犠牲にすることなく、ある程度の防御力を得られるからだ。軽装鎧を着用すると、アーマー・クラスを決定する際、鎧のタイプによるベース・ナンバーに【敏捷力】ボーナスを加えることができる。
 パッデド パッデド・アーマーは、布と詰め物で作ったキルトを何層も重ねた構造になっている。
 レザー この種の鎧の胸当てと肩当てはオイルの中で煮て硬化させた皮革でできている。その他の部分はもっと柔らかくて動きやすい素材でできている。
 スタデッド・レザー 丈夫だが柔軟な皮革でできたスタデッド・レザーには、リベットやスパイクが密に埋め込まれている。

中装鎧 Medium Armor
 中装鎧は軽装鎧よりも高い防御力を提供するが、動きを妨げる度合いも大きい。中装鎧を着用すると、アーマー・クラスを決定する際、鎧のタイプによるベース・ナンバーに【敏捷力】ボーナスを最大で+2まで加えることができる。
 ハイド この種の大雑把なつくりの鎧は、分厚い毛皮や生皮でできている。野蛮人の部族や邪悪なヒューマノイド、その他より良い鎧に必要な道具や素材を使えない人々が、よく着用している。
 チェイン・シャツ 金属環をつなぎ合わせて作られているチェイン・シャツは、重ねた布や皮の間に着用される。この種の鎧は着用者の上半身に中程度の防御力を提供し、金属環どうしが触れ合う音は外側に重ね着したものが吸収する。
 スケイル・メイル この種の鎧は革製の上衣とレギンス(恐らくは別パーツのシャツも)で構成されており、それが魚の鱗によく似た、重なり合った金属片で覆われている。一式には籠手も含まれている。
 ブレストプレート この種の鎧は成形された金属製の胸甲を柔らかな皮の衣服と合わせて構成されている。脚と腕が比較的無防備ではあるが、重要器官には高い防御力を提供し、一方で着用者にかかる負荷は比較的軽い。
 ハーフ・プレート ハーフ・プレートは着用者の体の大部分を覆う成形された金属板でできている。ただ、脚部の防御は革帯に付けられたシンプルな脛当て程度だ。

重装鎧 Heavy Armor
 すべての鎧のカテゴリーの中で、重装鎧は最高の防御を提供する。重装鎧一式は全身を多い、様々な攻撃を受け止めるよう設計されている。熟練の戦士だけが、この重くかさばる鎧を扱うことができる。重装鎧を着用すると、【敏捷力】ボーナスをアーマー・クラスに加えることができない。しかし、【敏捷力】修正がマイナスであっても、それによるペナルティを受けることはない。
 リング・メイル この種の鎧は重い環を縫い込んだレザー・アーマーである。環は剣や斧による打撃に対して鎧を強化するのを助ける。リング・メイルはチェイン・メイルより劣っているため、通常はより良い鎧を購入できない者が着用する。
 チェイン・メイル チェイン・メイルは金属環をつなぎ合わせて作られており、鎧の下に重ねるキルトの布が含まれている。これは擦り傷を防ぎ、打撃に対してクッションとなる。一式には籠手が含まれる。
 スプリント この種の鎧は、幅が狭く縦に長い帯状の金属を皮革製の下地に鋲止めしたもので、詰め物をした布の上に着用する。動きやすいチェイン・メイルが関節を保護する。
 プレート プレートは成形した板金をつなぎ合わせてあり、全身を覆う。プレートの一式には、籠手、重い皮革製のブーツ、バイザーのついたヘルメット、鎧の下に着る分厚い詰め物をした衣服が含まれる。バックルとストラップによって、重量を全身に分散することができる。

鎧の着脱 Getting Into and Out of Armor
 鎧を着たり脱いだりするのにかかる時間は、カテゴリーによって決まっている。
 着る これは鎧の着用にかかる時間である。鎧によるACへのボーナスを得られるのは、所定の時間をかけて鎧一式を着用したときのみである。
 脱ぐ これは鎧を脱ぐのににかかる時間である。手伝いがいるなら、かかる時間は半分になる。

表:鎧の着脱
カテゴリー 着る 脱ぐ
軽装鎧  1分 1分
中装鎧  5分 1分
重装鎧  10分 5分
シールド 1アクション 1アクション

表:鎧
価格 アーマー・クラス(AC) 【筋力】 隠密 重量
軽装鎧
パッデド 5gp 11+【敏】修正 劣位 8ポンド
レザー 10gp 11+【敏】修正 10ポンド
スタデッド・レザー 45gp 12+【敏】修正 13ポンド
中層鎧
ハイド 10gp 12+【敏】修正(最大2) 12ポンド
チェイン・シャツ 50gp 13+【敏】修正(最大2) 20ポンド
スケイル・メイル 50gp 14+【敏】修正(最大2) 劣位 45ポンド
ブレストプレート 400gp 14+【敏】修正(最大2) 20ポンド
ハーフ・プレート 750gp 15+【敏】修正(最大2) 劣位 40ポンド
重装鎧
リング・メイル 30gp 14 劣位 40ポンド
チェイン・メイル 75gp 16 【筋】13 劣位 55ポンド
スプリント 200gp 17 【筋】15 劣位 60ポンド
プレート 1500gp 18 【筋】15 劣位 65ポンド
シールド 10gp +2 6ポンド


ヴァリアント・ルール:装備のサイズ Variant: Equipment Sizes
 大半のキャンペーンでは、常識の範囲で、冒険の途中で見つけた装備を使ったり身に着けたりすることができる。たとえば大柄なハーフオークはハーフリングのレザーアーマーには収まりきらないし、ノームはクラウド・ジャイアントの優雅なローブに飲み込まれてしまうだろう。
 DMはもっとリアリズムを持ち込むこともできる。たとえば、ヒューマンの個人に合わせて作られたプレート・アーマー一式は、かなり改造しなければ他の個人には着られないかもしれない。冒険者が変装の為に衛兵の制服を着たら、見るからにサイズが合わない感じになってしまうかもしれない。
 このヴァリアント・ルールを使用するなら、冒険者が鎧や服やそれに類する着用するためのアイテムを見つけた際には、鎧職人、仕立て屋、皮細工師、などの専門家を訪ねてそのアイテムを着られるようにしてもらう必要がある可能性がある。こうした作業には、アイテムの市場価格の10%~40%の費用が掛かる。DMはd4×10をロールして決めてもよいし、必要な調整の度合いをもとに追加のコストを決定してもよい。


武器 Weapons

 キャラクターのクラスは、キャラクターに武器への習熟を与える。クラスによって習熟が与えられる武器群は、クラスの得意分野やそのクラスが一番よく使うであろう武器を反映している。君が好きな武器がロングソードであろうとロングボウであろうと、武器とそれを効果的に扱う能力は、冒険において君の生死を分けるだろう。
 「表:武器」はD&D諸世界で使用される一般的な各種の武器について、価格、重量、命中した時に与えるダメージ、そのほかの特性(special properties)が記載されている。どの武器も、近接武器もしくは遠隔武器のどちらかのグループに分かれる。近接武器は5フィート以内の標的を攻撃するために使用する。遠隔武器は離れた標的を攻撃するために使用する。

武器習熟 Weapon Proficiency
 キャラクターの種族、クラス、特技、によって、特定の武器もしくは特定のカテゴリーに属する武器への習熟が得られる。カテゴリーには、単純武器と軍用武器の二つがある。大抵の人は単純武器に習熟している。単純武器には、クラブ、メイス、その他一般人が持つような武器が含まれる。軍用武器には、剣、斧、竿状武器など、効果的に使うためにもっと特殊な訓練が必要な武器が含まれる。戦士たちの多くが軍用武器を使用するのは、戦闘スタイルや訓練を一番有効に使えるからだ。
 武器に対する習熟があれば(=その武器に習熟していれば)、その武器を使用して攻撃を行う際に、君の習熟ボーナスを攻撃ロールに加える。習熟がない(=その武器に習熟していない)場合、命中判定に習熟ボーナスを加えない。

武器の特性 Weapon Properties
 武器表に記載されているとおり、武器の多くにはその用途に応じた特性がある。

 矢弾(Ammunition) 矢弾の特性を持つ武器を用いて遠隔攻撃を行えるのは、その武器から発射するための矢弾を持っている時だけである。その武器で攻撃を行うたびに、1回分の矢弾を消費する。矢筒やそのほかの容器から矢弾を取り出すのは、攻撃の一部である。戦闘終了後に戦場を探せば、消費した矢弾の半分を回収できる。
 矢弾の特性を持つ武器を近接攻撃に使用する場合、その武器は即席の武器として扱う(本章にて後述の「即席の武器」の項を参照)。スリングは、この用途で使ってダメージを与えるためには装填しなければならない。

 技巧的(Finesse) 技巧的な武器は、攻撃ロールとダメージロールの際に【筋力】を使うのか【敏捷力】を使うのかを君が選択できる。両方のロールには同じ修正値を使用しなければならない。

 重厚(Heavy) 小型クリーチャーは重厚な武器を使用した攻撃に劣位を被る。小型クリーチャーが効果的に使うは、重厚な武器は大きすぎ、かさばりすぎる。

 軽量(Light) 軽量の武器は小さく、扱いやすいため、両手で2本(以上)の武器を持って戦うのに理想的である。9章の「二刀流戦闘」(two-weapon fighting)の項参照。

 要装填(Loading) この武器は装填するのに時間がかかるため、君が通常何回攻撃を行えるかに関係なく、1回のアクション、ボーナスアクション、リアクションを使用した際には1発の矢弾しか発射できない。

 射程(Range) 遠隔攻撃に使用できる武器は射程距離が設定されており、「矢弾」もしくは「投擲」の特性の後に、カッコ書きで記載されている(単位はフィート)。射程距離には2つの数字がある。最初の数字は通常射程(normal range)、二つ目の数字は遠射程(long range)である。通常射程を超える距離にいる標的を攻撃する際には、攻撃ロールに劣位を被る。遠射程よりも遠い距離にいる標的は攻撃できない。

 間合い(Reach) この武器で攻撃を行うと、君の間合いは5フィート伸びる。

 特殊(Special) 特殊の特性を持つ武器は通常とは異なるルールが適用されるため、武器ごとに項目を立てて説明している(本章にて後述の「特殊武器」の項を参照)

 投擲(Thrown) 武器が投擲の特性を持つ場合、その武器を投げて遠隔攻撃を行うことができる。その武器が近接武器の場合、攻撃ロールとダメージロールへの修正は、その武器を使って近接攻撃を行う時と同じ能力値を用いる。たとえば、ハンドアックスを投げるならば【筋力】を使うが、ダガーを投げる場合は【筋力】と【敏捷力】のどちらを使ってもよい(ダガーには「軽量」の特性があるため)。

 両手(Two-Handed) この種の武器は、使用するために両手が必要となる。

 両用(Versatile) この武器は片手でも両手でも使うことができる。この特性にはカッコ書きでダメージの値が付記してある。それがこの武器を両手で持って近接攻撃を行う際のダメージである。

即席の武器 Improvised Weapons
 キャラクターたちは時に、自分の武器がないにもかかわらず、手近にあるものをなんでも使って攻撃しなければならないことがある。片手または両手で振るえる物なら何でも即席の武器になる。たとえば割れたグラス、テーブルの脚、フライパン、荷馬車の車輪、ゴブリンの死体などだ。たいていの場合、本物の武器のなかには即席の武器に似た物があるので、その武器として扱う。たとえば、テーブルの脚はクラブに似ている。DMの判断次第で、ある武器に習熟しているキャラクターは、その武器に似た物体を、武器そのものであるかのように使い、自分の習熟ボーナスを適用することができる。
 武器には似ていない物体は1d4ダメージを与える(ダメージの種類はDMが適切なものを割り当てる)。遠隔武器を近接攻撃に用いる場合や、投擲の特性を持たない近接武器を投げて攻撃する場合は、それらはやはり1d4のダメージを与える。即席の投擲武器は通常射程20フィート、遠射程60フィートを持つ。

銀の武器 Silvered Weapons
 魔法のかかっていない武器に耐性(全く効かない)や、抵抗力(部分的にしか効かない)を持っているモンスターのうち、一部には銀の武器が効く。このため、用心深い冒険者は追加の費用をかけて武器に銀めっきをする。100gpで武器ひとつまたは矢弾10発を銀の武器にできる。これは銀の価格だけではなく、武器としての性能を損なわずに銀を付加するための時間と技術にかかる費用も含んでいる。

特殊武器 Special Weapons
 特殊なルールが適用される武器のルールを下記にて解説する。

 ランス 5フィート以内の敵を攻撃する際には劣位を被る。加えて、騎乗していない時には両手が必要になる。

 ネット 大型以下のサイズのクリーチャーにネットが命中すると、そのクリーチャーは拘束されて、解放されるまでそのままである。ネットは不定形のクリーチャーや巨大サイズ以上のサイズのクリーチャーには何の効果もない。クリーチャーは自分のアクションを使用してDC10の【筋力】判定を行い、成功すれば自分自身もしくは間合いの範囲内にいる他のクリーチャー1体を解放することができる。同様に、ネット(ACは10)に5ポイントの斬撃ダメージを与えることができれば、クリーチャーを傷つけずに拘束する効果を終了させかつネットを破壊することができる。
 1回のアクション、ボーナスアクション、リアクションを使用してネットを使って攻撃を行う場合、君が通常何回攻撃を行えるかに関係なく、1回だけ攻撃を行える。

武器表
名称 価格 ダメージ 重量 特性
近接単純武器
クラブ 1sp 1d4殴打 2ポンド 軽量
ダガー 2gp 1d4刺突 1 lb. 技巧的、軽量、投擲(射程20/60)
グレートクラブ 2sp 1d8殴打 10ポンド 両手
ハンドアックス 5gp 1d6斬撃 2ポンド 軽量、投擲(射程20/60)
ジャベリン 5sp 1d6刺突 2ポンド 投擲(射程30/120)
ライト・ハンマー 2gp 1d4殴打 2ポンド 軽量、投擲(射程20/60)
メイス 5gp 1d6殴打 4ポンド
クォータースタッフ 2sp 1d6殴打 4ポンド 両用 (1d8)
シックル 1gp 1d4斬撃 2ポンド 軽量
スピア 1gp 1d6刺突 3ポンド 投擲(射程20/60)、両用 (1d8)
素手攻撃 1殴打
遠隔単純武器
ライトクロスボウ 25gp 1d8刺突 5ポンド 矢弾(射程80/320)、要装填、両手
ダート 5cp 1d4刺突 1/4ポンド 技巧的、投擲(射程20/60)
ショートボウ 25gp 1d6刺突 2ポンド 矢弾(射程80/320)、両手
スリング 1sp 1d4殴打 矢弾(射程30/120)
近接軍用武器
バトルアックス 10gp 1d8斬撃 4ポンド 両用 (1d10)
フレイル 10gp 1d8殴打 2ポンド
グレイヴ 20gp 1d10斬撃 6ポンド 重厚、間合い、両手
グレートアックス 30gp 1d12斬撃 7ポンド 重厚、両手
グレートソード 50gp 2d6斬撃 6ポンド 重厚、両手
ハルバード 20gp 1d10斬撃 6ポンド 重厚、間合い、両手
ランス 10gp 1d12刺突 6ポンド 間合い、特殊
ロングソード 15gp 1d8斬撃 3ポンド 両用 (1d10)
モール 10gp 2d6殴打 10ポンド 重厚、両手
モーニングスター 15gp 1d8刺突 4ポンド
パイク 5gp 1d10刺突 18ポンド 重厚、間合い、両手
レイピア 25gp 1d8刺突 2ポンド 技巧的
シミター 25gp 1d6斬撃 3ポンド 技巧的、軽量
ショートソード 10gp 1d6刺突 2ポンド 技巧的、軽量
トライデント 5gp 1d6刺突 4ポンド 投擲(射程20/60)、両用 (1d8)
ウォー・ピック 5gp 1d8刺突 2ポンド
ウォーハンマー 15gp 1d8殴打 2ポンド 両用 (1d10)
ウィップ 2gp 1d4斬撃 3ポンド 技巧的、間合い
遠隔軍用武器
ブロウガン 10gp 1刺突 1ポンド 矢弾(射程25/100)、要装填
ハンドクロスボウ 75gp 1d6刺突 3ポンド 矢弾(射程30/120)、軽量、要装填
ヘビークロスボウ 50gp 1d10刺突 18ポンド 矢弾(射程100/400)、重厚、要装填、両手
ロングボウ 50gp 1d8刺突 2ポンド 矢弾(射程150/600)、重厚、両手
ネット 1gp 3ポンド 特殊、投擲(射程5/15)

冒険用具 Adventuring Gear

 このセクションでは、特殊ルールや追加の解説が必要なアイテムについて解説する。

<カコミ記事ここから>
装備パック Equipment Packs
 クラスによって得られる初期装備には、有用な冒険用具をパックにして集めたものが含まれている。これらのパックの一覧をここに示す。初期装備を購入することにしたのなら、下記の価格でパックを購入することができる。そのほうが、個々のアイテムを別々に買うよりも安くつくだろう。
忍びの者パック(Burglar’s Pack) 16gp。バックパックひとつ、ボールベアリング1000個入りの袋、10フィートの紐、鈴ひとつ、ろうそく5本、バール1本、ハンマーひとつ、ピトン10本、フードつきランタン、油のフラスコ2本、携行食料5日分、火口箱ひとつ、水袋1枚。加えて、パックの側面に50フィートの麻のロープがつるしてある。
外交官パック(Diplomat’s Pack) 39gp。チェストひとつ、地図・巻物用ケース2本、上等の衣類一揃い、インクのボトル1本、インクペン1本、ランプ、油のフラスコ2本、紙5枚、香水の小瓶1本、封ろう、石鹸。
地下探検パック(Dungeoneer’s Pack) 12gp。バックパックひとつ、バール1本、ハンマー1本、ピトン10本、松明10本、火口箱、携行食料10日分、水袋1枚。加えて、パックの側面に50フィートの麻のロープがつるしてある。
芸人パック(Entertainer’s Pack) 40gp。バックパックひとつ、携帯寝具1巻き、衣装2着、ろうそく5本、携行食料5日分、水袋1枚、変装キット。
探検家パック(Explorer’s Pack) 10gp。バックパックひとつ、携帯寝具1巻き、携帯食器1セット、火口箱ひとつ、松明10本、携行食料10日分、水袋1枚。加えて、パックの側面に50フィートの麻のロープがつるしてある。
神官パック(Priest’s Pack) 19gp。バックパックひとつ、毛布1枚、ろうそく10本、火口箱ひとつ、献金箱ひとつ、お香2塊、香炉ひとつ、儀礼用の服、携行食料2日分、水袋1枚。
学者パック(Scholar’s Pack) 40gp。バックパックひとつ、伝承に関する書物1冊、インクのボトル1本、インクペン、羊皮紙10枚、砂の詰まった小さな袋、小さなナイフ。
<カコミ記事ここまで>

 酸(Acid) 1回のアクションとして、この小瓶の中身を5フィート以内にいるクリーチャー1体に振り掛けるか、ぶつかった所で割れるように小瓶を20フィート先まで投げることができる。どちらの場合も、クリーチャー1対か物体ひとつに対して遠隔攻撃ロールを行う。この際酸は即席の武器として扱う。命中したら、標的は2d6の酸ダメージを受ける。

 アルケミスト・ファイア(Alchemist’s Fire) このねばねばべたつく液体は空気に触れると発火する。1回のアクションとして、このフラスコをぶつかったところで割れるように20フィート先まで投げることができる。クリーチャー1対か物体ひとつに対して遠隔攻撃ロールを行う。この際アルケミスト・ファイアは即席の武器として扱う。命中したら、標的は自分のターンの開始時ごとに1d4の火ダメージを受ける。このダメージを終了させるには、クリーチャー1体が1アクションを使用して、火を消すためにDC10の【敏捷力】判定に成功すればよい。

 耐毒剤(Antitoxin) この小瓶に入った液体を飲んだクリーチャー1体は1時間の間、毒に対するセーヴィング・スローに優位を得る。ただし耐毒剤はアンデッドとコンストラクトには何の利益も与えない。

 秘術呪文焦点具(Arcane Focus) 秘術焦点具は特殊なアイテムである。オーブ(珠)、クリスタル、ロッド(笏)、特製のスタッフ(長い杖)、ワンド(短い杖)ほどの長さの木の枝、などであり、秘術呪文のパワーの流路となるように設計されている。ソーサラーやウォーロック、ウィザードは、呪文焦点具(spellcasting focus)としてこれらの一つを使用できる。詳しくは第10章参照。

 ボールベアリング(Ball Bearings) 1回のアクションとして、このポーチに入った小さな金属球を10フィート四方の水平面いっぱいにバラ撒くことができる。バラ撒かれたエリアに進入するクリーチャーはDC10の【敏捷力】セーヴィング・スローに失敗すると転倒して伏せ状態になる。エリア内を半分の速度で移動するクリーチャーはセーヴィング・スローを行う必要はない。

 滑車装置(Block and Tackle) 滑車一組と、それに通した太綱、何かに引っ掛けるためのフックのセット。滑車装置を使えば、通常持ち上げられる重量の4倍を持ち上げることができる。

 本(Book) 本には、詩、歴史的な記録、特定分野の学問にかかわる情報、ノームの新奇な発明の図や覚書、あるいはそれ以外の文章や絵で表現できる何かが書かれていることだろう。呪文の書かれた本は呪文書(本章にて後述)である。

 まきびし(Caltrops) 1回のアクションとして、この一袋のまきびしを5フィート四方のエリアいっぱいにバラ撒くことができる。バラ撒かれたエリアに進入するクリーチャーはDC15の【敏捷力】セーヴィング・スローに失敗すると1ダメージを受けて移動を停止し、歩行移動速度が10フィート減少する。エリア内を半分の速度で移動するクリーチャーはセーヴィング・スローを行う必要はない。

 ろうそく(Candle) 1時間の間、半径5フィートを明るい光(bright light)で照らし、もう5フィートを薄明かり(dim light)で照らす。

 クロスボウ・ボルトのケース(Case, Crossbow Bolt) この木製のケースは20本までのクロスボウ・ボルト(クロスボウ用の矢)を収納できる。

 地図・巻物用のケース(Case, Map or Scroll) この円筒形の皮製ケースは10枚までの紙または5枚までの羊皮紙を巻いて収納できる。

 鎖(Chain) 鎖は10ポイントのヒット・ポイントを持つ。DC20の【筋力】判定に成功すると引きちぎることができる。

 登攀キット(Climber’s Kit) 登攀キットには、特殊なピトン(楔)、ブーツにつける金具、手袋、ハーネスが含まれている。使用者は1回のアクションを使用して、登攀キットで自分を釘付けすることができる。そうした場合、釘付けした地点から25フィート以上落下することはなくなる。また、釘付けを解除することなく同地点から25フィート以上登ることもできなくなる。

 構成要素ポーチ(Component Pouch) 小さな防水の皮製ベルトポーチで、内部の小分けになったスペースに、所有者が呪文を発動するのに必要な物質構成要素やその他の特殊な物品が全て入たっている。ただし、呪文の説明に何らかのコストがかかると記載されている構成要素は入っていない。

 バール(Crowbar) バールを使うと、バールを梃子にできるようなケースであれば、【筋力】判定に優位を得ることができる。

 ドルイド呪文焦点具(Druidic Focus) ドルイド呪文焦点具は、ヤドリギかヒイラギの小枝、あるいはイチイなどの特別な樹でできたワンドやセプター(笏)、あるいは、生きた木から削り出したスタッフ、あるいは聖なる動物の羽毛、毛皮、骨、骨などを組み込んだトーテムとなる物品である。ドルイド(プレイヤーズ・ハンドブックの第3章参照)は、こうした物品を第10章で説明する呪文発動の焦点具として使用できる。

 釣具(Fishing Tackle) このキットには、木製の竿、絹の釣り糸、コルクの浮き、鋼の釣針、鉛の重り、ベルベット製の疑似餌、小さい網が入っている。

 治療キット(Healer’s Kit) このキットは、包帯、軟膏、添え木が皮製ポーチに入ったものだ。このキットは10回使用できる。1回のアクションとして、使用回数を1回消費し、0ヒット・ポイントのクリーチャーを容態安定化することができる。その際【判断力】〈医術〉判定は必要ない。

 聖印(Holy Symbol) 聖印は神やパンテオンを表すシンボルだ。聖印は神格をあらわすシンボルを描いた護符や、盾に同じシンボルを慎重に彫り込んだ(あるいは嵌め込んだ)ものや、レリック(聖遺物)の欠片を納めた小さな箱などの形を取るだろう。プレイヤーズ・ハンドブックには、多元宇宙の多くの神々とそのシンボルの一覧が掲載されている。クレリックとパラディンは、聖印を呪文焦点具として使用できる(第10章にて詳述)。聖印をこの用途で使うには、呪文の発動者は聖印を手に持つか、見えるように身につけるか、盾に聖印を帯びる必要がある。

 聖水(Holy Water) 1回のアクションとして、このフラスコの中身を5フィート以内にいるクリーチャー1体に振り掛けるか、ぶつかった所で割れるようにフラスコを20フィート先まで投げることができる。どちらの場合も、クリーチャー1対か物体ひとつに対して遠隔攻撃ロールを行う。この際聖水は即席の武器として扱う。命中したら、標的は2d6の光輝ダメージを受ける。 クレリックやパラディンは、特別な儀式を行って聖水を作ることができる。儀式を行うには1時間かかり、25gp相当の価値がある銀粉を使い、儀式の執行者は1レベル呪文のスロット一つを消費する必要がある。

 狩猟罠(Hunting Trap) アクションを使用して設置すると、この罠は鋸歯のついた鋼の輪になり、クリーチャーが中心の圧力板を踏むと弾けて閉じる。罠は重い鎖で、樹木や地中不覚に刺さった杭などの動かない物体に固定してある。圧力板を踏んだクリーチャーはDC13の【敏捷力】セーヴィング・スローを行い、失敗すると1d4の刺突ダメージを受けて移動を停止する。その後は、クリーチャーが罠を抜けて自由にならない限り、その移動は鎖の長さ(通常3フィート)に制限される。クリーチャーはアクションを使用してDC13の【筋力】判定を行い、成功すれば、自分や間合いの中にいる他のクリーチャーを自由にすることができる。判定に失敗するごとに、捕われているクリーチャーは1点の刺突ダメージを受ける。

 ランプ(Lamp) ランプは明るい光で半径15フィートを照らし、もう30フィートを薄明かりで照らす。一度火を灯すと、一瓶(1パイント)の油で6時間燃え続ける。

 ブルズアイ・ランタン(Lantern, Bullseye) ブルズアイ・ランタンは、明るい光で扇状の範囲を60フィート先まで照らし、もう60フィートを薄明かりで照らす。一度火を灯すと、フラスコ1本(1パイント)の油で6時間燃え続ける。

 フードつきランタン(Lantern, Hooded) フードつきランタンは明るい光で半径30フィートを照らし、もう30フィートを薄明かりで照らす。一度火を灯すと、フラスコ1本(1パイント)の油で6時間燃え続ける。1回のアクションとして、このランタンのフードを下げて明かりを半径5フィートの薄暗い明かりに抑えることができる。

 錠前(Lock) 鍵は錠前についてくる。鍵がない場合、盗賊道具に習熟しているクリーチャーはDC15の【敏捷力】判定に成功すればこの錠前を開けることができる。DMの判断によっては、もっと良い錠前がより高い値段で手に入るかもしれない。

 拡大鏡(Magnifying Glass) このレンズは小さなものを拡大して見せる。また、火打石と火打金の代わりにもなる。拡大鏡で火をつけるには、日光と同じくらいの明るい光、発火させるための火口画必要で、火がつくまで5分ほどかかる。拡大鏡は小さい物品やディティールの細かい物品を鑑定したり調べたりする際に優位を与える。

 手枷(Manacles) この金属性拘束具は小型もしくは中型のクリーチャーを捕らえる。手枷から逃れるにはDC20の【敏捷力】判定が必要である。破壊するにはDC20の【筋力】判定が必要である。手枷1セットにつき1本の鍵がついてくる。鍵がない場合、盗賊道具に習熟しているクリーチャーはDC15の【敏捷力】判定に成功すれば手枷の鍵を開けることができる。手枷は15ポイントのヒット・ポイントを持つ。

 携帯食器(Mess Kit) このブリキの箱にはカップ一つと簡単なナイフ、フォーク類が入っている。箱は止め具で固定されるが、片方は調理鍋になり、もう片方は皿もしくは浅いボウルとして使える。

 油(Oil) 油は通常、1パイント入りの陶製のフラスコで手に入る。1回のアクションとして、このフラスコの中身を5フィート以内にいるクリーチャー1体に振り掛けるか、ぶつかった所で割れるようにフラスコを20フィート先まで投げることができる。どちらの場合も、クリーチャー1対か物体ひとつに対して遠隔攻撃ロールを行う。この際油は即席の武器として扱う。命中したら、標的は油に覆われる。1分後に油が乾いてしまう前に火ダメージを受けると、標的は燃え上がる油によって5ポイントの追加火ダメージを受ける。あるいは、地面が水平であれば、フラスコ1本分の油を地面にまいて5フィート四方のエリアを覆うこともできる。火がつくと、油は2ラウンドの間燃えて、そのエリアに入ったクリーチャーやそのエリアで自分のターンを終了したクリーチャーに5ポイントの火ダメージを与える。1体のクリーチャーは1ターンに一度以上このダメージを受けることはない。

 一般的な毒(Poison, Basic) この小瓶の中の毒は、斬撃武器もしくは刺突武器一ひとつ、あるいは矢弾3つまでに塗りつけて使う。毒を塗るには1アクションを使用する。毒の塗られた武器や矢弾が命中したクリーチャーはDC10の【耐久力】セービング・スローを行い、失敗すると1d4の毒ダメージを受ける。塗った毒は乾いてしまうまで1分間の間効力を保持する。

 ポーション・オヴ・ヒーリング(Potion of Healing) この小瓶に入った赤い魔法の液体を飲んだクリーチャーは、2d4+2ポイントのヒット・ポイントを回復する。ポーションを飲んだり飲ませたりするには1回のアクションを必要とする。

 ポーチ(Pouch) 布もしくは皮製のポーチでスリングの弾20発か、ブロウガンの矢50発、その他のアイテムなどを収納できる。呪文の構成要素を収納するための中が小分けになった袋は特に構成要素ポーチと呼ぶ(この章にて前述)。

 矢筒(Quiver) 矢筒一つには20本の矢を収納できる。

 携帯用破城鎚(Ram, Portable) 携帯用破城鎚はドアを打ち破るのに使える。そうする場合、使用者は【筋力】判定に+4のボーナスを得る。他のキャラクター1人がこの破城鎚の使用者を手伝うことができ、その場合はこのチェックに優位を得る。

 携行食料(Rations) 携行食料は、長い旅行にも適するような乾燥食料の組み合わせである。干し肉、ドライフルーツ、乾パン、ナッツ類など。

 ロープ(Rope) 麻か絹でできたロープは、2ポイントのヒットポイントを持ち、DC17の【筋力】判定に成功すると引きちぎることができる。

 商人の秤(Scale, Merchant’s) 秤には、小さな天秤・平皿・最大2ポンドまでの様々な重りのセットが含まれている。これを使えば、未加工の貴金属や交易品などの小さな物体の正確な重量を測ることができるので、その価値を判断するのに役立つ。

 呪文書(Essential) ウィザードの必需品。呪文書は皮で装丁された大部の書物で、呪文を記録するのに適した、上質皮紙の空白ページが100ページある。

 小型望遠鏡(Spyglass) 小型望遠鏡を通して見た物は2倍に拡大される。

 テント(Tent) 単純で持ち運び可能な帆布製のシェルターで、2人まで泊まれる。

 火口箱(Tinderbox) この小さな容器には、火をつけるのに使う、火打石、火打金、火口(通常は乾いた布を灯火用の油に浸したもの)が入っている。松明に火をつける――または、十分な量の露出した燃料が同時にある他の何かに火をつける――には、1アクションを使用する。それ以外に火をつけるなら1分かかる。

 松明(Torch) 松明は1時間の間燃えて、明るい光で半径20フィートを照らし、もう20フィートを薄明かりで照らす。燃える松明で近接攻撃を行って命中させたら、松明は1ポイントの火ダメージを与える。

表:冒険用具
アイテム 価格 重量
アバカス 2gp 2ポンド
酸(小瓶) 25gp 1ポンド
アルケミスト・ファイア(フラスコ) 50gp 1ポンド
矢弾
矢 (20本) 1gp 1ポンド
ブロウガン用吹き矢 (50本) 1gp 1ポンド
クロスボウ・ボルト(20本) 1gp 1½ポンド
スリングの弾(20発) 4cp 1½ポンド
耐毒剤(小瓶) 50gp
秘術呪文焦点具
 クリスタル 10gp 1ポンド
 オーブ 20gp 3ポンド
 ロッド 10gp 2ポンド
 スタッフ 5gp 4ポンド
 ワンド 10gp 1ポンド
バックパック 2gp 5ポンド
ボールベアリング(1000個入り袋) 1gp 2ポンド
2gp 70ポンド
バスケット 4sp 2ポンド
携帯寝具 1gp 7ポンド
1gp
毛布 5sp 3ポンド
滑車装置 1gp 5ポンド
25gp 5ポンド
ガラス瓶 2gp 2ポンド
バケツ 5cp 2ポンド
まきびし(20個入り袋) 1gp 2ポンド
ろうそく 1cp
クロスボウ・ボルトのケース 1gp 1ポンド
地図・巻物用ケース 1gp 1ポンド
鎖(長さ10フィート) 5gp 10ポンド
チョーク(1かけら) 1cp
宝箱 5gp 25ポンド
登攀キット 25gp 12ポンド
一般的な服 5sp 3ポンド
制服 5gp 4ポンド
上質な服 15gp 6ポンド
旅人の服 2gp 4ポンド
構成要素ポーチ 25gp 2ポンド
バール 2gp 5ポンド
ドルイド呪文焦点具
 ヤドリギの小枝 1gp
 トーテム 1gp
 木製スタッフ 5gp 4ポンド
 イチイのワンド 10gp 1ポンド
釣り具 1gp 4ポンド
フラスコ/蓋付き大ジョッキ 2cp 1ポンド
鉤縄 2gp 4ポンド
ハンマー 1gp 3ポンド
大ハンマー 2gp 10ポンド
治療キット 5gp 3ポンド
聖印
 アミュレット 5gp 1ポンド
 エンブレム 5gp
 レリックリイ 5gp 2ポンド
聖水(フラスコ) 25gp 1ポンド
砂時計 25gp 1ポンド
狩猟罠 5gp 25ポンド
インク(1オンスのボトル) 10gp
インクペン 2cp
ジョッキ/ピッチャー 2cp 4ポンド
はしご(長さ10フィート) 1sp 25ポンド
ランプ 5sp 1ポンド
ブルズアイ・ランタン 10gp 2ポンド
フード付ランタン 5gp 2ポンド
錠前 10gp 1ポンド
拡大鏡 100gp
手枷 2gp 6ポンド
携帯食器 2sp 1ポンド
鋼鉄製の鏡 5gp 1/2ポンド
油(フラスコ) 1sp 1ポンド
紙(1枚) 2sp
羊皮紙(1枚) 1sp
香水(小瓶) 5gp
鉱夫のツルハシ 2gp 10ポンド
ピトン 5cp 1/4ポンド
一般的な毒(小瓶) 100gp
竿(長さ10フィート) 5cp 7ポンド
鉄製ポット 2gp 10ポンド
ポーション・オヴ・ヒーリング 50gp 1/2ポンド
ポーチ 5sp 1ポンド
矢筒 1gp 1ポンド
携帯用破城鎚 4gp 35ポンド
携行食料(1日分) 5sp 2ポンド
ローブ 1gp 4ポンド
麻のロープ(50フィート) 1gp 10ポンド
絹のロープ(50フィート) 10gp 5ポンド
1cp 1/2ポンド
商人の秤 5gp 3ポンド
封ろう 5sp
シャベル 2gp 5ポンド
呼子笛 5cp
印章指輪 5gp
石鹸 2cp
呪文書 50gp 3ポンド
鉄の杭(10本) 1gp 5ポンド
小型望遠鏡 1,000gp 1ポンド
二人用テント 2gp 20ポンド
火口箱 5sp 1ポンド
松明 1cp 1ポンド
小瓶 1gp
水袋 2sp 5ポンド(一杯の時)
砥石 1cp 1ポンド

表:容器の容量
容器 容量
バックパック※ 1立方フィート/用具30ポンド
液体40ガロン、固体4立方フィート
バスケット 2立方フィート/用具40ポンド
ボトル 液体1.5パイント
バケツ 液体3ガロン、固体1/2立方フィート
チェスト 12立方フィート/用具300ポンド
フラスコ/タンカード 液体1パイント
ジョッキ/ピッチャー 液体1ガロン
鉄製ポット 液体1ガロン
ポーチ 1/5立方フィート/用具6ポンド
1立方フィート/用具30ポンド
小瓶 液体4オンス
水袋 液体4パイント
※バックパック(背嚢)の外側には、携帯寝具や巻いたロープを吊ることができる

ツール Tools

 ツール(道具類)は、それ無しではできないような事をするのを助けてくれる。たとえばアイテムの作成や修理、文書の偽造、錠前破り、などだ。種族、クラス、バックグラウンド、特技などによって、特定のツールへの習熟が得られる。ツールに習熟していれば、ツールを使用して行うあらゆる能力値チェックに使用者の習熟ボーナスを加えることができる。ツールの使用は能力値1種だけと紐付けられているわけではなく、ツールへの習熟はその使用に関する、より広範な知識を表わしている。たとえばDMは、木工道具で精巧なディティールの彫刻をするならば【敏捷力】判定を、ある硬い木材から何かを掘り出す際には【筋力】判定を要求してよい。

表:ツール
アイテム 価格 重量
工匠の道具類
 錬金術用消耗品 50gp 8ポンド
 醸造用消耗品 20gp 9ポンド
 書道用消耗品 10gp 5ポンド
 大工道具 8gp 6ポンド
 地図製作道具 15 gp 6ポンド
 靴職人道具 5gp 5ポンド
 料理人の調理道具一式 1gp 8ポンド
 ガラス吹き道具 30gp 5ポンド
 宝飾細工道具 25gp 2ポンド
 皮細工道具 5gp 5ポンド
 石工道具 10gp 8ポンド
 塗装用消耗品 10gp 5ポンド
 陶工道具 10gp 3ポンド
 鍛冶道具 20gp 8ポンド
 鋳掛屋道具 50gp 10ポンド
 手織り道具 1gp 5ポンド
 木工道具 1gp 5ポンド
変装キット 25gp 3ポンド
偽造キット 15gp 5ポンド
遊戯用具セット
 ダイス・セット 1sp
 ドラゴンチェス・セット 1gp 1/2ポンド
 ゲーム用カードセット 5sp
 スリードラゴン・アンティ・セット 1gp
 薬草師キット 5gp 3ポンド
楽器
 バグパイプ 30gp 6ポンド
 ドラム 6gp 3ポンド
 ダルシマー 25gp 10ポンド
 フルート 2gp 1ポンド
 リュート 35gp 2ポンド
 リラ 30gp 2ポンド
 ホルン 3gp 2ポンド
 パン・フルート 12gp 2ポンド
 ショーム 2gp 1ポンド
 ヴィオル 30gp 1ポンド
航海士道具 25gp 2ポンド
毒薬キット 50gp 2ポンド
盗賊道具 25gp 1ポンド
乗り物(陸上・水上)
 ※「乗騎と乗り物」の項参照

乗騎と乗り物 Mounts and Vehicles

 良い乗騎がいれば、荒野を抜けてより早く移動することができる。しかし、乗騎の主要な目的は、乗騎なしでは歩みが遅くなってしまうほどの装備を運ぶことだ。「表:乗騎、その他の動物」には、それぞれの動物の速度と基本的な輸送力が示されている。
 大型4輪馬車、荷車、チャリオット(戦車)、そり、荷馬車を引く動物は、車両の重量を含めて、基本となる輸送力の5倍の重量を動かすことができる。複数の動物が1台の車両を引くのであれば、輸送力を合計する。
 D&Dの諸世界には、この表に含まれない乗騎も存在するが、それらは希少だし普通は金で買うことができない。そうした乗騎には空飛ぶもの(ペガサス、グリフォン、ヒポグリフ、あるいはそれに類する動物)や、水棲の乗騎(たとえば巨大タツノオトシゴなど)さえ含まれる。こうした乗騎を手に入れるには、卵を手に入れて自分でそのクリーチャーを育てるか、強い力を持つな何者かと取引するか、乗騎自身と交渉する必要がある。

 バーディング(Barding) バーディングは動物の頭部、頸部、胸部、胴体を保護する鎧である。本章の「表:鎧」にあるどの種類の鎧もバーディングとして購入できる。価格は人型生物用の同種の鎧の4倍、重量は2倍である。

 鞍(Saddles) 軍用の鞍は乗り手を固定するので、戦場で激しく動く乗騎に騎乗し続ける助けとなる。乗り手は、騎乗し続けるためのあらゆる判定に優位を得る。エキゾチックな鞍は、水棲の、あるいは飛行する乗騎に乗るために必要となる。

 乗り物への習熟(Vehicle Proficiency) キャラクターがある種の乗り物(陸上もしくは水上)に習熟しているなら、難しい状況でその種の乗り物をコントロールするためのあらゆるチェックに習熟ボーナスを加えることができる。

 手漕ぎの船舶(Rowed Vessels) キールボートと手漕ぎボートは湖や川で使われる。流れに沿って進むなら、流速を速度に加える(典型的な流れは流速3マイル)。これらの船は強い流れに逆らって漕ぎ進むことはできないが、岸辺から荷役獣に惹かれて流れをさかのぼることはできる。手漕ぎボートの重さは100ポンドであり、冒険者は必要に備え、これを担いで陸上を行くことができる。

表:乗騎、その他の動物
アイテム 価格 速度 輸送力
ラクダ 50gp 50フィート 480ポンド
ロバ または ラバ 8gp 40フィート 420ポンド
200gp 40フィート 1,320ポンド
馬(荷役馬) 50gp 40フィート 540ポンド
馬(乗用馬) 75gp 60フィート 480ポンド
マスチフ犬 25gp 40フィート 195ポンド
ポニー 30gp 40フィート 225ポンド
軍用馬 400gp 60フィート 540ポンド

表:えさ、馬具、けん引車両 Tack, Harness, and Drawn Vehicles
アイテム 価格 重量
バーディング ×4 ×2
はみ・馬勒 2gp 1ポンド
大型4輪馬車 100gp 600ポンド
荷車 15gp 200ポンド
チャリオット 250gp 100ポンド
餌(1日) 5cp 10ポンド
 エキゾチック 60gp 40ポンド
 軍用 20gp 30ポンド
 パックpack 5gp 15ポンド
 乗馬用 10gp 25ポンド
鞍袋 4gp 8ポンド
そり 20gp 300ポンド
馬小屋(1日) 5sp
荷馬車 35gp 400ポンド

表:水上用の乗り物 Waterborne Vehicles
アイテム 価格 速度
ガレー船 30,000gp 時速4マイル
キールボート 3,000gp 時速1マイル
ロングシップ 10,000gp 時速3マイル
手漕ぎボート 50gp 時速1.5マイル
帆船 10,000gp 時速2マイル
戦船 25,000gp 時速2.5マイル

交易品 Trade Goods

 富は、そのほとんどがコインではない。コインでない富を量る基準は、家畜、穀物、土地、徴税権、(鉱山や森のような)資源の利用権といったものだ。
 諸々のギルド、貴族、王族が交易を統制している。認可を受けた団体が権利を得て、特定のルートにそって交易を行い、商船をあちこちの港に送り出し、特定の品目を売買する。ギルドは自分たちが統制している商品やサービスの価格を定め、誰がその商品やサービスを売ってもよいか(あるいは誰が売ってはいけないか)を決める。商人たちは交易品を交換する際に貨幣を使わない。「表:交易品」によく交換される品目の価値を示す。

表:交易品 Trade Goods
価格 品物
1cp 小麦1ポンド
2cp 小麦粉1ポンド または 鶏1羽
5cp 塩1ポンド
1sp 鉄1ポンド または 帆布1ヤード四方
5sp 銅1ポンド または 綿布1ヤード四方
1gp ショウガ1ポンド または ヤギ1頭
2gp シナモン1ポンド または コショウ1ポンド または 羊1頭
3gp チョウジ1ポンド または 豚1頭
5gp 銀1ポンド または 亜麻布1ヤード四方
10gp 絹布1ヤード四方 または 雌牛1頭
15gp サフラン1ポンド または 雄牛1頭
50gp 黄金1ポンド
500gp プラチナ1ポンド

諸経費 Expenses

 地下深くへ潜り込んで失われた財宝を求めて遺跡を探検したり、いや増す暗黒に対する戦争を戦ったりしていない時、冒険者はもっと世俗的な現実に立ち向かわなければならない。たとえファンタジーの世界にあっても、人は衣食住をはじめとする基本的要求を満たさねばならないのだ。それには金銭が必要だが、ある種のライフスタイルは他のライフスタイルよりコストがかかる。

ライフスタイルの諸経費 Lifestyle Expenses
 ライフスタイルにかかる諸経費の概念は、ファンタジー世界における生活費を計算する簡単な方法を提供する。諸経費には住居、飲食、その他の必要物全てが含まれている。さらに、装備の維持費も含まれているので、キャラクターはいつでも次なる冒険の呼び声に応える準備ができているというわけだ。
 週もしくは月の初め(プレイヤーが選ぶ)になるたびに、「表:諸経費」からライフスタイルを選択し、そのライフスタイルの維持費用を支払う。表にある価格は1日毎のものなので、30日間のコストを計算するには表の価格を30倍する。キャラクターは自由になる資金に応じて、一定期間ごとにライフスタイルを変えてもよいし、そのキャリアを通じて同じライフスタイルを維持するケースもあるだろう。
 ライフスタイルの選択はそれなりの結果を伴うだろう。富裕なライフスタイルを維持すれば、金持や権力のある人物とコネを作るのに有利だろうが、盗賊の標的になるリスクも冒すことになる。同様に、質素に暮らせば犯罪者を避けるのに有利かもしれないが、有力なコネクションを得ることはできそうにない。


表:ライフスタイルの諸経費 Lifestyle Expenses
ライフスタイル 1日毎の出費
悲惨 -
極貧 1sp
貧相 2sp
質素 1gp
快適 2gp
富裕 4gp
貴族的 最低10gp

 悲惨(Wretched) 君の生活は非人間的な状況にある。家と呼べる場所はなく、雨風をしのげる場所ならどこでもそうせざるを得ない。納屋に忍び込み、木箱の中で身を寄せ合い、もっと暮らし向きの良い人々の慈悲にすがって生きている。悲惨なライフスタイルには危険がいっぱいだ。暴力、病気、空腹がどこでも着いて回る。悲惨な暮らしの他者は、君の鎧、武器、冒険用具をひどく欲しがっている。彼らの基準では、それらは富を意味するのだ。ほとんどの人々は君には目もくれない。

 極貧(Squalid) 君が住むのは、雨漏りのする家畜小屋、町のすぐ外にある床がぬかるんだ小屋、あるいは町の最下層区域にある虫だらけの下宿屋だ。自然から身を守る避難所はあるものの、君は絶望的で、往々にして暴力的な環境に暮らしている。そこは病気、飢え、不運でいっぱいだ。ほとんどの人々は君には目もくれず、法の庇護はほとんど受けられない。この生活水準にある人々のほとんどは大きな挫折や不運を経験している。精神に障害があったり、追放者の烙印を捺されていたり、病に苦しんでいるのだ。

 貧相(Poor) 貧相なライフスタイルは、しっかりとした共同体における快適さが得られないことを意味する。簡素な食事と住居、擦り切れた衣類、そして先の見えない状況から来る生活は、必要が満たされていても、おそらく愉快とはいえないものだろう。君の住まいは安宿の一室や酒場の上にある大部屋だろう。幾らかの法的保護を得てはいるが、それでもなお暴力、犯罪、病気と戦わなければならない。この生活水準の人々は、特に技能を持たない肉体労働者、露天商、行商人、盗賊、傭兵、その他の世間体のよろしくない職業であることが多い。

 質素(Modest) 質素なライフスタイルなら、君はスラムからは脱出できるし、装備を維持することも可能だ。町の旧い地区に住み、下宿屋か宿屋か神殿に部屋を借りている。飢えも渇きもなく、生活環境は簡素かもしれないが清潔だ。質素な暮らしをしている普通の人々とは、所帯持ちの兵士や肉体労働者、学生、僧侶、まじない師、といった人々だ。

 快適(Comfortable) 快適なライフスタイルを選ぶということは、君はいい服を買えるし、装備の維持も容易にできるということだ。君は中流の隣人たちに囲まれた小さな一軒家か、上等な宿屋の個室に住んでいる。付き合う相手は商家や腕の良い商人、軍隊の将校などになる。

 富裕(Wealthy) 富裕なライフスタイルを選ぶということは、贅沢な暮らしができるが、貴族や王族の持つような世襲財産から得られる社会的地位には手が届かないということだ。
 君の生活水準は大成功した商人、王家の寵を受けた側近、あるいはいくつかの小さな事業の所有者などと肩を並べる。君の住居はちょっとしたもので、通常は町の良い場所にある広々した家や、上等な宿の数部屋ある1区画になる。君はおそらく少人数からなる従者の一団をかかえているだろう。

 貴族的(Aristocratic) 君は豊かで快適な生活をしている。君は共同体で最も力のある人々からなる小社会の一員となる。素晴らしい住居、おそらくは町で一番いい区画にある邸宅や最高級の宿の1区画に住み、最高のレストランで食事をし、最高に熟練したファッショナブルな仕立て屋を雇い、必要なことは何でもやってくれる召使の一団をかかえている。裕福で権力のある人々の社交的な集まりに招かれ、政治家、ギルドの指導者、高位の神官、貴族のお歴々とともに夕べを過ごす。君は最も高いレベルから陰謀と裏切りを演じなければならない。君が富裕になればなるほど、政治的陰謀の駒、あるいは指し手として、それに巻き込まれる可能性も高くなる。


自給自足 Self-Sufficiency
 この章で解説している諸経費とライフスタイルは、冒険と冒険の間の時間を町で過ごし、買えるサービスは何でも利用しているものと仮定している。食料、避難所に金を支払い、剣を研ぎ鎧を繕ってくれる町の住人に金を支払う、といった具合だ。しかしながら、キャラクターによっては、文明から離れて自分の時間を過ごし、荒野で狩りや採集をして自分たちを養い、自力で用具を繕うことを好む者もいるだろう。
 この種のライフスタイルを維持するためにコインを支払う必要はないが、これには時間がかかる。第8章で説明するとおりに冒険と冒険の間の時間を専門分野の訓練に費やすのなら、かろうじて貧相なライフスタイルに相当する生活ができるにすぎない。〈生存〉技能に習熟しているのなら、快適なライフスタイルに相当する生活ができる。


食事、飲料、宿泊 Food, Drink, and Lodging
 「表:食事、飲料、宿泊」には、個々の食品と一泊の宿泊費を記載されている。これらの価格はライフスタイルの諸経費合計に含まれている。

表:食事、飲料、宿泊
Item Cost
アイテム 価格
エール
 1ガロン 2sp
 マグ1杯 4cp
晩餐(1人当たり) 10gp
パン(一塊) 2cp
チーズ(一塊) 1sp
宿の宿泊(1日毎)
 極貧 7cp
 貧相 1sp
 質素 5sp
 快適 8sp
 富裕 2gp
 貴族的 4gp
食事(1日分)
 極貧 3cp
 貧相 6cp
 質素 3sp
 快適 5sp
 富裕 8sp
 貴族的 2gp
ぶつ切り肉一塊 3sp
ワイン
 一般的(ピッチャー) 2sp
 上質(ボトル) 10gp


サービス Services
 冒険者はNPCに報酬を支払って助力を得たり、自分たちの利益の為に行動してもらうことができる。こうした雇人のほとんどはごく普通の技能を持つが、一部には工芸や芸術の達人もおり、ごくわずかだが冒険に関わる特殊な技術を持つ者もいる。
 最も基本的な雇人(hirelings)を何種か「表:サービス」に挙げる。その他にも、典型的な町や都市に住む様々な人々を含めた一般的な雇人がおり、冒険者は支払いと引き換えに特定の仕事をしてもらうことができる。
 たとえば、ウィザードはお金を払って大工に複雑なチェスト(およびそのミニチュアのレプリカ)を作らせ、レオムンズ・シークレット・チェストの呪文に使うかもしれない。ファイターは武器職人に特別な剣を鍛えてくれるよう依頼するかもしれない。バードは来たるべき侯爵の御前での演奏に備えて、仕立て屋に支払って優雅な衣装を作らせるかもしれない。
 それ以外に、より専門的な、あるいは危険なサービスを提供する雇人もいる。ホブゴブリンの軍隊に挑む冒険者に加勢して報酬を得る傭兵は、古代の伝承や難解な伝承を研究するために雇われる賢者たちと同様、雇人である。
 高レベルの冒険者が何らかの本拠地を建設する場合、そこを運営するためには、城代や執事から馬屋番にいたる召使や職員をすべて雇わなければならないだろう。これらの雇人はしばしば、給与の一部として提供される本拠地内の住居を含む長期契約の恩恵を受ける。

表:サービス
サービス 料金
馬車
 町と町を結ぶ 1マイル毎に3cp
 市内 1cp
雇人
 技能あり 1日2gp
 非熟練 1日2sp
 伝令 1マイル毎に2cp
街道もしくはゲートの通行料 1cp
乗船料 1マイル毎に1sp

 技能を持った雇人には、習熟(武器、ツール、技能への習熟)を要するサービスの為に雇われる者が含まれる。傭兵、工匠、書記などである。表の俸給は最低限の額である。一部の専門技術を持つ雇人は、より高い俸給を要求するだろう。非熟練労働者の雇人は特に技能を必要としない単純作業の為に雇われる。肉体労働者、荷運び、メイドなどといった労働者が含まれるだろう。

サービスとしての呪文 Spellcasting Services
 呪文を行使できる人々は、一般的な雇人のカテゴリーには含まれない。コインや助力と引き換えに、進んで呪文を行使してくれる誰かを探すことは可能かもしれないが、簡単に見つかることは稀だし、定価が決まっているわけでもない。一般則としては、求める呪文のレベルが高ければ、コストも高くなる。
 たとえばキュアー・ウーンズやアイデンティファイなど、比較的一般的な1レベルまたは2レベルの呪文を行使するために誰かを雇うのは、町や都市であれば十分に容易であり、かかるコストは10~50gpだろう(それに物質構成素材の価格が加わる)。より高いレベルの呪文をかける能力と意思のある誰かを見つけるには、大都市(おそらくは大学や優れて高名な寺院のある所)への旅が必要になるだろう。見つかったとしても、呪文使いは支払いの代わりに奉仕を求めるかもしれない。それは、危険な土地から希少なアイテムを持ち帰るとか、モンスターの巣食う荒野を旅して遠方の居住地に何か重要なものを届ける、といった冒険者だけが提供できるようなサービスになるだろう。

トリンケット Trinkets

 キャラクター作成時に、トリンケット表で1回ロールして、トリンケットを一つ手に入れることができる。トリンケット(ちっちゃなお宝、というほどの意味)は、少し謎めいたシンプルな品物だ。DMもこの表を使ってよい。ダンジョンの空き部屋に置いておいたり、クリーチャーのポケットに何か詰め込むのにも使えるだろう。

D100 トリンケット
01 ミイラ化したゴブリンの片手
02 月光の中でほのかに光る水晶の欠片ひとつ
03 どことも知れぬ地で鋳造された金貨1枚
04 知らない言葉で書かれた日記1冊
05 決して輝きの褪せない真鍮の指輪ひとつ
06 ガラスでできた古いチェスの駒1個
07 2個1組の指の骨でできたサイコロ。普通なら6の目がある面にはどくろのマークがついている
08 悪夢的なクリーチャーをかたどった小さな偶像ひとつ。この像は近くで眠る君(もしくは君たち)に、不安な夢を見せる
09 4本のミイラ化したエルフの指をぶら下げた、縄でできた首飾りひとつ
10 君の知らない国にある、小さな土地の権利譲渡証書
11 未知の物質でできたブロック1個。重量1オンス(約30g)
12 何本かの針で串刺しになった布製の人形ひとつ
13 未知の獣から採った歯1本
14 巨大な鱗1枚、おそらくドラゴンのもの
15 明るい緑色の羽1本
16 古い占い札1枚。君の似顔絵が描かれている。
17 揺らめく煙が満ちた、ガラス球1個
18 重さ1ポンドの、明るい赤色の殻の卵1個。
19 泡を吹き出すパイプ1本
20 ガラスの広口瓶ひとつ。中の液体には不気味な肉片が漬物のように浮いている。
21 ノームが細工した、ごく小さなオルゴールひとつ。ぼんやり子供の頃を思い出させる、ある曲を奏でる
22 木でできた、小さなうぬぼれ屋のハーフリングの小像ひとつ
23 奇妙なルーン文字がエッチングされた真鍮製の球ひとつ
24 多色の石製円盤1枚
25 ごく小さな銀の大鴉の聖像ひとつ
26 47本のヒューマノイドの歯が入った袋。歯のうち一本は腐っている
27 黒曜石の欠片ひとつ。触れるといつでも暖かい
28 シンプルな革の首飾りから下がっている、ドラゴンの骨ばった鈎爪ひとつ
29 古い靴下1足
30 白紙の本1冊。ページにはインクもチョークも炭も付かず、どんな物質でも印をつけられない
31 銀でできた五芒星型のバッジ
32 ナイフ1本。本当は身内の誰かのもの
33 切った爪でいっぱいの小さな小瓶1本
34 長方形の金属製器具ひとつ。端にごく小さなカップが2個ついていて、湿気が多いと火花を散らす
35 人間サイズの、スパンコールのついた白い手袋片方
36 100のごく小さなポケットがついたベスト1着
37 小さい、重さのない石のブロック1個
38 あるゴブリンを描いた、ごく小さなスケッチ
39 空っぽの小さな小瓶。開けると香水の香りがする
40 宝石の原石1個。君以外の者が調べても石炭の塊にしか見えない
41 もとは古い紋章旗だった、布の切れ端1枚
42 失われた軍団の階級章ひとつ
43 舌が欠けた、ごく小さな銀の鈴1個
44 ノームが細工したランプの中に入った、機械じかけのカナリヤ1羽
45 底から無数の足が生えたように見える彫刻がされた、ごく小さな宝箱ひとつ
46 透明なガラス瓶に入ったスプライト(小妖精)の死骸
47 金属製の缶。開口部はないが、中からは液体、砂、蜘蛛、またはガラスの破片(好きなものを選べ)が入っているような音がする
48 ガラスの球1個。中には水が満ちていて、時計仕掛けの金魚が泳いでいる
49 柄に「M」と彫り込まれた銀のスプーン1本
50 黄金色の木から作られた呼子笛ひとつ
51 君の片手ほどの大きさの、スカラベ虫の死骸
52 おもちゃの兵隊2体。片方の頭は取れている
53 それぞれサイズの違うボタンでいっぱいの小さな箱ひとつ
54 火を灯せないろうそく1本
55 扉の無いごく小さな檻ひとつ
56 古い鍵ひとつ
57 判読できない宝の地図1枚
58 折れた剣の柄ひとつ
59 ウサギの脚1本
60 ガラスの目ひとつ
61 恐ろしい/醜い人物の肖像が彫られたカメオひとつ
62 コインほどの大きさの銀のドクロ
63 アラバスター(雪花石膏)のマスク
64 ピラミッド型の、粘り気のある、黒くてひどい匂いのするお香ひとつ
65 ナイトキャップひとつ。かぶると君に良い夢を見せてくれる
66 骨でできた「まきびし」1個
67 金でできたモノクル(片眼鏡)のフレームひとつ。レンズはない
68 1インチの立方体ひとつ。各面は異なる色で塗られている
69 水晶でできたドアノブひとつ
70 ピンク色の塵が詰まった包みひとつ
71 羊皮紙2枚に楽譜として書かれた、美しい歌の断片
72 銀色の涙の形をしたイヤリング。本物の涙から作られた
73 卵1個の殻。人間の悲惨の情景が心を乱すディテールで描かれている
74 扇1本。開くと眠っている猫が見える
75 骨製のパイプ1セット
76 四つ葉のクローバーの押し花ひとつ。礼儀作法について書かれた本に挟んである
77 羊皮紙1枚。複雑で新奇な機械仕掛けのアイディアが描かれている
78 華美な装飾の鞘。これまでどんな刃も、これにぴたりとおさまるものは無かった
79 殺人事件のあった場所で開かれるパーティーへの招待状1通
80 中央に鼠の頭がエッチングされたプロンズの五芒星
81 紫のハンカチ1枚。強力な大魔術師の名前が刺繍されている
82 寺院、城、もしくは別種の建築物のフロアプランの半分
83 小さくたたまれた布1枚。ひろげると素敵な帽子に変わる
84 はるか辺境の都市にある銀行の預金証明書1通
85 日記1冊。7枚のページが失われている
87 からっぽの銀製嗅ぎ煙草入れひとつ。表面には「諸々の夢」という銘が刻まれている
87 知られざる神への信仰の為に作られた鉄製の聖印ひとつ
88 伝説の英雄の栄達と失墜を綴った本1冊。最終章は失われている。
89 小さな小瓶1本ぶんのドラゴンの血
90 エルフ様式でデザインされた、古代の矢1本
91 決して曲がらない針1本
92 ドワーフ様式でデザインされた、華美な装飾のブローチ
93 空のワインの瓶。綺麗なラベルが貼ってあり、ラベルには「ワインズ醸造所のウィザード、赤竜殺し、331422-W」と書いてある
94 多色の釉薬のかかったモザイクタイル1枚
95 石化した鼠1体
96 ドラゴンの頭蓋骨と交差した骨で飾られた黒い海賊旗1枚
97 ごく小さな機械仕掛けの蟹または蜘蛛。誰も見ていない時に動きまわる
98 ラードの入ったガラスの広口瓶ひとつ。ラベルは「グリフォン・グリース(グリフォン脂)」と読める
99 底が陶器でできた木箱ひとつ。中には胴の両端に頭のある芋虫が一匹入っている
100 英雄の遺灰を入れた金属製の骨壺ひとつ

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最終更新:2021年11月06日 18:53