吉良吉影/武智乙哉は動かない ◆QyqHxdxfPY


『ども!ジナコさんッス!!
 ボク、これからもおぉっと悪いことしちゃいまぁーす!
 どういうこと?色んなこと!知りたい?みぃーんな知ってるッスよぉぉおぉ?
 この辺で起きてる事件ってぇ、みぃ~んなボクの仕業ッスからぁ!!』

B-6のマンション、1階の武智乙哉の住居。
アサシン“吉良吉影”はリビングにてノートパソコンと向き合う。
マスターである武智乙哉の私物だが、使用の許可は出ている。
彼は動画サイトにアクセスし、午前中にアップロードされたばかりの動画を見ていた。
B-10のケーキ屋を起点に始まった暴行事件のニュース映像だ。

(犯人の名は『ジナコ=カリギリ』…右手の紅い痣を見せびらかすように暴れている…)

テレビのニュースで事件を知っていた吉良は情報収集の為にネットでの検索を試みた。
この大胆不敵な事件は既にネット中で話題となっている。
様々な目撃情報も囁かれているようだ。
それらの情報をざっと眺めた後、吉良は動画サイトにてニュースの映像を視聴した。

『うふふふ!あ!そぉだぁ!!
 アーカードの旦那ぁーwwwwww旦那ぁ、見てるぅ?
 素敵でしょぉ?これwwww真っ赤っ赤な血ぃ、もっと見たいでしょぉ???
 あははははーーー!!!もぉお誰も助かることなんてwwでwきwなwいwwwwww
 みぃーんなwwwお前らのせいだよぉおおぉwwwwわっかるかなぁ~wwwwwwww』

(それにしても…何が目的だ?狂っているのか、この女は…)

このジナコ=カリギリという女。
余りにも大胆に、余りにも堂々と暴れている。
『犯行を隠蔽すること』が当たり前となっている吉良にとって余りにも理解し難い行動だ。
それどころか、マスターの証である令呪を自ら見せびらかしているという。
無計画、無警戒、無鉄砲。自分はマスターであると宣伝して回るかのような愚行。
もしかすると、何らかの目的があるのではないか。

(恐らく罠ではない。誘き寄せる為の手段としてはリスクが大きすぎる)

最初に考えたのは罠の可能性だが、吉良はそれをすぐに否定する。
理由は単純、余りにも目立ち過ぎているからだ。
陽動にしては事が派手すぎるし、撒き餌にしては当人が危険すぎる。
そもそも、ああも大胆に動けば誰だって警戒する。
まともな思考の持ち主ならばまずあんな罠を用意しないだろう。

(アレが罠ではないとして、何故あの女はわざわざ公の場で犯罪を犯した?
 その上マスターであることを衆目に晒すような真似を…自殺行為以外の何者でもないじゃあないか…)

『ジナコ=カリギリ』は何故あのような真似をしたのか。
奴は破壊行為、暴行といったくだらない犯罪行為でNPCの社会を敵に回した。
それだけでも不可解だというのに、剰え令呪の隠蔽すらせずに暴れているのだ。
はっきり言って、あの行動は当人が損を被るだけだ。
メリットがあったとして、それ以上にデメリットの方が格段に大きいだろう。
故に吉良は理解に苦しむ。

何の為に。
何を狙って。
何を得ようとして、あんな行動に出ているのか。

(いや、逆に考えてみよう…あの女がマスターではないとすれば)

ふと脳裏を過ったのは一つの可能性。
あれは本当にマスターによる犯行なのか。
疑念に駆られるまま、吉良は自らの生前の記憶を探り始める。
生前の吉良が暮らしていた街には辻彩という女がいた。
天才的なエステティシャンにして、スタンド『シンデレラ』の使い手。
奴のスタンドは『他者の肉体のパーツを入れ替える』ことを可能とする能力だった。
生前、吉良は彼女を脅して利用したことがある。
殺人鬼としての正体が暴かれた際、『シンデレラ』を利用し他人に成り代わることで逃げ延びたのだ。
そこから吉良は事件の結論を導き出す。

(…変装による社会的攻撃)

あの女は敵マスターに変装し、犯罪を起こすことで当人を陥れようとしているのではないか。
他の主従だけではなく、NPCからも敵として認識させようとしているのではないか。

ニュースや動画サイトを見た限り、『ジナコ=カリギリ』は堂々と姿を晒している。
聖杯戦争に関わる存在でありながら、周囲への警戒が余りにも薄すぎるのだ。
狙撃を得意とする弓兵、気配を消せる暗殺者にとっては格好の餌食になりかねないだろう。
逆を言えば、公の場に姿を晒そうと生き延びられるだけの自信があるということではないか?
奇襲や強襲を仕掛けられようと、やり過ごせるだけの力を持っているのではないか。
だとすれば、マスターによる変装の可能性は低い。

恐らくは――――『変装能力を持ったサーヴァント』による犯行。

(姑息な輩だ)

厄介な奴がいるものだと軽く舌打ちする。
変装能力を持つサーヴァント。
この推測が正しいとすれば、最も警戒すべき敵と成り得るかもしれない。
社会的攻撃でマスターが陥れられれば、隠密行動が一気に難しくなる。
学校に通うことも、どこかで身を休めることも、まともに生活することも厳しくなるだろう。
『警察から逃げながら戦い続ける』――――そんな展開になれば最悪だ。
吉良は不安や警戒を感じながら生活することを何よりも嫌っているし、聖杯戦争での立ち回りにおいて大きな痛手となる。

(出来ることなら始末を…いや、危険だな…それに私や奴を除けば26組の主従がいるのだ…
 『本物のジナコ=カリギリ』が動く可能性もある…今は様子見をし、接触は避けるべきか…)

一先ず警戒はするが、手は出さない。それが吉良の結論だった。
そして、もう一つ気になったのは『アーカード』という名に対する数々の挑発。
この犯人とアーカードは敵対している可能性が高い。
もしかすれば、本物の『ジナコ=カリギリ』のサーヴァントこそがアーカードなのではないか。
これに関してはまだ情報が足りない。
いずれ情報は集めたいが、今はアーカードに関する考察は保留としよう。

(さて、B-4の重大な不正行為とやらも気になるが…近寄らぬが吉か。
 通達を聞いた連中が何かしら干渉を起こす可能性がある…)

先の通達で伝えられた情報のことも頭の中で整理する。
B-4で重大な不正を行った者がいるとのことだ。
これに関してはニュースでそれらしい事件として報道されている訳でもない。
過剰な魂喰いにせよ何にせよ、そいつはルーラー以外の目を誤摩化せる程の秘匿を行える技量があるのかもしれない。
まだ情報が少ない為、判断は難しい。
兎に角、B-4には出来る限り近寄らぬが懸命だろう。

一息ついてノートパソコンを閉じようとしていた最中、頭の中で声が響いた。


『アーサシーン』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


憩いの時間はそう長くは続かない。
食事を取った生徒達は再び勉学に励むことになるのだから。

5限目の授業が始まりを告げてから間もない時刻。
席へと座り、教科書やノートを開く生徒達が黒板へと目を向ける。
教師は教壇に立ち、黒板に白筆を滑らせながらその内容を解説している。

現実だろうと。
虚構の世界だろうと。
授業というものは、本当に退屈だ。

窓際の目立たない位置の席に座る紫髪の少女は、窓の外へと目を向けながら思った。
机の上に教材こそ置かれているものの、基本的にはただ開いているだけ。
気が向いた時にノートへ板書して『授業を受けているフリ』をする程度だ。
教師の話はつまらないし、勉強は面白くも何ともない。
そもそも、この学園生活自体が『NPCとして割り当てられた役職』に過ぎない。
そう考えると、ますますやる気は起きなくなっていた。
今の彼女の頭に授業の内容は入ってこない。
何より、もっと気掛かりなことがあった。

(…ほむらちゃん)

退屈な授業を余所に、紫髪の少女『武智乙哉』は思考する。
ほんの数十分程前のこと。
一緒に昼食を取った中等部の学生『暁美ほむら』がマスターであると発覚した。
食事の際にほむらが水を零し、手の甲の令呪が露になっていたのだ。
5限目の授業が始まってからも、乙哉は彼女のことを考えていた。

(どうしよっかなー)

ほむらをどうするべきか。
同盟を持ちかけるか。
先に殺しておくべきか。
それとも――――――――

ほんの十数秒程度の思考。
次の乙哉の一手が決まる。


『アーサシーン』


迷うこと無く念話。
乙哉は独断で動くより、一先ず従者との相談を選んだ。

それからさしたる間を置かず、乙哉の脳内に念話による男の声が響いてくる。
武智乙哉の従者であるアサシン――――吉良吉影のものだ。
突然の念話に少しだけ驚いたような様子でアサシンは乙哉に問いかける。

『どうした?恐らく授業中のはずだと思うのだが…』
『マスター見つけた』

何、と僅かに漏れるアサシンの言葉。
乙哉は発見したマスターに関する情報を語る。
マスターの名は『暁美ほむら』。
月海腹学園中等部二年に所属。
今朝に瞬間移動の件で話した少女と同一人物。
昼休み、昼食を取っている際に彼女の手の甲に浮かぶ令呪を発見。
水を零した際に令呪が見えた為、恐らくは化粧か何かで隠していたのかもしれない。
―――――と、可能な限りの情報を伝えた。

『その“暁美ほむら”という娘……君から見て……どう思う?』
『かわいい』
『そうゆう意味じゃあなくてだな…』

マスターの躊躇いの無い言葉に少し呆れたようにぼやく。
少し戯けた様子の乙哉だったが、すぐに念話を続ける。

『何というか、ドジっ子だねー。そこがかわいいんだけど。
 ちょっと前まで入院してたらしいし、運動神経も悪いみたい。
 学校に一人はいるじゃん、如何にもいじめられてそうだなーって子。そんな感じ』

乙哉の個人的な印象混じりの説明。
だが、言いたいことは大雑把に伝わった。
アサシンは更にもう一つ気になることを問いかける。

『サーヴァントは確認しているか?』
『いーや』

きっぱりと答える乙哉。
彼女が確認したのはほむらの令呪だけだ。
サーヴァントに関する情報は無い。
そう、少なくとも乙哉の認識の範囲では。
少しだけ思考の間を置き、アサシンが再び問う。

『…一つ気になるのだが、今朝暁美ほむらは校門の前で突然瞬間移動させられた…そうだね?』
『ん?そうだけどー』
『その時の状況を改めて教えてくれ』

吉良が聞き出したのは今朝のエピソード。
乙哉が念話で連絡した『瞬間移動のようなもの』のことだ。
先の話でほむらがその被害者であるということは聞いている。
ほむらがマスターであると解り、アサシンはその不可解な現象に再び目を向けた。

『バスを降りて、ほむらちゃんと一緒に喋りながら歩いてた』
『それで学園の前まで来たんだけど、校門を通ろうとした瞬間にほむらちゃんが転んでた』
『何かに躓いてた、というより――――――ほんの一瞬だけ時間をスキップしたみたいに、瞬間移動してたよ』
『ほむらちゃんもよく解ってなかったみたい。でも、申し訳なさそうな感じでもあった』

と、乙哉は記憶している情報を全て語る。
自らの主観の範疇で可能な限り詳細に。

『暁美ほむらにとっても予想外の様子であり…しかし、申し訳なさそうでもあった…』
『そんな感じ。あたしが心配してあげてた時も、妙におどおどしてたんだよねー』
『ふむ…』

アサシンはその情報を咀嚼しながら、少しばかり彼女に感心をする。
数時間前のこととはいえ、その時のほむらの状況や動きを詳細に記憶しているのだ。
気楽な印象のマスターだったが、観察力に関しては中々優れている。
尤も、相手が少女だったからかもしれないが。

『マスターには何ら影響は無かったんだね?』
『うん、あたしは別に何ともなかったよ』
『そうか…校門にマスターを感知する何らかの罠が仕掛けられている可能性も考えたが…その線は薄そうか。
 暁美ほむらだけが反応して、すぐ傍にいた君には無反応というのも流石におかしい…』
『他の連中を誘き出す為の撒き餌か、ほむらちゃんの注意を逸らす為か。
 あるいはあたしが気付かなかっただけで本当に罠が仕掛けられていたか、だよねー』

そして、乙哉の語った情報の中で特にアサシンが引っかかった箇所は一つ。
“ほんの一瞬だけ時間をスキップしたみたいに瞬間移動してた”。
その現象には覚えがある。
生前に似たような現象と出会ったことがある。

スタープラチナ。

時間停止の能力を持つ最強のスタンド。
ごく数秒間だけ世界の時を止め、その中を自分だけが動けるという破格の異能。
端から見れば、その動きはさながら“瞬間移動”とすら言える。
アサシンにとっての最大の悪夢といえる能力だ。
生前、アサシンは時間停止能力に敗れて死んだのだから。
自らを仕留めた能力がこの地にも存在する可能性に内心で危機感を覚えつつ、アサシンは考察を重ねる。


他の主従を誘き寄せる撒き餌としての行動――――――――恐らく違うだろう。
『ジナコ=カリギリ』の事件に関する考察をしたからこそ、そう考えられる。
不用意に目立つ行動は却ってリスクの方がに大きい。それがマスターならば尚更。
周囲から疑いの目を向けられ、狙われるだけだ。
サーヴァントの依り代であるマスターがそんな無鉄砲な陽動を起こすとは考えづらい。
そもそも、暁美ほむらは本当に驚いている様子だったと乙哉も語っている。

ならば、もう一つの可能性。
それは『暁美ほむらの注意を逸らすこと』。
もしかすると、有り得るかもしれない。
例えば、暁美ほむらのサーヴァントが傍にいたとする。
サーヴァントは校門付近に存在する何らかの罠や仕掛けから、マスターの注意を逸らそうとしていたのではないか。
もし時間停止の能力を持つ者がいるとしたら。それが暁美ほむらのサーヴァントであるとしたら。
サーヴァントが時間を止めている最中に暁美ほむらを転ばせたと考えれば、確かに可能だ。
だが、時間を止めるという点に関してはあくまで推測に過ぎない。
他者に干渉出来る瞬間移動の能力かもしれないし、あるいは暗示の類いの能力かもしれない。
まだ能力の断定は難しい。
ただし、暁美ほむらのサーヴァントの仕業という可能性は高い。
消去法に近い考察だが、少なくともアサシンはその線で見ていた。

『…これは私の推測だが、瞬間移動は暁美ほむらのサーヴァントの仕業ではないだろうか。
 目的は…君が仮定として挙げた、校門付近に存在する何かから暁美ほむらの注意を逸らすこと。
 ほんの一瞬だけ時間をスキップしたように見えた、という言葉の通り…サーヴァントは時間に関する能力を有している可能性もある。
 警戒が必要だろう…特に敵対の際には…』

アサシンは自らの考察を乙哉に語る。
能力は断定出来ないが、一応は時間停止の可能性も話すことにした。
乙哉はふむふむと頷くような反応を返してくる。
妙に冷静な反応だ。見せかけだけか、単にリアクションの薄い性分なのか。
一先ず、彼は可能な限りの考察を行った。
それ以上に、もっと気になることがある。

『所で、マスター…暁美ほむらと組みたいとか…思っていたりするか?』
『組みたいのと殺したいのが半々。でも、やっぱり組もうかなーって思ってる』

乙哉はそう答える。
彼女にとって暁美ほむらは極上の獲物だ。
おさげをちょん切りたいし、白い肌を切り刻みたいとも考えている。
しかし、彼女は同盟を優先することにした。

『そうか…』
『…ダメかな?』
『…私は君のサーヴァントだ、最終的に君の方針に従うつもりではある』

少しばかり間を置き、アサシンは言葉を紡ぐ。

『だが…隠していた令呪を気付かぬうちに晒してしまい、君にマスターであることを知られた…
 そんな些細なミスを犯した間抜けが同盟相手として使えるのか?そこが私の疑問だ』
『…アサシンだって醤油買いに行って敵に見つかるっていうお間抜けしちゃったじゃん?』
『………………』

すぐに口を閉ざした。
確かに彼は醤油を買いに行った際に他の主従に視認され、交戦さえしてしまっている。
痛い指摘をされてしまい、アサシンは何も言い返せない。

『というか、そうゆうドジっ子も組む相手としてはいいんじゃない?
『…何故そう思う?』
『カモは頭悪い方が楽じゃん』

どこか意地の悪そうな声色で、乙哉は言う。

『あたしさ、巣を張りたいんだよねー。
 いわば蜘蛛の巣。飛んでくる蟲を捕まえて確実に喰らう為の罠ってヤツ』

何食わぬ表情で席に座りながら、乙哉は念話で淡々とそう告げる。
蜘蛛の巣。蟲を捉える為の罠。
成る程、そう言うことか――――アサシンは彼女の意図を理解する。

『…暁美ほむらがその罠、ということか』

『そ、だからあたしはほむらちゃんと組む。
 ほむらちゃんを使って、他のマスターやサーヴァントの情報を掻き集める』

同盟と言っても、何も共闘関係を結びに行くつもりではない。
情報交換などを主とする、いわば不戦条約に近い同盟。
『そういった建前』で手を組みつつ、今日と変わらず友達として接し続ける。
ほむらが内気で穏やかな少女であることは短い関わりの中で十分に理解出来ている。
そんな彼女の良心に付け込むのが、乙哉の狙い。
大切な友人としての信頼を得ていけば、ほむらが勝手に助力してくれるようになるかもしれない。
友情という奇麗事を振りかざし、可能な限り相手を利用する。
乙哉は吉良に対しそれらの思惑を語り続ける。

『校門の前で突然転んだり、些細なミスで令呪を晒したり…あの子って多分、サーヴァント共々軽率でしょ?
 丁度いいんだよねー、それ。身体を張って撒き餌になってくれるんだから。勝手に注意を引いてくれる。
 あの子を使えば、あたし達が労すること無く学園のマスターを探れるかもしれないよ』

乙哉は何一つ悪怯れることも無く、そう語った。
友人となった者を何の躊躇いもなく利用する。
敵を釣る為の罠として平然と使う。
この少女は、快活で社交的だ。
それでいて、どうしようもなく狡猾だ。
アサシンは改めて認識した。
その性分には感心さえ覚える。

『しかし、本当に大丈夫なのか?利用は構わないが…
 暁美ほむら…あるいはそのサーヴァントから警戒される可能性も…』
『いけるってー。あたし、ほむらちゃんの友達だもん』

乙哉はきっぱりと言ってのける。
ほむらが利用対象として使えると判断したからこその断言。
ほむらが内気で大人しい少女であると理解しているからこそ決めた指針。
それを認識したアサシンは、己のマスターを信じることにした。
――――『時間停止能力』を持つかもしれないサーヴァントとの敵対を、一先ずだが避けられるかもしれない。
無意識のうちに感じていた思考もまた、乙哉の意見を受け入れる要因となった。

『なら君に任せる。何かあった際にはまた連絡を』
『了解っ、ありがとねー♪』

念話を切り、乙哉は再び日常へと戻る。
何事も無かったかのような表情で『学生』を装い続ける。
殺人鬼は自らが勝つ為の策を強かに思考する。


(授業終わったら、ほむらちゃんに連絡取ろっと)


ほくそ笑むように心中で呟く乙哉。
携帯電話には『暁美ほむら』の連絡先が登録されている。
昼食後、乙哉が連絡先の交換を持ちかけていたのだ。
既に彼女はほむらとの繋がりを持っている。
後は『利用価値』を見極めるだけ。

蜘蛛は自ら動こうとはしない。
ただ巣を張るだけだ。
獲物を確実に喰らう為に、算段を重ねる。


【C-3/月海原学園/一日目 午後】
【武智乙哉@悪魔のリドル】
[状態]:健康
[令呪]:残り3画
[装備]:月海原学園の制服、通学鞄、指ぬきグローブ
[道具]:勉強道具、ハサミ一本(いずれも通学鞄に収納)、携帯電話
[所持金]:普通の学生程度(少なくとも通学には困らない)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取って「シリアルキラー保険」を獲得する。
1.授業後にほむらへ連絡を取る。ほむらを利用して他の主従を探りたい。
2.他のマスターに怪しまれるのを避ける為、いつも通り月海原学園に通う。
3.有事の際にはアサシンと念話で連絡を取る。
4.用済みになったらほむらを切り刻みたい。場合によってはアサシンを動かす。
5.可憐な女性を切り刻みたい。
[備考]
※B-6南西の小さなマンションの1階で一人暮らしをしています。ハサミ用の腰ポーチは家に置いています。
※バイトと仕送りによって生計を立てています。
※月海原学園への通学手段としてバスを利用しています。
※トオサカトキオミ(衛宮切嗣)の刺客を把握。アサシンが交戦したことも把握。
※暁美ほむらと連絡先を交換しています。

【B-6(南西)/マンション(1F 武智乙哉の住居)/一日目 午後】
【アサシン(吉良吉影)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:レジから盗んだ金の残り(残りごく僅か)
[思考・状況]
基本行動方針:平穏な生活を取り戻すべく、聖杯を勝ち取る。
1.放課後マスターとの合流後に動く。具体的な方針もそこで決める。
暫くは家の中で適当に暇を潰す。
2.同盟しているものに警戒。同盟を組むのは気乗りではないが、最終的な判断はマスターに委ねる。
3.B-4への干渉は避ける。
4.女性の美しい手を切り取りたい。
[備考]
※魂喰い実行済み(NPC数名)です。無作為に魂喰いした為『手』は収穫していません。
※保有スキル「隠蔽」の効果によって実体化中でもNPC程度の魔力しか感知されません。
※B-6のスーパーのレジから少額ですが現金を抜き取りました。
※スーパーで配送依頼した食品を受け取っています。日持ちする食品を選んだようですが、中身はお任せします。
※切嗣がNPCに暗示をかけ月海原学園に向かわせているのを目撃し、暗示の内容を盗み聞きました。
そのため切嗣のことをトオサカトキオミという魔術師だと思っています。
※衛宮切嗣&アーチャーと交戦、干将・莫邪の外観及び投影による複数使用を視認しました。
切嗣は戦闘に参加しなかったため、ひょっとするとまだ正体秘匿スキルは切嗣に機能するかもしれません。
※B-10で発生した『ジナコ=カリギリ』の事件は変装したサーヴァントによる社会的攻撃と推測しました。
本物のジナコ=カリギリが存在しており、アーカードはそのサーヴァントではないかと予想しています。

[共通備考]
※一日目・午前中に発生した事件を把握しました。
※暁美ほむらがマスターだと認識しました。
※校門での暁美ほむらの瞬間移動は暁美ほむらのサーヴァントの仕業であると推測しました。
校門付近に存在する仕掛けからほむらの注意を逸らす為の行動であると考えています。
※暁美ほむらのサーヴァントが時間に関する能力を持つ可能性を推測しました。




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最終更新:2014年12月05日 17:45